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Title 女子の急迫尿失禁に対する膀胱外括約筋電気刺激装置に よる治療

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Title 女子の急迫尿失禁に対する膀胱外括約筋電気刺激装置に よる治療
Title
女子の急迫尿失禁に対する膀胱外括約筋電気刺激装置に
よる治療経験 ペッサリー型刺激電極を有する国産電気刺
激装置について
Author(s)
中新井, 邦夫; 板谷, 宏彬; 越知, 憲治
Citation
泌尿器科紀要 (1971), 17(5): 339-346
Issue Date
URL
1971-05
http://hdl.handle.net/2433/121259
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
339
泌 尿紀 要17巻5号
1971年5月
女子 の急迫尿 失禁 に対す る膀胱外括約筋
電気 刺激装 置に よる治療経験
ペ ッサ リー型 刺 激 電 極 を有 す る 国 産 電 気 刺 激 装 置 に つ い て
大 阪大学医学部泌尿器 科学教室(主 任=園 田 孝夫教授)
中
TREATMENT
新
井
邦
夫
板
谷
宏
彬
越
知
憲
治
OF FEMALE
STIMULATOR
STRESS
WITH
Kunio NAKAARAI,Hiroaki
INCONTINENCE
PESSARY
BY ELECTRIC
ELECTRODE
ITATANIand Kenji OCHI
From the Department of Urology, Medical School, Osaka University
(Director : Prof. T. Sonoda, M. D.)
A small size electric stimulator with bipolar electrode of pessary type and new type of
electric circuit was reported. This apparatus is an electric stimulator of external vesical
sphincter and acts for twenty-four hours continuously by a nine volt battery. This stimulator
is applied to female patients suffering from stress incontinence due to flaccid external vesical
sphincter.
A case of stress incontinence with flaccid external vesical sphincter was treated by this
stimulator and the result was satisfactory.
Discussions were made on stimulating effects to pelvic muscles, effective stimulating period
and indication of electric stimulation.
尿 失 禁 を 訴 え る 女 性 に つ い て,骨
盤 底 の筋 肉
群 の 電 気 刺 激 が 尿 失 禁 の 治 療 に 用 い ら れ,し
ば
激 装 置 の 電 極 部 分 と し て,ペ
る こ と は,ま
ッ サ リー を 利 用 す
っ た くす ぐれ た 着 想 で あ っ て,こ
しば 好 結 果 が 得 られ る こ と が 報 告 さ れ て い る
れ に よ っ て,適
(Caldwelleta1.,1965;AlexanderandRo-
極 に よる尿 失 禁 の治 療 の可 能 性 が 開 か れ た もの
wan,1966,1968;HopkinsonandLightwood,
と い う こ と が で き る.
1967;AlexanderetaL,1970;Harrisonand
Paterson,1970).こ
の 電 極 の 装 着 法 と し て は,体
内 へ の埋 め込 み電
門 に 挿 入 す る法
(HopkinsonandLightwood,1967)お
よび膣
簡 便 で あ っ て,尿
ど が あ る.操
作 が
道 に も っ と も 近 い 位 置 か ら刺
激 を 送 る と い う 点 で は,ペ
ッ サ リー 型 電 極 が も
っ と も す ぐ れ て い る も の と 考 え ら れ る.電
Rowan(1968)の
ペ ヅ サ リー 電 極 に な ら い,回
路 部 分 に 新 た に くふ う を 加 え,安
き,安
価に 入手 で
全 に 使 用 で き る 装 置 を 試 作 し,実
際 に使
用 し て 効 果 の あ る こ とを 確 か め た の で 報 告 す
る.
内 に ペ ッ サ リt-一
一型 電 極 を 挿 入 す る 方 法(AlexanderandRowan,1968)な
外電
わ れ わ れ は 電 極 部 分 と し て はAlexanderand
の 電 気 刺 激 の 目的 の た め
極(Caldwelletal.,1965),肛
切 な 症 例 を 選 択 す れ ば,体
気 刺
装
置
本 装 置は 本 体 部 お よび電 極 部 に よ って 構 成 さ れ る.
