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循環型社会形成技術・システム研究会調査報告書

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循環型社会形成技術・システム研究会調査報告書
循環型社会形成技術・システム研究会調査報告書
平成20年3月
地球環境技術推進懇談会
循環型社会形成技術・システム研究会
目
次
頁
はじめに
Ⅰ.調査研究の概要-------------------------------------------------------------------
1
1.体 制 ------------------------------------------------------------------------
1
2.活 動 期 間 -------------------------------------------------------------------
1
3.研 究 会 の 目 的 ---------------------------------------------------------------
1
4.テ ー マ 選 定 -----------------------------------------------------------------
2
5.具 体 的 な 活 動 ---------------------------------------------------------------
2
Ⅱ.調査結果のまとめと提言----------------------------------------------------------
3
1.資源循環型社会の現状と目標--------------------------------------------------
3
2.リ サ イ ク ル の 最 先 端 技 術 ・ シ ス テ ム の 把 握 ----------------------------------
5
3.サ ス テ イ ナ ブ ル 社 会 に 向 け て の リ サ イ ク ル の 新 た な 課 題 の 抽 出 -------------1 2
3.1
高 度 リ サ イ ク ル 社 会 に 向 け て の 今 後 の 課 題 -----------------------1 2
3.2
分 野 別 の リ ユ ー ス ・ リ サ イ ク ル に お け る 今 後 の 課 題 ---------------1 8
4.課 題 に 対 す る 対 策 ---------------------------------------------------------2 3
5.(財)大 阪 科 学 技 術 セ ン タ ー か ら の 提 言 -----------------------------------2 8
Ⅲ.調査詳細【講演録】-------------------------------------------------------------32
1. 平成17年度
2.平成18年度
3.平成19年度
添付CDに収録
あき
はじめに
1987 年、国連・環境と開発に関する世界委員会は"Our Common Future"(われら共有の未来)と題する、
いわゆる、ブルントラントレポートを発表し「大気、海洋、宇宙、南極大陸は共通の資産である」と宣言
した。また、1992 年、ブラジルはリオ・デジャネイロで開催された地球サミットでは、環境と開発に関す
るリオ宣言として"Sustainable Development"(持続可能な開発)のための 27 の原則が謳われ、現世代が
享受する権利は将来の世代が享受する権利とバランスしていなければならないとされた。
1993 年に制定されたわが国の環境基本法はこれらの精神を色濃く反映している。そして、2000 年には循
環型社会形成推進基本法が制定された。同法では、循環型社会とは、
「・・・もって天然資源の消費を抑制
し、環境への負荷ができる限り低減される社会をいう」と定義されている。このことは、
「廃棄物問題」が
廃棄物の問題ではなく、資源の循環と密接に関係する問題として捉えられる大きな契機となったといえる、
循環型社会の形成のための取り組みとして 3R(Reduce, Reuse, Recycle)が大きくとりあげられ、減量、
再利用、リサイクルを通じた資源循環が重要な課題とされてきた。一方、地球温暖化の問題は頻発する巨
大台風、ハリケーンなどの気候災害や旱魃、局所豪雨などの異常気象を通じて現実的な問題として深刻に
捉えられるようになってきた。日本政府は 21 世紀環境立国戦略(2007 年 6 月 1 日決定)の中で、従来、
縦割りでばらばらに取り組まれてきた「低炭素社会」
、
「循環型社会」、「自然共生社会」は統合的に取り組
まなければならない課題であると宣言した。「たとえば、地球温暖化による生物多様性への影響や 3R を通
じた地球温暖化への貢献など、それぞれの側面の相互関係を踏まえ、私たち人間も地球という大きな生態
系の一部であり、地球によって生かされているとの認識の下に、統合的な取り組みを展開していくことが
不可欠である(閣議決定文より抜粋)。」
「循環型社会形成技術・システム研究会」では、持続可能社会の実現に向けてリサイクルの現状と最先
端の環境技術を調査するとともに、それらの技術・システムに含まれる課題を抽出し、識者の講演や見学、
意見交換を通じて課題を整理し対策を検討した。最後に、3 年間のまとめとしての提言をとりまとめた。
研究会の活動をまとめたこのレポートが少しでも循環型社会形成のための技術・システムを考えるための
資料として役立てば幸いである。
循環型社会形成技術・システム研究会
主査
武田信生
Ⅰ.調査研究の概要
Ⅰ.調査研究の概要
1.
体制
主 査
副主査
武田
奥田
信生( 京 都 大 学 、 立 命 館 大 学 )
清明((株)竹中工務店)
運営委員
望月
宏明(日本品質保証機構)
(平成 17 年度)
田頭
成能((株)神鋼環境ソリューション)
玉出
善紀((株)タクマ)
三島
隆之(住友電気工業(株))
運営委員
石川
龍一(株)荏原製作所)
(平成 18 年度)
岡島
重伸(川崎重工業(株))
小山
博之(関西電力(株))
武
輝幸
(三菱商事(株))
運営委員
藤井
岳(大阪ガス(株))
(平成 19 年度)
村上
忠弘(ダイネン(株))
近藤
守
板谷
真積(三井造船(株))
(Hitz 日立造船(株))
2.活動期間
平 成 17 年 4 月 1 日 ~ 平 成 20 年 3 月 31 日 (3 ヵ 年 )
3.研究会の目的
「 循 環 型 社 会 形 成 」は 我 が 国 の 国 策 と し て 近 年 確 実 に 推 進 さ れ 、法 整 備 を 始 め 、リ サ
イクル技術や社会システムが広範囲に整備されつつある。
し か し 、物 質 循 環 や エ ネ ル ギ ー 収 支 な ど 、よ り 高 度 な 環 境 保 全 の 視 点 か ら リ サ イ ク ル
を見た場合、潜在的な課題が新たに発生する可能性も指摘されはじめている。
本 研 究 会 で は 、サ ス テ イ ナ ブ ル 社 会 の 実 現 に 向 け て 、リ サ イ ク ル の 現 状 と 最 先 端 の 環
境技術の状況を広範囲にサーベイし、それらの潜在的な課題を抽出すると共に、その
対 策 に つ い て 、産 官 学 で 相 互 に 意 見 交 換 を 行 い 、今 後 の 会 員 企 業 の 環 境 行 動 、並 び に 環
境ビジネスを展開する一助とすることを目的とした。
従って、本研究会の活動内容を以下の 3 点と定めた。
①リサイクルの最先端技術・システムの把握
②サステイナブル社会に向けてのリサイクルの新たな課題の抽出
③課題に対する解決策に関する意見交換
4.テーマ選定
レンタル・リユース
プレミア
カーシェアリング
価値
リサイクル
①活動ジャンルとしては、廃棄物処理
に絞らずに、ハード技術・ソフト技
術を含む広いジャンルのテーマを
対象に活動を行った。
②ジャンルとしては、右図に示す
物質循環
よ う に 、 従 来 の マ テ リ ル & サ ー (N,P,Cl 等)
(有害物質)
マルリサイクルに加え、価値リ
サイクル及びエネルギーリサイ
クルまでを含めた。
③取り上げたテーマ
(リサイクル技 術 調 査 研 究 会 アンケートよ り )
・ CO2 分 離 回 収 技 術 ( 幹 事 会 要 望 )
・ 再 生 可 能 エネルギー( 自 然 エネルギー)
・資源循環問題
・リサイクル技術・システム
・有害化学物使用削減と無害化技術
図
マテリアル
リサイクル
技術
エネルギー
リサイクル
技術
CO2 利活用
自然エネルギー
水素社会
情報システム、国際的リサイクル
社会インフラシステム
価値評価・保証、表示システム
研究会の取り扱うリサイクルのジャンル
など
5.具体的な活動
① 年 度 毎 に 具 体 的 な 2~ 3 件 の テ ー マ を 設 定 し 、 調 査 研 究 を 行 っ た 。
② 講 演 会 を 3 回 /年 実 施 。
③講演会は1年で 6 名程度の講師を招き比較的少人数の講演形式で研究会を
運営し、質疑の時間を確保し闊達な意見交換を行った。
基 調 講 演 ( 1hr) と 話 題 提 供 (0.5hr~ 1hr)の 2 題 。
意 見 交 換 の 時 間 を 30 分 取 り 、 全 体 で は 2~ 2.5 時 間 程 度 。
④議事録は運営委員持ち回りとした。
【各年度毎のテーマ】
第 1 年度:リサイクルの最先端技術・システムの把握
第 2 年度:サステイナブル社会に向けてのリサイクルの新たな課題の抽出に加え、
バイオ燃料に関するパネル討論会も開催した。
第 3 年 度:課 題 に 対 す る 調 査 研 究 と 、こ れ に 対 す る 意 見 交 換 を 実 施 し リ サ イ ク ル の 将 来
像を描くと共に研究会としての提言に取り纏めた。
Ⅱ.調査結果のまとめと提言
Ⅱ .調 査 結 果 の ま と め と 提 言
1 .資 源 循 環 型 社 会 の 現 状 と 目 標
(1)リサイクルの現状
平成19年環境白書によれば、図 1-1 に示すように、我が国の物質フロー(平成 16 年)は、19.4 億
t の総物質投入量に対し、その半分の 8.3 億 t が建物や社会インフラ等で蓄積され、1.5 億 t が製品等
で輸出され、4.6 億 t がエネルギー生産に消費される。
循環利用の点で言えば、1 年間に 6.1 億トンの廃棄物等が排出され、その内 2.4 億 t が焼却・脱水等に
より減量化され、2.5 億 t が再利用、再生利用等により循環利用されているに過ぎない。循環利用のう
ち、再使用された循環資源は 0.02 億 t で、ビールびんや牛乳びん等のリターナブルびん再使用やタイ
ヤ再使用等が大部分である。循環利用率は総物質投入量の 12.7%に過ぎない。
図 1-1 わが国の物質フロー「平成 16 年」
出典:H19 年度環境白書
図 1-2 からわかるように、一般廃棄物排出量は毎年間約 5,000 万 t 以上で、平成 2 年度以降、横ばい
傾向である。一般廃棄物のうち、平成 16 年度は 77.5%が直接焼却され、19.0%が資源化された。図 1-3
には産業廃棄物総排出量の推移を示すが、同様の傾向である。最終処分場残余年数は、平成 17 年時点
で全国平均 7.2 年と逼迫した状況が続いている。
このように廃棄物・リサイクル問題が依然として社会の構造的・根本的問題であり、物質フローを改
善するためには、3R の取組みが一層重要である。
(万 t/年)
ごみ総排出量
1,100
1人当たりの
ごみ排出量
図1-2
ごみ総排出量及び排出原単位推移
出典:H19年度環境白書
40,000
産業廃棄物の総排出量
ごみ総排出量
一人一日当たりのごみ排出量
5,000
(万 t/年)
(㍑/人・日)
図1-3
産業廃棄物排出量推移
出典:H19 年度環境白書
一方、世界に目を転じると、図 1-4 のように、経済成長と人口増加で世界の廃棄物は増大傾向にあり、
特にアジアで顕著である。そして資源リサイクルの名目で、医療廃棄物や廃電気電子製品(E-waste)
の越境移動が生じており、途上国における環境上不適切な形での E-waste リサイクルが問題化する等、
