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グッドプラクティス集(PDF形式:2526KB)

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グッドプラクティス集(PDF形式:2526KB)
平成 23 年度中小企業産学連携人材育成事業
「大学におけるグローバル人材育成のための指標調査」
大学におけるグローバル人材育成に関する
グッドプラクティス集
平成 24 年 3 月
<目次>
Ⅰ.掲載事例の見方.
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.1
Ⅱ.グッドプラクティスのポイント.
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.2
Ⅲ.グッドプラクティス.
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.7
神田外語大学 外国語学部.
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九州大学.
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国際教養大学.
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.19
国際基督教大学.
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.23
多摩大学 グローバルスタディーズ学部.
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東京工業大学.
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.32
豊橋技術科学大学.
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.36
明治大学 国際日本学部.
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.41
立教大学 経営学部.
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立命館アジア太平洋大学.
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.49
早稲田大学 国際教養学部.
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Ⅰ.掲載事例の見方
本グッドプラクティス集は、経済産業省委託事業「平成 23 年度中小企業産学連携人材育成事業(大
学におけるグローバル人材育成に係る指標調査)」の一環として、グローバル人材育成に関して積極
的に取組んでいる下表1掲載の 11 大学について、その取り組み概要をまとめたものである。
なお、本事業では、有識者による議論の結果、グローバル人材育成にあたり、
グローバル人材育成に関する大学全体の取り組み(基盤指標)
の推進に加え、
語学力・コミュニケーション力(要素Ⅰ)
主体性・積極性、チャレンジ精神・協調性・多様性、責任感・使命感(要素Ⅱ)
異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティ養成(要素Ⅲ)
に係る能力の養成のための制度・環境やプログラムの整備が重要である、との視点に基づいている。
(下表1)
表1
基盤指標・要素Ⅰ~Ⅲの内容(例)
要素
基盤指標
語学力・コミュニケーション力
(要素Ⅰ)
学生の主体性、チャレンジ精神、
協調性、責任感を涵養するための
プログラム(要素Ⅱ)
異文化に対する理解や自己のア
イデンティティを涵養するため
のプログラム(要素Ⅲ)
内容(例)
中長期計画等へのグローバル人材の記載状況
グローバル人材育成に関する指針(ポリシー)/アクションプラン/環境
整備等に係る目標値の策定状況
グローバル人材育成促進のための専門部署等の設置状況
英語(語学)クラスの充実度
語学スコアや留学経験の必須化
英語による授業の充実度
留学等を円滑にする外国大学との取り組み
実践的な語学力を伸ばすための取り組み
少人数教育の実施
対話型・参加型・課題解決型の学習の実施
企業と連携した学習実施
実社会に触れる取り組み
学生同士の交流・協働を促す仕組み
グローバル人材育成のための他大学との連携
異文化理解教育・国際社会理解・自国を知るための学習
異文化環境・多様性
異文化に関する経験学習の機会
なお、今回事業では、本グッドプラクティス集のほかに、国内の約 200 大学を対象にアンケート調査
を行い、基盤指標・要素Ⅰ~Ⅲに関する指標による取組実態について把握した。(結果の詳細は別途報
告書に記載)。
その結果の一部は、本書Ⅱ.グッドプラクティス中の、
【グローバル人材育成の取り組み概要】
「国内
他大学との比較」において紹介している。
1
Ⅱ.グッドプラクティスのポイント
ここでは、本グッドプラクティス集にて紹介している各大学の取り組みの中で、上記基盤指標、要素
Ⅰ~Ⅲごとに、特徴的なものを紹介する。
○基盤指標
(1)グローバル人材育成に関する指針等の作成
グローバル人材育成に関して先進的な取り組みを行っている大学では、各大学が定める指針等で、
国際化、グローバル化にかかる取り組みが定められているケースが見られる。
具体的には、
・ 大学・学部開学時から、国際化、グローバル化に関する理念を掲げ、人材育成を行っている[国
際教養大学、豊橋技術科学大学等]
・ 文部科学省プログラムの採択を契機に、グローバル人材育成を加速させている[九州大学]
・ 大学の国際化の流れの中で、中長期ビジョンを作成し、人材育成を行っている[東京工業大学]
といった類型が見られる。
なお、大学・学部の中には、大学の国際化を目指すにあたり、国際化の数値目標を定めている大学
も見られた(受入留学生割合 50%、学生の出身国・地域 50 カ国・地域以上、外国籍教員比率 50%)。
[立命館アジア太平洋大学]
○要素Ⅰ.語学力・コミュニケーション力
(1)英語(語学)クラスの充実度
グローバル人材育成において、英語に代表される語学力の養成は基本であり、多くの大学・学部に
おいて、特に1・2年次に、語学力・英語力向上に向けた取り組みが行われている。
具体的には、
・ 習熟度別学習[多摩大学グローバルスタディーズ学部、立命館アジア太平洋大学等]
・ 語学力向上に特化した特別な語学プログラムの提供[国際教養大学、国際基督教大学等]
・ 少人数グループによる英会話講座の提供[早稲田大学国際教養学部]
・ 語学習得のための施設の設置[神田外語大学等]
が挙げられる。
(2)語学スコアや留学経験の必須化
語学スコアの必須化については、語学講義のクラス分け、卒業要件等、目的は異なるが、一定の大
学において取り組まれている。
[早稲田大学国際教養学部等]
また海外留学についても、特に日本人学生を対象に、一定期間の海外留学が卒業のために必須とさ
れているケース[国際教養大学、早稲田大学国際教養学部等]が見られるほか、返済不要の奨学金の
給付[多摩大学グローバルスタディーズ学部]
、留学に際して経済的な支援を行うケース[九州大学等]
等も見られ、海外経験を通じた実践的な学びが重視されている。
2
(3)英語による授業の充実度
講義における英語の使用は、上記(1)記載の語学関連講義にとどまらず、専門科目等、語学以外
の科目についても見られた。
英語による講義の割合は大学・学部によって異なるが、日本に関するテーマを学ぶ科目を除くほぼ
すべての科目を英語で実施している事例[多摩大学グローバルスタディーズ学部]、卒業に必要な単位
全てを英語による講義で取得可能な事例(イングリッシュ・トラック)
[九州大学、明治大学国際日本
学部等]、また全ての科目を英語で実施している事例[国際教養大学]も見られた。
このように、グローバル人材育成の先進的な取り組みを行っている大学・学部では、英語そのもの
の位置付けも、従来までの大学教育とは異なる、という声が聞かれた。従来の大学教育では、「語学
としての英語力の習得(英語を学ぶ)」ことが目的とされていた。しかし、いくつかの大学では、英
語は「専門科目の受講のための道具」、
「留学の際のコミュニケーションのための道具」等、学びや実
践の手段として位置づけられており(英語で学ぶ)
、より実践を意識して、語学教育が行われている。
[早稲田大学国際教養学部、立教大学経営学部等]
○要素Ⅱ.主体性・積極性、チャレンジ精神・協調性・多様性、責任感・使命感
(1)少人数教育の実施/対話型・参加型・課題解決型の学習の実施
「主体性・積極性等を身につけるためには、発言等を通じて講義に積極的に参加することが重要で
ある」との考えの下、個々の学生が講義に参加しやすくする環境づくりとして、少人数教育を実施し
ている大学・学部が見られる。また、これらのケースの授業形態は、教員が学生に一方向で情報を教
授する講義形式のほか、学生と教員や学生同士が双方向で意見交換を行うグループワーク等、学生参
加型の形式を採用するケースも採用されている。
[国際基督教大学、立教大学経営学部等]
。
従来の大学教育においても、語学およびゼミ・演習の講義については少人数教育が実施されていた
が、ここではその他専門科目も含め、少人数で講義が行われている点が特徴的である。そのため、講
義を行う教室等の施設についても、少人数用の教室を多く設置する等の工夫がなされている[神田外
語大学、多摩大学グローバルスタディーズ学部等]
。
(2)実社会に触れる取り組み
企業と連携した学習実施について、多くの大学・学部で、インターンシップをはじめとする企業と
の連携に基づく取り組みが実施されている[神田外語大学、九州大学等]
。
これらの機会は、それまで学生自身が目を向けてこなかった企業・業界を知るとともに、大学で学
んでいる事柄が、社会の中でどのような意味を持つのか確認する意味を有する。
派遣先は、国外も含めた企業であることが多いが、工学系の大学では、海外の大学や研究機関へ派
遣するケースも見られる[東京工業大学、豊橋技術科学大学等]
。
3
○要素Ⅲ.異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティ
(1)異文化に関する経験学習の機会
異文化理解促進のための取り組みとして、学生寮において日本人学生と外国人留学生が共同生活を
行っているケースが見られた[国際教養大学、立命館アジア太平洋大学等]
。
学生寮では、1 年次は寮生活が義務付けられたうえで、日本人学生と外国人留学生を相部屋とする
等により、日本人学生と外国人留学生の交流を促進する仕組みが組み込まれている、また学生寮に居
住している学生を対象とした言語学習の時間を設定し、学生の語学力向上に資する取り組みとする等、
各大学において、単に生活を共にする以上の効果を挙げるための工夫が見られる。
(2)異文化理解教育・国際社会理解・自国を知るための学習
異文化理解の前提として、自国を知るために、日本に関連する科目を開設している大学も見られる。
その内容は、日本における企業倫理等、特定項目を深く掘り下げるものから、日本の政治・経済・歴
史等について幅広く教えるものまで様々であるが、グローバル人材育成に際して、海外に関する知識
は必要であるが、一方で学生たちの原点である日本に関する知識も必要である、との認識が背景にあ
る。[立教大学経営学部等]
4
なお、下表2では、各大学におけるグローバル人材育成のポイントについて、要素Ⅰ~Ⅲごとに整理している。
表2 各大学の取り組み要素・内容
大学名
神田外国語大学
九州大学
国際教養大学
グローバル人材育成のポイント
主体性・積極性、チャレンジ精神、
異文化に対する理解と
語学力・コミュニケーション能力
協調性・柔軟性、責任感・使命感
日本人としてのアイデンティティ
<少人数・双方向型の指導体制で実践的な語学力向 <実践力を高めるための国内・海外インターンシップ>
上>
・事前/事後学習を含め、1年間のインターンシップを
・独自のテスティング教材により語学力を図り、クラスを 実施。
編成。
・国内インターンシップは夏季休暇の1~4週間、海外
・1学年約800名の学生に対し、教員は約400名。
インターンシップは夏季休暇の1ヶ月間、企業に派遣。
・SALC、MULCという語学学習施設を設置しており、講 ・事後学習は、自身が行った実習内容に関するプレゼ
師や外国人留学生と接しながら、語学力を養成。
ンテーションを実施。
<英語トラックコースの開設等、英語力育成>
<国際的な環境づくり>
・英語授業のみで学位が取得できるコースの整備のほ
・ 1年を通じて、外国語能力や多文化理解を学び、キャリアアップを図るプロジェクト「日韓環海峡圏カレッジ」
か、技術英語、科学英語といった専門科目を英語で学
を実施。海外大学の講義受講や企業インターンシップ等を実施。
ぶためのプログラムの解説、外国人教員による専門教 ・「日韓環海峡圏カレッジ」において、異文化体験プログラムを実施。
育を実施。
<英語力の育成、英語での教育>
・全ての講義は英語で行われるため、入学直後に
EAP(English for Acadamic Purpose)で集中的訓練を実
施。
<1年次全寮制と海外留学義務>
・1年次は全学生が寮に入居し外国人留学生と共同生
活を実施。
・日本人学生は卒業までに1年間の海外留学が必須。
<少人数教育(グループワーク)>
・授業では4-5人のグループワークを多用。
<多様性を重視したグループ編成>
・グループワークでのグループは、通常の日本人学生、帰国子女の日本人学生、外国人留学生の混成となる
ように編成され、バックグラウンドの異なる人とのコミュニケイションと協働が必要。
国際基督教大学
<英語力の育成、英語での教育>
・学位授与は日英両語の能力を身につけることが要件
となっており、日本の教育制度で学んできた4月入学
生は「英語教育プログラム」(ELP: English Language
Program)を履修する。
多摩大学
グローバルスタディーズ学部
<英語による専門教育>
・春学期に開講される150科目中、約130科目を英語で <少人数教育>
開講。
・1講座11~20名程度の少人数による科目が主。
・学生の英語力は、習熟度別授業により養成。
東京工業大学
<学部・修士学生向け海外研究体験プログラム>
・研究プロジェクトを英語にて実施する、学部・修士向
けの短期留学プログラムおよびサマースクールプログ
<留学前の語学集中講座>
・留学を志望する学生には「英語塾」を開講し、語学力 ラムを実施。
<実務訓練の実施>
の向上を図る。
・企業等での長期実務実習を実施。派遣先は国内企
業、海外大学や研究所への派遣を実施。
5
表2 各大学の取り組み要素・内容(続き)
大学名
語学力・コミュニケーション能力
立教大学 経営学部
立命館アジア太平洋大学
早稲田大学 国際教養学部
異文化に対する理解と
日本人としてのアイデンティティ
<実務訓練の実施>
<インドネシアでの国際プログラムを実施>
・学部4年時と修士課程で実務訓練と呼ばれる2ヶ月の ・インドネシアのバンドン工科大学に日本人学生数十
職業訓練を実施している
名を毎年派遣。
豊橋技術科学大学
明治大学 国際日本学部
グローバル人材育成のポイント
主体性・積極性、チャレンジ精神、
協調性・柔軟性、責任感・使命感
<「英語で仕事ができる」人材をつくる徹底的な語学教
育>
・ネイティブスピーカーにより、平均的な大学の約4倍
に当たる英語講義を、1年次に実施。
<English Trackの創設>
・英語による講義の受講のみで学位が取得できる
English Trackを導入。
<2年次後半の海外留学制度>
・海外留学を行ったうえで4年間で卒業できるよう、多
様な留学コースを整備するとともに、1年次から重点的
に英語力を養成する。
<ビジネス倫理に関する授業で国際標準と日本の長所
<「リーダーシップ」と共に「フォロワーシップ」も学ぶプ
を学習>
ログラム>
・ビジネス倫理を学ぶGood Business Initiativeプログラ
・グループワークを通じ、あくまで「ピア」な関係の中で
ムで、企業の社会的責任、ビジネスにおける正義等に
のリーダーシップ、フォロワーシップも学ぶ
関する日本の伝統的な商業倫理を学ぶ。
<民間実業現場との連携>
<徹底した言語運用能力の育成>
・企業と連携したキャリア教育プログラムも実施してお
<国際教育寮での「学び」と「気づき」>
・プレイスメントテストによる習熟度別クラス編成
り、企業と連携して、「職業意識とキャリア開発」・「業界
