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第 11 回 商品有高帳(まとめノート)
2009 年 7 月 2 日 第 11 回 商品有高帳(まとめノート) 記録:梶原 1.商品売買による利益の計算 商品売買による利益の計算は、次の(1)式のように計算される。 (1) 商品を売った代金 − 商品を仕入れた代金 = 儲け ただし、通常は、仕入れた商品の一部が決算のときに在庫として売れ残っている。当期 の売れ残りを「期末商品棚卸高」 (きまつしょうひんたなおろしだか)と呼ぶ。また、商品 を売った代金の中には、当期に仕入れた商品を売ったものだけではなく、前期の売れ残り 分を販売したものも含まれている。前期の売れ残り分を「期首商品棚卸高」という。なお、 簿記では、商品を売った代金のことを「売上」と呼び、商品売買によって得た利益のこと を「売上総利益」(うりあげそうりえき)と呼ぶ。したがって、商品売買による利益の計算 は、次の(2)式のように修正される。 (2) 売上 − (期首商品棚卸高+仕入−期末商品棚卸高)= 売上総利益 上の式で、当期の仕入高に前期の在庫分をプラスし、そこから当期の在庫分をマイナス した金額のことを「売上原価」(うりあげげんか)と呼ぶ。「仕入」勘定を使って、上の計 算を表すと次のようになる。 仕 入 期首商品棚卸高 売上原価 費用 当期仕入高 期末商品棚卸高 資産 ※「売上」と「仕入」は、値引や返品を差し引いた純売上高および純仕入高を用いる。 以上をまとめると、最終的に、商品売買による利益計算は次の(3)式であらわされる。 (3) 売上 − 売上原価 = 売上総利益 1 2.商品有高帳 (1)商品有高帳の役割 仕入れや販売などによる商品の出入りの明細を記録する「補助簿」 。 そこでは、①商品の数量、②商品の金額、が記録される。 (2)商品有高帳を作る目的 ①在庫管理 ※ ②期末商品棚卸高の計算 商品有高帳を作る目的の 1 つである期末商品棚卸高の計算は、当期に受け入れた商 品の金額のうち、在庫の部分と売上原価になる部分とに分けることを意味する。商品 受け入れ時に「仕入」として全額費用処理したもののうち、実際に費用とならなかっ た部分があるので、それを「繰越商品」という資産に振り替える。そのため、振り替 える金額を計算するのが、商品有高帳における重要な目的になる。 (3)商品の受け入れと払い出しの記録の方法 ①先入先出法(さきいれさきだしほう) ... 先に仕入れた商品から先に出て行くとみなす考え方。 後に仕入れた商品が在庫となる。 ②移動平均法(いどうへいきんほう) ... 後に仕入れた商品が先に仕入れていた商品と混ざるとみなす考え方。 平均されるので、在庫になるのは先の商品でもなく後の商品でもない。 ※ ... このほかに、後に仕入れた商品が先に出て行くとみなす「後入先出法」(あといれさ きだきほう)や、商品数が少なく全ての商品の出入りが 1 つ 1 つ明らかなときに可能 な「個別法」などがある。ただし、ここでは取り上げない。 2 3.商品有高帳の具体例 (1)取引例と仕訳 <取引例> 6/1 前月繰越 @100 円 100 個 6/5 仕入 @110 円 200 個 6/10 売上 @200 円 250 個 6/20 仕入 @120 円 200 個 6/30 売上 @200 円 160 個 <仕訳> 6/1 仕訳なし 6/5 仕入 22,000 / 現金 22,000 6/10 現金 50,000 / 売上 50,000 6/20 仕入 24,000 / 現金 24,000 6/30 現金 32,000 / 売上 32,000 これらの仕訳に加えて、商品の売れ残り部分を次月へと繰り越し、今月の費用として の売上原価を記録する次のような仕訳が必要となる。 6/30 仕入 10,000 / 繰越商品 繰越商品 ××× / 仕入 10,000 ××× 1 行目の借方「仕入」、貸方「繰越商品」は、資産として計上されている前月繰越部分 を今月の費用に計上する振替仕訳。期末の 6 月 30 日ではなく、期首の 6 月 1 日に行って もよい。 2 行目の借方「繰越商品」 、貸方「仕入」の仕訳は、費用として計上されている当月仕 入から売れ残りを差し引き、在庫を資産として計上する振替仕訳。2 行目の金額は、商品 有高帳による払い出し計算によって確定する。 ※ なお、商品売買について「分記法」や「売上原価対立法」を用いて記録している場 合は、これらの振替仕訳は必要ない。 3 (2)商品有高帳による記録 その 1 ―先入先出法の場合― 商品有高帳 日付 摘要 受入 払出 数量 単価 金額 数量 単価 残高 金額 数量 単価 金額 6/1 前月繰越 100 100 10,000 100 100 10,000 6/5 仕入 200 110 22,000 100 100 10,000 200 110 22,000 50 110 5,500 50 110 5,500 200 120 24,000 90 120 10,800 90 120 10,800 6/10 6/20 6/30 〃 売上 仕入 200 120 7/1 次月繰越 ※ 前月繰越 90 56,000 120 100 10,000 150 110 16,500 24,000 売上 500 100 50 110 5,500 110 120 13,200 90 120 10,800 500 10,800 56,000 次月繰越の下の行には、当月の全ての受入と払出の合計数量と合計金額を記入する。 ただし、単価は計算しなくてよい。 4 (3)商品有高帳による記録 その 2 ―移動平均法の場合― 商品有高帳 日付 摘要 受入 払出 数量 単価 金額 数量 単価 残高 金額 数量 単価 金額 6/1 前月繰越 100 100 10,000 100 100 10,000 6/5 仕入 200 110 22,000 300 106 32,000 6/10 売上 50 110 5,500 6/20 仕入 250 118 29,500 6/30 売上 160 118 18,880 90 118 10,620 次月繰越 90 118 10,620 90 118 10,620 〃 250 200 120 500 7/1 前月繰越 90 26,500 24,000 56,000 118 106 500 56,000 10,620 <補足> # 6/5 の残高単価の計算・・・ (10,000 + 32,000)÷(100 + 200)= 106 # 6/10 の残高単価の計算・・・ (32,000 − 26,500)÷(300 − 250) = 110 # 6/20 の残高単価の計算・・・ (5,500 + 24,000)÷(50 + 200)= 118 # 6/30 の残高単価の計算・・・ (29,500 − 18,880)÷(250 − 160)= 118 (4)先入先出法と移動平均法の比較 期末商品棚卸高 当月売上原価 ①先入先出法 10,800 45,200 ②移動平均法 10,620 45,380 <次月繰越の仕訳>先入先出法の場合 (移動平均法の場合は 2 つ目の仕訳の金額が 10,620) 6/30 仕入 10,000 / 繰越商品 10,800 / 繰越商品 10,000 仕入 10,800 →払出計算の方法が異なると、費用(売上原価)と資産(繰越商品)の金額が違ってく .. る。しかし、どちらが間違っているというわけではなく、どちらの金額も真実である。 5