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北海道で集団発生した新型牛パピローマ ウイルス(BPV-9, BPV
技術の窓 No.1510 H 20.2.12 北海道で集団発生した新型牛パピローマ ウイルス(BPV-9, BPV-10)による牛乳頭腫症 牛乳頭腫症は、牛パピローマウイルス(BPV)の感染によっておこる体表皮膚や粘膜に良性 の腫瘍病変を形成する病気です。従来から知られている牛乳頭腫症は、発生が散発的で、その 後自然治癒することが多いため、 酪農の損耗要因としての重要性は低いと考えられていました。 しかし近年北海道で発生した牛乳頭腫症は、同一農場の牛群に集団発生し、難治性で、しかも 乳頭に多数の腫瘍病変を形成することから、個体価格の低下や搾乳障害など重大な損耗要因と なっています。 農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究所と家畜保健衛生所が共同して、 この集団発生事例の疫学調査や病理組織学的解析、ウイルス学的解析、さらに防疫対策の検討 を行いましたので、その概要を紹介します。 ☆ 技術の概要 1.乳頭腫症の病変は、粟粒大から大豆大の疣状突起物として、牛の乳頭部皮膚の表面に数十 ∼数百個(1乳頭あたり)認められます(図)。 2.病理組織学的には、有棘細胞層の肥厚と過角化症を特徴とする「上皮性乳頭腫」であると 診断されました。 3.本乳頭腫症は、同一農場内の 80%以上の牛に集団的に発生し、治療が困難であることから、 家畜取引市場における取引価格の低下や、搾乳困難など、様々な問題の要因となりました。 4.原因究明を行った結果、本集団発生事例から、2 種類のグザイパピローマウイルス属新型 BPV(BPV-9 と BPV-10)が高率に検出され、これらが主要な原因になったのではないかと推 察されています。 5.本集団発生は、北海道内の牛放牧施設で最初に認められましたが、その後、同様の発生が 東北や関東地方でも確認されています。 6.乳頭腫症の治療として、外科的切除やヒノ キチオールを主成分とする治療薬の塗布、イ ンターフェロンα製剤の経口投与等は、限定 的ではありますが効果が期待できます。 また、 ブユやハエの幼虫駆除が、蔓延防止対策とし て有効であったことからそれらの幼虫が本症 の伝搬に重要な役割を果たす可能性が示唆さ れました。 図 牛乳頭腫症の臨床所見 ☆ 活用面での留意点 詳細については、動物衛生研究所 情報広報課(電話 029-838-7708)にお問い合わせ下さい。 (動物衛生研究所 主任研究員 畠間真一)