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市民病院燃料費返還請求 - 岐阜市ホームページへ

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市民病院燃料費返還請求 - 岐阜市ホームページへ
岐阜市監査委員告示第7号
岐阜市職員措置請求に
岐阜市職員措置請求に係る監査結果の
監査結果の公表
平成21年6月27日付けで提出されました岐阜市職員措置請求書(以下「請求書」
という。)について、地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」という。)第
242条第4項の規定に基づき、監査した結果を下記のとおり公表します。
平成21年8月20日
岐阜市監査委員
岐阜市監査委員
岐阜市監査委員
岐阜市監査委員
第1
1
2
3
外 山
浅 野
後 藤
羽田野
正
裕
弥
晴
孝
司
市
雄
監査の請求
請求人
(略)
請求書の受付
平成21年6月29日
請求の要旨
(1)請求人は、平成20年4月8日付けで、本市監査委員あて岐阜市民病院におい
て使用する平成19年度A重油JIS規格品(1種1号)大型ローリー1ℓ当た
りの燃料単価契約に関し、請求書を提出した。
(2)昨年の請求書の請求の要旨の末尾で、平成20年度上半期において、入札参加
資格者名簿(建設工事以外)、仕様書、入札方法の見直し、他公立病院の単価契
約状況の把握、石油情報の収集等をさらに強化し、より適当な予定価格の設定を
強く望んだ。
(3)平成20年5月12日付け岐阜市監第21号で、昨年の請求書の監査結果の通
知があり、監査委員の意見として「請求人の主張の主旨は、いかにすれば最少の
経費で最大の効果を挙げるかということであり、このことは改めて申すまでもな
1
く、法第2条第14項あるいは地方財政法(昭和23年法律第109号。以下「地
財法」という。)第4条第1項に規定する法律の制定趣旨と一致するものである
と思量される。したがって、担当部局におかれては、今回の住民監査請求を契機
として、改めて、地方公共団体がその事務を処理するに当たって準拠すべき基本
方針を再認識されるとともに、今後の事務の執行に当たっては、更なる経費削減
に努められることを要望するものである。」と付記されていた。
(4)前記(2)及び(3)によって、どのように改めたのか平成21年3月23日
付けの「市長への手紙」によって岐阜市長に照会した。
(5)前記(4)に対し、平成21年4月8日付け市長への手紙第322号により回
答があり、その内容は、
「A重油の設計単価については、周辺の病院だけでなく、
市場価格の動向をも検討し、十分精査を重ねた上で契約課にて単価決定してきま
した。その結果、他病院とのA重油単価の差は確実になくなってきたものと考え
ます。」というものであった。
(6)前記(5)の回答により、真実にA重油単価の差は確実になくなってきたのか
調査することとした。
単価契約について、最も留意しなければならないのは、「予定価格」であり、
岐阜市契約規則(昭和39年岐阜市規則第7号。以下「契約規則」という。)第
21条第2項において、「予定価格は、契約の目的となる物件について、取引の
実例価格、数量の多寡等を考慮して適正に定めなければならない。」と規定され
ており、昨年の請求書では岐阜県立多治見病院(以下「多治見病院」という。)
の契約単価を比較対象としたが、今年度は下半期を対象としたことから本市周辺
の大垣市民病院が下半期の購入実績が 838kl で岐阜市民病院の購入実績 864kl
とほぼ同量であるので、大垣市民病院を比較対象病院として選定した。
(7)前記(6)の岐阜市民病院及び大垣市民病院の購入状況を比較すると、下期で
は購入数量 26kl 増(上期 584kl 増)、契約単価(消費税除く。)9 円増(上期 11.3
円増)、購入金額 9,572 千円増(上期 69,586 千円増)である。
逆に言えば、岐阜市民病院では 26kl のA重油を購入するのに、9,572 千円(1
ℓ当たり 368 円)要することになり、いかに岐阜市民病院の単価が高いのかがわ
かると思う。
(8)財団法人日本エネルギー経済研究所石油情報センターによるA重油1種2号
(大型ローリー)納入価格調査結果推移表(中部局:富山県、石川県、岐阜県、
