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第 14 講 相互作用:地球と生命と
地学 小出良幸 第 14 講 相互作用:地球と生命と http://ext-web.edu.sgu.ac.jp/koide/chigaku/ ▼ 1 2 3 4 E-mail: [email protected] シアノバクテリア→ストロマトライト 20 億年前頃 大量のストロマトライトの発生 相互作用とは 系 開放系と閉鎖系 系の階層性 生命と地球 ▼ 生命と地球の相互作用の証拠 1 原始大気のモデル:太陽組成原始大気( H2、He、少量の CH4(メタン) 特徴:還元的ガス 2 衝突脱ガスモデル 特徴:酸化的ガス 3 隕石 4 惑星大気の比較 5 原始大気の変遷 大量の酸素の形成 6 酸素の量産の証拠 鉄の酸化→サビ→海底で沈殿→鉄鉱石 35 億年前~17 億年前 大量の縞状鉄鉱層 ▼ 生命と地球の相互作用のプロセス 1 大気の組成は変化した 表 金星 惑星の大気組成 火星 地球 圧力 92 MPa 700 Pa 0.1013 MPa CO2 96.4 % 95.32 % 0.037 % N2 3.4 % 2.7 % 78 % H2O 0.14 % 0~0.03 ppm 0.483 % Ar 18.6 ppm 1.6 % 0.934 % O2 69 ppm 0.13 % 20.9 % 5~10 MPa 海に 30 MPa 2 N2 は、そのまま 3 H2O は、どこへ行ったのか 海に液体として蓄えられている。 4 CO2 は、どこへいったのか 石灰岩として、地殻へ蓄えられている。 ・二酸化炭素の固定:生物の関与以前 ・二酸化炭素の固定:現在 5 O2 は、どこから来たのか ・酸素の形成 縞状鉄鉱層(西オーストラリア、ハマスレイ) 地学 小出良幸 第 14 講 相互作用:地球と生命と http://ext-web.edu.sgu.ac.jp/koide/chigaku/ E-mail: [email protected] ▼ 相互作用とは 1 系 系とは、何らかの共通性をもった要素の集合とみなせる。個々の要素ごとにもさまざまな関係がある。 いろいろな関係がある。 しかし、集合全体として考えたとき、その系は、単に外部から一方的に影響を受けるだけでなく、外部 に対して多大なる影響を与えることもある。 たとえどんなにその構成要素のひとつひとつが小さくても数と時間を多くすることで、量から質への変換 をおこなうことができる。 2 開放系と閉鎖系 系が外部と関係があるときは、開放系で関係がまったくないときは、閉鎖系という。閉鎖系とは、外部 とのやり取りがなく、内部だけで完結しているということである。そのような系外とのやりとりを、相互 作用という。 「この世」のもので、閉鎖系と開放系にはどのようなものがあるのか。 論理的には、閉鎖系は、存在しない。つまり、 「この世」を構成するさまざまな「要素」自体は、閉じて おらず、開放系である。 たとえば、重力を考えると、まわりのものと何らかの関係が生じる。重力から孤立した存在はありえない。 ただし、 「この世」にひとつだけ、重力からも孤立した存在がある。 「この世」自身、 「宇宙」は系として 閉じている。 3 系の階層性 ある目標とする対象物が、その外部と相互作用をすることを考えるとき、ある階層性の中に位置づけら れているべきである。 例えば、対象物を生命全体とすると、人間との相互作用を考えると、人間を含む外部の系には、 他の生物、 海洋、地殻、大気 地球 太陽系 銀河系 宇宙 と、その規模を拡大していく。そして、規模が拡大していくということは、その外部の系が、より上位の 階層になっていくということを示している。 階層が上がるにつれて、その影響は一般に少なくなっていく。 4 生命と地球 この講義では、生命という系を取り上げ、相互作用を及ぼす外部の系として、 海洋、地殻、大気、地球全体、太陽系 などを考えていく。 ▼ 生命と地球の相互作用の証拠 1 原始大気のモデル:太陽組成原始大気(一次大気、原始太陽系星雲ガス) 地球がもっていたもともとの大気は、どのようなものか。 太陽系形成史から考えて、太陽系形成初期の頃、太陽系全体は、分子雲とよばれる宇宙に一番ありふれ たガスの成分である。H2 と He を主成分とするガスが覆っていたと考えられる。 