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第63回北海道経済懇談会

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第63回北海道経済懇談会
経済懇談会
(一社)日本経済団体連合会・北海道経済連合会共催
第63回北海道経済懇談会
「地方創生の深化と北海道経済の
再生∼ローカル・アベノミクス
の実現∼」
北海道経済懇談会を開催しました。この懇談
会は毎年行っているもので、6
3回目の今回は
2
3
0名が参加し、「地方創生の深化と北海道経
済の再生∼ローカル・アベノミクスの実現
∼」を基本テーマに、テーマ1では地方創生
と人口減少社会の克服、テーマ2では生産性
が高く活力あふれた社会の実現について活発
な意見交換を行いました。
平成2
7年1
0月7日!、一般社団法人日本経
済団体連合会(経団連)との共催で、第6
3回
第6
3回北海道経済懇談会
出席者(道経連は会長、副会長、常任理事のみ掲載。敬称略)
【
(一社)日本経済団体連合会】
【北海道経済連合会】
会
会
長 榊原 定征 東レ㈱ 相談役最高顧問
審議員会
岩沙 弘道 三井不動産㈱ 会長
議
長
副 会 長
荻田
伍 アサヒグループホールディングス㈱ 相談役
長 大内
副 会 長
全 (一財)
北海道電気保安協会 理事長
増田 正二 帯広信用金庫 理事長
田中 義克 トヨタ自動車北海道㈱ 取締役社長
石井 純二 ㈱北洋銀行 代表取締役頭取
石原 邦夫 東京海上日動火災保険㈱ 相談役
堰八 義博 ㈱北海道銀行 代表取締役会長
内山田竹志 トヨタ自動車㈱ 会長
髙島 英也 ポッカサッポロ北海道㈱ 取締役会長
古賀 信行 野村證券㈱ 会長
常任理事 星野 恭亮 旭イノベックス㈱ 代表取締役社長
岡本 圀衞 日本生命保険! 会長
高井
永易 克典 ㈱三菱東京UFJ銀行 会長
平野 良弘 伊藤組土建㈱ 代表取締役会長
飯島 彰己 三井物産㈱ 会長
伊藤
工藤 泰三 日本郵船㈱ 会長
進藤富三雄 王子製紙㈱ 執行役員苫小牧工場長
修 ㈱伊藤組 代表取締役会長
聡 ㈱エコニクス 取締役会長
事務総長 久保田政一
福村 景範 ㈱ダイナックス 相談役
常務理事 根本 勝則
柴田
尚 ㈱日本製鋼所 常務執行役員室蘭製作所長
松嶋 一重 ㈱日本政策投資銀行 北海道支店長
大槻
博 北海道ガス㈱ 代表取締役社長
田島 実生 三井物産㈱ 理事北海道支社長
小林俊一郎 三菱商事㈱ 理事北海道支社長
2
dokeiren
両団体首脳挨拶
内
全
緩やかに回復しているものと考えております。
今や北海道を代表する産業に成長致しまし
北海道経済連合会
大
北海道の景気についてですが、全体として
た観光は、国内客では個人客を中心に堅調に
会長
推移している一方、外国人観光客はアジアを
中心に一段と増加しており、空の玄関口とな
ります新千歳空港の今年の国際線の利用者数
は3
6%増と非常に高い伸びを記録しておりま
北海道経済連合会会長の大内でございます。
す。また、この夏、札幌市内の大手ホテルの
第6
3回北海道経済懇談会の開会に当たり、一
平均稼働率は9割を超え、宿泊客の1/4を
言、ご挨拶申し上げます。
外国人が占める状況になっております。
先ずは、榊原会長をはじめ経団連役員の皆
雇用情勢では、有効求人倍率が0.
9
8倍とな
様方には、日頃より北海道経済連合会の活動
り6
7ケ月連続で前年同月を上回り、過去最高
にご理解とご支援を賜り、誠にありがとうご
を更新する等着実に改善しています。また新
ざいます。また、本日は大変お忙しい中、遠
規の求人数、月間の有効求人数とも同様に前
路お越しいただき、重ねてお礼申し上げます。
年同月を上回り、建築関係の技術者やホテル
折角の機会でございますので北海道経済の
等の従業員、更にはトラック・バス等の運転
現状、並びに当会の取り組みにつきまして若
手など、幅広い業種で人手不足が続いており
干、お話をさせて頂きます。
ます。
3
経済懇談会
一方、北海道のGDPの7割程を占める個
このため、人口減少に歯止めを掛けること
人消費は、雇用・所得環境が着実に改善する
が喫緊の最重要課題となるわけです。私は会
中、消費マインドが徐々に明るさを取り戻し、
長就任以降、北海道の基幹産業であります農
地域差は見られますものの、回復している状
業をはじめとする一次産業、6次産業化に取
況です。
り組む生産者、外国人観光客で活気が見られ
公共事業ですが、今年に入り対前年実績を
ます観光地、付加価値を高める機械や食品の
下回わり、4四半期連続で減少しております。
製造現場等々を視察したほか、地場産業を核
この状況を踏まえ、8月末、北海道並びに他
に人口減少に歯止めを掛け、地域の再生に取
の経済団体と共に、与党に対し事業費の拡大
組む自治体を訪問し、首長との意見交換等を
を緊急要望したところでございます。
通じて、北海道の強みや可能性、更には地方
さて、開業日が来年3月2
6日に決定いたし
ました北海道新幹線についてです。新幹線規
す。
格の青函トンネルが1
9
6
4年に着工し、既に5
1
しかし、この施策を打てば解決するといっ
年が経過しました。新幹線は道民の悲願なだ
た単純な解はなく、これまで培ってきた食や
けに、この決定を大変、喜ばしく思っており
観光といった地域の強みを一層、高めること
ます。
に産学官金労言、全てがベクトルを合わせ、
北海道新幹線は、東北・関東地域との交流
機会の拡大による地域の活性化に大変重要な
知恵を出し合い、粘り強く対応していくこと
が重要となります。
役割を果たします。この先、札幌まで延伸さ
そこで道経連では課題ごとにプロジェクト
れることで、一層大きな経済波及効果を産み
チーム・PTを形成し、取り組みを深めてい
出しますことから、札幌延伸の早期開業を目
る処でございます。
指すと共に、先ずは函館開業の成功に向けて
食産業の振興につきましてですが、「食文
関係機関と連携し、しっかり対応して参りま
化の創造と発信」をテーマに、食の多様性の
す。
推進と、それを支える人材の育成に焦点を当
以上、大まかに北海道経済を取り巻く状況
て、意識改革や実学、起業の指導などに踏み
をお話し致しましたが、国内でのGDPの減
込んだ、発信力のある政策提言を行うことを
少や、原子力発電所の再稼働が見通せないこ
主眼として食のPTを立ち上げました。この
とによるエネルギーの安定供給への課題、更
PTでは、!島副会長をリーダーに産学金に
には中国市場での株価暴落など不安定な動き
加え、メディア界で牽引役を担われている識
も見られますことから、今後の動きには、注
者による活発な議論を進めて頂いております。
視して参りたいと考えております。
4
創生への期待も感じてきたところでございま
また、観光振興につきましては、人口減少
さて、政府は「地方創生」
、「ローカル・ア
が1
0年先の北海道観光にもたらす量的・質的
ベノミクス」を掲げて取り組んでいるわけで
変化を見据え、目指すべき方向性を探り、そ
すが、北海道の人口は19
9
8年の5
7
0万人を
の対処に必要な環境整備について観光PTを
ピークに減少に転じ、現在は5
4
1万人で、昨
作り、検討を進めております。
年1年間では全国最多の3万人が減少するな
さらに、高速道路のミッシングリンクや北
ど、全国を上回る勢いで少子高齢化が進んで
海道新幹線の札幌延伸など、未整備の状態が
おります。
続く北海道の社会資本について、今後、財政
dokeiren
上の制約や、グローバル化の進展、更には空
また、明日の視察会では、岩見沢市におき
港改革といった社会資本の環境変化を踏まえ、
ますICTを活用したスマート農業の取り組み
道内の人流・物流の拡大による経済効果の最
をご覧いただきます。大規模化している北海
大化に向けた検討・調査を行うため、札幌・
道の農業にとりまして、担い手の確保と共に
旭川・函館・帯広・北見の会員企業・大学で
労働生産性の向上と生産物の低コスト化、更
構成する社会資本PTを先月、立上げ、動き
には品質管理に繋がるロボット技術の先進研
始めた処です。
究事例につきましてご紹介させて頂きます。
観光と社会資本の2つのPTは岩田副会長
最後になりましたが、本日の懇談会、並び
が委員長を務める地域政策委員会が所掌して
に明日の視察会が、実り多きものになります
おります。