愛知県、三重県)を記入したが、この場合の大型ローリーは可積載量 8kl 以上の
もので、即、岐阜市民病院の単価とは比較できないので、「参考表」として扱っ
てほしい。
(9)もし、岐阜市民病院が大垣市民病院の契約単価でA重油を購入した場合の購入
金額とその差額は、下半期で 48,340 千円、その差額 6,270 千円、上半期で 100,100
千円、その差額 6,700 千円で、年間では 148,440 千円、その差額は 12,970 千円
で、「予定価格」の設定がいかに重要なものかわかる。
(10)前記(7)及び(8)により、岐阜市民病院の下半期のA重油購入の単価は、
2
大垣市民病院の下半期の購入単価を大きく上回っていることは間違いがなく、そ
れが前記(5)による岐阜市長の回答は、請求人(一市民)のみならず監査委員
の貴重なる意見を踏みにじった虚偽の回答であり、強い憤りを全身に感じる。
(11)よって、法第 2 条第14項あるいは地財法第4条第1項に定める違法な公金の
支出に該当し、岐阜市長及びその関係者は、その責任の程度に応じ下半期での購
入差額 6,268,500 円の返還を求める。
(12)虚偽の回答が公文書偽造罪に当たるか否かは、司法関係者の助言を得て態度を
定めたい。
第2
監査の実施
1
請求の受理
本件請求は、法第242条第1項に規定する要件を具備しているものと認め、平
成21年7月8日付けで受理した。
2
請求人の陳述及び証拠の提出
法第242条第6項の規定に基づき、平成21年7月28日、請求人に対して新
たな証拠の提出及び陳述の機会を設けたところ、請求人は陳述を行わなかったが、
陳述書及び新たな証拠書類が提出された。
(1)陳述書の要旨は、次のとおりであった。
ア
岐阜市民病院が契約規則に定める数量の多寡がほぼ同数量の多治見病院(平
成20年度は大垣市民病院)の単価で購入した場合の購入金額は、平成15年
度から平成20年度までの6年度合計で 603,865,458 円になり、岐阜市民病院
の実購入金額 678,489,210 円との差額は 74,623,752 円で、巨額の経費が冗費
となっている。
イ
岐阜市当局者は、大垣市民病院が岐阜市民病院より安い単価で入札している
のを知りながら、高い単価を予定価格と決定したことは、許し難い行為と言わ
ざるを得ない。
ウ
監査の実施に当たっては、岐阜市側に偏することなく中立の立場で「請求書」
の監査に当たることをお願いする。
エ
昨年の監査結果で、近隣3市との重油1種(A重油)の指示価格の比較が行
われ、平成19年4月から平成20年2月までの11か月間で、岐阜市の価格
が近隣3市の平均値を上回ったのは1か月だけであり、11か月の平均値を比
較しても岐阜市の方が1円ほど安い結果となった旨述べているが、岐阜市及び
大垣市はどの契約をもって指示価格としたのか疑問である。
オ
大垣市民病院の経営が健全で地域医療への貢献を果たしているとして、全国
自治体病院開設者協議会と全国自治体病院協議会の両会長から、1987年に
続いて2度目となる「自治体立優良病院」の表彰を受けた大垣市民病院のA重
油の購入契約単価を適正と判断した。
カ
岐阜市民病院と大垣市民病院の契約単価を比較する根拠は、法第2条第14
項あるいは地財法第4条第1項である。
3
キ
岐阜市長及びその関係者に対し、その責任の程度に応じ下半期での購入差額
6,268,500 円の返還を求めているが、「その関係者」とは、岐阜市民病院にお
いて使用するA重油JIS規格品(1種1号)大型ローリー1ℓ当たり燃料単
価契約事務に従事した岐阜市職員である。
ク
羽島市、各務原市との単価差については、契約規則第21条第2項から判断
できる。
(2)法第242条第6項の規定に基づき、請求人から「市長への手紙」の回答など、
それぞれその写しが新たな証拠として提出された。
3
監査対象事項
(1)岐阜市民病院において使用するA重油(JIS 1種1号)大型ローリー1ℓ当た
りの契約単価が、適当な単価であるかどうかを大垣市民病院の契約単価と比較す
ることが妥当であるのか。
(2)仮に岐阜市民病院が大垣市民病院の単価と同価格で購入した場合、下半期で
6,268,500 円の差が生じるが、これは、法第2条第14項及び地財法第4条第1
項に違反し、違法な公金の支出に該当し、岐阜市長及びその関係者に同額の返還
を求めることが妥当なのか。
4
監査対象部局
行政部(契約課)及び市民病院事務局(病院政策課)
5
