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平成 20 年版 働く女性の実情のポイント
【 平成 20 年版 働く女性の実情のポイント 】 1 平成 20 年の働く女性の状況 (1)労働力人口、労働力率 ~女性は5年ぶりに減少し 2,762 万人 平成 20 年の女性の労働力人口は前年より 1 万人減少し、2,762 万人で 5 年ぶりの減少とな った。また、労働力率も 5 年ぶりに低下し 48.4%となった(前年差 0.1%ポイント低下)。 年齢階級別の労働力率は、25~29 歳(76.1%)と 45~49 歳(75.5%)を左右のピークとす るM字型カーブを描いている。M字型の底は昭和 54 年に 25~29 歳から 30~34 歳に移動して 以来 30~34 歳となっていたが、比較可能な昭和 43 年以降初めて 35~39 歳となった。また、 M字型の底の値は前年は 64.0%であったが、0.9%ポイント上昇し 64.9%となった(図 1、本 文 2 ページ)。 図1 女性の年齢階級別労働力率 (%) 80 69.9 73.4 6 9 .7 70 72.0 7 6 .1 6 4 .9 75.8 6 5 .1 69.5 69.2 64.3 64.0 60 62.2 48.2 40 75.6 7 5 .5 70.2 72.4 63.8 64.1 7 1 .6 70.8 6 1 .6 60.8 67.8 59.1 59.1 58.2 55.8 50 7 1 .1 4 3 .6 50.7 47.5 42.2 40.1 38.8 30 18.6 20 平成20年 平成19年 17.3 1 6 .2 16.2 10 0 15~19歳 15.6 15.2 1 3 .1 平成10年 昭和54年 20~24歳 25~29歳 30~34歳 35~39歳 40~44歳 45~49歳 50~54歳 55~59歳 12.9 60~64歳 65歳以上 資料出所:総務省統計局「労働力調査」(昭和 54 年、平成 10、19、20 年) (2)就業者、完全失業者 ~女性は6年ぶりに就業者数が減少し完全失業者数が増加 女性の就業者数は、 前年より 3 万人減少し 2,656 万人で 6 年ぶりの減少となった。 女性の完全失業者数は、前年より 3 万人増加し 106 万人で 6 年ぶりの増加となった。ま た、女性の完全失業率は 3.8%と前年より 0.1%ポイント上昇し、6 年ぶりの上昇となった (図 2、本文 5 ページ)。 図2 完全失業率の推移 (%) 6 5.5 5.5 女性 男性 5 4.8 4.9 5.2 4.6 5 .1 4.2 4 3 2 .7 2 .8 2 .8 2 .6 2 2.6 2.7 2.8 3 .0 2 .3 2 .2 2 .2 2 .2 2.5 3 .2 2 .6 2.8 3.1 3.4 3 .4 4.9 4 .5 4 .5 4 .7 4 .9 4.3 3.9 4 .4 4 .0 4.1 4 .2 3 .9 3 .7 3 .8 18 19 3 .3 3.4 2.4 2.2 2.0 2.0 2.1 平成 元 2 1 0 昭和 60年 61 62 63 3 4 5 6 7 8 資料出所:総務省統計局「労働力調査」 1 9 10 11 12 13 14 15 16 17 20 (3)雇用者 ① 雇用者数 ~女性は6年連続増加で 2,312 万人、過去最多に 女性の雇用者数は、前年より 15 万人増加し 2,312 万人で 6 年連続の増加となり、過去 最多となった。また、雇用者総数に占める女性割合は前年に比べ 0.3%ポイント上昇し 41.9%となった。一方、男性は 14 万人の減少で、4 年ぶりの減少となり 3,212 万人とな った(図 3、本文 6 ページ)。 図3 雇用者数及び雇用者総数に占める女性割合の推移 (%) (万人) 7,000 6,000 35.9 37.9 38.9 39.6 5,263 5,368 40.0 5,356 41.3 41.6 41.6 41.9 5,393 5,472 5,523 5,524 40 35 4,835 5,000 45 4,313 30 4,000 25 3,000 20 15 2,000 10 1,000 1,548 1,834 2,048 2,124 2,140 2,229 平成2年 平成7年 平成10年 平成12年 平成17年 2,297 2,277 2,312 5 0 0 昭和60年 女性雇用者数(左目盛) 雇用者総数に占める女性割合(右目盛) 平成18年 平成19年 平成20年 雇用者総数(左目盛) 資料出所:総務省統計局「労働力調査」 ② 雇用形態別の状況 ~女性は「正規の職員・従業員」、「非正規の職員・従業員」ともに増加 役員を除く雇用者を雇用形態(勤め先での呼称による)別にみると、平成 20 年の女性 は、「正規の職員・従業員」が 1,040 万人(前年差 1 万人増)、「非正規の職員・従業 員」が 1,202 万人(同 8 万人増)と、「正規の職員・従業員」、「非正規の職員・従業 員」ともに増加した。