ことをご祈念申し上げ、私のご挨拶に代えさ
次に田中副会長を委員長とする産業振興委
せて頂きます。
員会では、既に提言書として取りまとめ、北
海道知事にも提出した検討課題の推進に向け、
着実に取り組みを進めております。
具体的には、ものづくりへの関心を高める
(一社)日本経済団体連合会
榊
原
定
征
会長
ため、小学生を対象としたものづくり体験会
の開催や、キャリア教育の推進に向けた教育
界との意見交換、また道央中核地域における
ものづくり産業の強化と、企業誘致の推進に
向けた自治体担当者との連携などです。
また、新産業の創出に向けては、航空宇宙
産業の発展に向けた取り組み、農業のICT化
に向けた調査なども行っております。
経団連会長の榊原でございます。大内会長
をはじめ、北海道経済連合会の皆様には、お
忙しい中ご出席を頂きまして、誠に有難うご
ざいます。
本日、「地方創生の深化と北海道経済の再
北海道では、全体として遅れております女
生∼ローカル・アベノミクスの実現∼」を
性の活用につきまして、先月、山本副会長を
テーマに掲げ、皆様と共に意見交換をする機
委員長とする労働政策委員会の下に、女性活
会を得ましたことは、大変意義のあることと
躍推進PTを立上げ、現状の把握から課題の
思っております。
抽出、女性が活躍できる職場環境に向けた必
要な取り組み等について検討を開始いたしま
した。
道経連では北海道経済を自立・発展をさせ、
地域の創生に繋がるこれら委員会並びにPT
の活動を着実に進めて参ります。
この後の意見交換におきましてもお伺いさ
北海道経済懇談会の開催に当たりまして、
一言ご挨拶を申し上げます。
最初に、日本経済について少し概観をして
みたいと思います。
日本経済は、アベノミクスの第1ステージ
における一連の経済政策によって、着実な回
復軌道を
って参りました。経済の主役であ
せて頂きますが、多くの経験と実績をお持ち
る企業の活動は改善しつつあり、雇用の改善、
の経団連の皆様方には、是非、私どもの活動
賃金の引上げも進んでおります。
に対し、引続きご示唆、並びにご助言等を頂
きますようお願い申し上げます。
ただ、本年4−6月期の実質GDP成長率
は、個人消費の弱さもあり、年率換算でマイ
5
経済懇談会
ナス1.
2%と3四半期ぶりにマイナス成長と
に意見交換を行いました。当日、大臣からは、
なりました。7−9月期以降も、中国をはじ
企業の地方拠点強化などに加え、「地方創生
めとする新興国経済の先行きに対する懸念が
実現パートナーシップ会議」の創設について
増す中、輸出や生産が弱含みで推移するなど、
要請がありました。この会議は、政府の施策
予断を許さない状況にあると思います。先週
と経済界の活動について情報共有とフォロー
公表された日銀の短観でも、業種・規模を問
アップを行うことで、両者の取り組みの相乗
わず、業況の見通しは悪化致しました。
効果を高めていくことを目的としております。
日本経済のファンダメンタルズ自体は変わ
らず、緩やかながら着実な回復を
るという
に参加し、道経連の皆様と共に、地方創生に
基調は変わらないと考えますが、今は正に、
資する活動を展開して参りたいと考えており
デフレからの脱却と経済再生を確実に実現す
ますので、宜しくお願い申し上げます。
るための正念場の時であると言えます。政・
地方創生に向けた具体的な方策としては、
官・民が、あらゆる政策や手立てを総動員す
地域の特徴を活かし、地域の自立的な発展を
べき極めて重要な時期であります。
図ることが必要であると考えております。こ
本日、新内閣が発足致します。アベノミク
の点、ご当地は、地域の強みである「食」と
スも第2ステージに入りましたが、「新3本
「観光」を核に成長を目指すなど、誠に適切
の矢」は、安倍総理の経済再生に向けた強い
な取り組みを進めておられると受け止めてお
意気込みであると受け止めております。新内
ります。
閣には、「新3本の矢」の実現に向けて、具
特に、ご当地には、豊富な農産物がありま
体的な政策を強力かつ迅速に推進して頂きた
す。農業は、従事者の高齢化や後継者不足な
いと考えております。
ど、様々な課題に直面している一方で、海外
経団連と致しましても、政治との連携を
需要は拡大し続けるなど、農業活性化のチャ
しっかりとりながら、デフレからの脱却、経
ンスは大きく広がってきております。明日、
済再生へのしっかりとした道筋をつけると共
岩見沢市を訪問し、ICTを利活用したロボッ
に、山積する重要政策課題を実現するために、
ト農業について視察すると共に、地元生産者
全力で取り組んで参りたいと思います。
の皆様と懇談することを、大変楽しみにして
その主要政策課題の中で、地方創生には、
いる所です。
特に優先的に取り組む必要があると考えてお
さて、地方創生に加えて、経団連が、優先
ります。地域経済の活性化なくして、日本経
的に取り組む課題をいくつか申し上げます。
済の再生はありません。
6
経団連と致しましては、この会議に積極的
まず第1は、財政健全化です。諸外国に比
政府は、地方創生に向けて、昨年9月に
して最も深刻な状況にある国家財政を健全化
「まち・ひと・しごと創生本部」を設置して
し、経済の持続的発展を支える強固な基盤を
積極的に取り組んでおります。経団連と致し
築く必要があります。私は、経済財政諮問会
ましても、新たに地域経済活性化委員会を設
議におきまして、2
0
2
0年度のプライマリーバ
けるなど、取り組みを強化しております。
ランス黒字化実現に向けて、経済再生、歳出
こうした中、本年7月に開催した経団連の
改革、歳入改革の3本柱を一体として推進す
夏季フォーラムでは、石破地方創生担当大臣
るよう、経済界の立場から強力に働きかけて
をお招きし、地方創生の課題と展望をテーマ
参りました。その結果、本年6月に、財政健
dokeiren
全化目標と社会保障制度改革を盛り込んだ骨
第五は、震災復興です。震災を決して風化
太方針が公表されました。経団連と致しまし
させることなく、経済界として、引き続き全
て、その実行を全面的にサポートして参りた
力を挙げて支援・協力して参ります。
いと考えております。
さらに、5年後に迫った東京オリンピッ
第2は、エネルギー政策です。エネルギー
ク・パラリンピックにつきましても、「オリ
の安定供給と経済性の確保は喫緊の課題であ
ンピック・パラリンピック等経済界協議会」
り、原子力規制委員会が安全を確認した原発
を通じ、大会の成功とレガシーの形成に向け
の速やかな再稼動、再生可能エネルギーの固
て、積極的に取り組んで参りたいと考えてお
定価格買取制度の抜本的見直しが不可欠です。
ります。
とりわけ原子力は、エネルギー安全保障、経
道経連の皆様におかれましては、引き続き、
済性、温暖化対策等の観点から、今後ともわ
こうした経団連活動への力強いご支援・ご協
が国の重要なベースロード電源として位置付
力を頂きますよう、重ねてお願い申し上げま
けるべきであることを発信し続けて参りたい
す。
と考えております。
最後に、経団連会員の皆様にも様々な機会
第3は、人口問題です。5
0年後も人口1億
を通じてお願いをしている所ですが、取引先
人の安定した人口構造を維持するため、経団
企業への支援・協力について、一言ご説明を
連では、人口問題委員会を新たに設置し、検
させて頂きます。
討を進めております。また、女性の活躍推進
本年4月に開催された「経済の好循環実現
にも、引き続き積極的に取り組んで参ります。
に向けた政労使会議」では、取引先企業との
第四は、経済外交です。一昨日、TPP交
間の適正な価格転嫁や支援・協力、サービス
渉が大筋合意に至りましたが、経団連も、閣
業の生産性向上に向けた取り組み策が決定さ
僚会合が開催された米国アトランタに代表団
れました。今は、冒頭申し上げましたように、
を派遣し、政府の交渉を後押し致しました。
デフレ脱却に向けた正念場にありますが、経
TPPは、わが国の成長戦略の要であり、
済の好循環を中央・地方を含めた中堅・中小
アジア太平洋地域の成長、繁栄、安定にも資
企業にまで、どれだけ拡大できるかが大きな
することから、経団連は交渉の早期妥結を一
課題であります。
貫して強く求めており、今回の結果を大いに
道経連の皆様におかれましては、これまで
歓迎しております。経団連と致しましては、
も適正な購買取引の推進に取り組んでおられ
