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CPC(Cooperative Patent Classification)について

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CPC(Cooperative Patent Classification)について
CPC(Cooperative Patent Classification)について
調整課特許分類企画班長 太田 良隆
抄録
2013 年 1 月、EPO と USPTO は、ECLA・ICO 及び USPC に代えて CPC を特許文献に付与し始めた。こ
の CPC は、欧米の特許文献をサーチするために今後無くてはならないツールになるであろう。
本稿では、メイントランクや 2000 シリーズからなる CPC の分類表の構成やナンバリングの態様な
ど、CPC の概要を主に紹介する。
1. はじめに
その後、両庁間で準備を進め、2013 年 1 月には CPC が
発効し、EPO 及び USPTO とも、CPC の付与を開始した。
CPC という単語を英語版ウィキペディアで検索してみる
USPTO に関しては、移行期間を設定しており、2013 年 1
と、Communist Party of China(中国共産党)など、約 50
月から 2 年間は、公開公報(A 公報)に CPC と USPC 双方を
の項目がヒットするが、 その中の一つに、Cooperative
付与するものの、登録公報(B 公報)については少なくと
Patent Classification というものがある。この CPC は、欧
も USPC を付与し CPC の付与は任意としている。 なお、
州特許庁(EPO)と米国特許商標庁(USPTO)が共同で管理・
USPTO においてこのような移行期間が設定されているの
使用する特許分類であり、欧米の特許文献をサーチするた
は、急激な変化を嫌った労働組合の意向を踏まえたことが
めに今後無くてはならないツールになるであろう。
理由であるらしい。
本稿では、この CPC について紹介する。
また、2012 年以前の ECLA・ICO が付与されていた文献
なお、本稿は、著者が特許分類企画班という CPC に頻
に つ い て は、EPO が 管 理 し て い る デ ー タ ベ ー ス で あ る
繁に関わる部署に所属しているから執筆することになった
DOC-DB 内で ECLA・ICO 記号の CPC への機械的な変換処
のであるが、折角の機会なので、当該部署にいることで
理が行われたため、CPC が付与された状態となっており、
知った客観的な事実ばかりでなく、個人的な見解なども随
esp@cenet などにおいて、これらの文献を CPC により検索
所に書かせていただく。そのため、本稿が特許庁としての
することが可能となっている。US 文献については、
(デー
見解を代表するものでない点、ご留意いただきたい。
タエラーなどにより付与対象となっていなかった特定の文
献集合を除いて)従前より EPO が ECLA・ICO を付与して
2. CPC の概要
いたため、CPC 開始に伴って人が読み込んで CPC を付与
する再分類作業は行われていない。
2.1 CPC の経緯及び付与状況
EPO 及び USPTO による CPC 付与は、EPO の公用言語で
ある英語・仏語・独語で発行される PCT ミニマムドキュメ
特許分類には様々なものがある。最も有名なものは国際
ントを少なくとも対象としており、WIPO 標準 ST.3 の国・
特許分類(IPC)であろう。IPC について規定しているスト
機関コードで示すと、AP、AT、AU、BE、CA、CH、DE
(実
ラスブール協定の加盟国(62 か国)の特許庁のみならず、
用新案含む)
、EP、FR、GB、LU、NL、OA、US、WO の特
世界中の多くの特許庁が特許文献に付与を行っている。日
許文献が対象となっている。
本国特許庁(JPO)は、IPC をベースとする FI と、主に FI
付与は、シンプルファミリー(パテントファミリーの一
と異なる観点で展開された F タームとによって特許文献を
類型であり、一つ又は複数の完全に同じ優先基礎出願を有
分類している。
する特許出願の集合)を単位として行われる。例えば、DE
一方、EPO は、European classification system(ECLA)
出願を優先基礎として EP 出願があった場合、CPC 付与は一
及び In computer only(ICO)を、USPTO は、United States
つの出願に対してのみ行われるが、DOC-DB 上は、DE 出願
patent classification(USPC)を、それぞれ使用していたが、
も EP 出願も同じ記号の CPC が付与されていることになる。
両庁は、2010 年 10 月に、EPO の内部分類であった ECLA・
CPC は EPO 及び USPTO が管理している、すなわち CPC
ICO をベースとして CPC を共同で作成することを発表した。
の改正権限は EPO 及び USPTO が有しているが、 実際に
tokugikon
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2013.8.20. no.270
サーチ
SEARCH
〜変化する環境に対応するために〜
CPC の付与を行っているのは、EPO と USPTO のみではな
例として、A61B19/ 内の特定の範囲の ECLA を図 1 に示
い。現在のところ、ES、FI、SE、GB などの欧州諸国が自
す。IPC として A61B19/08 が存在しており、その細展開
国の特許公報に CPC を付与している。 ただし、CPCNO
として A61B19/08B 〜 A61B19/08L が設けられている。
(NO:National Office)と呼ばれるこれらの国が付与した
細展開の分類記号は、IPC の記号+アルファベット一文字
CPC は、EPOと USPTO が付与した CPC と、DOC-DB 内で区
(+数字やアルファベット)といった形でなされ、どの IPC
別して蓄積されている。また、世界第一位の特許出願数を
のグループを細展開したのかが分類記号を見ただけで分か
誇る中国は、EPOとの協力の下、2014 年 1 月にいくつかの
るようになっていた。なお、CPC に移行する直前である
技術分野で CPC 付与を開始し、2016 年 1 月に全ての技術
2011 年〜 2012 年にはどの IPC のグループを細展開した
分野で CPC 付与ができるように努力するとしている 。韓
のか一見して判別できない ECLA のグループも多く作成さ
国も、USPTO との協力の下、いくつかの技術分野で CPC
れた。これについては 2.8 で述べる。
付与を開始する予定としている 。
また、角括弧[ ]は、囲われた部分が IPC に存在しな
1)
2)
い ECLA 固有のものであることを表している。
2.2 CPC の分類表の構成
(1-2)ICO
上述のとおり、CPC は ECLA・ICO をベースとして作成
ICO は、ECLA を更に細展開したり、ECLA とは異なる観
された。そこで、
(1)まず、従前の ECLA・ICO の分類表の
点で展開を有したりする点で、JPO の F タームに類似した
