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建設業のノウハウを生かし 酪農経営に参入

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建設業のノウハウを生かし 酪農経営に参入
特集
建設業のノウハウを生かし
酪農経営に参入
―関係機関の支援と自給飼料生産を基盤に足腰の強い安定経営を目指す―
中山 正明
(有)マルナカファーム
酪農経営参入の背景
建設業界は、昭和60年代のいわゆるバブル
経済期においては、公共事業を中心に盛んで
上の飼養頭数が必要」とアドバイスを受け、
増頭を進めることとした。
経営を開始しての状況
あった。しかし、平成10年頃になると公共事
平成15年に建設業で培った信用と実績で、
業の大幅な減少による先行きの不透明感を感
銀行から資金融資を受け、規模拡大を進め、
じることとなった。特に労働力についてみる
フリーバーン牛舎・ロータリー式パーラーお
と、年度初めに組まれた予算は年度内執行と
よびふん尿処理施設を建設した。
いう“慣例”があるため、年度前半は比較的余
牛舎建設に当っては、100%県産材を利用
裕があるが、年度後半は極繁忙に偏りがちに
して低コスト県産材牛舎建設を目指し、自前
なった。
の重機や労働力等を利用し通常価格より安価
建設業を営む筆者は、この問題を解決する
に抑えることができた。施設についても、球
ためバブル経済の余力を残す十数年前から
磨酪農農業協同組合や錦町役場等の指導を受
「将来宅地造成に」と買い集めた町内の遊休
け、畜産近代化リース事業等の制度資金を利
地の有効活用を目的に、平成13年6月に搾乳
用した。その結果、飼養頭数600頭(うち搾
牛頭数30頭規模の牧場を買い取り、自給飼料
乳牛450頭)とメガファームの規模となった。
を作付けすることで外国産飼料の価格に左右
筆者は、農業高校出身だが酪農経営に関し
されることなく酪農経営の運営ができるので
ては素人だったので、酪農専門のコンサルタ
はないかと考え、「有限会社マルナカファー
ム」を平成13年6月に設立した。
土地・施設・機械整備、家畜導入等
にあたって
牧場を始めてすぐに搾乳牛120頭規模にま
で増やした。しかし、なかなか利益が出なか
ったため、知り合いのメガファームの牧場主
に相談したところ、「雇用労働力を有効活用
し企業として利益を生むには、最低300頭以
(写真1)畜舎の全景、周りは採草地に囲まれている
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ントや獣医師と契約し、飼料給餌 (表)経営の概要(平成25年7月現在)
メニューや作業マニュアルを構
築した。当初は、人に合わせた牛
会社名:有限会社 マルナカファーム(代表取締役 中山 正明)
熊本県球磨郡錦町
飼いではなく牛に合わせた牛飼
資本金:1,000 万円 法人設立:平成 13 年6月
いをモットーに、自然循環型農業
事業内容:酪農
を目指し順調に運営していたよ
生産規模:経産牛 290 頭 育成牛 150 頭 交雑種 40 頭
うに思えていた。
しかし、建設業ならば一度投資
すると5年から10年間は新たな
従業員:13 名
牛 舎:フリーバーン方式(戻し堆肥)
搾乳方法:ロータリーパーラー(40 頭)
堆肥舎:3,000㎡スクープ式発酵施設
投資を必要としないが、酪農経営
耕作面積:55ha(うち田 10ha 畑 15ha 牧草地 30ha)
の場合は、疾病による家畜の淘汰
◎経営理念:マルく、ナカよく、安全に。資源循環型の農業を実践。
や死亡等で1頭60万円超(初任牛
価格)の投資額が無駄になるリスクに加え、
堆肥化、自給飼料生産に責任者を設け、運営
乳質が悪いとペナルティーとして乳価差引き
マニュアルにそって合理化したが、職員も農
を余儀なくされ、加えて、定期的に牛の更新
業経験者ではないため、技術・判断力に欠け
を必要とするため、資金投下が継続して必要
る所もあり厳しい経営状況を強いられた。
となった。また、自給飼料生産においても、
経験不足により収穫量が思うように伸びなか
現在の経営状況
った。
現在、設立13年目を迎え設備投資や導入牛
平成18年からは少子高齢化による消費形態
に係る借入金の返済もすすみ、徐々に少なく
の変化もあり乳量の生産出荷調整が始まり、
なっている。素人だった職員も、熊本県酪農
乳価も季節変動があり、さらには設立当初、
業協同組合連合会や全国酪農協同組合連合会
前向きだった農業分野への銀行の融資も受け
からの派遣指導や講習、メーカーの担当者と
難くなり、このため飼養頭数を480頭(うち
の情報交換など経験を積んだことで、知識や
搾乳牛290頭)まで減少させることとなった。
技術が向上し自信を持って作業に取り組んで
個人経営のようにすべてを家族で作業する
いる。このことが、乳量確保や疾病による淘
ことはできないので、搾乳、給餌、ふん尿処理・
汰頭数の減少につながり、安定した飼養管理
(写真2)40頭搾乳のロータリーパーラー
40 畜産コンサルタント 2013
(写真3)フリーバーンの牛舎、県産材を使い独自で
建設した
❽
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一般企業の畜産分野への参入
(写真4)元鉄工所跡を活用した牛舎
特集
(写真5)堆肥舎
を実践できるようになった。
今後の展望
その結果、平成24年度搾乳牛1頭当たり乳
量は9385kgと最も低かった平成22年度に比べ
今後は、自給飼料のさらなる増産に向けて
て1800kg増加し、組合の牛群検定成績の平均
耕作放棄地に建設業の機械と労働力を利用
よりも200 ~ 300kg多くなっている。
し、できるだけ外国産の飼料に頼らない酪農
また、自給飼料は55haに作付けし収穫量も
経営を実行して、為替変動、燃油高騰、悪天
徐々に増え、円安による輸入乾草の高騰の影
候にともなう不作等による飼料高騰といった
響を最小限に抑えることができている。
外国の不安定なリスクに負けない、足腰の強
これまで種付けは本交を基本に実施してき
い経営を実現したいと考えている。
たが、今ではホルスタイン雌雄判別精液を人
(なかやま まさあき・(有)マルナカファーム代表
工授精し、後継牛の確保による搾乳牛の増頭
取締役)
を進めている。
ト
ピ
ッ
ク
ス
㈱高座豚手造りハムが創立30周年を祝う
㈱高座豚手造りハムは6月8日、神奈川県相
模原市のホテルで創立30周年記念祝賀パーティ
ーを開催した。農事組合法人高座豚手造りハム
は、昭和59年に8人の養豚家によって、旧高座
郡の地域銘柄豚「高座豚」
(中ヨークシャー種)
の生産復活と加工・流通を目指して設立され、
以来、ハム・ソーセージなどの豚肉加工・販売、
レストラン事業を展開してきた。平成18年に株
式会社に改組し、現在、本店(綾瀬市)のほか
は「消費者ニーズの多様化が進む中、当社では
直売店3店、レストラン1店を開設している。
①都市畜産のバックグラウンドづくりとなる、
祝賀パーティーには地元行政関係者のほか、畜
②本物づくりに徹する、③神奈川名産として揺
産・養豚関係者ら約200人が参集し、これまで
るぎないものをつくる――の3つのコンセプト
の業績を称えるとともに、今後の発展を祈った。
を守り、お客に満足してもらえる製品づくりに
今年4月に就任した志澤菜穂子新社長(写真)
まい進していきたい」と抱負を述べた。
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