持続可能でない廃棄物問題に直面している。
2050年
270億t
2000年
127億t
2025年
190億t
オセアニア
2015年
170億t
アフリカ
中南米
北米
図 1-4
世界の廃棄物排出量の将来予測 出典:H19 年度環境白書
欧州
アジア 特に伸びが大きい
図 1-4
世界の廃棄物排出量の将来予測
出典:H19 年度環境白書
(2)目標
わが国では、循環型社会形成推進基本計画(平成 15 年)で、発生抑制、再使用、再生利用、処分等の
各対策をバランス良く進展させるため、表 1-1 の指標について目標設定しているが、持続可能性を保持
するためには、非再生資源の循環利用率は更に高い目標設定が望まれる。
表 1-1 目標年次:平成 22 年度
指標
資源生産性
循環利用率
最終処分量
目標
約 39 万円/t
約 14%
約 28 百万t
・資源生産性(=GDP/天然資源等投入量)
・循環利用率(=循環利用量/(循環利用量+天然資源等投入量)
・最終処分量=廃棄物埋立量
出典:H19 年度環境白書
2.リサイクルの最先端技術・システムの把握
(1)マ テ リ ア ル リ サ イ ク ル の 最 先 端 の 状 況
わ が 国 の ご み 処 理 は 図 2-1 の よ う に 、ご み 量 増 大・質 的 変 化 に 加 え 、高 度 処 理 や リ サ イ ク
ル 要 請 が 強 ま っ て き た た め 、「 環 境 と 経 済 の 両 立 に よ る 豊 か さ 」 へ 舵 を 切 っ た 。 そ し て 「 循
環 型 社 会 形 成 推 進 基 本 法 」を は じ め 各 分 野 毎 の リ サ イ ク ル 法 が 制 定 さ れ 、環 境 配 慮 性 、リ サ
イクル容易性、易分解性、耐久性を目標とした技術が実現されてきた。
法規制
「汚物掃除法」
1900年制定
政策の意図
「公衆衛生」(伝染病防止)
→ 焼却(高温殺菌)する
ごみ量の増大・質的変化
2000年
循環型社会形成
推進基本法
容器包装
リサイクル法
家電
リサイクル法
20世紀 「使い捨てによる豊かさ」
21世紀 「環境と経済の両立による豊
かさ」の追求
環境配慮設計
リサイクル
容易性
易分解性
建設
リサイクル法
食品
リサイクル法
自動車
リサイクル法
耐久性を
高めた
製品づくり
技術的対応
・焼却・埋立による廃棄物管理推進
・エンドオブパイプ型環境技術
高度処理・無害化技術の開発
・未利用資源活用技術
・資源廃棄物活用・無害化技術
・ダイオキシン対策、ガス化溶融炉、
・廃プラ高炉・コークス炉還元剤利用
・廃プラ油化技術、ガラス分別
・PETボトルのモノマー化技術
・廃家電分別分別、パソコンリサイクル
・環境配慮設計、部品リユース
・建設廃棄物の分別回収システム
・コンクリートリサイクル・木質系バイオエタノールノール
・堆把化技術や飼料化技術
・メタン発酵を中心としたバイオマス
・環境配慮設計・シュレッダーダスト分別
・環境配慮した材料・部品開発
図 2-1 マテリアルリサイクルの現状
(a)リ サ イ ク ル に お け る 有 害 物 質 対 策
廃 棄 物 中 の 代 表 的 有 害 物 質 と し て 水 銀 、PCB、石 綿 、ダ イ オ キ シ ン 類 、そ し て 感 染 性 廃 棄
物等があり、それらの回収無害化が推進されている。
(b)マ テ リ ア ル リ デ ュ ー ス 技 術
リデュースに関しては、原材料等の使用合理化や、長寿命化等の取組が行われている。
(ペットボトル薄肉化、洗剤の濃縮化、家電製品の部品点数削減や小型化・長寿命化)
(c)リ サ イ ク ル に 配 慮 し た 製 品 等 の 設 計
設計段階でリサイクル時の易分解性や再資源化性を向上させる配慮を行う「環境配慮設
計」が家電・自動車を中心に定着化してきた。
(d)マ テ リ ア ル リ サ イ ク ル 技 術
①容器包装ごみのリサイクル
回 収 量 が 増 大 し て い る 廃 プ ラ ス チ ッ ク は 、 図 2-2 の よ う に 製 鉄 所 で の 高 炉 で コ ー ク ス 代
替品として利用する技術やコークス炉で廃プラスチックを熱分解し再資源化する技術等が
ある。またペット樹脂のように化学的に処理し原料とするケミカルリサイクルもある
ガス精製後
発電利用
製鉄
主原料
鉄鉱石
溶 銑
羽口
還元剤
高炉設備
溶銑鍋
スラグ
高炉原料化
プラスチック
図2-2
高炉による廃プラスチックのリサイクル
セメント原料・路盤材
出典:H19年環境白書
JFEスチール㈱資料
②廃家電製品のリサイクル
図 2-3 の よ う に 家 電 リ サ イ ク ル で は 、 手 分 別 や 機 械 破 砕 に 加 え て 、 様 々 な 選 別 技 術 が 用
いられ、最終的に金属やガラス、廃プラスチックなどの素材として回収されている。
分解
ブラウン管分割機
TV
後面(ファンネル)ガラス
整粒機
後面(ファンネル)ガラス
乾式洗浄
ファンネルガラス
全面(パネル)ガラス
乾式洗浄
全面(パネル)ガラス
整粒機
パネルガラス
鉄
分解
減容
プレス
磁選機
破砕機
水選別機
整粒機
ファンネルガラス
パネルガラス
洗濯機外装
プラスチック
銅
銅
アルミ
洗濯機
鉄
エアコン
(室内機)
エアコン
(室外機)
熱交換機
破砕機
分解
磁選機
比重選別機
銅
アルミ
分解
コンプレッサー
常温破砕機
鉄
渦電流選別機
磁選機
磁選機
銅
フロン
鉄
分解
冷蔵庫
破砕機
磁選機
比重選別機
ウレタン 断熱材フロ
破砕機 ン回収機
プラスチック破砕機
コンプレッサー分割
図2-3
熱交換機
(室内機)
熱交換機
(室外機)
コンプレッサー
合板
銅
アルミ
ウレタン
プラスチック
分解
鉄
銅
コンプレッサー
家電4品目のリサイクルフロー
出典:H19年環境白書
松下エコテクノロジーセンター資料
③食品廃棄物のリサイクル
図 2-4 の よ う に 食 品 製 造 業 や 流 通 業 ・ 飲 食 店 等 か ら 発 生 す る 食 品 廃 棄 物 は 、 堆 肥 、 飼 料
等 に 再 生 利 用 さ れ て い る 。ま た メ タ ン 発 酵 に 代 表 さ れ る バ イ オ マ ス 技 術 も 実 証 さ れ て い る 。
原料
畜糞・
生ごみ
汚泥他
堆肥化処理施設
高水分原料
凍結原料
凍結
原料用
破砕機
水分調整材
パーク材
おが粉
建築廃チップ
高温
発酵菌
1次堆
積発酵
水分調整
完了
投入原料
食品廃棄物のリサイクル
高水分飼料用
乾燥真空ドライヤ
間接連続ドライヤ
・家庭菜園・有機栽培
・ゴルフ場芝堆肥
・果実園用肥料
2次攪拌
発酵
製品
水分調整
水分調整用混合 原料
機(寒冷地仕様)
戻し
堆肥
図 2-4
畜舎敷料
「病原菌・雑草種子の少ない分解率の高い堆肥)
出典:H19 年環境白書
JFE 環境ソリューションズ資料
④使用済自動車のリサイクル
使用済自動車から中古部品や再生利用可能な部品が回収された残り 2 割の部分は、破砕
されてシュレッダーダストとなる。これを破砕分別し、分別リサイクル技術が導入されつ
つある。また、製鉄所で廃タイヤを再資源化する技術も導入されている。
製品工程へ
タイヤチップ
酸素
燃料ガス
(所内でリサイクル)
裁断した
廃タイヤ
集塵機
転炉
酸素
スクラップを
装入
排ガス
ダスト
廃ゴムローラ
RHF 設備
亜鉛
還元鉄
精錬所で
リサイクル
図 2-5
溶解炉で
リサイクル
溶鉄鍋
石炭・窒素
廃タイヤのリサイクルフロー
銑鉄
出 典 : 出 典 : H19 年 環 境 白 書
新日鉄製鉄資料
(2)エ ネ ル ギ ー リ サ イ ク ル の 最 先 端 の 状 況
温暖化防止技術は CO2 削減に限定すれば図 2-6 のように①排出削減、②吸収量拡大、③分離・回収、
④固定・有効利用、⑤貯蔵技術に分けられる。エネルギーリサイクルの観点から、まず地球上の炭素循
環に大きく寄与する植物バイオマス(④)のエネルギー化について述べる。バイオマスのエネルギー転
換は、図 2-7 に示すとおり、都市ごみを含む多様なバイオマス原料をメタン発酵、熱分解、燃焼等で処
理しエネルギー変換するものである。
エネルギー必要量
CO2削減・固定・有効利用等技術
CO2分離・回収技術
①膜分離法
・多孔質膜 ・非多孔質膜
②物理的分離・吸着・吸収
③化学的分離法 ・吸着
④ 液化分離 直接分解
CO2固定・有効利用技術
①化学的方法
・接触水素化・電気化学
・光化学還元・高分子合成
・直接分解 ・光合成法
・超臨界CO2固定技術
②生物化学的方法
光合成 非光合成
CO2貯蔵技術(CO2隔離)
①海洋貯留技術
・CO2の輸送 ・海中投入
・環境影響予測技術開発
②地中貯留技術
・CO2の輸送 ・地中圧入
・環境影響予測技術開発
③鉱物貯留技術・CO2輸送
化石燃料
その他燃料
非燃焼
起因 CO2
人為的CO2
分離・回収可能
分離・回収不能
大気中
CO2
有用物質
変換・転換
隔離・貯蔵
CO2排出削減技術
①省エネ技術
・産業部門・業務部門
・家庭部門・運輸部門
②再生可能エネ技術
・太陽光発電・太陽熱
・太陽熱発電・風力発電
・地熱発電・水力発電
CO2吸収量の拡大技術
①自然生態系活用
・植林技術の効率化
・生態系修復
・微生物による水素発生
②LCAによるリサイクル
技術の総合化 最適化
共通基盤技術
①CO2モニタリング
・リモートセンシング・簡易分析
・気候メカニズム解析高度化
・海洋・森林のCO2吸収
・放出量の計測技術
②総合的評価技術
・領域横断的システム化
・LCA,社会的受容性等
図2-6 CO2削減・固定・有効利用技術
出典:平成14年度CO2削減等技術に係る知識ベース形成調査 【著者:みずほ総合研究所(株)】
発生種別
回収エネルギー・回収物
処理技術
熱利用
熱利用
都市ごみ系
都市ごみ系
食品廃棄物
食品廃棄物
メタン醗酵
メタン醗酵
バイオガス
バイオガス
CNG車燃料
CNG車燃料
加温ガス
加温ガス
乾燥汚泥
乾燥汚泥
乾燥飼料
乾燥飼料
肥料
肥料
水産系
水産系
熱分解
熱分解
バイオリアク
バイオリアク
ター加温
ター加温
改質ガス
改質ガス
燃料電池
燃料電池
農産系
農産系
畜産系
畜産系
直接燃焼
直接燃焼
林産系
林産系
ペレット堆肥
ペレット堆肥
建設廃棄物系
建設廃棄物系
その他
その他
し尿汚泥系
し尿汚泥系
燃焼ガス
燃焼ガス
水蒸気
水蒸気
ガスエンジン
ガスエンジン
発電
発電
ガスタービン
ガスタービン
蒸気タービン
蒸気タービン
バイオソリッド
バイオソリッド
燃料
燃料
バイオディーゼ
バイオディーゼ
ル燃料
ル燃料
図2-7
バイオマスのエネルギー転換
出典:大阪科学技術センター資料
(a)ごみ発電
都市ごみ焼却時の高温廃熱をボイラーで回収し蒸気タービンで発電する。ごみ焼却施設の余熱利用
の有効な方法であり、平成 16 年末で発電焼却施設は 281 に上り総発電能力は 1491MW に達する。
(b)バイオマス発電
産廃である木屑やサトウキビの搾り滓等のバイオマスをストーカ炉又は流動層炉で燃焼させボイ
ラーで熱吸収し蒸気タービンにより発電する。
(c)RDF(ごみ固形燃料)/RPF(廃紙/廃プラ固形燃料)
複数施設が協同でごみを固形燃料化し専用発電施設で発電する。RDF/ RPF は可燃ごみを破砕乾燥し
不燃物、金属類を除去し圧縮成型して製造する。
(d)メタン発酵
嫌気性発酵処理により有機物からメタンを得る技術で、生ごみや動物のふん尿など水分の多いバイ
オマス系廃棄物に適す。メタンガスは、発電や天然ガス車等の燃料用として利用する。
(e)バイオディーゼル燃料(BDF; Bio Diesel Fuel)
廃食用油などのバイオマスを化学的に処理してメチルエステルとし、軽油代替燃料として自動車用
ディーゼルエンジンに利用する。
(f)バイオエタノール
建設廃木材を主原料に、紙屑、食品残渣(おから等)などの廃棄物を活用して、希硫酸による糖化
法と遺伝子組換え菌(KO11)と酵母の 2 種類の菌体を用いて燃料用エタノールを製造する。
現在、大阪府堺市において、世界初の廃木材から燃料用エタノールを製造するプラントが2007年
より稼動を始めた。日本のバイオエタノール実証試験が図 2-8 に示す 10 個所で進行中である。
図 2-8
バイオエタノール実証試験
出展;大阪科学技術センター資料
(g)CO2 地下貯蔵技術
将来的な CO2 有効利用につながる CO2 貯留技術は、海洋隔離と地層に貯留する地中貯留がある。