「非正規の職員・従業員」のうち「パート・アルバイト」は 904 万人(同5万人減)、「労働者派遣事業所の派遣社員」は 142 万人(同5万人増)、「契 約社員・嘱託」は 142 万人(同5万人増)、「その他」は 71 万人(同 3 万人増)であっ た。 構成比(役員を除く女性雇用者総数に占める割合)では、 「正規の職員・従業員」46.4% (同 0.1%ポイント低下)、「非正規の職員・従業員」53.6%(同 0.1%ポイント上昇)、 うち「パート・アルバイト」40.3%(同 0.4%ポイント低下)、「労働者派遣事業所の派 遣社員」3.8%(同 0.2%ポイント上昇)、「契約社員・嘱託」6.3%(同 0.2%ポイント 上昇)、「その他」3.2%(同 0.2%ポイント上昇)となった。 男性は、「正規の職員・従業員」が 2,358 万人(同 44 万人減)と 3 年ぶりに減少し、 「非正規の職員・従業員」が 559 万人(同 21 万人増)と増加し、構成比(役員を除く男 性雇用者総数に占める割合)では、「正規の職員・従業員」80.8%(同 0.9%ポイント低 2 下)、「非正規の職員・従業員」19.2%(同 0.9%ポイント上昇)となっている(図 4、 本文 9 ページ)。 図4 役員を除く雇用者の雇用形態別割合 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 女性(平成20年) 46.4 40.3 3.8 6.3 3.2 (平成19年) 46.5 40.7 3.6 6.1 3.0 6.1 2.6 5.5 2.3 8.5 80.8 男性(平成20年) 1.9 8.7 81.7 (平成19年) 1.8 正規の職員 ・従業員 パート・ アルバイト 労働者 派遣事業所の 派遣社員 契約社員 ・嘱託 その他 非正規の職員 ・従業員 資料出所:総務省統計局「労働力調査(詳細結果)」(平成 19、20 年) (4) 労働条件等の状況 ① 賃金 ~女性の所定内給与額は増加し男女間賃金格差が縮小 平成 20 年の短時間労働者を除く女性一般労働者(平均 39.1 歳、勤続 8.6 年)の所定 内給与額(きまって支給する現金給与額から、超過労働給与額を差し引いた額)は 22 万 6,100 円(前年比 0.4%増)であった。所定内給与額でみた男女間の賃金格差(男性=100.0 とする女性の給与額)は 67.8(前年 66.9)となっており、前年に引き続き格差は縮小し た(図 5、本文 18 ページ)。 (千円) 図5 一般労働者の所定内給与額及び男女間賃金格差の推移 450 400 350 60.7 59.6 60.2 62.5 62.8 63.1 61.5 61.6 62.0 63.9 65.5 65.3 64.6 66.5 66.8 67.6 65.9 65.9 66.9 67.8 (%) 70.0 65.0 60.0 300 250 55.0 200 50.0 150 100 45.0 50 40.0 0 昭和60 平成2 3 4 5 6 所定内給与額・男性(左目盛) 7 8 9 10 11 12 所定内給与額・女性(左目盛) 13 14 15 16 17 18 19 20 (年) 所定内給与額男女間格差(右目盛) 資料出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」 (注) 1 「一般労働者」は、常用労働者のうち、「短時間労働者」以外の者をいう。 2 「短時間労働者」は、常用労働者のうち、1 日の所定内労働時間が一般の労働者よりも短い又は 1 日の所定労働 時間が一般の労働者と同じでも 1 週の所定労働日数が一般の労働者よりも少ない労働者をいう。平成 16 年まで 「パートタイム労働者」の名称で調査していたが、定義は同じである。 3 企業規模 10 人以上の結果を集計している。 4 所定内給与額の男女間格差は、男性の所定内給与額を 100.0 とした場合の女性の所定内給与額を次の式により 算出した。 所定内給与額の男女間格差=女性の所定内給与額÷男性の所定内給与額×100 3 ② 労働時間 ~女性の総実労働時間、所定内労働時間ともに減少 平成 20 年の女性常用労働者 1 人平均月間総実労働時間は、129.5 時間(前年差 1.0 時 間減)、うち、所定内労働時間は 123.8 時間(同 1.0 時間減)、所定外労働時間は 5.7 時間(前年同)であり、総実労働時間、所定内労働時間ともに減少した(本文 20 ページ)。 