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第9期 レポート - 一般社団法人日本能率協会

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第9期 レポート - 一般社団法人日本能率協会
日本CTOフォーラム
第 9 期報告書(合本)
第1分科会報告書
第2分科会報告書
第 3 分科会報告書
日本CTOフォーラム/一般社団法人日本能率協会
以下、報告書収録内容の一部を再構成し掲示しているものです。
第9期の活動概要(全体)
2014 年 6 月 5 日(木)東京プリンスホテル
第1回全体会合
第 1 分科会第 1 会合
・全体方針の決定および分科会の編成
第 2 分科会第 1 会合
・分科会研究方針の策定
第 3 分科会第 1 会合
・リーダー、ファシリテータの選任
第 1 分科会第 2 会合
2014 年
8月
6 日(水)
日本アイ・ビー・エム‐豊洲
第 2 分科会第 2 会合
2014 年
8月
7 日(木)
東芝‐川崎
第 3 分科会第 2 会合
2014 年
7 月 31 日(木)
第 1 分科会第 3 会合
2014 年
9 月 18・19 日(木/金)
第 2 分科会第 3 会合
2014 年 10 月
第 3 分科会第 3 会合
2014 年 10 月 21 日(木)
オリンパス‐新宿
第 1 分科会第 4 会合
2014 年 12 月
LIXIL‐常滑
第 2 分科会第 4 会合
2014 年 12 月 17 日(水)
機械振興会館‐芝公園
第 3 分科会第 4 会合
2014 年 12 月
3 日(木)
日東電工‐豊橋
第 1 分科会第 5 会合
2015 年
2月
6 日(金)
機械振興会館‐芝公園
第 2 分科会第 5 会合
2015 年
2 月 12 日(木)
南平台公邸‐渋谷
第 3 分科会第 5 会合
2015 年
1 月 27 日(火)
東京コンファレンスセンター‐品川
第2回全体会合
2015 年
3 月 11 日(水)東京プリンスホテル
7 日(火)
4 日(木)
大日本印刷・五反田
日本アイ・ビー・エム‐天城
日本能率協会‐芝公園
【特別企画】
○第 9 期海外視察「トルコミッション」
2014 年 10 月 29 日(水)~11 月 3 日(月)
○第 9 期新春企画「特別講演会」 2015 年 1 月 27 日(水)13:00~14:30
P&G イノベーション合同会社
コネクト
アンド
ディベロップ
研究開発本部プリンシパル
マネジャー
工学博士
東京コンファレンスセンター
サイエンティスト
J.ラーダーキリシャナン
ナーヤ
氏
「P&G におけるイノベーション戦略とその実践~『Connect+Develop』の卓越性」
○コマツ-粟津工場、こまつの杜とわくわくコマツ館見学
2015 年 2 月 11 日(水)
以上
日本CTOフォーラム
第 9 期 第 1 分科会報告書
「未来洞察(10 年後の社会・生活・価値観をどう
見透すか)研究とその活用」
2015 年 3 月 11 日
日本CTOフォーラム 第 9 期 第 1 分科会
第 9 期日本 CTO フォーラム
第 1 分科会報告書 目次
1. 目次
2. メンバー一覧
3. はじめに
4. 活動概要
5. 第 1 分科会報告
Ⅰ.今期テーマの背景、問題意識
Ⅱ.未来予測・洞察が必要な背景とその目的
Ⅲ.未来予測・洞察を行う場合、どのくらい先の時点を対象にするか
Ⅳ.未来予測・洞察をどういう体制で、誰が主体で実施するのか
Ⅴ.未来予測・洞察をどのように行うか
Ⅵ.当たりにくい未来予測・洞察をどう位置づけ、推進するか
Ⅶ.未来予測・洞察をどう事業戦略・技術戦略に落とし込んでゆくか
Ⅷ.未来予測・洞察活動とそれを戦略に結び付けるための成功のポイント
はじめに
第 1 分科会リーダー
日本アイ・ビー・エム株式会社
久世
和資
第一分科会は、
「未来洞察(10 年後の社会・生活・価値観をどう見透すか)研究とその活用」というテ
ーマで議論を重ねてきた。未来洞察の目的、視点、成果物、時間軸、体制、手法、企業戦略との関係、
R&D の役割といった観点で、全メンバーから各社の取り組みをできるだけ具体的な事例を交えて紹介し
ていただいた。
「未来洞察」という名称ではないにしても、各社とも様々な方法で将来の動向を検討およ
び議論し、その結果を研究開発や企業戦略に活用している。紹介いただいた取り組みや事例には、新し
い考え方やユニークな手法が多々あり、大変、参考になった。
未来洞察は、社会軸、市場軸、製品軸、商品軸、技術軸など複数の視点を組み合わせて実施されるケ
ースが多い。このような未来洞察や将来洞察を導入する背景のひとつに、新規製品や新規事業の創出が、
従来どおりの仕組みやしかけだけでは、なかなか、うまくいかないことが挙げられる。多種多様な視点
や価値観から、社会や生活の将来動向を、掘り下げて議論し見透すことにより、研究開発や商品開発に
新機軸を導入する一つのきっかけとなり、最終的に革新的なものを生み出すことにつながる。
未来洞察の結果を企業戦略や事業に、効果的に活用するには、まず、企業のトップが、そのオーナー
シップをとる体制が重要である。例えば、研究開発が主体の体制では、折角、良い未来洞察結果が出て
きても、会社のトップのオーナーシップがなかったり、事業部の参画がなかったりすると、企業戦略や
経営には、十分に反映されないことがある。逆に、企業のトップが全社の取り組みとしてリードした場