構成を説明し、
(2)次に、ECLA・ICO との関係を述べつつ
ものである。一方、分類記号は、ECLA と同様に、IPC に「似
CPC の分類表の構成について説明する。
た」ものとなっており、ECLA の A セクションに対応する
ものが ICO の K セクションとして、B セクションに対応す
(1-1)ECLA
るものが L セクションとして、以下同様に、C、D、E、F、
ECLA は、IPC をベースとした分類体系を有しており、A
G、H セクションに対応するものが、M、N、P、R、S、T
セクションから H セクションまで存在している点で、JPO
セクションとして展開されていた。ECLA と ICO のセク
の FI に類似したものである。
ションの対応関係を図 2 に示す。
図 1 ECLA の一例
ECLA
A
B
C
D
E
F
G
H
ICO
K
L
M
N
P
R
S
T
Y
内容
HUMAN NECESSITIES
PERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
CHEMISTRY; METALLURGY
TEXTILES; PAPER
FIXED CONSTRUCTIONS
MECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING ENGINES OR PUMPS
PHYSICS
ELECTRICITY
GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-OVER
TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER
USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
図 2 ECLA・ICO のセクション
1)SIPO のプレスリリース http://www.sipo.gov.cn/yw/2013/201306/t20130605_801903.html
EPO のプレスリリース http://www.epo.org/news-issues/news/2013/20130604.html
2)K
IPO のプレスリリース http://www.kipo.go.kr/kpo/user.tdf?a=user.news.announce.BoardApp&board_id=press&c=1003&cp=1&pg=1&npp=10&se
q=12530&catmenu=m02_01_01
USPTO のプレスリリース http://www.uspto.gov/news/pr/2013/13-19.jsp
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mirrored
ICO
further
breakdown
ICO
mirrored
ICO
orthogonal
ICO
図 3 ICO の一例
(2)CPC
これらの ICO は、① ECLA と同じ主題事項を対象とする
が付加情報としてのみ用いられる mirrored ICO、② ECLA
CPC は、
(2-1)ECLA を由来とするメイントランクと呼ば
の細展開に相当する further breakdown ICO、及び③ ECLA
れる部分と、
(2-2)further breakdown ICO 及び orthogonal
とは異なる観点でサブクラスごとに展開された
ICO を由来とする 2000 シリーズ(スラッシュの前が 4 ケ
orthogonal ICO に類型分けされていた(orthogonal は「直
タの 2000 番台で表記される)と呼ばれる部分と、
(2-3)Y
交の」という意味の英単語)。
セクションとから、 構成される(図 4 参照)
。CPC のメイ
例 と し て、A61B の 特 定 の 範 囲 の ICO を 図 3 に 示 す。
ントランクには約 16 万のグループが、2000 シリーズに
K61B19/08 は、ECLA のグループ(A61B19/08)とセクショ
は 約 8 万 の グ ル ー プ が、Y セ ク シ ョ ン に は 約 7500 の グ
ン名だけが異なる mirrored ICO である。K61B19/08B2 は、
ループが存在し、合計で約 25 万のグループが CPC には存
A61B19/08B 及 び K61B19/08B の 細 展 開 に 相 当 す る
在している(図 5 参照)
。
further breakdown ICO である。K61B560/00 は、ECLA と
Origin:
は異なる観点でサブクラス K61B(A61B)内に展開された
 IPC
orthogonal ICO である。
メイントランク
更に、ICO には、ECLA に対応しない Y セクションという
 ECLA
 mirrored ICO
ものも存在していた。Y セクションは、既存の A 〜 H セク
ションが対象としている主題事項に対して横断的に展開さ
• further breakdown ICO
れた分類であり、Y02、Y04、Y10という3 つのクラスが存
2000 シリーズ
在していた。 具体的には、Y02は気候変動緩和技術を、
• orthogonal ICO
Y04はスマートグリッド関連技術を対象としていた。また、
Y10は、CPC の立ち上げを念頭に置き、USPCに存在してい
図 4 CPC の構成(1)
た横断的分類(cross reference art collections 及び digests)
が 2012 年 6 月に導入されることにより作成されたものであ
Sections A─H
る。余談ではあるが、Y10として一部の USPC を CPCに導入
メイントランク
発明情報 or 付加情報
することを許容するのであれば、CPC 発効後もUSPC が実質
160 500 symbols
的に使えるように、USPC 全部を Y セクションに導入してく
2000 シリーズ
(インデキシング)
(further breakdown ICO, orthogonal ICO,IPC の
インデキシングコード)付加情報のみ
れないかと、USPTO の分類実務者が EPO の分類実務者に
(冗談として)お願いし、EPO の分類実務者がさすがに勘弁
82 000 symbols
してくれと返していた会話を聞いたことがある。
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図 5 CPC の構成(2)
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Section Y
付加情報のみ
7 500 symbols
(気候変動緩和
技術、スマート
グリッド等)
サーチ
SEARCH
〜変化する環境に対応するために〜
図 6 CPC メイントランクの一例
(2-1)メイントランク
(2-2)2000 シリーズ
ECLA と CPC のメイントランクとを比較すると、後述の
ICO と CPC の 2000 シリーズとを比較すると、ICO は K
2.3 で言及するナンバリング方法の点で違いはあるが、分
セクションから T セクションまで展開されていたのに対
類表の構成に本質的な違いはない。
し、2000 シリーズはメイントランクと同様に A セクショ