H2、He、少量の CH4(メタン) 根拠 ・観測されている惑星形成場に、このようなガスが充満している ・木星や土星、天王星、海王星の大気 などがある。 地球の大気も、このような大気であった可能性がある。太陽の初期の激しい活動期に、この大気は吹き 飛ばされる。太陽系全体から、原始大気が吹き飛ばされる。 特徴:還元的ガス 2 衝突脱ガスモデル ある種の隕石(コンドライト)が惑星の素材である。その中に含まれているガスの成分(揮発成分)が、 大気となった。という考えである。 特徴:酸化的ガス 3 隕石 隕石には、 CO2、N2、H2O を主とする成分が含まれている。 このような成分が隕石衝突時にガスとして開放され、原始の大気となったと考えられる。 根拠 ・地球を作った素材になる隕石のデータ ・惑星の大気の比較データ である。 4 惑星大気の比較 表 惑星の大気組成 金星 火星 圧力 92 MPa 700 Pa CO2 96.4 % 95.32 % N2 3.4 % 2.7 % H2O 0.14 % 0~0.03 ppm Ar 18.6 ppm 1.6 % O2 69 ppm 0.13 % 大気を比べると、金星と火星は似ている。地球だけが異質であると考えられる。 5 原始大気の変遷 太陽組成原始大気がもともとあったが、太陽初期の活動の活発なときに、その大気は吹き飛ばされて衝 突脱ガスが次におこったと考えられている。 以上のような根拠から、地球の原始大気は、現在のものとは違っていたと推定できる。 ▼ 生命と地球の相互作用のプロセス 1 大気の組成は変化した かつては、CO2、N2、H2O を主成分で、O2 が微量成分だったのが、現在の N2、O2 を主成分で、CO2 が微量成 分とする大気に変化した。 表 惑星の大気組成 金星 火星 地球 圧力 92 MPa 700 Pa 0.1013 MPa CO2 96.4 % 95.32 % 0.037 % N2 3.4 % 2.7 % 78 % H2O 0.14 % 0~0.03 ppm 0.483 % Ar 18.6 ppm 1.6 % 0.934 % O2 69 ppm 0.13 % 20.9 % 5~10 MPa 海に 30 MPa 問題の解決の方法 ・CO2、H2O がどこへ行ったのか。 ・O2 はどこから来たのか。 2 N2 は、そのまま N2 は昔も、今も、存在する。もともと、あったもの。 3 H2O は、どこへ行ったのか 約 40 億年頃に、液体の水となって、以後、海(海洋)に液体として蓄えられている。堆積岩がいつの時 代にも形成されていることから、海があったことがわかる。 H2O が液体として地球に存在できるのは、もともと地球の公転軌道が、太陽から水の存在できるほどの位 置にいたからである。 同じ位置に火星もいたのだが、火星はかつて海洋が存在したのだが、今ではない。それは、火星の大き さが小さいかったため、大気を引き付けておく引力が弱かったからである。 地球は、ほどよい位置に、ほどよい大きさで形成されたからである。 4 CO2 は、どこへいったのか 石灰岩として、地殻へ蓄えられている。 ・二酸化炭素の固定:生物の関与以前 大気中の二酸化炭素:気体 ↓ 海水中に溶ける:炭酸イオン ↓ 平衡状態 炭酸塩として化学的に沈殿 ↓ 時間による効果でたくさん蓄積 地層となる ↓プレートテクトニクスで移動 大陸にあがったものは長期間固体として保存される CO2 は、大陸の岩石含まれているカルシウムを、雨が溶かし、川が、海に運び、化学的反応で、CaCO3 と して沈殿(固体化)し、プレートテクトニクスによって、石灰岩として大地に保存されてきた。 ・二酸化炭素の固定:現在 かつては、炭酸塩として化学的に沈殿していたものが、生命発生後は、生物の骨格など材料(サンゴ礁) として固化されることにより炭素の固定のスピードが速まった。 地殻と大気、海洋、生物、プレートテクトニクスの連携によって CO2 の気体から固体への変換が絶え間な く続けられている。 5 O2 は、どこから来たのか 生物がつくった。 ・酸素の形成 シアノバクテリア→ストロマトライト 20 億年前頃 大量のストロマトライトの発生 ストロマトライトの地層(カナダ北西準州イエローナイフ) 生きているストロマトライト(西オーストラリア、ハメリンプール) 大量の酸素の形成 6 酸素の量産の証拠 鉄の酸化→サビ→海底で沈殿→鉄鉱石 35 億年前~17 億年前 大量の縞状鉄鉱層 縞状鉄鉱層(西オーストラリア、ハマスレイ)