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Hirosaki University Repository for Academic Resources
Title
Author(s)
ミュンヒハウゼン症候群(Asher, R.: ミュンヒハウゼ
ン症候群)
武田, 忠厚
Citation
Issue Date
URL
1982-08-31
http://hdl.handle.net/10129/2023
Rights
Text version
publisher
http://repository.ul.hirosaki-u.ac.jp/dspace/
"ミュンヒハ ウゼ ン症候群〟
As
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,R∴
ミュ ン ヒ- ウゼ ン症 候 群
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4
1
訳 :武 田 忠厚 (
秋 田神経精神病院)
子供 の頃、、
、
ほ ら吹 き男爵〟の冒険旅行の本を読 まれた方 は多い と思 う。1
8
世紀 に世 界中を旅
し、真実 とは思 えない様 な劇的な冒険話 を語 り、その時受 けた創痕 を体 中に持つ男爵の話であ
9
5
1
年 ア ッシ ヤー (
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)は La
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t誌 に、あ っち こっちの病院 を廻 り歩 き、入院す
る。1
るために うその生活史 を述べ、劇的 な症状 と沢山の切痕 を持ち、入院後 は 自ら進 んで退院す る
Munc
haus
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nSyn患者 の 3症例 を発表 し、ほ ら吹 き男爵にちなんで ミュン ヒノ\ウゼ ソ症侯 許 (
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me)と名付 けた.この発表 を機 に同様 の症例の報告や討論が な された.名称 に関 して も、問
題 あ る遍歴性患者 (
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nt:Chapman,
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7)、病院放浪者 (
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、 さまよえるユ ダヤ人症候群 (
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、病院中毒症候群 (
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、作為的病気 (
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、自己誘発病 (
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2)
Byr
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5
)な ど多々あ り幾 分の混乱があ るが、 ミュン ヒ- ウゼ ソ症候群 が一般的であ
る。
症状 に よ りア ッシ ヤーは、急性腹症型 、急性出血型、急性神経型 に分類 したが、その後の報
告では皮膚型、心臓型、胸部疾患型、異物摂取型、混合 ・多症状型 もみ られ る とい う。 又文献
的 には、遍歴や渡 り歩 くとい った要素が少な くな り、本当でない、 うそ、 とい った意味か ら次
第 に、 自己誘発的、作為的 といった ニ ュアンスを強めてい る。 時代 と共 に病気 の知識 、福祉制
度、医療制度 を も反映す ると共 に最近では看護婦 、医療関係者 に関す る もの もみ られ る様 にな