本体 部 は 名刺 箱 大 の ケー ス に収 容 され て お り,電 極接
続 コネ クタ ー.出 力 レベ ル 調整 器,パ
ワ ース イ ッ チが
340
中新 井 ・ほ か:女 子 急迫 尿失 禁 ・膀 胱 外 括 約 筋電 気 刺 激
万3
Trt7r2
Tr4
。Outρut
OutPut
乙θ レeL
Fu5e
∴
Fig.1Electriccircuitoftheelectricstilnulator.Thiselectriccircuitiscontainedina
smallsizecase.Electrodeconnector,outputlevelcontrollerandpowerswitchare
putontheoutsideofthecase.Tr1-Tr3arefreerunmultivibrator.Frequency20
HZ.Pulsedurationlmsec.OutputpowerisrecievedbyTr4andoutputpower
ischangeablefromOvolttogvoltbyoutputlevelcontroller.
外 部 に 出 て お り,外
路 をFig.1に
か ら コ ン トロ ー ル で き る,こ
示 すTrl∼Tr3が
ブ レ ー タ で あ り,く
数,パ
りか え し1秒
間20サ
ル ス デ ュ レ ー シ ョ ン1msecで
こ の 出 力 をTr4で
受 け,出
ボ ル トか ら9ボ
の回
/msec
非 安 定 マル チ バ イ
到
イ クル の 周波
トー
Fre920Hz
…一
レ
発 振 し て い る.
力 レ ベ ル 調 整 器 に よ り0
ル トま で 変 化 す る こ と が で き る.ま
た
な ん らか の影 響 で 過 大 電 流 が流 れ た 場 合 の 保護 装置 と
し て,5mAfuseが
部 はFig.2に
m/m)の
出 力 回 路 に 挿 入 さ れ て い る.電
示 す よ う に,中
る.電
Fig.3Stimulatingwave-form.
型 ペ ッ サ リ ー(size67.5
中 心 部 ゴ ム 膜 を は ず し,リ
ン グ部 分 に 約120.
の 角 度 で 銀 板 を 取 り付 け た 。 銀 板 か ら の 線 は リ ン グ 内
部 を 通 り,出
↓
極
譲乳
難 撚
力 コ ネ ク タ ー ジ ャ ッ ク へ と接 続 さ れ て い
極 間 出 力 波 形 はFig.3に
ジ:碧 郷yi'
示 す 波 形 と な る.
装 置 全 体 の 外 観 はFig.4の
よ うで あ る.患
者は本
〆
隔
ノ."i・`,
.帆'
・
琢
.
轡
\
協
,7
7
病'
i額
駄
/
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、
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、
・
…/
、
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の
豊
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颪
、
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μ'耀
,'
、… べ
\毛
\
/'t蛍
「Lt・
.'「
「L,x、
礁 …
、
Fig.4ExternalaspectofstimulatingapFig.2Pessarytypeelectrode.
paratus.Apackofcigarettesison
therightside.
卜.
中 新 井 ・ほ か=女 子 急 迫 尿 失禁 ・膀 胱 外 括 約 筋 電 気刺 激
体 部 分 を肩 か らつ るす か,ま た は 着衣 の ポ ケ ッ トに 入
341
検 査成 績 二血 液,血 液 化学,肝 機 能,尿 お よび尿 沈
れ て使 用 す る こ とが で きる.本 装 置 は,現 在 で は,日
渣 所 見 では,そ れ ぞ れ異 常 を認 め な い
本 光電 株 式 会 社 大 阪 支店 か ら入手 す る こ とが で きる.
影 では 造 影 剤 の 排 泄 良好 で,上 部 尿 路 に と くに 異 常 所
症
排泄 性 腎 孟 撮
例
コ は ド
ドノ
窯伽 磁
36才 の女 子,会 社 員
篇
霧
ち
主 訴:急 迫 尿 失禁
既 往 歴=20才
の と き虫 垂 切 除 術 を 受 け た,26才
才 の とき出 産,第1回
と29
タ
の 出産 に つ い て は 異 常 な し.第
鋤
2回 の 出産 は と くに難 産 では な か った が,一 卵 性 双 生
!ヲ
児 で あ った 。 この 出 産後 に腎 孟 腎 炎 に 罹患 し,難 治 で
あ った とい う.29才 の とぎ卵 管 結 紮 術 を 受 け て い る.
