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不祥事防止に向けて

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不祥事防止に向けて
不祥事防止に向けて
我 孫 子 市 消 防 本 部
平成26年11月
◇ 策定にあたって ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
公 務 員 に よ る 不 祥 事 が 日 々 マ ス コ ミ 等 に 報 道 さ れ 、倫 理 観 の 欠 如 と 職
業 意 識 の 希 薄 化 が 叫 ば れ て 久 し い 中 、当 市 消 防 行 政 の 信 頼 を 根 幹 か ら 揺
るがす事件が出来しました。
市 消 防 職 員 が 、卑 劣 な 犯 罪 と し て 社 会 全 体 で 撲 滅 を 目 指 し て い る い わ
ゆ る「 オ レ オ レ 詐 欺 」の 受 け 取 り 役 を 行 う と い っ た 高 齢 者 を 騙 す 反 社 会
的 な 詐 欺 犯 罪 の 加 担 者 と し て 逮 捕 さ れ た こ と 、ま た 、違 法 な 賭 博 行 為 を
行 っ た こ と は 、消 防 に 対 す る 市 民 か ら の 信 頼 を 大 き く 失 う こ と に な り ま
した。
我 孫 子 市 長 は 、度 重 な る 市 消 防 職 員 の 不 祥 事 を 防 止 す る た め 、平 成 2
6年8月29日我孫子市消防審議会に不祥事防止の方策について諮問
し 、こ れ を 受 け て 消 防 審 議 会 で は 、不 祥 事 防 止 の 取 り 組 み と 不 祥 事 を 起
こ さ な い 体 制 づ く り に つ い て 審 議 検 討 を 重 ね 、市 長 に 答 申 が 提 出 さ れ ま
した。
市 消 防 本 部 で は 、答 申 に 沿 い 、市 消 防 職 員 が 法 令・規 範 を 遵 守 す べ き
全体の奉仕者として一様に襟を正し、
「不祥事を起こさない」
「許さない」
「 見 逃 さ な い 」と い う 強 い 決 意 を 一 人 ひ と り が 持 ち 、市 民 か ら の 信 頼 回
復のための行動指針を策定するものです。
【目
◇
次】
策定にあたって
第一章
不祥事はなぜ起こったか
1
不祥事防止のための取り組みと背景
・・・・・・・・・・
1
2
不祥事の概要と検証
・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
(1)賭博事案
(2)詐欺事案
(3)不祥事はなぜ起こったか
(4)不祥事根絶アンケート調査結果
3
ア
不祥事の発生原因についてどう考えるか
イ
不祥事再発防止の対策として何をすべきか
現状の取り組みにおける問題点・課題
・・・・・・・・・・5
(1)組織としての問題点
ア
管理監督者の問題点
イ
職員の意識、職場風土の問題点
ウ
その他の問題点
(2)問題点から抽出した課題
ア
倫理・規範教育の不足
イ
ストレス対策の不足
第二章
不祥事の再発を防止するために
1
なぜ不祥事はなくならないか
2
不祥事防止のために必要な視点
(1)自分のこととして捉える
(2)原点に帰る
(3)取り組み続ける
・・・・・・・・・・・・・
7
・・・・・・・・・・・・
7
3
不祥事防止のための心構え
・・・・・・・・・・・・・・・
9
(1)職員としての心構え
(2)管理監督者の心構え
(3)不祥事の兆候への対応
4
今後取り組むべき対策
・・・・・・・・・・・・・・・・・12
(1)倫理教育の強化
(2)ボトムアップによる不祥事防止対策
(3)悩みを相談しやすい職場環境の整備
(4)規範意識を高めるための体制の強化
5
不祥事防止のための重点行動
・・・・・・・・・・・ ・・13
(1)コンプライアンスの徹底
ア コンプライアンス月間の設定
イ 不祥事防止をテーマにしたミーティングの実施
ウ 個人面談の促進・強化
エ 自己表明、掲示物等による遵法意識の強化徹底
(2)職員教育の強化と職場環境改善への取り組み