この技術は枯渇油田の石油や天然ガスの増進回収を目的に CO2 を地中貯留する EOR として研究されて
きた。地下1千~3千 m の不透水層下の滞水層に圧力注入するもので、世界で 7 箇所の商業施設、7
箇所の研究施設がある。わが国でも 2003 年に新潟の長岡市で 1 万 t の CO2 を注入した実績がある。
周辺技術として CO2 を分離回収する吸収液、分離膜、固体吸着技術がある。
(RITE高木氏「CO2固定化・有効利用技術技術戦略マップ」(2006.8.26)講演資料を参照)
(h)その他
エネルギーリサイクル技術としてはこれ以外に低温熱、未利用熱の活用技術がある。これはエクセ
ルギーの高い段階から低い段階まで、例えばエンジンからガスタービンや蒸気タービン、給湯用高温
水、暖房用温水といったように、エネルギーを無駄なく効率的に使用する「カスケード利用」技術で、
従来捨てられていた熱などのエネルギーを効率的に利用できるので重要である。
(3)価 値 リ サ イ ク ル の 最 先 端 の 状 況
リユ
「 価 値 の リ サ イ ク ル 」と は 製 品 の 持 っ て い る 価 ース
値( 機 能 や 社 会 的 価 値 )を リ サ イ ク ル す る こ と を
指す。
一般に芸術的価値や希少価値のような社会的
価 値 を 持 つ 商 品 は そ の ま ま 転 売・リ ユ ー ス さ れ る
事 は 理 解 し や す い 。一 般 的 な 製 品 に お い て は 、そ
れ が リ ユ ー ス さ れ る と い う こ と は 、ま だ 使 用 可 能
な価値として目的的機能が残存している場合で
あ り 、別 の 場 合 に は そ の 製 品 が 持 っ て い る 機 能 が
新規の用途に転用することができる場合である。
(目的外機能)
このような製品や部品のリユースに代表され
る 残 存 機 能( 価 値 )を リ サ イ ク ル す る リ ユ ー ス ビ
製品リ
ユース
単純な中古 ・一般的な中古車
・一般的な中古PC
・エコピュータ
部品リビルト ・分解点検、部品・
OSアップグレード
部品リ
ユース
生産向け部 ・レンズ付きフィルム
品リユース ・複写機部品
補修向け部 ・自動車向け
品リユース
リユース部品
カスケード
リユース
・古材木、
図 2-9 リユースの現状
出典:EMSI愛澤氏講演資料
サービサイジング
ジ ネ ス は 図 2-9 の よ う に 既 に 中 古 車 や パ ソ コ ン 等
環境保全性
一部の分野では一般的である。
機能の販売
共用化による物質量削減
リ ユ ー ス ビ ジ ネ ス の 新 し い 事 例 と し て 、複 写 機
所有権移転
における部品リユースの事例がある。
(本研究会の
なし
脱物質化による省資源
EMSI 愛澤氏による「リユースの現状と課題」
製 品 メ ン テ 専門家の効率的メンテ
(2006.5.15)講演資料を参照)
ナンスは
リ ユ ー ス は 、リ サ イ ク ル に 比 し 追 加 的 消 費 エ ネ
売主責任
専門家の効率的運用
ル ギ ー や 環 境 汚 染 が 少 な い こ と か ら 、リ サ イ ク ル
よりも優先される取組みとされている。
リユースの価値を再認識
リユースに
リユースの効果としては、
新事業機会
リユースの一層の合理化
①経済効果(低価格のため途上国や中小企業へ市場拡
図2-10 サービサイジングとは
大や同一製品で複数回の売上機会創出)、
②資源・エネルギー節約効果(製品寿命延長による原
材料/部品製造資源節約)があげられる。
●海外でのサービサイジングの事例
近 年 、脱 物 資 化 の コ ン セ プ ト を 具 体 化 す る ビ ジ
① カーペット・レンタルサービス
② 幼児向けおもちゃ教育材料会員制貸出
ネ ス モ デ ル と し て「 サ ー ビ サ イ ジ ン グ 」が 注 目 さ
③ 使い切りカメラの引き取りシステム
れている。
「 サ ー ビ サ イ ジ ン グ 」と は 、図 2-10 に
④ 事務機メーカーによる事務用機器引取
示 す と お り 「 製 品 を 販 売 せ ず 、製 品 の 提 供 す る 機
⑤ 家具管理のサービス化
能 ( サ ー ビ ス ) の み を 販 売 す る 」 も の で 、 LCA を
●日本でのサービサイジングの事例
考慮したコストトータルな再使用・再資源化技術が進
①ダスキン
展する可能性があり、また脱物質化のコンセプトを具
:化学雑巾のレンタルメンテナンスサービス
体化するビジネスモデルとして期待されている。図
②富士ゼロックス
2-10 に示すとおり、サービサイジングにおいてはメン
:複写機の部品リユース(トナーなど)
③日本ペイント
テナンス・運用時に専門家が携わるため環境効率が向
:水性リサイクル塗装(塗装ブース貸出し)
上することが期待され、また共用化や脱物質化を具体
④松下電器産業
化しているため、リユースが再認識されることに大き
:「あかり安心サービス」蛍光灯の貸与
く寄与すると期待されている。
⑤富士フィルム
:「写るんです」インバース・マニュファクチュアリング
サービサイジングの実際のビジネスは図 2-11 に示
すとおり、既にスタートしており、その範囲は、化学
雑巾からオフィス器具、照明、カメラ、室内仕上げ材
図 2-11 サービサイジングの事例
料のレンタル、子供のおもちゃや教材など多岐にわた
っている。サービサイジングは今後も広範囲に拡大すると予想されている。
(4)リ サ イ ク ル を 支 え る 社 会 支 援 シ ス テ ム の 最 先 端 の 状 況
本研究会では特に拡大生産者責任制度と地域通貨について研究したので、その範囲でまとめる。
(a)拡大生産者責任制度の現状
OECD 加盟諸国では、1980 年~1997 年で都市ごみ量が約 40%増加し、2020 年までには年間 770 万ト
ン(約 43%増加)になると予想された。そこで OECD 加盟諸国は、一層の廃棄物削減のため拡大生産者責
任(Extended Producer Responsibility: EPR)を提唱し、1998 年と 2001 年に EPR のレポートやマニュ
アルを発表した。
EPR は汚染者負担の原則(PPP)を踏まえ「製品に対する物理的又は財政的な生産者責任を、製品の
ライフサイクルにおいて使用済み段階まで拡大すること」と定義される。EPR では生産者に①製品の
設計を工夫する、②製品の廃棄後に生産者が回収・リサイクルすることを義務付ける。これにより廃
棄物発生抑制、生産段階でのリサイクル促進、資源効率増大などが期待された。
(b)EPR の実際の展開
EPR を最初に実現したのがドイツの DSD であった。生
産企業からの出資と「緑のマーク」ライセンス料で運営
され、
一時は国内の回収・処理の 8 割のシエアを占めた。
しかし「大量消費、大量リサイクル」の高コスト体質と
なり破綻するがその概要は後述する。フランスではエ
コ・アンバラージュ(Eco-Emballages S.A)が同様のシ
ステムとして開始された(図 2-12)。
一方、個々の企業でも個別の活動を開始した。例えば、
IBM 社はオーストリア、フランス、イタリア、スイス、
英国で自主的引取りプログラムを開始し、ゼロックス社
図 2-12 DSDのシステム概要
もコピー機用カートリッジ引取りプログラムを世界規
模で運営している。デル・コンピュータ社は、製品引取
りプログラムに着手し、リサイクルを容易にするため特
定のコンピュータ用ケースを設計している。
日本でもこの潮流に従い各分野のリサイクル法が相
次いで制定された。しかし、「家電リサイクル法」は排
出時に消費者が負担する仕組みであり、ペットボトル回
収費用も以前は自治体負担であり、必ずしも EPR の理念
を 100%実現したものではなく、生産変革の動機付けが
不十分との指摘があった。
「改正容器包装リサイクル法」
では事業者が一部分別回収費用を拠出する枠組みが導 図2-13 容器包装リサイクル法の責任分担
入された(図 2-13)。
出典:京都府立大学 山川肇 農水省懇談会資料
(c)地域通貨(エコ・マネー)
地域通貨とは、法定通貨と異なり、地域やコミュニテ
地域通貨で
堆肥
消費者と農家
ィ内でのみ、サービスやモノの「交換手段」や「計算単
資源化
の循環を意識
施設
農家
位」として利用される“通貨”の総称で、欧米を中心に
地域通貨
的に創出
2,500 以上の地域で導入され、わが国でも既に 100 を超
農産物
生ゴミ 農産物
える地域通貨が存在する。
地域
地域
通貨 日本円
地域内リサイクル促進の仕組みづくりとしてその効
通貨
果が期待されている。佐賀県伊万里市では、生ごみ→た
農産物
消費者
市場
い肥→農産物→生ごみと、たい肥→菜種油→廃食油→バ
地域社会
日本円
イオマスディーゼル油という2つのリサイクルシステ
ムに地域通貨「ハッチー」を活用している(図 2-14)。 図 2-14 伊万里市はちがめでの地域通貨
また、福岡県豊津町では地域通貨「ペパ」を使って、新
出展;泉留維氏講演資料
聞リサイクルを通じて環境に対する人々の価値観や行
動を変えていく活動を実践している。
3.サステイナブル社会に向けてのリサイクルの新たな課題の抽出
3.1高度リサイクル社会に向けての今後の課題
(1)マテリアルリサイクルにおける今後の課題
(a)廃棄物を製品の原材料として再利用すること自体が最大の課題となる。
廃家電や廃自動車など多くの部品や材質により一つの製品が作り出されている場合、分解して材質
ごとに部品を分類しなければマテリアルリサイクルすることが難しい。そのため、リサイクルしやす
い製品作りが求められており、業界の対応も進んでいる。リユースに続き、リサイクルの第一段階と
してマテリアルリサイクルを考える必要がある。3Rについては愛澤氏が示すように下記の通り定義
できる。
1. リデュース(廃棄物の発生抑制)省資源化や長寿命化といった取組を通じて製品の製造、流通、
使用等に係る資源利用効率を高め、廃棄物とならざるを得ない形での資源の利用を極力少なくす
る。
2. リユース(再利用)仕様済み製品を回収し、必要に応じ適切な処置を施しつつ製品として再使用
を図る。又は、再使用可能な部品の利用を図る。
3. リサイクル(再資源化)一旦使用された製品、製品の製造に伴い発生した副産物を回収し、原材
料としての利用(マテリアルリサイクル)または焼却熱のエネルギーとしての利用(サーマルリ
サイクル)を図る。
(b)一方、武田邦彦氏の冷静な視点も考慮すべきである。
物質は価値を生み出すことによって劣化し、この関係が打破されることはない。物質は価値を生み
出すためには拡散しなければならず、回復はできないし、この関係も克服できない。「環境問題」が
日本社会の関心を集めた時にはすでに資源枯渇以外の「環境」は改善されており、問題は存在しなかっ
た。「活動量(お金の使用)」の増大が「物質とエネルギーの増大」に結びつかない例はない。「効
率的活動」は物質とエネルギーを多く使用する。「物質」と「エネルギー」はマスバランスとして等価
で交換できるものである。
(c)愛澤氏はマテリアルリサイクルも含む3R の今後の課題として下記を提起している。
環境問題解決の究極のゴールは、全人類が共に「健康」
UI
で「安全」で「安心」できる暮らしを子孫に持続できる
TI=
製品・サービス・社会システム
社会を確立することである。環境問題の本質的な改善方
DI
MI
WI
策は、旧態然としたアダムスミス型「資本主義経済」か
EI
らの脱却であり、限られた地球環境資源の下での「環境
PI
資本主義(やりくり)経済」への移行である。環境問題
RI
HI
解決に向けた具体策は、「倫理」による「統治」を担保
する「情報公開」の確立である。
製品・サービス(便益)の効用 UI
TI = =
また、愛澤氏はリサイクルの定量評価指標として、図
環境負荷量ー環境負荷節約量 (MI+EI+HI)-(RI+DI)
3-1に示すE2-PA手法を提案している。
図3-1 E2-PA概念図
出典;愛澤氏講演資料
(d)リサイクルの過程において有害物質の濃縮と拡散が避けられないことである。
その事例報告としては酒井氏(京都大学教授)より「リサイクル過程の残留性化学物質と対策事例」
があった。その内容は下記のとおりである。
1. 化学物質のクリーン・サイクル・コントロール
2. PCB リサイクル過程の問題事例とコントロール対策
