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食用作物学II 講義ガイダンス

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食用作物学II 講義ガイダンス
2015/10/2
イネについて、栽培学的視点より
(分類,形態,栽培管理,草型・乾物分配,収量構成要素,食味,基幹品種,
国際研究機関)
食用作物学II
講義ガイダンス
毎回レジメを準備します.柏木のHP
(http://www.agr.hokudai.ac.jp/botagr/sakumotsu/kashiwagi.htm)にpdfをア
ップするので各自でプリントアウトしてください.
↑ 柏木純一 北海道大学 でgoogle検索すると,すぐ出てきます.
最終講義では,班でイネについてプレゼンテーション
評価
•絶対評価
•出席点
•定期的に小テスト(事前に予告します)
•期末に試験
これらの総合点
食用作物学II
(イネについて)
第一回 起源・分類学的視点から
作物学研究室 柏木純一
イネ
イネについて
世界の三大作物(穀物)の一つ
(google検索-rice-401,000,000件)
人類文明を支える食糧
和名:イネ,古名:志泥(古事記),伊奈(万葉
集),中国語名:稲,英語名:rice,独語名:
Reise,仏語名:riz,西語名:arroz,アラビア語
名:eruz,インド語名:chavaal
主に熱帯・亜熱帯・温帯地域で栽培される
多年生・一年生の草本
染色体基本数( n =ゲノム):12
ゲノムサイズ:389M塩基対
(ヒト=2.8G塩基対)
粳米100g当たりのカロリーは?
Ans: 350 kcal
世界の総生産面積は?
Ans: 156 万km2(日本5つ分)
日本総生産面積は?
Ans: 1.7 万km2(東京ドーム約36万個分)
世界の総収量は?
Ans: 6.6 億トン (25億人/年分,2500kcal/日として)
日本の総収量は?
Ans: 850万トン
(3200万人/年分)
日本の単位面積当たり収量は?
Ans: 5.3トン/ha
日本での一人当たりの年間消費量は?
Ans: 60kg
2倍体
畑条件でも湛水条件でも栽培できる
1
2015/10/2
イネの栽培型
栽培種になったイネ
イネの野生種
多年生:植物体(株)が複数年に渡って存在し,生長する.安定した環境
では,増殖に有利.
一年生:毎年,種子によって繁殖(親株は枯死).不利な環境が定期的
にある環境では増殖に有利
栽培化
非脱粒化,および二次休眠の消失化という生き物とし
てのイネの環境適応性を奪う方向での選抜
イネの栽培種
イネの生物学的分類に関わらず,
水稲 (Paddy rice):水田で稲を栽培する
Oryza sativa L.
陸稲 (upland rice):畑で稲を栽培する
アジアで多く栽培されている(アジアイネ),Aゲノム
Oryza glaberrima Steud.
アフリカで主に栽培されている(アフリカイネ),Aゲノム
アジアイネに関するOryza属
種名
n
ゲノム 分布地域
O. sativa L.
12
A
世界中
アフリカイネに関するOryza属
繁殖様式
利用
種名
n
ゲノム
分布地域
繁殖様式
利用
一年生
栽培種
O. glaberrima Steud.
12
A
アフリカ
一年生
栽培種
O. longistaminata A. Chiv.
et Roehr.
12
A
アフリカ
多年生
野生種
O. barthii A. Chev.
12
A
アフリカ
一年生
野生種
O. rufipogon Griff.
12
A
アジア,オーストラ
リア,ニューギニア
多年生
野生種
O. nivara Sharma et
Shastry
12
A
アジア
一年生
野生種
(左)O. sativa L.,(中)O. rufipogon Griff.,
(右)O. nivara Sharma et Shastry
(左)O. glaberrima Steud,(中)O. longistaminata
A. Chiv. et Roehr. ,(右) O. barthii A. Chev.
http://members3.jcom.home.ne.jp/u-plant2/mydoc/Thai/ThaiWPlant/rufipogon.htm
http://www.gene.affrc.go.jp/databases-plant_images_detail.php?id=or20&width=660&height=400
http://www.happynews.com/news/5242010/scientists-new-rice-type-better-suited-africa.htm
http://www.gramene.org/
イネの起源
アジアイネ (O. sativa)栽培の起源地
Oryzaの祖先種:6500万年前
アジアイネが
栽培化され
た地域
4000-3000BP
彭頭山遺跡
(約8000年前)
Oryza属の出現:8-1400万年前
5000-4000BP
8000-7000BP
B-H, Jゲノム
Oryza属Aゲノム内での分化:200万年前
アジア
 多年生,他家生殖性の
O. rufipogonから一年生,
自家和合性のO. nivara
出現?同じ生息地,塩
基配列の相同性あり
アフリカ
 永年性,根茎形成,自家不
和合性のO. longistaminata
出現
 ゴンドワナ大陸仮説?
(ゴンドワナ大陸の分裂開始:ジュラ紀=1-2億年前)
↓
Oryza属Aゲノムの拡散は,動物,鳥などの生物の
移動に伴うものか?
