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Global Market Outlook
2016 年 1 月 28 日号 Global Market Outlook く lo 慎重姿勢を強めたFOMC 昨日、米国金融政策決定会合(FOMC)が開催され、予想通り政策金利は据え置かれました。同時に発表され た声明文では、先行きに対し慎重な姿勢が示されました。 1. FOMCと株式、債券市場 FOMCは四半期に2回、年間8回開催されます。四半 期で2回目の会合後には記者会見が開催されますが、 米ドル 今回のように最初の会合は声明文のみとなります。右の 18000 グラフ1は昨年9月からの米国株、長期金利の動きです。 17500 8月の株価下落後、9月会合では先行き警戒感を強め 17000 たことから、市場は年内利上げ見送りと判断し、長期金 16500 利は低下しました。株価は当初は軟調に推移したものの 16000 10月初からは上昇に転じました。 % グラフ1:米国株と長期金利 18500 9月会合 2.5 12月会合 NYダウ 2.4 2.3 今回 2.2 2.1 10年国債利回り 2 10月会合 15500 10月の会合では一転し、12月の利上げを示唆したた 9月 10月 11月 12月 1.9 1月 資料:ブルームバーグ め長期金利は上昇、株価の上昇にブレーキがかかりま した。12月会合で9年半ぶりの利上げに舵を切り、年末までは株価、長期金利とも横ばいで推移しましたが、年 初から株価は急落、長期金利も低下しました。 2. 慎重姿勢を示すも、昨年9月のような強い警戒には至らず 今回の会合は昨年9月と同じような環境での開催となりました。従って、9月会合のような警戒感を示し、追加 利上げ観測を後ずれさせるのか、もしくは市場の動きにはやや冷淡な姿勢を示すのかが主な焦点となりました。 株式市場にとって前者は順風、後者は逆風と言えます。 結果として、今回の声明文は微妙ながら以下のようにその中間となり、発表後、株価はやや下落しましたが、 債券や為替市場への影響は限定的でした。 ・景気認識の引き下げ 前回の「家計と設備投資は力強く回復」を、「緩やかに回復」に変更。 ・先行きのリスク判断をより警戒的に 前回の「経済と雇用情勢の見通しは均衡」を、「グローバル経済と金融市場の動向を、注意深く見守り判断する」 に変更。 ・インフレ率の上昇に対する自信の低下 「中期的に2%の目標に向かっての上昇に相当の自信あり」という文言が削除された。 特に「グローバル経済と金融市場」という文言の記載は、株価には追い風となります。しかしながら昨年9月の 「最近のグローバル経済、金融市場の動向は、幾分今後の経済活動を制約し、物価への更なる下方圧力として 働く可能性がある」と比べれば、かなり警戒水準は低いと言えそうです。 -1- 3. 先物市場の利上げ織り込みは、年初から急激に後ずれ 今回の声明文は3月の追加利上げの可能性を低下さ せる内容だったと言えますが、否定するには至っていな いと思われます。しかし金融先物市場の利上げ織り込 % グラフ2:先物市場が織り込む政策金利 1 0.9 0.8 みは年初から後ずれしています。現在の政策金利目標 0.7 は0.25~0.50%で、実際の翌日物金利はその中間 0.6 12月会合後 の0.37%程度で推移しています。従って1回の利上げ 0.5 6月会合後 0.4 3月会合後 後は0.62%、2回の利上げ後は0.87%程度となりま す。右のグラフ2は昨年9月からの先物市場の推移です が、今年3月会合後は0.42%程度で、利上げを2割も 0.3 0.2 9月 10月 11月 12月 1月 資料:ブルームバーグ 織り込んでいません。6月会合後については年初は1回 の利上げをほぼ完全に織り込んでいましたが、現在は5割程度となっています。2016年末については、年初の 時点では2回以上の利上げとなっていましたが、現在は1回に留まっています。 4. FOMCは困難な選択を迫られる 昨年12月に利上げに踏み切った後、年末までは休暇ムード強いなか、市場は安定した展開が続きました。し かし年初からグローバル市場が大きく動揺し、米国の利上げがその一因という指摘も見られます。株式市場の 下落が長期化するとマクロ経済への影響も必至であり、FOMCは慎重な姿勢を示さざるを得ないと言えるでしょ う。 しかし一方で大統領選挙予備選が始まるなか、株式市場(=ウォール街)を重視し過ぎという政治的な批判が 高まることも想定されます。また0.25%という小幅の利上げのみで停止してしまうと、昨年12月の利上げは間 違いだったという見方も強まるかもしれません。 前回会合と同時に公表されたFOMC参加者の政策金利予測では、大半が今年4回以上の利上げを予想して いました。これまでも慎重な市場の見方に引き寄せられる形で、FOMC参加者の予測は修正を迫られてきまし た。今年も同じ繰り返しとなってしまうのか、とりあえずは2月10日に予定されているイエレン議長の議会公聴会 での発言に注目したいと思います。 -2- ※ 2015年11月以降のレポート 11月2日号 10月の市場動向と11月の注目点 11月16日号 「パリ同時テロ」の金融市場への影響について 12月1日号 11月の市場動向と12月の注目点 12月7日号 堅調な雇用統計で、今月の米国利上げはほぼ確実に 12月11日号 2015年グローバル金融市場10大ニュース 12月14日号 2015年金融市場の「初夢」、その結果は? 12月17日号 米国はゼロ金利から脱出 1月4日号 2016年金融市場の「初夢」 1月5日号 12月の市場動向と1月の注目点 1月13日号 2015年度第3四半期の市場動向と今後の見通し MU投資顧問株式会社 登録番号 金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第 313 号 一般社団法人日本投資顧問業協会会員 一般社団法人投資信託協会会員 〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台 2-3-11 電話 03-5259-5351 *本資料に含まれている経済見通しや市場環境予測はあくまでも作成時点におけ るものであり、今後予告なしに変更されることがあります。 *本資料は情報提供を唯一の目的としており、何らかの行動ないし判断をするもので はありません。また、掲載されている予測は、本資料の分析結果のみをもとに行われ たものであり、予測の妥当性や確実性が保証されるものでもありません。予測は常に 不確実性を伴います。本資料の予測・分析の妥当性等は、独自にご判断ください。 *なお、資料中の図表は、断りのない限りブルームバーグ収録データをもとに作成し ております。 -3-