3. 素系難燃剤(BFR)リサイクル過程を含めた統合対策
(e)金属資源のリサイクルについては北村修氏より、Ni, Zn, Co を中心として報告があった。
国家備蓄の対象となっている金属は以下のもの
である。(図 3-2)
Ni, Cr, W, Co, Mo, Mn, Vレアメタル(希少金属)
は非鉄金属のうち、産業上様々な理由から利用でき
る量が少なく、希少な金属のことである。ベースメ
タル(メジャーメタルとも。銅、亜鉛、アルミニウ
ムなど)や貴金属(金、銀)以外で、産業に利用さ
れている非鉄金属を指すレアメタルはほとんどの
製造業で不可欠な素材である。半導体産業ではタン
グステンやモリブデン、ニッケル等が必須の素材で
あるし、自動車産業では白金やパラジウム等がなけ
れば排ガス規制をクリアできる自動車を製造でき
ないと言われている。携帯電話や家電製品など廃棄
物からの抽出によるリサイクルも行われている。
金属資源リサイクルの意義は、隠された物質フロ
ーの削減、採掘製錬に係るエネルギーの削減であり、
有害物質の対象ともなる Ni, Cr, W, Co, Mo, Mn,
図 3-2 国家備蓄
V の拡散防止(豊島問題)にある。また、持続可能
出典;北村氏講演資料
な世界構築の為には、枯渇性資源を温存することが、
極めて重要である。
(2)エネルギーリサイクルにおける今後の課題
(a)二酸化炭素分離回収技術
CO2 の分離・回収技術としては、
分離・回収技術と貯留技術に大別さ
れ、分離・回収技術は、図 3-3 に示
すように、化学吸収法、膜分離法、
吸着法、ハイブリッド法(吸収-膜分
離)等、貯留技術は、図 3-4 に示す
ように、海洋隔離、地中隔離、に分
類される。
ここで地中隔離とは、CO2 を地下
に安全に閉じ込めようとするもの
で、油層や炭層、帯水層に CO2 を貯
19
留する技術である。一方海洋隔離と
図 3-3 分離回収技術
は、CO2 を十分溶解する能力がある
二酸化炭素貯留技術
中深層に CO2 を貯留する技術である。
CO2 隔離に占めるコスト割合とし
溶解希釈型隔離法
地中貯留隔離法
深海底貯留隔離法
ては、分離・回収のコストが分離・回
固定式(パイプライン)
移動式(航走船舶)
回収
希釈・溶解法
希釈・溶解法
収、貯留の全コストに対して 7 割程度
気体CO2: 200~ 400m
を占めるとされ、その低減が不可欠で
液体CO2:1000~2000m
液体CO
2
ある。
超臨界CO2
溶解・拡散
分離・回収技術の課題として,全体
液体CO2
150~700Gt150~700Gt-CO
1500~2500m
としては低コスト技術の開発が挙げ
・石油増進回収・枯渇油
5,900Gt-CO
田への注入(EOR)
(※※)
320~10000Gt-CO
られ、4,200 円/t-CO2 よりさらなる削
・帯水層への注入
5,200~ 74百万
・枯渇ガス田への注入
520~1100Gt-CO
減が求められている。個別技術の課題,
液体CO2
Gt-CO
(EGR)
3000m以深
>15Gt-CO
・炭層メタン増進回収
現状の技術レベルとして、吸収法はほ
(ECBM)
ぼ技術確立され、今後は未利用排熱利
全世界のCO 排出量: 23.9 Gt-CO /年 ※Gt(ギガトン)=10 億t
20
日本のCO 排出量 : 1.2 Gt-CO /年
用、再生エネルギー、吸収剤開発等の
コストダウンの検討が主に行われてい
図 3-4 CO2 貯留技術
る。その他膜分離法においては、現在
高選択性膜の開発、その他の方法については基礎研究が行われている状況である。
一方、貯留技術の課題として、全体では分離・回収技術に比べ完成度は低く、基礎検討が終了した
レベルである。地中隔離技術は、海洋隔離に比べ検討が進んでおり、油層、帯水層においては実証研
究の段階まできている。一方、炭層,並びに海洋隔離においては、基礎技術確立の段階であり、特に
海洋隔離については、生物への影響等考慮すべき課題は多い。
以下、主要な技術の課題を列記する。分離・回収技術の技術課題としては、①化学吸収液の性能向
上、②化学吸収システムの性能向上、③分離膜の適用、④発電所エネルギーロス低減、⑤製鉄所等の
廃熱利用、⑥新規発電システムへの適用、が挙げられる。
地中貯留の技術課題としては,①地中貯留トータルコストの削減、②貯留層の評価と利用拡大、③
圧入 CO2 の挙動理解とモニタリング、④安全評価・環境影響評価、が挙げられる。
一方、大規模植林とバイオマス利用も CO2 隔離には重要であり、その技術課題としては、①大規模
植林による森林面積増大と持続可能な森林の管理技術による森林保全、②光合成能力向上技術等によ
る植物固定量の増大、③乾燥地域等への植生拡大技術等による植林可能面積の増大、④産業利用の拡
大による植生拡大、⑤バイオマス利用システムの構築による植林インセンティブの増大と永続的クレ
ジットの確保、が挙げられている。
分離回収技術
2
2
2
2
2
2
2
2
2
※:数値は世界の隔離ポテンシャル(出典:IEAGHG)
2
※ ※:RITE試算(Geochemical J.,2004/5)
(b)木質系バイオマスからのエタノール製造
バイオマスの燃料化として、ここでは木質系バイオマスからのエタノール製造に焦点をあて、整理
する。
木質系バイオマスの利用について経済性から見た場合,400t/d の製造規模において,木質系バイオ
マスから ETBE/BTL を製造する場合,木質系バイオマス原料費としては 9,000 円/t 以下,輸送距離 40km
の条件において単純償却年数が 10.9 年となり,実現性が高いといわれている。また,エタノール製
造において原料をとうもろこしとした場合には,1 万 ha 以上の作付面積で経済性がある試算がされて
いる。一方,発電利用する場合においては,原料費として 2,500 円/t 以下でないと成立しない試算結
果が示されている。その他,マテリアルリサイクルを併設することは有効であるとされている。
一方、エタノール製造時の課題としては、木質系の場合原料成分がセルロース系のため、発酵前に
破砕等の前処理、糖化工程が必要となる。具体的には、糖化工程における硫酸加水分解は収率が悪く,
かつ硫酸回収コストが高くなっている。また、発酵工程においては、ヘミセルロースから生成される
C5 糖を効率よくエタノール発酵する微生物が無いのが現状である。その他、発酵で得たエタノールの
濃縮、脱水の技術開発も必要である。
バイオエタノール製造フロー図
前
処理
加水分解
糖液回収
醗
酵
栄養
補給
濃縮・
蒸留・脱水
貯
蔵
出
荷
廃木材
エタノール
将来増強
発電
リグニン
ペレット製造
リグニンペレット
サイロ
排水処理
出荷
図3-5 廃木材からのバイオエタノール製造プロセス 出典:バイオエタノールジャパン関西㈱HP
価値
機能的価値
目的的機能
目的外機能
個人的価値
社会的価値
希少的価値
リユース時に劣化
理念的価値
確認すべき機能
芸術的価値
図 3-6 リユースの価値体系
価値
交換が困難
易解体性なし
標準化がなされ
ていない
更新が困難
機能回復困難
汚れ除去困難
リユースの措置に
古びた仕上げ
起因する課題
有害物除去困難
図 3-7 価値リサイクルを阻害する要因
リサイクル
品質保証
品質保証なし
品質情報なし
新品指向
商取引
取引情報少ない
リユースの心理的
物流・保管費用
障壁に起因する課題
廃棄物処理費用
図 3-8 価値リサイクルを阻害する社会要因
サービサイジングの課題
(3)価 値 リ サ イ ク ル に お け る 今 後 の 課 題
一般的な製品においてリユース可能な価値とし
て は 図 3-6 に 示 す よ う に 、残 存 し て い る 目 的 的 機
能及び新規の用途に転用する際に生じる目的外
機能がある。
このような価値リユースにおいては、環境面や経済面
に対して以下のような課題がある。
(a)リユース品の環境性能劣化に起因する課題
使用時にエネルギーや資源を消費する製品では、旧
型は資源・エネルギー効率が劣り、また製品絶対量が
増加するので、結果的に環境負荷総量を増加させてし
まう恐れがある。このためには、LCC,LCA 的なアプロ
ーチが必要である。
(b)リ ユ ー ス す る た め の 措 置 に 起 因 す る 課 題
リユースする場合、使用済製品を回収・輸送
し整備し機能確認し、リユース市場に再度堤供
す る 必 要 が あ る 。 図 3-7 の よ う に 新 品 と 競 合 す
るための補修・リフレッシュ等の更新技術が特
に重要である。しかしこの各プロセスで環境負
荷やコストが発生するので、それらを合理的に
簡素化し、コスト環境負荷を低減することがリ
ユース推進には必要である。
(c)リ ユ ー ス へ の 心 理 的 障 壁 に 起 因 す る 課 題
リユース品は原則的に新品に比して心理障壁
が高い。従って販売する場合、コストや必要機
能に関する十分な情報の開示が必須である。こ
のためには、使用完了時点での残存機能の識
別・分類とリユース可否の判定が重要である。
加えて幅広いリユース取引を成立させるための
リユース品に関する情報ネットの整備等も不可
欠 で あ る 。 (図 3-8)
(d) サービサイジングの課題
今 後 の 普 及・拡 大 が 想 定 さ れ る サ ー ビ サ イ ジ ン
グ に お い て も 課 題 が あ る 。図 3-9 に 示 す よ う に 、
まず所有権がないことやメンテナンス責任がな
いことから、製品への関心や愛着心が欠如し取
扱いが粗雑になる傾向がある。また固定料金制
であった場合には逆に使用頻度の増加を招く可
能性もある。
さらに、供給・回収の静脈物流が逆に頻繁に
なり、合理化ができなければかえって環境負荷
の増大を招く恐れもある。これらの対策として
は成熟した消費者への啓発が必須である。
想定される課題
機能の販売
所有権移転
なし
製品メンテ
ナンスは
売主責任
供給・回収も
売主責任
図 3-9
・愛着心の欠如
・料金固定の場合
使用頻度が増加
・
・取扱いが粗雑に
・機能や環境性能に
無関心になる
・静脈物流の合理化
がビジネスの鍵
・物流の環境負荷
サービサイジングの課題
(
(
)
)
(4)リ サ イ ク ル を 支 え る 社 会 支 援 シ ス テ ム に お け る 今 後 の 課 題
(a)拡大生産者責任制度(EPR)の限界
ヨーロッパでは、廃棄物リサイクルが進展する一方、リデュースやリユースが遅れていることが指
摘され始めた。EPR は製品に対してリサイクル推進を規定しているのみで消費自体の削減、即ちリデ
ュースやリユースについては殆ど効果がないという考え方もある。
ドイツでは DSD の浸透で「大量廃棄+大量リサイクル」に向かい、自治体分の回収が有料化されたこ
とも重なり DSD ボックスに生ごみが混入する「ただ乗り」が増え処理コストが増加した。加えて競合
としてケッセン州にランドベル社が登場し、廃棄容器中に生ごみが混入することを前提とした処理シ
ステム設計で低コストで高いリサイクル率を達成した。このため DSD は終に倒産した。
また容器返却で費用支払となるデポジット制度では、
600
600
各社の精算の混乱を避けるため成形性のよいプラスチ
ペット樹脂の生産・回収量推移
500
500
生産量
ックボトルを促進させる結果になってガラスビンが駆
回収量
生
回
400 収
産 400
逐されてしまった。
量
量
わが国でも同様に「大量廃棄+大量リサイクル」の傾 千 300
300
千
ト
向が見られ、例えば、図 3-10 のようにペットボトル回 ント 200
200 ン
収率が 64%と増加しているにも拘らず、廃棄量は以前
100
100
と変わらないという矛盾が生じている。加えて図 3-11
0
0
のように分別収集され回収されたペットボトルが中国
1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005
年度
に有価で輸出され国内リサイクル業者が苦戦を強いら
回収率は 2005 年は 64%まで向上した
れるという実態もある。
図
3-10
PET樹脂の生産・回収量の推移
廃家電についても同様で、中国に中古品として輸出さ
出典:PETボトルリサイクル推進協議会
れ不適切な方法で解体リサイクルされるため「e-Waste」
問題として懸案事項となっている。これらについては、
名古屋大 武田教授の講演や国立環境研 寺園氏の講
演を参照されたい。