・英語(国内学生)24単位必修(スタンダードトラック)、
・ 国際教育寮において、単に住むだけでなく、言語学
分析」を20数社の協力の下、開講している。
12単位必修(TOEFL500点以上の学生) ※卒業単位
習フロアとして機能させる工夫を実施。
・就職活動支援の大きな柱として、「オンキャンパス・リ
は124単位。
クルーティング」を実施している。
<英語「で」学ぶ力を養成する教育プログラム>
・ほぼすべての科目を英語で実施。
・講師1人に対して学生4人を上限とした徹底した少人
数のグループで英会話の講座を実施。
<必修の海外留学制度(1年間)>
・日本語を母語とする学生は、国際的な経験と視野を
身につけさせるため、1年間の海外留学制度を必修
化。
<英語で学ぶための英語授業>
・1年次後期から学部専門の英語教育を受け、2年次
後期には英語で経営学を学べるレベルを目指す。
6
Ⅲ.グッドプラクティス
7
8
神田外語大学
~「言葉」を基盤に世界の架け橋となる人材を育成~
【大学概要】
大学概要】
所在地
千葉県千葉市
設立年
1987年4月
学部構成
外国語学部
大学の特色
手厚い語学教育体制のもとで、少人数制・参加型の教育プログラム
を展開し、
「言葉と文化」を学ぶことを通して真の国際人の育成を
図る。国内及び海外のインターンシップ制度を積極展開。
【数値で
数値で見る大学の
大学の特徴】
特徴】
学生数
外国語学部
外国人
教員比率
3,637 名
2012 年 2 月 22 日現在
1講座当たり
英語による
受講者数【※1】 専門科目率【※2】
53%
約 27 名
52%
専任教員
【※1】英語(語学)授業の 1 クラスあたりの人数
【※2】卒業要件のうちの専門科目(英語科目 48 単位+研究科目 40 単位)に対する、全て英語で
実施される科目の単位数(英語科目のうちの 46 単位)の比率
【グローバル人材
グローバル人材育成
人材育成の
育成の取り組み概要】
概要】
◆グローバル人材育成のポイント(概要)
手厚い少人数・双方向型の指導体制で実践的な語学力向上
1学年あたり約 800 名の学生に対して約 400 名の教員を擁し、語学担当教員の 8
~9 割はネイティブ・スピーカー
ネイティブ・スピーカーの教員が常駐し、いつでも英語やその他言語によるコミ
ュニケーションに慣れ親しむことができる SALC(Self-Access Learning
Center)と MULC(Multilingual Communication Center)
実践力を高めるための国内・海外のインターンシップ
学生時代に実社会での仕事を体験できる「ビジネス・インターンシップ」
商社やコンサルティング会社、国際物流会社等への海外インターンシップの実施
学生の語学力・国際感覚育成を支える様々な仕組み
海外留学も積極的に推進。短期研修も含めると年間 500 名強が留学
◆国内他大学との比較
異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー(要素Ⅲ)の確立のた
めの教育プログラムが、回答大学(学部)と比べ、相対的に高い値を示している。
9
【グローバル人材育成
グローバル人材育成に
人材育成に向けた取
けた取り組みの経緯
みの経緯と
経緯とグローバル
グローバル人材像
バル人材像】
人材像】
◆経緯
「言葉は平和の礎」との理念のもと真の国際人を育成する大学へ
神田外語大学(以降、KUIS と表記)は、神田外語グループの「言葉は世界をつ
なぐ平和の礎」との建学の理念に基づき、多言語・多文化共生の時代の先端を松
明をともして歩いて行ける人財を育てることを教育の目的として、1987 年 4 月
に開学した。
KUIS では、
「言葉と文化を学ぶこと」を通して、異文化を理解し、違いを違い
として尊重できる真の国際人としての感性を養うことを目指している。これから
の時代に求められる人財は、自らの国だけに捉われるのではなく、グローバルに
世界を捉え、ローカルな立場で地域貢献、地球貢献ができる人財であると考え、
そのような真のグローバル人材の育成・輩出に取り組んでいる。
◆グローバル人材像と育成の視点
世界の言葉と文化を理解しコミュニケーションできる真の国際人
次のビジョン及びミッションを掲げて、言葉の壁や国境を超えてお互いを真に理
解できる人財の育成を目指している。
ビジョン
一人ひとりが言葉を通じたコミュニケーションにより、お互いを認め合い尊重
し合う、あたたかな世界を目指します。
ミッション
・世界の言葉と文化を理解し、柔軟な心でコミュニケーションできる人。
・思いやりの輪を広げ、世界の人々を笑顔にできる人。
上記の人材を育成するために、以下の 4 つの「学びの特色」を重視して教育を展
開している。
① 言語+α:言語を学ぶためには、その言葉が使われている国の歴史や文化な
ど、背景までを総合的に学ぶ必要がある。
② 少人数:授業はいずれも少人数制が基本。講師やクラスメイトとの距離も近
く、自然とコミュニケーションが盛んになる。
③ 参加型:自ら授業に参加し学ぶ姿勢を持つことを大切にしている。自分の考
えや研究したことをプレゼンテーションする機会も多い。
④ 実践的:ネイティブの教師から生きた言葉を学んだり、企業で働いた経験を
持つ教師からビジネスについて学ぶなど、実社会で使える実践的な力を付け
ることを大切にしている。
学生の学力と関心に合わせ、個々の学生が教育内容を組み立てる「プログラム制」
を導入し、自主的な学びを重視している。
10
【グローバル人材育成
グローバル人材育成に
人材育成に向けた取
けた取り組み内容】
内容】
◆グローバル人材育成のポイント(詳細)
少人数・双方向型の指導体制で実践的な語学力向上
語学を中心とした大学・学部であり、必然的に卒業要件に占める語学講義のウエ
イトが高い。英語については、全学生に対し「KEPT」
、
「KACE」といった大学
独自のテスティング教材を用いた試験を行い、TOEIC、TOEFL 等の点数を加味
して、その結果をもとに学科内でクラスを編成している。
1学年あたり約 800 名の学生に対して約 400 名の教員を擁し、少人数で双方向
型の授業を展開している。語学を担当している教員の 8~9 割はネイティブスピ
ーカーである。教員の中には、海外の大学・大学院出身、また海外の大学におい
て指導経験を有している教員も多く、双方向型の講義を普通の感覚で展開してい
る。
KUIS には、英語学習施設として SALC(SELF-ACCESS LEARNING
CENTRE)
、英語以外の言語の学習施設として「MULC(Multilingual
Communication Center)
」と呼ばれる施設がある。両施設では、語学について自
学・自習をすることができるとともに、当該施設に常駐している講師やアルバイ
トとして常駐している交換留学生が、日本人学生と、会話の練習や課題のサポー
ト等を通じた指導・交流を行っている。この取り組みは、日本人学生が、言語学
習を通じて外国語や外国人留学生と親しむ契機ともなっている。
また、SALC に常駐している講師は、ELI(English Language Institute)と呼
ばれる研究組織に属している。ELI に属する講師 80 名程度は、全員が海外の大
学においてマスター以上の学位を取得している。また、神田外語大学全体で見る
と、留学経験も含めれば、日本研究の専門家以外は全員が海外での研究・教育経
験者である。
実践力を高めるための国内・海外のインターンシップ
選択科目として、単位認定対象としてキャリア関連授業を 3 科目(キャリアデザ
イン、キャリア開発、ビジネス・インターンシップ)を開講している。学生時代
に実社会での仕事を体験できる「ビジネス・インターンシップ」は、日本のあら
ゆる業界がグローバルであるとの認識の下、年間の受講者 100 名程度を国内の
様々な企業及び官公庁に派遣している。
「ビジネス・インターンシップ」は、下図のように、事前・事後学習も含め 1 年
を通じて履修するカリキュラムである。事前学習で業界・企業の仕組みについて
学ぶ際には、企業関係者に講義をしてもらったり、大学のキャリアセンター職員
全員が企業出身者であることから、職員が出身業界について講義を行う等の取り
組みを通じ、各種業界・企業の仕組みを学んでいる。
11
ビジネス・
ビジネス・インターンシップの
インターンシップの流れ
■ 10~
~1 月 : 説明会・
説明会・募集・
募集・履修者選考
インターンシップについての説明、履修学生の募集を開始。履修学生は書類選考のうえ決定。
■ 4~
~7 月 : 「ビジネス・
ビジネス・インターンシップl」
インターンシップl」事前学習
l」事前学習
ビジネスマナー講座、パソコン講座、実習先の業界・企業研究、リサーチ等を実施。
■ 夏期休暇中 : 社会実習
派遣先の企業及び団体にて、1 週間~4週間の実習プログラムの実施並びに実習ノートを作成。
■ 9~
~10 月中 : 「ビジネス・
」事後学習
ビジネス・インターンシップ ll」
実習レポートの作成・提出並びに、「実習報告発表会」でのプレゼンテーションを実施。さらに企
業の選択の仕方、あるいは企業への志望動機・理由を考える。将来の就職活動のためにエン
トリーシートの書き方も学ぶ。
国際コミュニケーション学科では、国際ビジネスキャリア専攻の学生を主たる対
象とした海外インターンシップ制度を設けている。派遣先は現地の商社やコンサ
ルティング会社、国際物流会社等であり、国内同様単位認定対象となっている。
海外インターンシップについては、事前指導として、国内インターンシップに対
するものに加え、語学指導、派遣先都市の治安、経済事情等についても講義して
いる。
国内・国外ともにインターンシップの実施の後、事後学習としてプレゼンテーシ
ョンを行っている。プレゼンテーションスキルについての講義の後、自身が派遣
先で行った取り組みについてプレゼンテーションを行い、事業上改善すべき点等
についても発言させる。受け入れ先企業の担当者が見学に来る場合もある。
◆関連する取り組み
学生の語学力・国際感覚育成を支える様々な仕組み
英米語学科の 3・4 年生は、専門分野の講義を行う科目(
「英語総合講座Ⅲ」の授
業)をすべて英語で実施している。その他の学科でも、ネイティブの講師の場合
は、当該言語で授業を行っているケースがある。
英米語学科や国際コミュニケーション学科といった英語を主に学ぶ学科につい
ては、TOEIC で一定のスコアを取ることが専門必修科目を受講する要件になっ
ている、または必修科目の単位取得の要件となっていることがある。
学生が自分のスタイルで学べる SALC(Self-Access Learning Center)がある。
そこでは、個室のスピーキングルーム、生きた語学学習ができる DVD・テレビ
エリア、リスニングエリア、リーディングステーションなどがある。
海外留学も積極的に推進しており、短期研修も含めると年間 500 名強が留学して
いる。単位互換対象となる大学の留学制度で休学せず海外留学するケースのほ
か、交換留学、私費留学、休学しての留学、短期研修がある。
海外協定校は 60 校であり、数は多くはないが、実際に交換留学生を派遣してい
る「協定が生きている大学」が多いことが、KUIS の特徴といえる。
外国人留学生の受入れ
外国人留学生数を例年 200 名程度受け入れている。国籍はバラエティに富んでい
る。外国人留学生を受け入れる際の視点として、留学生一人ひとりに丁寧に接し
て面倒をいかに見るか、また日本人学生といかに交流を図るか、という視点を重
視して、次のような取組を行っている。
12
• 交換留学で来日した外国人留学生には、留学生 1 名につき 1~2 名の日本人
チューターを配置
• 英語以外の言語の学習施設として MULC(Multilingual Communication
Center)を設立し、語学の専任講師が常駐。そこに昼休みに交換留学生もア
ルバイトとして常駐させることにより、日本人学生と会話の練習や課題のサ
ポート等を通じた交流を促す。
• 外国人留学生と日本人学生の接点作りのツールとして、
「多文化交流ネット」
というメーリングリストを作成し、交流イベント情報を提供
【取り組みの効果
みの効果・
課題・今後の
今後の方向性】
方向性】
効果・課題・
◆取り組みの効果
国際業務で活躍する人財の多数輩出
卒業生の就職先としては、グローバル展開する企業を中心として、
「商社・卸売・
小売」
(26.7%)
、
「製造・メーカー」
(17.1%)
、
「航空・運輸・物流」
(16.5%)
などが多くみられる。語学力と異文化理解の力を生かして、グローバルな舞台で
活躍している卒業生が多いといえる。
◆課題と今後の方向性
20 年先、30 年先のグローバル化の動きを見据えて学科を大きく改編予定
グローバル化の流れが、これまでの欧米社会中心から、アジアやイベロアメリカ
を始めとする幅広い国と地域が主導する時代に移り変わっている流れを踏まえ、
20 年先、30 年先を見据えて
学科を大きく改編する予定
である。具体的には、これま
で個別の言語種類で分けら
れていた学科・専攻につい
て、
「アジア」や「イベロア
メリカ」という単位で捉え、
学科として再編し直す。
これからの地域に求められ
るのは、一つの国にとどまら
ず、その地域全体を見据える
広い視野と、その地域の政治
や外交、社会や経済、あるい
は文化や歴史にいたるまで
の深い知識であるとの認識
のもと、未来を見据えて人財
の育成に取り組んでいきた
い。
13
九州大学
~生涯にわたって自律的に学び続けるアクティブランナーの育成~
【大学概要】
大学概要】
所在地
福岡県福岡市
設立年
1911年
学部構成
文学部、教育学部、法学部、経済学部、理学部、医学部、歯学部
薬学部、工学部、芸術工学部、農学部、21 世紀プログラム
大学の特色
様々な分野において広く全世界で活躍し、指導的な役割を果たす
人材の輩出を目指している。第二期中期計画では、深淵で幅広い
教養教育から専門教育に繋がる充実した一貫性のある教育を推進
するとし、そのために「基幹教育院」を平成 23 年 10 月設置した。
【数値で
数値で見る大学の
大学の特徴】
特徴】
学生数
外国人
教員比率
1講座当たり
受講者数【※】
英語による
専門科目率
理学部
1283 名
約 1.6%
42 名
0.5%
経済学部
1091 名
約 1.6%
45 名
1.0%
【※】英語(語学)授業の 1 クラスあたりの人数
【グローバル人材育成
グローバル人材育成の
人材育成の取り組み概要】
概要】
◆グローバル人材育成のポイント(概要)
英語トラックコースの開設
英語授業のみで学位が取得できるコースとして、学士課程では工学部と農学部で
新設するとともに、大学院課程(学府)では全学府で開設。語学教育として技術英
語、科学英語等の科目の開設、各種英語による教育プログラムを実施している。
外国語プレゼン大会や日韓環海峡圏カレッジ等の国際的な環境づくり
全学教育の一環として、外国語によるプレゼンテーション大会を開催
1 年を通じて、外国語能力や多文化理解を学び、キャリアアップを図るプロジェ
クトを実施
◆国内他大学との比較
大学全体としての基盤指標が回答大学と比べ相対的に高い値を示している。特
に、理学部については、異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティ
ー(要素Ⅲ)の確立のための教育プログラムが、回答大学(学部)と比べ、相対
的に高い値を示している。
14
【グローバル人材育成
グローバル人材育成に
人材育成に向けた取
けた取り組みの経緯
みの経緯と
経緯とグローバル人材像
グローバル人材像】
人材像】
◆経緯
「アジア重視戦略」を展開
■
2000 年の九州大学教育憲章に「アジア重視戦略」を謳い、グローバル人材育成に
関する取組を本格化させた。
■
グローバル 30 においても、アジアを中心に 8 カ国・地域(中国・韓国・台湾・ベ
トナム・タイ・インドネシア・エジプト・オーストラリア)を留学生の受入重点
国として設定した。
■
グローバル 30 経費で 18 名、九大独自枠で 8 名の計 26 名の外国人教員計 26 名を
採用し、国際化された教育研究環境の構築を進めている。
グローバル 30 の成果、すなわち、工学部や農学部での取り組みを発展させ、平
成 32 年度までに、全学横断的に英語による教育を行う「国際教養学部(仮称)
」
を創設する予定である。
◆グローバル人材像と育成の視点
強靭なマインドを持ち、しなやかに対応できる骨太のリーダーの育成
大学の教育憲章では、教育の目的として「日本の様々な分野において指導的な役
割を果たし、アジアをはじめ広く全世界で活躍する人材を輩出し、日本及び世界