合、戦略や経営に効果的に活用されているようである。オーナーシップと実行責任は別で、オーナーシ
ップは、できるだけ会社のトップ、実行責任は事業部でも研究開発でもよい。
手法については、各社ともいろいろと工夫されている。活動メンバーについては、同一部門のみで実
施すると、新たな視点や新鮮なアイデアが出にくい傾向がある。異なる部門、例えば事業部、営業部、
研究開発の混合などがよいと考えられる。また、世代や性別や国籍なども、できるだけ組み合わせを多
様化することが望ましい。メンバーが単一部門の場合でも、活動の中に、他部門や社外の意見を取り入
れたり、議論したりすることにより、多様なメンバーでの活動と同様の効果が出せるケースもある。若
手メンバーを中心にして、そこに若干名の経験豊かな世代も(リーダーの役割ではなく)入れた方が、
うまく行く事例なども紹介された。どちらにしても、メンバーの人選は、重要である。
時間軸については、その企業の産業や製品によって、かなり異なるという議論があった。確かに産業
や製品の枠で考えた場合は、時間軸が異なってくるかもしれない。しかし、個人的な意見であるが、業
界や製品における既存の時間軸の概念や常識を大胆に打ち破ることこそが、未来洞察の本質であるよう
に思う。全く新しい展開軸や考え方を企業戦略や経営に持ち込むためには、時間軸さえも既存事業にし
ばられない方がよいはずである。今回のサブテーマに、
「社会」
「生活」
「価値観」とあるのは、産業や現
業のスコープにとらわれない、社会や個人の未来洞察という意味も含まれる。
未来洞察の結果を、企業戦略や企業経営に活用することは、重要であるが、最初から、そのことを意
識しすぎたり、未来洞察の活動中に、後工程のことを考慮したりすることは、新鮮な洞察や大胆な予測
の妨げとなる。未来洞察は、戦略や経営に影響を及ぼすものであるが、決して十分条件ではない。戦略
や経営は、もちろん、多種多様の情報や各レベルの事業判断などを元に決定されていく。したがって、
未来洞察は、戦略や経営に影響を与えるひとつの材料だという割り切りも必要で、そのことが、現業や
短期的な事業計画を離れた新鮮かつ大胆な議論につながる。つまり、トップのオーナーシップは重要で
あるにしても、戦略や経営につなぎ活用する明示的なプロセスや仕組みをあえて用意せず、戦略策定や
企業経営とは別レベルの活動として位置づけるのも一案である。
未来洞察の活動は、人材育成にもつながると思われる。現業を離れて、日常、考えたこともない視点
で、社会や生活の未来動向を考えたり議論したりすることにより、柔軟な思考能力が身につく。また、
メンバーが多様であれば、異なる業務、異なる世代、異なる国などの話題を聞くことにより、知識が増
えるとともに、そのことが刺激となり、現業にも良い影響を与えることがある。日常業務とは、全く異
なるメンバーおよび視点で、集中的に深く考えたり、議論したりすることは、特に、日本の文化におい
ては重要である。このような活動を、若いうちから経験した人材が、将来、柔軟かつ大胆に、ものごと
をとらえ、グローバルに活躍できるようになるはずである。もちろん、未来洞察への参画だけで、強力
な人材が育つわけではないが、こういった活動が、本人の気づきや刺激になる。未来洞察の活動は、企
業風土にも良い影響がある。
未来洞察の手法にベストなものはなく、とにかく、はじめてみることが肝心である。活動を通して、
手法や仕組みは改良していけばよいのではないだろうか。その結果、企業戦略や企業経営に新しい視点
を持ち込む一つの材料になったり、人材育成につながったり、組織風土の醸成につながると考える。
最後に、合宿も含めて5回の会議で熱心に発表ならびに議論して頂いたメンバーの皆様、メンバーの
取り組みや内容を客観的な視点で整理し議論をリード頂いた富士通総研の安部さん、分科会の運営を支
えて頂いた JMA の肥本さん、上野さん、福島さんには、大変、感謝いたします。
第 9 期日本 CTO フォーラム
第 1 分科会
第 1 会合
活動概要
日時:2014 年 6 月 5 日(木)16:00-17:45
会場:東京プリンスホテル
・分科会テーマ、研究方針の策定
・リーダー、ファシリテータの選任
・分科会テーマに関する各社の課題意識の紹介
第 2 会合
日時:2014 年
8月
6 日(水)
16:00-18:15
会場:日本アイ・ビー・エム‐東京ラボラトリー・豊洲
・日本アイ・ビー・エム、東京ラボラトリー見学/プレゼンテーション
・IBM 社、積水化学工業の 2 社の考え方と取組事例の発表と討議
第 3 会合
日時:2014 年
9 月 18・19 日(木/金)
18 日 15:00-19 日 13:00
会場:日本アイ・ビー・エム‐天城ホームステッド・伊豆
・千代田化工建設、清水建設、日本軽金属、日立化成、宇部興産、
井村屋グループ、サッポロホールディングスの 7 社の考え方と
取組事例の発表と討議
第 4 会合
日時:2014 年 12 月
4 日(木)
14:30-17:00
会場:LIXIL‐LIXIL 榎戸工場・常滑ほか
・INAX ライブミュージアムの見学
・LIXIL 榎戸工場見学
・LIXIL、安川電機、パナソニックの 3 社の考え方と取組事例の
発表と討議
第 5 会合
日時:2015 年
2月
6 日(金)
15:00-17:50
会場:機械振興会館‐芝公園
・SCREEN ホールディングス、コマツ、日本精工の 3 社の考え方
と取組事例の発表と討議
・今期研究のまとめに関する全体討議