ア 階級・年齢層に合わせた教育研修
イ メンタルヘルスへの取り組み
ウ 職員から消防長への直通メールボックスの設置
6
不祥事を起こさない体制づくり
・・・・・・・・・・・・16
(1)内部委員会の設置
(2)悩み相談・服務規律担当者の任命
◇ これから
第一章
不祥事はなぜ起こったか
1 不祥事防止の ための取り組みと背景 ・・・・・・・
平 成 2 6 年 8 月 2 9 日 、我 孫 子 市 長 は 、度 重 な る 消 防 職 員 の 不 祥 事
に 対 し「 不 祥 事 防 止 の 方 策 に つ い て 」と し て 不 祥 事 防 止 計 画 の 策 定 と
不祥事を起こさない体制づくりについて 消防審議会に諮問しました。
諮 問 に 対 し 、消 防 審 議 会 か ら は 、不 祥 事 が 引 き 起 こ さ れ た 要 因 や 今
後 取 り 組 む べ き 課 題 に つ い て の 提 言 に 加 え 、防 止 対 策 を 講 じ る に あ た
っ て の 具 体 的 な 意 見 や 提 言 、留 意 事 項 を 付 し た 答 申 書 が 提 出 さ れ ま し
た。
我 孫 子 市 消 防 本 部 で は 、職 員 の 服 務 規 律 の 保 持 と 法 令 遵 守 に つ い て
は 、例 規 に よ る 規 定 の 他 、消 防 長 あ る い は 所 属 長 に よ る 指 導 に よ り 励
行され、職場環境を維持、運営してきました。
こ の こ と は 、公 共 の 福 祉 の 増 進 と 市 民 の 安 全 安 心 を 担 う 消 防 組 織 と
し て 、指 揮 命 令 に よ り 共 同 で 災 害 に 立 ち 向 か う 消 防 人 の 基 本 と す る も
っ と も 重 要 な 要 件 で あ り 、ま た 各 隊 員 が 共 同 作 業 に お け る 協 調 心 を 培
う大切なものであります。
し か し な が ら 、当 市 消 防 も 発 足 以 来 、5 0 年 が 経 過 す る 過 程 に お い
て 、当 然 の ご と く 職 員 数 も 増 加 し 、経 済 成 長 に よ る 多 様 な 社 会 的 変 化
を 背 景 に 、職 員 個 々 の 価 値 観 や 職 務 に 対 す る 意 識 は 、大 き く 変 わ っ て
きています。
消 防 職 員 の 勤 務 体 制 に は 、事 務 職 を 主 と す る 毎 日 勤 務 と 現 場 活 動 を
主 と し 2 4 時 間 拘 束 を 受 け る 隔 日 勤 務 の 2 種 類 が あ り 、隔 日 勤 務 職 員
に は 土 曜 日・日 曜 日 に 当 た る 週 休 日 が 割 り 振 ら れ 、か つ 夜 間 勤 務 明 け
の 非 番 日 が 与 え ら れ る な ど 、2 4 時 間 拘 束 さ れ る 職 員 の 健 康 管 理 へ の
配 慮 が 施 さ れ て い ま す が 、1 8 歳 か ら 6 0 歳 ま で の 勤 務 者 間 の 意 思 の
疎 通 、業 務 に 対 す る 取 り 組 み 姿 勢 や 考 え 方 の 相 違 等 、お 互 い が ス ト レ
スを抱え特殊な勤務を遂行していることも事実であります。
発 生 し た 不 祥 事 2 件 は 、倫 理 観 や 規 範 意 識 の 欠 如 か ら 起 こ っ た 非 番
日 に お け る 信 用 失 墜 行 為 で あ り ま す が 、職 場 内 に お け る 意 思 疎 通 の 形
1
骸 化 、職 務 へ の 忠 誠 心 の 希 薄 化 、服 務 規 律 遵 守 へ の 意 識 低 下 も 考 え ら
れます。
現在の消防組織に散見される服務規律を主とした遵法意識の希薄
化 を 食 い 止 め 、職 務 に 対 す る 誇 り と 職 務 に 専 念 す る 義 務 を 全 職 員 が 危
機 感 を も っ て 強 く 意 識 す る と と も に 、内 在 す る 多 く の 発 生 因 子 を 分 析
排 除 し 、一 日 も 早 い 市 民 か ら の 信 頼 回 復 の た め 、よ り 実 効 性 の あ る 不