の発展に貢献する」ことを掲げている。さらに、
「国際性の原則」と題し、次の
事項を志向することを掲げている。
① アジアをはじめ全世界の人々の文化的、社会的、経済的発展に寄与すること
② 種族的、国民的及び宗教的集団の間の理解、寛容及び友好を促進すること
③ 世界の平和に貢献し、将来の世代を戦争の惨害から守ること
④ 国際連合憲章の謳う原則を尊重すること。
基幹教育院の設置を踏まえ、育成する人材像を強靭なマインドを持ち、しなやか
に対応できる骨太のリーダーと想定している。骨太のリーダーへ近づくための、
基本原則としてアクティブラーナーの育成を目指している。
アクティブラーナーとは、自分から問題を見つけ、他者と関わりながら、生涯に
わたって、自律的に学び続ける学習態度を身に付けた人材のことである。学び方
や考え方を学ぶ態度
づくりに重点を置い
ている。知識を習得
させるのではなく、
態度を身に付けるこ
とで、行動に移せる
人材を輩出したいと
考えている。
グローバル人材の育
成は、正規のカリキュラムのみでは成しえないと考えており、正規以外の活動の
メニュー拡充や国際的な環境づくりと合わせて、推進していくことを方針として
いる。
15
【グローバル人材育成
グローバル人材育成に
人材育成に向けた取
けた取り組み内容】
内容】
◆グローバル人材育成のポイント(詳細)
英語トラックコースの開設
英語の授業のみで学位が取得できる学士課程国際コースの整備を進め、工学部4
コース、農学部1コースを開設するとともに、大学院においても全 17 学府(法
務学府を除く。
)に 57 の国際コースを開設することとしている。
(既設の 8 コー
スを含む。
)
「英語で学ぶ」ための語学教育の拡充
工学部では「技術英語」
、農学部では「科学英語」のように、その学部(学科)
に適した語学プログラムが設置されている。今後の研究活動に先立ち、英語で執
筆された学術論文の読解に必要な英語力の習得を目的としている。例えば、機械
航空工学科を対象とした「技術英語」では、エネルギー変換システムに関する英
語と基礎と読解、地域環境工学分野を対象とした「科学英語」では土壌や水、大
気環境に関して英語の聞き取りと発表能力を高めるプログラム内容となってい
る。
外国人教員による専門教育
全学教育のうち、総合科目の英語による授業(主幹教授制度)も行われている。
主幹教授制度とは、特に高い業績を挙げた教授に与えられる称号で、外国人研究
者を雇用する経費等の支援を受けることが出来る。学生は、招聘した外国人研究
者の授業を英語で受けることが可能である。
外国語プレゼン大会や日韓環海峡圏カレッジ等の国際的な環境づくり
学生のクリティカルシンキング及び外国語コミュニケーション能力の向上を図
り、積極的な学習活動を奨励するために、全学教育の一環として、外国語プレゼ
ンテーション大会を開催している。応募対象は、学部に在籍する 1 年生と 2 年生
で、使用言語は、ドイツ語、フランス語、中国語、韓国語、スペイン語、ロシア
語、日本語である。
1 年を通じて、外国語能力や多文化理解を学び、キャリアアップを図るプロジェ
クト「日韓環海峡圏カレッジ」を実施している。夏休みには、釜山大学校、九州
大学で、各 1 週間ずつ特別講義を受けたり、企業インターンシップや意見交換、
文化体験を行ったりする。短期のイベントではなくて 1 年間継続して行われるこ
とが特徴である。
当プログラムのメリットは、選抜された学生に対して、日韓往復航空費や宿泊費
を、大学が負担することである。経済的な理由で語学研修や留学をあきらめてい
た学生には、またとない
チャンスとなっている。
また、私費語学研修や外
部の国際交流プログラム
では、正規の大学授業を
休むことになって成績や
進級に影響が出ることがあるが、日韓海峡圏カレッジは、九州大学のプログラム
16
なので大学の年間スケジュールに合わせている。正規の授業に支障が無いように
配慮している。
正規授業と課外プログラムを合わせた人材の育成
正規授業以外で異文化体験プログラムを拡充させる意図は、外から見た日本の良
さや特殊性を体験してもらうことにある。日本人学生は、どちらかと言えば、類
似性・同質性を追求する傾向があるが、外国人学生は、異質性の追求(いかに他
者と違うことを求めていくのか)の傾向が強いように感じる。そうした態度の違
いが、発想の違いにも繋がっていると思われ、異文化体験プログラムは、日本人
学生及び留学生の適切な自己理解に寄与していると考えている。
また、留学生に対しても、日本の強みの 1 つであるチームワーク・和を尊ぶ機会
を提供することが求められていると感じている。こうした気づきは、授業という
よりも、日常生活の中で得られるもので、正課以外での活動が重要であると認識
している。
◆関連する取り組み
産学連携によるイノベーション人材の育成
研究開発から事業化までを一貫して企画運営できる研究開発・ビジネスリーダー
の輩出は、我が国のみならず国際社会における喫緊の課題となっている。こうし
た課題に対応するため、イノベーション人材養成センター(ITP センター)を立
ち上げ、革新的な研究開発・ビジネスリーダーを多数輩出することを目的に、大
学院生を対象として、体系的かつきめ細かで、さらに実践的な人材養成プログラ
ムを提供している。下記のプログラムを提供している。
① 研究開発・ビジネスリーダーに不可欠な志と実践知識を学ぶ研究開発・事業
化推進実務講習
② 課題設定・遂行能力を高める産学共同研究
③ 国内外企業研修
国内外企業研修では、3 ヶ月にわたる企業でのインターンシップを通じ、これま
でに身に付けた研究開発・実用化推進知識、リーダーシップ力をさらに磨き上げ
る。インターンシップ期間中はメンターが企業を訪問し、インターンシップが円
滑に進むようきめ細かにサポートを行っている。
すでに PD と博士課程学生あわせて約 40 名の ITP センター養成者が 3 ヶ月以上
の企業研修を行い、ITP センター養成者の高度な研究能力と高い適応能力が、産
業界から高い評価を受けている。
【取り組みの効果
みの効果・
効果・課題・
課題・今後の
今後の方向性】
方向性】
◆取り組みの効果
受入留学生数が 2 倍に増加
九州大学で学ぶ留学生の数は、2003 年の 999 名から、2011 年には 2,078 名まで
増加しており、語学教育の拡充、正規授業以外の多様な異文化体験プログラム、
アジアを重視した留学生の入口から出口までの一貫した国際化拠点整備などの
取組が奏功していると認識している。海外への派遣留学生数も、平成 17 年度の
150 人から平成 22 年度には、310 人まで増加している。
17
なお、各種取組の成果については、これからと言うところであり、中期計画をも
とに PDCA サイクルに則り、着実に進めていく。
◆課題と今後の方向性
基幹教育院の設置を契機に新たなカリキュラムを検討
2011 年の創立 100 周年を機に、地元企業を始めとした産業界の大学教育に対す
るニーズについて調査を行った。それらのニーズも踏まえ、九州大学は、学士課
程教育において、深淵で幅広い教養教育から専門教育に繋がる充実した一貫性の
ある教育を推進するための「基幹教育」を構築し、その企画運営を担う全学的教
育組織として、全学の強い協力体制のもとに「基幹教育院」
(教員規模 60 名程度)
を平成 23 年 10 月に設置した。
基幹教育院設置後は、平成 25 年度までに教員組織を計画的に整備し、現行の教
養・基礎教育カリキュラムの実績を踏まえ、新たなカリキュラム(基幹教育)の
検討を行い、平成 26 年度からの新カリキュラムの開始を目指している。
新たなカリキュラムでは、自立的に学習し続ける態度の修得、言語力や基礎的な
学力・技能の獲得、グローバル化社会への関心と異文化や多様な価値観への理解
に繋がる授業科目や課題解決型の授業方法等を重視し、高い教育成果の達成を目
指していく。
18
国際教養大学(AIU: Akita International University)
~全て英語での授業、1年次の全寮制などを通じたグローバル人材育成~
【大学概要】
大学概要】
所在地
秋田県秋田市
設立年
2004年4月
学部構成
国際教養学部 (1学部制)
大学の特色
「国際教養」を標榜する新しい1学部制大学。
全授業の英語による開講、入学から1年間義務づけられる寮生活での
外国人留学生との共同生活、卒業までに義務づけられる1年間の留学
と、徹底したグローバル人材育成教育を実施。
【数値で
(2011
数値で見る大学の
大学の特徴】
特徴】
(2011 年 4 月現在)
月現在)
学生数
大学全体(学部)
うち当該学部
外国人教員比率
(専任のみ)
1講座当たり
受講者数【※】
英語による
専門科目率
820 名
52%
18 名
100.0%
820 名
52%
18 名
100.0%
【※】英語(語学)授業の 1 クラスあたりの人数
【グローバル人材育成
グローバル人材育成の
人材育成の取り組み概要】
概要】
◆グローバル人材育成のポイント(概要)
グローバル人材像
①英語等によるコミュニケーション能力②豊かな教養とグローバルな専門性―
―を身につけた実践力のある人材の育成を目指す。
日本人学生に義務づけられる1年間の留学
日本人学生は卒業までに 1 年間の海外留学が義務づけられている。2 年次の冬か
ら 1 年間留学し、専攻分野の授業を受けてくることが標準である。
アイデンティティ認識と異文化理解を推進する 1 年間の寮生活
新入生は入学から 1 年間、寮生活が義務づけられる。基本的に外国人留学生と同
部屋で生活することで、アイデンティティ認識と異文化理解の力を鍛える。
◆国内他大学との比較
大学アンケート結果では、回答学部の平均と比べ、要素Ⅰ~要素Ⅲのすべての指
標において相対的に高い値を示している。
特に要素Ⅰのプログラム指標においては、全ての授業が英語で行われているた
め、極めて高い値を示している。
19
【グローバル人材育成
グローバル人材育成に
人材育成に向けた取
けた取り組みの経緯
みの経緯と
経緯とグローバル人材像
グローバル人材像】
人材像】
◆経緯
教養ある市民の育成を目指す一貫したリベラルアーツ教育
2003 年度に廃校となるミネソタ州立大学秋田校が残した施設を活かして、国際
的に活躍できる人材を育成する大学を創りたいと秋田県が考え、2000 年に「国
際系大学(学部)検討委員会」
、2002 年に「国際系大学(仮称)創設準備委員会」
が設置された。
上記 2 委員会の委員長を務めた中嶋嶺雄・東京外語大学学長(当時。現 AIU 学
長)がかねてから抱いていた「学部では教養を身につけ、本当の専門性は大学院
で」という考え方の下、
「国際教養」
(international liberal arts)を掲げた 1 学
部制大学を創立するということで委員会と県の構想が合致し、2004 年に創立に
至った。
◆グローバル人材像と育成の視点
「国」を超えて「地球益」に貢献する「地球市民」の育成
AIU が育成を目指すのは、①英語等によるコミュニケーション能力②豊かな教養
とグローバルな専門性――を身につけた実践力のある人材である。より詳細に
は、以下の 5 点が AIU の教育目標となる。
① 外国語コミュニケーション能力の熟達
② 様々な学問分野にまたがる広範な基礎知識と、それらを総合する能力
③ 知的自律性と意思決定能力
④ 自己の文化的アイデンティティの認識と異文化への理解
⑤ グローバリゼーションに対する理解
批判的思考などの教育目標の探求方法
上記の教育目標の探求方法としては、①人文学的・芸術的視点②社会科学的視点
③経験的方法④量的論証⑤批判的思考――が挙げられ、様々な学問分野で使われ
ている方法を「国際教養」の学びで用いる。
上記方法の中でも特に重要なのは批判的思考(critical thinking)である。
20
【グローバル
グローバル人材育成
バル人材育成に
人材育成に向けた取
けた取り組み内容】
内容】
◆グローバル人材育成のポイント(詳細)
英語力の育成、英語での教育
全て英語で行われる AIU の授業を受ける能力をつけるため、新入生は英語集中
プログラム「EAP」
(English for Academic Purposes)を受講する。EAP は、入
学直後に受ける TOEFL によるプレイスメント・テストの結果に応じて EAP 1
(初級:TOEFL 459 点以下)
、EAP 2(中級:同 460~479 点)EAP 3(上級:
同 480~499 点)に分けられ、1 年以内に修了すること(TOEFL500 点以上獲得)
が求められる。もっとも殆どの学生は EAP 3 から受講し、1 学期で修了する。
日本人学生に義務づけられる1年間の留学
日本人学生は卒業までに 1 年間の海外留学が義務づけられている。留学に出るの
は、秋学期が終わった後の 1 月からと、夏休みが終わった後の 9 月からが多い(後
述するセメスター制を参照)
。留学後に履修するゼミ授業や就職活動を考えると、
2 年次の 1 月から 3 年次の 12 月まで留学するのが理想的である。成績優秀者に
は 2 年次の夏から留学することも認めている(早期留学制度)
。
基本的に専攻を決めてから留学するので、留学先では専攻分野の授業を受けてく
る。また、グローバル・スタディズ専攻の学生には、受講の他に原書を 3 冊読ん
でレポートにまとめることも求められる。
留学で、専攻ではなく英語以外の語学を修めてくることも例外的に認めている。
また 1 年次に行ける短期語学留学プログラムも用意しており(参加には通常学費
外の自己負担が必要)
、2011 年度は 2 名が利用した。
アイデンティティ認識と異文化理解を推進する 1 年間の寮生活
上述した教育目標の一つである「自己の文化的アイデンティティの認識と異文化
への理解」は、授業よりも環境で身に付けさせる。そうした環境を与えるものと
して、留学に加えて挙げられるのが、新入生に入学から 1 年間義務づけられる寮
生活である。
寮は、二つの 2 人部屋が間にある洗面所・バス・トイレを共用するレイアウトと
なっており、これを 1 ユニットという(下図参照)
。この 1 ユニットに日本人学
生 2 人と外国人留学生 1 人が入る。外国人留学生は必ず日本人学生とペアで一部
屋に入る(一人部屋となれるのは日本人学生である)
。
左:寮の「ユニット」のレイアウト
下:2 人部屋の様子
21
◆関連する取り組み
留学を円滑にするセメスター制
留学生の受入や派遣を円滑にするため、1 年を春(4~7 月)と秋(9~12 月)の
二つのセメスター(学期)に分け、全ての科目が 1 学期(15 週間)ごとに完結
する「セメスター制度」を採用(下図参照)
。
1~3 月には任意受講の「冬期プログラム」があり、正式には秋学期の一部とい
う位置づけだが、実質的には「冬期プログラム」を含む 3 学期制となっている。
セメスター制の下、入学は 4 月と 9 月、卒業は 8 月と 3 月と、それぞれ年 2 回あ
る。
ギャップイヤー入試制度
AIU は、以前からギャップイヤー入試を 3 月に実施してきたが、2012 年度入学
者向けから 11 月実施に前倒して実施している。前倒しの理由は、従来制度だと
(一般入試の後にギャップイヤー入試があるので)単に受験回数を増やす目的で
受験する者がいること、3 月に入学が決まったのでは 4~8 月のギャップイヤー
活動の計画を立てる時間的余裕が少ないことである。
受験者は、ギャップイヤー活動計画書を提出して受験、合格したらより具体的な
活動計画を立て教員に提出、2 月の計画発表会を経て実際の活動を行い、活動を
終え 9 月に入学するとすぐに活動報告書を提出する。
【取り組みの効果
みの効果・
効果・課題・
課題・今後の
今後の方向性】
方向性】
◆取り組みの効果
進学先として高校から高い評価
『サンデー毎日』誌「全国 600 進学校・進路指導教諭が生徒に勧めるイチ押し大
学」
(2010 年 9 月 12 日号)では非常に高い評価を得ている(下表参照)
。
小規模だが評価できる大学
1 位:AIU
2 位:ICU
3 位:成蹊大
国際化教育に力を入れている大学
1 位:AIU
2 位:ICU
3 位:上智大
入学後、生徒を伸ばしてくれる大学
1 位:東北大
2 位:東京大
3 位:AIU
就職率は 100%
2007 年度に卒業した第 1 期生から就職率はほぼ 100%である。
就職先企業も、商社、メーカー、金融、運輸、情報通信などの大企業が多く、地
方に新設された大学としては異例である。
22
国際基督教大学(ICU: International Christian University)
~伝統あるリベラルアーツ教育による「地球市民」の育成~
【大学概要】
大学概要】
所在地
東京都三鷹市