0
年間で小児科医か らの報告 も相次 ぎ、親 に よる子供 にまつわ る症例 が、本来 の ミ
った。 ここ1
ュソ ヒ- ウゼ ソ症候群 と同 じものなのか討論 されている。 この様 な流れの中で、今回 アメ リカ
Ⅰ
Ⅰ
Ⅰに よる分類では ミュソ ヒ- ウゼ ソ症候群 は、「身体症状 を持つ慢
精神医学協会 に よる DSM性作為病 」(
3
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) と同 じもの として
位置づ け られてい る。診断基準 として 、 (
A)何 回 も入院す る程 に もっ ともらしく表現 された、
明 らかに随意的 にな された身体症状 、 (B)患者 を装 うことが 目的であ り、それ以外 その人の置
かれた状況か ら理解 出来 ない こと、をあげてい る。 これ らは ミュソ ヒ- ウゼ ソ症候群 の存在 が
広 く認知 されてい る とい うことと共 に、1
9
51
年 ア ッシ ヤーに よ りランセ ッ トに発表 された論文
か らの今 日への変遷 とも言 える。
(
武 田忠厚)
- 158-
ここに記載 されてい ることは、大多数 の医師が診 てい るが、あ ま り書かれていない一 つのあ
りふれた症候群 であ る。
有名 な ミュソ ヒ- ウゼ ソ男爵 の様 に、病 に罷患 した人 々は、常 に旅行 し、男爵 に まつわ る話
と同様 に大 げ さである と同時 に嘘 が多い。従 って、 この症候群 は男爵に敬意 を もって献題 し彼
の名前で呼ぶ次第であ る。
この症候群 を示す患者 は、おか しな演劇的 な病歴 を裏付 け として、は っき りとした急性疾患
を持 ち入院す る。通常患者 の話 は嘘 に よ り造 られてお り、驚 くべ き数の他の病院 を も訪れては
欺 してい る ことが知 られ、そ してほ とん どいつ も医師及 び看護婦 と乱暴 な喧嘩 の後 に助言 に逆
らって退院 して行 く。腹部の沢 山の切痕 が この状態 の最 も特徴的 な ものであ る。
これが一般的 な要点であ るが、 この状態 に欺 か された ことが ない と自慢 で きる医師は多 くは
いないであろ う。
しば しば診断は通 りすが りの患者 と、その行為 を知 ってい る医師や看護婦 に よってつ け られ
る。「私 は この男を知 ってい る。我 々は2
年前 セ ン ト・キ ニジン病院で彼 を もってお り穿孔性の
潰蕩 であ る と思われていた。彼 は しば しばバ スの中で倒 れてお り、潜水艦 の元司令官で ゲシ ュ
タポに拷問 された とい う話 を していた」 と。
同様 に時 にペテ ン師は病院の食堂で、長 く入院 してい る患者 に化 けの皮 をはが され る。「おや
まあ、ルニ ラ・プ リスキ ンが又入 ったのかい、本 当に ? なぜ彼女 は ここに前 に 3回 も入院 し、
バ ー ト、 マ リー、 ガイ病院 に も入院 してい るの さ。彼女 は時 々BJ
の名前 で入院 し、いつ もせ き
こんで何パ イ ン トもの血 を吐 いた と言 い、前 はオペ ラ歌手で フランスで レジスタンス運動 を援
助 していた と話 していた よ。」
診
断
1回で診断 をつ け るのはほ とん ど不可能 に近 く、入院を拒否す るのはかな り大胆 な救急室医
官で もいない と出来 ない。普通患者 は大変 な病気 を患 っている様子で、以前 に知 ってい る人が
彼の過去を暴露 しないか ぎ り入院 となるO経験 に富む正面玄関 に居 るポーターは しば しば計 り
知れ ない程 の貴重 な助言を与 えて くれ る。
以下 の ことが重要 な指針であ る ;
1. (前 に も述べた如 く)沢山の療痕 があ り、主 に腹部 にあ る。
2.動作では凶暴 さと荻滑 さが混 じってい る。
3.現病歴では、急性で悲惨 な、 しか し完全 には納得 し得 ない様 な一定 しない型の非常 に激 し
い腹痛 であ る とか、相 当す る蒼 白さを伴わ ない急激 な失血 、演劇的 な失神 な ど-0
4.病院 の診察券、保険 の請求用紙、訴訟 の手紙 な どでい っぱいの札入れ辛- ン ドバ ッグな ど。