関係人調査
法第199条第8項の規定に基づき、平成21年7月9日付けで、代表監査委員
から大垣市民病院に対し、住民監査請求に係る調査について、文書により協力を依
頼した。
第3
1
監査対象部局の陳述
法第242条第7項の規定に基づき、平成21年7月28日に監査対象部局であ
る行政部及び市民病院事務局の陳述の聴取を行ったところ、以下の内容の説明がな
された。
(1)昨年の住民監査請求において、請求人が要望したA重油の購入契約事務等に
係る改善点については、平成20年度から以下の数点について改善を図った。
1点目は、平成19年度までは、A重油の単価契約を2か月おき、或いは3か
月おきに行っていたが、世界的な原油価格の高騰により価格変動が激しくなって
きたため、平成20年度からは、毎月単価契約の依頼を行うようにした。
2点目としては、契約課からA重油単価の積算根拠について精査の依頼があっ
たこともあり、平成20年5月からは市民病院において、他の公立病院の単価契
約状況の把握や石油価格情報の収集等を行ったうえで、積算を行うように変更し
た。
3点目として、積算に際しては、従来、岐阜市民病院と同規模の購入実績であ
る多治見病院の契約単価を主に調査・参考としてきたものを、昨年の6月に、大
垣市民病院の契約単価を参考に設計を行った結果、入札が不調になったことがあ
4
った。このため、積算時におけるさらなる精査の必要性から、他病院の価格動向
だけでなく、世界的な石油価格の高騰も少なからず影響があると考え、東京原油
の動向について検証し、原油単価アップ率も考慮に入れたA重油単価の積算設計
を行うようにした。また、昨年度、購入単価の低減を図ることを目的に、1回の
搬入量を 12kl から 16kl に仕様変更し入札を実施したが、納品時に地下タンク施
設に破損等支障が生じる恐れがあり、その後、12kl 搬入の仕様に戻し積算を行
った。
(2)請求人に対する市長への手紙の回答の中で「他病院とのA重油単価差は確実に
なくなってきた・・・」と答えており、大垣市民病院に対し1ℓ当たり 10 円ほど
高く、単価差があまり変わっていないと指摘された点については、「他病院との
A重油単価の差は確実になくなってきた・・・」と答えた他病院とは、前回の住
民監査請求での請求人が調査対象とした病院が多治見病院であり、この比較検討
をすることが適当と考え、多治見病院との比較を行った。
多治見病院との比較では、平成19年度は全ての月で岐阜市民病院が高かった
ものが、平成20年度においては、9月、11月、12月の3か月では岐阜市民
病院の方が安くなっており、その他の月でも単価差が縮小した月が多くなった。
また、平成19年度と平成20年度の平均月単価を比較しても格差が平成19
年度は 10.2%あったものが、平成20年度は 2.9%へと縮小し、単価差は縮まっ
た。
大垣市民病院との比較では、前年度との対比で単価差は若干拡大したが、格差
率では縮小し、ほとんど変化がみられなかった。
県内でA重油を岐阜市民病院と同量程度使用する公立病院は、多治見病院と大
垣市民病院の2病院であり、この2病院の契約単価を調査したが、実際の積算設
計にあたっては、産業立地、石油の需給等地域性の違いから大垣市民病院の契約
単価は格別であり、病院への安定供給を考慮すると比較対象とすることは困難で
ある。
以上の理由から、多治見病院とのA重油の単価差が縮まってきたことを、「単
価差は確実になくなってきた」と答えたものである。ただし、この点については、
すべての他病院に対し「単価差がなくなった」ともとれるような曖昧な言い方で
あり、誤解を招くような表現となったことに対し、真摯に反省をしている。
(3)A重油の購入に当たっては、病院としても機能を一日たりとも停滞させること
はできないので、危機管理上過去に起こったオイルショック時のような状況下で
も、公共性を重視し病院へ安定供給できるようなシステムづくりも必要であると
考えている。
(4)昨年来の著しい原油価格変動の中、市場価格を厳密に把握するのは非常に困難
な状況ではあったが、他病院だけでなく原油の市況等も調査し、積算根拠を見直
し、少しでも適切な購入価格となるよう日々努力はしてきた。
(5)平成21年度からボイラーの燃料は、A重油から都市ガスへ転換した。
2
以上の説明を踏まえ、監査委員から監査対象部局に対し質疑により説明内容の確
5
認等を行ったところ、以下の内容の説明がなされた。