設立年
1953年4月
学部構成
教養学部 アーツ・サイエンス学科(1学部1学科制)
大学の特色
校名に「国際」を冠した日本初の大学。
創立より米国型のリベラルアーツ教育を実施、民主主義と平和の担い
手となる人材、国を超えて「地球益」
(global interest)に貢献する「地
球市民」の育成を目標とする。
【数値で
数値で見る大学の
大学の特徴】
特徴】
学生数
大学全体(学部)
外国人
教員比率
2,851 名
うち当該学部
2,851 名
【※】英語(語学)授業の 1 クラスあたりの人数
1講座当たり
受講者数【※】
英語による
専門科目率
36.1%
約 20 名
22%
36.1%
約 20 名
22%
【グローバル人材育成
グローバル人材育成の
概要】
人材育成の取り組み概要】
◆グローバル人材育成のポイント(概要)
グローバル人材像
「国」を超えて「地球益」を考え、地球社会の未来を見据えて様々な課題に取り
組む人材の育成を目指す。
英語力の育成
日本人学生には 1~2 年次に集中的な「英語教育プログラム」を提供。能力別に
分けられた 20 人程度の小クラスで、対話中心の集中的な英語学習を実施。
外国人学生と日本人学生の分け隔てない教育とキャンパスライフ
語学以外のカリキュラムにおいても、寮生活を含むキャンパスライフにおいて
も、外国人学生と日本人学生を分け隔てせず、自然な交流を図る。
◆国内他大学との比較
大学アンケート結果では、回答学部の平均と比べ、要素Ⅱのプログラム指標を除
く全ての指標において相対的に高い値を示している。
特に要素Ⅲの制度・環境指標において、高い値を示している。
23
【グローバル人材育成
グローバル人材育成に
人材育成に向けた取
けた取り組みの経緯
みの経緯と
経緯とグローバル人材像
グローバル人材像】
人材像】
◆経緯
教養ある市民の育成を目指す一貫したリベラルアーツ教育
第二次世界大戦および戦前の軍国主義教育への反省に立ち、民主主義と平和の担
い手となる、教養ある市民を育成することを目標に創立された。
学問分野の垣根を越えた教養教育を重視する米国型リベラルアーツ・カレッジを
目指し、日本では珍しかった教養学部のみの 1 学部制を創立から一貫して採って
いる。
2008 年の改革で 6 学科をアーツ・サイエンス学科に統合、その下で約 30 のメジ
ャー(専修分野)から 2 年次末に 1~2 分野の専修を決定する(レイター・スペ
シャリゼーション)という学制となり、リベラルアーツ教育の理想型により近づ
いた。
◆グローバル人材像と育成の視点
「国」を超えて「地球益」に貢献する「地球市民」の育成
「世界基準」を標榜する ICU は、
「グローバル人材」という言葉こそ使っていな
いが、グローバルスタンダードな教育・人材育成を目材している。
ICU が育成を目指すグローバル人材とは、
「国際人」というよりは「地球市民」
――「国」というものを超えて「地球益」
(global interest)を考え、地球社会の
未来を見据えて様々な課題に取り組む人材である。
自己と他者が互いに支え合うという思想と行動の学習・経験
単一学部・単一学科の下でのメジャー制の導入により、学問分野間の壁のない開
かれた教育システムが、単一キャンパス内で構築されている。
そこで学生達は、多様な人々と出会うことを通じ、自分のアイデンティティを確
立すると同時に他者に対して開かれることによって、自己と他者が互いに支え合
うという思想と行動を学び、また体感する。
つまり、グローバル社会で求められる思考・行動様式を、大学という空間で先取
りして学習・経験するわけであり、それはグローバル人材の育成となっている。
【グローバル人材育成
グローバル人材育成に
人材育成に向けた取
けた取り組み内容】
内容】
◆グローバル人材育成のポイント(詳細)
英語力の育成、英語での教育
ICU では、日英両語を公用語とする「バイリンガリズ
ム」が採られており、学位授与も日英両語の能力を身に
つけることが要件となっている。このため、日本の教育
制度で学んできた 4 月入学生は、1~2 年次に集中的な
「英語教育プログラム」
(ELP: English Language Program)を履修する。ELP
では、能力別に分けられた 20 人程度の小クラス(セクション)で、対話中心の
集中的な英語学習が行われる(ELP は 2012 年度よりに改編予定。後述)
。
24
日英バイリンガリズムの下、ELP を修了した 4 月入学生と、日本語教育プログ
ラムを修了した 9 月入学生(日本以外の教育制度で学んできた学生)は、語学以
外の全学共通科目(一般教育科目および保健体育科目)や専門教育科目は全く同
じカリキュラムで学ぶことになる。これらの科目の開講言語は、年度や学期によ
って異なる。英語開講科目以外に日米両語を併用する科目もある。4 月入学生は
英語開講科目を卒業までに最低 9 単位(概ね 3 科目。学位取得要件単位数は語学
以外で 114 単位)を履修する。
TOEFL、TOEIC のような一般的英語力試験の活用は、現在は TOEFL が ELP
のクラス分けテストで使われているのみであるが、今後は IELTS(International
English Language Testing System)を制度的に導入することを検討している。
IELTS は英国留学の際に求められることが多く、近年は米国の有力大学でも留学
生に対し課すところが出てきている試験であり、特にライティングの評価が充実
している。
主体性、チャレンジ精神、協調性、責任感の養成:少人数教育
対話中心の少人数教育は ICU の教育の特長であり、対話型授業へ積極的に参加
する姿勢は、まず 1~2 年次の ELP で培われる。ELP は 20 人程度の小クラスで
行われるため、一人黙っていることが許されず、発言し参加する態度が自然に形
成される。学生間での密接な協力関係が築かれると共に、教員に対しても近い関
係が築かれ、質問やコメントをするという習慣が確立される。
専門教育科目でも、殆どのクラスでグループワークが採り入れられている。4~5
人から成るグループは、メンバーの学年やメジャーが多様になるように、また留
学生や帰国生も混在するように構成されるので、同じ課題に取り組むにも多様な
視点、方法論、経験が反映さ
れるようになる。課題につい
て調べ、プレゼンテイション
を準備するというグループ
活動が、主に授業外の時間に
(ラーニング・マネジメン
ト・システムなど ICT ツー
ルも活用しつつ)行われるの
で、多様なメンバーが個々に
忙しい中で時間をやりくり
して共同作業をするという、
社会に出て必要となるスキ
ルも養われる。
グループワークの導入は、大学が組織的・制度的に行っているものではなく、ICU
の「教育・学習文化」として定着しているものである。学生からもグループワー
クの要望が強い。教員間でも、例えば大人数が履修するクラスでどうやってグル
ープワークを行うかといったノウハウが交換されたりする。
グループワークでない場面でも、もともと少人数教育(教員対学生比は 1 対 18)
なので、教員と学生の間や学生同士の間の対話・ディスカッションは多い。
25
◆関連する取り組み
充実した留学生派遣制度
ICU と海外の大学との協定に基づく「交換留学プログラム」
(21 か国 63 大学)
、
米国に非営利教育団体が世界各地の大学等と連携実施しているプログラムへの
参加による「海外留学プログラム」
(11 か国)
、夏休みを利用して海外で ELP の
単位の一部を取得する「海外英語研修プログラム」など、多様な制度の下に多く
の留学機会が提供されている。
交換留学プログラムの派遣定員約 140 人に対し、応募してくる学生は 140 人以
上、選抜を経て実際の派遣される学生は多い年で 100 人を超える。就職等の問題
で留学に対し消極的になっているという様子は、ICU の学生については見られな
い。
寮生活による外国人留学生と日本人学生の交流
ICU は、2 つの男子寮、3 つの女子寮、4 つの男女共住寮を全てキャンパス内に
持っており、その定員は学生総数の 25%にも上る。外国人留学生専用の寮はな
く、外国人留学生と日本人学生が同じ部屋に共住することが原則となっている。
こうした学生寮で、外国人留学生と日本人学生が分け隔て無く生活し、お互いに
交流を図っている。
【取り組みの効果
みの効果・
効果・課題・
課題・今後の
今後の方向性】
方向性】
◆取り組みの効果
グローバルに活躍する卒業生
総合的判断力、創造的思考力、高い語学力を持つ ICU 生は、国際化や IT 化によ
る変化の大きい社会にも適応できる人材として期待されている。就職率は例年ほ
ぼ 100%で、就職先は多岐にわたるが、グローバル企業の就職者が多く、さらに
海外で勤務している卒業生が多い。
ICU では大学院進学率も 25%と高く、海外の大学院を目指す学生も数多い。
◆課題と今後の方向性
英語教育のさらなる充実
ELP は、2012 年度より「リベラルアーツ英語プログラム」
(ELA: English for
Liberal Arts)に改編される。
ELA では、学生の英語力を向上させると同時に、ICU で効果的に学ぶための思
考力と技術が養成される。全て英語で行われる授業は、
「人種問題」や「生命倫
理」といったテーマで行われ、実践的な英語力と共に、創造的・批判的・自立的
に考える力を育む。
外国人留学生と日本人学生の交流の活発化
外国人留学生と日本人学生の交流は、授業、寮生活、クラブ活動等で図られてい
るが、さらなる活発化が必要と認識している。
26
多摩大学 グローバルスタディーズ学部
~国内での活躍も想定したグローバル人材の育成~
【大学概要】
大学概要】
所在地
神奈川県藤沢市
設立年
2007年4月
学部構成
グローバルスタディーズ学部、経営情報学部
大学の特色
「国際性」
、
「学際性」
、
「実際性」が大学の基本理念である。
グローバルスタディーズ学部では、「基本的な教養を有し、国際貢献
できる人材を育成する」ことが目指され、ほぼ全ての講義が英語で実
施されている。
【数値で
数値で見る大学の
大学の特徴】
特徴】
学生数
大学全体
外国人
教員比率
2,000 名
うち当該学部
600 名
【※】英語(語学)授業の 1 クラスあたりの人数
1講座当たり
受講者数【※】
英語による
専門科目率
20%
18 名
20%
50%
18 名
80%
【グローバル人材育成
グローバル人材育成の
人材育成の取り組み概要】
概要】
◆グローバル人材育成のポイント(概要)
語学力、グローバルな視点、コミュニケーション能力を有する人材
グローバル人材を、高い語学力を有しているのみならず、「日本人で、国内で仕
事をしているが、グローバルな視点、コミュニケーション能力等を有している人
材」も含め幅広く捉え、国内で働く場合にも、国際感覚を身につけることを重視。
語学力・コミュニケーション力の養成:英語による講義
ほぼ全ての講義を英語で実施。学生の英語力伸長のため、英語は習熟度別に講義。
少人数教育
1 講座 11~20 名の少人数クラスを中心に講座を実施。産業界のニーズの高い「コ
ミュニケーション能力」と「主体性」を養成。
高い就職率
2011 年春に卒業した第1期生は、就職希望者全員が就職。
◆国内他大学との比較
語学力・コミュニケーション力養成(要素Ⅰ)のための教育プログラムが、アン
ケート回答大学(学部)の平均値と比べ、相対的に高い値を示している。
27
【グローバル人材育成
グローバル人材育成に
人材育成に向けた取
けた取り組みの経緯
みの経緯と
経緯とグローバル人材像
グローバル人材像】
人材像】
◆経緯
グローバル人材育成を目的とした「グローバルスタディーズ学部」の創設
「細分化された専門分野の知識ではなく、リベラルアーツを武器に世界で戦える
人材を」との理念のもと、2007 年4月に「グローバルスタディーズ学部」が設
立された。
学部の目的は「基本的な教養を
有し、国際貢献できる人材を育
成する」ことがと定められ、卒
業生は政府機関や国際組織、
NPO・NGO などへの就職が当
初想定されていた。
現在は、学生の多様な進路希望
に対応するため、上記のほかに
ホスピタリティ分野(旅行・観
光等)
、グローバル・ビジネス分
野(商社・メディア等)で活躍
できる人材の育成にも重点が置
グローバルスタディーズ学部
教育イメージ
かれている。
◆グローバル人材像と育成の視点
語学力、グローバルな視点、コミュニケーション能力を有する人材
グローバルスタディーズ学部では、グローバル人材を以下の3つのカテゴリーで
捉えている。
1.高い語学力を有し、海外で働く日本人人材
2.日本・海外の双方で活躍できる外国籍の人材
3.日本人人材で、かつ国内で仕事をしているが、グローバルな視点、コミュニ
ケーション能力等を有している人材
上記の3カテゴリーでグローバル人材の育成を行っている背景には、将来的に日
本国内で働く場合でも、顧客や同僚の中に外国人が増えるとともに、社内公用語
が英語という企業が増えている事実がある。
今後もこのような状況は進展すると考えられるため、外国人とコミュニケーショ
ンをとり、また価値観を理解することができる日本人が多く必要とされると見込
まれる。しかし現状では、大学から社会に対し、このような人材が十分に供給さ
れているとは言い難く、産業界のニーズに応えるべく、上記のような人材を育成
している。
28
コミュニケーション能力をはじめとする能力の獲得
前述のグローバル人材像に基づき、学生は、以下の項目に関する能力を重点的に
学んでいる。
1.語学力を基礎としたコミュニケーション能力
2. 多様性、異質性、変化への対応力
3. 人類の普遍性についての理解
4. グローバルな課題の理解
5. グローバルな課題を解決するためのスキル
ここでのコミュニケーション能力とは、単に「外国語で意思疎通ができること」
にとどまらず、
「相手の考えていることを理解し、対応法を考えることができる
こと」を指す。そのため、文章力、聞く力、語彙力だけでなく、意思疎通の際に
相手の想い、考え、それに表情を読み取ることも重要になってくる。
【グローバル人材育成
グローバル人材育成に
人材育成に向けた取
けた取り組み内容】
内容】
◆グローバル人材育成のポイント(詳細)
英語による講義
グローバルスタディーズ学部では、語学以外の科目についても、ほぼ全ての科目
を英語により実施している(2011 年春学期に開講した約 150 科目…含む、英語
(語学)の授業…中、約 130 科目が英語により実施)
。学部の理念である「グロ
ーバル人材の育成」に照らして、また他大学の観光学科、国際学科等との差別化
のためにも、英語による教育を基本とすることにこだわりを持っている。
英語による教育を実施するため、教員も、専門知識に加え、英語が堪能な人材を
採用している。グローバルスタディーズ学部には専任教員 21 名が在籍している
が、専任教員の約半数が英語のネイティブスピーカーであるとともに、専任の日
本人教員についても、海外大学・大学院出身者、海外大学における指導経験者が
多く、これらの教員により英語で講義が行われている。
一方で、学生の入学時の平均的な英語レベルは、TOEIC330~370 点程度である。
専門科目も含めて英語による講義を実施するためには、TOEIC 450~600 点程度
のレベルに近づけることが必要である。そのため、専門科目を集中的に受講し始
める以前の 1、2 年次に、英語力を身につけさせるための取り組みを重点的に行
っている。
具体的には、TOEIC の点数ごとにクラスを 10 に分け、習熟度別に講義を行って
いる。2 年次以上の再履修者も含めた計 200 名程度について、TOEIC600 点以上、
350~600 点、350 点以下程度のクラスに分け、それぞれのレベルに合わせた指
導を実施している。特にスコアが低い学生については、英語力向上に対するモチ
ベーションが低い場合が見られるため、学習支援室を設置しサポート体制を組む
等の取り組みも行っている。
少人数教育
講義を通じてコミュニケーション能力や主体性を身につけるためには、講義中に
29
発言することが必要であり、そのためには受講者が少人数であることが有効であ
る、との考えの下、1 講座 11~20 名のクラスを中心に講座が実施されている。
講義を行う教室も、収容人員 30 名未満の小規模教室が大半を占めている。この
ように、教育環境面でも、学生間や教員との距離が近く、発言・議論を促しやす
いよう工夫がなされている。
「コミュニケーション能力」と「主体性」は、経団連の新卒採用についての調査
((社)日本経済団体連合会「新卒採用(2011 年 3 月卒業者)に関するアンケート調査結果」)
において、企業側が「採用にあたって特に重視した点」の上位 1 位・2 位を占め
