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学習メモ
生物基礎 テレビ学習メモ 第8回 今回学ぶこと DNA・遺伝子・ゲノム 細胞の核の中には「染色体がある」とい われたり「DNA がある」といわれたりし ます。染色体と DNA はどちらも核の中に ありますが、同じではありません。また、 「DNA は遺伝子の本体」といわれますが、 監修講師 DNA と遺伝子も同じではありません。今 岡 幸子 回は、染色体、DNA、遺伝子の関係を知 るとともに、さまざまな研究分野への応用 調べておこう・覚えておこう が期待される「ゲノム」についての理解を 染色体/ DNA /デオキシリボ核酸/ ヒストン/遺伝子/ゲノム Point 深めましょう。 染色体と DNA の関係 細胞の核の中にある物質は、塩基性の色素でよく染色されることから、19 世紀後半に「染色体」 ▼ と名付けられた。ヒトの口腔粘膜からとった細胞を、染色しないでそののまま見た場合と、酢酸 オルセインで染色して見た場合を比較して顕微鏡観察を行うと、染色したほうが観察しやすいこ とが確認できる。 一方、DNA は化学的な構造や性質を調べると、 「デオキシリボースを含む、核の中の酸性を示す 物質」なので、 「デオキシリボ核酸」と名付けられた。英語で書くと「Deoxyribonucleic acid」 となり、これを略したものが「DNA」である。 DNA は非常に細くて長い糸状の物質なので、核の中でもつれてしまわないようにヒストンと 呼ばれるタンパク質に巻きついている。染色体は、DNA がタンパク質に巻きついたもので、核 の中ではさらに集まって塊のようになっている。 − 15 − 高校講座・学習メモ 生物基礎 Point DNA と遺伝子の関係 DNA は核の中に存在し、ヒトの場合、体細胞1個に 46 本の DNA がある。それを全部つな げると 2m 近くにもなる。遺伝子は、その長い DNA のところどころにあって、「背を伸ばす」 や「二重まぶた」などということを決めている部分(タンパク質を決めている部分)で、生物の 設計図になる情報がある。 ヒトの場合、タンパク質を決めている DNA の遺伝子部分は全体の 1.5%程度で、残りの部分 は遺伝子ではない。その DNA の遺伝子ではない部分には「DNA のはたらき方を調節する情報」 があることがわかってきた。しかし、機能がよくわかっていない部分もまだ多く残っている。 つまり、「DNA はデオキシリボ核酸という物質」そして、DNA の一部が遺伝子で、「遺伝子 は生物の設計図になる情報」である。 Point ゲノム ヒトに限らず、ある生物がもつ遺伝子と、遺伝子ではない部分を全部含めた遺伝情報の全体を 「ゲノム」という。DNA は物質だが、「ゲノムというのは DNA にしまわれている内容、つまり 遺伝情報のすべて」である。ゲノムは今、薬や医療、品種改良などわたしたちの身近なところで も利用されている。 ▼ ヒトの遺伝子数はおよそ 2 万 2 千個で、カーネーションの 4 万 3 千個より少ない。しかし、 ゲノム全体の情報量で比べればヒトゲノムはカーネーションの5倍もある。ヒトゲノムには 遺伝子ではないが、遺伝子のはたらき方を調節する部分がたくさんあるので、ヒトはいろいろと 複雑な調節をしながら、からだづくりを行うことができるのである。 − 16 − 高校講座・学習メモ