(1)具体的な事務の流れは、岐阜市民病院で予算に基づきA重油購入仕様書及び設
計書を作成し、それから施行伺書の決裁を受ける。岐阜市民病院長及び財政部長
まで決裁を受け、契約課に単価契約の入札を行うよう依頼をかける。それで、契
約課の方で業者を決定して、その決定単価に基づきA重油を契約業者から購入し、
月末に支払いを行っていた。
(2)契約課が予定価格を設定する。
(3)岐阜市民病院の方で設計した金額を基にして、契約課の方でも市場調査等をし
て、その範囲以内で予定価格を設定している。
(4)岐阜市民病院としては、大垣市民病院の契約単価に基づいて、単価差から積算
根拠を出そうとして、設計を行おうとしたが、単価差がもともとありすぎて、5
月は入札ができたが、6月の第1回目の時には不調になってしまった。この単価
差があまりにもありすぎたことから、原油の市場価格も考慮に入れないと正確な
設計ができないと考え、それからは原油価格の単価差の比較から積算根拠を出し
て行こうと考えた。
(5)当月の設計は前月にする。
(6)1か月ごとの契約で当月の1日からの契約なので、前月の月末までに契約をし
なければいけない。
(7)契約は月末になるが、契約課や財政課にまわす設計というのは、約2週間の期
間が必要である。
(8)一般の工事請負費等とは違い、物価版のような単価があるわけではないので、
市況の価格とか、実際の前年度の契約単価とか、そういったものを比較対照しな
がら、決めるしかない状況である。価格が落ち着いているときであれば、前回の
購入単価とかそういうものが一番参考になる。ただ、昨年のようだと、世界的な
原油価格の動きは考慮に入れなければならない。
(9)設計段階での他病院との比較はできない。市場価格はわかるけれども、他病院
がいくらで落とすかはわからない。だから市場価格を参考にするしかないという
ことである。前年は比較にならない。
(10)岐阜市には、岐阜市の契約ルール、業者選定のルールがある。その中で、単価
を設定して、納入してもらうという形でやってきている。大垣と一概に比較する
ことは問題があると思う。
(11)去年は、価格の値上がり値下がりの変動が激しく、一応、岐阜市民病院の方か
らの設計価格を基に、ニューヨークの原油市場、それから東京の先物原油のグラ
フを毎日見ながら、例えば、もう一つは、去年の途中から出光興産が毎週、A重
油から、ガソリンから全て値上げする、値下げするというのを発表していたので、
そういうものを参考にしながら、毎月やっているので、前の月の単価より、例え
ば今回、大幅にニューヨーク原油が下がるようであれば、なおかつ出光興産の各
スタンドへの卸値が下がるようであれば、それを基に、岐阜市民病院の設計金額
の範囲以内で、予定価格は決めている。
6
(12)予定価格と設計価格の差はほとんどない。契約課が予定価格を決めるが、厳密
に岐阜市民病院の方は設計を組まれており、ほぼイコールくらいの形で予定価格
になっている。
(13)岐阜市民病院は、大体2週間から3週間くらい前に設計するので、契約課が入
札でやるのはほとんど月末で、一番新しい指標も入ってくるので、その段階で、
例えば、岐阜市民病院が仮に 60 円だったら、その範囲以内で予定価格の設定を
するので、59 円 50 銭とかそのくらいの予定価格を作ったことはある。
(14)指名競争入札にしており、市内業者を対象としている。市内の業者で入札でき
る場合は市内の業者を指名するということである。15社あるので、その内から
12社を指名して去年はやっていた。十分競争は保たれる数であり、市内の業者
で入札はしている。
(15)市内業者というのは、地理的条件として地域的に市内にあれば市内という原則
で業者を選定している。
(16)大垣市民病院も指名競争入札である。
(17)大垣市民病院と岐阜市民病院は、1回あたりの納入量など全く同じ条件ではな
く、地域的な条件で実際に大垣市民病院の方が安く入っているが、岐阜市も入札
をした結果である。積算については、厳しく精査をしている。
(18)適正な手続きに基づいて入札を行っており違法ではないし、当、不当という判
断についても厳密な積算を行って入札を行っており、不当とは判断していない。
契約規則等に基づき契約を行っており、契約に関しては違法、不当ではないと考
える。
(19)大垣市役所、各務原市役所及び羽島市役所とは毎月情報交換はやっている。大
垣市役所よりも岐阜市役所の方が設計単価、予定価格が低かったこともある。岐