(b)新たな廃棄物管理の方向性
イギリスでは EPR の限界を踏まえて、リデュース、リ
ユース、リサイクルという優先順位も LCA で見直し、総
合的に判断すべきという「統合的廃棄物管理政策」
(Intimated Waste Management Policy IWP)が提唱され
始めた。状況説明の折に触れた個別企業の活動はこの考
えに基づくものであった。
回収量の約 6 割は、中国など輸出されている
日本ではマテリアルリサイクルの優先度が高いが、ケ
図3-11 使用済みPETボトルの行方
ミカルやサーマルリサイクルなどについて、EPR 的な視
出典:PETボトルリサイクル推進協議会
点や LCA 的な視点を踏まえて評価すべきとの意見もあ
る。これについては本懇談会の LCA 研究会で廃棄物処理のLCA的評価として研究中である。更に先
進的な考えとして「総合的製品政策」(Integrated Product Policy IPP)が提案された。これは、
環境負荷を減らすには、製品の廃棄段階以降で考えるのではなく、生産から使用、廃棄に至るライフ
スタイルを通じ各段階が連携する必要があるとする。オランダでは、
「1 人が変れば回りが変わり社会
が変わる」という考えに基づき、政府は消費者とコミュニケーション機会を増やし理解促進を図り自
主的取組みを促進している。わが国の「改正容器包装リサイクル法」でも、この考えに基づき国・自
治体・事業者・国民等全ての関係者の連携強化を求めている。
(c)サプライチェーンにおける課題
また IWP による LCA 的評価や IPP による各段階での連携という観点からはサプライチェーンの問題
も指摘されている。EPR 対応や化学物質管理(PRTR,WEEE 指令、RoHs 指令、REACH 指令)のニーズが高
まる中、中小の製造メーカーが膨大な種類の化学物質をはじめとする環境負荷を把握し管理すること
は容易ではない。また、製品のサプライチェーンの上流まで遡って物流に係る環境負荷を算出するこ
とも現実的にはかなり難しい。
3.2 分野別のリユース・リサイクルにおける今後の課題
(1)家電分野
家電リサイクル法の施行(2001 年 4 月)により、 表 3-1 廃家電 4 品目の再商品化実施状況(H18 年度)
製造業者等に対して家電 4 品目の再商品化が義務
冷蔵庫
洗濯機
エアコン テレビ
付けられ、再商品化率(サーマルリサイクル不含)
冷凍庫
が、家庭用エアコン 60%以上、テレビ 55%以上、
再商品化率(目標) ≧60% ≧55% ≧50% ≧50%
冷蔵庫・冷凍庫 50%以上、洗濯機 50%以上と定め
再商品化率
86%
77%
71%
79%
られた。
引取台数(千台)
1,828
4,127
2,716
2,943
平成 18 年度の実績は、表 3-1 に示すように家電
処理台数(千台)
1,835
4,094
2,709
2,951
4 品目のすべてで目標を上回っている。ただし、
処理重量(t)
77,655 117,849 157,106 94,652
家電 4 品目の全排出量は、2,287 万台であり、再
再商品化重量(t)
66,791 91,092 112,106 74,854
商品化されているものは、約 50%に過ぎず、残り
出典:家電リサイクル年次報告書(平成 18 年度版)
は、中古品としての利用や資源回収、そして、廃
棄物として処理されている(図 3-12 参照)。
近年、問題になっているのが、リユースや資源
回収の目的で海外へ輸出されている家電製品であ
全排出量
再商品化
2,287
万台
1,162
万台
る。
中古家電として、そのままリサイクルされるの
であれば、使用可能年数が短いため潜在的な廃棄
リユース
国内向け
物とみなされるという課題が存在するものの、国
697 万台
103 万台
際的な循環型社会の形成に寄与しているというこ
海外向け
とができる。
594 万台
一方、資源回収や部品を取出しての再利用の場
資源回収
国内向け
合、環境汚染や健康影響を誘発する有害物質が「有
421 万台
244 万台
害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制
海外向け
に関するバーゼル条約」の規制対象となるため、
177 万台
①
②
③
中古利用に係る輸出時の判断基準の明確化
水際対策の強化
輸出相手国との協力体制の推進
廃棄処理
7 万台
図 3-12 使用済み家電製品のフロー(2005 年度)
を行うことについて検討する必要がある。
出典:中央環境審議会資料
また、循環資源の輸出においては、国外での受
入停止などの不測の事態への対応も求められる。
このため、国際的な循環型社会の構築が必要とされる。ただし、この場合の地理的境界は、廃棄物・
循環資源の移動の範囲を考慮すると、日本、韓国、中国に東南アジア諸国を加えた東アジア地域をまず
念頭に置くことが適当であり、また、廃棄物・循環資源の越境移動は、途上国での環境悪化や移動中の
不慮の事故による環境汚染、国内の廃棄物処理・リサイクル体制への影響といった課題を克服する必要
があり、そのためには環境汚染を未然に防止することを前提とする必要がある。
上述以外にも課題は存在しており、現在、下記の方向で、家電リサイクル法の改正が議論されている。
①
消費者にとっての透明性・受容性・利便性向上を通じた適正排出の促進
②
③
④
小売業者が引き取った排出家電のメーカーへの円滑かつ適正な引渡しの確保
不法投棄対策の強化
3R推進の観点から、適正なリユースの促進と、廃家電処理・資源輸出の適正性の確保
(2)容器包装分野
2000 年 4 月に容器包装リサイクル法が完全施工され、7 年が経過し、下記に示す成果は見られている。
① 分別収集量の増加
② リサイクル率の着実な増加
③ 一般廃棄物の最終処分量の減少と最終処分場の残余年数の改善
④ 国民の環境問題への意識向上
一方、下記の課題も存在している。
表 3-2 各廃棄物の排出量の推移
(a)家庭廃棄物排出量の高止まり
FY1997
FY2000
FY2003
表 3-2 に示すように家庭からの一般廃棄物の
一般廃棄物排出量(kt)
51,200
52,362
51,607
排出量は横ばいであり、家庭ごみに占める容器包
家庭ごみ排出量(kt)
35,228
34,372
34,656
装廃棄物の割合も変わらず大きなものとなって
いる。このため、リサイクルのみならず容器包装
容器包装廃棄物(Vol%)
55.53
61.76
61.32
廃棄物の排出抑制(リデュース)を一層推進する
容器包装廃棄物(wt%)
22.59
23.67
23.30
必要がある。
出典:環境省 HP
(b)社会的コストの増加
容器包装廃棄物の分別収集・選別保管に伴い市
町村の負担が増加している。環境省によると(平
成 15 年度の推計)
、容リ法施行後、約 380 億円の
コスト増となっている。また、特定事業者の支払
う再商品化委託費も年々増加している。
このため、分別収集・再商品化の効率化・合理
化を推進し、社会的費用の抑制が必要である。
(c)ただ乗り事業者の存在
再商品化義務が課せられているにもかかわら
ず義務を果たさない、「ただ乗り事業者」が未だ
一定数存在しており、事業者間の不公平が発生し
ている。
このため、事業者間の公平性の確保が必要であ
る。
(d)使用済みペットボトルの海外流出
使用済みペットボトルは、原油価格の高騰や資
源としての価値の高まりを受け、年間約 20 万ト
ン(2004 年度時点)が中国、香港等の国外へ流
出している。
その結果、収集量は増加しているにもかかわら
ず、表 3-3 に示すように国内での生産量も増加し
ており、国内でのリサイクルは破綻しているとい
っても過言ではない状況となっている。
これらの課題を解決するために 2006 年 6 月に
改正容器包装リサイクル法が成立したが、今まで
以上に事業者・消費者が容器包装の削減に向けた
取組みを行い、また、市町村をも含めた連携協力
を強化していく必要があるので、展開次第では、
新たな課題が生じる可能性がある。
図 3-13
特定事業者が負担する委託費の推移
出典:環境省 HP
図 3-14
ペットボトル収集量と処理量の推移
出典:環境省 HP
表 3-3
日本のペットボトル生産量の推移
指定ペットボトル(kt)
その他(kt)
総生産量(kt)
1997
2000
2003
2005
218.8
361.9
436.6
532.6
32.9
39.5
34.2
38.0
251.7
401.4
470.7
570.6
出典:PET ボトルリサイクル推進業議会
(3)自 動 車 分 野
表 3-4 使用済自動車発生状況
2005年1月に施行された「自動車リサイクル法」に
抹消・
基づきASR(自動車破砕残渣)、エアバッグ類、フロ
使用済
再登録なし
ン類の特定3物品の再資源化が行われている。
2005年度
500万台
約305万台
(a)自動車リサイクル法制定の経緯
2006年度
515万台
357万台
使用済自動車(約360万台、2006年度)は、有価
出典 : 経済産業省 な金属・部品を含むため、古くから解体業者や破
砕業者によりリサイクル処理が行われてきた。
しかし、リサイクルされたのは約8割の重量を占
める有用金属・部品であり、残り2割は利用価値
のない「シュレッダーダスト」(ASR=Auto-mobile
Shredder Residue)で、廃棄物として安定型処分
場に埋め立て処分してきた。
ところが、1995年にASRに鉛等の有害物質が含ま
れていることが判明し管理型処分場に処分するこ
ととなり処分費用が高騰した。折しも金属市況が
下降の一途をたどっていた時期であり、使用済自
動車の処理コストのバランスが崩れ、リサイクル
システムが停滞し、廃車の不法投棄・不適正処理
図 3-15 自動車リサイクルの現状 出典:トヨタ
が国内に顕在化することとなった。処分場の余裕
がなく埋立処分量削減が急務となる中、従来のリ
サイクルシステムでは機能が不足し、加えて新た
な環境問題であるオゾン層破壊や地球温暖化の原
因となるカーエアコンのフロン類や火薬使用によ
る事故や騒音問題等のおそれがあるエアバッグ類
にも対応するため、使用済自動車のリサイクル・
適正処理を図る新たなリサイクル制度が構築され
た。
(b)自動車リサイクルの状況
リサイクル実施率は表3-5に示すように、2006年
でASRで64~75%、エアバッグ類で94~95%と、
2010年の再資源化目標をそれぞれ達成している。
また不法投棄・不適正保管の車両は、施行前の22
万台(2004.9)から3.5万台(2007.3)に激減した
図 3-16 シュレッダーダスト組成 出典:トヨタ
ことは自動車リサイクル法に基づいた行政の指導
によるものであるともいえる。ただし2005年頃か
ら金属市況が予想を遙かに超えて高騰しているこ 表 3-5 自動車リサイクルにおける再資源化状況
とも大きな原因と考えられる。
再資源化率[%]
(c)自動車リサイクルの課題と対策
ASR
エアバッグ類
2015年の重量ベース再資源化率95%の達成のた
2005年度実績 48.0~70.0
93.0~94.7
めに、シュレッダーダスト・リサイクル技術の向
2006年度実績 63.7~75.0
93.5~95.1
上が課題であり。その実証試験が日本自動車工業
70 (~2015)
会を中心に進められている。金属市況を背景に強
目標値
50 (~2010)
85
化された自動車リサイクルの仕組みの真価は、金
30 (~2005)
属市況が下落した時に初めて検証される。
出典 : 経済産業省 (4)建 設 分 野
2000 年 5 月 に 「 建 設 工 事 に 係 る 資 材 の 再
資 源 化 等 に 関 す る 法 律 」( 建 設 リ サ イ ク ル
法 )が 施 行 さ れ 、コンクリート、アスファルト
及び木材の 再 利 用 が 推 進 さ れ て い る
(a)建 設 リ サ イ ク ル 法 の 経 緯
建 設 廃 棄 物 は 、産 業 廃 棄 物 全 体 の 排 出 量
お よ び 最 終 処 分 量 の 約 2 割 を 占 め 、不 法 投
棄 量 全 体 の 約 6 割 を 占 め て い た( 2002 年 )。
今 後 1990 年 代 の 大 量 の 建 築 の 解 体 期 を 迎
え 、廃 棄 物 量 増 大 が 予 測 さ れ る た め 、そ の
再資源化・再利用が強化された。