祥事防止の取り組みを実践します。
2 不祥事の概要と検証 ・・・・・・・・・・・・・
(1)賭博事案
概
要
平 成 2 6 年 1 月 中 旬 、神 奈 川 県 の ギ ャ ン ブ ル 場 で バ
カラ賭博を行ったもの。
処分内容
懲戒減給処分(10分の1、1月)
(2)詐欺事案
概
要
平成26年3月27日いわゆる「オレオレ詐欺」の
受け取り役として東京都内で70~80歳代の女性
から詐取金を受け取ったもの。
処分内容
懲戒免職処分
(3)不祥事はなぜ起こったか(発生原因)
不祥事事案2件については、勤務外の非番日における事案で す
が、公務員、消防職員としての倫理観の欠如、規範意識の欠如が
大きな原因と言えます。
原因を構成する要因としては、家庭や、職場、あるいは友人関
係などの問題があると考えられますが、いずれの事案にも言える
ことは、非番日の解放感から、公務員として社会に対し24時間
必要な倫理観を忘れてしまったことにあると考えられます。
2件の事案は、消防職員以前に社会人としての経験の浅さから
2
一時的な射幸心に負け、その代償の大きさを測り知ることへの配
慮と知識が欠落していたものです。
組織的な問題としては、効率的な業務執行に対する施設 や装備
の充実強化の他に、職員がその能力を十分発揮できる職場環境の
構築や管理体制の充実、さらには種々の職員教育研修の実施等、
組織として行うべき取り組みは多様に存在しますが、社会的な傾
向や世代を反映した若い職員の考え方の変化に応じた教育への対
応不足も一因として挙げられます。
また、職員個々が抱える種々のストレスによる言動や行動にお
ける何らかの変化を、24時間勤務を同じくする上司、同僚、部
下が見抜けなかったこと及び何でも打ち明けられる職場環境を組
織として構築できていなかったことも要因として挙げられます。
(4)不祥事根絶アンケート調査結果
市消防本部では、不祥事発生後、再発防止のため市消防職員を
対象にアンケート調査を実施しました。
不祥事の発生原因についてや不祥事の再発防止のために、何を
すべきか問い、集計された結果から職員個人、組織、職場風土に
どのような問題があったのか、その問題を課題としてどう改善し
ていくべきかを分析しました。
3
ア 不祥事の発生原因についてどう考えるか
その他 5%
業務の仕方 1%
職場風土
職場風土
14%
管理体制 7%
管理体制
人事制度
人事制度 6%
個人の資質
個人の資質 67%
業務の仕方
その他
イ 不祥事再発防止の対策として何をすべきか(単位:件)
0
10
20
職場環境の整備
19
研修会
19
30
40
50
48
モラルの向上
12
コミュニケーションの推奨
13
継続的な調査・対応
金銭面での対応
2
採用前対応
2
厳罰化・処罰の明確化
3
その他
3
※ 複 数 回 答 及 び自 由 記 載 と し て い ます 。
4
60
3 現状の取り組みにおける問題点・課題 ・・・・・
職員の不祥事が二度と起こらないようにするためにはその事案を
当 事 者 、担 当 部 署 職 員 だ け で な く 消 防 本 部 全 体 の 問 題 と し て 捉 え 、再
発防止の方策を執る必要があります。
今 回 の 不 祥 事 を 分 析 す る と 、二 つ の 大 き な 原 因 と し て 倫 理 観 の 欠 如 、
規 範 意 識 の 欠 如 が 考 え ら れ 、こ れ ら を 確 実 に 管 理 監 督 し 、チ ェ ッ ク を
怠らない職場環境づくりが重要となります。
(1)組織としての問題点
ア 管理監督者の問題点
・ 業務の進行管理、点検が不十分
・ 危機管理意識の希薄さ、不祥事に対する意識の低さ
・ 職員面談や勤務中の部下の動静に関心が低い
・ 全般にわたる管理者としての指導不足
イ 職員の意識、職場風土の問題点
・ 公務員倫理の低下
・ 業務に対する緊張感、不祥事に対する危機感不足
・ 当事者意識の欠如
・ 不祥事が職場や家族等に与える代償への認識不足
・ 他職員が行う仕事に対する関心の希薄さ
・ 職 務 (担 当 )の 長 期 間 の 固 定 化