例として、A61B の特定の範囲のメイントランクを、図
ンから H セクションまで展開されている点、及び、後述の
6 に示す。図 1 と見比べて、本質的な違いがないことを理
2.3 で言及するナンバリング方法の点で、異なる。しかし、
解して頂けると思う。
ECLA・メイントランクと同様に、ICO と 2000 シリーズ間
従前、ECLA では、IPC に存在しない ECLA 固有の部分が
に分類表の構成に本質的な差異はない。
角括弧[ ]で囲われていたが、CPC では、CPC 固有の部
例として、A61B の特定の範囲の 2000 シリーズを、図
分が波括弧{ }で囲われている。なぜ角括弧[ ]から波
7 に示す。図 3 と見比べて、本質的な違いがないことを理
括弧{ }に変更したのか EPO の分類実務者に質問したと
解して頂けると思う。
ころ、IPC の分類表では角括弧[ ]は略語又は頭字語(例
メイントランク(例、A61B19/08)と同じ主題事項を対
え ば、G10L15/14 の タ イ ト ル に は using statistical
象とし、ナンバリングに 2000 を付加されたか否かのみで
models, e.g. Hidden Markov Models[HMM]という記載が
異なるグループ(例、A61B2019/08)は、 実際には付与
ある)に対してのみ用いられるべきことがガイドライン上
に利用されないダミーシンボルである。分類表上表示され
定められているという理由もあるが、波括弧{ }の方が
ているのは、分類の体系・階層構造を使用者にわかりやす
セクシーだからとの返答を受けた。なお、丸括弧( )は、
く示すためである。当該グループを実際に付与したい場合
IPC においても CPC においても他の分類箇所を指し示す
は、メイントランクの対応グループ(例、A61B19/08)を
「参照」のためだけに用いられるべきとされている。
付加情報として付与する。すなわち、メイントランクの各
mirrored
ICO
origin
further
breakdown
ICO
origin
mirrored
ICO
origin
・
・
・
orthogonal
ICO
origin
図 7 CPC2000 シリーズの一例
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グループを付加情報として付与することにより、今まで
ループ及び further breakdown ICO を由来とする 2000 シ
mirrored ICO が担っていた ECLA と同じ主題事項に付加情
リーズのグループは、IPC の分類記号に数字を追記するよ
報として付与されるという役割は、当該メイントランクが
うにして表記される。例えば、IPC に A61B19/08 が存在
担うことになっている。
し、その細展開として ECLA に A61B19/08B が存在してい
な お、 図 7 と 図 3 と を 見 比 べ る と、 図 7 に は、
た場合、対応する CPC は A61B19/081 と表記される(図 1
A61B19/087 及び 19/088 に相当する項目が存在しないこ
及び図 6 参照)
。そのため、メイントランクのグループ及
とが分かる。これは、A61B19/087 及び 19/088 の下位に
び further breakdown ICO を由来とする 2000 シリーズの
further breakdown ICO に相当するグループが存在せず、
グループは、細展開の元となった IPC のサブグループが判
かつ、上述のようにメイントランクと同じ主題事項を対象
別できる。ただし、どの IPC の細展開に該当するのか一見
とし、ナンバリングが 2000 を付加されたか否かのみで異
して判別できない CPC のグループも存在するが、これに
な る グ ル ー プ は、 付 与 に 利 用 さ れ な い た め、
ついては、2.8 で言及する。
A61B2019/087 及び A61B2019/088 といったグループを
orthogonal ICO を由来とする 2000 シリーズにおいて
2000 シリーズに作成する意味がないからである。
も、スラッシュ(/)以後にアルファベットは使用されて
また、メイントランクと異なり、2000 シリーズでは、
いない点は、メイントランクや further breakdown ICO を
上記ダミーシンボルを除いて、タイトル中に波括弧{ }
由来とする 2000 シリーズのグループと同様だが、多くの
は用いられない。
場合、スラッシュ(/)の前に 2200 以上の数字が使われ
ている点が、 異なる。 例えば、A61B では、orthogonal
(2-3)Y セクション
ICO を 由 来 と す る 2000 シ リ ー ズ が、A61B2217/、
Y セクションも、ICO 時代のものとナンバリングが異な
2218/・・・、2576/ として、作成されている。
るのみで、CPC になる前後で分類表の構成に本質的な差異
また、IPC は改正の際のナンバリングの設定の仕方がガ
はない。現在のところ、Y02、Y04、Y10 という 3 つのク
イドラインに詳細に定められているのだが、分類の構成的
ラスが存在している。
に IPC サブグループの細展開と位置付けることができる、
メイントランクの各グループと、2000 シリーズの further
2.3 CPC のナンバリング(その 1)
breakdown ICO 由来のグループとは、このガイドラインに
略沿う形で、ナンバリングが連なるように構成されてい
CPC のナンバリングは、IPC で用いられている ST.8とい
る。例えば、A61B19/08(IPC サブグループ)に関しては、
う規格と類似の規格に基づいている。そのため、IPC のナ
メイントランクにも 2000 シリーズにも細展開が存在する
ンバリングと同様に、サブクラスまでを、アルファベット
が(図 1 及 び 図 6 参 照)
、A61B19/081 〜 088 の グ ル ー プ
1 文 字・ 数 字 2 ケタ・ア ル ファベット1 文 字 で 表し(例、
のナンバリングは、2000 の有無を除けば、連なるように
A61B)
、メイングループ及びサブグループのために、スラッ
構 成 さ れ て い る。 図 8 は、2000 シ リ ー ズ の further
シュ(/)前後で、それぞれ最大 4 ケタ及び 6 ケタの数字を
breakdown ICO 由来のグループをメイントランクに挟み
用いる(例、A61B17/320758、G02F2001/133311)
。
込んだ interleaved presentation と呼ばれる分類表の表示
CPC のナンバリングにおいては、ECLA・ICO と異なり、
形式の一例で、この表示形式だと further breakdown ICO
スラッシュ(/)以後にアルファベットは使用されない。
由来の各グループとメイントランクの各グループとの関係
IPC の細展開のグループ、 すなわちメイントランクのグ
がよく理解できる。
図 8 CPC の interleaved presentation の一例
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サーチ
SEARCH
〜変化する環境に対応するために〜
Gérant
改正案作成
Documentalist
承認?