もし患者が前 か らの知人 に よ り確認 され ない時 には、他病院への調査依頼 に よってのみ診断
が次第 に明 らかに されて行 く。何人 かは他所 であ ま り面倒 を起 こしてい るので病院の ブラ ック
リス トに載 っていた りす る。 しば しば警察 は患者 を知 ってお り、多 くの助 け とな る詳細 を与 え
て くれ る。
次第 に本 当の病歴 の部分が組み合わ され、患者 自身の物語が空想 と虚言の母体であ り、その
中 に驚 くべ きことには、全 くの真実の断片がはめ こまれてい るのがわか る。丁度、患者 の話 が
全 くの嘘でない様 に、その症状 も全部 が嘘ではない。彼 らの病気は欺楠 と歪 曲に よ り覆われて
-1
5
9-
はい るが、 これ らの患者 は しば しば非常 に悪 い状態 にあ ることを認識 しなけれ ばいけない。全
ての真実が知れた時、過去 の病歴 で薬物噂癖 、精神病院での治療 、又 は有罪判決 な どの事実 が
明 らか な ことがあ るが、 これ らは常 にあ るものではない。過去 におけ る数 えきれ ない程 の入院
と病的 な嘘の証拠 は常 にみ られ る。 しば しば過去 に受 けた本当の器質性外傷 が何 らかの実際 の
身体的痕跡 を残 し、それを患者が (プ一・バーを引用す るな らば)「さもなければ全 くあ りそ う
もない話 に芸術的 に本当 らしさを付 け加 える」 ことに利用す るのであ る。
い くつかの特徴
多 くの症例 は器質性救急患者 に似 てい る。 良 く知 られてい る類型 としては ;
1.急性腹部型 (
開腹手術渇望型)。 この型 が最 も普通であ る。 これ らの患者 のあ る者 は しば し
ば手術 を受 けてい るため癒着 に よる本物 の腸管 の閉塞が発生 し病像 を困乱 させ得 よ う。
2.出血型。肺 ・胃やその他 か らの出血 を特異的 に訴 えるもの、彼 らは俗 に 「吐血商人」 とか
「
啄血商人」 として知 られてい る。
3.神経型。突発性 の頭痛 、失神や奇妙 な発作 を呈す る。
最 も際立 った この症候群 の特徴 は、その明 らかな無意味 さにあ る。 は っき りとした 目標 の利
益 を得 るであろ う虚 言者 とは異 な り、 これ らの患者 は しば しば不必要 な検査や手術 の失敗以外
は何 も得 られ ない様 に思われ る。彼 らの最初 の、残忍 な病院での処置 に対す る容認度 には驚 く
べ きものがあ るが、彼 らは普通数 日後 、手術 の傷 が癒 りきらない中に、又 は点滴 が まだ続 け ら
れてい る間 に今度 は退院 して しま う。
も う一つの特徴 は彼 らの可能 な限 り多 くの人を欺 そ うとす る強 い慾望 であ る。彼 らの多 くの
嘘 は全 く意味がない。嘘 のため嘘 をつ いてい る。彼 らは嘘 の住所 、嘘 の名前 、嘘 の職業 を単 に
嘘が好 きなため語 る。 そのず うず うしさは時 に恐 るべ きものがあ り、何度 も彼 らの嘘 を試すた
め、新 しい医師 に逢 お うとして同 じ病院 に現れ る。
可能 と思われ る動機
時 に動機 はは っき りとは確 かめ られ ない。 しか し以下 の如 き機序 の一つが関係 しているか も
しれ ない と示唆す るものがあ る。
1.興 味や注意 の中心 にいたい とい う慾求。実際彼 らは ウォル ター ・ミテ ィ症候群 にかか って
い るのか もしれ ないが、外科 医 として劇 的 な部分を演ず る代わ りに、同様 に劇的 な患者 の
役割 に甘 ん じてい るのであ る。
2.医師や医院 に対す る恨 みを、裏 をかいた り、嘘 をつ くことで満た してい る。
3.薬物 に対す る慾求。
4.警察 か ら逃れ よ うとす る慾求 (これ らの患者 は しば しば異物 を飲み込 み、傷 が癒 えるのを
妨害 し、体温 計に細工 した りす る)
5.治療や検査 の危険 に もかかわ らず無料 で食べ、寄 る寝 る場所 を得たい とす る慾求。
これ らの決定的で ない動機 を補足す るもの として恐 ら くは人格 の奇妙 なね じれがあ るのであ