・ 職員の不審な行動に対処できない職場環境
・ 職員間の相互牽制機能の不全
・ 職場内のコミュニケーション、情報共有の不足
・ 部下への状況に応じた対応への配慮不足
ウ その他の問題点
・ 上司等への報告・連絡・相談する体制が不十分
・ 不祥事発生時の対応や不祥事防止のために職員一人ひとりが
取り組むべき事項や注意点がマニュアル化されていない
・ 不祥事概要や再発防止等の情報提供が不十分
5
(2)問題点から抽出した課題
ア 倫理・規範教育の不足
これまでの職員教育の体系の中でも公務員倫理に関する研修
は行われていたが、不十分であった。
特 に 、若 手 職 員 に 対 し て 公 務 員 と し て 公 私 に わ た る 規 範 意 識 を
常に保持していくための十分な研修、教育計画がなかった。
イ ストレス対策の不足
人 事 異 動 に よ る 職 場 環 境 の 変 化 や 、業 務 負 担 の 偏 重 等 ま た 、階
級により指揮命令を受任する特殊な職場であることによる職場
のストレスを軽減しようとする施策が不足していた。
ま た 、ス ト レ ス を 緩 和 す る た め に 職 場 に お い て 気 軽 に 相 談 で き
る 人 間 関 係 の 構 築 が 不 足 し て お り 、且 つ 、精 神 衛 生 を コ ン ト ロ ー
ルし相談に乗れる組織的な体系が構築されていなかった。
6
第二章
不祥事の再発を防止するために
1 なぜ不祥事はなくならないのか ・・・・・・・・・
消 防 本 部 で は 、こ れ ま で 不 祥 事 が 生 じ た 際 に は 、そ の 都 度 、職 員 に
対 し 不 祥 事 再 発 防 止 の た め の 啓 発 等 を 行 い 、法 令 遵 守 違 反 に つ い て 厳
し い 処 分 で 対 応 す る 旨 、周 知 徹 底 を 行 っ て き ま し た が 不 祥 事 が 繰 り 返
される事態となっています。
こ う し た 現 状 に つ い て 、こ れ ま で の 取 り 組 み を 振 り 返 り 、整 理 し た
結果次のような要因があげられました。
<個人的要因>
・ 倫理観の欠如
・ 職員としての自覚・誇りの希薄化
・ 自分の行為とそれがもたらす結果についての認識や想像力不足
・ 多くの職員の当事者意識の欠如化(他人ごと)
<組織的要因>
・ 不祥事発生時の応急的な対応と取り組みに対する「やらされ感」
の蔓延
・ 職場等における指導・啓発のマンネリ化、形骸化
・ 職場でのコミュニケーション不足や職員のプライバシーへの遠
慮
2 不祥事防止のために必要な視点・・・・・・・・・・
上 記 の 要 因 を 踏 ま え 、不 祥 事 を 防 止 す る に は 、す べ て の 職 員 一 人 ひ
と り が 不 祥 事 を 他 人 事 で は な く 自 分 の こ と と し て 捉 え 、不 祥 事 防 止 に
向 け て 主 体 的 に 取 り 組 む と と も に 、そ の 取 り 組 み の 機 運 を 組 織 と し て
高 め て い け る 組 織 風 土 の 構 築 が 必 要 で す 。ま た 、最 も 重 要 な こ と は 取
り 組 み を 一 過 性 の も の と せ ず 、改 善 し な が ら 継 続 し て い く こ と が 必 要
です。
こ の た め 、今 後 不 祥 事 防 止 に 向 け 、次 の 視 点 を も っ て 取 り 組 ん で 行
くこととします。
7
(1)自分のこととして捉える
不祥事を許さず高い意識で業務を遂行するためには、一人ひと
りが不祥事を他人事ではなく自分のこととして向き合い、様々な
取 り 組 み の 当 事 者・担 い 手 で あ る と の 認 識 を 持 つ こ と が 大 切 で す 。
また、不祥事防止のためには各職場や組織全体で取り組む必要
がありますが、管理監督を強化するだけでは職員が委縮してしま
い、良い仕事も良好な人間関係も構築できなくなり組織全体の不
祥事防止の機運の目を摘んでしまうことにもなりかねません。
職員が当事者意識をもって主体的に取り組み、職員一人ひとり