2 大卒女性の働き方 (1)有業率 ~「きりん型」カーブの変容 均等法制定時(昭和 60 年)以降の 15~64 歳の有業率の推移をみると、男性はこの 20 年余 の間ほぼ横ばいのまま推移しているのに対し、 女性は、 昭和 62 年 54.2%から平成 19 年 61.7% と上昇傾向を示している。特に大卒女性は昭和 62 年の 62.6%から平成 19 年の 72.6%へと 10.0%ポイント高まっており上昇幅が大きいが年齢階級別の有業率が描くカーブにも大きな 変化がもたらされている。 大学・大学院卒業者については、卒業後すぐの有業率は高いものの結婚や出産、育児を機 に早期に労働市場から退出したまま、その後も労働市場に復帰しない者の割合が高いという 特徴がかつてはあったために、年齢階級別の有業率が「きりん型」-首の部分(若年層)の 傾斜が極めて急であり(高く)、背中(中高年層)が平坦-と称されていたが、近年 25~29 歳と 30~34 歳での有業率が大幅に高まっているため、「きりん」の「首」に例えられた若年 層での有業率の急降下が解消されている。また、35 歳以上の有業率は高校・旧制中卒業者の 有業率と近似の値を示しており、学歴による顕著な違いがみられなくなっている。これは、 結婚や出産、育児期に労働市場から退出するという女性特有の行動をとる者は、かつても現 在も一定程度存在するが、未婚率の上昇もあり曲線が上方にシフトし、さらに、晩婚化、晩 産化により退出する年齢層のピークが高まった結果、曲線が右方にシフトした結果と考えら れる。 また、大学・大学院卒業者の 20 歳代の有業率の男女差が縮小しているが、特に 20~24 歳 では女性の方が 1.1%ポイントではあるが高くなっており、大学卒業直後の就業行動の男女差 はなくなりつつある(図6、7、本文 34 ページ)。 図6 性、学歴、年齢階級別有業率 –昭和 62 年、平成 19 年96.5 100.0 90.0 (%) 97.7 (昭和 62 年) 98.2 98.8 98.8 99.0 (平成 19 年) 98.2 95.5 92.9 83.0 90.0 96.4 97.1 97.6 97.9 97.5 96.3 90 .0 89.3 91.1 79.6 86.3 80 .0 77.6 68.4 66.9 69.2 59.9 60.4 60.0 70 .0 56.5 51.9 60.4 60.3 56.6 50.0 50.6 67.4 75.8 91.0 92.8 93.9 94.1 72.3 68.5 75.2 97.0 96.1 94.0 93.7 71.9 73.4 71.6 65.2 75. 3 62.2 72.3 60. 7 61.8 59.6 91.4 75.4 65.8 70.4 66.7 60 .0 54.2 52.8 97.2 93.4 83. 5 76.9 66.9 97.1 94.0 92.2 80.0 70.0 96.3 (%) 1 00 .0 50 .0 41.6 49.1 42.2 47.7 40.0 35.1 40 .0 41.4 30.0 女性高校・旧制中卒 20.0 34.1 30 .0 34.9 30.6 女性大学・大学院卒 19.3 20 .0 男性大学・大学院卒 10.0 23.0 女性高校・旧制中卒 16.4 男性大学・大学院卒 10 .0 男性高校・旧制中卒 女性大学・大学院卒 男性高校・旧制中卒 0.0 0 .0 15-19 20-24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65- (歳) 1 5 -1 9 2 0 -2 4 資料出所:総務省統計局「就業構造基本調査」(昭和 62 年、平成 19 年) 4 2 5 -2 9 3 0 -3 4 3 5- 3 9 4 0- 4 4 4 5- 4 9 5 0- 5 4 5 5- 5 9 6 0- 6 4 65 - (歳) 図7 大卒女性、高卒女性の有業率の変化 (女性大学・大学院卒) (%) 100.0 92.2 90.0 83.5 80.0 90.0 70.4 68.5 73.4 71.9 60.3 59.6 65.2 70.0 60.7 66.9 60.0 54.2 60.4 56.6 50.0 56.5 51.9 40.0 10% 41.4 30.0 30.6 平成19年 昭和62年+10% 20.0 23.0 昭和62年 10.0 0.0 15-19 