ろ う。多分大部分 は ヒステ リー、精神分裂病 、被虐者や あ る種 の精神病質者 であろ う。 しか し
全体 としては彼 らは一つ と考 えていい様 な一定 の行動様式 を とるのであ る。
-1
6
0-
説 明的症例 の報告
ミュソ ヒノ、ウゼ ソ症候群 の腹部型 の 3例 を以下 に記載す る。 とい うのは この病気 の進行 した
典型的特徴 をは っき り示 してい るか らです。多 くの軽 い症候 も経験 してい るが、 これ以上多 く
記載 して も冗長 になるで し ょう。大部分の患者 の名前 は最初 か ら嘘で したが、 この症例 の病歴
での名前 は全 て変 えてあ ります。 しか し、 これ らの患者 に逢 った ことがある医師 は変 えた名前
か ら本当の名前 の手掛 か りを得 られ るで し ょう。
症例 Ⅰ
トーマス ・ビーチ とい う名前 の47才の男性が 5月1
6日に- - p-病院か らセ ン トラル ・ミ ド
ルセ クス病院精神観察病棟 に移 された。彼 は 5月1
3日腸閉塞 の疑 いで入院 し開腹手術 を受 けた
が、結果 は何 も異常が なか った。手術 の後 で麻酔 を受 けてい る間に看護婦 が彼 の札入れを開い
た と文句 をい った。彼 は凶暴 とな り退院を要求 したが、暴力 と開腹手術 の翌 日出てい くとい う
無鉄砲 さのため精神的観察 のため送 られたのであ る。検査 では結果 は彼 は理性的で得心 の行 く
9
42年商舟
状態 であ った。彼 の腹部 はいろいろの年代 の沢 山の癖痕 がみ られた。説 明に よる と1
隊 にい る時魚雷 に よ り複数の裂傷 を受 けた.彼 は 日本軍 の捕虜 とな り1
9
45
年 まで シ ンガポール
に捕 らわれていた。 この時期 を通 し多数の糞塵 があ った。1
9
45
年 シンガポール解放後彼 は フ リ
1回手術 を受 け(
複数 の療 を閉 じるため)、その後 は 4日
ーマ ン トルに連れて行 かれ 7ヵ月間に1
前迄海上生活だ った とい う。病歴上 につ いての ミュソ ヒ- ウゼ ソに特徴的 な色彩 か らさらに調
査 をすすめた所 、海上 にいた ことにな ってい る 8日前 に急性の 胃痛 を訴 え、バ ラムのセ ン ト・
ジ ェームス病院 に居た ことがわか った. さらに 1年前 に も同 じ病院 に入院 していた. その上、
1
9
43
年 シンガポールに居 る と思われた時期 に 「魚雷 に よる傷 が突然開いた」 と訴 え右腸骨嵩の
膿療 でセ ン トラル ・ミドルセスク病院 に入院 した。 そ こで彼 は意味の通 じない一連 の食 い違 う
話 を述べたので慢性非行性精神病者 として シ ェン レ一病院 に移 され 2ヵ月間の観察 の後退院 し
ていた. シ ェソ レ-では彼 は長 い非行歴 を持 ち、 3回有罪判決 を受 け、 2回 ウエス トパ ーク精
神病院 に入院 してい ることがわか った (
彼 は 2回 とも無 断離院 してい る)。 今回の入院では証明
9日に退院 した。疑 い もな く彼 は一つ の病院 か ら別
出来 るいかな る異常 もな く、 3日後 の 5月1
の病院へ と歩 き廻 ってい る。 2週間後私 の ミュソ ヒ- ウゼ ソへの興味を知 って一人の外科研修
医が ノーフ ォーク& ノ リッチ病院で出逢 った症例 の記録 を提 出 して くれた。 それ は興味あ るも
のであ ったが、同 じ患者 であ ったのを知 って も特別驚 きは しなか った。 その記録 に よる と、 ト
ーマス ・ビーチ氏 は1
9
49
年 6月2
3日急性腸 閉塞 として入院 していた.彼 は英 国空軍 に33
年間勤
9
42年 マ ン-イム上空 で撃墜 されその後 「8回の腹部手術 と 3回の短絡手術 を受 けた」
務 し、1
とい う話 を していた。 モル フ イネ、点滴 、 胃内容物 の吸引 な どの治療 を受 けたが、手術 を拒否
し 6月2
6日勧告 に逆 らい退院 した。
Ⅰ
症例 Ⅰ
マーガ レッ ト. コーク と名の る2
9才の女性が 3日間の激 しい腹痛 と晦吐を訴 え1
94
8年 6月1