の思いを職場がしっかりと受け止め、組織としても「自分たちの
こと」として不祥事防止に取り組むため、職員間のコミュニケー
ションを密にし、遠慮なく相談や意見交換ができる風土を組織全
体で作っていくことが大切です。
(2)原点に帰る
私たち職員にとっての成果とは、市民のためにより良い行政サ
ービスを提供することです。私たちの仕事はたいへん誇らしくや
りがいがあるものですが、市民からの信頼なくして仕事は成り立
たず、その信頼が失われれば、不祥事が起きた職場のみならず市
役所全体が誇りを持つことができなくなります。
また、より良い仕事をするには家族、友人、上司、同僚、部下
などの支えが欠かせませんが、不祥事を起こせば、支えてくれた
大切な人を傷つけることになります。
このため、一人ひとりが消防職員であることに誇りを持って、
市民のために職務を遂行し、充実した日々を送るために、そして
大切な人を守るためにも、職員自らが消防職員としての原点に帰
り、定期的に振り返ることが大切です。
8
(3)取り組み続ける
どのような素晴らしい取り組みも、継続していかなければ意味
がありません。何かを始める時と同様に、続けていくことにもエ
ネルギーは必要ですが、一歩一歩取り組み続けていくことが良い
結果を生み出すこととなります。
また、その一方で,漫然と同じことを繰り返すだけでは 、慣れ
が生じ形骸化してしまいます。中には、取り組むこと自体が目的
となってしまい、そもそも何のために取り組んでいるのかという
本来の目的が曖昧になってしまうことも少なくありません。
このため、現状維持で満足せず、それまでの取り組みについて
見直しを行い、必要に応じて修正を加えることにより、常により
良いものを目指して進化・発展させていくことが 重要です。
3 不祥事防止のための心構え・・・・・・・・・・・
(1)職員としての心構え
不祥事を防止するためには、まずは職員一人ひとりが、そのた
めの心構えをしっかりと持つ必要があります。
心が変わることで行動が変わり、行動が変わることで組織が変
わっていきます。心構えを正し、自分自身を律することが、不祥
事を起こさず、不祥事を起こさせない消防本部をつくる第一歩に
なります。
<職員としての心構え>
・ 市民のために働いていることを忘れない
・ 公務員の服務規律を常に意識する
・ 不正や誤りを見逃さないように、日常的に問題意識を持つ
・ 市民の立場で考え応対する
・ 服務規律に基づき自分自身を律する(心、態度、行動、生活 等)
・ 問題解決のために主体的に行動する
・ 不祥事防止は自分自身のためでもあることを意識する
9
(2)管理監督者の心構え
管理監督者の仕事には、職務として人事管理、業務管理、予算管理そし
て危機管理があります。
危機管理の基本は、身の回りで起こっていることに「気づくこと」がで
きるかという点にあります。この「気づくこと」ができるかどうかの違い
は、問題意識があるかないかの違いであり、常日頃から、起こる可能性の
ある不祥事を想定し、危機意識を持つことによって、不祥事の兆候に気づ
くことができるようになります。
自らの職場で想定される不祥事について問題意識を持ち、それらを防止
するための対策を講じ、形骸化しないように継続していくことが、不祥事
の防止につながります。不祥事防止の鍵は、職場を管理し、職員の意識を
左右する管理監督者が握っていると言えます。
<管理監督者の心構え>
・ 不祥事に対する危機感を日常的に持つ
・ 不祥事の前触れとなる小さな兆候を見逃さない
・ 日頃から考えられる不祥事を想定し、対策を講じる
・ 他の自治体の不祥事を教訓とする
・ 業務における慣行等について、根拠等を確認する
・ 業務の点検や進行管理に十分に留意し、決裁や報告が上がってくる前の
段階についてもしっかりと目を配る
・ トラブルが予見される業務については、必ず複数の職員が関わるような
体制で実施する
・ 風通しの良い職場をつくるよう心掛ける
・ 上司の意識が部下の意識を左右することを忘れず、率先垂範に努める
・ あいさつや積極的な声掛けなど、部下職員が相談しやすい雰囲気をつく
る
・ 職員一人ひとりとの会話の機会を大切にする