以上
第 9 期日本CTOフォーラム
第一分科会報告
「未来洞察(10 年後の社会・生活・価値観をどう見通すか)研究とその活用」
~企業における戦略立案や研究開発のテーマ設定に、未来予測・洞察をどう活かすか~
第一分科会ファシリテータ
(株)富士通総研
安部忠彦
Ⅰ.今期テーマの背景、問題意識
本年度の第一分科会のテーマは、
「未来洞察(10 年後の社会・生活・価値観をどう見通すか)
研究とその活用」~企業における戦略立案や研究開発のテーマ設定に、未来予測・洞察をどう活かすか
~である。
このテーマが選ばれた背景には、以下のような近年の経営環境の変化がある。すなわち従来は市場が
成長し、特に B2B の分野では顧客の指示も明確で、既存事業への投資を維持すれば、自ら未来をあまり
読まなくてもある程度の投資見返りがあった。しかし現状では、経営環境が目まぐるしく変化し、自ら
できるだけ早く経営環境変化を読んだ経営をしないと、また顧客に対しても先取りした提案をしないと、
顧客に新たな適切な価値を適切な時期に提供できなくなってきているという状況認識、危機感があるた
めと思われる。
もちろん未来予測・洞察は当たりにくく万能とは言えず、社内でもその効果に対し半信半疑という雰
囲気がある。しかしだからと言って未来予測・洞察を行わないで、行き当たりばったりで経営をするこ
とは現状では許されない。当たらない中でも工夫しつつ、経営の指針を見出す手段にしたいという強い
思いがある。
今期の分科会活動を始めるにあたり参加された各社の問題意識・課題をまとめたところ、未来予測・
洞察の方法、未来予測・洞察を戦略に落とし込むやり方や工夫、各社が未来予測・洞察している未来の
実態そのものなどへの関心が高かった。このため分科会の進め方として、未来予測・洞察が必要になっ
た背景や目的、どの程度先の未来を対象として読むか、どのような体制で誰が主体で実施するか、どの
ような手法で未来予測・洞察を行うか、その結果をどう戦略に落とし込むかなどに関して、各社に自社
の事例を報告していただき、互いに学び気づきあうことを目指すことになった。この結果、時間的な制
約はあったものの、分科会に参加されたほぼ全社にご報告いただくことができた。貴重な各社の実態を
ご報告いただいた皆様に感謝申し上げるとともに、合宿の場をご提供いただき多くのご支援をいただい
た当分科会リーダーの日本アイ・ビー・エムの久世執行役に深く御礼申し上げます。
本報告書は、各社の皆様からご報告頂いた内容と、引き続き行った議論の内容をまとめさせていただ
いたものである。(なお本報告書では、未来予測と未来洞察という用語を用いているが、未来予測とは、
すでに公表されている未来に関する資料などを単に取りまとめたもの、未来洞察とは、未来予測された
ものを基に、自社の状況などを勘案して、自社にとってあり得る、またはありたい未来を検討した結果
というニュアンスで用いている。)
Ⅱ.未来予測・洞察が必要な背景とその目的
Ⅱ―1.未来予測・洞察が必要になった背景
最初に、近年、各社の経営において未来予測・洞察が必要になっている背景についてのご報告・議論
の内容をまとめた。
第一に、社会や市場、また特に IT 関連の技術面など経営を取り巻く環境変化が激しくなり、経営リス
クが格段に高まっている。市場も成熟・縮小し競争環境も厳しくなっている。こうした中で、従来は見ら
れたとされる「試行錯誤的、行き当たりばったり式」の経営では成功確率が低くなっている。事業リス
クが高い中で、未来の事業候補が将来本当に事業化できる確実性、合理性があるかどうかを見極めるた
め、経営層に対し、未来事業の有望性の判断に資するできるだけ説得力ある未来予測・洞察を示す必要
がある。
第二に、特に B2B 企業においては、従来は顧客企業が需要やニーズを自社に明示し導いてくれていた
が、顧客企業自身もそれを語れなくなる例が増え、自社が自分で未来を読み、同時に自社自身で、あり
たい未来を明確にする必要性が高まっている。ある B2B 型の素材企業は、これを「顧客から聞くマーケ
テイング」から「自ら見出すマーケテイング」と呼び、自らの判断で未知の領域に出るために未来予測・
洞察が今まで以上に必要になったとしている。
特に素材産業の場合には、素材の開発には長時間かかるので、顧客から言われ、顧客のニーズが判明
してから研究開発を開始したのではとても間に合わない。自ら未来を読み、顧客に先取りして対処する
必要が高まってきた。従来の、顧客にニーズを聞いて、それを基にして 3 年間の中期計画を作り、そう
した中期計画の継ぎ合わせで 10 年先に到達しようとするのでは、真の 10 年先の方向を読み間違う恐れ
がある。この会社では、こうした未来予測・洞察を全社員がやり始めている。
第三に、従来のようには、技術単独では競争に勝てなくなった状況がある。勝つためには社会変化や
顧客の価値変化等多くの要素を全社レベルで時間軸で一体的に把握し、社内の事業や製品、技術の開発
体制とを連携させる必要が高まってきている。すなわちロードマップ経営が重要になり、その全社共通
の情報基盤としての未来予測・洞察が不可欠になっている。
第四に、単品だけの販売だけでなく、システムとして販売する必要が高まり、システム全体の背景に
ある社会の変化等を知る必要性が高まっている。住宅設備企業の場合、従来は商品開発の観点で商品一
つひとつを考えていたが、そのやり方では限界がきており、住生活全体システムが未来にどう変化する
かを考える必要が高まっているという。