ており、採用側のニーズが高い項目である。そのため、特に重視して教育されて
いる。
◆関連する取り組み
企業等との連携による実務経験機会の付与
グローバル人材には、コミュニケーション能力等の社会人基礎力や語学力、専
門的な知識のみならず、地域や実務の現場を経験することが必要である、との考
えから、企業を始めとする外部機関と連携し、企業や地域の現場を学生に経験さ
せる科目が開設されている。
例としては、航空会社と連携し、エアラインにおけるホスピタリティを学ぶ講座、
旅行会社と連携し、ツアー設計等を行う講座、また地元ラジオ局の DJ を招き、
コミュニケーションを学ぶ講座などがある。
またサークル活動として、地域の環境保護活動、地元警察署と連携した防犯活動、
教育委員会と連携した小学 5・6 年生への英語指導支援も行われている。
留学生の受入
外国人留学生は、日本人学生の国際感覚に好影響を与えるため、交換留学を通じ
た外国人留学生の確保に積極的に取り組んでいる。
(2011 年度現在の外国人留学
生数 10 人。
)
日本社会・文化を学ぶ「ジャパンスタディ」
異文化理解の前提として、日本社会や文化等の知識を付けるため、文化人類学/
社会学の観点から日本について学ぶ「ジャパンスタディ科目」が開講されている。
「異文化理解の前提として日本に関する理解が必要である」ことを肌で感じるき
っかけとして、海外留学やインターンシップ、外国人留学生との交流等の機会を
積極的に設け、学生の気付きの機会を増やしている。
長期・短期の海外留学制度と国内外インターンシップ
海外留学は、留学先との単位互換が認められる長期留学(半年~1年)と、2週
間から5週間で2または3単位が認定される短期留学制度の2種類が設けられ
ており、成績優秀者には、海外留学の際の資金援助(返済不要の奨学金)も行わ
れている。
インターンシップは事前授業 2 単位、
実習 2 単位の計 4 単位として設定しており、
全学生の約 70%が2年次の夏と春休暇期間中に実習を経験している。実習先は
国内企業が多いが、インドネシアのホテル等、海外での実習プログラムも用意さ
れている。
30
【取り組みの効果
みの効果・
効果・課題・
課題・今後の
今後の方向性】
方向性】
◆取り組みの効果
高い就職率
2011 年春に卒業した 1 期生は、80 名の入学者に対し、53 名が卒業している。新
設学部のため、OB・OG が母校の人材を採用する「リクルーター採用」では、OB・
OG がいないため不利にならざるを得ない中、
就職志望者 41 名のうち 39 名が就職、
残り 2 名も卒業後に内定を取得する等、高い就職率を誇る。
また、グローバル・ビジネス分野(商社・運輸・物流等)
、ホスピタリティ分野
(旅行・観光・イベント等)といった、重点的に教育を行っている分野への就職
も果たしている。
◆課題と今後の方向性
学生の自信獲得のための教育期間の確保
大学教育に費やすことができる期間の不足が課題である。現状では、3 年次春学
期が終わると就職活動が始まるため、大学教育期間は 2 年半程度である。可能で
あれば、就職活動開始までに 3 年半は教育期間を確保したい。
教育期間を確保できれば、海外留学やインターンシップ等へのチャレンジの機会
を多く提供できる。再キャンパスでの学業以外に、学外での様々なチャレンジの
機会により高度な取り組みを行い、知識・スキル・コミュニケーション能力等を
磨くことには、学生の能力向上だけでなく、学生に自信を持たせる効果がある。
社会へ出た後も、様々なことにチャレンジするためには自信が必要である。その
ためにも、可能な限り教育期間を確保できることを求めている。
31
東京工業大学
~グローバルリーダーとなる高度理工系人材の輩出~
【大学概要】
大学概要】
所在地
東京都目黒区
設立年
1929年
学部構成
理学部、工学部、生命理工学部
大学の特色
我が国を代表する理工系総合大学として、130 年にわたってものづく
りを担う高度な技術者、理工系人材の輩出を担ってきた。大学院への
進学率も高く、博士課程やポストドクターに関する教育も充実してい
る。
【数値で
数値で見る大学の
大学の特徴】
特徴】
学生数
外国人
教員比率
1講座当たり
受講者数【※】
英語による
専門科目率
学部(全体)
4861 名
-%
23 名
15%
修士課程(全体)
3634 名
-%
20 名
-%
【※】英語(語学)授業の 1 クラスあたりの人数
【グローバル人材育成
グローバル人材育成の
人材育成の取り組み概要】
概要】
◆グローバル人材育成のポイント(概要)
理工学のみでなく豊かな教養を兼ね備えた人材の育成
本学で育成するグローバル人材は、理工学の高い専門性を有するだけではなく、
人文科学や芸術についても学べる環境を整えている。
大学院での教育を中心とした高度な専門教育
修士課程の学生が学部学生よりも多く在籍しており、必修単位数が多く、長期間
にわたる留学や海外研修を実施することは難しい現状を踏まえ、修士・博士一貫
コースなどの大学院課程でのグローバル人材育成を充実化させている。特に、海
外での研究体験や海外大学院との共同指導など高い専門性を有する人材育成を
行っている。
◆国内他大学との比較
大学アンケート結果では、要素Ⅲの制度・環境指標において、回答大学と比べ、
高い値を示している。
32
【グローバル人材育成
グローバル人材育成に
人材育成に向けた取
けた取り組みの経緯
みの経緯と
経緯とグローバル人材像
グローバル人材像】
人材像】
◆経緯
組織的な取り組みで「世界最高の理工系総合大学」を目指す
本学は、専門的な技術者の養成を目指して 1881 年に設立された東京職工学校を
母体として設立された我が国の代表的な理工系大学である。世界的にも高い評価
を得ており、更なる国際競争力の向上を目指して 2003 年に「国際化ポリシーペ
ーパー」を策定し、2009 年には「東工大ビジョン 2009」を策定している。この
中で、世界最高水準の理工系ネットワークの構築を目指すことが打ち出された。
基本方針として、国際交流の量ではなく質を高め、組織的に国際連携を推進しグ
ローバルな基準での取り組みの評価を行うことを示した。目指すのは、グローバ
ルな評価基準での「世界最高の理工系総合大学」である。
◆グローバル人材像と育成の視点
「知・技・志・和」を持つ高度な理工系人材の育成
理工学のみでなく、豊かな教養を身につけるため、人文科学や芸術を扱う「世界
文明センター」を設置し、学部、大学院にて講義を行っている。本学では、グロ
ーバル人材は英語力のみによらず、自国や他国の文化を理解する必要があると考
えている。大学院過程においても、このような視点から高い理工系の専門知識を
もつことに加え、豊かな教養と高い志を持ち、周囲との調和を保つことが出来る
「知・技・志・和」を持つ理工系人材の輩出を行っている。
大学院まで含めた人材育成を実施
現在は、学部学生が 1000 名、修士学生は 1200 名となっており、修士課程の学
生数が学部学生を上回っている。多くの学部学生が本学の大学院に進学すること
に加え、他大学からの大学院進学者を受け入れているため、修士学生数が多くな
っている。また、修士学生に加え博士課程の学生やポストドクターなどが在籍し
ている。このような状況にあるため、本学では学部教育のみならず、博士課程大
学院教育を含めた人材育成を行っている。
【グローバル人材育成
グローバル人材育成に
人材育成に向けた取
けた取り組み内容】
内容】
◆グローバル人材育成のポイント(詳細)
留学前の語学集中講座
学部学生の卒業要件に TOEIC の基準点を設け、英語力の向上を図っている。ま
た、留学を志望する学生には、
「英語塾」を開講し語学力の向上を図ることを計
画している。特に学部学生に対しては短期的な語学力向上を促し、また、修士課
程以上の学生については、研究に欠かすことの出来ない語学力の養成を目指して
いる。
学部、修士課程から海外での研究体験プログラムを実施
本学での特徴的な取り組みのひとつに TiROP;Tokyo Tech International
Research Opportunity Program が挙げられる。このプログラムは学部・修士向
けの研究体験型の短期交換留学プログラムであり、海外の連携大学で、研究プロ
33
ジェクトへの参加を行うものである。このプロジェクトは、研究への参加だけで
なく、英語による国際教養科目、特定科目に関連する専門科目を履修することが
できる。このプログラムは夏休みを利用して行われ、学生は 2~3 ヶ月の期間に
わたって海外での研究を体験することができる。
博士課程での高度なグローバル人材の育成
本学では、より高度な技術者及び
国際協働教育プログラム
国際協働教育プログラム
学術研究者を養成するため、大学
院博士一貫課程を設置している。
この大学院博士一貫教育では、海
グローバル理工系
グローバル理工系リーダー
理工系リーダーの
リーダーの育成
海外
国際協働教育プログラム
国際協働教育プログラム
リーディング大学
リーディング大学
若手研究者
Global Edge Institute
ポスドク受入
ポスドク受入・
受入・派遣
外研修及びインターンシップを実
施することとなっている。海外研
修の実施によって語学力の向上を
はじめとしたグローバル人材に必
要な能力が培われるとともに、企
留学生受入
短期海外派遣
プログラム
博士
共同指導型
交換留学プログラム
交換留学プログラム
修士
国際UROP
※
国際
Study Abroad
東工大
国際キャリア
国際キャリア支援
キャリア支援
学士
※国際UROP
国際UROP:
UROP:学部学生向
けの研究体験
けの研究体験プログラム
研究体験プログラム
研究体験型海外教育
プログラム
海外研修・
海外研修・
長期インターンシップ
インターンシップ
長期
大学院合同フ
大学院合同プログ
ログラム
清華大学他
博士一貫コース
博士一貫コース
国際大学院
プログラム
国際教養教育
高校生への
高校生への啓発活動
への啓発活動
特徴:
特徴:入学から
入学から卒業
から卒業に
卒業に至 るスパイラルアップ型教育
スパイラルアップ型教育プログラム
型教育プログラム
理工系学生向けの
理工系学生向けの魅力的
国際教育プログラム
けの 魅力的な
魅力的な国際教育プログラム
業におけるインターンシップを取
り入れることで実践力を高めることが可能である。
他にも、博士課程では海外の大学と連携した共同指導型プログラムを実施してい
る。このプログラムでは、海外連携大学の研究室および本学の研究室にて研究を
行うことで、高度なプロジェクト推進能力、問題解決能力を育成している。本学
と海外大学の双方の教員が研究指導を実施することによって、テーラーメード型
の質の高い教育・研究指導を行っている。
アカデミア以外での活躍も想定した博士人材の育成
平成 23 年よりグローバルリーダー教育院を設置し、博士一貫課程の中に、グロ
ーバルリーダー育成の科目を設置している。グローバルリーダー教育院では、育
成する人材の活躍の場としてアカデミアだけではなく、政財官の分野でリーダー
として活躍する人材の輩出を想定している。そのため、グローバルリーダーシッ
プに関する科目やディベートやグループワークを中心とした教育を実施してい
る。また、グローバル教育院でのカリキュラムに在籍する学生は授業料を全額免
除するなど、経済的な支援も充実させている。
◆関連する取り組み
語学力・コミュニケーション力:受入留学生に対する日本語教育や生活支援
本学では、留学生の受入も重要なグローバル教育だと考えている。本学のキャン
パス内においても多様なバックグラウンドを持った学生を確保することは教育
の質を高めるために必要だと考えており、そのため受入留学生の支援制度も充実
化を図っている。
受入留学生に対しては「サバイバル日本語」講座を開講し、留学生であっても日
本国内で生活が出来るための日本語力を得られるようにしている。学内の教育は
英語で受けることが可能だが、日常生活を行うには日本語の修得が必要である。
また、語学科目の提供だけではなく、日本の産業や環境・エネルギー問題、日本
文化への理解を促す講義を設置している。他にも、日本人学生をチューターにつ
けることによって留学生の日本での生活支援を行うなど、留学生が日本の生活に
34
馴れるための制度を整えている。
世界のトップクラスの大学院と連携
現在は 150 以上の大学と交流協定の締結など国際連携を推進している。特にアジ
アトップクラスの理工系大学のネットワークである ASPIRE リーグ,AOTULE
リーグや欧州のトップクラスの理工系大学のネットワークである IDEA リーグ
との協定などを行っている。
国際連携は、本学の国際化ポリシーや世界最高の理工系大学ネットワークの構築
といった構想に共感を得ることができ、また高い教育カリキュラムや研究能力を
持った大学に絞って推進している。
【取り組みの効果
みの効果・
効果・課題・
課題・今後の
今後の方向性】
方向性】
◆取り組みの効果
産業界から高い評価を得る高度理工系人材の輩出
本学が育成に注力している博士人材は、一般に自らの専門分野の高い専門知識を
もつ一方で視野が狭いことなどから企業から敬遠される傾向が見られている。し
かしながら本学では、海外での研究経験や企業でのインターンを実施するなど幅
広い経験を行っている。このような経験を積んだ博士人材の輩出や企業でのイン
ターンを通じ本学博士人材の評判を高めることに繋がっている。
◆課題と今後の方向性
多くの学生が異文化を体験する制度を目指す
現在は、正規の留学生を想定したカリキュラムの充実化を図っているが、今後は
短期留学や国際交流プログラムの充実化を図り、学生の多くが異文化を体験でき
る大学を目指していきたいと考えている。
組織のグローバル化を図る
現在は、在外研究を行う若手研究者が減っていると感じており課題と認識してい
る。若手研究者が積極的に海外で研究を行い、それを評価するような制度を作っ
ていく必要があると考えている。
将来的には全ての教員と多数の職員を海外経験者としたいと考えている。現在
は、海外経験豊富な教職員が不足しており、一部の教職員に国際化の負担が集中
している。競争力のあるグローバル化を推進していくには組織のグローバル化が
欠かすことが出来ないと考えている。
入学前教育の充実化でグローバル人材育成の素地をつくる
グローバル人材育成の取り組みにおいて重要なのは、大学入学後の学びだけでは
なく、それ以前の教育も重要だと考えている。そのため、高校と連携し高校生に
向けたグローバル教育、理工系教育を実施することを考えている。このような早
期教育を実施することで、グローバルな視野を持つ理工系人材が輩出される素地
を作っていく必要があると考えている。
35
豊橋技術科学大学
~実務能力を重視した高度技術系人材の育成~
【大学概要】
大学概要】
所在地
愛知県豊橋市
設立年
1976年10月
学部構成
工学部
大学の特色
全国の高等専門学校からの3年次編入学生を中心として、高度専門的
な技術開発を担う人材育成を行う。ほとんどの学生が修士課程まで進
学しており、学部だけではなく大学院教育まで一貫した技術者育成を
行っている。
【数値で
数値で見る大学の
大学の特徴】
特徴】
学生数
学部
修士課程
外国人
教員比率
英語科目1講座
当たり受講者数
英語による
専門科目率
1148 名
2.9%
29 名
1.4%
908 名
2.9%
-名
28%
【グローバル人材育成
グローバル人材育成の
人材育成の取り組み概要】
概要】
◆グローバル人材育成のポイント(概要)
世界のニーズにもとづいた研究開発を担う人材
本学で育成するグローバル人材は、ニーズに基づいた研究開発を担う高度技術系
人材である。そのため、産業界や海外大学との連携を積極的に推進し、実務能力
の向上を目指している。
語学力・コミュニケーション能力の養成:キャンパス内のグローバル化
留学や海外研修の充実だけではなく、キャンパスに多様な学生を受け入れ、キャ
ンパス内をグローバル化させることにも注力している。また、大学院では英語の
みで学位を取得できるプログラムの整備や、海外大学院とのダブルディグリー制
度を構築している。
◆国内他大学との比較
大学アンケート結果の結果では、要素Ⅰのプログラム指標、要素Ⅱの制度・環境
指標が他大学と比べ高い値を示している。
36
【グローバル人材育成
グローバル人材育成に
人材育成に向けた取
けた取り組みの経緯
みの経緯と
経緯とグローバル人材像
グローバル人材像】
人材像】
◆経緯
「世界に開かれた大学」として開学
本学は、高等専門学校からの編入学生が在学生の約8割を占める大学であり、実
務能力の養成に重点をおいたカリキュラムを整備している。
1976 年の開学にあたり、