・ 職員の勤務態度や言動などの変化に気を配る
・ 職員の市民に対する接遇に留意し、市で一番親切な窓口を目指す
10
(3)不祥事の兆候への対応
不祥事が発生するまでには、様々な多くの兆候があります。
これらの兆候は、単体ではあまり目立たず気付かなかったり、あるいは
気付いていても「まさか不祥事はないだろう」と楽観視したりすることも
多いのが事実です。
しかし、こうした小さな兆候が積み重なって、大事を招くこととなりま
す。上司、同僚、部下の行動や言動の変化に気を配り、不祥事の前に発生
している小さな兆候に対応することが不祥事の防止につながることとな
ります。
<不祥事の兆候となる個人の言動・行動等の例>
・ あいさつをしない
・ 欠勤、遅刻
・ 名札の未着用、身だしなみの乱れ
・ 電話の応対で名乗らない
・ 書類等が乱雑に放置されている
・ 不機嫌な応対、乱暴な言葉づかい
・ 居眠り、無断離席
・ 仕事に影響するほどの飲酒
・ 遊興・浪費による借金等
<不祥事が生じやすい職場環境等の例>
・ 管理監督者の怠慢
・ 同僚の無関心(相互牽制機能の不全)
・ コミュニケーションや情報共有の不足
・ 緊張感、危機感の欠如、士気の低下
・ チェックが働く体制や手順の欠如
・ チェック体制やマニュアルの形骸化
・ 一人の職員への役割の集中
・ 職務の固定化によるブラックボックス化
11
4 今後取り組むべき対策 ・・・・・・・・・・・
不 祥 事 の 再 発 防 止 に つ い て 、消 防 組 織 が 取 り 組 む べ き 対 策 と し て 特
に次の4つの項目を挙げます。
(1)倫理教育の強化
現行の教育訓練計画は、倫理教育が不足していることから、こ
れを独立した項目として位置づけ、計画の見直しを行う必要があ
る。
内容的には、公務員倫理以外にもインターネットの危険性や飲
酒に関する教育等、社会人として必要な規範を盛り込む必要があ
る。また、今回の不祥事も含めて具体的な事例を題材とすること
も有効であり、不祥事発生によって本人は元より多くの機関、組
織家族等に代償が伴うことを周知させることも重要である。
教育研修の基本的な考え方として、研修は、新規採用時に行う
ほか昇任や異動の時期を捉え、継続的に実施し規範意識を保持す
る。
手 法 と し て は 、講 師 対 受 講 者 と い う 画 一 的 な 方 法 だ け で は な く 、
研修内容に応じたグループ討議を行う等、職員が常に主体的に考
える場として設定し、所属長は、研修結果を報告させる等職員が
どのように考えているのかを把握する。また、役割、職責を明確
に理解させるため階級別、職名別に実施することも研修効果を高
める一手法として注力すべきである。
(2)ボトムアップによる不祥事防止対策
組織内に不祥事防止の意識を根付かせるためには、トップダウ
ン の 通 達 だ け で は な く 、職 員 一 人 ひ と り が 自 分 の 問 題 と し て 捉 え 、
自ら参加する形で考えていくボトムアップの仕組みが必要である。
具体的には、活発な意見が出るよう各所属で少人数、あるいは
若手中心でグループを作るなど、職場環境に応じた実効性のある
対 策 を 話 し 合 い 積 極 的 に 実 践 す る 。各 職 場 に お け る 対 策 を 集 約 し 、
それを基に組織全体としての行動方針と位置づけ、検証及び内容
の見直しを定期的に実施するものとする。
12
(3)悩みを相談しやすい職場環境の整備
職員の私生活における問題にすべて対処するのは難しいが、悩
み等を気軽に相談できる職場環境を作ることで、問題解決に役立
てることはできる。職場の人間環境の中でコミュニケーションの
増進を図る方策を打ち出すとともに、悩みの相談を受け入れる機
会の設定や窓口の開設などによって、職員の適切なストレス解消
をサポートする。
また、職場内に限ることなく外部機関による窓口を紹介し、職
員が気軽に相談できるよう配慮する必要がある。
一方、特定の部署に負担が偏重しないよう業務のバランスに配
慮し、日常的に協同しやすい職場づくりを推進して、職員が仕事
上の悩みを相談しやすい雰囲気を醸成することが 大切である。