Y
Classification
Board member
承認?
N
Y
Directorate
Classification
承認?
N
Y
新分類表
発効
N
再分類開始
図 9 EPO の内部的な CPC 改正手続
2.4 CPC の改正
うとしている主題事項を客観的に見て明確に表しているか、
改正しようとする分類が他分野の分類との間に重複がない
CPC の改正は 2013 年 4 月以降最大月 1 回のペースで行
かなどといった、改正を希望する各技術分野の担当審査官
われるとされている。
とは異なる観点で行われることにより、分類表の質が高い
実際、早速この 4 月に、分類表中に存在していた不備
(参
ものになることが担保されているとのことである。一般論
照のための分類記号に ECLA が用いられていたなど)を修
として、FI には、IPC の記載ルールに適合していない分類
正する目的ではあるが、CPC の改正が行われている。5 月
項目や(例えば、丸括弧( )や角括弧[ ]が参照や略語
には、改正が行われなかったが、今後も随時改正が行われ
又は頭字語と無関係に使用されている)
、タイトルが短かっ
ていくだろう。
たり例示が少なかったりすることから客観的に見て不明確
CPC の改正は、EPO と USPTO 両庁間の合意によりなさ
である分類項目が、散見されるが、CPC では、このような
れる。両庁間の改正に関する議論は CEF(CPC E-Forum)
分類項目を極力作成しないようにしているとのことである。
と呼ばれる電子フォーラム上で主に行われているとのこと
再分類を必要とする CPC の改正が行われた場合、再分
だが、詳細は対外的に明らかにされていない。
類作業は、 年ごとに全技術分野で必要となったものが
EPO の分類実務者によると、EPO が USPTO に対して
USPTO と EPO とで 50% ずつ実施されるように、分配され
CPC の改正を提案する場合は、従前の ECLA・ICO 改正と
る。なお、CPC の改正があった際に、CPCNO が自分たち
同様の内部手続きを経ることを想定しているという。すな
で付与してきた CPC の再分類を実施するかは任意である。
わ ち、Gérant が 改 正 案 を 作 成 し、Documentalist、
例えば、GB は再分類を実施していないが、SE は実施して
Classification Board、更には Directorate Classification の
いるという。
承認を得る必要があるという(図 9 参照)。
再分類が完了していない分野においては、 分類表に
ここで、Gérant とは、各技術分野の分類の責任者であ
Warning が表示され、新分類表がサーチのためには完全で
り、Documentalist とは、各審査室の分類を全般的に管理
はない点、及び、完全なサーチの実施のため代わりにサー
している者である(JPO の技術情報管理官(特許査定にお
チに利用すべき分類項目(通常、改正元の分類項目)が示
いて分類確定官としての役割を果たす)に相当する)
。
される(図 10 参照)
。なお、図 10 に示す例では、Warning
Directorate Classification とは、分類に
関する全般的な業務を行う部署である。
また、Classification Board とは、EPO
の審査室を 20 ほどに分けた際の単位で
分類表中に明記
あるクラスターから約 1 名ずつ選出さ
れたいわば併任審査官により構成され
た 組 織 で あ り、CPC 改 正(従 前 は
ECLA・ICO 改正)を承認する業務ばか
りでなく、IPC 改正のための国際会合に
参加したり、分類の運用について EPO
内部の審査室間での調整を行ったりと、
EPO 内部で分類の具体的中身を統括す
る業務を行っている。EPO の分類実務
者によると、Classification Board によ
る改正を承認する業務が、分類表が所
定のルールに適合して記載されている
か、各分類項目のタイトルが包含しよ
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図 10 再分類中であることを表す Warning の例
39
tokugikon
中に ECLA の記号が依然として使われている。ECLA・ICO
から CPC への移行は急ピッチで行われたため、現在のと
ころ CPC にはこのような不備が散在している。
ま た、CPC の 策 定 準 備 段 階 の 初 期 に お い て、EPO と
USPTO は、CPC 改正を行う際、CHC プロジェクト(FI・F
タームや ECLA・ICO といった各庁の内部分類を活用して
IPC を細分化する五庁のプロジェクト)のための提案を行
うと五庁のみならず IPC 加盟国に対して公言していた 3)が、
現在においては、CPC 改正を行うとしても IPC 改正のため
の提案を行うかどうかは未定としている。
2.5 CPC の定義
IPC には、分類表のみならず定義というものが存在して
おり、分類表のみでは得られない追加的な情報をこの定義
において表示している(図 11 参照)。例えば、IPC の分類
表では、参照のうち限定参照(本来であればその分類箇所
に包含され得る主題事項を他の分類箇所に包含させるため
に記載されるもの)のみ分類表に記載できるとしており、
非限定参照は定義に記載している。また、他の技術分野の
分類との関連といった分類表自体では直接示しづらい情報
も定義に記載する。
図 12 CPC 定義の一例
2.6 CPC 分類表などの対外的提供
CPC の分類表は、esp@cenet などで閲覧することができ
る(図 13 参照)
。esp@cenet 上の分類表ビューワー4)は、
注(Notes)の表示・非表示が切り換えられたり、波括弧
{ }で囲われた CPC 固有の部分のハイライト表示・非表
示が切り換えられたりと、使用者の嗜好に合わせて様々な
図 11 IPC 定義の一例
表示ができるようになっている。また、当該分類表ビュー
CPC では、IPC の定義と同様のフォーマットで、全ての