今後とも、こうした経済外交を積極的に進め
ると思いますが、改めて、原材料費の高騰な
て参ります。
ど仕入れ価格の上昇で大きな影響を受けてい
なお、TPPの農業への影響を懸念する声
る取引先企業、特に中小の取引先に対しまし
もありますが、必要な国内措置等を講じるこ
て、価格転嫁を含めた適正な取引価格の形成
とにより、わが国農業の基盤強化と成長産業
に努めると共に、生産性向上・高付加価値化
化の機会としていく必要があると考えており
に向けた支援・協力などの取り組みを推進し
ます。そのためには、政府、農業界、経済界
て頂きたいと思いますので、宜しくお願い申
が一体となって構造改革等に取り組むことが
し上げます。
重要であり、経団連と致しましても、今後と
も農業界との協力を積極的に進めて参ります。
本日の懇談会が実り多いものとなることを
祈念致しまして、私のご挨拶とさせて頂きま
7
経済懇談会
す。
学や各種体験・インターンシップなどを行う
ことに協力してもらう企業を増やしていく取
テーマ1 地方創生と人口
減少社会の克服
問題提起
■地域産業を担う専門的人材の育成
中
義
克
道経連では、高専や工業高校、ポリテクカ
レッジなどの工業系学校の校長にヒアリング
を行い、それを踏まえて、教育現場と企業の
連携に係る課題をテーマに「工業系学校・企
業による意見交換会」を実施しております。
また、テレビ媒体を活用し、地元の経済番
組で工業高校の生徒や卒業生を取材・特集し
北海道経済連合会
田
り組みなどがあります。
てもらった他、北海道機械工業会と連携し、
副会長
苫小牧高専との共催で「子どもものづくり体
験会」を開催しました。
昨年の1
1月には、キャリア教育に関して先
進的な取り組みを行っている愛知県庁を訪問
私の方から、地域産業を担う専門的人材の
育成について、発言いたします。
北海道に対して「各教育ステージに応じた段
人口減少・少子高齢化が進展する中、高度
階的育成指針」を策定し関係機関と連携して
なものづくり技能が喪失されてしまうという
その指針に則ったものづくり人材育成の取り
危機意識が高まっている他、若者のものづく
組みを行うよう要望しております。
り産業への就職者数の減少が続いております。
この他、室蘭工業大学が事務局となり文部
地域産業、特に「ものづくり産業」を支えて
科学省に採択された「地(知)の拠点大学に
いくためには、地域における人材育成が重要
よる地方創生推進事業」について、道経連も
であり、ものづくり産業への関心を高め、正
事業協働機関として参画し、道内の卒業生の
しく理解していただくことが必要です。
地元への就職率を高めていく取り組みに協力
そのため道経連では「ものづくり」への関
してまいります。
心を高める取り組みを強化するよう北海道へ
この事業は、地域が求める人材を輩出する
要望すると同時に、独自に取り組んで参りま
ための教育システムを構築し、地場に大学発
した。
の技術による新産業の創造・事業化を進め、
例えば北海道での取り組みとして、学生・
企業誘致・雇用拡大による若年層向け雇用の
生徒だけではなく先生や親にも理解を深めて
創出を図る等、大学・行政・企業・金融が一
もらうために製造業の現場を見てもらう「職
体となった総合支援体制の整備に取り組むも
場見学ツアー」や、「ものづくりなでしこ応
のです。
援プロジェクト」と言って、各企業で活躍し
事業協働機関の役割としては①協議の場へ
ている女性社員を紹介し、ものづくり産業の
の参加②インターンシップ受入③事業への支
魅力を伝え女性の参画を促進する取り組みや、
援④各種委員会等への参加⑤雇用の拡大が挙
「どさんこサポーターズ」と言って、次世代
げられます。
人材である小学生から大学生に対して工場見
8
し、そこでヒアリングしたことも踏まえて、
道経連では協議の場や各種委員会に参画し
dokeiren
情報収集に努める他、会員企業への橋渡しを
行って参ります。
文部科学省では昨年1
0月に「地方創生を担
う人材の育成について」と題して、人材育成
に向けての取り組みを強化する方針を出して
■女性や若者活躍社会の実現
北海道経済連合会
堰
八
義
博
副会長
います。この中で、生徒一人一人の社会的・
職業的自立に向け、キャリア教育のより一層
の充実が求められるとして、学校と地域・社
会や産業界との連携促進を目的に、地元就職
私からは「女性の活躍推進に向けた取り組
につなげるキャリアプランニングを推進する
み」と「道外からの移入・移住促進」の2点
「キャリアプランニングスーパーバイザー」
について発言致します。
を配置する推進事業を打ち出しています。
まず「女性の活躍推進に向けた取り組み」
工業系学校に対するヒアリングや、意見交
についてです。安倍政権発足以来、国の女性
換会においては、「学校で指導する先生達が
活躍推進に向けた取り組みは速度を増し、
企業の実際をもっと理解するべき」
「企業側が
「女性活躍推進法」の成立により、来年4月
求める人物像を学校側に明確に示してほし
までに民間事業主も「事業主行動計画」を策
い」
「そもそも学校のカリキュラム自体が実社
定し、公表する事が義務付けられました。
会で使わない内容が多い」と言った声が出て
経団連では平成2
5年7月、いち早く「女性
おり、教育現場と産業界にミスマッチが生じ
の活躍推進部会」を設置され、女性の活躍支
ていることが課題となっております。
援・推進等に関する調査やシンポジウムを開
産業界と教育界との連携を進めていくうえ
催、「女性活躍アクション・プラン」の作成、
で、このミスマッチを解消する必要があり、
更にこの夏、初めて女性役員を登用されるな
そのためにも、両者をつなぐ役割を果たす
ど、積極的な取り組み姿勢に敬意を表する次
コーディネーターの育成は重要であり、文部
第でございます。
科学省に対してこの取り組みを継続するよう
要望しております。
そこでお聞きしたいのですが、ものづくり
道内には女性の活躍推進に対し先進的に取
り組む企業もございますが、全体的には遅れ
ていると言うのが実態です。当会が今年実施
産業を担う人材の育成に向け、産業界と教育
した調査でも、その傾向が顕著に表れており、
界との連携においてどのような課題があると
例えば女性活躍支援や推進の取り組み状況に
考えておられますか。また連携を進めていく
ついて、経団連では9割の企業が「実施して
うえで、キャリアプランニングスーパーバイ
いる」と回答しているのに対し、当会では5
ザーのような何か有効な取り組みはあります
割を切る結果でした。
でしょうか。具体的な事例がございましたら、
ご教示いただきたく、お願いいたします。
また、取り組み内容について、法定を上回
る育児休業制度、フレックスタイム制度など
経団連の調査と同じ項目を選択肢としました
が、いずれも経団連の結果を下回っておりま
した。
当会におきましても、豊かで活力ある社会
9
経済懇談会
の実現を図るには、女性の個性と能力が十分
U・Iターン希望者が増加しない要因として
に発揮される事が重要と認識し、女性の活躍
は、道内では中小企業の割合が高く、首都圏
推進をテーマとする講演会を開催したり、会
に本社を置く企業と比べ、給与等の処遇も低
議に女性をオブザーバーとして参加願うと
位にあることが上げられます。
いった事も行って参りました。
企業の生産性向上により、就職先企業とし
本年度の労働政策委員会では女性の活躍推
て魅力を高める事がU・Iターンを進める上で
進を議題として取り上げ、女性メンバーによ
重要ですが、短期間に企業の生産性を高める
る「女性の活躍推進プロジェクトチーム」を
事は難しく、こうした現状を踏まえてU・I
設置し、日々の仕事の中で実感している事柄
ターン希望者の増加を図っていく事が必要と
や課題等を浮き彫りにし、その解決策を当
なります。
会々員向けの提言書としてまとめることにし
ています。
そこで経団連さんから見て、U・Iターンの
実効性を高める為に、どの様な取り組みが有
そこで、いち早く「女性活躍アクション・
効と考えられるか、お聞かせいただきたいと
プラン」を作成された経団連さんに、提言を
存じます。また、他県での有効な取り組みな
作成するに当たって参考となる事項をお聞か
どを含め、お聞かせいただきたいと存じます。
せ願いたいと存じます。併せて、経済団体と
して今後、女性の活躍推進の取り組みに当
意見交換
たって、どの様な点に力点を置いて行うべき