現 病 歴:29才
の分 娩 後 か ら,階 段 の 昇 降 時,咳 蹴 時
お よび走 行 時 な どに か な りの量 の 尿 が もれ る のに 気づ
鷺
葉
い た.尿 意 に は と くに異 常 は な い が,尿 意 を 自覚 す る
、"勾
とす ぐに 尿 が もれ は じめ,2時
裁
紗
下着 が ぐっ し ょ りぬ れ る.最 近 は年 来 ひ どい脱 肛 に悩
・
髪
み,と くに 冬期 は 疹 痛 と 出血 が ひ どい.1968年
盛摂
繊嚇
間 も排 尿 を こ ら え る と
以 来,
急 迫 尿 失禁}こ対 して 某 国 立 病 院 泌 尿器 科 で 治療 を 受 け
てい た が著 効 な く,1970年9月1日
当科 を 受 診 し た.
現症:体 格 中 等 度 の 女 子,胸 腹 部 に理 学 的 に 異 常 な
く,腎 臓 は 左 右 と も触 れず,圧 痛 も ない.肛 門 の 緊張
性 は い ち じ る し く弱 く,意 識 的収 縮 もは な は だ 弱 い.
ぎ
・4
と くに神 経 学 的 異 常 を 認 め な い,下 肢 の 知 覚,運 動 お
まび反 射 に 異 常 を認 め ない.
Fig.6Retrogradecystograrn,upright
position.
「/'「
雛
・犠 務
ク
霧 勲
%簸
罪灘
.攣
難 璽犠
膨
霧
鷺
ド
灘
鋳
,
・ 讃 鷲 β
霧
魂
ヨほ
繍6勧
雑'髭'影
濠 魏.磁
簸.
を
をな
・
繋
Fig.5Excretorypyelogram.
Fig.7Voidingcystourethrograrn.
342
中新 井 ・ほ か:女 子急 迫 尿 失 禁 ・膀 胱 外括 約 筋 電 気 刺 激
見 を 認 め な い(Fig.5),逆
は,膀 胱 内容320ccで
行性 膀 胱 撮 影 で は,膀 胱 底
最 小尿 意 を 訴 え,こ
の と きの
部 の著 しい 下 降 を認 め る,膀 胱 底部 の この 下 降 は 蓄 尿
膀 胱 内圧 は12mmHgで
状 態(Fig.6)で
最 大 尿 意 を 訴 え,こ の と きの 膀 胱 内 圧 は20mmHgで
排尿 時(Fig.7)と
ほ ぼ 同程 度 の 下 降
あ った 、膀 胱 内 容600ccで
状 態 と な って い る,蓄 尿状 態 お よび 排 尿時 と も膀 胱 尿
あ った.こ の 最 大 尿 意 の とき に排 尿 を こ こ ろみ させ た
管逆 流 現 象 は 認 め られ な か っ た.膀 胱 内圧 検 査成 績 で
とき の最 高 意 識 圧 は38mmHgで
撒_一
塾」自_」 乙四己___
閏 闘n-t_UN..'る
免rユ 此一_
α5㎜ ■
㎜
臨■醒買■脚 嘱鑓■即
あ った.膀 胱 内圧 検
一 一 鶴■
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㎜
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■ 闘MnN●
齢脚
●
■幅 凪.・
■一
一
鯛鳳 ♂閥瞳8げ
馴■
一■
閥一____一
一 鳩6-e
一■層一___
Fig.8Cystometrogram
FDV:firstdesireofvoiding320cc,12mmHg
MDV:rnaximurndesireofvoiding600cc,201nmHg
38mmHgbyabdominalpressure
査 成 績 は やや 低 感 受 性 膀 胱 の傾 向に あ った(Fig.8).