3
日入院 した。彼女の腹部 には多 くの療痕がみ られた。 エ ッジ ワーのあ る住所 か ら入院 したのに
-1
61-
もかかわ らず、 テキサ スの ヒュース トンの住所 を告 げ、彼女の これ までの手術 は全 てそ こで な
され、そのい くつかは馬 の医者 に よ り行われた とい う。臨床的 に亜急性 の腸閉塞 と思われ モル
9日自らの要請 に よ り退院 した。
フ イネ、 ミラー・アポ ッ トのチ ューブでの治療 を受 けたが 6月1
3週間後 の 6月 3日、 -ル シー ・シルバ ーバ ラと名 の る女性 が路上 で倒れてい るのを警官 に発
見 され セ ン トラル ・ミドルセ クス病院 の他 の病棟 に入院 した。 家の住所 は ランカシ ャーを告 げ
た。彼女 は前 日急性腸 閉塞の疑 いで ウェンブ リ一病院 に入院 し、その 日自ら退院 して来た もの
とわか った。 -ル シー ・シルバ ーバ ラは以前 の手術 は全 て マ ンチ ェスター ・ロイヤル病院で行
われた と述べたが、外科研修医は彼女をテキサ スの馬の医者 か ら手術 された とい った マーガ レ
ッ ト・コーク と同一人物 と確認 した。 マ ンチ ェスター ・ロイヤル病院での調査 ではマーガ レッ
ト・コーク又 は-ル シー ・シルバ ーバ ラが入院 していた痕跡 はな く、一万二人 の人物 が同一だ
9
47
年1
0月27日と1
1月
と知 れた翌 日、あ る外科病棟 医が この患者 を ロイヤル ・ノーザ ン病院で 1
1
3日の 2回診た ことのあ る-ル シー ・パ コマであ る と確認 した。 2回 ともに彼女は酒 の嘆 を さ
せ救急室 にや って来 て尿閉を訴 えていた。最初 の時彼女 は カテーテルを挿入 されたが、その後
全 ての治療 ・記帳-のサ イ ン、入院 も拒否 しかか りつ けの医師を呼ぶため ホテルに行 くとい っ
て帰 った。 2回 目には救急室 の保員 に見つ け られ彼女 を前 に診た医師に診 て もらえなか った。
再度 のマ ンチ ェスター ・ロイヤル病院での調査 で腹部 に多数 の療痕 のあ るマ ンチ ェスターに住
9
47
年1
1月1
5日腸閉
所 のあ る-ル シー ・パ コマは ロイヤル ・ノーザ ン病院 を退院 した 2日後 の 1
塞 として入院 していた。手術 は行われ なか った。 モル フイネ、 リールのチ ューブ、深腸で治療
されたが助言 に もかかわ らず入院の 2日後退院 した。 マーガ レッ ト. コーク、 -ル シー. シル
9
48年 7月 6日セ ン トラル. ミ ドルセ クス病院を退
バ ーバ ラ、-ル シー.パ コマの 3人 1組 は 1
院 し、その後 の ことはわか っていない。彼女が出て行 く前 に、 ピカデ リーにず っと住 んでお り
売春婦 として働 いてい る と語 っていた とい う。
症例Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
1
950年 2月 7日バ スの中で倒れた41
才の-ル シー・ド・コベ リー と名 の る女性がセ ン トラル ・
ミドルセ クス病院 に入院 した。彼女 は この 2日間黒色便 と 1日中激 しい腹痛 があ り、黒 い血 を
吐いた と病歴 を述べた。診察時 に明 らかな激痛 があ った。腹部 には無数の療痕 があ り血管 に も
沢 山の切開手術 の痕 がみ られた。心臓 には僧帽弁収縮前期雑音 が聴 こえた。過去 5年間に穿孔
のため 2回手術 を受 けた と言 い、 1回は腸 閉塞 で、手術 は全 て ロイヤル ・デポ ソ&- ク七 夕一
病院で行われ部 分的 胃切除のため行 く予定だ った とい う。最初 の診断は多分小 さな穿孔 を伴 う
出血性潰痔 であ ったが、激痛 にかかわ らず腹部硬直や、写真 で も横隔膜下 にガスが認め られ な
6% で糞便 のベ ンチジン検査 は弱陽性 を示 したにす ぎない。電話での問い合わ
か った。血 色素 9
9
44年 に 1回だ け診察 に釆たが腹部手術 は
せで ロイヤル ・デポ ソ&- クセ タ一病院 は、彼女 は 1