か、ご見識をお聞かせ頂きたいと存じます。
次に「道外からの移入・移住促進」につい
てです。日本の総人口は、2
0
0
8年をピークに
人口減少に転じていますが、北海道は全国よ
り1
0年早く人口減少が現実のものとなってい
■地域産業を担う若年者雇用・人材育成
(一社)日本経済団体連合会
工
藤
泰
三
副会長
ます。北海道では2
0
0
4年に「北海道子どもの
未来づくりのための少子化対策推進条例」を
制定するなど、少子化対策に取り組んでいま
すが、依然、全国を上回るスピードで少子化
が進行しているのが実情です。
1
0
田中副会長から、お話がありました、人材
育成に関して、少しコメントをさせていただ
こういった状況の中、U・Iターンの推進は
きます。人材育成は、産業界と教育界の連携
人口減少対策のひとつと捉えており、当会で
がマストだと思います。これは、田中副会長
は従来「北海道U・Iターンフェア―」の事務
もご指摘されたとおりです。教育界の問題に
局を担い、首都圏において道内企業への求職
ついてまず大学をみますと、独自性を十分発
の増加に向けた活動を行って参りました。し
揮しているとは言いにくい状況です。
かし、ここ数年全国的に新卒者の採用状況が
経団連としまして、2
0
1
5年1月に発表した
好転していることもあり、道内出身者がU
「ビジョン」の中で、国立大学を3つのカテ
ターンする割合が以前にも増して低下してお
ゴリーに機能分化させることを提案していま
り、道内企業とのマッチングの難しさを痛感
す。一つは世界グローバルベースでトップの
しているところでございます。
大学と競うようなハイエンドの大学、次に分
dokeiren
野ごとに専門的な分野を追求する大学、もう
やっている方向と全く同じだと思っています。
一つは地域を活性化させる大学、という提案
むしろ、大変勉強になりました。私どもが、
をいたしました。文科省も2
0
1
5年6月に、経
取り入れる部分が多々あると思いながら、お
団連のコメンテーションに添った形で、大学
伺いしていた次第です。
の機能を3分類し、重点支援して行こうとい
う方策を打ち出しております。
ちなみに北海道は、北海道教育大学、室蘭
工業大学、小樽商科大学、帯広畜産大学、旭
川医科大学、それから北見工業大学が地方を
活性化する機能を果たす大学になるという希
■人口減少社会の克服
(一社)日本経済団体連合会
岡
本
圀
衞
副会長
望を文科省のほうに伝えています。北海道大
学は世界トップクラスの教育研究を推進する
大学を希望しています。
この大学改革は、学長のリーダーシップの
下、大学が主体的に動く必要があります。同
人口減少についてのご発言がありましたの
で、私からもお話をさせていただきます。
時に、先ほど田中副会長から色々ご説明があ
この少子化の問題は、経団連においても重
りましたが、企業側も大学と一緒になって、
要な課題であると認識しております。2
0
1
5年
協力していかないと前に進みません。民間は
1月に示した経団連ビジョンで、日本の人口
カリキュラムを学校と共同開発することや講
1億人を維持ということを掲げております。
師を派遣することなど、積極的にやる必要が
また、4月にはこの人口減少への対応待った
あると思います。その観点に立ちますと、田
なしという提言を行い、6月に、人口問題委
中副会長が述べられたことは、まさに経団連
員会を設置し、私が委員長を務めております。
が取り組んでいる方向と一緒です。
経団連は、1
9
8
3年から、夏休み中心ですが、
小・中・高の先生を企業に招き、その実態を
見ていただくということを推進しております。
アベノミクス第2ステージになり、一つは
強い経済、一つは社会保障制度改革、そして
もう一つが子育て支援となっています。
具体的な中身として、合計特殊出生率を
今年も1
0
0社を超える会社が、1,
4
0
0人強の先
1.
8とする目標を掲げています。世界全体を
生を受け入れております。
見ても、このような1.
8という数値を掲げた
逆に、大学へ経営幹部、経営者、あるいは
国は例を見ません。それだけ政治はこの問題
技術者を派遣する取り組みを実施しています。
について本腰を入れていると思っております。
今年は、早稲田、慶応、京都大学、広島市立、
最近、難民問題、あるいは人口問題につい
同志社、横浜国立、上智というような大学に
て意見交換をするため、ドイツ、フランス、
講座を設け、「今の会社、企業はこういうこ
イギリスなどをまわりました。非常に強く印
とになっていますよ。」ということを、生徒
象に残ったことが二つあります。
さんにアピールすることをやっています。
1点目は、イギリス、あるいはフランスな
経団連から何かアドバイスがないかとお話
ど、人口が上向きになっている国です。こう
がありましたが、まさに田中さんをはじめ道
いった国は、社会も国民も大変元気で、なに
経連の皆さんがやっていることは、経団連が
よりも、自信を持っているということです。
1
1
経済懇談会
人口というのは国の大元ですから、これを増
やしていかなければならない。少なくとも維
ここまで取り組んでくると、段々定着化し、
持しなくてはならない。これは国家を挙げて
働き方の改革にも繋がり、休暇だけではなく
全力で取り組まなければならないという思い
通常の働き方でも「早く帰ろう。」といった
を強くいたしました。
行動に変わってきました。
2点目は特にOECDから指摘されたのです
さて、今後、経団連の人口問題委員会では、
が、「日本という国は、有給休暇の制度にし
「税財源確保による子育て支援策」や「子育
ても、あるいは男子の育児休暇にしても、制
てに優しい社会に向けた機運の醸成」といっ
度はほとんど揃っている。しかしながら、そ
た活動を展開して参りたいと考えています。
れが活用されていない。こういう国において
この「子育てに優しい社会に向けた機運の
は、また新しい制度を作っても、作るだけで
醸成」の一環として、男性の配偶者出産直後
あって、活用しないのではないか。今、取り
の休暇取得を推進する内閣府の「さんきゅう
組むべきことは、例えば有給休暇制度をきっ
パパプロジェクト」に協力しました。
ちりと活用することにしたらどうか。それ自
「さんきゅう」というのは、「ありがと
体が、今言われているワーク・ライフ・バラ
う」と「産休」の2つの意味が込められてい
ンスそのものになる。そしてその後ろにある
ます。キックオフ・シンポジウムに参画する
「子育て支援」にも有効じゃないか。
」という
とともに、有村少子化大臣と私が官邸に行き、
ことでした。いずれにしても日本においては、
安倍首相に対して、子育て支援と男子育児休
長期残業といった労働時間の是正が必要であ
業の重要性を強く訴えました。
るというような話がありました。
1
2
に向けて取り組んでおります。
北海道全体で取り組んでいる「北海道あっ
日本には日本の企業文化や労働慣行もあり
たかファミリー応援企業登録制度」や、札幌
ます。それらを踏まえたとしても、今日的に
市の運営する「ワーク・ライフ・バランス推
考えた場合、制度を有効的に活用していかな
進事業」に多くの企業が登録されていると聞
ければならないと強く感じました。
いております。このような北海道の子育てに
手前味噌になりますが、日本生命のケース
優しい社会作りも参考にしながら、人口問題
をご紹介いたします。日本生命では、女性活
委員会の議論を進めていきたいと思っていま
躍推進について皆さんと同様の取り組みを推
す。
進しております。この問題は女性の問題とい
いずれにしても現在の合計特殊出生率をみ
うことで、女性の中で議論されることが多い
ると、平成2
6年で全国が1.
4
2です。一番低い
わけですが、当事者の中に男性を入れ、男性
のが東京で1.
1
5、一番高いのが沖縄で1.
8
6で
の意識を根本的に変えることが必要です。
す。北海道は1.
2
7で、ワースト・スリーです。
具体的には、男性職員の育児休業取得を完
東京、京都、その次が北海道です。多分札幌
全に取らせることです。これをやれば男性も
に人口が非常に多く集まり、ほとんど東京と
育児に参加しますし、また、奥さんの苦労も
同じような生活スタイルになっているという
わかるだろうということです。現場には大分
ことでしょうか。
抵抗もありましたが、2年半前からスタート
この合計特殊出生率を1.