筋 電 図 検査 成 績 で は,下 肢 にっ い ては 前 脛骨 筋,腓
腹 筋 と もに,と
くに 異 常 を 認 め な い.尿 道 横 紋筋 につ
た.就 寝 時 は 電 気刺 激 装 置 を 使 用 せ ず,昼 間 の み使 用
す る こ と とし た と ころ1個 の電 池 で2日 間 装 置 の使 用
が 宙 能 で あ る こ とが わ か った.ペ
ッサ リー電極 を 装着
い て経 膣 的 に 検 査 した 成 績 で は,膀 胱 充 満 時 に は ス パ
した ま まで,本 体部 分 のみ を 取 りは ず し,そ の まま入
イ ク発 射 頻 度 の反 射 的 増 加 が,わ ず か に 認 め られ る が,
浴 が 可 能 で あ り,入 浴 後 ふ た た び 連 続使 用 し て支 障 が
そ の頻 度 は,い ち じ る し く少 な い.排 尿 中 断 運 動時 に
なか った.電 極 装着 後12日 目に,い
は,電 気 的静 止 状 態 に あ り,こ の患 者 で は 随 意 的 な排
去 り経 過 を観 察 した.こ の と き,患 者 は年 来 悩 ん でい
尿 の中 断 が 不 能 であ る こ とが わ か る.
た 脱 肛 が 治 癒 して い る こ とに 気 が つ い た.使 用 中止 後
治 療 経 過:上 記 の検 査 成 績 に も とづ き,膀 胱 外括 約
った ん 電極 を取 り
7日 間 は,ひ きつ づ き急 迫 尿 失 禁 を 認 め る こ とな く経
筋 の収 縮 性 の 回 復 の 目的 で,上 述 の電 気 刺 激 装 置 を装
過 し てい た が,8日
着 した.子 宮腔 部 を ペ ッサ リーの 円 内に 嵌 入 す る よ う
失 禁 が認 め られ る よ うに な り,日 時 の経 過 と と もに,
に し て電 極 を 腹 側 に 向け,尿 道 と膀 胱頸 部 が 二 つ の 電
ふ た た び 急 迫 尿 失 禁 の 程 度 が 強 くな るに 至 った.使 用
極 の間 に く る よ うに し て装 着 し,装 置 の本 体 は 肩 か ら
中止 後 の2週 間 目に ふ た た び電 気 刺 激 装 置 を 装 着 す る
つ るす よ うに し た.患 者 は 刺 激 電 圧 の 最大 値9ボ ル ト
こと と した,
以上 で下 腹 部 の 軽度 の痛 み と ピ リピ リす る よ うな 感 覚
な い し10日 目 ごろ か ら走 る ときに
電 気 刺 激 装 置 使 用 後 の 検査 成 績=電 極 装 置 後 の骨盤
を訴 え たが9ボ ル ト以下 の電 圧 で は まっ た く苦 痛 を 訴
単純 撮 影像 はFig.9の
え る ことは な か っ た.日 常 の刺 激 電 圧 を2ボ ル トと定
尿 を試 み た場 合,い ち じ る しい 膀 胱 底部 の下 降 を 認 め
め て使 用 す る こ と とし た.こ の 日常 の使 用 電 圧 の決 定
るに もか かわ らず,排
は,ま った く試 み に 決 定 し た も の であ るが,こ の患 者
しか し電気 刺 激 を 断 てぽ 直 ち に 排 尿 が 可 能 であ った
に っ い て は この電 圧 で じゅ うぶ ん であ っ た,電 気 刺 激
(Fig.11).膀
装 置 を装 着 した 直 後 か ら急 迫 尿失i禁は 認 め られ な くな
に よ って 確 か め た.こ の 目的 の た め に は,16号
っ た.9階
ー ン カ テー テ ル の バ ル ー ン の直 下 に 極 間 距 離5mmの
ま での 階 段 の 昇 降 に も失 禁 を 認 めず,咳 漱
よ うで あ る.電
気 刺 激 中 に排
尿 が 不 能 で あ っ た(斑g.10).
胱頸 部 よ り尿 道 全 体 の 運 動 状態 を筋 電 図
の バル
な どの さい の失 禁 も認 め られ な くな った.試 み に,全
電 極 を つ け た 双極 表 面 電 極 を作 成 し管 内的 に 膀 胱頸 部
力 で 両 足 の跳 躍 運 動 を お こな った と ころ,跳 躍 運 動 の
か ら尿 道 の 筋 運 動 を 筋電 図に 記 録 した.膀 胱 頸 部 よ り
3回 目 ぐら い で,軽
尿道 末 端 まで の 部 分 につ い て 記 録 した 筋 電 図(Fig.