20-24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65- (歳) (女性高校・旧制中卒) (%) 100.0 90.0 80.0 70.0 83.0 75.4 72.3 77.6 66.7 76.9 75.2 71.6 65.8 62.2 61.8 68.4 60.0 66.9 60.4 59.9 50.0 42.2 50.6 40.0 49.1 47.7 30.0 34.9 平成19年 昭和62年+5% 20.0 5% 19.3 16.4 昭和62年 10.0 0.0 15-19 20-24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 資料出所:総務省統計局「就業構造基本調査」(昭和 62 年、平成 19 年) 5 65- (歳) (2) 雇用形態 ~20 歳代でも8割を下回る大卒女性の正規労働者 男性の大学・大学院卒業者は 20~54 歳の幅広い年齢層で正規の職員・従業員割合が 8 割 を超えているのに対し、女性の大学・大学院卒業者は卒業後すぐの 20~24 歳で正規の職員・ 従業員割合が最も高く 78.5%であり、その上の年齢階級になると、年齢階級が高くなるほ ど正規の職員・従業員割合が低くなる傾向にあり、30 歳代で 7 割、40 歳代で6割を下回る (図 8、本文 38 ページ)。 (%) 100. 0 図8 性、学歴、年齢階級別雇用者に占める正規の職員・従業員の割合 83.2 90. 0 86.9 89.5 89.0 85.2 84.8 85.6 81.9 75.4 78. 5 75. 0 77.9 75.0 68.7 50. 0 84.3 83.2 72.0 71.8 66. 8 65.1 58.6 55.8 47.0 81. 8 44.0 40.3 25. 0 53. 6 51.8 39.1 52. 2 34.2 30.0 33. 5 36.1 女性大学・大学院卒 男性大学・大学院卒 33.2 34.9 33.5 28.6 34.7 女性高校・旧制中卒 男性高校・旧制中卒 26.0 18.8 17.8 0. 0 15-19歳 20-24歳 25-29歳 30-34歳 35-39歳 40-44歳 45-49歳 50-54歳 55-59歳 60-64歳 65歳 - 資料出所:総務省統計局「就業構造基本調査」(平成 19 年) (3) 就業分野 ~多様化する大卒女性の就業分野 大卒女性の就業分野を職業分類でみると、正規の職員・従業員の大卒女性のうち、「専 門的・技術的職業従事者」が 96 万人と最も多く 41.8%を占めているが、その内訳を中分類 でみると、「教員」が 42 万人と半数近くを占め、正規の職員・従業員の 18.3%を占めてい る。年齢階級別にみると「教員」は 50~54 歳においては正規の職員・従業員の 43.2%と高 い水準となっており、40 歳以上の者でみた場合は 37.5%を占める。 正規の職員・従業員の大卒女性については、「専門的・技術的職業従事者」に次いで、 「事務従事者」が 90 万人となっており 27.9%を占めているが、若い年齢階級でその割合が 高くなっており、20 歳代から 30 歳代の各年齢階級においては「専門的・技術的職業従事者」 よりも「事務従事者」の占める割合の方が高くなっている。 非正規の職員・従業員の大卒女性については「事務従事者」が 48 万人と最も多く 41.4% を占めている。「事務従事者」に続くのは「専門的・技術的職業従事者」で、32 万人、27.4% を占めている。このうち、「教員」は 10 万人で、全体の 8.8%を占めている。また、正規 の職員・従業員同様、若い年齢階級で「事務従事者」の占める割合が高くなっている(図 9、 本文 42 ページ)。 6 図9 学歴、雇用形態、年齢階級、職業別女性雇用者の割合 100% (女性 大学・大学院卒 正規の職員・従業員) 分類不能の職業 生産工程・労務作業者 サービス職業従事者 販売従事者 90% 80% 27.9 70% 38.9 60% 事務従事者 管理的職業従事者 下記以外の 専門的・ 技術的職業従事者 50% 12.2 40% 保健医療従事者 技術者 専門的・ 30% 技術的 11.3 職業従事者 20% 41.8 10% 37.5 58.3 教員 18.3 0% 20-24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65- (歳) 年齢計 40歳以上 (女性 大学・大学院卒 非正規の職員・従業員) 100% 分類不能の職業 生産工程・労務作業者 90% 10.2 80% 