「世界に開かれた大学」となることを基本理念として掲
げており、開学以来グローバル人材育成を念頭においた教育、研究を行ってきた。
また、開学にあたって積極的な地元の誘致などもあり、開学から現在まで産業界
や地域と連携し、実務能力の養成を意識した教育を行っている。
◆グローバル人材像と育成の視点
世界のニーズにもとづいた技術開発を担う人材
本学では、グローバル人材とは単に英語が堪能な人材というだけではなく、専門
知識を有し、他者とのコミュニケーションの中から、ニーズを汲み取り、研究開
発に結びつけることが出来る人材だと考えている。すなわち、世界で必要とされ
る技術開発を担うことの出来る人材が本学の育成するグローバル人材である。
そのために本学で育成しているのは、①技術科学の専門知識、②高いコミュニケ
ーション能力、③プレゼンテーション能力、である。こういった能力は、企業に
おいてより強く求められている能力である
本学では、学部生のうち8割程度が進学しており、教育を考える際は、高専の卒
業生が編入する学部3年~博士前期2年までの4年間が基本となっている。ま
た、本学では博士後期課程への進学者も一定数おり、博士後期課程の学生の教育
にも注力している。本学では博士人材の学術界への輩出のみならず、産業界への
輩出も念頭において教育をしている。一般に、博士人材は専門領域に特化し視野
が狭いといった点が懸念され、企業が採用を見送るケースが多い。そのため、本
学では博士人材であっても、専門領域以外にも幅広い分野に興味を持ち、理解し、
それを自らの専門領域にフィードバックできる人材を育成したいと考えている。
【グローバル人材育成
グローバル人材育成に
けた取り組み内容】
内容】
人材育成に向けた取
◆グローバル人材育成のポイント(詳細)
留学だけではなくキャンパス内のグローバル化を図る
本学では留学生の派遣だけでなく、積極的な留学生の受入れを行っている。全て
の学生が留学できる環境を整えることは非常に難しいため、派遣留学とともに、
留学生を受け入れることで、キャンパス内のグローバル化を図っている。
中国や韓国と言った東アジアの国、地域からだけではなく、インドネシアやマレ
ーシアからの留学生も多い。現在は 20 カ国以上の国々から 200 名を超える留学
生を受け入れており、全学生の 10%が留学生となっている。
博士前後期課程においては、英語のみで修了できるコースを設けており、学生が
英語での単位習得を行えるように設計している。キャンパスの多様性確保や優秀
37
な人材を獲得する意味において留学生を積極的に受け入れることは非常に重要
な観点である。日本への留学は言語の課題があり、本学のように英語のみで学位
を取得することの出来るコースの設置は重要だと考えている。現在は英語コース
への在籍は留学生のみとなっているが、日本人学生にも開放しており、科目単位
での参加をする積極的な学生もいる。
実務訓練の実施
本学では、学部4年次に全員が実務訓練と呼ばれる企業等での長期実務実習を行
っている。また、実務訓練は国内企業のみならず、海外の大学や研究所への派遣
を行うこともある。実務訓練は大学院での研究を行う前に、自らの研究が社会と
どの様に繋がっているのか、また、どの様な技術や研究が求められているのかを
考える機会になる。
海外大学とのダブルディグリープログラム
博士前後期課程ではフィンランドやスウェーデンの大学とダブルディグリープ
ログラムがあり、3年間で博士号を2つ取得する事が可能となる。本学に加え、
これらの大学に1年間在籍し、研究活動を行うことで、2つの博士学位を取得す
ることが可能となっている。ただし、学位の認定は各大学が行っているため、3
年間では1つの大学からしか学位が取得できないこともある。本学は高度な技術
者養成には大学院が重要であると認識している。このため、修士課程以上の大学
院教育に注力している海外の大学と積極的な連携を推進している。
インドネシアでの国際交流プログラムを実施
本学では、インドネシアのバンドン工科大学と積極的な連携を行っており、毎年
十数名の学生をインドネシアに派遣し、議論を行う国際交流プログラムを実施し
ている。インドネシアでの議論は当然ながら英語で行っており、異なる国や文化
を持つ学生と交流を持つことで、広い視野を得ることに繋がっている。
◆関連する取り組み
習熟度別クラスの実施
本学では、入学生の約8割を占める高等専門学校からの編入がある3年次に
TOEIC を用いたプレイスメントテストを実施している。高専からの編入生は語
学力の差が大きいこともあり、語学力の底上げを図るとともに、より高い語学力
を持つ学生をさらに伸ばす環境を整えるために、TOEIC を活用した習熟度別ク
ラス編成をしている。他にも学内の web 環境で英語学習ができるような設備を
整えており、学生の自主的な語学学習を促している。
地域との連携
本学は東三河地域の自治体や産業界からの積極的な誘致があって開学が実現し
ている。そのため、共同研究や受託研究など地域の企業との産学連携も積極的に
進めている。また、豊橋商工会議所が組織した「豊橋技術科学大学協力会」も運
営されており、本学学生の海外実務訓練や海外インターンシップに対する経済的
支援を頂いている。
38
受入留学生の支援
留学生の受入れに当たっては、日本人学生のチューターをつけ、日本の生活に早
くなじめるような支援体制を整えている。また、学内に国際交流会館を設置して
おり、留学後の生活を支援している。この国際交流会館は単身世帯用の部屋だけ
でなく、夫婦向けや家族向けの部屋も用意しており、多様な留学生を受け入れる
体制を整えている。実際に、本学の受入れ留学生は単身者ばかりでなく、家族や
夫婦で来日するケースも多数ある。
海外大学のアカデミックカレンダーにも対応
本学では、入学時期は 4 月と 10 月の 2 回設けており、海外大学のアカデミック
カレンダーにも対応できる形としている。3 年前までは独自の三学期方式で授業
を行っていたが、他大学との単位互換などをスムーズにするため、セメスター制
度に変更している。
【取り組みの効果
みの効果・
効果・課題・
課題・今後の
今後の方向性】
方向性】
◆取り組みの効果
自らの能力を客観的に把握し、社会とのつながりを知ることで、さらなる学びに
つながる
海外交流プログラムや留学を通じて、学生は異文化に触れることができるととも
に、自らの語学力の低さや視野の狭さなど世界基準で自分の能力を客観的に把握
することが出来る。また、実務訓練では自分が専門とする技術の社会とのつなが
りを見出し、どのような価値があるのかを考えることになる。このような体験を
通じて得たことや考えたことが、更なる学びや努力のモチベーションに繋がって
いる。したがって、異文化に触れることや社会との接点を知ることそのものの効
果だけでなく、その後の教育においても大きな効果を持っている。
◆課題と今後の方向性
学生のモチベーションを高める教育環境の整備
大学における学びは与えられるものではなく、自主的に行われるものである。グ
ローバル人材育成に関しても同様だと考えており、学生の視野を広げ、外に目を
向けさせるとともに、モチベーションを高める教育を実施していく必要があると
考えている。最近は学生の内向き志向が問題視されているが、本学では外向き志
向の学生も多く在籍している。このような外向きの学生を更に増やすこと、外向
きの学生が成長できる環境をさらに充実させていくことが必要である。
大学組織のグローバル化を目指す
現在、
外国籍の教員が 6 名
(2.9%)
であり、
また海外での学位取得者は 9 名
(4.4%)
となっている。今後は外国籍の教員、海外学位取得者の教員及び外国人研究者の
招聘を増やしていきたいと考えている。また、その他にも職員のグローバル化も
欠かせないと考えており,現在、職員に対してもグローバル化対応の研修を行っ
39
ているところである。職員に対して、半年間の語学研修に加え、海外の大学で事
務職員としてのインターンを半年間行うなど、教職員や大学組織のグローバル化
への取り組みも積極的に推進している。
40
明治大学 国際日本学部
~強い『個』として広く国際社会で活躍できる人材を育成~
【大学概要】
大学概要】
所在地
東京都千代田区
設立年
1881年
学部構成
法学部、商学部、政治経済学部、文学部、理工学部、農学部
経営学部、情報コミュニケーション学部、国際日本学部
大学の特色
9 つの学部と大学院、数多くの学びの施設を備えた総合大学。
「個を強くする大学」として、学部間共通総合講座や少人数教育など
新たな取組を実施。2008 年に国際日本学部を設置。
【数値で
数値で見る大学の
大学の特徴】
特徴】
学生数
外国人
教員比率
国際日本学部
1,432 名
【※】英語(語学)授業の 1 クラスあたりの人数
約 30%
1講座当たり
受講者数【※】
25 名
英語による
専門科目率
20%
【グローバル人材育成
グローバル人材育成の
人材育成の取り組み概要】
概要】
◆グローバル人材育成のポイント(概要)
英語漬けの毎日
1 年次に「話す」
「聴く」
「読む」
「書く」の必修科目授業をそれぞれ週 2 回、合
計 8 コマ受講。
留学しても 4 年で卒業できる効率的なシステム
2 年次の後期より、英語圏にある国際日本学部の海外提携校へ正規の学生として
派遣。単位認定の対象。
English Track の創設
2011 年度より英語で授業を履修し、学位を取得できる English Track の創設。
◆国内他大学との比較
基盤指標、要素Ⅰ~Ⅲの全てで、回答大学(学部)の平均値を上回る
基盤指標、要素Ⅰ~Ⅲの全てにおいて、アンケート回答大学(学部)の平均点を
上回っている。特に、要素Ⅲ(異文化に対する理解と日本人としてのアイデンテ
ィティーの確立)に関する教育プログラムが、相対的に高い値を示している。
41
【グローバル人材育成
グローバル人材育成に
人材育成に向けた取
けた取り組みの経緯
みの経緯と
経緯とグローバル人材像
グローバル人材像】
人材像】
◆経緯
「世界に開かれた大学」の実現
明治大学は、戦略的な中期目標として「世界に開かれた大学」の実現を掲げ、次
の3点に取り組んでいる
①
国際的な「知識基盤社会」の確立を目的に、国際的に卓越した研究を基軸
に研究者・学生を海外から獲得すること
②
途上国・新興国に大学教育を通じてソフト面で支援することで国際社会に
貢献すること
③
日本の「知」の情報発信力を強めること
これまでの国際交流の取り組みが認められ、本学は 2009 年に文部科学省から国
際化拠点大学(グローバル 30)として採択された。これに伴い、国際連携機構
ならびに国際連携本部が設置され、2010 年には機構所属の特任教員や客員教員
が新たに採用され、学長をトップとした国際連携推進のための組織作りが進んで
いる。
明治大学の国際化拠点構想は,総称して「グローバルコモン・プログラム」と呼
んでおり、この構想を実現させる基幹学部として「国際日本学部」が開設された。
◆グローバル人材像と育成の視点
強い『個』として広く国際社会で活躍できる人材を育成
国際日本学部は、日本研究を中心とした先進的かつグローバルな教育システムと
双方向の留学生交流ならびに国際学術交流に基づいて、明治大学の一層の国際化
を担い、
「強い『個』
」として広く国際社会で活躍できる人材を育成することを教
育理念としている。
国際日本学部は、日本学を中心領域としているが、それは伝統的な日本文化に加
えて、今日世界への情報発信が強く求められている現代日本文化、さらにはその
発信基盤としての企業・産業・社会をも含めた広い意味での日本の文化と社会シ
ステムを教育研究対象としている。またその一方で、集中的な英語教育と異文化
を正しく理解するための国際教養教育にも力を注ぎ、
「世界の中の日本」を自覚
して、積極的に世界に情報発信しうる真の国際人を育成することを教育目標とし
ている。
具体的な手法として、2 年次前期までの集中的な英語教育に加え、1・2 年次の学
習を基礎にした 3 年次からの
コース制(日本文化コース・
日本社会システムコース)に
より様々な角度から日本の文
化・社会の研究を行うととも
に、異文化を正しく理解する
ための国際教養教育も行って
いる。
42
【グローバル人材育成
グローバル人材育成に
人材育成に向けた取
けた取り組み内容】
内容】
◆グローバル人材育成のポイント(詳細)
「英語で仕事ができる」人材をつくる徹底的な語学教育
国際日本学部の英語カリキュラムは、国際社会で活躍できる英語力、英語で仕事
ができる英語力を獲得することを到達目標としている。そのために、1 年次に「話
す」
「聴く」
「読む」
「書く」の必修科目授業を前期、後期ともにそれぞれ週 2 回、
合計 8 コマ受講する。これは平均的な大学の必修英語時間数の約 4 倍である。
また、2 年次の前期では、スピーチ及びプレゼンテーション、アカデミックライ
ティング、TOEFL プログラムの必修科目をそれぞれ週 2 コマ、合計 6 コマ受講
する。1 年半にわたり実施される英語集中プログラムにより、学生の英語力は確
実に向上する。
同学部では、TOEIC 800 点以上、TOEFL iBT 80 点以上を到達目標としている。
英語カリキュラムを担当するのは、10 人以上のネイティブ・スピーカー専任教
員である。ほとんどの教員が、欧米の大学院で MATEL(第二言語としての英語
教授法修士号)を取得している。
ネイティブ・スピーカーの教員はオフィスアワーも担当しており、学生は訪問し、
英語の授業での疑問点について質問したり、学習の方法についてアドバイスをも
らったりすることが出来る。これらを通じて、学生に対し、授業以外でも英語を
多く使う機会を提供している。
English Track の創設
英語による授業のみで学位が取得できる「イングリッシュトラック」を創設した。
イングリッシュトラックの学生は、一般の学生とは異なる内容の入学試験を受験
し、通常とは別コースとなるが、個別の授業については日本人学生も履修登録す
ることができ、実際に日本人学生も受講している。国際日本学部創設の際に英語
で授業を行うことを想定して教員を採用していることもあり、各教員の授業につ
いて、日本語・英語の双方で行っている。
ただし、留学生がすべて英語の授業をとることは通常なく、多くは 3 年次から、
留学生が日本語による授業を取っている。これにより、日本語・英語の授業双方
において、国内学生と留学生による相乗効果が生まれている。
国際日本学部独自の「セメスター留学」
同学部では、2 年次前期まで集中的な英語学習によって、留学に十分な英語力
(TOEFL iBT61 点以上)を身に付けた学生には、2 年次後半以降、休学せずに
大学に在籍したまま留学するチャンスを提供している。
留学先で取得した単位は、一定条件のもと、国際日本学部の単位として認定され
るので、留学をしても 4 年間で卒業することが可能である。
この留学プログラムへの参加者は、計 70 名程度で、国際日本学部 1 学年の 2 割
程度の学生が留学を経験している。
海外留学を専門(米国留学アドバイザー)とする講師もおり、
「海外留学と国際
教育交流」といった授業も開講している。
43
◆関連する取り組み
多角的に日本を学ぶ
国際日本学部では、
「日本語」の授業について、留学生だけでなく日本人も必修
としている。日本語でわかりやすく説明できないものを英語では説明できないた
め、表現方法を指導し、学生の日本語に対する意識を高めている。
具体的には、
「読む」
「書く」
「聞く」
「話す」の基礎力を向上させるために、
「日
本語表現(文章表現)
」
、
「日本語表現(口語表現)
」が、25 人前後のクラスで必
修科目として設置されている。日本人学生は 1 年次後期と 2 年次後期で、外国人
留学生は 2 年次の前期と後期でこの 2 科目を履修している。
また、国際的な観点から日本を見る「国際日本学講座」も全員必修としている。
加えて、全学部公開授業として、
「留学のすすめ」を開講し、異文化間教育、留
学、多文化共生についての授業も実施している。
【取り組みの効果
みの効果・
効果・課題・
課題・今後の
今後の方向性】
方向性】
◆取り組みの効果
多様な留学生と接することで、日本人学生の意識や行動に変化
国際日本学部において受け入れている留学生は 80 名程度である。内訳は、交換
留学生 30 名程度、学部留学生 45 名程度、イングリッシュトラック留学生が 10
名程度である。留学生と接することによって、日本人学生の意識や行動も変わり
つつある。例えば、ディスカッションの際、授業が日本語、英語の場合に関わら
ず、留学生は積極的で、限られた時間の中で精一杯やろうという姿勢やハングリ
ー精神が強い。こうした留学生の態度に触発される日本人学生も多い。