また、上記の未来予測・洞察の重要性が高まった背景とはやや違う視点だが、B2C の食品企業の場合
では、マクロ的な社会全体の未来予測・洞察も行うが、視点としてはそうした一般的な未来予測・洞察
以上に、目の前の消費者・顧客の徹底的な理解、顧客の価値観の変化把握が重要になっているという指
摘があった。顧客は何を価値と感じ、それに対して自社は何ができるかを考えることがこれまで以上に
重要になってきているという。ただし食品企業でも包装素材向け技術開発等、対応により長い時間を要
する件では、他産業同様未来予測・洞察が必要なものもあるとされる。
この食品企業と似た考えで、ある機械企業は、単なる機械を作って売るだけでは先がないという状況
を認識した上で、その対策として、未来予測・洞察も重要だが、顧客の現場に入り込んで顧客と一緒にな
って解決すべき問題を見つけ出して、問題を解決する技術を開発することが重要と指摘している。
ちなみに、2014 年 9 月から 10 月にかけて、日本能率協会「日本 CTO フォーラム事務局」と芝浦工業
大学・工学マネジメント研究科
田中秀穂研究室が実施した「CTO に期待される役割と望ましいキャリ
アパス」アンケート調査(本 CTO フォーラム参加各社を含めた日本企業各社を対象にした。回答は 77
社)で、企業が未来予測・洞察を行っている実情を尋ねた。結果は、下記の図1のように、
「全社共有の未
来予測を策定している」のは 31%、
「全社共有ではないが、部門内で未来予測を策定している」が 53%、
「全社共有、部門内共になし」が9%であった(「どちらともいえない」が 7%)。かなり多くの企業が未
来予測・洞察を策定されているが、全社共有は少ない状況にある。
ここで注目したいのは、回答内容が産業別に大きく異なり、例えば電機は 41%が全社共有を持つが、
食品系企業では 11%となっている等である。上記で、食品系企業が、未来予測・洞察は大事だが、それ
以上に目の前の顧客の価値観の在り方の把握が大事と言っておられることと対応したアンケート結果に
なっている。このことは、Ⅲ章において、産業毎に未来を読む時間軸が大きく異なることと相まって、
産業によって未来予測・洞察の位置づけは大きく異なり、各産業一律にみることはできないことを強く
示唆している。
図1
未来予測の有無
以下、省略。詳細は報告書(合本)をご参照ください。ご希望の際は事務局まで、電話または FAX にてお
申込みください。
(一冊 5000 円(税別、送料別、ただし残部僅少))
日本CTOフォーラム
第 9 期 第 2 分科会報告書
「R&D グローバル化の新潮流を探る
(トルコを中心に)」
2015 年 3 月 11 日
日本CTOフォーラム 第 9 期 第 2 分科会
第9期日本 CTO フォーラム
第 2 分科会報告書 目次
1. 目次
2. メンバー一覧
3. はじめに
4. 第 2 分科会報告
(1)分科会活動概要
(2)トルコの概要と視察のまとめ
Ⅰ.トルコの概要
Ⅱ.視察のまとめ
(3)日本 CTO フォーラムトルコミッション抄録
Ⅰ.ミッション参加者一覧
Ⅱ.ミッション行程表
Ⅲ.訪問記録抄録
はじめに
第 2 分科会リーダー/団長
株式会社東芝
常任顧問
須藤
亮
今期の第 2 分科会は、
「R&D グローバル化の新潮流を探る(トルコを中心に)」をテーマに掲げ、地勢
的にヨーロッパとアジアの両方にまたがり、東西文化・経済の交流面・接点に位置するトルコにスポッ
トを当てることにした。本分科会は、これまで、日本国内での情報交流や意見交換を活発に行うととも
に、現地での交流・実体験を重視してきた。今期も、事前にトルコの投資環境及び R&D 動向、ボスポラ
ス海峡横断鉄道プロジェクトなどのレクチャーを通してメンバーの課題意識を醸成し、10 月末に現地訪
問を行うことにした。
トルコは、面積 78 万 km2、人口 77 百万人の良質で豊富な人的資源を抱え、誰もが知る親日国である
と同時に、平均年齢が 30.4 歳と若く、毎年一百万人人口が増えている成長著しい国である。2002 年か
ら現与党公正発展党による安定過半数政権となっており、現在のエルドアン大統領の任期は 2019 年まで
であり、イスラム教の国唯一の NATO メンバーである。2013 年の GDP は世界 17 位で、建国 100 年と
なる 2023 年に 10 位以内がトルコ政府の目標となっている。進出日系企業は 2011 年から急増して 210
社に到達しており、従来の製造拠点に加え、販売拠点も増加している。
トルコを訪問するに当たり、どこを視察すべきか検討した結果、トルコにおけるイノベーション最新
事情や技術連携の可能性を探ることを目的とすることにし、進出日系企業(デンソートルコ、ホンダト
ルコ)と建設中のイズミット湾横断橋工事現場、そしてトルコを代表するアカデミーとしてイスタンブ
ー ル 工 科 大 学 と 同 キ ャ ン パ ス 内 に あ る 新 規 企 業 イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン セ ン タ ー で あ る ARI
TEKNOKENTO を訪問先として選定した。
昨年の春先から準備を進め、短期間ではあるが中身の濃い視察となるよう、予備知識を仕入れるため
に識者による事前レクチャーを実施したり、西岡コーディネータのご尽力で現地の協力サポートを日本
留学経験もある中東工科大学材料工学科アルジャン先生にお願いすることができた。そして 10 月 29 日