(4)規範意識を高めるための体制の強化
各職場において、服務規律をはじめ、勤務態度について定期的
にチェックを行うことで、規範意識及びコンプライアンスの強化
を図る必要がある。
また、このことにより業務改善の意識づけを行い、業務の精度
を向上させることで、職業意識の高揚を図ることが大切であり、
このことにより公務員であること、消防職員であることの自覚と
誇りを保持させ、規範意識を高める。
5 不祥事防止のための重点行動 ・・・・・・・・・・
(1)コンプライアンスの徹底
ア
コンプライアンス月間の設定
コンプライアンス月間を設定し、職員一人ひとりが自分の
「 心・行 動・態 度・生 活 」を 見 直 し 、原 点 に 帰 り 、公 務 員 と し て
の倫理行動を再認識する。
ま た 、自 己 点 検 の 各 チ ェ ッ ク ポ イ ン ト に 基 づ く「 不 祥 事 防 止 チ
ェ ッ ク リ ス ト 」を 作 成 し 、こ の リ ス ト を 全 職 員 が 自 己 チ ェ ッ ク し 、
13
地方公務員法、服務規程等の法令、社会規範の遵守を再確認し、
職員としての自覚、服務規律を確保する。
所 属 長 は 、逐 次 チ ェ ッ ク 状 況 を 確 認 し 、問 題 と 思 わ れ る 場 合 は 、
面談を実施し、その結果を上司に報告し改善に努める。
イ
不祥事防止をテーマにしたミーティングの実施
各 所 属 で 日 々 行 う ミ ー テ ィ ン グ に お い て 、他 市 の 不 祥 事 事 例 や
改 善 事 例 そ の 他 関 連 情 報 等 を 参 考 と し て 、不 祥 事 防 止 に 関 し た テ
ーマを決め討論する。
ウ
個人面談の促進・強化
所 属 長 は 、常 に 部 下 職 員 の 動 静 に 関 心 を 持 ち 、人 事 考 課 制 度 に
おいて年度に3回実施する個人面談を活用し強化を図る。
ま た 、主 査 長 及 び 各 隊 長 も 部 下 職 員 の 動 静 に 関 心 を 寄 せ 、部 下
職員の相談役として逐次面談を行う。
問題があれば、所属長に報告し、所属長は、 上司に報告する。
エ
自己表明、掲出物等による遵法意識の強化徹底
(ア) 不祥事防止のため、不祥事を絶対に起こさないことを職員
一人ひとりがその取り組み意思を明確にするため、署名入り
の「 不 祥 事 防 止 行 動 指 針 カ ー ド 」を 作 成 し 、常 に 携 帯 さ せ る 。
(イ) 常に目に触れ、不祥事の再発を抑制するため、不祥事防止
標 語 等 を 掲 示 す る 。( パ ソ コ ン デ ス ク ト ッ プ 画 面 等 )
(ウ) 業務開始前に業務に必要な資格証等の確認やアルコールチ
ェックを行う。
(エ) 不祥事を行うことによる代償について、所属内に大書掲示
等をし、注意喚起する。
(2)職員教育の強化と職場環境改善への取り組み
現在実施している職員教育研修を見直し、不祥事防止に向けた
より密度の濃いまた高い効果を上げるための研修形態を工夫し、
研修を行う。また、職員の悩みを吸い上げる手立てやその悩みを
改善するための取り組みを積極的に行う。
14
なお、実施した研修・講習はその場限りとせず、職場内ミーテ
ィング時に情報提供を行い、討議のテーマとする等、職場内の情
報共有や意思疎通のツールとして常に活用する。所属長は、研修
機会を有効に活用し職場環境改善に役立て、職員の日常の動静及
び精神管理状況の把握材料として研修効果を上げるもの とする。
ア
階級・年齢層に合わせた教育研修
消 防 職 員 に は 、災 害 時 の 指 揮 系 統 を よ り 明 確 に し 、活 動 の 統 制
を 図 る た め 階 級 が 与 え ら れ て い る が 、階 級 別 、年 齢 層 を 対 象 に 研
修することで同階級者また同年齢層の特有の意見や諸問題等の
活発な意見を引き出すことを目的とする。
イ
メンタルヘルスへの取り組み
市 や 消 防 本 部 で は 、こ れ ま で メ ン タ ル ヘ ル ス に 関 す る 委 託 や 研