阜市の入札が若干遅れることがあるときは、それも参考にして予定価格にある程
度反映させることもあるが、今仮に8月のA重油の単価を決めようとすると、7
月の価格を参考にする。大垣との単価差について、大垣にはイビデンがあったり、
太平洋工業があったり、A重油の需要は大いにある。だから、地域的に需要はた
くさんある。スポットで取ってきて、スポットで入れるというようなことで、ど
うしても安くなるということは、大垣市の担当者から聞いたことはある。
(20)岐阜市に搬入させるA重油のステーションは、知多市と四日市市にある。
(21)前回の請求でも請求人は、法第2条第14項の最少の経費で最大の効果をあげ
るようにということをいっていたが、そうした法的な考え方は当然前提に考えて
おり、競争性を確保することによって価格を下げている。固定していた業者の入
替えをして、改善をして競争性を確保して、なるべく価格を下げるということは
やっている。
(22)A重油の調達ルートについて、岐阜市の場合は納入業者がメーカーへ発注し、
各メーカーの製油所(ステーション)から陸路で納品される。
また、大垣市も同様である。
7
第4
監査の結果及び判断
1 事実関係
(1)A重油について
A重油は、重油の中でも軽油に近い性状で、硫黄分の低い1種1号と、硫黄分
の高い1種2号の2種類に大別され、農耕機や漁業用の中小型船舶の燃料として
使用されるほか、工場やビル、ビニールハウスのボイラー・暖房などにも使用さ
れる。
1種1号は、硫黄分(Sulfer)が 0.5%以下とされ、LSA重油(Low
A
Fuel
Sulfer
Oil)とも呼ばれる。
1種2号は、硫黄分(Sulfer)が 0.5%以上 2.0%以下とされ、HSA重油(High
Sulfer
A
Fuel
Oil)とも呼ばれる。
(2)事務の流れについて
岐阜市民病院で予算に基づき、A重油購入の仕様書及び設計書を作成し、施行
決裁を受け、契約課に単価契約の入札及び契約締結事務を依頼する。
契約課では、岐阜市民病院からの依頼書に基づいて、契約方法と予定価格及び
指名業者を設定し入札を行う。入札後、落札業者と契約を締結し、契約書及び入
札関係書類一式を岐阜市民病院へ返却する。
岐阜市民病院では、契約単価に基づいてA重油を契約業者より購入し、支払い
を行っている。
(3)設計書について
ア
契約課からA重油単価の積算根拠について精査するよう依頼され、平成20
年度5月からは岐阜市民病院でより正確な積算を行なうように変更した。
また、他病院のA重油単価の動向を調査し、大垣市民病院のA重油単価も参
考に設計をしたが、6月の第1回の入札が不調に終わり設計の見直しを求めら
れた。さらなる精査が必要となり、周辺の病院の価格動向だけで設計するので
はなく、世界的な石油価格の高騰も少なからず影響があると考え、東京原油の
価格動向(原油単価のアップ率)も考慮に入れ A 重油単価の設計を行った。
イ 設計段階で他病院との比較はできない。市場価格はわかるが、他病院がいく
らで落とすかはわからない。だから、市場価格を参考にするしかないというこ
とである。
ウ
大垣市、各務原市及び羽島市とは毎月情報交換はしている。
大垣市よりも岐阜市の方が設計単価、予定価格が低かったこともある。
(4)単価契約について
ア 「単価契約」とは、一般にあらかじめ数量を確定することができないものに
ついて、単価を契約の主目的として、一定の期間を画して当該期間内において
供給を受けた実績数量を乗じて得た金額の代価を支払うことを内容とする契
約である。
ただし、予算超過のおそれがあるので、数量についてもあらかじめ予定を立
て当該経費の歳出予算の範囲内において、その給付を受けるようにする必要が
8
ある。
イ
平成19年度までは A 重油の単価契約依頼は2か月おき、または3か月お
きであったが、世界的な原油高騰により平成20年度から毎月単価契約依頼を
行ってきた。
(5)予定価格について
ア 「予定価格」とは、地方公共団体が契約を締結するに際し、その契約金額を
決定する基準として長があらかじめ作成する価格をいう。
法第234条第3項では、競争入札の場合には、契約の目的に応じ予定価格
の制限の範囲内で最高又は最低の価格をもって申込みをした者を、契約の相手
方とするのが原則とされている。
すなわち、地方公共団体の収入の原因となる契約については、予定価格を下