(b)再 生 利 用 等 の 実 施 状 況
国土交通省報告によると建設リサイク
ル 推 進 計 画 2002 の 平 成 17 年 度 目 標 は 達 成
し た 。 図 3-17 の よ う に 建 設 廃 棄 物 量 は 減
少 傾 向 に あ り 、 図 3-18 か ら は ア ス フ ァ ル
ト・コ ン ク リ ー ト 塊 と コ ン ク リ ー ト 塊 は 高
い 再 資 源 化 率 を 達 成 し 、建 設 汚 泥 、廃 木 材
も 再 資 源 化 率( 焼 却・熱 回 収・脱 水 縮 減 含
む)が大幅に増加していることがわかる。
これらの高い再資源化率を反映して、図
3-19 か ら は 建 設 廃 棄 物 の 最 終 処 分 量 が 大
幅に低下している。
(c)建 設 廃 棄 物 リ サ イ ク ル の 課 題
第一は、混合廃棄物のリサイクル率向上であ
る。多種類の建材、複合材を用いて建てられた
住宅等の解体では分別解体が困難で、再資源化
を阻害している。この対策として廃プラ、石膏
ボードや塩ビ管等を対象品目を追加することや
建築設計段階での易解体性の作り込み等が指摘
されている。特に、混合廃棄物中の廃プラ量は
66万tに達し、容器包装リサイクル法での廃プ
ラ容器の回収量53万t/年、ペットボトル17万t
/年と匹敵する量である。廃プラは多くのエネル
ギーを投入し合成され発熱量が豊富であり、燃
料として有用な資源である。建設資材における
プラスチック需要がますます高まっていく中、
その再資源化要請は高まっている。
第二に、建材中の有害物質対策が上げられる。
建材には非飛散性アスベスト、木材の防腐・防
蟻のためのCCA(6価クロム、銅及びヒ素化合物
系防腐剤)、PCBなどが含有されており、リサイ
クル時に対策が必要である。経済的な判別・分
離・処理技術や適正かつ効率的な再資源化のた
めの技術開発が必要である。
12,000
万 トン /
10,000
8,000
6,000
4,000
2,000
0
H7年 度
H12年 度 H14年 度 H17年 度
アスファル ト・コ ンクリート塊
建設汚泥
建設発生木材
コ ンクリート塊
建設混合廃棄物
その他
図 3-17 建設廃棄物品目別排出量 出典:国交省
その他
建設発生
木材
建設混合
廃棄物
建設汚泥
コンクリート塊
アスファルト・
コンクリート塊
0
20
40
60
80
100
再資源化率[%]
H7年度
図 3-18
H12年度
H14年度
H17年度
建設廃棄物品目別再資源化率
出典:国交省
4,500
4,000
3,500
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
万トン /年
H7年度
H12年度
アスファルト・コンクリート塊
建設汚泥
建設発生木材
図 3-19
H14年度
H17年度
コンクリート塊
建設混合廃棄物
その他
建設廃棄物品目別最終処分量
出典:国交省
(5)食 品 分 野
2001 年 5 月に「食品循環資源の再生利用等の
促進に関する法律」(食品リサイクル法)が施
行された。法の趣旨は、売れ残りや食べ残しに
より、または食品の製造過程において発生して
いる食品廃棄物について、発生抑制と減量化に
より最終的に処分される量を減少させるとと
もに、飼料や肥料の原材料として再生利用する
ため、食品関連事業者による食品循環資源の再
生利用等を促進する。
(a)法制定後の再利用などの実施状況
食品廃棄物等発生量は、図 3-20 のとおりほ
ぼ横ばいであるが、図 3-21 の再生利用等実施
率では、食品産業全体で着実に向上している。
表 3-6 のとおり、再生利用の用途は肥料化、
飼料化が各 50%、40%を占めている。
(b)食品リサイクルにおける課題
食品製造業は 70~80%と高い実績を上げて
いるが、排出される食品廃棄物の一部が依然
として大量に焼却処理されており、事業者に
よる取り組みの格差が大きい。特に食品流通
の川下(小売や外食産業)では廃棄物発生形
態が少量分散型になり、再生利用等における
異物混入に起因する質の低下が問題となって
いる。また、肥料とした場合、動物排泄物由
来の堆肥と競合し、加えて動物の健康への配
慮など、リサイクルの安全性も指摘されてい
る。さらに、現状、廃棄物発電によるエネル
ギー利用が、食品関連事業者の取り組むべき
手法として位置付けられておらず、リサイク
ルが進展しない一因となっている。
(C)食品リサイクルの課題を踏まえた対策
本年の食品リサイクル法の見直し過程で、
対策の方向性として、以下の点が提言されて
た。
①今後の再生利用実施率の設定
②業態特性を踏まえた発生抑制目標の設定
③情報公開要請など事業者の意識向上対策
④現行のリサイクル4手法(肥料化、飼料化、
油脂・油脂製品化、メタン化)の促進
⑤バイオエタノール化などの手法の追加
⑥再生利用製品の品質・安全性確保策の徹底、
⑦収集運搬の円滑化のため、再生利用事業
認定計画制度見直し、
⑧チェーン展開する事業者の取扱い見直し、
⑨市町村、都道府県との連携推進、
⑩学校の法対象への追加、
⑪消費者向け普及啓発の実施
600
H13
H14
H15
H16
500
400
300
200
100
0
食品製造業
食品卸売業
食品小売業
外食産業
図 3-20 食品廃棄物の発生量の推移
図 3-21 食品循環資源の再生利用等実施率推移
出典:「食品循環資源の再生利用等実態調査結果」農水省統計部
表 3-6 食品廃棄物発生及び処理状況(平成 16 年)
年間 再生利用等実施率(%) 再生利用の用途別内訳(%)
発生量 発生 減量化 再生 肥料 飼料 メタン 油脂
万t 抑制
利用 化 化 化 製品化
食品製造業 490
5
5
62 55 42
0
3
食品卸売業 75
6
2
33
42
57
-
1
食品小売業 260
4
1
22
41
49
1
9
外食産業 310
3
1
12
45
40
2
13
4
3
37
52
43
0
5
計
1,136
出典 平成17年食品循環資源の再生利用など実態調査結果 農水省統計部
収集運搬
飼料化工場
残渣の仕分け
仕分・破砕
排出事業者
レシピ策定
乾燥処理
輸出・販売
図 3-22
食品残渣リサイクルシステムの例
出典:㈱農業技術マーケティング HP
4.課題に対する対策
(1)マテリアルリサイクル
(a)重金属リサイクルについては
重金属に関しては、図 4-1 に示すように、
わが国は鉱石生産から生産まで国内消費の 9
割以上を海外に依存している状態である。
その中でリサイクルが着手されている
Ni, Co, Zn であるが、リサイクル率は低く、
製品あるいは廃棄物としての潜在国内蓄積
量の把握はされていない。以下に書く重金属
のリサイクルのポイントを示す。
図 4-1 国内消費の海外依存
<ニッケルのリサイクル>
• オーステナイト系ステンレスのリサイクル →ステンレス業界
• メッキスラッジ等からのリサイクル →ニッケル製錬
• ニッケル水素電池からのNiリサイクル →フェロニッケル製錬
• ニッケルの副産品としてのコバルト
<コバルトのリサイクル>
• 中央アフリカに偏在する金属
• ハッキリしないリサイクルルート
(判っているのは、リチウム電池のリサイクル触媒からのリサイクル)
• 黄銅のリサイクル→伸銅業界
<亜鉛のリサイクル>
• 亜鉛鍍金鋼板スクラップ→電炉製鋼業界
• 亜鉛ドロス→再生亜鉛業界
• EAFダスト→ウェルツキルン
• 粗酸化亜鉛→ISP亜鉛製錬所
• 蒸留亜鉛→溶融亜鉛鍍金業界
(b)愛澤氏の講演で示された環境価値の定量評価手法 E2-PA は、持続可能な発展のための指標で、エコ・
エフィンシェンシィー(環境行動規範 1997)の概念を定量評価したものである。本手法は人間活動に
よる環境負荷を資源・エネルギー消費の観点から評価が可能とのこと。また、酒井氏より「リサイク
ル過程の残留性化学物質と対策事例」においては PCB と BFR の 20 世紀近代工業が残した負の遺産の
例と次世紀にもなお解決に苦慮していることが示されていた。
(2)エネルギーリサイクル
(a)二酸化炭素分離回収技術
CO2 の分離・回収技術課題の対応
策として、分離・回収技術において
は分離コストの大幅削減が求めら
れ、100 万 t/年規模で 1,000 円
/t-CO2 台が目標として示されてい
る。図 4-5~8 に、分離回収、地中
貯留・海洋隔離、大規模植林、バイ
オマス利用のロードマップを示す。
この目標を達成するために、①化
学吸収液の性能向上として、混合ア
ミン液の探索と性能検証、分子設
計・化学修飾の適用と新規液の探索、
新規アイデアの追及、②化学吸収シ
ステムの性能向上として、膜-化学
吸収液ハイブリッドプロセス等の
高効率システムの開発、脱硝・脱硫
との効率的統合等の新規アイデア
の探索、低温で高効率な吸収液再生
プロセスの開発、③分離膜の適用と
して、高分子・無機膜の性能向上、
高性能分離膜製造技術の開発、④発
電所エネルギーロス低減として、抽
気システムの最適化、⑤製鉄所等の
廃熱利用として、回収システムの低
コスト化、廃熱統合利用システムの
開発、⑥新規発電システムへの適用
分離回収
項目
現在
2010
2015
2020~
世界的に地 中
貯留が本 格化
全般
■分離回収
IGC C
商用機
排出権取引価格相当
での回収・貯留実現
分離コストの大幅削減
100万t/年規模で1000円/t-CO2台に
分離コスト
※4 2 0 0 円/ t- CO 2
LNGプラント適用
適
用
範
囲
の
拡
大
検
討
化学吸収
膜分離
コストダウン
・ 未利用排熱 利用
・ 低再生エネ ルギー
吸収剤 開発
更な るコストダウ ン
更な る適用 範囲の 拡大
高選択性 膜開
発
コストダウン
大規模化
新方式基 礎研究/ 適 用検討
物理吸収・吸着、
深冷分離
化学プラント適用
※ 分離回収: 新 設石炭 火力
(830MW ) 、回収量: 100万 t -CO2/ 年、 7MPa までの昇 圧含む 、蒸気 は発電 所の蒸 気シス テムか ら抽気
図 4-2
分離回収ロードマップ
46
地中貯留・海洋隔離
項目
現在
■地中貯留
2010
実証技術の
適用・評価
帯水層貯留
石油・ガス増進回
収
枯渇油・ガス層貯
留
基礎
技術の
確立
圧入
試験
(1万トン
規模)
2015
2020~
分離コストの大幅削減
本格貯留開始
100万t/年規模で1000円/t-CO2台に
分離・貯留トータルコスト
※
貯留拡大
分離~貯留
プロセスの実証
CO2地中挙動の
理解と予測
地中貯留システムコストの低減
実適用先の拡大
コストダウン
影響評価・安全性評価
手法の開発
貯留層賦存量調査
と利用拡大
基礎技術の
確立
炭層固定
トータルシステム
(の実証・評価
■海洋隔離
海洋隔離技術
の実適用
国際的・社会的
合意の獲得
CO2の海洋拡散・生物影響の科学的理解
溶解希釈・
深海底貯留隔離
拡散シミュレーション実験によるマッチング
生物影響モデルと実験によるマッチング
影響評価・安全性評価手法開発
モデル海域での実証
CO2固定化・有効利用に資する新技術の探索
■その他新技術
※地中貯留:上記分離回収コスト+パイプライン輸送20km+圧入(昇圧10MPa、10万t-CO2/年・井戸)
図 4-3
47
地中貯留・海洋隔離ロードマップ
として、IGCC 等への適用、酸素燃焼
法の開発、等が挙げられている。
大規模植林
地中貯留の技術課題の対応策とし
項目
現在
2010
2015
2020~
■大規模植林
ては、①地中貯留トータルコストの
持続可能な森林の管理技術
森林管理
削減として、低コスト・低エネルギ
ー分離回収技術の開発と実用化(吸
単位面積あたり
の二酸化炭素
固定量増大
収法・膜分離、発電ロス低減、未利
用エネルギー利用、設備費低減プロ
セス等)、パイプラインの高圧化、井
乾燥地等への
戸一本あたりの圧入量増大技術、②
植生拡大技術
貯留層の評価と利用拡大として、貯
産業利用の拡
留可能層の探索と評価、排出源近傍
大による植生拡
大
帯水層の利用可能性の確認、③圧入
48
CO2 の挙動理解とモニタリングとし
図 4-4 大規模植林ロードマップ
て、圧入 CO2 の長期的な挙動理解、
圧入 CO2 の挙動シミュレーションと実証データとのマッチング、遠隔モニタリング手法の開発と実用
化、④安全評価・環境影響評価として、安全評価システムの開発、環境影響の評価、等が挙げられて
いる。
外植林に よる 固定化 コス ト