今年度、はじめての卒業生を輩出するため、就職率はこれからであるが、徹底的
な英語教育、4 年間で卒業できる留学システムについては、企業の相応の評価を
得ていると認識している。学生の就職希望は、メディア関係、教育関係や商社等
が多いようである
2012 年 4 月より、国際日本学部の大学院(国際日本学研究科)が開設されるこ
とから、大学院に進学し、グローバル化に専門的見地から活躍する人材も増えて
いくものと思われる。
◆課題と今後の方向性
新キャンパスへの移転に伴い、社会連携を意識したプログラムを展開予定
2013 年 4 月には、明治大学の第 4 キャンパスとして、中野にキャンパスを開設
する。国際日本学部も中野に移転する予定である。校舎には、最新の自学自習エ
リアであるセルフアクセスセンターをはじめとする充実した教育研究設備が整
う予定である。
また、同キャンパスは、
「国際化、先端研究、社会連携の拠点キャンパス」を目
指している。近接して、他大学がキャンパス等を設置するため、明治大学とあわ
せて計 8,000 人の学生が集まる計画である。また、企業が入居するオフィスビル
も同じ場所に 2 棟建設され、計 1 万人の社会人も集まる。こうした、地の利を生
かしたグローバル人材育成プログラムを積極的に推進していく予定である。
44
立教大学 経営学部
~リーダーシップとビジネス倫理の学びを重視した先進的経営学部~
【大学概要】
大学概要】
所在地
東京都豊島区
設立年
1874年
学部構成
経営学部など10学部 27学科
大学の特色
キリスト教の信仰に裏付けられた全人教育を目指す大学。
広い視野と将来への展望を培い、総合的な判断力を養成する、いわゆ
る”リベラルアーツ”の学校としての地位を確立している。
【数値で
数値で見る大学の
大学の特徴】
特徴】
学生数
大学全体(学部)
外国人
教員比率
19,411 名
うち当該学部
1,517 名
【※】英語(語学)授業の 1 クラスあたりの人数
1講座当たり
受講者数【※】
英語による
専門科目率
14.7%
8名
5.3%
26.5%
約 20 名
35.0%
【グローバル人材育成
グローバル人材育成の
概要】
人材育成の取り組み概要】
◆グローバル人材育成のポイント(概要)
グローバル人材像
国際化した企業の経済的機能と社会的役割を理解し、「グローバル・バリュー」
――国際社会でビジネスリーダーとして自己を実現させ、社会に貢献することの
できる能力――をもった人材の育成を目指す。
英語力の育成
「英語を学ぶ」のではなく「英語で学ぶ」ことを目指し、2 年次後期には英語で
経営学を学べるレベルを目指す。
ビジネス倫理を学ぶプログラム
リーダーシップと同時に、企業の社会的責任、誠実、正義、持続可能性といった
ことを学び、それを通じて日本人としてのアイデンティティーも形成する。
◆国内他大学との比較
大学アンケート結果では、回答学部の平均と比べ、要素Ⅰ~要素Ⅲのすべての指
標において相対的に高い値を示している。
特に要素Ⅲのプログラム指標において、高い値を示している。
45
【グローバル人材育成
グローバル人材育成に
人材育成に向けた取
けた取り組みの経緯
みの経緯と
経緯とグローバル人材像
グローバル人材像】
人材像】
◆経緯
経済のサービス化・グローバル化を受けて新設
1980 年代から 90 年代にかけて進んだ経済のサービス化を踏まえ、経済学部経営
学科と社会学部産業関係学科を統合・格上げする形で、2006 年に「経営学部」
が設置された。
最も実世界に近い学問である経営学を教える新学部として、ビジネスのグローバ
ル化を踏まえ、
「グローバル・バリュー」を備えた今までにない学部とすること
が目指された(学部のキャッチコピーは「まれにみる経営学部」
)
。
ビジネスにおける倫理を身につける新しいプログラム「GBI(Good Business
Initiative)
」を 2011 年度から導入し、クリスチャン・スクールの経営学部とし
ての独自性も打ち出す。
◆グローバル人材像と育成の視点
幅広い知識と「グローバル・バリュー」を持つビジネスリーダーの育成
国際化した企業の経済的機能と社会的役割を理解し、
「グローバル・バリュー」
――国際社会でビジネスリーダーとして自己を実現させ、社会に貢献することの
できる能力――をもった人材の育成を目指している。
合理性や効率の追求だけでなく、異文化理解や企業の倫理的行動なども経営のひ
とつの要素と考え、マーケティング、会計学、ファイナンス、人材マネジメント、
組織論、企業戦略論などの様々な経営分野を、より実践的かつ総合的に学ぶこと
を目指す。
ビジネス倫理を学ぶことを通じて日本人としてのアイデンティティーも形成
学部の学科共通科目である GBI では、企業の社会的責任、誠実、正義、持続可
能性といったことを学ぶ。そこには、日本の企業が伝統的に努めてきた点も含ま
れ、日本のビジネスパーソンとしてのアイデンティティー形成にも関わる。
<GBI 科目の内容例>
授業の目標
授業の内容
授業計画
「企業」や「ビジネス」に関する標準的な経営思想、経済社会の中で企
業がどのような役割、権利、義務を持つかについての理論を学ぶ。
「グッド・ビジネス」についての理論的伝統のなかからビジネスについ
ての広範囲な課題や問題を扱う。全体として本講は、ビジネスをより広
義に捉え直す契機を提供し、ミッション、イノベーション、インテグリ
ティが企業業績にとっていかに決定的な構成要素であるかを理解させ
る機会となろう。
イントロダクション:立教経営学部とグッド・ビジネス・イニシアティ
ブ(GBI)――ビジネスリーダーとしてのわれわれの役割
1.グッド・ビジネスとは:経済価値とウェルビーイング
2.ビジネスの目的:利益と社会的イノベーション
3.ビジネスの機能:競争とコラボレーション
4.ビジネスの価値:成長と発展
5.ビジネスの範囲:権利と利害
6.ビジネスの未来:リスクと機会
46
【グローバル人材育成
グローバル人材育成に
人材育成に向けた取
けた取り組み内容】
内容】
◆グローバル人材育成のポイント(詳細)
「英語を学ぶ」のではなく「英語で学ぶ」ための英語教育
経営学部の特に国際関係学科(定員 140 人)では、
「英語を学ぶ」のではなく「英
語で学ぶ」ことを目指している。1 年次後期から学部専門の英語教育を受け、2
年次後期には英語で経営学を学べるレベルを目指す。国営経営学科の 3 年次以上
では、3 分の 2 の授業が英語による開講となる。
進級に英語力要件はないが、本格的な経営学の授業を英語で受けるためには、
TOEIC 800 点以上の力が求められる。
1 年次には 3 週間の短期留学もある。留学中は、企業へのヒアリング、英語での
プレゼンテイションを行う。
交換留学については海外 40 校近くと協定を結んでおり、2 年次後半から半年な
いし 1 年間の留学が可能である。年間 30~40 人が留学しており、留学枠は埋ま
っている。ダブルディグリー・プログラムも行っている。
「リーダーシップ」と共に「フォロワーシップ」も学ぶプログラム
「グローバル・バリュー」を持つビジネスリーダーを育成するため、リーダーシ
ップを重視したプログラムを組んでいる。リーダーシップとは「上から目線」
「ト
ップダウン」ということでは決してな
く、あくまで「ピア」な関係の中での
リーダーシップを学び、同時にフォロ
ワーシップも学ぶことを目指ししてい
る。
リーダーシップとフォロワーシップの
両面を学ぶために、座学ではなくグル
ープワークを重視する。
最大 30 人程度
の 1 クラスを 5~6 グループに分割す
る。気の合う同士で組ませるのではな
く、最初はランダムにグループ分けし、
47
その後、自分は何が出来るかをお互いにアピールする中で、パフォーマンスを最
大化できるグループ編成を学生たち自身に考えさせる。
グループワークで課題を終えた後に振り返りを行う際は、グループ内でお互いを
評価する。他人を適切に批判して建設的な評価を行う力、相手にとって耳の痛い
ことを言う時のモノの言い方、逆に自分にとって都合の悪いことにも耳を傾ける
力を身につける。
◆関連する取り組み
学生のリアリティ感を重視した産学連携による授業課題
リーダーシップ・プログラムのグループワークでは、1 年次から「自分のやって
いることが社会に繋がっている」というリアリティを感じてもらうため、産学連
携による課題設定を行っている。2011 年度は、1 年生がローソン、2 年生がネッ
ト保険会社との連携による課題であった。企業との連携は、都会にある大学とし
ての利を活かした取組と考えている。
産学連携による設定課題に取り組む「プロジェクト実行学期」は前期に置かれ、
後期は「スキル強化学期」としている。先にプロジェクト学習を行うのは、学び
のモチベーションを高めると共に、プロジェクトを通じて自分に何が足りないか
を学ばせ、それを踏まえてスキル強化に取り組ませるためである。
外国人教員の充実
学部の 34 人の教員のうち 9 人が外国籍である。この他に、毎年 4 人、海外に大
学に籍を置く教員のサバティカルを受け入れて授業を行ってもらっている。
【取り組みの効果
みの効果・
効果・課題・
課題・今後の
今後の方向性】
方向性】
◆取り組みの効果
金融、総合商社、メーカー、外資系を中心にほぼ 100%の就職率
2011 月 3 月卒業者(2 期生)の就職率は、経営学科が 98.2%、国際経営学科が
99.1%と、ほぼ 100%に達している。就職先は、金融(銀行、郵便局、証券など)
、
総合商社、メーカー、外資系が比較的多い。
多様性を重視する学部の方針を反映して、ベンチャー企業への就職や自ら起業す
ることを選択する学生もいるなど、就職先が多様化していることも特徴である。
◆課題と今後の方向性
留学生受入の拡充による多様性の促進
リーダーシップ学習のためにも学内に「多様性」が必要であると考えているが、
立教大学は関東圏出身の学生が 7 割を占めており、その点であまり多様でない。
そのため、入試の多様化により受け入れ留学生の増加を図っている。留学生受け
入れは年間 60 人ほどで、欧州からが多い。アジアの経営を英語で学べる大学は
決して多くなく、それがアピールになっている。
留学生の面倒を日本人学生がみる「バディ制度」を作り、留学生受入環境を整備
すると共に、日本人学生にも多様性を学ぶ機会を提供している。
48
立命館アジア太平洋大学
~アジア太平洋の未来創造に貢献する人材の育成~
【大学概要】
大学概要】
所在地
大分県別府市
設立年
2000年4月
学部構成
アジア太平洋学部、国際経営学部
大学の特色
世界 80 の国・地域から集まる国際学生が学生の半数を占め、
教員も約半数が外国籍という多文化・多言語のキャンパスを創造
している。日英二言語教育システムを展開。
【数値で
数値で見る大学の
大学の特徴】
特徴】
学生数
アジア太平洋学部
外国人
教員比率
2803 名
国際経営学部
2944 名
(注1)学生数は 2011 年 11 月 1 日現在。
(注2)【※】英語(語学)授業の 1 クラスあたりの人数
1講座当たり
受講者数【※】
英語による
専門科目率
約 49%
約 20 名
100%
約 44%
約 20 名
100%
【グローバル人材育成
グローバル人材育成の
人材育成の取り組み概要】
概要】
◆グローバル人材育成のポイント(概要)
徹底した言語運用能力の育成
英語と日本語による二言語教育システム
授業は日本語と英語の双方で開講
民間実業現場との連携
企業と連携したキャリア教育プログラムを実施しており、
「職業意識とキャリア
開発」
・
「業界分析」を 20 数社の協力の下、開講(2010 年度実績)
。
就職活動支援の大きな柱として、
「オンキャンパス・リクルーティング」を実施
国際教育寮での学びと気づき
1310 室の国際教育寮 AP ハウスでは、新入留学生と約 300 名の国内学生が共同生
活を営み、日々の生活と相互交流を通して異文化理解が育まれている。
◆国内他大学との比較
大学アンケート結果では、回答学部の平均と比べ、要素Ⅰ~要素Ⅲのすべての指
標において相対的に高い値を示している。
特に要素Ⅲ(制度・環境)指標において、高い値を示している。
49
【グローバル人材育成
グローバル人材育成に
人材育成に向けた取
けた取り組みの経緯
みの経緯と
経緯とグローバル人材像
グローバル人材像】
人材像】
◆経緯
多様性から創造性を生み出すグローバル大学へ
立命館アジア太平洋大学(以降、APU と表記)は、
「アジア太平洋地域の持続的
発展と共生への貢献」
、
「日本の大学に
おける国際化の新しいモデル創造」
、
「立命館学園全体の国際化への寄与」
の 3 点を開学のコンセプトとして、
2000 年 4 月に開学した。
開学時に挙げた大学環境に関する目標
は、3 つの「50」であった。すなわち、
国際学生(受入留学生)の割合が「50」%、学生の出身国・地域が「50」カ国・
地域以上、教員構成(外国籍教員比率)が「50」%であった。当時の大学の受入
留学生の割合は、平均で 3%程度であり、大きな挑戦であった。
国際学生(受入留学生)の国籍も、日本への留学が多い中国・韓国等に偏るので
はなく多様性を目指した。世界でも例を見ない「マルチカルチャラル・キャンパ
ス」-多文化環境の中で学生が真に成長する教学創造を目標とした。
◆グローバル人材像と育成の視点
多様な文化・価値観が交わるなかで育成する人材
アジア太平洋の未来創造に貢献する人材として、下記の人材の育成を目指してい
る。
⑤ 相互理解の立場で様々な国・地域の人々と協力できる国際感覚と国際的視野
を身に付けた日本人
⑥ 日本の高等教育機関で学び、日本を正しく理解し、国際社会で活躍する国際
学生
⑦ 日本と諸外国の間の友好信頼関係の構築と各国・地域の将来像の社会・経済
の発展に寄与する人材
上記の人材を育成するために学生に習得させるべき能力・行動特性として下記に
あげる事項に注力している。
① 高い志、倫理観、熱意・意欲、チャレンジ精神
② 幅広く深い教養、深い思考力、言語運用能力、情報リテラシー
③ 異文化理解、相互の信頼構築、豊かなコミュニケーション、協働力、共感
④ 問題発見・課題設定力、問題解決能力、意思決定力、実践力、行動力。
50
【グローバル人材育成
グローバル人材育成に
人材育成に向けた取
けた取り組み内容】
内容】
◆グローバル人材育成のポイント(詳細)
徹底した言語運用能力の育成
世界の様々な国・地域から学生が集い、教員も約半数が外国籍の多文化・多言語
環境の中、APU では英語と日本語による二言語教育システムを展開している。
1 年生、2 年生では、各学生の入学基準言語(英語または日本語)で教養科目を
受講しながら、同時に集中的に言語の学習に取り組み、3 年生、4 年生では日本
語と英語のいずれの言語でも専門科目の授業を受けることが出来る言語運用能
力の習得を目指している。全授業の約 90%が日本語と英語の双方で開講されてい
る。
卒業要件 124 単位中、教養科目または専門教育科目から、英語開講の科目を 20
単位以上取得することを必須としている。APU では「英語を学ぶ」だけではな
く「英語で学べる」英語運用能力を身につけ、国際社会での活躍へとつなげてい
る。
上記の二言語教育システムを支えるために、英語教育では、学生が明確かつ正確
に自らの意見を英語で表現する能力を身につけることを目指している。授業は、
英語習得レベルごとのクラス編成で行われ、英語の力をスキル別かつ総合的に伸
ばすようなカリキュラムになっている。入学時のプレイスメントテストによって
「英語スタンダードトラック(24 単位必修)
」と「英語アドバンストトラック(12
単位必修)
」に分かれ、各自の英語力にあわせてそれをさらに伸ばす工夫がなさ
れている。さらに高度な英語力の習得をめざす学生には、英語ビジネス・ライテ
ィングや英語ビジネス・プレゼンテーションなど上級レベルの英語を選択科目と
して設置している。
秋入学とクォーター制
■ 大学のグローバル化への対応として「秋入学」が話題を呼んでいるが、APU で
は開学当時から春入学・秋入学の両方に対応している。海外は秋が主流ではある
が、韓国、ブラジル、インド、タイなどは春の方が入学しやすい。世界中から学
生を集めるには、柔軟なシステムが不可欠となっている。
■ APU ではクォーター制(4 学期)を導入している。講義科目はクォーター(2 ヶ
月)を単位として完結するように設計されており、学生は同じ科目の授業を週に
2 回受ける。この間に中間試験や期末試験などがあり、「山場」が多いため学生
は勉強せざるを得ない。2 ヶ月を学びの単位とすることで、短期留学や就職活動
などにも対応しやすく、海外からの短期留学生の受け入れにも適している。
国際教育寮での「学び」と「気づき」