~11 月 3 日の本番では、事前準備から視察スケジュール策定の協力を依頼した HIS 担当者にも同行して
もらって、想定された渋滞の中を移動することができ、ほぼ予定通りのスケジュールをこなすことがで
きた。
トルコ訪問が初めての参加メンバーも多く、訪問先でのディスカッションは活発に行われ、トルコの
現状を肌で感じることにより、その歴史的経緯や国民性、政治・社会・経済情勢、日本とトルコとの技
術交流の在り方と将来展望、そのために克服すべき課題などについて理解を深めることができたと考え
ている。
今回の視察では当社とも繋がりが深いトルコの有力企業でもある Vestel 社のエルドアン CEO ともお
会いし、メンバーとともに交流の機会を得ることができたのも収穫であった。第 2 分科会及び訪土メン
バーの方々、訪問時にお世話になった方々、視察も含め活動全般にご尽力いただいた事務局の方々にこ
の場を借りて深くお礼を申し上げる次第である。
第 9 期日本 CTO フォーラム第 2 分科会報告
「R&D グローバル化の新潮流を探る(トルコを中心に)」
リーダー:
東芝
常任顧問
ファシリテータ:東京大学
須藤亮
先端科学技術研究センター特任教授
西岡潔
今年度の第 2 分科会のテーマは「R&D グローバル化の新潮流を探る(トルコを中心に)」であり、
具体的には成長著しいトルコに焦点を当て、トルコの投資環境及び R&D 動向に焦点を当て、事前にトル
コ経済・投資に関する専門家や同国の建国 70 周年に合わせて両国の友好のシンボルともいえるボスポラ
ス海峡横断トンネル工事に携わった日本企業の取組事例等も交えてレクチャーを受け、10 月末より 6 日
間にわたりトルコ訪問視察を行い、理解と考察を深めた。活動概要は以下のとおりである。
(1)分科会活動概要
① 第 1 会合
日時:2014 年 6 月 5 日(木)
場所:東京プリンスホテル
次第:・リーダー、ファシリテータの選任
・第 9 期のテーマ・海外視察についての問題意識
・トルコミションの実施基本案確認、討議
② 第 2 会合
日時:2014 年 8 月 7 日(木)
場所:東芝スマートコミュニティセンター会議室
次第:・トルコ共和国首相府投資促進機関(ISPAT)東京事務所長
関仁氏による「トルコの
投資環境及び R&D 動向」の講演
◇トルコの政治・経済状況や投資環境、研究開発の動向について、最新の統計デー
タや日本企業進出情報や日本企業の事業活動紹介の動画上映も交えて説明、解説
があった。トルコと中国両国関係動向から各種の投資インセンティブ制度、経済・
企業活動に関わる実像を理解するための視点で多岐にわたる質疑応答がなされた。
・トルコミションの企画検討・討議
③ 第 3 会合
日時:2014 年 10 月 7 日(火)
場所:日本能率協会会議室
次第:・大成建設㈱国際支店土木部長
今石尚氏による「ボスポラス海峡横断鉄道プロジェク
トについて」の講演
◇プロジェクトの背景や日本・トルコ政府間協定、同プロジェクトの概要について
技術や文化両面から説明・紹介いただいた。沈埋トンネルの方法にした理由やメ
リット等について質疑応答がなされた。
・トルコミッション実施に伴う確認・討議
◆トルコ視察の実施
期間:2014 年 10 月 29 日(水)~11 月 3 日(月)の 6 日間
参加者&行程:
本報告書の「日本 CTO フォーラムトルコミッション抄録」を参照ください。
参加メンバー:21 名(事務局 2 名、現地サポーター1 名含む)
④ 第 4 会合
日時:2014 年 12 月 17 日(水)
場所:機械振興会館会議室
次第:・トルコミッション振返りレビュー
・次期の研究テーマ、視察企画についての意見出し
⑤ 第 5 会合
日時:2015 年 2 月 12 日(木)
場所:南平台公邸
次第:・第 2 分科会活動総括、第 9 期第分科会報告書の確認。
・次期の研究テーマ案・視察候補先の検討を行った。
⑥ 日本 CTO フォーラム第 2 回全体会合
日時:2015 年 3 月 11 日(水)16:00~17:50
場所:東京プリンスホテル
次第:・第 2 回全体会合において、リーダーとファシリテータによる第 2 分科会の活動報告。
以上
(2)トルコの概要と視察のまとめ
Ⅰ.トルコの概要
1.トルコの現況について
(1)トルコの概要
人口は世界 18 位(7667 万人)であり、すでに大国の一員といえる。平均年齢が 30.4 歳(2013 年末)
と極めて若く、人口は毎年平均 100 万人ずつ増加している。EU 加盟国で一番人口が多いのはドイツで
8200 万人であり、トルコのこの大国さが今後の EU 加盟のネックになる可能性もある。
政治・宗教・外交面では、イスラム教徒が大半を占めるが、政教分離を憲法で規定しており、現実主
義的な国である。2002 年から AKP(公正発展党)が安定過半数政権である。今年の 8 月の選挙でエル
ドアン首相が大統領に選出され、任期である 2019 年までの長期安定政権が期待される。イスラム国家で
は唯一の NATO メンバーであり、次の G20 の議長国でもある。つまりは西側の一員である。シリア、イ
ラク、イランと国境が接しており、政治的に難しい環境にあるが、中立的立場を堅持している。
親日国であり、日本の高い技術力と経済力を信頼している。2012 年に行われた意識調査では「外国で
一番好きな国は日本」であり(2 位はドイツ)
、トルコでのビジネスは日本企業にとって好適である。今