修 な ど を 実 施 し て い る が 、職 員 の 管 理 監 督 者 は 、職 員 が そ の 能 力
を 十 分 発 揮 で き る よ う 仕 事 上 の 安 全 配 慮 義 務 を 負 っ て お り 、職 場
に お け る メ ン タ ル ヘ ル ス の 対 策 を 取 っ て お く 必 要 が あ る 。特 に 消
防 職 員 に は 通 常 勤 務 の 他 、災 害 現 場 で の 悲 惨 な 体 験 や 被 災 者 を 救
出 で き な か っ た こ と で 罪 悪 感 に 苛 ま れ た り 、子 供 の 遺 体 を 扱 っ た
場合等強い精神的ショックを受けることが惨事ストレスとして、
近 年 指 摘 さ れ て い る 。日 頃 か ら 職 員 の 動 静 に つ い て 相 互 に 関 心 を
持 ち な が ら 、何 で も 相 談 が で き る 職 場 環 境 づ く り に 心 掛 け る と と
も に 、惨 事 ス ト レ ス に つ い て は 、災 害 出 動 後 の 事 後 検 証 の 中 で 意
見を出し合う等引き続きメンタルヘルスに関する職員研修が実
施 で き る よ う 取 り 組 ん で 行 く 。ま た 、関 係 機 関 か ら の 情 報 を 積 極
的に職員に提供し、継続的にサポートを行う。
ウ
職員から消防長への直通メールボックスの設置
消 防 職 員 か ら の 意 見 、悩 み 等 に つ い て 任 命 権 者 に 直 接 届 く メ ー
ルボックスを設置する。
若 い 職 員 が 同 僚 や 、所 属 長 に 何 で も 相 談 で き る 体 制 づ く り を 確
保 し た う え で 、さ ら に 、秘 密 厳 守 で 消 防 長 に 発 言 す る こ と が で き
る機会を与え、より開かれた職場環境を構築する。
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6 不祥事を起こさない体制づくり ・・・・・・・・・
(1)内部委員会の設置
不祥事は倫理観も含めた服務規律を守る意識の欠如から起こる
ことから、不祥事根絶に向けた具体的取り組みを推進していくた
めに消防本部内に服務規律確保のための委員会を設置する。
委員長は消防長とし、委員には、消防本部の課長相当職以上の
幹部の他、市総務部より、総務課長等を加えて全庁的な視点から
の服務規律保持に努める。
(2)悩み相談・服務規律担当者の任命
何でも相談のできる職場環境づくりを構築し、維持していくた
めに所属ごとに服務規律確保のための委員会委員と連携し、職員
の動静を見極め相談に応じることができる中間職の職員を、服務
規律確保のための担当者に任命する。
また、公益通報者保護法に基づく通報制度の周知を積極的に行
い、公益通報者からの環境改善等の意見も積極的に取り入れるよ
う柔軟に対応する。
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◇ これから ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
消防審議会が市長に答申した答申内容を踏まえ、数々の意見・提言を基に、
不祥事防止の方策をまとめました。
不祥事発生の原因を探り、現状における問題点、課題を見極め、組織や所属
又は個人がとるべき取り組み内容を示しました。
不祥事を再発させないためには「不祥事がなぜ起きたか」
「不祥事を起こした
らどうなるか」を職員一人ひとりが自分のこととしてどこまで考えられるか、
また、組織としては「職場環境はどうであったか」
「管理職がその立場から適切
な管理監督を行っていたか」を真摯に考え、的確に対応改善していけるかに掛
かっています。
一過性ではなく、継続的に見直し改善を図り、「不祥事を起こさない」「許さ
ない」
「見逃さない」という強い決意をもち、真に市民から信頼される消防本部
となるため職員が心を一つにして取り組んで行きます。
平成26年11月27日
我孫子市消防長
【 資 料 】
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