11.4 サービス職業従事者 販売従事者 70% 60% 事務従事者 50% 41.4 36.9 40% 下記以外の 専門的・ 技術的職業従事者 保健医療従事者 30% 20% 27.4 10% 7.6 9.7 技術者 8.8 10.6 年齢計 40歳以上 0% 20-24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65- (歳) 専門的・ 技術的 職業従事者 31.0 教員 資料出所:総務省統計局「就業構造基本調査」(平成 19 年) (4) 勤続年数 ~依然として短い大卒女性の勤続年数 正規労働者については、現在の仕事を続けたいと希望する者が性、学歴、年齢階級にか かわらずおおむね 8 割を上回っており、継続的な働き方を希望している一方、女性の勤続 年数は男性に比べ依然として短く、平成 19 年の女性の大学・大学院卒の女性の平均勤続年 数は、男性の大学・大学院卒業者(12.5 年)や高校卒業者(男性:13.9 年、女性:9.7 年) に比べ短く 6.1 年となっている。 また、平均勤続年数の男女間の差の推移をみると(図 10 棒グラフ)昭和 60 年で高校卒 が 5.3 年、大学・大学院卒が 5.2 年で同程度であったが、その後の勤続年数が高校卒では 男女とも伸張したものの女性の方の伸びがより大きかったため、男女間の格差は平成 19 年 で 4.2 年となっており、この間で男女間格差が約 1 年短くなっている。一方、大学・大学 院卒については、男性の勤続年数の伸びが 2.3 年であったのに対し、女性の勤続年数の伸 びは、1.1 年と短かったため、男女間格差は平成 19 年で 6.4 年となっており、高校卒とは 対照的に男女間の格差は約 1 年長くなっている(図 10、本文 49 ページ)。 7 図 10 一般労働者の勤続年数等の推移 (年) 15 男性大学・大学院卒 男性高校卒 13.9 11.7 12.5 10.2 10 9.7 女性高校卒 女性大学・大学院卒 6.4 大学・大学院卒業者の 高校卒業者の 男女間格差 男女間格差 6.4 6.1 5.0 5 4.2 5.2 5.3 0 昭和60年 平成元年 5 9 13 17 19 (年) 資料出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」 (5) 離職理由 ~育児や結婚を理由に離職する大卒女性 離職者の離職理由をみると、男性に比べ、女性は結婚や育児のためにキャリアを一時中 断し、無業でいる者も多くなっている。育児や結婚に関わることが多いと考えられる 25~ 44 歳の女性について、前職の離職理由をみてみると、「育児のため」とする者については、 大学・大学院卒業者は 18.9%、高校・旧制中卒業者 19.3%となっており、大学・大学院卒 業者も高校・旧制中卒業者とも約 5 人に 1 人が育児を離職理由としている。また、「結婚 のため」については、大学・大学院卒業者は 16.3%であるが、高校・旧制中卒業者では 9.4% となっており、結果として、育児と結婚を離職理由にあげる者は大学・大学院卒業者で 35.2%、高校・旧制中卒業者で 28.7%と、大学・大学院卒業者の方が高い割合を示してい る(図 11、本文 52 ページ)。 図 11 学歴、前職の離職理由別前職がある女性無業者の割合(25~44 歳) 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 1.2 女性大学・大学院卒 25-44歳 女性高校・旧制中卒 25-44歳 2.5 2.2 3.3 4.0 4.7 90% 100% 0.6 1.6 2.4 4.1 10.1 3.4 6.9 8.6 4.1 4.9 2.6 7.1 6.5 3.9 8.0 人員整理・勧奨退職のため 事業不振や先行き不安 収入が少なかった 自分に向かない仕事だった 定年のため 病気・高齢のため 育児のため その他 16.3 9.4 19.7 18. 9 19. 3 2.6 20.8 会社倒産・事業所閉鎖のため 一時的についた仕事だから 労働条件が悪かった 家族の転職・転勤又は事業所の移転のため 雇用契約の満了のため 結婚のため 家族の介護・看護のため 資料出所:総務省統計局「就業構造基本調査」(平成 19 年) (注)調査時点1年前の平成 18 年 10 月以降に前職を辞め、調査時点平成 19 年 10 月 1 日現在も仕事をしていない 者を集計したもの。 (6) 男女間賃金格差 ~高卒者に比べ小さいものの存在する大卒者の男女間賃金格差 男女間の賃金格差を年齢階級別にみると、大学・大学院卒業者では 20~24 歳では 94.5 であり賃金格差は比較的小さいものの、年齢階級が高まるにつれて賃金格差は拡大し、50 ~54 歳で格差は最も大きく 72.5 となっている。