ワーから CPC によるサーチは非常に簡単に行える。CPC
サブクラス及びメイングループで少なくとも定義が存在し、
の各グループの左欄にあるボックスをチェックすることに
特定のサブグループについても定義が存在している(図 12
より、検索式が表示され、ワンクリックでサーチを行うこ
参照)
。定義は ECLA・ICO 時代には存在していなかったも
とができる。
のであり、CPC 発効に向けて USPTOとの分類運用の乖離を
CPC の分類表や定義のデータは、CPC website5)からイ
少なくするために作成されたものである。ただし、フォー
ンターネット経由で入手できる(図 14 参照)
。データは、
マットは同じでも、IPC の定義の記載ルールと必ずしも整
XML ファイル及び PDF ファイルの形式で無料で提供され
合しておらず、非限定参照が分類表にも記載されてしまっ
ており、特に XML ファイルは一括してダウンロードでき
ている事例や分類表に記載されていない限定参照を定義層
るため、CPC を用いた分類表ビューワーや検索システムを
に記載してしまっている事例などが散見される。
開発する使用者にとっては非常に使い勝手がよいと推察さ
3)I PC 同盟第 44 回専門家委員会に対し提出された、第 6 回五庁分類作業部会(ホスト庁:EPO)のレポート。このレポートは、インターネット上で
公開されている。
http://www.wipo.int/edocs/mdocs/classifications/en/ipc_ce_44/ipc_ce_44_ip5_wg1_report_6th_session.doc
4)http://worldwide.espacenet.com/classification?locale=en
5)http://www.cooperativepatentclassification.org/
tokugikon
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サーチ
SEARCH
〜変化する環境に対応するために〜
れる。また、当該 CPC website では、CPC から IPC へのコ
サブグループにコンコーダンスされている)
。
ンコーダンスデータも提供されており、CPC の各グループ
庁内では、 これらのデータを利用して、CPC のビュー
がどの IPC サブグループに対応しているのかを調べること
ワーを提供している。いずれも庁内からのみアクセスでき
ができる(通常の場合 CPC の各グループは上位階層の IPC
るものではあるが、この場を借りて、紹介させて頂く。
注
(Notes)の表示・非表示の切換
CPC 固有部分のハイライト表示
・非表示の切換
階層構造を示すための
樹形図の表示・非表示
の切換
分類記号を分類タイトル
の右側表示へ切換
チェックすると、↓の
ボックスが表示される。
Find patents をクリック
することにより、検索可能。
図 13 esp@cenet 上の分類表ビューワー
図 14 CPC ウェブサイト
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tokugikon
図 15 は、CPC を簡便に閲覧できるビューワーである。
図 16 は、IPC や FI を横並びにして対照できるビューワー
庁内では、ECLA・ICO は検索に利用可能であるものの、
である。日本語表示への切り換えもできるため、各技術分
CPC はまだ利用できない状態のため、ECLA・ICO ビュー
野の IPC や FI に関連する CPC にどのような項目が存在する
ワーへのリンクも張ってある。
のかを調べる際に、特に有用である。
ECLA・ICO ビューワーへのリンク
interleaved presentation ビューワーへのリンク
同階層の項目を表示させるモードや
上位・下位の項目を表示させるモードへの切換
分類記号を入力
注
(Notes)の表示・非表示の切換
「D」をクリックする
と定義が別ウインド
ウで立ち上がる
図 15 庁内用 CPC ビューワー6)
分類記号
を入力
各タイトルの英語、日本語が選択可能で、
多種多様なモードへ切換可能
図 16 庁内用分類対照ツール 7)
6)http://www.examination-policy-planning-office.administrative-affairs-division.first-patent-examination-department.jpo.go.jp/cpc/index.html
7)h
ttp://www.examination-policy-planning-office.administrative-affairs-division.first-patent-examination-department.jpo.go.jp/cgi-bin/narabetool_
new/narabe_con.cgi
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〜変化する環境に対応するために〜
2.7 CPC の品質保証
USPTO に対して、技術分野ごとに Field specific training
と呼ばれるトレーニングを実施している。
EPO では、分類の付与品質の維持・改善のために、付与
2.8 CPC のナンバリング(その 2)
された CPC(従前は ECLA・ICO)の分類記号に関するサン
プルチェックを実施している。このサンプルチェックを実
施する者は、Classification quality nominee と呼ばれ、通
2.7 までに記載した内容は、概ね EPO や USPTO が対外
常各 Gérant(2.4 参照)が担当する技術分野よりも広い範
的に公表しているものであったが、2.8 及び 2.9 では、著
囲を担当している。
者なりに CPC を分析した内容を記載する。
また、従前、パテントファミリーを有さない US 文献に
対しても EPO は ECLA・ICO の付与を行っていた。今後は、
2.3 で、CPC のうち、 メイントランクのグループ及び
