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職業・学問体験プログラム 医学国際系「外科の夜明けと挑戦」

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職業・学問体験プログラム 医学国際系「外科の夜明けと挑戦」
職業・学問体験プログラム
医学国際系「外科の夜明けと挑戦」
たつ お
講師の河合達郎氏は,1975年に岐阜高校を卒業し,1991年からの3年間と199
7年からの17年間,アメリカで移植外科の研究を行っています。現在は,臓器移
植の際に免疫による拒絶反応の影響を低減するための方法を研究しておられま
す。講義では外科学の歴史について,実習では清潔・不潔を意識した手術着と
手袋の着用と模擬患者による緊急治療の実際について学びました。当日の出席
者数は生徒25人(一年生14人,二年生3人,三年生8人)と教員5人でした。
講義の内容(要旨)
外科の夜明けと挑戦
現在では,虫垂炎など簡単な外科手術で死に至ることはなくなりました。しかし,
これまでには外科手術に大きな苦痛が伴っただけでなく,術後の感染症は大きな死
亡要因でした。
講義を聞く
講義では,外科の発達には,麻酔法,無菌法,抗生物質の発見の三つが鍵である
ことが順次説かれました。外科手術における麻酔については,我が国の華岡青洲が
世界で初めて飲み薬「痛仙散」を開発し,妻や母を実験台にしながらも研究を重ね
て乳癌の摘出手術を成功させました。しかし「痛仙散」は飲み薬であったことと,
その処方が難しかったことから,広く普及することはありませんでした。その後,
アメリカで抜歯などの歯科医療でのエーテルによる麻酔法が行われ,様々な改良を
経て気体の吸引による麻酔法が外科手術全般に普及しました。初期の公開手術は河
合先生が現在勤めるマサチューセッツ総合病院で行われました。
無菌法(消毒法)は,ハンガリーの医師ゼンメルワイスがウィーンの病院で産褥
熱による死亡者の解析を行い,消毒の必要性を説いたことから始まりました。その
後,イギリスのリスターによってフェノール(石炭酸)による手洗いと器具の洗浄,
手術中の噴霧が感染症を減らすことにつながることが見出されました。さらに,フ
ランスのパストゥールやドイツのコッホによって病原菌の特定がなされ,医師や看
護師は手術着,手袋,マスク,帽子を手術中に着用することが常識になっていきま
した。
抗生物質は,フレミングによって偶然に発見されました。細菌を培養していたあ
るとき,培養基に生じた青カビの周りには細菌の集まり(コロニー)ができていな
かったことから,青カビが産生する物質(後にペニシリンと確認された)が細菌類
の死滅に有効であることから,種々の薬剤の合成開発が進みました。
講義の後半には,河合先生の現在の研究について話していただきました。その研
究は,腎臓を骨髄と一緒に移植するというもの(腎骨髄同時移植)です。これは「免
疫寛容」という考え方によるもので,体内でキメラの状態を作り出すことによって
ドナーの腎臓に対するレシピエントの体内での拒絶反応を抑え,移植臓器の定着率
が向上するだけでなく,免疫抑制剤を使わないで済むことからQOL(日常生活の
しやすさ)も向上するということが分かりました。
生徒の感想
講義と実習を受けて
■外科や医療について新たな知識を得ることができました。麻酔や抗生物質などの
開発により清潔で安全な手術ができるようになってきたことが分かりました。
(一年生・女子)
◇
■200年前と比べて医学がものすごく進歩したことが分かりました。進歩するために
は,どんどん新しいことに挑戦しないといけないし,初めは周りに理解されなくて
も,それを貫くことが大切だと思った。そうすれば,たとえ自分は成し遂げられな
かったことでも,後の世代の人が何かやってくれる。
(一年生・女子)
◇
■臓器移植について新聞などで取り上げられても,私はそれについて特に何の関心
もありませんでしたし,臓器を移植すれば治療は終わると勝手に思い込んでいまし
た。免疫のことを考えて様々な問題に対処した上で移植ができることを知りました。
(一年生・女子)
◇
■今日の外科医療が多くの人の努力や実験の上に成り立っていることを強く感じま
した。昔の外科手術が麻酔なしで行われていたことが,私にはとりわけショックで
した。おそらく痛みへの恐怖から治療も受けずに亡くなっていった人もいるだろう
と思いました。現在,先進国で生きている人はとても恵まれた環境にいるのだと痛
感しました。
(三年生・女子)
手術着を着て手袋をはめる
模擬患者による手早い診断
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