高校卒業者についても、格差は大学・大学 院卒業者と比較すると大きいものの、ほぼ同型のカーブを描いており年齢階級が高まるに つれて賃金格差は拡大し、50~54 歳で格差が最も大きく 56.9 となっている(図 12、本文 54 ページ)。 8 図 12 学歴、年齢階級別一般労働者の所定内給与額の男女間の賃金格差 (一般労働者、所定内給与額、企業規模 10 人以上、男性=100) 120.0 110.0 101.6 98.7 94.5 100.0 91.1 86.9 85.0 90.0 81.5 92.4 77.2 87.9 80.0 73.0 72.5 82.6 70.0 78.7 76.1 60.0 大学・大学院卒 50.0 高校卒 72.7 69.2 64.7 59.7 59.1 56.9 40.0 18-19歳 20-24歳 25-29歳 30-34歳 35-39歳 40-44歳 45-49歳 50-54歳 55-59歳 60-64歳 65歳- 資料出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(平成 19 年) (注) 1 「一般労働者」は、常用労働者のうち、「短時間労働者」以外の者をいう。 2 「短時間労働者」は、常用労働者のうち、1日の所定内労働時間が一般の労働者よりも短い又は1日の所定 労働時間が一般の労働者と同じでも1週の所定労働日数が一般の労働者よりも少ない労働者をいう。平成 16 年まで「パートタイム労働者」の名称で調査していたが、定義は同じである。 3 企業規模 10 人以上の結果を集計している。 4 所定内給与額の男女間格差は、男性の所定内給与額を 100 とした場合の女性の所定内給与額を次の式により 算出した。所定内給与額の男女間格差=女性の所定内給与額÷男性の所定内給与額×100 (7) 子どもの数の理想と現実 ~理想と現実のギャップの理由は大卒女性5人に1人が 仕事への差し支え 夫婦に尋ねた理想的な子ども数(以下、「平均理想子ども数」という。)と夫婦が実際に 持つつもりの子ども数(以下、「平均予定子ども数」という。)を妻の学歴別にみると、「大 学以上」では、平均理想子ども数が 2.42 人であるが、平均予定子ども数は 1.97 人となっ ており、予定の方が理想よりも下回っている。 また、予定子ども数が理想子ども数を下回る夫婦について、妻の学歴別にその理由(複 数回答)をみると、「大学以上」、「高校」卒業者とも「子育てや教育にお金がかかりす ぎるから」とする者、「高齢で生むのはいやだから」とする者の割合が高い。「自分の仕 事に差し支える」については、「大学以上」(22.5%)の方が「高校」(16.0%)よりも 6.5%ポイント高い値となっており、理想と現実のギャップの理由として、大卒女性のほぼ 5 人に 1 人の割合で仕事への差し支えがあると考えていることがわかる(図 13、本文 64 ペ ージ)。 図 13 妻の学歴別理想の子ども数を持たない理由(複数回答) -予定子ども数が理想子ども数を下回る夫婦について- 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 59.8 子育てや教育にお金がかかりすぎる から 70.0 (%) 80.0 69.4 13.3 13.5 家が狭いから 自分の仕事に差し支える から 22.5 16.0 11.7 12.9 子ど もがのびのび育つ社会環境ではないから 自分や夫婦の生活を 大切にしたいから 60.0 11.7 6.2 高齢で生むのはいやだから 37.6 41.5 22.8 20.6 育児の心理的・肉体的に耐えられないから 17.4 16.4 健康上の理由から 17.1 15.4 欲しいけれど できないから 14.9 13.1 夫の家事・育児への協力が得られないから 夫が望まないから 9.5 8.3 一番末の子が夫の定年退職までに成人してほしいから 9.2 9.2 そ の 他 7.9 9.1 大学以上 高校 資料出所:国立社会保障・人口問題研究所「第 13 回出生動向基本調査」(平成 17 年) 9 (8) 無業の大卒女性 ① 就業希望状況 ~労働市場へ参入の可能性をもつ潜在的有業者 現在は仕事をしていない女性無業者であっても、就業を希望している者は各年齢階級 に一定程度存在している。