受 けてお らず、ただ他 の多数 の病院か ら彼女の照会 が来 てい ることがわ か った。患者 は強 い腹
痛 を訴 え続 けたが、バ リウムによる検査 、 胃鏡検査 が予定 された時点で、誰 も本当に彼女の痛
5日勧告 に もかかわ らず退院 した。 その後 も彼女の過
みをわ か って くれ ない と言い残 して 2月1
去 を見つ け出す努力がな されて、 ロイヤルデポ ソ&- クセ タ一病院が一番 の助 け とな った。 な
ぜ な ら、彼女に関す る照会 のあ った病院を書 き上 げて行 くと国内での彼女の経過 の大部分を追
跡 出来たか らであ った。 これ らの病院- の問い合わせ は、 さらに多 くの病院の入院 を明 らかに
-1
6
2-
し、患者 の排禍 の複雑 さは雪 だ るま式 に増 えた。
私 には十 分の時間 と、 あ っち こっちを歩 き廻 るのを完全 に追跡す る根気 もな く、 さらに彼女
は 9つ の異 な った名前 を使 い分 けた こ とも計画 を手 に負 えない もの に した。下記 の彼女 の行動
の一部 の リス トも完全 で はないのであ ろ う。
1
9
44年 2月-ル シー ・ド・コべ 1
)-が鼻血 のため に- クセ クー刑務所 か らロイヤル ・デボ ン&
9
47
年 3月 ジ ョア ン ・モー リス、速記記者 、 は長 い間の消化不 良
- ク七 夕一病 院 に入院 した。1
9
47
年
と吐血 に よ りク ロイ ドソ総合病 院 に入院 した。安 静 と食事療法 を受 け 2日後退 院 した。1
1
0月31日か ら1
1月 1
6日迄彼女 は ジ ョア ン ・サ マ ー とい う名前 で 出血性潰癌 の疑 いで ロイヤル ・
サセ ックス病 院 に居 たが、手術 時 の所見 は癒着 に よる亜急性 閉塞 と療 痕性十二指 腸潰蕩 であ っ
1月 1
6日激 しい腹痛 を訴 えなが
た。 胃一空腸吻合術 が形 成 された。彼女 は助 言 に もかかわ らず 1
ら退 院 した。
1
9
47
年1
2月 1
0日彼 女 は-ル シー ・レイ トン、地域保健婦 、 と名 の り 「苦痛 と同居 してい る」
とい う激 しい腹痛 で ク ライ ドソ総合病 院 に入院 した。 バ ー ミンガ ム病院 で部 分的 胃切 除 の予定
2月 1
2日退 院 とな った。
だ った と話 した。彼女 の家族 と連絡 したが名前及 び住所 が偽 りであ り1
ク ライ ドソを去 った数 日後 レ ッ トヒル ・カン トリー病院 に入院 した。 彼女 は同 じよ うな話 を し
たが数 日中 に退院 した。
1
9
48年 1月2
9日か ら 3月29日まで彼女 は再 び ジ ョア ン ・サ マ ー としてパ デ ン トン病 院 で十二
指 腸潰疫 として開腹手術 が行わ れたが、後 に彼女 は激 しい狭J
L、
症様 の痛 み を訴 え、病棟 で沢 山
問題 を残 した後 に退院 した。
1
948
年 3月彼女 は ジ ョアサ ン ・ラーク として、痔痛 、 出血 を述べ ウエ ス ト・ロン ドン病 院 に
いたが 自ら退院 した。
1
9
48年 4月 6日か ら 9日迄 ジ ョアサ ン ・サ マ ー として何 回かの ヨークでの手術歴 を話 し (ヨ
ークの照会 で は彼女の記鐘 はなか った)腹痛 、吐血 で フルノ、ム病院 に入院 していた。 4月 9日
外科 医 に ウエス ト・ロン ドン病 院 に居た ジ ョアン ・ラーク と知 られその 日に 自分で退 院 してい
る。
1
9
48年 7月 1
(
旧 彼女 は ガイ病 院 に ジ ョア ン ・マ -キ ン とい う名 で入院 したが、後 に これ は仮
名で あ りジ ョア ン ・ド・コベ リーの名前 を告 げ過 去 の手術 は全部 エ ジ ンバ ラで した、 と話 した
0日開腹手術 を行 っ
(エ ジ ンバ ラでは彼女 を知 らない と否定)。ガイ ブは穿孔性潰癌 を疑 い 7月 1
たが、沢 山の癒着 以外何 も異常 はなか った。手術 の 3日後 自分 か ら退院 し抜 糸 に も現れ なか っ
た。
1
950
年 1月 6日彼女 はいつ もの話 で、 -ル シー ・ド・コベ リー として ロイヤル ・フ リー病院