18 00~3600円/t-CO2
単位面積 当たりの固 定量
現行の 1. 5倍
品種改 良:土壌改 良技術 の
開発と フィー ルド立証
形質転 換体の 開発
モデ ル樹木(ポ プラ 等)
→実用 樹木(ユーカリ 、 アブ ラヤ シ)
適応降水 量
~700mm
集水・灌漑 、品 種改良と
フィー ルド立証
環境耐 性向上 植物の 創生
70 0→50 0→3 00mm適応
植 物の有 用物質 生産能 の向上
油 脂、ワックス 分、 ゴム 、食料
※ 植林:植林周 期7 年伐採 +萌芽 再植林 、バイオマス 生 産量
単位面積 当たりの固 定量
現行の 2倍
実適用検 討
フィールド実 証
適応降水 量
~5 00mm
実適用検 討
適応降水 量
~300 mm
実適用検 討
フィールド実 証
フィールド実 証・実適用 検討
実適用検 討
油脂等の
生産量 2倍
20m3/ha ・年、植林管 理費 17 -31% 、用地リース費: 50$/ha ・年
バイオマス利用
大規模植林とバイオマス利用の
項目
現在
2010
2015
2020~
技術課題の対応策として、①光合成
能力向上技術等による植物固定量
の増大として、品種改良・土壌改良
バイオマスの革
新的利用による
技術の開発とフィールド実証、形質
植生拡大
転換体の開発と実用樹木への展開、
②乾燥地域等への植生拡大技術等
による植林可能面積の増大として、
集水・灌漑、品種改良技術の開発と
他のバイオマス
ロードマップ
フィールド実証、環境耐性向上植物
の創生、③産業利用の拡大による植
CO2固定化・有効利用に資する新技術の探索
その他新技術
49
生拡大として、植物の有用物質生産
図 4-5 バイオマス利用ロードマップ
能の向上(油脂、ワックス分、ゴム、
食料)、④バイオマス利用システムの構築による植林インセンティブの増大と永続的クレジットの確
保として、セルロース・リグニンの革新的変換技術、革新的有用物質生産技術開発(アルコール、水
素、バイオリファイナリー製品群)、等が挙げられている。
(b)木質系バイオマスからのエタノール製造
木質系バイオマスからのエタノール製
造の課題に対する対応策を以下に記載す
る。
糖化工程における硫酸加水分解におけ
る低収率に対しては、非硫酸法、環境調
和型として水熱処理技術、メカノケミカ
ル処理技術が挙げられ、酵素糖化法によ
り糖化率を 90%以上にすることを目標に
検討が行われている。具体的には、メカ
ノケミカル処理物から C5 糖回収率向上、
糖化酵素生産菌の育種、新規糖化酵素生
産微生物の検索、が挙げられている。ま
図 4-6 エタノール転換技術
た、発酵収率を上げる方法として、C5 糖発
酵、高温発酵により 90%以上の発酵率を目指している。この C5 糖発酵においては、遺伝子組み換えに
よる強力酵母菌の使用等が検討されている。その他、機能改変キシロース代謝酵素、遺伝子組み換え
好熱性細菌の利用や建設廃材に含まれる CCA の影響について検討が行われている。以上の対応策によ
り、糖化率 90%以上、発酵収率 90%以上達成時には、エタノール収率として 289kg/t-木質を得ること
ができるとされている。
なお、図 4-6 に示すように、昨年度稼動を開始したバイオエタノール・ジャパン・関西㈱(大阪府
堺市)では、C5 糖の発酵のため K011 と呼ばれる遺伝子組換え菌と酵母の 2 種類の特性を持つ菌が使用
され、商業化に成功している。
次に製造エタノールの濃縮・脱水に関する対応策について述べる。この対応策としては、ゼオライ
ト膜を使用した方法が挙げられる。第 1 段として疎水性のゼオライト膜を用い、エタノールを選択的
に通過させることにより、エタノール濃度として 10%から 90%まで濃縮する。第 2 段として、空孔の
径として約 0.4nm の親水性ゼオライト膜を用い、径が 0.5nm 以上のエタノール分子を通さず、径が約
0.3nm の水分子だけを通す性質を利用し、脱水するものである。その結果。約 90%エタノール濃度を
有するエタノールから、99.6%まで濃縮することが可能となる。なお、エタノールの脱水の必要性は、
厳冬期におけるガソリンとエタノールの相分離を防止する上で重要である。
糖からのアルコー
ル製造実用化
糖類を原料とする
有用物質生産技術
競争可能なコストでのセル
ロースからのアルコール生産
(US:20円/エタノールL)
セルロースの
酸分解技術
改良
競争可能なコストでの
有用物質生産実用化
(水素、ポリマー、化成品)
セルロース、リグニンの
実用化検討
革新的変換の開発
ハードバイオマス
ソフトバイオマス
実適用検討とシステム構築
革新的有用物質生産技術開発
エタノール、水素、バイオリファイナリー製品群
バイオディーゼル
バイオマス・ニッポン総合戦略
廃棄物系バイオマス利用
バイオマスエネルギーロードマップ
ガス化+燃焼
固形燃料
直接燃焼ボイラー
最適脂肪酸組成バイオディーゼル拡大
未利用系バイオマス利用
エネルギー作物利用
ガス化改質小規模化+電力・気体燃料
(発電効率5%up、小規模効率化、バイオGE、FC適用)
ガス化改質+液体燃料化
(エネルギー変換効率50~60%)
アルコール発酵(連続・安定発酵技術)
事
環境性能劣化に対する対策
1頁
例
LCA・LCC ・
的評価
部品交換性
・
の向上
環境性能の
・
状況表示
図 4-7 リユース品環境性能劣化の対策
リユースの措置に対する対策
建築木材での事例
静脈物流の
合理化
・地域通貨活用による消費者物流
・解体業者による運搬と集積
・宅配便などの既存物流と協業
部品交換性
機能確認
表面リフレッシュ
エイジング
図4-8
リユース心理障壁に対する対策
・接着剤レス乾式工法、木組み
・分解・分離し易い構造
・基準寸法統一、寸法微調整法、
標準品での個性の発揮法
・接合法の統一、素材の統合
・ひび補修・補強材挿入・薬剤注入
・カンナ仕上・再塗装・仕上膜貼替
・風格を出す煤付けや焦がし処理
・脱脂・風化促進処理
・VOC・防黴剤や防蟻剤の除去
リユースの措置に対する対策
建築木材での事例
リユース品
の情報開示
・補修者による性能保証
・解体現場での解体木材目利き
・基本性能、環境性能、情報タグ
・使用履歴や現状性状・機能表示
・品質等級の第三者機関評価
情 報 ネ ッ ト ・廃棄・性能・価格情報開示・検索
整備・物流
リユース品
文化性付与
図4-9
サービサイジングでの対策
(3)価 値 リ サ イ ク ル
3.1 において指摘した価値リサイクル(リユース)
推進の3つの課題に対する対策について述べる。
(a)リユース品の環境性能劣化による負荷増加対策
第1にリユース品の環境性能を LCC や LCA 的に評
価することである。ある基準以下のリユース品を市
場から強制除去するという措置は必要である。
第2にリユース品を最小限の部品交換で性能回復
できる技術である。設計段階で部品毎の環境性能影
響度を評価し、性能劣化の大きい部品の交換性を高
める事が重要である。
第3に使用者がリユース製品の環境性能の状況を
容易に把握できるようにする表示システムの整備が
重要である。
(b)リ ユ ー ス に よ る 負 荷 増 加 対 策
リユースにおける回収・輸送、整備・機能確
認の各プロセスで発生する環境負荷やコスト
を 合 理 的 に 低 減 す る た め に は 、第 1 に リ ユ ー ス
品 を 回 収 す る 静 脈 物 流 の 整 備 が 必 要 で あ る 。こ
れには廃品回収等の既存物流網を活用するか、
エンドユーザーの協力を得られる仕組みが有
用 で あ る 。第 2 に 部 品 交 換 性 で 、機 能 維 持 に 重
要な部品交換性の向上や機能確認技術が重要
で あ る 。第 3 に は 競 合 新 品 と 伍 す る た め 表 面 リ
フ レ ッ シ ュ 技 術 が 必 要 で あ る 。こ れ に は 仕 上 げ
表面のクリーニングが必要となる。
(c)リ ユ ー ス へ の 心 理 的 障 壁 に 対 す る 対 策
第 1 に 、コ ス ト や 基 本 機 能 に 関 す る 十 分 な 情
報 の 開 示 で あ り 、こ れ ら の 情 報 開 示 に お い て は
エンドユーザの信頼獲得は必須である。
第2に幅広いリユース取引を成立させる
た め の 情 報 ネ ッ ト の 整 備 も 不 可 欠 で あ る 。 第3
に、リユース品それ自体に文化性を付与することで
ある。例えばリユース品に工芸的価値や希少的価値
等の社会的価値を高め「愛用品」として再認識する
こと等である。
サ ー ビ サ イ ジ ン グ の 課 題 に 対 し て は 、エ ン ド
ユーザーとの成熟した取引関係が必要である。
対 策 と し て は 図 4-10 に 示 す よ う に 、 共 有 製 品
の リ ユ ー ス で あ る こ と の 認 識 、即 ち 共 有 品 で あ
る が 故 に 大 切 に 扱 う こ と 、ま た リ ユ ー ス 品 で あ
るが故に環境性能が劣化している事等を共通
認識として持つよう働きかけることが対策と
なる。
・解体材の使用希望者のマッチング
・廃棄時から取引し物流は最短
・納期・保管管理と追跡システム
・材料産地や希少価値の表示
・流通履歴等から環境性を訴求
・芸術的や民芸的利用法の示唆
・高度な加工により工芸品転換
リユースの心理障壁への対策
対
愛着心の欠如
使用頻度増加
策
・使用頻度に応じた
料金体系
機能・環境性能
・環境性能や目的機能
に無関心
の状況表示
取扱いが粗雑
静脈物流による ・エンドユーザー協力
環境負荷
(拠点まで搬送)
(デポジット制等)
図 4-10
サービサイジングにおける対策
(4)リ サ イ ク ル を 支 え る 社 会 支 援 シ ス テ ム に お け る 対 策 検 討
(a)リサイクル情報ネットの活用
廃棄物の広域的なリサイクルやリユースを
推 進 す る た め に は 、排 出 者 /リ サ イ ク ル 者 /利 用
者 の 広 汎 な 情 報 交 換 が 不 可 欠 で あ る 。種 々 の リ
サ イ ク ル 分 野 や 自 治 体 に お い て 、イ ン タ ー ネ ッ
トを利用した広域的なリサイクル情報交換シ
ス テ ム「 リ サ イ ク ル ネ ッ ト シ ス テ ム 」が 構 築 ・
運 用 ・ 活 用 さ れ て い る が 、 そ の 利 用 は必 ずしも
十 分 とはいえない。(図 4-11)
(b)回 収 ・ 流 通 の 効 率 化
一 般 的 に、3R リサイクルの高 度 化 と共 に、収 集 か
ら運 搬 ~遵 法 廃 棄 物 処 理 に至 る情 報 処 理 (排 出
図 4-11 リサイクルネットワーク例
質 重 量 データや帳 票 類 )を含 めて、不 規 則 複 雑 か
出典:リサイクルネット徳島HP
つ煩 雑 化 の傾 向 にあり、関 連 法 令 の厳 格 化 も絡 ん
で、リバース(循 環 )物 流 の重 要 性 が高 まりつつある。
この物 流 をリバースロジスティクス(静 脈 物 流 )ともい
う。
第 1に ど の 程 度 の 量 が 、 リ バ ー ス ロ ジ ス テ ィ
ク ス で 流 れ て い る の か 、把 握 す る シ ス テ ム の 整
備がマニフェスト等を活用し進められている。
第 2に、共 同 物 流 の実 施 である。動 脈 つまりサプ
共同物流
ライチェーンにおいて各 社 は競 争 関 係 にあるが、廃
棄 物 の回 収 については、相 互 協 力 が必 要 である。
ユーザーが廃 棄 する物 は 全 国 に 散 在 し て お り 、
い つ 、回 収 の 必 要 性 が 発 生 す る か も わ か ら な い 。
リ バ ー ス ロ ジ ス テ ィ ク ス で の 集 荷 は 、効 率 の 悪
い 構 造 を 持 っ て い る の で 、各 社 が 共 同 し て リ バ 図 4-12 リバースロジスティクス
出典:ロジスティックスレビュー第 38 号 (2003/8/22 発行)菅
ースロジスティクスの仕組みを作ることが不
田 勝(リコーロジスティクス株式会社)
可 欠 で あ る 。( 図 4-12 参 照 )
(c)サプライチェーンにおける対策検討
IWP による LCA 的評価や IPP による各段階での連携
という観点からは各サプライチェーンを構成する中
小の製造メーカーが膨大な種類の化学物質をはじめ
とする環境負荷を把握し管理する必要がある。その
