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フィリピン マニラ首都圏の生活を洪水から守る
クレーン浚渫船およびバックホウ浚渫船による施工状況( 2015 年 6 月 ) 。川のすぐそばまで住宅が密集しています 海外土木特集 地域のために フィリピン マニラ首都圏の生活を洪水から守る パシグ・マリキナ河川改修Phase 3(円借)(マリキナ工区) マニラ首都圏の洪水被害を抑制する 浚渫土砂を改良し埋立てに有効利用 フィリピン共和国は、国土面積が日本の約8割の29万 当社は、2009 年のパシグ川護岸改修工事を皮切りに 9,404㎢、人口約 9,900 万人、7,109 の島から成り立っ 本プロジェクトに参画しており、 今回の工事はマリキナ川 ている国家で、近年は非常に高い経済成長を遂げており の河川浚渫がメインの工事 ( 一部、護岸整備を含む)と 発展には目を見張るものがあります。しかし、自然災害 なっています。 といった観点から見ると毎年多くの尊い命が失われてい るのが現状です。 工事の特色としては、フィリピンでは初めての試みと なる浚渫土砂のセメント混合処理が含まれている点と そのフィリピンの政治・経済・文化の中心地であるマ 混合処理後の改良土を低平地の埋立てに有効利用する ニラ首都圏は、フィリピン付近で発生する台風の 7 割が 点があげられます。このセメント混合処理には、浚渫土 直撃するうえ、中心部を貫流するパシグ・マリキナ川の 砂を解泥することによりセメントと均一混合できる状 下流域に位置する低平地という立地条件のために、洪水 態にし、連続的に土砂改良を行うことができる当社のタ や土砂災害が頻発しています。さらに、経済発展にとも フコンシステムを活用しています。 なう人口増加のため、河川への汚水流入・ゴミ投棄、汚 現在、施工途中ではありますが、タフコンシステムの 泥堆積による流下能力の低下などが進み、洪水発生に一 活躍により高品質の安定した改良が確保できているこ 層拍車がかかっています。 とから、発注者であるフィリピン公共事業道路省から非 日本はこの状況を改善すべく、1973 年の第一次円借 常に高い評価を受けています。 款「マニラ地区洪水制御・排水事業」以来、支援を継続 将来、この技術が他の しています。1987年には、フィリピン政府の要請により インフラ整備等のプロ 国際協力機構(JICA)により「マニラ首都圏洪水対策計 ジ ェクト で 使 用 さ れ、 画」が策定され、1990 年頃より洪水被害の軽減と安定 フィリピンのさらなる発 的な経済発展を実現するために、マニラ首都圏の洪水対 展に寄与していくこと 策プロジェクトが進められています。 を期待しています。 作業所メンバー 13 東洋建設 CORPORATE REPORT 2015 浚渫土砂揚土ステージ全景 自社引船で浚渫土砂を積んだ台船を曳航します 軟弱な浚渫土砂をセメントと混合して改良します(タフコンシステム2基稼動 ) 施工概念図 改良材追加 浚 渫 土砂ピット 「タフコンシステム 」は、固結土砂を 解泥することにより改良材と均一 混合できる状態にし、連続的に土砂 改良を行います。連続土砂改良装置 には 2軸のリボンミキサの採用によ り、塊状の固結粘性土や固結した浚 渫土砂、脱水処理した固結土砂など に幅広く活用することができます 解泥・改良 改良材ホッパー 解泥部 リボンミキサ 処理土 引き出しスクリュウ パブヤン諸島 アンティポロ ルソン島 マニラ サン ファン マンダル ヨン 施工場所 パシグ マカティ カタンドゥアネス島 パサイ ミンドロ島 マスバテ島 サマール島 セブ島 ネグロス島 パラワン島 レイテ島 タギッグ バラ ニャーク パナイ島 施工位置図 土捨場 セメント混合 処理実施場所 ボホール島 ミンダナオ島 バシラン島 ホロ島 フィリピン共和国 全土 工事名 バシグ・マリキナ河川改修 Phase3(円借) (マリキナ工区) 発注者 フィリピン共和国 公共事業道路省 工期 2014 年 6 月 1 日〜 2017 年 5 月 27 日 河川浚渫延長 5.4km 護岸工延長 1.8km ● 浚渫工 889,100㎥ ● 浚渫土砂処分工 889,100㎥ 工事概要 (セメント混合処理含む)● 護岸コンクリート工 5,652㎥ ● ● 積込・運搬 埋 立 350人のスタッフと 同じベクトルを共有する 混合部 マニラ 土砂ピット Message 改良材フィーダ 未処理土 計算コンベア 鋼矢板打設工 22,553m 排水口設置工(槌門) 9 箇所 ● 橋棚防護工 4,329㎥ パシグ・マリキナ河川改修 Phase 3(円借) (マリキナ工区) 作業所長 秋吉 隆太 海外工事の成否は、現地スタッフに左右される と言っても過言ではありません。スタッフの良し悪 しは重要なファクターであり、良いスタッフはプロ ジェクトの生命線と言えます。 本工事に従事してくれている現地スタッフも、 長年にわたり当社と一緒にさまざまな苦労と経験 を重ね共に成長してきた人材であり、その能力を 十分に発揮してくれているお陰で、現在順調に工 事を進められています。 現場はこれから更に上流側の河川幅が狭く、水 深が浅いエリアの浚渫へと移っていき、これまで 以上に作業環境が制約されかつ高度な技術を要求 されることになります。 日本人スタッフ、現地スタッフ、総勢約 350 名 が一丸となって同じベクトルを共有し、一刻も早く マニラ首都圏の地域住民に洪水に怯えることのな い安全な生活環境を提供することを目標として鋭 意施工してまいります。そして、今後も現地スタッ フとフィリピンの将来を見据えながら共に成長し ていきたいと思います。 東洋建設 CORPORATE REPORT 2015 14