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医療・バイオテクノロジー分野における共同研究 ―知的財産面での留意
CONFIDENTIAL 医療・バイオテクノロジー分野における 共同研究 ―知的財産面での留意点― 奈良先端科学技術大学院大学 産官学連携推進本部 TLO部 八浪 公夫 1 講 演 内 容 CONFIDENTIAL • バイオテクノロジー産業の現状 • バイオ創薬の特徴と知財戦略 • バイオ知財戦略をめぐる世界の状況 動物特許、ES細胞特許 • 欧州特許庁への出願 • マテリアル提供契約(Material Transfer Agreement: MTA) 生物多様性条約、カルタヘナ議定書、外為法、その他 • 共同研究契約 • 契約交渉のポイント 2 バイオテクノロジー産業の現状 CONFIDENTIAL • バイオ創薬(抗体、IF、EPO) • 再生医療(ES細胞, iPS細胞) • アグリバイオ(遺伝子組換え植物) • バイオマス(バイオエタノール) • バイオレメディエーション (ダイオキシン分解酵素等の利用) 3 CONFIDENTIAL 医薬品開発のプロセスと特徴 探索 非臨床 臨床 審査 (2-4年) (3-5年) (3-7年) (1-2年) 承認申請 販売 上市 情報分析 薬効・薬理試験遺伝子 ヒト臨床試験 遺伝子機能解析 薬物動態・剤型研究 (フェーズ I, II, III) スクリーニング 毒性試験 困難なリード化合物の取得 研究開発に長期間(15-‐17年) 莫大な研究開発費(数100億∼1000億円) 極めて低い上市確率 ブロックバスター(リピトール:$136億(2006年)) 4 CONFIDENTIAL バイオ創薬における知財戦略の重要性 ー 家電・IT産業との相違 ー 少数だが高額なライセンス 初期段階 :リサーチツール特許 代替性に乏しく回避困難 初期→製品段階:リーチスルーライセンス 最終製品の売上に応じたライセンス料 大きな利益 ⇔ 大きな負担 販売段階 :ライフサイクルマネージメント特許 物質特許切れ対策 製剤・製法・用途等に工夫 5 バイオ知財戦略をめぐる世界の状況 CONFIDENTIAL ○遺伝子組換え技術の開発以降、特許適用範囲徐々に拡大 ○微生物・遺伝子:機能と産業上利用性が解明 → 各国で特許付与 ヤングレポート(1985年)→ プロパテント政策への転換 コーエン・ボイヤーの非独占基本特許 $2億5千万のライセンス収入( $ 1万/年、Royalty:0.5∼3%) 知的財産基本法(2002年)→ 知財立国としての基本的枠組 様々なバイオ産業振興策・特許等の運用指針整備 宗教などの観点からバイオへの根強い反対論 6 バイオ知財戦略をめぐる世界の状況 CONFIDENTIAL 各国の動物特許 現在まで多数の動物特許 ハーバードマウス等(1988年) 反対運動強い ハーバードマウス拒絶(1989年) → 付与(1991年)→異議申立て→差戻し → 特許付与(2001年) ∵バイオ産業に遅れを取るとの懸念 特32条の要件を満足すれば特許保護の対象 7 バイオ知財戦略をめぐる世界の状況 CONFIDENTIAL 各国のES細胞特許(1) ES細胞自体、製法などは特許の対象 ブッシュ→政府公的研究費による ヒトES細胞の樹立を禁止 オバマ →科学技術振興と産業競争力 強化の観点から方針転換 公序良俗に反するとして対象外(EPC53(a)) 工業・商業目的でのヒト胚の使用発明は 特許対象外(施行規則23d(c)) 8 バイオ知財戦略をめぐる世界の状況 CONFIDENTIAL 各国のES細胞特許(2) ヒト胚の破壊を伴う発明→公序良俗違反(特32) 破棄が確定した余剰胚に限りヒトES細胞の作製許可 厳格な倫理審査→審査長期化 →短い特許期間、狭い権利範囲 使用研究と樹立研究に同様の審査基準 (他国に例なく、国際常識から乖離) → ヒトiPS細胞の臨床応用にも影響 9 欧州特許庁への出願 CONFIDENTIAL • 欧州特許条約(EPC)の34加盟国(2009年10月)を束ねて出願 → 出願人が指定した欧州各国で、特許権としての効力 • 欧州特許庁(ミュンヘン)の審査官が審査 • 英語,フランス語,ドイツ語のいずれか1つを選択して出願 • 出願後,自動的にサーチ・レポートが作成される → 審査請求・放棄・取り下げを選択できる • 新規性喪失の例外(Grace Period)は、国際博覧会への出展などに 限定(試験・刊行物・学会発表などには不適用) 10 マテリアル提供契約(Material Transfer Agreement) CONFIDENTIAL MTAの意義: リスク管理(安全性、所有権・特許・ノウハウ) 将来の共同研究のきっかけ MTAの条項: マテリアル(+派生物)の所有権 使用者の明確化、それ以外への提供・譲渡の禁止 使用目的の明確化、目的以外の使用禁止 機密情報の管理→秘密保持契約(CDA) 発明、研究成果に関する権利等(特許性あれば特に重要) アカデミックフリーダムと機密保持(大学⇔企業) 11 マテリアル提供契約(Material Transfer Agreement) CONFIDENTIAL 契約内容の厳密さ? 