に入院 した。 持続 的 な痛み を訴 えていたが
1月 1
1日妹 が死 んだ といい退 院 した (どの病 院で も
8日彼女 は まだ -ル シー ・ド・コベ リー として、痛
死 にそ うな妹 の話 は していなか った )0 1月 1
み、血 を吐 いた と訴 えケンジ ン トン ・ノ、イス ト1
)- トで倒 れ てセ ン ト・メア リー ・アポ ッ ト病
0日に手術 は しない と告 げ られ る と彼女 は 胃チ ュ-ブを引 き抜 きす ぐ退院
院 に入院 した。 1月2
5日穿孔 の疑 いで開腹手術 を
す る ことを要 求 した。 同 じ 日遅 く彼女 は大学病 院 に入院 し、 1月2
0日にはいつ もの 自分か らの退院 が続 いた。 同
受 けた。癒 着 のほか何 の所見 もなか った。 1月3
月2日に退院 した。
日彼 女 はセ ン ト・バ ソロ ミュウ病院 に入院 し2
2月 7日か ら15日まで はセ ン トラル ・ミ ドルセ クス病院 に居 た- この話 の初 めの記載 にみ ら
れ る通 りであ る。我 々の所 を去 ってか らも彼女 は活動 し続 けた。 なぜ な ら 3月 7日ジ ェーン ・
-1
6
3-
ホ ブス としてエ リザベ ス ・ガ レ ッ ト・ア ンダー ソン病 院 に現 れたが救急 ベ ッ ドサ ー ビスを通 し
て ロイヤル ・フ リー病 院 に移 された。 その転院 は彼女 に とって不幸 で あ った。 なぜ な らば、 ロ
イヤル ・フ リー病 院 には他 の名前 で この年 の 1月居 た こ とがあ り病棟看護婦 、研修 医 に知 れ て
しまいただ ちに退 院 した。
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月2
7日彼女 は-ル シー ・ド・コベ リー としていつ もの痛 み と吐血 の話 で ミ ドルセ クス病 院 に
入院 、3日間泊 ま った。 ロイヤル・デ ボ ン&- クセ タ一病 院 に彼女 の照会 が な され てい る と知 り
彼女 は退 院 した。
4月 1
2日激 しい腹痛 と出血 を訴 え、 ロイヤル ・デボ ン&- クセ タ一病 院での部 分切除術 を待
ってい る と述べ ク ロイ ドソ総合病院 に入院 した。 ク ロイ ドソ総合病 院が ロイヤル ・デボ ン&クセ タ一病 院 に電話 し会話 が な され る と彼女 はベ ッ ドか ら飛 び出て衣物 を着 て 出て行 って しま
った。
4月 1
7日ノ、クネ 一病 院 に-ル シー ・シ ャクル トン として居 た こ とが知 れた。 そ してそれが彼
女 の消息 を聞 いた最後 であ る。
多分彼女 は過 去 に何 回 も彼女 を摘発 した ロイヤル ・デボ ン&- ク七 夕一病 院 の名前 を告 げ る
のを避 け、新 しい名前 と少 し違 った話 で彼女 の これ まで訪れた ことの ない残 された い くつ かの
病 院 を欺 し続 けてい るのだ ろ う。
ミュン ヒ/、ウゼ ン症候群 の症例 の発達過程 をあ ます所 な く表 してい る この奇 妙 な巡廻 は発表
す るに値 す る もの と思 い ます。又、将来彼女 と出違 うであ ろ う外科 医 ・内科 医 に も助 けにな る
ことで し ょう。
結
論
ミュン ヒ- ウゼ ソ男爵症候群 につ いて述べ 、 3例 の典型的症例 を報告 した。
これ らの患者 は病 院 に莫大 な時間 を浪 費 させ 、迷惑 をかけた。
この発表 の後 、新 しい症例 が見つ か るな どの応 答が あ る とすれ ば、 い くらか良 い こ とが な さ
れた ことにな るで し ょう。 さらに、 この状態 に対す る説 明が な され、病気 をつ く り出 した心理
的 よ じれの治癒 に導 くことが出来 るな らなお良いで し ょう。
この症例 につ いで 情報 を与 えて下 さった多 くの医師及 び記録係員、特 に症例 3の複動 の大部
分を追跡 して くれた カ ドウ ェル氏 に感 謝 します。
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