く下 着 が ぬれ る のを 自覚 し た.刺
激 電圧 を5ボ ル トに して跳 躍 運動 を お こな う と,跳 躍
12)で は,そ れ ぞ れ の 部 分 で,よ
の4回
縮 状 態 が観 察 され た.と
目 ぐ らいに や は り失 禁 の あ る こ とを 自覚 した.
く刺 激 に 対 応 した収
くに尿 道 遠 位 部 に お け る収縮
刺 激 電 圧 を2ボ ル トに し て 日常 す べ て の家 事 を お こな
状態 は,経 膣 的 に 記 録 の で き る尿 道 横 紋 筋 の 筋 電 図 の
っ た と ころ,ま
生 理 的 な膀 胱 充満 時 の筋 電 図 に 類 似 した 状 態 とな っ て
った く 急迫 尿失 禁 は 認 め られ な か っ
343
中新 井 ・ほ か:女 子 急 迫 尿 失 禁 ・膀 胱 外 括 約 筋 電 気 刺 激
・身 ∫
4〃
・拶
メ/劣
げ
ノ
/
〆
ヂち
鞠
ン
講
繊/・
・・磁
搬
、磁 轍
捻..κ
・
・
姦護垢
霧
Fig.9
Plainfilrnwhenpessaryelectrode
Fig。11Voidingwasseenimmediatleyafter
wasinserted.
interruptionofstimulation.
い た.
考
(1)電
按
気 刺 激 装 置 の骨 盤 底 の 筋 肉群 に お よぼ す 効
果 につ い て
会 陰部 の経 皮 的 な 電 気刺 激 で も肛 門 お よび会 陰 部 の
筋 肉 が 収 縮 す る こ とが 確 か め られ て い る(Vincent,
1968).泌
尿 生 殖 器 隔膜 に電 極 を 置 い た 動物 実験 で は,
じ ゅ うぶ ん な尿 道 内圧 の上 昇が 電 気 刺 激 の 結果 獲 得 さ
れ る(AlexanderandRowan,1966).恥
骨後 部 か ら
は い っ て,骨 盤 底 部 に電 極 を埋 没 す る方 法 で は,電 気
刺 激 の 結果,膀 胱 頸 部 お よび骨 盤 底 部 が 上 昇 し,肛 門
が 緊縮 す る こ とが 観 察 さ れ て い る(Caldwelleta1。,
1968).ペ
ッサ リー型 電極 を 用 い る方 法 で は,一
対の
電 極 を 腹 側 に 向け る場 合 に もっ と も効 果 が あ っ て,刺
激 中会 陰部 の筋 肉群 の 収 縮 と 肛 門 の 緊 縮 が 認 め られ
る.さ ら に刺 激 中 に 膀 胱 鏡 的 に 膀 胱頸 部 の収 縮 が 認 め
られ て い る(Alexandereta1.,1970),電
極を腹側に
向 け る場 合 の 効 果 につ い てAユexanderら(1970)は
pubococcygeusmuscleが
も っ と も強 く刺激 され,さ
らに 付 近 の 陰 部神 経 が刺 激 され る こ とに よ り会 陰部 の
Fig.10Novoidingwasseenduringstimu1ation,thoughmarkeddescendingof
thebladderbasewasseen.
筋 肉,肛 門 お よび 尿道 近 位 部 が 収 縮 す る の で あ ろ うと
述 べ てい る.わ れ わ れ の症 例 で は,電 気 刺 激 中 の筋 電
図検 査 で,膀 胱 頸 部 よ り尿 道遠 位 部 まで に 一 様 な収 縮
344
中新 井 ・ほ か;女 子 急 迫 尿 失 禁 ・膀 胱 外括 約 筋 電 気 刺 激
leOpv
1■
●c。
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uユ鼠し
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C:Middleportionoftheurethra,distalurethraandmostdistalurethra.
Fig.12Electromyogramofbladderneckanduretl、ra:recordingbyintracanalicular
bipolarelectrode.
A:beforestimulation.B,C:duringstimulation.