Plant Science Volume 174, Issue 4, April 2008, Pages 394-408
長江下流域
海姆渡遺跡(約7000年前),そ
の他の地域より多くの稲作遺
跡が発見され,多くの炭化米が
回収.
•海姆渡遺跡の炭化米の形態
は様々で大きな多様性を有し
ている
アッサム・雲南(イネの道,渡部 1977)
東南アジアの非常に古い建造物に使用されている干
乾しレンガ中に圧痕として残っている籾の形態を調査.
•太古の時代には,非常に多様なイネが栽培されてい
た
•この多様性が最も大きい場所はアッサム・雲南地域
である
•遺跡の年代は,長江下流から
上流域に向かって新しい
•当時の気候は,現在よりも暖
かく,アジアイネの野生種とさ
れるO. rufipogonも生存可能で
あった
Plant Science Volume 174, Issue 4, April 2008, Pages 394-408
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2015/10/2
アジアイネ(O. sativa)の亜種
アジアイネ(O. sativa)の亜種
岡による区分(1958)
フェノール反応(フェノール溶液に浸漬した時の籾の変
色の有無),ふ毛(籾先端付近に生えている毛)の長さ,
塩素酸カリ(除草剤の成分ともなる毒性成分)に対する
抵抗性
8つの組み合わせが考えられるが,ジャポニカ(島型)
の形態的特徴として,フェノール反応-無,ふ毛-長,塩
素酸カリ-抵抗性強となり,インディカ(大陸型)はこの逆
となり,その他の組み合わせとなるものは少ない.
加藤らが区分したジャポニカ群,インディカ群とほぼ
一致
subsp. Japonica KATO(ジャポニカ),
subsp. Indica KATO (インディカ)
加藤らによる雑種不稔率による区分(1928).
ジャポニカの形態的特徴として,丸い米粒,インディカの
特徴として,細長い米粒
この時の材料集団に,インディカとして含まれていた主な
ものは,中国で籼(セン)と呼ばれるものに偏っていた
ジャポニカ,インディカの標準とされた品種あるいは系統
が現存しない
我々がインディカの「印象」として持っているのは,東南アジ
ア(特にタイ)のインディカが有する特徴で,インディカ全体
が有する特徴ではない.同様のことがジャポニカにも言える
中世:新開拓された田へ植えるために中国から導入.「唐
法師」と呼ばれる赤米品種で,1000年ほど前にベトナムか
ら中国へもたらされた早生で耐乾性のインディカ
日清戦争~第二次世界大戦前後:東南アジアに派兵さ
れた兵士の食料として,また戦後の食糧難の際に日本に導
入
1993年の大凶作:タイから食料として導入
DNAが語る稲作文明 佐藤洋一郎 1996
アジアイネ(O. sativa)の亜種
形質
温帯
ジャポニカ
熱帯
ジャポニカ
草丈
低
高
穂,葉の長さ
短
長
株当たり穂数
多
少
生長のスピード 遅
速
籾の形
長大
丸
粳
籼
ボロ
アウス
ブル
アマン
グラボラス
チェレ
ジャポニカ
インディカ
客観的な基準-DNA-によるジャポニカとインディカ
RFLP(制限酵素断片長多型)により,ジャポニカとイン
ディカを,ほぼ識別できる.ジャポニカ,インディカそれ
ぞれに対応する野生イネが存在する.
PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)でも,同様の結果
cpDNA(葉緑体DNA)においても,ジャポニカとインデ
ィカを識別できる.インディカのcpDNAは,特定部位で69
塩基対が決失している.野生種のcpDNAにも標準型と
決失型が存在したことから,ジャポニカとインディカはそ
の母系が異なる
アフリカイネ( O. glaberrima)栽培の起源地
ジャポニカは,熱帯ジャポニカ(≒ジャワニカ)と温
帯ジャポニカに細分できる
熱帯ジャポニカ:穂重型で焼き畑等の粗放栽培に
向く.(「海の道」を通じて縄文時代の日本へ)
温帯ジャポニカ:穂数型で水田などの集約栽培に
向く.(朝鮮半島を経て弥生時代の日本へ)
その他の区分
アジア
グラボラス:アジア山地で認められる熱帯ジャポ
ニカ.籾にふ毛がない,長護頴などの特徴がある
中国
粳:粒が短厚で炊飯時に比較的粘性がある
籼:粒が細長く炊飯時の粘性が少ない
インドネシア
チェレ:インディカに対応
ブル:「長い毛」の意.有芒の熱帯ジャポニカ.収
量は低いが、味が良い
バングラデシュ
アウス:「夏」の意.春先播種→夏~初秋収穫
アマン:「冬」の意.春先播種→晩秋収穫.浮稲
ボロ: 「冬」の意.冬播種→初夏収穫.
http://oregonstate.edu/instruct/css/330/four/index2.htm
西アフリカのニジェール川中流域で,今から3500頃前にO. glaberrimaの栽培が始まっ
た
近年,アジアイネの導入によりNERICA(New Rice for Africa)が育成された.
病気・乾燥に強いアフリカイネと高収量のアジアイネの交雑により育成された「新しい有
望イネ系統」
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