国内学生と国際学生が共同生活を行う国際教育寮(AP ハウス)は、世界 56 ヵ国・
地域から約 1,300 名の寮生が生活している。
シェアタイプと呼ばれる居室では、国内学生と国際学生の居室が隣同士になって
おり、部屋の真ん中の仕切りを開放すると双方の部屋を自由に行き来できるよう
工夫されている。
51
2009 年度から 2011 年度まで、1 フロアを言語学習フロアとする「Language
Learning Community(LLC)」に取り組んだ。このフロアでは、日曜日~木曜日
の 20:00~22:00 を Study Hour とし、学生アシスタントがフロアを巡回、週1
回は教員によるアドバイジングを行った。半年後、LLC 学生は成績(GPA)
、
TOEFL スコアともに高い成果をおさめた。現在このパイロット・プログラムの
成果をさらに活かす新たな取組の検討をはじめている。
国際教育寮(AP ハウス)で世話係を担当する学生(RA:レジデント・アシスタ
ント)は、各国の学生からの相談やクレームに対応する経験が蓄積されることか
ら、そのような学生(日本人学生・国際学生)を対象とした企業のリクルーティ
ング活動も見られているほどである。
RA は半年ごとに募集し、書類と面接による選考で決定している。任期は 1 年間
で、奨学金として月額 2 万円を支給している。
◆関連する取り組み
企業現場との多様な連携
数社と協力講座(寄付講座)を、企業現場や機関で活躍しているビジネスマンを
招聘して、開講している。また、国際的な企業のトップや各界のリーダーを講師
に招き、世界の政治・経済の現状や国際社会が抱える問題と将来への展望、また
社会が求める人材像などについて講演を定期的に行っている。
企業と連携したキャリア教育プログラムも実施しており、
「職業意識とキャリア
開発」
・
「業界分析」
に関するプログラムを 20 数社の協力の下、
開講している
(2010
年度実績)
。2011 年度からのカリキュラム改革により、これらは「キャリア・デ
ザインⅠ~Ⅲ」へと発展し、産学連携によるキャリア教育がいっそう強化されて
いる。
就職活動支援の大きな柱として、
「オンキャンパス・リクルーティング」を実施
している。
「オンキャンパス・リクルーティング」とは、全国の企業・団体が APU
で成長した学生を採用するために、来学し、会社説明会や筆記試験・面接といっ
た採用の一連の流れを APU のキャンパス内で行う独自のシステムのことであ
る。2011 年度は、400 数十社もの日本を代表する企業・団体が来学し、多くの
採用へと繋がった。
昨今、企業のグローバル社員研修の一環として、若手・中堅社員を APU に短期
留学(2 ヶ月~4 ヶ月)させるプログラムが広がりつつある。社員は AP ハウス
で国際学生とともに生活し、英語で開講される科目(学部・大学院)を履修する。
多文化理解と英語力、コミュニケーション力を集中的に高めることが可能と、企
業側からも高く評価されている。
グローバル・アクティブ・ラーニング(海外で学ぶ)
APU は、世界 61 カ国・地域、410 の大学・研究機関(2011 年 1 月 1 日現在)
と協力協定を結んでおり、長期休暇を利用した海外言語研修や、世界中の協定大
学への交換留学(交換協定は 114 大学と締結)など、学びの舞台は世界へ広がっ
ている。
海外学習への導入ステージとして、1年生を対象とした短期間の異文化体験プロ
52
グラム(
「FIRST」と呼ぶ)を整備している。グローバルな視点を持つきっかけ
として、これまで韓国・香港・台湾でグループ活動による文化・社会調査を実施
してきた。2011 年度からは韓国に 155 人の 1 年生を派遣した。異文化への気付
きを促し、海外での高度な学びに挑戦するためのステップとしている。クォータ
ーブレイク(学期と学期の間の短い休み期間)を活用、期間は4~5 日間で、現
地に到着してから行き先を知らせる方法を取り、学生は、少人数のグループ別に
ルートの確保、宿舎の確保等を行う。道中で、地域の方へのヒアリング調査を実
施し、目的地に到着後、現地大学生への発表と討論を行うプログラムである。本
プログラムは、単位認定される。
FIRST 経験者の 59%が、同プログラムへの参加以後に他の留学プログラム等に
参加している。これは大学全体の 11%と比較して約 6 倍の参加比率であり、APU
の Student Mobility 政策において大きな成果を出している。
【取り組みの効果
みの効果・
効果・課題・
課題・今後の
今後の方向性】
方向性】
◆取り組みの効果
多文化環境が育てる学生の積極性 高い内定率
世界基準の学びや経験を活かし、多様な価値観のなかでぶつかり合い、競い合う
ことで身につけた、自ら考え、行動する APU 学生のコミュニケーション能力や
積極性は、ビジネス界から圧倒的な支持を得ている。就職内定率は、94.7%と非
常に高く、国内学生 95.6%、国際学生 93.6%となっている。
企業の人事担当者には、APU 卒業の学生は、新入社員であっても、海外からの
クレーム案件に対して率先して対応するなどの積極性やコミュニケーションス
キル、主体的な態度が備わっていると評価を頂くことがある。
◆課題と今後の方向性
海外大学と連携したグローバル協働プログラムをスタート
文部科学省の平成 23 年度「大学の世界展開力強化事業」において、
「APU-SEU
(*)グローバル協働教育プログラム~入学前教育から大学教養・専門教育まで
~」プログラムが、採択された。<* SEU は、米国テキサス州オースティン市に
位置するセント・エドワーズ大学(St. Edward’s University)の略。>
APU と SEU は、入学前短期留学プログラムや両大学の学生がアメリカと東南ア
ジアで一緒に学ぶ協働教養プログラム、両大学で二つの学位を取得する協働ダブ
ル・ディグリープログラムなどを開発する予定である。両大学の学生が共に学び
合い、言語能力やコミュニケーション力、異文化理解力を向上させ、ひいてはグ
ローバル社会に活躍しうる人材として成長することを目指していく。国際的な大
学間協働教育のモデルとしていきたい。
53
早稲田大学 国際教養学部
~リベラルアーツと国際感覚の修養を通じ、世界へ羽ばたく地球市民を育成~
【大学概要】
大学概要】
所在地
東京都新宿区
設立年
1882年4月
学部構成
国際教養学部、政治経済学部、法学部等、
全13学部
大学の特色
「学問の独立」
、
「学問の活用」
、
「模範国民の就造」を教旨とする。
国際教養学部をはじめとして国際色が豊かであり、外国人留学生受入
人数は日本一を誇る。
【数値で
数値で見る大学の
大学の特徴】
特徴】
学生数
国際教養学部
外国人
教員比率
2,837 名
1講座当たり
受講者数【※】
約 32%
英語による
専門科目率
約 17 名
100%
【※】英語(語学)授業の 1 クラスあたりの人数
【グローバル人材育成
グローバル人材育成の
人材育成の取り組み概要】
概要】
◆グローバル人材育成のポイント(概要)
世界へ羽ばたく地球市民を育成
少人数指導の下でのリベラルアーツ教育と、外国人留学生の受け入れ等を通じて
国際感覚を修養し、世界へ羽ばたくことができる地球市民を育成。
英語「で」学ぶ力を養成する教育プログラム
TOEFL-ITP を活用し、習熟度別クラスを編成したうえで、
「聞く」
「読む」
「書
く」
「話す」それぞれの要素について講座を実施。
特に「話す」力を養成する Tutorial English は、講師 1 人に対し学生 4 人の少人
数であり、学生が発言する環境を作っている。
国際教養学部の学生のうち、日本語を母語とする者は、1 年間の海外留学が必修
とされている。
取り組みの効果~良好な就職状況
卒業生は、国内外大手の、グローバルな活動を行っている業界・企業へ就職して
いる。
54
【グローバル人材育成
グローバル人材育成に
人材育成に向けた取
けた取り組みの経緯
みの経緯と
経緯とグローバル人材像
グローバル人材像】
人材像】
◆経緯
グローバルな課題解決に資する人材を育成する「国際教養学部」の創設
早稲田大学は、従来より留学生数が多く、国際色豊かなことが特徴であったが、
グローバル人材育成に向けた取り組みの直接の契機となったのは、
「国際教養学
部(SILS)
」の創設である。
「21 世紀は、人口増、地球温暖化のように、一国もしくは単独の学問領域の知見
のみでは対応困難な課題と向き合うことが求められる。このような時代に大学に
求められる役割は、幅広い知見を活用し、グローバルな課題を解決することがで
きる人材を育成し、日本企業が海外に進出した際に戦力とすることである」との
視点・問題意識のもと、1990 年代末より、当時の総長を中心として新学部設立に
関する検討を重ね、2004 年度に開設を迎えた。
◆グローバル人材像と育成の視点
リベラルアーツ教育と国際感覚の修養を通じ、世界へ羽ばたく地球市民を育成
SILS のコンセプトは、大別すると以下の2点である。
1. 少人数指導の下で基礎的な教養を磨くとともに、 多元的な視点、論理的思
考を養うことに重点をおいたリベラルアーツ教育
2. 海外からの学生を積極的に受け入れ(全学生の 1/3 は留学生)
、学部での共
通言語を英語とし、 日本語を母語とする学生には 1 年間の海外留学を必修
とするなど、日常の学生生活から高い国際感覚を身につけさせる
以上に基づき、世界規模の問題に意欲的に取り組む高い志と倫理観、国際競争力、
そして人間的魅力を備えた世界へ羽ばたく地球市民の育成を目指している。
上記の人材を育成するため、以下の3点を重視して教育を行っている。
1.自らの考えを世界に発信するための英語力の育成
グローバルな世界で活躍するためには、英語圏のことを学ぶためではな
く、自らの考えを世界に発信するための英語が必要である。
2.批判的な論理構築能力
学問の進歩・深化により、学部教育の4年間では、高いレベルの専門知識
を身につけることが困難である。そこで、批判的な論理構築能力をリベラ
ルアーツ教育を通じて磨くことに重点を置くことにより、多くの分野・場
面で応用可能な能力を身につけさせる。
3.多文化共生
グローバル化が進む今日においては、従来にも増して、相手を理解し共生
することが重要となる。
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【グローバル人材育成
グローバル人材育成に
人材育成に向けた取
けた取り組み内容】
内容】
◆グローバル人材育成のポイント(詳細)
英語「で」学ぶ力を養成する教育プログラム
上記の通り、SILS では高い国際感覚を身につけることが重視されており、英語
は自らの考えを発信するためのツールとして位置づけられているとともに、専門
科目も含めたほぼ全ての講義が英語により実施されている。そのため、教育・研
究の基礎として、英語力の向上に向けた取り組みが重点的に行われている。
具体的な教育プログラム内容は、下図のとおり。
「聞く」
「読む」
「書く」
「話
す」それぞれの要素について
講座が用意されてい
る。”Intensive English”は、
リスニングとリーディング
の 2 セクションからなり、リ
スニングのポイントや多量
の文献の中から必要な情報
を収集する等の内容となっ
国際教養学部の英語教育の概念図
ている。”English Academic
Writing”では、小論文を書くことを目的として、文法力・語彙力の強化が図られ
ている。
(”Tutorial English”は後述)
また、英語力を伸ばすための特徴的な取り組みとして、以下が挙げられる。
1.TOEFL-ITP を活用した習熟度別クラス分け
国際教養学部では、入学前の 3 月に TOEFL-ITP 試験を実施し、点数に応
じて習熟度別クラスが編成される。なお 470 点未満、もしくは全体の下位
50 名は、基礎から英語力向上を図るクラスの受講が義務付けられ、受講し
なければ、通常の英語科目を受講できない仕組みとなっている。
2.Tutorial English
学生 4 人に対し教員 1 人という少人数タイプの講義。学生が自らの意見を
発信せざるを得ない環境下でディスカッションを行う。国際教養学部を含
めた 6 学部で 1 年次必修科目であり、延べ 1 万人以上が履修している。
なお、Tutorial English 運営は、大学内に子会社を設立し、語学専門の講師
を外部から雇用して実施している。なお、カリキュラムの全体像や個別の
内容については、早稲田大学の語学担当教員がモニタリングを行ってお
り、講座の質を一定以上に保っている。
3.ライティング・センター
大学院生等がチューターとなり、学部学生に対し、英作文の指導を行う。
日本語を母語とする学生は、1年間の海外留学が必修
日本語を母語とする学生は、国際感覚を身につけるため、1 年間の海外留学が必
修科目として設定されている(日本語を母語としない学生は任意)
。
56
留学先は、早稲田大学が協定を結んでいる 300 以上の大学である。行き先は、欧
米の英語圏の国々のみならず、アジア、アフリカ等も含まれる。なお近年は、国
際教養学部以外の学生を含め、今後の経済成長を見越してか、アジアに留学する
学生が増加傾向にある。
◆関連する取り組み
少人数クラスによる米国型講義
講座ごとの定員は 30~60 名程度であり、私立大学としては少人数に設定されて
いる。
授業形態は、アメリカの大学と同様に、事前に資料を多く読ませたうえで、ディ
スカッション中心の授業を行っている。事前に資料を読んでいないと授業に参加
できず、また基礎知識がないと、講義が雑談になってしまうため、必然的に資料
を読むことになる。また、グループワークを行うことも多い。グループワークの
結果については、各グループによるプレゼンテーションを実施したうえで、学生
同士で採点させる。
上記の授業の実施方法の鍵は、資料を読まないと授業に参加できないことであ
る。グローバル人材育成に向けて、主体性や積極性を持たせるためには、日ごろ
からの授業への積極的な参加が不可欠であり、そのためには、学生を授業に巻き
込むことが必要となる。
外国籍専任教員の活用
SILS の開設にあたり、従来は他学部で英語を教えていた教員を、専門科目の教員
として活用した。外国籍の英語教員はそれぞれの分野で Ph.D を有しているため
専門性に問題はなく、また国際教養学部では語学ではなく専門科目を教えること
ができるため、教員側の反応も良好であった。
国際コミュニティセンターにおける外国人留学生と日本人学生の交流
留学生と日本人学生は、日ごろからサークル活動等で交流を図っているが、その
他にも、異文化交流推進を目的とした「国際コミュニティセンター」において、
イベント等を通じて交流を図っている。センターの運営は学生ボランティア・ア
ルバイトが中心であり、留学生・日本人学生合わせて年間約 5,000 人(外国人留
学生:日本人学生割合は、約 1:1)が、カルチャーイベントやエクスカーション
等を実施している。
【取り組みの効果
みの効果・
効果・課題・
課題・今後の
今後の方向性】
方向性】
◆取り組みの効果
良好な就職状況
卒業生の就職先を見ると、国際教養学部の卒業生は国内外を問わず、大手企業へ
就職している。就職先の業種は、商社をはじめ、業界全体がグローバルな業務を
行う業界や、製造業等でも特にグローバル化が進んでいる企業が多く、企業側も、
卒業生に対してグローバル人材としての可能性を見出していることが見て取れ
る。
57
◆課題と今後の方向性
アジアの富裕層の受入促進
今後は、よりアジアの富裕層を受け入れたい。19 世紀末から早稲田大学には「清
国留学制度」があり、これを利用して早稲田大学に留学した清国の学生が、中国
の産業化、近代化の中心となった。このような経緯から、早稲田大学は中国に強
い経緯がある。
現在、アジアの人々の多くが留学を希望する先は、英語圏もしくは中国である。
しかし日本にも、世界的に安定した社会・経済システムや先進的な科学技術があ
り、加えて早稲田大学では、英語で講義を受講することができる。このような魅
力を打ち出すことにより、中国やインド、東南アジアから留学生を獲得したい。
このような取り組みは、日本人学生も変える効果がある。
「世界とは」
、と話をす
るだけでは世界に対する実感が沸かず、効果が薄いが、中国人留学生が中国語、
英語、日本語を話しているのを見ると、
「将来的にこのような人たちと戦ってい
く必要がある」と実感するようになり、学生の目の色が変わる。
早稲田大学は、ウインブルドンのように多国籍化してもかまわないと考えてい
る。日本人を育成することは望ましいが、その点にはこだわらず、早稲田大学と
して高い価値を保持し続けたい。
58
Fly UP