薪師
345
中 新 井 ・ほ か:女 子 急 迫 尿 失 禁 ・膀 胱 外 括 約 筋 電 気 刺 激
が 認 め られ て い る.さ らに 肛 門 の 緊 縮 が 認 め られ る.
この よ うな骨 盤 底 の筋 肉群 に 対 す る総 合 作用 の結 果 が
いない
埋 め込 み 電 極 に よ る電 気 刺 激 をお こな うた め の患 者
年 来 続 い た 脱 肛 の 治癒 と も 結 び つ く もの と 考 え られ
の選 択 につ い て,Caldwe11ら(1968)は,(1)大
る。
な解 剖 学 的 な 異 常 の な い も の,(2)以
以 上 の 結 果 か ら ペ ッサ リー 型 電 極 を 用 い る 場 合 で
も,電 気 刺 激 の結 果 は 膀 胱 頸 部 か ら尿 道 全体 に お よん
た手 術(例 え ば,MarshallMarchetti法
dridge法)な
りし た急 迫 尿 失 禁 を 有 す る患 者,(4)基
盤底 の 筋 肉 群 全体 に お よぶ もの と 考 え られ る.そ
し
理 解 で き る患 者,な
て,こ
の 効 果 を 期 待 し て 電 気 刺 激 装 置 を 使 用 す る場
Paterson(1970)は,あ
合,と
くに 女 子 では,手 術 に よ って 体 内 に電 極 を埋 め
Caldwe11(1967)と
っぎ
本的な原理を
どを 挙 げ て い る.Harrisonand
らか じ め 試 験 的 刺 激 とし て
同 じ く会 陰部 に 針 電 極 を 刺 入 し て
電 気 刺 激 を お こな い,そ の 効 果 を確 か め た の ち に ペ ッ
この電 気 刺 激 が 他 の筋 肉群 にお よぼ す 影 響 につ い て
は,ペ ッサ リー 型電 極 の場 合 は 閉 鎖 神 経 支 配領 域 の筋
肉の収 縮 を ひ き起 こす こ とが ない と報 告 され て い るが
(Alexandereta1.,1970),わ
また はA1-
どが 禁 忌 で な か っ た も の,(3)は
で収 縮 性 の 効 果 を お よぼ す も ので あ り,そ の効 果 は 骨
込む 必 要 は な い よ うに 考 え る.
き
前 に お こな われ
れ わ れ の症 例 で は,電
極 を正 し く腹 側 に 向け ず,横 方 向 に 傾 け た 場合,そ
の
サ リー電 極 を装 着 して い る.そ の結 果,正 常 の 膀 胱 内
圧 曲 線 を示 し,こ の 試 験 刺 激 で会 陰 部 の筋 肉の 強 力 な
収 縮 が 認め られ る もの が よ りよい 結 果 を 示 し た とし る
して い る.さ らに 急 迫 尿失 禁 に対 す る標 準 的 な 手 術 で
少 な く とも75%の 治 癒 が期 待 で き る のに 対 し,電 気 刺
側 の大 腿 内 面 に ひ きつ る よ うな感 覚 を 訴 え た 、Cald-
激 の場 合は,装 置 を 継 続 し て使 用 す る必 要 が あ り,使
we11ら(1968)は
腿や足
用 を 中止 して 治 癒 を 期 待 で き る可 能 性 が 非 常 に 少 ない
指 に 異和 感 を 訴 え る 場 合 が あ る こ とを し るし て い る
か ら,手 術 的 治 療 が 原則 的 治 療 で あ っ て,電 気 刺 激 装
が,ペ ッサ リー電 極 の場 合 に は この よ うな 事 実は ない
置 は 手 術が 失 敗 に 終 っ た場 合,あ るい は 手 術 が禁 忌 で
(Alexandereta1.,1970;HarrisonandPaterson,
1970).
