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O. nivara,O. rufipogon およ O. sativa の祖
遺伝・育種学講座セミナー(11/26/2001) 高橋秀和 第1章 イネ属植物のゲノム構成 第1節 イネ属植物の系統発生と地理的分布 1.イネ属植物の分類と分布 日本・東南アジアの各地に広く栽培されているイネは,植物分類学的には, 被子植物門 (Division, Angiospermae) 単子葉植物綱(Class, Monocotyledoneae) 穎科目 (Order, Glumiflorea) イネ科 (Family, Gramineae) イネ属(Genus, Oryza) に属する一つの種( Species )で, Oryza sativa L.といわれるものである.西アフリカでは Oryza glaberrima Steud.という別の種が局所的に栽培されている.Oryza 属には 20 余の種が含まれるが,栽 培種は O. sativa L.と O. glaberrima Steud.の 2 種のみで,他は東南アジアからオーストラリア,アフ リカ,南米,中米にかけて自生するいわゆる野生種である. Oryza 属の分類はリンネの時代から確定的なものがなかったが,Roschevicz(1931)による分類が Oryza 属の分類学研究の基礎となった(表 1-1).統一性を欠いた Oryza 属内の種名の変遷は Nayar (1973)によってまとめられた(表 1-3) . 栽培稲とその近縁種の染色体数とゲノムを表 1-4 に示す.現在,Oryza 属には 19 種が含まれ,染色体 の基本数は 12 で,2 倍種(2n=2x=24)と 4 倍種(2n=4x=48)に分けられる.各種の分布域を表 1-5 に示す. 2.種の多様性とゲノムの進化 栽培稲の 2 種(O. sativa L.と O. glaberrima Steud.)は共通の祖先種から進化し,共通の祖先種はゴ ンドワナ大陸で起源したと Chang(1976)は示した(図 1-3) .しかし,O. nivara,O. rufipogon およ O. barthii および O. stapfii と O. glaberrima び O. spontanea と O. sativa との関係や O. breviligulata, との関係が明らかにならなかった. Oka(1953∼1979)は以下の根拠から栽培稲の進化の系譜(図 1-5)を示し,栽培稲 O. sativa の祖 先はアジア型の O. perennis と考えた. ①多年生型のほうが一年生型よりも集団内の遺伝的変異が大きく,進化的可能性が大きい. ②sativa が潜在的には多年生の性質をもつ. ③インドの Jeypore 地区で見出された多数の野生種と栽培種の中間型は多年生型の特徴をもつ. 種間雑種 F1 の減数分裂第Ⅰ中期(first metaphase, MI)にみられる染色体の対合から(ゲノム分析) , Oryza 属は A,B,C,D,E,F,G,H および J ゲノムに区分されている.ゲノムが相同なら進化の ,officinalis complex(B, 過程で共通の祖先をもっていたという考えから,sativa complex(A ゲノム) ,granulata complex(G ゲノム)と分 C,D および E ゲノム) ,ridleyi complex(H および J ゲノム) 類されることもある.さらに,O. sativa と O. glaberrima の F1 は 12 個の二価染色体を形成するが,完 全不稔なので前者を A,後者を Ag と分けて表記する. 3.アジアにおける栽培稲の起源と分化 アジアの栽培稲の起源に関する研究は民族学的・考古学的,遺伝学的・進化学的に行われている.い ずれにしても栽培稲は,はじめから栽培稲であったわけではないので,多年生の野生種が関与していた ことしか確かでない. 東南アジアやアフリカから収集した 100 品種余の O. sativa の F1 不稔性および形態的・生理的諸特性か ら O. sativa に日本型(japonica)とインド型(indica)の亜種の分化を加藤ら(1928a,b,1930)が 明らかにした(表 1-6) .さらに日本型であるがインド型に対して高い親和性を示す品種群をジャバ型と 分類した(Morinaga 1954) . 以上のように,本節ではイネ属植物の分類および多様性に関して記述されている. 稲学大成第 3 巻 遺伝編 農文協 1990.