回の調査期間中でも、その親日ぶりを実感することができた。
(2)経済概況
現在の GDP は世界 17 位であり 2010 年以降、一人当たり GDP も 1 万米ドルを超している。一人当た
り GDP が 1 万米ドル以上の国では、人口規模で米、ブラジル、ロシア、日本、独に次ぐ世界第 6 位であ
る。2013 年の GDP 成長率は 4%であり、今年の GDP 成長率も 3%程度の見込みである。
銀行貸出が足元 32%と伸びているが、多くのプロジェクトの発足や生産拠点の設立など、実需に応じ
た貸出が多い。一方、インフレ率が高く(2013 年も 7.4%)
、リラ安やエネルギー資源の輸入(トルコは
資源小国)などにより、今年のインフレ率は 9%程度が想定されている。自動車などの輸入も多く、経済
収支の赤字が一つの課題である。
(3)主要産業
基幹産業の筆頭は自動車である。ホンダ、トヨタなどセットメーカーは 15 社、生産台数 113 万台あり、
2023 年には 400 万台の生産を目標にしている。生産台数が 200 万台まで拡大すれば 2 次、3 次のサプラ
イチェーンのさらなる充実が期待される。トルコ生産車の 70%は輸出で、主要な向け先はヨーロッパ、
ロシアである。トルコ国内の販売台数は年間 90 万台だが、そのうち 60 万台は輸入車である。
家電は、アーチェリック、ベステル等の大手家電メーカーは欧州でも存在感がある。鉄鋼は、規模的
には欧州 2 位であるが、建設用の形鋼、棒鋼が主体であり、自動車用薄板や構造用厚板などの高級鋼材
の生産はこれからの課題である。一方、トルコの建設会社は世界的にみても巨大企業であり、日本企業
もトルコ企業と組んでロシアや中東などで工事を受注しているケースがある。繊維産業は伝統的に強く、
綿花(オーガニックコットン)の一大産地であり、欧州向け高級ブランドの生産基地の一つとなってい
る。
2.外資の進出について
(1)トルコの労働環境
トルコにおける正規の労働時間は週 45 時間であり、他国に比較して長い。1 日 9 時間×5 日間の操業
をベースに、状況によっては 7.5 時間×6 日間という操業も可能であり、7.5 時間で 3 シフト組むことも
可能である。時間外労働なしでこのシフトを実現できるのが大きなメリットと言われている。
製造業のトルコ進出に関しては、安い人件費を求めて進出するというよりはむしろ、労働力の質の高
さ、勤勉性を期待して、品質の高いものづくり、高付加価値を求めるケースが多い。日本以外で高い品
質水準の確保を期待できるのはトルコが一番との評価もある。
(2)外資企業の進出状況
日本国内の外資企業は 3,000 社と言われているが、2014 年 5 月にはトルコは 39,000 社程度あり、外
資系企業に対してオープンな国である。ドイツ企業 5,800 社、英国企業 2,700 社、米国 1,500 社、中国
企業 600 社、韓国企業 240 社程度である。売上上位 20 社の顔ぶれとしては、フォード、ルノー、フィ
アット、ユニリーバ、シーメンス、日本たばこなど。日本たばこは日本企業としては最大であり、シェ
ア 30%超と存在感がある。日本企業の進出は約 210 社であり、2010 年から進出が加速しつつある。
従来の日本企業の進出は自動車や自動車部品の製造拠点が中心であったが、最近では販売拠点や食品
等幅広い業種が進出。買収案件も増加しており、トルコのみならず周辺地域もカバーする拠点が増加。
(3)トルコの地政学的優位性
トルコは歴史的に欧州(とくにドイツ)との結びつきが強いが、地政学的に見て、欧州、ロシア、中
近東・北アフリカ、中央アジアの中心に位置している。トルコから 4 時間の飛行圏内に 15 億人、25 兆
ドル(日本の 5 倍以上)の市場を有しており、地政学上の要(かなめ)の国としての重要性が今後ます
ます高まっていくことが期待される。
例えば、トルコの大手家電が欧州で強いのも、この地の利の良さにある。中国から英仏独に輸出する
には船で5週間はかかるが、トルコからなら1週間前後であり、物流コストも3分の1程度である。さ
らに欧州連合(EU)と結んだ関税同盟により、家電にかかる関税はゼロであり、中国などアジア勢より
人件費は高いが、総合的な競争力は高い。
このようなトルコの地政学的優位性に着目して、欧米企業の間で地域管理拠点(地域ハブ機能)をト
ルコに設置する例が増加している。例えば、トルコからコカ・コーラは 94 ヶ国を、GE ヘルスケアやマ
イクロソフトは 80 ヶ国を管理する体制をすでに構築している。
以下、省略。詳細は報告書(合本)をご参照ください。ご希望の際は事務局まで、電話または FAX にてお
申込みください。
(一冊 5000 円(税別、送料別、ただし残部僅少))
日本CTOフォーラム
第 9 期 第 3 分科会報告書
「『技術+コトづくり』事業の創出と
R&D 部門の役割」
2015 年 3 月 11 日
日本CTOフォーラム 第 9 期 第3分科会
第 9 期日本 CTO フォーラム
第 3 分科会報告書 目次
1. 目次
2. メンバー一覧
3. はじめに
4. 活動概要
5. 第 3 分科会報告
1.技術とコトづくりの必要性
2.企業におけるイノベーション戦略部門の重要性
3.イノベーション戦略部門の組織設計
4.R&D 部門の役割
5.まとめ
6.分科会会合の意見交換と討議抄録
はじめに
第3分科会リーダー
オリンパス株式会社
窪田
明
第3分科会は、
「技術+コトづくり」がテーマである。経済成長と技術進歩によって高性能・高品質の