あ る場 合 に 適 応 で あ る と述 べ て い る。
(2)電
埋 め 込 み 電 極 の 場 合 に,下
わ れ わ れ は 電 気 刺 激 装置 を使 用 す る 目的 をつ ぎの よ
気 刺 激装 置 の装 着 期 間 に つ い て
うに考 えて い る.膀 胱 外括 約 筋 群 は,正 常状 態 では,膀
わ れ わ れ は 装 置使 用 後12日 目に い ち ど装 置 の使 用 を
中止 した が,そ の後7日 間 は 急 迫 尿 失 禁 を 見 る ことな
く経 過 した.埋 め 込 み 電 極 を 用 い たCaldwellら
告(/968)で
の報
も電 気 刺 激 中 止 後 し ば ら くは急 迫 尿 失 禁
を見 な くな る症 例 が あ る こ とが 述 べ られ て あ り,31例
中わ ず か!例 で はあ るが,中 止 後8カ 月 にわ た りまっ
た く急 迫 尿失 禁 を認 め な くな っ た症 例 が 報 告 され て い
る.Alexanderら
の 報 告(1970)で
を得 た症 例が2例(18例
中2例)記
も 同様 な 好 結 果
録 され てい る.こ
の よ うな 点 か らは,電 気 刺 激 装置 は,単 な る膀 胱 外 括
約 筋 の 電気 刺 激 装 置 で あ る 以上 に,後 に 述 べ る よ うな
意 味 で の 陰部 神 経 の 不 完 全 損 傷 に対 し て治 療 的 に働 く
場 合 が あ る もの と考 え られ る.こ の よ うな 事 実 か ら,
ペ ッサ リー型 電 極 は,い っ た ん装 着 した ら永 久 に 装 着
胱 に 尿 が充 満 す る につ れ て,そ の 収 縮活 動 が増 加 し,
排 尿 中あ るい は 膀 胱 が空 虚 な 状態 で は弛 緩 状 態 に あ る
(中新 井 ・ほ か,1969)こ
の 膀 胱 外括 約 筋 の 反 射 的
収 縮 が 不 完 全 な 場 合は 急 迫 尿 失 禁 が 起 こ りやす い 状 態
であ っ て,こ の 状態 は筋 電 図 検 査 で 知 る こ とが で き る
が,電 気 刺 激 装 置 は この状 態 に 用 い て,膀 胱 外 括 約 筋
群 の生 理 的 な 運 動性 の欠 如 を 補 うこ とを 目的 と して い
る.そ の た め に 電気 刺 激 装 置使 用 の 適応 の決 定 に は 膀
胱 外 括 約 筋 の 筋 電 図検 査 を お こな う ことが 望 ま しい と
考 え る.そ し て 陰部 神 経 損 傷 あ る い は膀 胱 外括 約 筋 の
萎 縮 な どの所 見 のあ る場 合 が 適応 に な る も の と考 え ら
れ る.こ の よ うな治 療 上 の 原 理 か ら考 え て,こ の よ う
な場 舎 は,電 気 刺 激 装 置使 用 中 が 治療 効 果 を得 て い る
状 態 で あ っ て,治 療 を 中 止 し た の ち に急 迫 尿失 禁 が 永
す るの で は な くて,と き どき と りは ず して 経 過 を観 察
続 的 に 治 癒 で ぎ るか ど うか とい う問 題は,そ の よ うな
す る こ とが必 要 な もの と考 え られ る.
症 例 を どの よ うに して 選 択 で きる か,あ るい は そ の 病
わ れわ れ は 医 師 が 電極 の着 脱 を お こな って い る が,
HarrisonandPaterson(1970)は,患
者 自身 で ペ ッ
サ リー型 電 極 の 着脱 が で き る よ うに 指 導 す る こ とが で
き る と して,そ の 目的 のた め に はHodgepessaryが
ringtypeよ
(3)電
りす ぐれ て い る と述 べ てい る.
気 刺 激装 置 使 用 の適 応 に つ い て
態 は どの よ うな もの か な どにつ い て さ らに 詳 細 な 神 経
学 的 な 分析 が 必 要 とな る もの と思 わ れ,ま た 別 の 新 た
な 課題 に 属す る.