ためには、中小企業対象に各レベルの資機材の環境
負荷情報を提供・管理サービスを、業界単位や地域
単位で産官学民が協調して構築する必要がある。
例えば、建材・住宅設備産業協会では、KISS
(「 Kenzai Informaition Service System」( 建
材・設 備 情 報 サ ー ビ ス シ ス テ ム )と い う 、建 産
協 の 組 織 を 最 大 活 用 し 、あ ら ゆ る 建 設 資 材・設
備 機 器 を 網 羅 し た 専 門 の オ フ ィ シ ャ ル・デ ー タ
ベ ー ス を 構 築 し 、将 来 的 に は 環 境 性 能 デ ー タ も
図 4-13 KISS の シ ス テ ム 環 境 ( 概 念 図 )
含 め る 構 想 が あ る 。(図 4-13)
出典:KISS(建材・設備情報サービスシステム)HP
5.大阪科学技術センターからの提言
関西は歴史的には日本の中心であったし、近世以降においても西日本の中心であった。
西日本の各地域(中国、四国、九州)を後背地として各地からエネルギーを吸収し関西のブ
ランドを復活させる潜在力が十分残っている。
関西圏は、幸いにも首都圏の規模と比較してまとまっており、環境保全にとっては適正規
模 で あ り 、環 境 施 策 を 実 現 し や す い 地 理 的 条 件 に あ る 。そ こ で 例 え ば 関 西 を 環 境 特 区 と し て 、
各府県が地域障壁を撤廃し強く連携し、環境保全を基軸にした強力な関西域ブランドを醸成
することも可能であろう。
ま た 、関 西 人 は 新 し い 物 好 き で あ り 、新 し い 事 業 に 対 し て も「 お も ろ い や な い か 」「 や っ て
みなはれ」と直感でとりあえず起業させてしまう進取の気風にあふれている。環境保全の社
会変革の中で、産学官民が連携し新しいビジネスモデルを起業し切磋琢磨するにまことにふ
さわしい。
( 財 ) 大 阪 科 学 技 術 セ ン タ ー で は 、既 に 16 年 前 よ り 「 地 球 環 境 技 術 推 進 懇 談 会 」 を 中 心 に
産学官が連携して活動展開してきた。今回も「循環型社会形成技術・システム調査研究会」
の 3 年間の研究を通じて、関西圏から環境革命の狼煙をあげる活動に一歩踏み出す時機であ
るとの認識に至った。
(財)大阪科学技術センターでは、従来の活動の枠を越えて、これらの活動を促進するた
めに以下の 3 つの提言を行う。
提言1.始末力の醸成
【おおきに“OSAKA”もったいない運動】
商人の視点で、LCA的に身近な物や製品・廃棄物を目利きし、情報を広く公開・交換し
不 必 要 な も の を 排 除 す る と 共 に 、真 に 必 要 な も の を 選 り 分 け 、評 価 し 、脱 物 質 化 し 心 の 文 化 を
取り戻す社会変革の旗手となる。
関 西 で は 古 く か ら 商 都 と し て 栄 え 、「 始 末 す る 」「 も っ た い な い 」 と い う 合 理 的 か つ 堅 実 な
考 え 方 が 支 配 的 で あ っ た 。「 大 量 消 費 ・ 大 量 廃 棄 ・ 大 量 リ サ イ ク ル 」と い う 矛 盾 を は ら ん だ 現
代 に お い て は 影 が 薄 く な っ て い る が 、「 リ デ ュ ー ス 」「 リ ユ ー ス 」 中 心 と し た 活 動 に 転 換 す る
に当たっては、極めて適切な考えと言える。また、建前に拘らず合理的に目利き・評価・情
報交換する商人の本性もまた必要な資質であると言え、現代の環境課題に対して社会変革を
起こす際にこの柔軟な発想は不可欠である。先人である大阪商人から引き継いだ倹約の美
徳・知恵(潜在環境力)と、高い環境技術ポテンシャル(顕在環境力)の企業群を有する大
阪 で 生 活 で き る こ と に 感 謝 し 、日 本 一 の 環 境 先 進 都 市 を 目 指 す 府 民 運 動 と し て 、
「 お お き に“ O
SAKA”もったいない運動」を提唱する。
提言2.市民力の発揮
【
地域通貨の導入
】
環 境 保 全 活 動 に お い て 、産 学 官 の 連 携 に 加 え 、市 民 活 動 を 活 発 さ せ 、静脈系の作業(分別・物
流・補修・洗浄など)を分担するなどして、循環を意識する仕組みつくりを行う。
関西人は元来おせっかいであり、東京に対抗する関西人パワーは比較的強いと言える。こ
のことは環境保全における市民活動を活発にする原動力になると思われる。また大震災を経
験している人たちであり、市民が中心に活動することに自負を持っている。
環境保全活動においては、産学官の連携に加えて、市民の連携も重要であるといえる。特
に多くの商品のライフサイクルにわたる省資源・リサイクルを考える際に、拡大生産者責任
( EPR) に 代 わ る 新 し い 考 え 方 で あ る 「総合的製品政策」(Integrated Product Policy
IPP)でも
各段階の国民各層が連携する重要性が指摘されている。静脈系リサイクル(分別・物流・補修・洗浄な
ど)を推進する仕組みの一つとして、地域通貨の導入を検討する。
提言3.東アジアとの連携
【 国際資源循環をモニターする仕組みの構築】
関西は、地理的にも経済的にも東アジアと深い関係にあり、東アジア諸国を含めた国際的な循環型社
会形成に率先して主導的に関わる。
近年、東アジアは経済的にも環境的にも世界の注目を集めている。急激な経済成長とモ ー タ リ ゼ ー シ
ョ ン によりエネルギー消費やごみ発生量は増加の一途を辿っており、中でも中国は、既に世界第2位の
温室効果ガス排出国となり、CO2 排出量もアジアの 50%を占めている。資源循環の観点からも日本から
も廃棄プラスチックや中古家電が大量に中国に流れ、不適切なリサイクルで環境汚染を引き起こすなど
問題が深刻化している。
日本は東アジアの一員であり、成長地域である東アジアでの環境課題を解決するために、積極的に国
際連携を牽引することは日本の役目といえ、国際資源循環における資源のトレーサビリティを確保し、
適切な国際リサイクルを推進する為、既に国機関(環境省、経済産業省)が動き出してはいるが、東ア
ジアの国々との連携を拡大・加速し、我が国が主導し、国際資源循環をモニター監視・適正化する仕組
みを構築する必要がある。
【参考1】CO2 発生量の 70%削減は可能
2007 年 5 月 24 日、当時の安倍総理はハイリゲンダム・サミット(6 月 6 日~)に先立ち、3 つの柱
からなる「美しい星 50(Cool Earth 50)」
、を提案した。3 つの柱は、①世界全体の排出量を現状から
2050 年までに半減するための革新的技術開発と低炭素社会づくりの長期ビジョン、②2013 年以降の温
暖化対策の国際的枠組み設計3原則、③京都議定書の目標達成のための国民運動の展開、である。特に
第 1 の柱は大きなインパクトを世界に与えた。
途上国の削減は期待できないので、世界全体で 50%削減という目標達成のためには、先進諸国とし
て 70%以上の削減を余儀なくされるだろう。このようなことが本当に実現可能であるのか。
一つの解答として、環境省
戦略研究開発プロジェクト「2050 日本低炭素社会シナリオ:温室効果
ガス 70%削減可能性検討」
(国立環境研究所、京都大学、立命館大学、東京工業大学、みずほ情報総研、
2007.2)がある。この研究においては、日本ではエネルギー需要の 40~45%削減とエネルギー原単位
の低下させることで CO2 発生量の 70%削減は可能と結論付けている。
【参考2】環境革命を大阪からスタート
関西地域は、後背地の豊富な森林や水源(琵琶湖、瀬戸内海)を複数の府県で共有しており、限られ
た環境資源という視点から暗黙の連帯感が生じていると思われる。人口も関東の拡大継続に反して、関
西地域は 1974 年以降、減少傾向にあり、既に成熟社会に移行している。また地理的には比較的まとま
った規模の個性的な都市群(三都)で構成され、環境保全配慮も実現しやすい状況にある。さらに、関
西国際空港という 24 時間空港も控え、東アジアとの接点も多い。
このような関西の地理的特性を活かし、下記の式のように 1/4 の環境負荷削減に挑戦し、日本におけ
る環境革命を大阪からスタートさせるという夢はあながち荒唐無稽とは言えない。そこでは、関西が一
つの環境特区として成立しており、企業や識者が市民と連携し持てる技術を駆使し、関西人らしく「始
末」しながら雑多な新規環境ビジネス起業を活発化させている。
環境負荷(CO2,マテリアル)=人口
1/4
=1.0
×需要(ライフスタイル)×原単位(CO2,マテリアル)
×
1/2
×
1/2
【参考3】大阪の環境力
1)
COP3 以降、関西の自治体は環境に前向きに取り組んでいる。
2)
びわ湖、瀬戸内海を共有し、環境面での運命共同体的感覚が強い。
3)
大規模な環境配慮施設は関西に多い。
4)
電力のCO2発生原単位は関西が最も低い。
Ⅲ.調査詳細【講演録】
Ⅲ.調査詳細【講演録】
<添付CDに収録>
1.平成 17 年度
回
第1回
5月13日(金)
内
容
講演①:「低品位廃熱を利用する二酸化炭素分離回収技術」
講師:小野田 正巳 氏
((財)地球環境産業技術研究機構 主席研究員)
講演②:「価値リサイクルとリユースについて」
講師:植田 和弘 氏
(京都大学大学院 経済学研究科 教授)
第2回
8月30日(火)
講演①:「産業システムのエコ・リストラクチャリング」
講師:吉田 登 氏
(和歌山大学 システム工学部 助教授)
講演②:「サービサイジングについて」
講師:槇村 久子 氏
(京都女子大学現代社会学部 教授)
第3回
12月8日(月)
講演①:「国際資源循環に起因する有害物質問題の現状と課題」
講師:橋詰 博樹 氏
(アジア太平洋地球変動研究ネットワーク事務局長)
講演②:「リサイクル過程の残留性化学物質と対策事例」
講師:酒井 伸一 氏
(京都大学 環境保全センター 教授)
2.平成 18 年度
回
第1回
5月15日(金)
内
容
講演①「高度リサイクル社会に潜む課題 ~リサイクルしてはいけない~」
講師;武田 邦彦 氏
(名古屋大学大学院 工学研究科 教授)
講演②「リユースの現状と課題」
講師;愛澤 政仁 氏
(株式会社イーエムエスアイ 代表取締役)
第2回
8月28日(月)
講演①「二酸化炭素固定化・有効利用分野技術戦略マップ」
講師;高木 正人 氏
((財)地球環境産業技術研究所 研究企画グループリーダー)
講演②「容器・包装リサイクル法改正の論点」
講師;郡嶌 孝 氏
(同志社大学経済学部 教授)
第3回
11月14日(火)
講演①「木質系バイオエタノール製造最前線」【講演録なし】
講師;矢部 彰 氏
(独立行政法人 産業技術総合研究所中国センター所長)
講演②「建設廃材を原料とする燃料用エタノール製造事業」
講師;金子 誠二 氏
(バイオエタノールジャパン関西㈱代表取締役社長)
3.平成19 年度
回
第1回
5月31日(木)
内
容
講演①「「循環型社会と地域通貨」
講師;泉
留維 氏
(専修大学 経済学部 准教授 )
講演②「金属資源のリサイクル –Ni,Co,Znを中心として-」
講師;北村 修 氏
((独) 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 金属資源技術
グループ
第2回
8月22日(水)
第3回
11月28日(火)
特命調査役 製錬担当)
講演①「アジアにおける家電リサイクルとe-Waste問題」
講師;寺園 淳 氏
((独)国立環境研究所 循環型社会 廃棄物研究
センター 国際資源循環室長)
講演②「容器リサイクルへの取り組みの現状と課題」
講師;松野 建治 氏
(3R 推進団体連絡会 代表、PET ボトルリサイクル
推進協議会理事 PETボトル協議会 専務理事)
講演①「サービサイジング成功事例の紹介と今後の課題」
講師;立山 裕二 氏
(ココロジー経営研究所代表 環境パートナーシップ協会会長)
財団法人大阪科学技術センター
地球環境技術推進懇談会
技術・情報振興部
事務局
(担当:大野、青木)
〒550-0004 大阪府大阪市西区靱本町1-8-4
TEL:06-6443-5322
FAX:06-6443-5319
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