回る額で契約を締結することができず、支出の原因となる契約については、予
定価格を上回る額で契約を締結することができない。
予定価格の設定の趣旨は、競争入札の落札者の決定に当たり、長にその競争
入札に係る入札価格についての適否の判断をする余地を与えないで、あらかじ
め決定された予定価格を基準として、自動的に落札を決定することにより、競
争の公正性を確保しようとするものであるから、予定価格の決定は極めて重要
な意義を有しており、その決定は、常に厳正公平にされなければならない。
イ
予定価格の作成について、契約規則第20条において「競争入札に付する事
項の価格を当該事項に関する仕様書、設計書等によって予定し、その予定価格
を記載した書面を封書にし、開札の際これを開札場所におかなければならな
い。」と規定している。
また、予定価格の決定方法について、契約規則第21条において「予定価格
は、競争入札に付する事項の価格の総額について定めなければならない。ただ
し、一定期間継続してする製造、修理、加工、売買、供給、使用等の契約の場
合においては、単価についてその予定価格を定めることができる。予定価格は、
契約の目的となる物件又は役務について、取引の実例価格、需給の状況、履行
の難易、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮して適正に定めなければならな
い。」と規定している。
ウ
公共工事の場合は、国や県の積算資料・歩係表等に基づき積算するが、A 重
油等の石油製品は積算資料等がなく市場動向に左右されるため、これを参考と
することができないので、岐阜市民病院が独自で積算を行い、契約課がその積
算資料(設計書)を基に市場価格の状況を考慮し予定価格を設定する。
エ
昨年は、価格の変動が激しく、ニューヨークの原油市場、東京の先物原油の
グラフを毎日見ながら、昨年の途中から出光興産が毎週、値上げ、値下げの発
表をしていたので、そういうものも参考にしながら、岐阜市民病院の設計金額
の範囲以内で予定価格は決めていた。
オ
岐阜市民病院は、大体2週間から3週間くらい前に設計するが、契約課が入
札するのはほとんど月末で、一番新しい指標も入ってくるため、その段階で予
9
定価格の設定をするので、予定価格と設計価格の差は若干ある。
(6)入札について
ア 入札方法について、メンバーが固定化される弊害を避けるため、市内12社
の指名業者を毎月入れ替えて競争を促した。
イ
平成20年度は、価格の変動が激しく適正な単価契約を行うため毎月入札を
行った。
(7)納入価格について
ア 下半期の契約単価を単純平均で比較すると、7.15 円(税抜)大垣市民病院
が安い理由としては、大垣市民病院がある西濃地域には大手企業の工場等が多
くあるため需給関係によるものではないかと考えられる。
また、岐阜市民病院の1回の納入数量が 12kl に対し、大垣市民病院は 14kl
であるため、1回の発注数量及び納入回数が影響しているのではないかと考え
られる。
イ
羽島市及び各務原市の単価が本市よりも高い理由は、本市と比較して購入数
量及び1回の納入数量等の納入条件が異なるためではないかと考えられる。
(8)指示価格について
市場価格の状況及び今後の市場価格の動向等を、市内の主な石油元売の系列業
者と協議し指示価格を決定する。
また、近隣3市の指示価格も参考にしている。
「指示価格」とは、上限価格を示したものであり単価契約とは異なる。
(9)市長への手紙について
「他病院とのA重油単価の差は確実になくなってきた…」と回答した他病院と
は、前回の住民監査請求での請求人が調査対象とした病院が多治見病院であり、
多治見病院と比較検討することが適当と考えた。
多治見病院との比較では、平成19年度はほとんど岐阜市民病院より安かった
ものが、平成20年度の9、11、12月では岐阜市民病院の方が安くなってお
り、平成19年度の多治見病院との単価差に対し、平成20年度の同病院との単
価差が縮まった月が多くなっており、月平均単価を比較しても 7.084 円(10.2%)
から 2.378 円(2.9%)へと単価差は縮まっている。このことから平成19年度に対
し大垣市民病院との単価差はあまり変化がみられなかったが、多治見病院とのA
重油の単価差では縮まってきたことを、単価の差は少なくなってきたと解釈し
「単価差は確実になくなってきた」と答えた。
この点について、すべての他病院に対し「単価差がなくなった」というような