US 文献(正確には US 文献を有するシンプルパテントファ
further breakdown ICO を由来とする 2000 シリーズのグ
ミリー)の CPC 付与は EPO 又は USPTO のどちらか一方の
ループは、どの IPC の細展開に該当するのか判別できるよ
みが行うことを目標としているが、当面の間は、例えばパ
うにナンバリングされているが、そうでないナンバリング
テントファミリーを有さない US 文献について、公開時に
のグループも存在すると述べた。本項では、そのようなナ
USPTO が、事後的に EPO も、CPC 付与を行う。そのため、
ンバリングについて説明する。なお、EPO や USPTO は、
同一の文献について、USPTO も EPO も付与を行うことに
CPC のグループはどの IPC の細展開に該当するのか判別で
なり、両庁が付与した CPC の記号が異なる場合が生じ得
きるようにナンバリングされていると多くの場で対外的に
るが、そのような場合には、EPO が異なる CPC 記号を付
説明しているが、そうでないナンバリングについて大っぴ
与したことが USPTO 側に通知される。このようにして、
らに説明しているところを、著者は見たことがない。理由
US 文献を題材として分類付与のばらつきを抑え品質を維
は、そのようなナンバリングを用いていることを公言する
持・改善するためのプロセスが実施される。なお、元来、
と、CPC が「IPC をベースとした分類」ではなく、
「IPC を無
パテントファミリーを有する特許文献であっても、世界中
視した分類」であるとのニュアンスが生じるからではない
の特許庁は各国の特許文献について出願公開時に独立して
かと、著者は邪推している。
IPC 付与を行っており、同一の文献について、異なる IPC
が各特許庁によって付与されることが多々あるが、EPO-
(1)IPCに存在しないが CPC 上存在するメイングループ
USPTO 間のような同一文献を用いた IPC の品質保証の取
例えば、H04L:デジタル情報の伝送の技術分野におい
り組みは(著者の知る限りでは)行われていない。
て、IPC には、H04L1/、5/・・・29/ という 14 個のメイ
更 に、 分 類 の 付 与 品 質 の 維 持・ 改 善 の た め、EPO は
ングループが存在する。一方、CPC のメイントランクには、
IPC にも
存在する
メイン
グループ
・
・
14 個
・
・
IPC には
存在しない
メイン
グループ
11 個
図 17 CPC メイントランクの H04L のメイングループ
2013.8.20. no.270
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H04L41/00にも、
H04L12/24以下にも、
Warningが
表示されている
・
・
・
図 18 CPC メイントランク固有のグループと IPC のグループとの関係
14 個 の IPC に も 存 在 す る メ イ ン グ ル ー プ に 加 え、
を作成してまで分類表の可読性を向上させようとすること
H04L41/、43/・・・、69/ という IPC には存在しない 11
は、CPC という分類表を管理・使用する立場からすれば、
個のメイングループが存在し、結局 H04L 内に計 25 個の
至極真っ当なことであろう。
メイングループが存在している(図 17 参照)。そして、こ
ただし、IPC をベースとした分類表でありながら、表記
れらのメイングループの下には、H04L41/02 などと通常
上「IPC を無視した分類」として「進化」することが、許容
の IPC サブグループと同様のナンバリングによりサブグ
されるべきなのか、個人的には疑問である。
ループが展開されており、これらの CPC のグループはど
(2)IPC に存在しない 1 ドットサブグループ
の IPC の細展開に該当するのか、もはやナンバリングを見
ただけでは判別ができない。
メイングループ(例、A61B19/00)は、階層の深さを表
ただし、CPC 上作成されているこれらのメイングループ
すドット数でいうと、0 ドットに相当する。分類表におい
は、IPC と無関係にあるわけではなく、IPC のグループと
て、サブグループは、1 ドット、2 ドット・・・と、階層
の関連は CPC 分類表上明記されている。例えば、CPC の
が深くなっていくが、従前の ECLA においては、1 ドット
H04L41/ と い う メ イ ン グ ル ー プ で あ れ ば、IPC の
サブグループを IPC の細展開として作成する場合、メイン
H04L12/24 以下のサブグループに対応している(図 18 参
グループの分類記号にアルファベット一文字を追記するよ
照)
。
う に ナ ン バ リ ン グ さ れ て い た(例、A61B19/00A、
EPO の分類実務者によると、CPC に独自のメイングルー
A61B19/00B)
。
プを作成する理由は、メイングループ内のサブグループ数
ところが、CPC が発効する直前の 2011 年〜 2012 年に、
や階層の深さを表すドット数が多くなりすぎることにより、
一見して IPC のサブグループと判別できない 1 ドットサブ
分類表が読みにくくあるいは理解しにくくなってしまうこ
グループが多く作成された。例えば、ECLA の A61B19/ に
とを回避するため、とのことである。H04L41/ の例であれ
は、20 個の 1 ドットサブグループが存在していたが、こ
ば、CPC の H04L12/ 以下には 353 個のサブグループが存
のうち 17 個は ECLA 固有のものある。従前、これら 17 個
在する。また、H04L12/24 が 2ドットであり、その下位に
の 1 ドットサブグループは A61B19/00A 〜 19/00U といっ
は最大 5ドットのサブグループ(例、H04L12/2498)が存
たアルファベット一文字を追記するナンバリングで表記さ
在する。ここで、H04L12/24 以下の 118 個のサブグルー
れていたが、2012 年中旬に A61B19/20 〜 19/56 といっ