雛型? 臨機 応変 リスク管理 コスト管理/ スピード 12 CONFIDENTIAL MTA締結時に考慮すべき条約、法律、ガイドライン -生物学的試料の移転の際に- 生物多様性条約 カルタヘナ議定書 外国為替および外国貿易法(外為法) マテリアルの特性による指針等 13 CONFIDENTIAL MTA締結時に考慮すべき条約、法律、ガイドライン 生物多様性条約(ConvenMon on Biological Diversity: CBD)(1) 背景: 人類は地球生態系の一員として他の生物と共存 人類は生物を食糧、医療、科学等に利用 近年、野生生物種の絶滅が急進行 ∵環境・生態系破壊 途上国の主張: 遺伝資源の豊富さは単に、地理的・気候的条件によらず 途上国のコミュニティーによる長年の保護・改良の結果 コミュニティーの共有財産(先進国の特許制度とは無縁) 対策(1992年成立): ワシントン条約等を補完し、生物多様性を包括的に保全 14 CONFIDENTIAL MTA締結時に考慮すべき条約、法律、ガイドライン 生物多様性条約(ConvenMon on Biological Diversity: CBD)(2) 条約の目的: 地球上の多様な生物をその生息環境とともに保全 生物資源の持続可能な利用 利用による利益を資源提供国/利用国間で公平配分 現状: 途上国の意見が数の上で優勢∵国連の枠組みから発足 191の国・地域が批准する中、米国不参加 ∵知的財産権の保護不十分 日本の対応( 2009年7月): 「生物多様性民間参画ガイドライン」策定 15 CONFIDENTIAL MTA締結時に考慮すべき条約、法律、ガイドライン カルタヘナ議定書 目的: バイオテクノロジーにより改変された生物の安全性の確保 (Living Modified Organism: LMO) CBD第19条3項に基づく交渉において作成 内容: LMOの越境移動、通過、取扱い、利用を規制 LMOであること、取扱要件、連絡先等を相手方に通達 LMOの輸出入時には事前通告による同意手続き必要 輸入国はリスク評価し、輸入の可否を決定 ヒトの医薬品は対象外 日本の対応(2004年): カルタヘナ法施行→ 違反者(法人含む)に罰則 16 CONFIDENTIAL MTA締結時に考慮すべき条約、法律、ガイドライン 外国為替および外国貿易法(外為法) 目的 国際交流が進展するなかで、生物化学兵器などの蓄積防止 規制内容 大量破壊兵器の製造等防止のための 輸出規制 * 機械・ウイルス等の輸出 (48条1項) * 機械の設計図・プログラム等の 技術提供(25条1項) 経済産業省ホームページより 17 CONFIDENTIAL MTA締結時に考慮すべき条約、法律、ガイドライン 生物学的試料の特性による指針等 インフォームドコンセント ヒトES細胞の提供等の場合に必要 (ES細胞等倫理指針24条) 微生物特許についての寄託制度 各国特許庁の指定機関に寄託制度 明細書の記載のみで判断するのは無理 +実施可能性の確認必要 但し、明細書に再現可能な記載があれば寄託不要 日本では2ヵ所(産業技術総合研究所:AIST、および 製品評価技術基盤機構:NITE) 18 共 同 研 究 契 約 CONFIDENTIAL 研究内容: 題目、目的、スケジュール(※定期的な見直し) 研究実施: 研究者(※追加/離脱) 、業務分担、 施設・設備(※遵守義務) 研究成果: 実験ノート、報告( ※報告書・報告会)、 利用(成果の実用化・事業化の権利) ※企業の独占的利用→大学・公的研究機関は 研究目的・教育目的で成果を利用できる旨 を要明記 秘密保持と発表 ※開示義務の発生→事前同意の必要性の有無 or事前通知 特許出願 研究費用: 負担割合 19 CONFIDENTIAL 契約交渉のポイント ① 各種契約に関する業界常識の十分な把握 「契約条件」と「慣行」: バイオ業界 家電・IT業界 特 許 多数の関連特許 ロイヤリティ クロスライセンス ≠ 家電・IT業界 バイオ業界 1∼数件 きわめて高い対価 マイルストーン ランニングロイヤリティ (近年、10∼20%) ② Win-winの関係 ③ 論理的主張と人情 ⇔ 日本人、米国人、ヨーロッパ人 20 CONFIDENTIAL ご清聴ありがとうございました 奈良先端科学技術大学院大学 21