Alexanderら(1970)は
電 気 刺 激 は,骨
盤底の筋
肉 に電 気 的に ひ ぎお こ され る収 縮 が,膀 胱 壁 の 収 縮 に
反 射 的 に抑 制 的 に 働 くこ とに よ り,神 経 因性 膀 胱 の 場
電気 刺 激 装 置 を どの よ うな症 例 に 対 し て 使 用す べ き
合 の抑 制 不 能 の 利 尿 筋収 縮 を抑 制 し て失 禁 を 改 善 し う
か とい う適 応 の決 定 に つ い て は,ま だ 明 ら かに され て
る と述 べ てい る.こ の点 に つ い て は,わ れ わ れ は 同意 で
346
中 新 井 ・ほ か:女 子 急 迫 尿 失 禁 ・膀 胱 外 括 約 筋 電 気 刺 激
きな い 成 績 を経 験 して い る.46才 の胸 髄 のneurolemmomaの
し た.
摘 除 術 後 で,自 動 性 膀 胱(反 射 性 膀 胱)の 状
態 に あ る患 者 に 対 して ペ ッサ リー
型 電 極 に よる電 気 刺
激 装 置 を用 い た が,こ の患 者 の反 射 的 排尿 を抑 制 す る
(本論 交 の要 旨は1971年2月20日,第55回
科 学 会 関 西地 方 会 に お いて 口演 発 表 した.)
参
こ とは で き なか った.こ の症 例 で は 膀 胱容 量70ccな
い し100ccで
内 容60cc程
抑 制 不 能 の反 射 的 排 尿 が 見 られ るが,
この事 実 か ら,こ
献
Surg.,53:1053,1966.
1:728,1968.
3)Alexander,S.,Rowan,D.,Millar,W.
排 尿 に 対 し て,こ の排 尿を 抑 制 で きる ほ ど強 力 な もの
andScott,R.:Brit.」.Uro1.,42:184,
で は な い よ うに 思わ れ る,
結
文
2)Alexander,S.andRowan,D.:Lancet,
の電 気 刺 激 装 置 に よる 尿 の 禁 制
は,神 経 因性 膀 胱機 能 障 害 の うち,抑 制不 能 の反 射 的
考
ユ)Alexander,S.andRowan,D.=BritJ.
度 の と きの 尿道 横 絞 筋 の 筋電 図 では,ほ
ぼ 正 常 頻 度 の スパ イ ク発射 が認 め られ て い た.
日本 泌 尿器
1970.
語
4)Caldwe11,K.P.S.,Flack,F.C.and
Broad,A.F..Lancet,1:846,1965.
女 子 の 急 迫 尿失 禁 の 治療 に使 用 す る 目的 で ペ
5)Caldwe11,K.P.S.:AnnalsoftheRoyal
ヅサ リー型 電 極 を 有 し,電 気 刺 激 の 発生 回路 に
Co11egeofSurgeonsofEngland,41:447,
新 しい くふ うを 加 え た膀 胱 外括 約 筋 電 気 刺 激 装
1967.
置 を 国 産 化 した.こ の 装置 は9ボ ル トの トラソ
6)Caldwe11,K.P.S.,Cook,P.」.,Flack,F.
ジ ス タ ラ ジオ 用 の 電 池 ユ個 で24時 間 の連 続 使 用
C.,James,E.D。andEng,C.:J.Obstet.
が 可 能 で あ り,着 衣 の ポ ケ ッ トに入 れ て使 用 す
る こ とが で き る.
Gynaec。Brit.Cwlth.,75:777,1968。
7)Harrison,N.W.andPaterson,P.J.:
Brit.J.Urol.,42:481,1970.
この装 置 を,膀 胱 外 括約 筋 の 反射 的収 縮 運 動
が 不 全 麻 痺 状 態 に あ る36才 の急 迫 尿 失 禁 を訴 え
8)Hopkinson,B.R.andLightwood,R.:
Brit.J.Surg.,54:802,1967.
る婦 人 に つ い て使 用 し,著 効 を得 た.
この 電 気 刺 激 装 置 に よ る刺 激 が骨 盤 底 の筋 肉
に お よぼ す 影 響,こ の 装置 の使 用期 間 お よび電
気 刺 激 装 置 使 用 が 適応 とな る場 合 に つ い て考 察
9)中
新 井 邦 夫
・竹 内 正 文
高 橋 香 司:泌
・桜 井
島
・栗 田
孝
尿 紀 要,15:611,1969.
(1971年1月16日
受 付)
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