プを H04L41に移行させれば、メイングループ 1 つあたり
た数字だけのナンバリングへと移行されている。そして、
のサブグループ数が少なくなり、また H04L41/ 内でのドッ
これらのナンバリングを有する 1 ドットサブグループは、
ト数は最大 3 で済むため、H04L の全体的な可読性は向上
ECLA から CPC へそのまま引き継がれている(図 19 参照)
。
する。このように、IPC に存在していないメイングループ
これらの 1 ドットサブグループの下には、A61B19/201 な
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〜変化する環境に対応するために〜
ECLA
ECLA
CPC
(2012 年 1 月)
(2012 年 11 月)
・
・
・
なし
なし
IPC にも存在する
1 ドットサブグループ
3個
・
・
・
なし
IPC には存在しない
1 ドットサブグループ
17 個
・
・
・
図 19 CPC メイントランク固有のグループと IPC のグループとの関係
どと通常の IPC サブグループと同様のナンバリングにより
用いられている分類記号は、IPC の中で異なる主題事項に
サブグループが展開されており、これらの CPC のグルー
対して用いられるべきでないとの決定がなされた 8)。その
プは A61B19/20 の細展開と一見して理解してしまうが、
ため、 今後 IPC 改正を実施する際は、CPC のグループを
実は A61B19/20 は IPC サブグループではないという状態
IPC へそのまま導入する場合を除いて、CPC で既に用いら
になっている。
れているナンバリングは避けなければならない。上述のよ
EPO の分類実務者によると、このようなナンバリングの
うに、CPC では IPC として「使えそうな」ナンバリングが既
1 ド ッ ト サ ブ グ ル ー プ の 作 成 を 許 容 し た 理 由 は、
に用いられていることがあるため、IPC 改正の実務者にとっ
A61B19/00B といったアルファベット一文字を追記する
ては、CPC の既存のナンバリングをいちいちチェックしな
ナンバリングのみを用いて 1 ドットサブグループを作成し
ければならないという手間の掛かる事態となっている。
た場合、技術的関連性を考慮して本来であれば分類表の特
2.9 ECLA・ICO、CPC の項目数の推移
定の箇所に配置したいサブグループであってもメイング
ループ直下に配置せざるを得ず、またそれによりメイング
ループ直下にサブグループが集中してしまい、分類表が読
CPC には約 25 万のグループが存在すると、既に述べた
みにくくあるいは理解しにくくなってしまうことを回避す
が、ECLA・ICO の時代を含め項目数が 2007 年以降どのよ
るため、とのことある。そして、CPC においては、メイン
うに推移してきたかを図 20 に示す。なお、図 20 において、
グループ及びサブグループを表すスラッシュ(/)前後の
ICO の項目数は、mirrored ICO を除いたものを、2000 シ
部分が数字のみを用いて表記されるため、このようなナン
リーズの項目数は、実際には付与に利用されないダミーシ
バリングの 1 ドットサブグループの作成を許容しない理由
ンボルを除いたものを、それぞれ示している。細かい話で
がなくなったとのことである。
はあるが、ECLA 記号から CPC 記号への変換のため、2012
上記(1)と同様に、CPC という分類表を管理・使用する
年頃に mirrored ICO を全分野で作成するという処理を ICO
立場からすれば、至極真っ当な考え方であろうが、このよ
上行っている。そのため、mirrored ICO を除かない ICO の
うなナンバリングの用い方をしていると、CPC が「IPC を
項目数の推移を見ると、2012 年に膨れ上がっていること
無視した分類」との印象が生まれることは避けられないだ
が分かる(図 21 参照)
。
ろう。
ECLA・ICO の項目数は、2007 年以降着実に増えてきた
また、IPC 同盟第 44 回専門家委員会において、CPC で
のであるが、2012 年に急増している。EPO の分類実務者
8)http://www.wipo.int/meetings/en/doc_details.jsp?doc_id=201319
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250,000
200,000
200,000
150,000
150,000
100,000
100,000
50,000
0
50,000
0
2007.01 2008.01 2009.01 2010.01 2011.01 2012.01 2012.11 2013.01 2013.04
ECLA・ICO
2007.01 2008.01 2009.01 2010.01 2011.01 2012.01 2012.11 2013.01 2013.04
CPC
ECLA/ メイントランク
FI
ICO/2000 シリーズ
IPC
ECLA・ICO
CPC
mirroed ICO あり
mirroed ICO なし
Y セクション
図 20 ECLA・ICO、CPC の項目数の推移
図 21 ICO、2000 シリーズの項目数の推移
によると、この急増の一因は、従前キーワードとして付与
約 500 個増え、IPC は約 2000 個増えている(ECLA・メイ
していた項目を ECLA・ICO へ格上げしたことらしいが、
ントランクの項目数は約 40000 個増えている)
。近年 IPC
CPC の改正は EPO 及び USPTO 間の二庁間の合意によりな
改正があった際は、この IPC 改正に対応するための FI 改正
されるため(2.3CPC の改正の項参照)、USPTO と協議する
を随時行ってきているのだが、不要となった FI の廃止も
必要性が生じる CPC 発効前に、ECLA・ICO を改正してお
同時に行うことが多いため、FI の項目数は IPC の項目数ほ