8に向けて頑張ろ
し、一昨年は2
7
9名の1
0
0%が取得しました。
うというとき、東京も北海道も頑張らなけれ
昨年は3
1
8名の1
0
0%です。今年も1
0
0%取得
ばいけません。そういった意味で、是非手を
dokeiren
つないで取り組んでいきたいと思います。
のも同じです。これまで組織の隅のほう、あ
るいは外にいた人たちに中心に来てもらって、
■女性活躍社会の実現
(一社)日本経済団体連合会
古
賀
信
行
副会長
その意見を聞いたり、大事な仕事を任せてみ
たりすることで、新しい発想を取り込むので
す。その一環として、もし、これまで女性の
多くが組織の隅や外にいたのであれば、中心
に出てきてもらい、それで企業をより元気に
強くしようというのが、女性活躍の真の目的
です。
また、一企業にとどまらず北海道全体で考
私からは、女性の活躍に関する堰八副会長
えても、女性が企業で活躍する場が広がれば、
からの問題提起にお答えしたいと思います。
それだけ女性が一生、住み続けやすい地域に
ご案内のとおり、安倍政権は女性活躍を成
なり、女性がとどま っ た り 、 U タ ー ン ・ I
長戦略の柱の一つに掲げ、総理自ら強力な
ターンしたりすることで、人口も増え、経済
リーダーシップを発揮して取り組みを進めて
も活性化するでしょう。
います。8月末には女性活躍推進法が成立し、
つまり、「女性の活躍は、女性のためでは
来年4月1日の施行までに3
0
1人以上の民間
なく、企業や社会を活性化し、強くするため
事業主は行動計画策定などの義務を果たさな
に推進すべきものである。」ということに、
ければなりません。
経営者の皆様に心から納得していただければ、
経団連も、女性活躍を企業の経営戦略とと
取り組みの成功は半ば約束されたも同然です。
らえ、政権と一体となって積極的に取り組ん
経済団体としては、会員企業に「自主行動
できた結果、この2年間で経済界のマインド
計画」の策定をお願いしてきました。この計
が大きく変わったことを実感しています。そ
画をきっかけとして、初めて本格的に女性活
の経験から重要なことは、トップ自らが女性
躍に取り組み始めた企業も多いようです。経
活躍を進めることの必要性を心から納得し、
団連のホームページに4
5
0社の自主行動計画
本気で取り組む姿勢を示すことです。
を掲載しており、各社の状況に応じた具体的
では、なぜ女性活躍が必要なのでしょうか。
昨今、企業を取り巻く環境がめまぐるしく変
な取り組みもご覧いただけますので、ぜひご
参考にしていただければと思います。
化することは、皆様も日々実感されているこ
女性活躍は、制度を整えたからといって、
とと思います。例えば、TPPは、北海道の
一朝一夕に進むものではありません。むしろ、
産業にマイナスの影響ももたらしますが、発
女性自身の意識、周りの上司・同僚の意識、
想次第でフード・コンプレックスのような新
企業としての女性のキャリア育成への配慮、
しいチャンスも生まれます。このように環境
女性だけでなくすべての社員の働き方の見直
の変化に対応するために新しいことを考え出
しなど、意識・風土の改革が鍵となり、社員
すには、固定観念にとらわれないように、で
に地道に浸透させていく必要があります。
きるだけ多様な人々がいたほうがよいとされ
経団連としても、女性管理職養成講座やダ
ています。よく、地域活性化を進めるうえで
イバーシティ・マネジメントセミナーの開催
「よそ者、若者、バカ者」が重要といわれる
により、こうした企業の努力を支援している
1
3
経済懇談会
ところです。今後も、道経連の皆様と情報交
た若者がはりきってやれるような場に北海道
換をしながら、共に歩んでまいりたいと思い
をつくる必要があると思います。
ます。
北海道の人口を見ますと札幌が3分の1を
占めています。いわゆる東京一極集中という
自由発言
(一社)日本経済団体連合会
石
原
邦
夫
副会長
ことが言われておりますが、北海道の札幌一
極集中は全国よりも進んでいると考えられま
す。Uターン、Iターン、あるいはUIターン
をいかに助長していくかを考えた場合、まず、
札幌とその周辺の機能を充実させ、子供を産
み、育てやすい環境を整備していくことに注
力することが必要です。一方、それ以外の中
核都市については、いわゆる政府が言ってお
皆様から色々な論点の指摘があり、言い尽
りますコンパクト化を一層進めるとともに、
くされていると思います。後はそれをいかに
広域に分散する地域との間のネットワークを
実行に移し、成果を一つずつ積み重ねていく
充実させる、いわゆるコンパクトアンドネッ
ことですが、現在の問題点につきまして、若
トワークを進めることを提案します。
者の活躍に焦点を当て、コメントさせていた
だきます。
1
4
北海道の中核的な産業は農業、食、観光と
いうことで間違いないと思いますが、若者と
北海道は人口減少、高齢化が全国より約1
0
いう観点から申し上げると、若者を惹きつけ
年早く進展しているということですが、ある
るためには農業をハイテク化した若者の産業
意味で我が国における課題先進地域と言える
にモデルチェンジしていく必要があると考え
のではないかと思います。北海道が広大で豊
ます。日本全体で農業に従事している人は平
かな自然、大地、あるいはこれまで蓄積して
均で6
5歳を超えており、若者主体にモデル
きた豊富な地域資源等を武器にして、フロン
チェンジすることは、日本の農業政策全体と
ティア精神にあふれた若者が活躍する舞台に
して言えますが、北海道においては特に必要
再びなることを心から期待しております。
なことだと考えます。良いお手本として、カ
北海道は地元への大学進学率が全国でも2
リフォルニアのナパバレー、そして農学部で
位、約7割弱になっています。大学進学時に
有名なユーシーデービスのコラボレーション
おいては人口流出の歯止めがかかりつつある
は非常に参考になる事例だと思います。
とも言えるのではないでしょうか。先ほどご
これに似たことをやっているのは余市のオ
紹介がありましたように、北海道には非常に
チガビさんです。これが北海道全域に広がっ
特色のある大学、高専、工業高校等があると
ていけばいいと思います。それによって農業
いうのが大きな要因ではないかと思っており
の法人化が進み、固定給と休暇のあるサラ
ます。一方、道外に転出する一番大きい年齢
リーマンの雇用に繋がると思います。北海道
層は2
0歳から2
4歳となっています。言葉は悪
は若者を惹きつける総合的なハイテク農業王
いですが、北海道の中に若者を惹きるける魅
国を目指すべきではないかと思っております。
力的な仕事の場が少ないことが一因なのでは
観光についてです。北海道は外国人がずい
ないかと感じます。パイオニア精神にあふれ
ぶん増えておりますが、ピークが夏と冬の2
dokeiren
つ立っています。国内から来る人がその間隙
価値を高めることが必要です。北海道として
を埋めて定巡化されているわけではありませ
それが大きなポイントになると思います。
ん。季節変動を平準化することが必要で、そ
色々勝手なことばかり申し上げましたが、
れによって受け入れ態勢が安定し、雇用の拡
いずれにいたしましても、フロンティア精神
大にも繋がります。
のある若者に期待したいと思います。そして
一つのアイディアですが、北海道には四季
魅力的な仕事の創出に向け、産学官民金が連
折々の景観、温泉、祭り、雪などがあります
携して、一歩でも二歩でも進んでいくことを
が、これらに「食」を加え、ある地域につい
期待したいと思います。経団連といたしまし
ては1月、別な地域は2月と、お祭りを増や
ても皆様とともに歩んでまいりたいと思って
していくことによって平準化が図れるのでは
いる次第です。
ないかと思います。
こうした観光の提案力や情報発信力につい
て、誰よりも若い人たちに知恵をしぼっても
らうことが大切です。ウェブを使って発信す
(一社)日本経済団体連合会
内山田
竹
志
副会長
る。あるいはよさこいソーランのように大学
生がその主役となるなど色々方法があるので
はなかろうかと思います。
もう一つ、北海道は首都圏との同時被災リ
我々トヨタ自動車は北海道ではトヨタ自動
スクがないことです。本社移転や機能の一部
車北海道を設立しています。道経連の田中副
移転について、各企業が知恵を働かすととも
会長が社長をしており、ここで自動車用の部
に、北海道の皆さんがいかに誘致をしていく
品を製造しております。
かが必要であると思っております。