製品が市場にあふれる現代社会において、モノの所有だけでは満足が得られず、場(シーン)や行動を
経験・共有することによる充実感や感動を得たいという消費者意識が拡がっているように見える。
「コト
づくり」が取り上げられる背景には、こうした市場環境、顧客ニーズの変化があると考えられるが、こ
れを技術や事業創出、さらには R&D 部門の役割という本分科会のテーマと関連づけるには、参加メンバ
ーの問題意識もさまざまであることから、分科会では、メンバーからの事例紹介やファシリテーターの
元橋先生から提起された論点をもとに議論を行った。
R&D 部門にとって、まず求められる変化という点では、顧客価値の創造、提案というマーケティング
の視点が重要性を増すということである。ただし、マーケティング部門からのインプットに依存してい
ては、どうしても現在の事業収益に重点を置きがちになるので、中長期的視点でのイノベーションを考
えるには、R&D 部門が重要な役割を果たす必要がある。こうした期待に応えるためには、研究者・開発
者自らが、シーズ志向から脱して顧客の関心や社会情勢の変化に敏感になり、価値づくりを強く意識す
ることが必要である。既存製品の単純な延長線上としての性能向上、新機能追加ではない、顧客ニーズ
を先取りした価値提供が求められる。また、顧客価値実現のために必要となる技術も複雑化しているこ
とから、異分野技術の融合が求められる。さらには、ハードに閉じることなく、サービスと組み合わせ
たパッケージとして提案する発想が必要である。こうした取り組みは、個人の意識レベルにとどまらず、
課題設定、業務運営のメカニズムを組織体制、業務運営に取り入れていくことが重要と考えられる。
一方、R&D 部門においては、新たな技術シーズの仕込み不足に対する懸念も浮き彫りとなっている。
現在の事業は 20 年以上前に着手された R&D の成果であり、将来への新たな芽が育っていないのではな
いかといった懸念や、事業への貢献に力点を置くあまり、先進的な研究が手薄になっているのではない
かといった懸念である。一方、将来に向けた技術を仕込むにも、顧客ニーズが多様化するに伴って市場
が見えにくくなっており、技術の進むべき方向性がつかみにくくなっているという悩みもある。
こうした先行き不透明な状況においても、自社の競争力の源泉となっているコア技術を見定め、中長
期的な視点に立ってその優位性を維持することは重要な基本戦略として位置づけられるものと考える。
ただし、自社技術のみでは急速な市場変化に迅速に対応していくには不十分であり、外部組織と戦略的
なパートナーシップを構築することの重要性が高まっていると思われる。強みを持ったもの同士が連携
することによって市場での圧倒的優位を獲得する狙いであり、そのためにも自社のコア技術に磨きをか
けることが重要である。
外部連携の強化・拡充という点では、オープンイノベーションが関心を集めている。自社の強みを生
かしつつ、社外の力を積極的に取り込むことによって技術の間口を拡げるとともに、開発スピードを飛
躍的に高める手段として注目されているわけである。しかしながら、現時点においては、オープンイノ
ベーションの本格的な取り組みや成功事例はまだ限られており、自前主義が多く見受けられる。オープ
ンイノベーションの推進には、それを取り入れる目的や対象が明確であることが不可欠であり、トップ
の強い意志、コミットメントや社内の組織横断的な業務運営の仕組み、組織風土など、さまざまな要素
が噛み合うことが成功の鍵を握っている。オープンイノベーションの戦略的な活用方策については、今
後の継続的な検討課題と言えよう。
技術の急速な進歩と複雑化、モノに対する充足感とライフスタイルの多様化などを背景として、R&D
の進むべき道筋も一直線では描けなくなっている。高性能・高品質・低コストといった指標では単純に
測れるものではなく、新たな生活提案や新しいビジネスモデル構築・革新を考慮に入れた戦略的な取り
組みが R&D にも欠かせないものとなっている。分科会においては、関心事項は多岐にわたっているもの
の、R&D 部門の抱えている課題と取り組むべき戦略の方向性について、認識を深めることが出来たので
はないかと思う。
最後に、分科会の議論に熱心にご参画いただいたメンバーの皆様、施設見学をさせていただいた企業
の皆様、話題提供となるプレゼンを行っていただいた皆様に改めて感謝を申し上げたい。また、ご多忙
の中、資料を準備し多くの貴重な論点を投げかけて議論をリードしていただいた元橋先生、きめ細かく
分科会運営のお手伝いをいただいた肥本様、上野様はじめ日本能率協会の皆様には、重ねて御礼を申し
上げたい。
第 9 期日本 CTO フォーラム
第 3 分科会
第 1 会合
日時:2014 年 6 月 5 日(木)
活動概要
16:00-17:45
会場:東京プリンスホテル
・分科会テーマ、研究方法の策定
・リーダー、ファシリテータの選任
・分科会テーマに関する各社の問題意識の紹介
第 2 会合
日時:2014 年
7 月 31 日(木)
15:30-17:30
会場:大日本印刷‐五反田
・大日本印刷ショールーム見学と会社概要と取組紹介
・「製造業復活の条件‐『サイエンス経済』時代の競争力」元橋一之氏の講演
と意見交換
第 3 会合
日時:2014 年 10 月 21 日(木)
15:30-17:30
会場:オリンパス‐新宿
・オリンパス・テクノラボ見学
・オリンパスの考え方と取組事例についての発表と討議