こうと思った EPO 審査官が多かったからではないかと、
ども増えていない。
著 者 は 個 人 的 に 考 え て い る。 ち な み に、EPO の
また、セクションごとの項目数の推移も示す(図 22 及
Classification Board のメンバーは、ECLA・ICO の改正を
び図 23 参照)
。著者が個人的に興味を引かれたのは、技術
チェックし承認する立場にいるが、2012 年の ECLA・ICO
の発展が他のセクションと比べ比較的早い G セクション
の改正があまりにも多く、仕事の急増をぼやいていた。
(物理学)
、H セクション(電気)の項目数が、顕著に増え
なお、図 20 では、参考として FI 及び IPC の項目数の推
ている点である。技術の進展に合わせて、積極的に分類を
移も示しており、2007 年以降の 6 年間で、FI の項目数は
改正してきた様子が伺える。
40,000
20,000
35,000
18,000
16,000
30,000
14,000
25,000
12,000
20,000
10,000
8,000
15,000
6,000
10,000
4,000
5,000
2,000
0
0
2007.01 2008.01 2009.01 2010.01 2011.01 2012.01 2012.11 2013.01 2013.04
ECLA・ICO
2007.01 2008.01 2009.01 2010.01 2011.01 2012.01 2012.11 2013.01 2013.04
ECLA・ICO
CPC
CPC
A セクション
E セクション
A セクション
E セクション
B セクション
F セクション
B セクション
F セクション
C セクション
G セクション
C セクション
G セクション
D セクション
H セクション
D セクション
H セクション
図 22 ECLA、CPC メイントランクの項目数の推移
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図 23 ICO、CPC2000 シリーズの項目数の推移
46
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〜変化する環境に対応するために〜
3. CPC と IPC 改正・分類調和
読みやすい日本語ファミリー文献を熟読するという方法
を取っていたが、今後は、このような検索の方法が、CPC
3.1 IPC 改正・分類調和の取組
を通じて実現できるようになることに、個人的な楽しみ
を感じている。
IPC 改正・分類調和の取組は従前より行われている。
CPC の印象は人によって様々であり、欧米文献を効率的
IPC は第一版が 1968 年に作成されて以来、約 5 年間隔
にサーチできるツールとし好意的にとらえている人もいれ
で改正されてきたが、IPC リフォームと呼ばれる議論を経
ば、FI・F タームの敵として嫌っている人もいるであろう。
て、現在は 1 年間隔で改正されている。
いずれの人にとっても、本稿が CPC を理解する上での
一方、内部分類を有する JPO、EPO、USPTO 三極特許庁
一助となれば幸いである。
は、各々の内部分類を調和し、その調和した分類を以って
IPC 改正を行う分類調和の取組を実施してきた。近年では、
三極から中韓を含む五庁へと議論の場が拡大され、CHC
プ ロ ジ ェ ク ト に 取 り 組 ん で き た が、 本 年 6 月 か ら GCI
(Global Classification Initiative)と枠組みを変更し、五庁
は IPC 改正に取り組んでいくことになる。
3.2 CPC の IPC 改正・分類調和への影響
では、CPC はこの IPC 改正・分類調和の取組にどのよう
な影響を与えるであろうか?
EPO は、CPC のために、150 人年、1200 万ユーロを費
やしていると公言している 9)。本年 2 月に WIPO で開催さ
れた IPC 同盟第 45 回専門家委員会で、EPO の出席者は、
このような多大な労力・コストを費やしている以上、シニ
アマネージメントからの指示により少なくとも 2013 年中
は CPC をベースとしていない IPC 改正を支持できないと発
言している。なお、議場外で EPO の出席者と話したとこ
ろ、シニアマネージメントとは EPO の長官の意味である
との説明を受けた。
したがって、今後は(どの程度の期間になるかは不明だ
が)、CPC を抜本的に変更する必要がある IPC 改正は進み
づらいと考えられる。もちろん、CPC の改正は EPO 及び
USPTO 間で今後行われていくのだろうから、現在の CPC
が影響を受けるような IPC 改正を許容しないという趣旨の
EPO の態度は理解しかねるところではあるのだが。
4. おわりに
profile
JPO の審査官が利用するサーチシステムには、外国文献
をスクリーニングする際に、
「易読順」で表示する機能があ
太田 良隆(おおた よしたか)
る。この機能を用いると、検索式によりヒットした外国
2002 年 4 月
文献のうち、日本語ファミリー文献が存在すれば、その
2006 年 4 月
審査官昇任
2008 年 1 月
特許審査第一部調整課審査企画係長
2009 年 1 月
特許審査第二部生産機械
2011 年 7 月特許審査第一部調整課審査企画室分類プロジェク
ト管理者を併任
日本語ファミリー文献を優先的に表示することができる。
著者は、この機能を有効活用し、本願発明に関するサー
チを効率的に行える分類項目が ECLA・ICO に存在すれば、
特許庁入庁(特許審査第二部運輸)
2012 年 6 月より現職
まずこれらの分類項目を用いてサーチをし、ヒットした
9)http://www.managingip.com/Article/3137238/EPO-and-USPTO-unveil-new-classification-system.html
2013.8.20. no.270
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