従業員が3,
2
0
0名ほどになり、高いレベル
私ども東京海上も、阪神淡路大震災の頃で
で生産をしています。また、ものづくり産業
したが、札幌にコールセンターと事務集中セ
ということでは、現場の改善や人材育成とい
ンターを設け、現在では北海道全体で約9
0
0
うことを重視しており、その成果も見たり、
人の雇用が生まれています。
聞いたりしております。このようなことを通
テレワークの普及について北海道は一番向
じて、北海道には優秀な人材が沢山いること
いていると思います。昨年、北見市でデモを
を感じました。また先ほどから議論がありま
拝見しました。非常に有効かつ効率良く仕事
すように高いレベルにいくため、人材をどう
をしておりました。これを広めることは非常
やって育てていくかということが必要である
にいいことだと思った次第です。
と現場を見て感じています。
最後になりますが、北海道のみならず全国
経団連では未来産業技術委員会という委員
的に極めて厳しい財政状況になっています。
会を担当していますが、この委員会はイノ
公共事業等社会資本整備については、優先度
ベーションをどうやって日本の中に起こして
と時間軸を考慮した選択と集中が何よりも必
いくか、あるいはイノベーションを通じて、
要になってきます。インフラのストック効果
付加価値を増していくにはどうしたらいいか
ということが言われておりますが、現在ある
ということについて議論をしています。
道路、港湾等の公的インフラを整備し、付加
その中の重要なテーマの1つがイノベー
1
5
経済懇談会
ションを通じて地方創生をもっと活発にでき
てしまいます。
ないかということで、まさに今日の議論とリ
比較的うまくやっている地域は、次から次
ンクしています。そのベースにあるのは地域
へと新しいことをやるのではなく、一つのこ
の発展は、全国一律的に同じことをやればい
とを長く継続しています。このためには地方
いということではなく、地域の特色を活かし、
の自治体が継続的に政策として実施していく
地域産業を発展させることが必要です。
ことが大切です。北海道で言いますと北海道
北海道の特色を活かしたイノベーションあ
庁が先ほどの農業や観光を絶対日本一の強い
るいは発展について、私見を二つ述べさせて
産業にすると決めたなら、次の知事もその政
いただきたいと思います。
策を継承することが重要です。日本で成功し
まずは農業についてです。ご存じのように
ている地域は知事さんが替ってもその政策を
作付面積は北海道が日本の3分の1を占めて
維持あるいは強化しているところがうまく
います。農産物の出荷額も日本一ですが世界
いっていると思います。
に目を向けると、オランダは北海道の半分位
私は北海道が大変好きです。地域の特性を
の面積で、農産物の輸出額は世界第2位です。
活かし、益々発展していくことを祈念してお
北海道を含む日本は世界で5
1位です。
ります。
一体この差はどこで出てくるのか。まだま
だやる余地があると思います。これがまさに
農業のイノベーションということです。ロ
ボットやICTを活用する、製造業で我々が
テーマ2 生産性が高く活
力あふれた社会の実現
培った生産性向上の様々な取り組みを農業に
問題提起
応用する、あるいは高付加価値をつける、収
量が増加できる農産物の開発などがあげられ
ます。北海道の面積はオランダの2倍ですか
ら、最終的にはオランダの2倍の農産物を輸
出しても全く構わないわけです。
もう1つは観光業です。北海道は海外の観
■食産業の多様化に向けた推進
北海道経済連合会
!
島
英
也
副会長
光客がたくさんみえていて、昨年は1
5
0万人
を超え、今後益々増えていくと思います。一
方で北海道大学に観光学高等研究センターと
1
6
いう本州にはないセンターもあります。こう
私の方から、明日、視察する「ICTを活用
いう大学の力も借りて人材育成を含め、新し
したスマート農業」
、「6次産業化」や「植物
い北海道ならではの観光に取り組むことをす
工場」の現状、北海道独自の制度として運用
すめます。
を開始した「食品の機能性表示制度」につき
産学官連携にあたっても、地域の特性を活
ましてお話し、ご所見をお伺いいたします。
かした拠点化が重要です。北海道でいえば農
全国的な農家戸数や農業就業人口の減少、
業、観光業を候補にして、拠点化を図る必要
そして高齢化により、農業の担い手不足が深
があります。拠点化した産業は、継続的なイ
刻化する一方、道内においては一戸当たりの
ノベーションつまり競争力がなければ衰退し
耕作面積が全国平均の1
0倍以上と大規模経営
dokeiren
が進展しています。
大規模農業において欠かせないトラクター
操作は、熟練者でなければできない作業が多
ター化」についての検討を進め、クラスター
のロードマップを作成いたしました。
現在、苫小牧東部工業基地内で2ヘクター
く、若者や女性参入の妨げとなっております。
ルの植物工場を整備し、来年は更に2ヘク
このため、高精度GPSを活用した自立ロボッ
タールを追加し、イチゴの通年生産を予定し
トによる精密農業は、大きな期待を担ってい
ています。最終的には、植物工場と加工・流
ます。しかし、完全無人化の道のりは遠く、
通等の関連施設で合計2
0
0ヘクタール規模の
現状においてはGPSガイダンスや自動操舵シ
集積を目指しています。施設を整備している
ステムを中心に普及している状況です。
苫小牧は、道内でも夏は冷涼、冬は雪が少な
政府は農業を含む非製造業でのロボット市
く日照も多いことから植物工場に適した地域
場を平成3
2年度までに2
0倍に拡大すること、
で、年間を通じ栽培が可能となっています。
科学技術イノベーション総合戦略では平成2
8
一方、真冬は苫小牧でも最低気温がマイナ
年度から車の自動走行や農作業の自動化と
ス1
0℃になる場合もあり、冬期間の暖房コス
いった分野に重点配分することを閣議決定し
トが北海道における植物工場運営の課題と
ています。
なっています。そのため課題解決には、苫小
そこで、担い手不足の解消と省力・高収益
牧東部工業基地内の工場から発生している排
な農業の実現に繋がる、ICTやロボット技術
熱やCO2を新たな地域エネルギーや未利用資
を活用した無人トラクターなどの自動走行を
源として活用することが有効であると考えま
はじめとしたスマート農業の実現に向け、経
すが、活用に向けた技術開発や技術の普及・
団連の評価等、ご所見をお伺いいたします。
振興に対するアドバイスをお願いします。
次に6次産業化の現状・課題についてです。
最後に「北海道食品機能性表示制度の拡
道内で6次産業化の認定を受けた事業者件
充」にいてお伺いいたします。
「特定保健用食
数は、本年7月時点で、1
2
0件と全国1位で
品」、「栄養機能食品」に続く、「第3の保健
す。一方、「6次産業化」を進める上で、2
機能食品」として、加工食品及び農林水産物
次・3次産業に関わる「知識、技術の取得」
、
に関して企業の責任において科学的根拠をも
「設備、運転などの資金調達」
、「人材確保」
とに機能性を表示できる「機能性表示食品制
や、「商品のブランド化」、「マーケティング
度」が本年4月、創設されました。
力」など様々な課題があります。中でも「人
しかしながら、この制度に求められる科学
材確保」については、賃金が低く単純作業が
的根拠の基準を勘案した場合、必ずしも中堅
多い労働力をはじめ、加工や接客・営業・会
中小企業に使いやすいものとなっておりませ
計などの知識や経営感覚を持った人材を確保
ん。一方、北海道における独自の「北海道食
することが非常に厳しい状況だと、現場から
品機能性表示制度(ヘルシーDo)」は、申請
声が上がっているところです。
から認定までの審査期間が短く、費用も格段
今後、「6次産業化」を加速させるため、
これら課題を解決する方策につきましてご教
示を頂きたいと思います。
に安価であること等から、中堅中小企業にも
使いやすい制度となっています。
さらに本年4月の改正により、北海道内の
次に「植物工場クラスターの形成」につい
自社拠点や関連会社に限らず「道内に立地し
てです。平成2
4年度に「植物工場のクラス
ている工場」で製造すれば対象となり、道産
1
7
経済懇談会
食材の活用ニーズの高い道外企業の参入が容
りの発着枠拡大、中国、ロシアからの航空
易になりました。全国的に訴求力の高い「北
会社に対する乗り入れ制限の緩和、混雑問
海道ブランド」を活かし、中堅中小企業の視