・分科会テーマに関する論点提起と事例紹介、討議
第 4 会合
日時:2014 年 12 月
3 日(木)
会場:日東電工‐豊橋事業所
・日東電工
15:30-17:30
イノベーションセンター・豊橋
イノベーションセンター見学
・日東電工の考え方と取組事例の発表と討議
・コトづくりに関する論点整理と討議
第 5 会合
日時:2015 年
1 月 27 日(火)
15:00-17:30
会場:東京コンファレンスセンター‐品川
・旭化成、デュポン、富士通研究所
各社の考え方と取組事例の発表と討議
・今期研究のまとめに関する全体討議
以上
日本 CTO フォーラム第 3 分科会報告
「『技術+コトづくり』事業の創出と R&D 部門の役割」
第 3 分科会ファシリテータ
東京大学
元橋一之
1. 技術とコトづくりの必要性
韓国や中国といった近隣諸国の技術的キャッチアップによって製品市場の国際的な競争が激化してい
る。その結果としてプロダクトライフサイクルが短くなり、日本の製造業企業において、競争力のある
製品を開発してそれを世界に供給する従来型のビジネスモデルでは、高い利益率を確保することが困難
になった。また、一部のエレクトロニクス製品においては、日本企業がその製品競争力を完全に失い、
事業モデルの転換を余儀なくさせられている分野も存在する。
このようにこれまで日本の製造業企業が築き上げてきた「モノ中心モデル」がその優位性を失う中で、
注目されているのが顧客価値の最大化に着目して継続的なサービスの提供を行うことで対価を得る「顧
客価値創造モデル」である。この方式では、
「モノ」そのものの価値ではなく、ユーザーがモノを活用す
ることよって得られる価値に着目する。顧客にとって付加価値の高いソリューションを提供することで、
「モノ」自体の競争優位を確立するとともに、ソリューションを提供し続けることでサービス収入を得
ることが可能となる。
「コトづくり」とは、顧客において発生する価値を作り出すためのビジネスモデル
であるといえる。つまり、
「モノ」自体の機能や品質の向上を求めるのではなく、顧客に対する価値の提
供(Value Proposition)を最大化するための仕組みである「コトづくり」の重要性が高まっている。
ただし、
「コトづくり」は競争力がある「モノ」があって大きな付加価値が生まれるものである。顧客
との接点の始まりは「モノ」を提供することから生まれる。ビジネスモデルを起点として、モノは他社
製品を活用する方式も不可能ではないが、ビジネスモデルのみにおいて競合他社との間で持続的優位性
を保つことは難しい。知的財産やノウハウによって秘匿することが難しく、模倣されやすいからである。
このように、競争力がある製品を開発するためには技術マネジメントが重要である。社内の技術ベー
スを拡大し、オープンイノベーションによって必要な技術を取り込んでいくための司令塔が CTO の役割
であるといえるが、技術力のある製造業企業においても、その技術をベースとした「コトづくり」の重
要性が高まる中で、本分科会としては、「技術とコトづくり」を取り上げて議論を進めることとした。
2.企業におけるイノベーション戦略部門の重要性
最近の企業経営を取り巻く状況は、図 1 に示すように経済・社会の変化スピードが速くなり、将来に
対する不確実性が増大している。企業としてターゲットとすべき顧客ニーズが変化し、業界構造が大き
く変化することで、場合によっては 5 年くらいのスパンで見ても現状のビジネスがどうなるかわからな
いという業界も存在する。例えば、スマートフォンが浸透することで、従来型の携帯電話をベースとし
たビジネスは大きく縮小した。このトレンドはここ 5 年くらいの間に急速に進んだもので、安定的な事
業構造が続いていた業界においても、今後どうなるかわからないという不透明感が広がっている。
図1は一般消費者を顧客とする B2C 企業とそれらの企業に部品・材料・生産設備などを納入する B2B
企業のビジネス関係を図示したものである。B2C 企業は、市場の変化に合わせてダイナミックに供給先
を変更する必要に迫られる。従って、このネットワーク的な構造は、固定的、安定的なものではなく、
経済・社会情勢の変化に応じて変化していくこととなる。従って、B2B 企業としては、顧客企業を通じ
て、あるいは自社のほかのチャンネルを通じて、自社のビジネス領域に関係するビジネスがどのように
変化していくのかを先読みして、B2C 企業にとって、なくてはならないパートナー企業(エコシステム
におけるキーストーン)になるべく自社技術を磨く必要がある。一方で、B2C 企業は市場におけるドミ
ナントプレイヤーをめざし、キーストーンとなる B2B 企業にとってなくてはならない存在(エコシステ
ムにおけるキーストーン)をめざすことが重要である。
図1:ビジネスエコシステムの模式図
図1のビジネスネットワークにおけるキーストーンとしての立場を確保するためには、経済・社会環境
の変化に機敏に対応する経営スピードの向上とともに、企業として、ある程度先を見越した新事業や研
究開発に関する戦略を構築することが重要である。そのための中枢的な役割を担うのが、企業における
イノベーション戦略部門である。
以下、省略。詳細は報告書(合本)をご参照ください。ご希望の際は事務局まで、電話または FAX にてお
申込みください。
(一冊 5000 円(税別、送料別、ただし残部僅少))
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