女性の有業者と現在は無業者ではあるが就業を希望している 就業希望者の合計が各年齢階級の人口に占める割合(以下、「潜在的有業率」という。) を示す曲線は、大学・大学院卒業者も高校・旧制中卒業者もともに有業率が描く曲線を 大きく上方にシフトさせたものになっており、労働市場に参入する可能性のある層とし て期待される(図 14、本文 69 ページ)。 図 14 学歴、年齢階級別女性の潜在的有業率 (%) (女性大学・大学院卒) (女性高校・旧制中卒) (%) 100.0 100.0 94.6 90.0 98.1 90.0 86.4 92.2 80.0 84.8 86.9 85.8 92.5 87.1 90.0 86.5 88.7 88.2 83.3 81.7 82.7 80.0 83.5 69.4 70.0 73.4 70.4 68.5 60.0 70.0 73.1 76.9 75.2 75.4 72.3 71.9 65.2 66.7 60.0 60.7 62.2 61.8 48.8 50.0 71.6 65.8 53.1 50.0 40.0 40.0 42.2 41.4 30.0 30.0 20.0 20.0 10.0 10.0 潜在的有業率 有業率 潜在的有業率 0.0 有業率 0.0 20-24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 (歳) 15-19 60-64 20-24 25-29 30-34 35-39 資料出所:総務省統計局「就業構造基本調査」(平成 19 年) (注) 年齢階級別の「潜在的有業率」は次の式により算出した。 有業者数(年齢階級別)+無業者のうち就業希望者数(年齢階級別) 15 歳以上人口(年齢階級別) 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64(歳) ×100 ② 非求職理由、非就業希望理由 ~育児のために就業から遠ざかっている大卒女性 就業を希望しながら求職活動をしていない者について、求職活動をしていない理由を みると、女性は「育児や通学などのために仕事が続けられそうにない」とする者の割合 が最も高く、高校・旧制中卒業者で 23.0%、大学・大学院卒業者は更に高く 44.2%とな っている。これに対し、男性で「育児や通学などのために仕事が続けられそうにない」 とする者は大学・大学院卒業者で 0.1%、高校・旧制中卒業者で 0.2%と特に低い値とな っており、育児や通学のために求職活動を行えない女性の多いこと、特に大学・大学院 卒業者の女性ではその傾向が強いことがうかがえる。 また、就業を希望していない者(25~44 歳)について、仕事をしたいと思っていない 理由をみても、女性は「育児のため」とする者(大学・大学院卒 66.4%、高校・旧制中 卒 53.4%)が過半数を占め、また、「家事(育児・介護・看護以外)のため」とする者 (大学・大学院卒 11.1%、高校・旧制中卒 13.2%)が約 1 割存在している。大学・大学 院卒女性は「育児のため」とする者の割合が高校・旧制中卒業者に比べ 13%ポイント高く、 全体の約 3 分の2という高い割合となっている(図 15、16、本文 73 ページ)。 10 図 15 性、学歴、求職活動を実施していない理由別非求職者の割合 0% 10% 女性大学・大学院卒 女性高校・旧制中卒 30% 2.1 50% 60% 70% 4.7 80% 18.2 4.8 11.7 23. 0 10.8 7.5 14.0 1.2 23.0 10.4 8.2 3.1 17.3 2.0 男性高校・旧制中卒 100% 11.8 15.8 2.8 男性大学・大学院卒 90% 1.6 6.3 6.6 40% 44. 2 6.1 3.8 2.6 20% 25.9 6.8 9.5 14.2 13.8 7.2 0.1 2.7 23.6 3.6 15.0 10.7 0.2 探したが見つからなかった 知識・能力に自信がない 高齢のため 家族の介護・看護のため 学校以外で進学や資格取得などの勉強をしている 1.8 希望する仕事がありそうにない 病気・けがのため 育児や通学などのため仕事が続けられそうにない 急いで仕事につく必要がない その他 資料出所:総務省統計局「就業構造基本調査」(平成 19 年) 図表 16 性、学歴、仕事をしたいと思っていない理由別非就業希望者の割合(25~44 歳) 0% 10% 20% 30% 女性大学・大学院卒 40% 50% 60% 70% 66 . 4 5 3. 4 13.2 2.3 0.5 男性大学・大学院卒 5.7 32.5 0.5 1.5 1.5 16.5 0.6 0.3 0.9 0.2 0.6 5.2 100% 10. 6 0.4 1.8 0..0 1..2 0.7 1.2 9.9 0.0 3. 9 0.0 6. 3 11.6 0.0 0.2 0. 