曖昧な言い方や誤解を招くような表現となったことについては訂正する。
2
関係人調査
法第199条第8項の規定に基づき、大垣市民病院に対し文書により協力を依頼
したところ、平成21年7月21日に以下の回答があった。
(1)予定価格の決定方法については、過去の実績と現在の物価情勢に基づき決定す
る。
10
(2)購入単価が安い理由については、市内業者10数社による指名競争入札を毎月
実施しているが、市内の激しい価格競争が反映され、価格を引下げていると考え
られる。
3
判
断
請求人は、岐阜市民病院において使用するA重油(JIS 1種1号)大型ローリー
1ℓ当たりの契約単価が、適当な単価であるかどうかを大垣市民病院の契約単価と
比較し、仮に岐阜市民病院が大垣市民病院の単価と同価格で購入した場合、下半期
で 6,268,500 円の差が生じるが、これは、法第2条第14項及び地財法第4条第1
項に違反し、違法な公金の支出に該当し、岐阜市長及びその関係者に同額の返還を
求めているが、この点について検討する。
法第2条第14項の規定は、地方公共団体がその事務を処理するに当たって準
拠すべき指針であり、地方自治は住民の責任とその負担によって運営されるもの
である以上、常に能率的かつ効率的に処理されなければならないとの趣旨である。
すなわち、「最少の経費で最大の効果を挙げる」ことが強く要請される。
したがって、同項はこの面での地方自治運営の基本原則を規定したものである。
また、地財法第4条の規定は、予算の執行面における基本原則を定めたもので
あり、同条第1項の規定は、法第2条第14項に掲げる「最少経費による最大の効
果」の原則を、予算執行上の立場から簡潔に表現したものということができる。
また、地財法第4条第1項で規定する「必要且つ最少の限度」の判定の基準は、
個々の経費について、個々具体的に判定されるべきであって、その判定に当たっ
ては、広く社会的、政策的ないし経済的見地から総合的にこれをなすべきである
とされている。(名古屋地方裁判所 平成元年10月27日判決)
そこで、今回の請求についてみると、確かに平成20年10月から平成21年3
月までの岐阜市民病院におけるA重油の購入単価は、大垣市民病院と比較した場合
高いことは否定できない。
しかし、結果として購入単価を比較することはできるが、設計段階において大垣
市民病院などの他病院の予定価格を、同月に参考とすることはできない。
また、岐阜市民病院の1回の納入数量が 12kl に対し、大垣市民病院は 14kl であ
るため、発注数量及び納入回数が価格に影響しているとも言える。
加えて、購入単価については、大垣市民病院がある西濃地域には大手企業の工場
等が多くあるため需給関係による要因が想定され、既述の大垣市民病院への調査の
結果からも、大垣市内の激しい価格競争が反映され価格を引下げているとも考えら
れる。このことは、予定価格において、岐阜市民病院の方が大垣市民病院よりも低
かった月もあったが、実際の購入単価は岐阜市民病院の方が高くなったことからも
伺われる。この結果からも、予定価格の設定と契約単価に相関関係があるとは一概
には言えないものである。
つまり、地域ごとの需給関係等による価格の差異が存在すること、さらには、先
に述べたとおり「必要且つ最少の限度」の判定は広く総合的にこれをなすべきであ
り、したがって、これらのことを総合して判断すれば、単に大垣市民病院との単価
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の比較結果のみをもって、ただちに前述した地方自治運営の基本原則を定める法第
2条第14項及び地財法第4条第1項の規定に違反するとの請求人の主張は採用
することができない。
以上のことから、返還請求には理由がないものと判断する。
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結
論
以上の次第で、本件財務会計行為に違法性はなく、請求人の主張は理由がないも
のと判断し、本件請求を棄却する。
よって、岐阜市長及び岐阜市民病院において使用するA重油JIS規格品(1種
1号)大型ローリー1ℓ当たり燃料単価契約事務に従事した岐阜市職員に対する措
置の必要は認められない。
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