題の解消にむけた新たな整備計画の策定、
点に立って、企業の自主責任ではなく「北海
CIQ体制の強化・充実
道が認定をすることによる信頼性」を有する
・北海道新幹線の札幌までの早期開業
ヘルシーDoの活用を通じて食の研究が活性
・観光貸し切りバス人材の確保・育成に向け
化し、結果として「国民の健康寿命の延伸」
た支援、などであります。
に繋がるものと期待しております。
さて、現在北海道観光は堅調であり、この
そこで経団連のヘルシーDo制度の評価、
好機をとらえて、官民連携の上、今後もイン
及び今後の発展に向けたアドバイス等をお願
バウンド拡大に向けた「3
0
0万人」の目標達
いいたします。
成に取り組んでいく所存であります。
最近の道内インバウンド旅行の傾向として、
■観光立国北海道の着実な実現
井
純
二
にシフトしてきている点があり、それに伴う
課題も多くあげられています。
北海道経済連合会
石
外国人観光客も団体旅行から個人旅行へ急速
例えば、
副会長
・観光施設間のバスの便が悪い、路線バスの
本数が少ない、JRや空港からのバスの乗
り継ぎが悪い、などの公共交通機関の問題
・フェリーターミナル内の最寄り駅までのバ
私からは、観光立国北海道の着実な実現に
ス案内等、乗り継ぎ案内がわかりにくい、
向けて発言をさせていただき、2点お伺いい
多言語化されていない等、交通結節点での
たします。
案内標記の問題
国は、成長戦略の一環として「2
0
3
0年に3
千万人」の外国人観光客を目標として掲げ、
2千万人時代を万全な体制として迎えるとし、
れ」などの道路案内標識のわかりにくさ
・Wi-Fi環境の未整備、とりわけ、都市部を
北海道は、2
0
2
0年に3
0
0万人の外国人観光客
除き光回線が整備されていない地区のWi-
誘致を目標に掲げました。また、国は2千万
Fi環境整備が困難となっています。
人時代の様々な課題について取り組むとして、
・駅のエレベーター等の未設置、車両内の荷
各ブロック連絡会を設置しており、北海道に
物置き場不足、大型コインロッカーの不足
おいても6月末に当該ブロック連絡会の中間
等、大型のスーツケースを持った移動に対
報告がなされ、1
2
7の現状・課題が抽出され
する労力
現在の対応方針が出されたところです。
当会としても、観光振興には社会資本整備
との両輪の面があることから、7月に以下の
要望を国へ行いました。
1
8
・外国人によるレンタカー運転時、「止ま
・外国語対応できる人材確保の難しさ
・傷病者等に対する緊急時の対応
など、様々な課題があります。
まずは、「外国人観光客の個人旅行化に伴
・高規格幹線道路の整備促進
う課題への対応」について、他の有効的な事
・新千歳空港の機能強化として、1時間あた
例などもご教授いただき、経団連からのアド
dokeiren
バイスをお願いしたい1点目です。
さらに、今後もインバウンド拡大にむけて
取り組むにあたり、道央圏への集中がみられ
地域であり、昨年もお伺いしましたが、様々
な先進的な取り組みに挑戦されており、いつ
もながら、感心致しております。
る外国人観光客を地方に広げていくことが重
経団連としましても、本年1月に発表した
要ですが、大きな課題として、「観光産業を
提言「わが国農業の持続的発展と競争力強
取り巻く労働力の不足」があります。特に、
化・成長産業化に向けて」の実現のため、農
北海道は観光入込客数の繁閑差が大きく、1
1
水省への働きかけや地域経済団体と共同の取
月から4月の閑散期は夏季ピークの3
0%まで
り組みをしておりますが、皆様からのご意見
減少します。そのような状況もあり、オン
を参考にさせていただき、更に強化していき
シーズンの道内の地方観光地の宿泊施設にお
たいと考えています。
いては、労働力確保に苦慮しています。また、
先ほどご報告のありました、スマート農業
観光客の足となる、バス、タクシー等の運転
については、農業の生産性を向上させるため
手は、高齢化と低賃金化などによる深刻な担
には、ICTの利活用を促進することが不可欠
い手不足にあります。
であり、スマート農業のモデルを確立するこ
労働力不足の克服がアベノミクス最大の課
とは、高齢化の進む農業の担い手不足の解消
題となってきており、国においても6月に
や、労働負荷の軽減、ひいては農業経営モデ
「サービス業の生産性向上協議会」が設立さ
ルの変革、若者や女性の新規就農にも繋がる
れ取り組み始めたところです。官民連携で観
と考えています。
光立国を目指して取り組んでいるところです
政府も2
0
1
3年にスマート農業研究会を設置
が、関連産業における労働力不足の問題、3
していますし、今日も内山田さんがいらっ
次産業における生産性向上といった観点から、
しゃいますが、トヨタ自動車さんはじめ、
民間及び経済界としてどのような取り組みに
NECさん、富士通さんなどが農業のICT化に
力を入れるべきかについて、2点目として、
取り組まれています。
経団連の見解をお聞かせいただけますでしょ
うか。
今後は、農業生産者だけでなく、製造など
の食品加工、流通、外食などを巻き込み、そ
の先の消費者まで見据えたICTの利活用が必
意見交換
■食産業の多様化に向けた推進
(一社)日本経済団体連合会
荻
田
伍
副会長
要だと考えています。
次に、北海道ではフード特区を活用し、企
業参画によるコンソーシアムを組んで大規模
な植物工場クラスターの形成に取り組んでい
ると伺っています。植物工場の運営にあたっ
ては、様々な課題があるかと思いますが、日
本における成功モデルの構築のため、経団連
としてお手伝いできることがあれば、是非、
お申し付けいただければと思います。
また、農業の成長産業化を実現するために
!島副会長から食産業について、ご報告が
は、オランダのフードバレーのような先進事
ありました。北海道は日本の食の大黒柱的な
例も参考にして、生産から加工、物流、販売
1
9
経済懇談会
までを一貫して行う6次産業化を推進してい
く必要があります。6次産業化の成功の鍵は、
「マーケットイン」の視点であります。消費
者が何を求め、何に価値を見出すのかを的確
につかみ、その期待に応える商品やサービス
■観光立国北海道の着実な実現
(一社)日本経済団体連合会
永
易
克
典
副会長
を開発する必要があります。とかく「生産」
起点で商品やサービスを考えがちですが、顧
客視点で6次産業化を推進するためにも、2
次や3次産業の段階で、各分野において強み
先ほど、石井副会長からご指摘のとおり、
を有する産業同士が連携を深めることも必要
訪日外国人旅行者2,
0
0
0万人時代が目前に迫
ではないでしょうか。
り、しかもその多くが個人旅行となるなか、
経団連としても、JAグループとワーキン
その受け入れ体制の整備は喫緊の課題です。
ググループを立ち上げ、農業界との連携強化
なかでも地方空港の強化・活用、CIQ体制
を図っています。現在、各企業とJAグルー
の充実、多言語対応、そしてWi-Fiの整備が
プとの間で、2
0件の個別協議が進んでいます。
不可欠です。空港や港からの2次交通への良
中長期の視点で、いい結果が出せればと思っ
好なアクセスが求められるなか、時間とコス
ております。
トがかかるハード面での対応に先行して、ま
北海道の機能性表示制度、「ヘルシーDo」
の取り組みについては、消費者ニーズに対応
した適切な情報提供に資するとともに、食品
ずは必要とされる場所で適切な情報を提供で
きるソフト面での対応が肝要です。
北海道では、観光庁が実施している広域観
関連産業の振興にもつながるものと思います。
光周遊ルート形成事業において、西は札幌、
既に5
0を超える商品が認定されていますが、
東は知床や釧路に及ぶ東北海道周遊ルートが
独自技術を活かしたユニークな商品が並んで
選定されております。こうした事業を活用し
いるのは、まさに道内企業の皆様の努力と創
て、多言語案内を含めた地上ルートの形成や
意工夫の表れです。あとは、いかにマーケッ
Wi-Fiの整備に取り組んでいただきたいと思
トイン、消費者目線で「販売」につなげるか
います。
です。全国レベルでも「機能性表示食品制
また、地域の魅力を伝えるという点から、
度」や「地理的表示保護制度」が本格的に始
通訳ガイドの活躍も期待されます。本年6月
まっています。全国的な動きも注視しながら、
に観光庁がまとめた「アクション・プログラ
当制度の更なる活性化を期待しています。
ム2
0
1
5」においても、地域における多様な
最後になりますが、農業は地方における基