8 2.1 20.6 16. 0 0.8 48.8 男性高校・旧制中卒 90% 11.1 1. 3 女性高校・旧制中卒 80% 4.4 26.5 14.8 0.0 1. 9 0.7 育児のため 家事(育児・介護・看護以外)のため 病気・けがのため 学校以外で進学や資格取得などの勉強をしている 仕事をする自信がない 特に理由はない 家族の介護・看護のため 通学のため 高齢のため ボランティア活動に従事している その他 資料出所:総務省統計局「就業構造基本調査」(平成 19 年) (9) まとめ 大卒女性の有業者の増加の中で、女子学生の専攻分野の多様化や、就業分野の拡がりも見 られる。現在、40 歳以上の大卒女性有業者の約 4 割が教員として働いているが、国公立に勤 務する女性教員は、育児休業制度が「育児休業等に関する法律」により法制化された平成 3 年より 16 年も前から、「義務教育諸学校等の女子教育職員及び医療施設、社会福祉施設等の 看護婦、保母等の育児休業に関する法律」により育児休業を取得することができるなど、家 庭と育児を両立するための環境整備が昭和 50 年代からなされていたことは、中高年期まで継 続就業している女性の中に教員が多いことと無縁ではないであろう。現在の大卒女性の就職 先は多様化しており、その継続就業を促進するためには、教育現場のみならず様々な職場に おいて職業と家庭の両立のための環境整備が図られなければならない。 一般の労働者に適用される「育児休業等に関する法律」により全労働者に育児休業の権利 が認められたのは平成 7 年度である。現在、女性の育児休業取得率は 9 割近くに達している が、その一方で、第 1 子出産を機に離職する女性の割合は 7 割前後と変わっていない。つま り、7 割は育児休業を取得せずにやめているという実態にある。この状況を改善するためには、 育児休業制度があるということだけでなく、これをだれもが真に使えるものとすること、そ して、育児休業を終えた後も仕事と子育てを両立し続けていくための環境整備が必要である。 11 今後ますます増加する大卒女性に着目するとき、育児休業を取得し、復職してもなお職業 キャリアを発展させていく見通しが立てられる、ということは、特に大卒女性に強く見られ る能力発揮意欲の実現と家族形成の二者択一状況を解消する上で必要不可欠の条件であると 思われる。このためには、復職後の子育て期に多様で柔軟な働き方を選べるようにすること が必要であるとともに、男性を含めた基幹的労働力の働き方そのものの見直しが重要である。 その条件整備に向けたひとつのきっかけとして期待されるのは、男性の育児休業取得率の向 上である。男性の育児休業取得率の向上は、男性の育児参加を進め、女性の子育て負担や家 事負担の軽減に資するのみならず、企業の基幹的労働者の働き方の見直しを迫るきっかけと なりうるという観点からも、重要な意味を持つものといえよう。 仕事と生活の調和の実現に向けた取組は企業にとってコストがかかる、という事業主の声 もあるが、特定非営利活動法人ジャパン・ウィメンズ・イノベイティブ・ネットワーク(NPO 法人 J-Win)が会員企業(約 90 社、主として大企業)の女性労働者に実施したアンケート調 査(「働く女性の WORK&LIFE 調査」)の結果では、子どもがいる女性のうち、子どもがいる こと、育児を経験したことにより、「効率的な働き方ができるようになった」と回答(複数 回答)する者は 70%、「視野が広がった」とする者は 56%、という結果がでているなど、子 育ては仕事面での時間的制約が増加するものの、効率的な働き方や仕事をする上でも役に立 ち人間的成長の実現にもつながるということがわかる。このことは、家族的責任を果たしつ つ働き続けることは、職業キャリアにプラスの影響をもたらしうるということを示しており、 男女に関わらず仕事と生活の調和を実現することが企業にとっても有益な結果を直接的に生 み出す可能性を持つものであることを示唆するものといえよう。 仕事と生活の調和に関しては、平成 19 年 12 月、政労使による「仕事と生活の調和推進官 民トップ会議」において、「仕事と生活の調和憲章」及び「仕事と生活の調和推進のための 行動指針」が決定された。憲章では、国民的な取組の大きな方向性や関係者が果たすべき役 割が、行動指針には、企業や働く者の効果的な取組、国や地方公共団体の施策の方針が示さ れ、第 1 子出産前後の女性の就業継続率等 14 の数値目標が設定されている。わが国の経済社 会の持続的発展のためにも、本憲章及び指針にもとづき、国民的な取組が図られ、関係者の 主体的な行動がより一層推進されることが期待される。 12