ニーズに応えるため、自治体が独自に育成す
幹産業であり、その可能性は、地方経済の活
る「地域ガイド制度」を導入するとしていま
性化ともに、日本経済の再生に、間違いなく
す。詳細な制度の決定はこれからですが、こ
繋がるものであります。経団連としまして、
うした新しい仕組みを最大限活用し、個人旅
皆さんと共に、農業の更なる活性化に取り組
行者に対して、存分に北海道の魅力を発信で
んでいければと考えております。
きる体制を構築していただきたいと思います。
続いて、ご指摘のあった労働力の不足・生
産性向上についてですが、これは観光に限ら
2
0
dokeiren
ず、地域経済の活性化を推進する上での大き
についてご紹介させていただきながら一言コ
な課題です。「サービス業の生産性向上協議
メントをさせていただきます。
会」では、経団連も積極的に協力していくこ
農業の高付加価値化や6次産業化が安倍政
ととしており、製造業のノウハウをサービス
権の掲げる地方創生の重要なテーマとなって
業にもうまく応用できるものと考えています。
おりますが、農業生産の1割強を占める北海
とりわけ、先ほど農業のところでも出ていま
道こそ日本農業の更なる活性化において大き
したが、ICTとロボット技術を活用できる可
な役割を果たすものと考えております。
能性は高いと考えます。最近では、長崎のハ
個々の企業ができることは良い商品を開発
ウステンボスにおいて、従来、人が行ってい
し提供することにつきますが、地域経済の活
た業務の約7割をロボットに置き換え、人件
性化や日本経済の発展という観点からは内な
費を3分の1に抑えるホテル運営が話題に
る需要の取り合いではなく、海外の需要を取
なっています。今後は、こうしたイノベー
り込むことが鍵になると思います。その点北
ティブな取り組みに果敢に挑戦するとともに、
海道が大変恵まれているのは、すぐ近くに北
各地域同士が連携して、お互いの取り組みに
海道を大好きな国、中国や韓国があるという
ついて情報共有を図っていくことが重要だと
ことだと思います。特に中国では北海道ブラ
思います。
ンドを掲げ展開していけば必ず受け入れられ
また、新しいこうしたイノベーションを
ると確信をしております。
リードするためには、人材育成が欠かせませ
私ども三井物産は桃や葡萄、メロン等の高
ん。経団連では、企業と大学が連携して、学
品質の果物を中心としたプレミアム農産物を
生を対象に観光インターンシップを開講して
香港やシンガポール、マレーシア等に輸出を
おります。当地でも観光分野に力を入れる北
行っております。ここ北海道からは夕張メロ
海道大学など、地域の観光業を支える人材育
ン等を香港の高級スーパー、外食向けに空輸
成の基盤が備わっております。ぜひ、道経連
で輸出しており、大変鮮度が良くお客様から
の皆様と当会とで協力して、次代の北海道を
好評を得ております。
担う観光人材の育成に向けて、共に取り組ん
また、6次産業化の取り組みとしては、北
でいきたいと存じますので、当地での観光分
海道で機能性玉ねぎである「さらさらゴール
野でのインターンシップについてもご検討い
ド」の開発、生産、販売に現在取り組んでお
ただければ幸いです。
ります。
「さらさらゴールド」は動脈硬化や糖
尿病の予防に聞くと言われているケルセチン
自由発言
(一社)日本経済団体連合会
飯
島
彰
己
副会長
を従来の玉ねぎの約3倍含んでおり、健康嗜
好の昨今、順調な滑り出しを見せております。
先ほど荻田副会長からもお話がありました
が食産業も農業も如何にして消費者のニーズ、
嗜好をつかむかが成長の鍵です。日本の農畜
産物は安全で高品質との評価であり、特に北
海道は優れたブランド力を持っております。
バリューチェーンの川上である農業から、川
私からは農業、食に関する当社の取り組み
下の販売食産業までが一体となって差別化を
2
1
経済懇談会
行い、高機能化、高品質化を図ることで国内
けた課題についての問題提起も頂戴いたしま
のみならず、海外でも新たな市場を獲得して
した。地方への新たな人の流れの創出には、
いくことが可能であると考えております。
企業の果たす役割が重要であると再認識いた
しました。
まとめ
本日の議論を振り返って
(一社)日本経済団体連合会
審議員会
岩 沙 弘 道 議長
本日、経済懇談会に先立ち開催いたしまし
た昼食懇談会では、この観点から、昨年1
1月
に札幌本社を開設し、東京にある本社の重要
機能を北海道に移転したアクサ生命保険の
方々をお招きし、お話を伺ったところです。
経団連では、2月にとりまとめた提言「活力
溢れる地方経済の実現」のなかで、この事例
をご紹介いたしましたが、今回はご当地札幌
でそのフォローアップを行なうよい機会を得
ることができました。
本日は皆様の積極的なご参画により、現
テーマ2の「生産性が高く活力あふれた社
地・現場での生の声に基づき、これまで以上
会の実現」では、北海道が優位性を有する農
に実り多い議論が行えたのではないかと思い
業と観光について、その強みを一層高めるた
ます。改めてお礼申し上げます。
めの取り組みなどをお伺いし、たいへん心強
今回は、ご当地北海道で課題とされている
二つのテーマ「地方創生と人口減少社会の克
農業については、北海道は長年、酪農や畑
服」
「生産性が高く活力あふれた社会の実現」
作で国内をリードしてきました。また近年は
について議論いただきました。経済懇談会を
「ゆめぴりか」や「ななつぼし」などの北海
さらに活性化させるため、今年も進行方法を
道米が特Aという最高評価を獲得し、広く浸
改善し、道経連の皆様から問題提起をしてい
透しています。和食がユネスコ無形文化遺産
ただいたうえで、自由発言の形で意見交換を
に登録され、世界的に注目を浴びている今、
させていただきました。
日本文化の発信において、北海道が果たす役
今回のテーマであります「地方創生の深化
割は大きいと思います。
と北海道経済の再生」の実現のためには、道
明日は岩見沢市を訪問し、先ほどご紹介い
経連を中心とした地域の皆様の取り組みとと
ただいた農業分野におけるロボット技術の先
もに、経団連としても地域の実情を踏まえた
進研究事例を現地にて拝見させていただく予
政策提言活動を強力に推し進めていく必要が
定です。併せて、ICTを積極的に利活用され
あると考えております。
ている生産者の皆様とも意見交換する予定で
テーマ1の「地方創生と人口減少社会の克
あり、貴重なお話を伺い、今後の経団連の政
服」では、北海道におけるものづくり人材の
策提言活動に活かしてまいりたいと考えてお
育成や女性の活躍推進に関する具体的な取り
ります。
組みをお伺いするとともに、経団連の活動を
紹介させていただきました。
また、北海道外からの移入・移住促進に向
2
2
く感じた次第です。
観光についても、北海道が果たす役割が大
きいことは言うまでもありません。その豊富
な自然資源やすばらしい景観は日本の観光業
dokeiren
にとって大きな財産であります。世界レベル
タで開催された閣僚会議で大筋合意されまし
の観光資源を活かし、今後さらに海外からの
た。経団連といたしましては、TPPをはじ
観光客にも積極的にアピールしていただけれ
めとした広域経済連携の実現により、日本が
ばと思います。
世界の経済成長を取り込み、世界とともに成
また、本日のテーマの「人口減少社会」や
長していくことが重要だと考えています。北
「生産性向上」は、北海道のみならず、わが
海道の各種産業は大きな市場が開かれること
国全体が直面している課題でもあります。
をチャンスととらえ、進化・イノベーション
大内会長のご挨拶にございましたように、
これらの課題に対する皆様の取り組みが、北
を実現し、世界市場で大いに力を発揮してい
ただけるものと私は確信しております。
海道経済の活性化や、地方創生への期待につ
地方創生なくして、わが国経済の再生はあ
ながってきていることを心強く感じるととも
りません。経団連といたしましても、榊原会
に、ぜひこれらの取り組みが日本再興の成功
長のリーダーシップのもと、全力で取り組ん
モデルとなることを願っております。
でまいりますので、道経連の皆様に引き続き
皆 様 ご 存 じ の と お り 、 TPP 、 環 太 平 洋
パートナーシップ協定、について、アトラン
ご協力いただきますようお願いしたいと思い
ます。
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