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[第 1 章]

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[第 1 章]
[第 1 章]
1. 1
緒言
分子インプリントポリマー(Molecularly imprinted polymer: MIP)は、抗体のような特異
結合性を有する合成高分子である。この MIP は、特異結合の対象となる鋳型物質の存在下
で、鋳型物質に対して配位するモノマーと、架橋性モノマーを共重合させることにより合
成できる。また、MIP は生体高分子に比べ簡便かつ安価に生産でき、物理的・化学的安定
性も高いという利点を持っている 1)。吉見らは、MIP 薄膜に対する溶質の拡散透過速度が、
鋳型物質の存在下で変化する現象を見出した 2)。この溶質拡散透過速度の変化は、鋳型物
質との特異的な相互作用による膜表面の MIP 層の形状変化、特に空隙率の変化に起因する
ものと考えられ、“ゲート効果”と命名された 3-5)。
本研究では MIP のゲート効果を利用すれば、あらかじめターゲットに指定した特定の分
子に応答して、溶質の拡散透過速度を自動調節する膜を開発できると考えた。このような
分子認識ゲート膜は、新しい機能性材料として幅広い分野へ応用することができる。例え
ば、透過速度自己調節機能を持つ透析膜や薬物送達システム(Drug Delivery System: DDS)
への応用が考えられる。
透析は重篤な腎不全患者の治療法として確立されており、患者の体内に蓄積した病因物
質を体外に除去することができる 6)。しかし、現在使用されている透析膜には除去成分を
選択する機能はなく、
血中の病因物質を分子量の差で除去しているに過ぎない。そのため、
生体に必須の低分子量の溶質も同時に除去する場合や、分子量の大きい病因物質を除去し
きれない、などの問題が残されている。そこで、特定の病因物質の血中濃度に応じて膜の
透過速度を制御できれば、上記の問題を軽減できる可能性がある。
また、薬物療法では、微量で強い治療効果を発現する反面、副作用が強く、投与量に慎
重にならねばならない薬物が数多い点は長年の課題となっている。このような薬物の有効
性と安全性を考慮すると、既存の薬物投与方法では十分とはいえない。このような薬物療
法の問題点を解決するために、薬効の最適化を目的として開発された投与法が DDS である
7)
。薬物放出を制御するカプセルには、pH 応答性高分子
場応答性高分子
14-16)
8-10)
、温度応答性高分子
、そして抗体によって分子認識能を付与した高分子
11-13)
、電
17, 18)
の利用が検討
されてきた。我々は、分子認識にともない溶質の拡散透過速度を変化させる MIP 膜も、薬
物の放出を制御する機能性材料に応用できると考えた。
そこで本章では、透析膜や限外ろ過膜などに汎用されている再生セルロース(RC)膜 6)
に対して MIP をグラフトし、この MIP グラフト膜に対する溶質の拡散透過速度に鋳型物
質、あるいは類似物質の存在が与える影響を調査した。ここで、MIP 膜に対する溶質の拡
散透過速度として、2 室回分式透析により総括物質移動係数 KL を測定した 6)。
また、グラフトした MIP は、既往研究で広く研究されているテオフィリン、あるいはカ
フェインをインプリントしたポリマー(Theo-MIP, Caffe-MIP)である 1, 17, 18)。テオフィリ
ン、カフェインは、本研究の応用分野においてターゲットする意味合いは薄いが、Theo-MIP,
Caffe-MIP は簡便に作製することができるため、膜を作製しゲート効果を評価するための
モデルケースと位置付けた。
1
[第 1 章]
1.2
既往研究
1.2.1
1.2.1.1
分子インプリントポリマー(Molecularly imprinted polymer: MIP)
ホスト−ゲスト分子認識化学 19)
生体の高能率、高選択的な分子認識プロセスを有機化学的な理解に基づいて模倣・再現
し、物質の分離、化学反応の制御、センサーなどに利用しうる新素材の開発に応用しよう
とする試みが「ホスト−ゲスト化学」として 70 年代に始まり、近年では「超分子化学」へ
展開されている。
「分子化学」は共有結合に基礎をおき、複雑な分子構造を制御する分野である。それに
対して、非共有結合性のゆるやかな分子間相互作用により組織化された多分子系の持つ、
複雑な化学的・物理的・生物学的性質を論じる分野が「超分子化学」である。
超分子化学は天然物、合成大環状化合物などの選択的結合の研究に端を発した。さらに
展望が広がり、現在は化学研究の新分野として分子認識が注目されている。超分子の諸成
分にはレセプター(receptor)と基質(substrate)と言う名称が使われてきた。この用語は、
生物学において、その構造と機能が高度に定義されたレセプター・基質相互作用の関係に
ならったものであり、「包接化合物」
、
「ホスト−ゲスト」といった表現でも記される。
生体におけるホスト−ゲストの関係は、酵素、抗体、レセプタータンパク質などにおい
て見られる。これらのホスト分子は、ゲスト分子と立体的に相互作用できる鍵と鍵穴の関
係のような相補的な構造を有する。ホスト分子の持つ特異結合部位に取り込まれたゲスト
分子は、多点かつ立体的にホスト分子と相互作用するため、結果としてホスト分子はゲス
ト分子に対し高い分子認識能を示す。
分子認識は、あるレセプター分子による基質とゆるやかな結合に伴うエネルギー、基質
の選択に伴う情報の二点から定義される。分子認識とは単なるゆるやかな結合ではなく、
構造的にはっきりと定義された分子間相互作用によるパターン認識過程である。例えば、
レセプターに基質が結合すると、結合に関与するエネルギー量と情報量によって特徴付け
られる複合体もしくは超分子が形成される。このように分子認識とは分子情報を、分子と
して記憶したり、超分子として読み出したりすることと定義できる。
人工的に合成されたホスト分子として、クラウンエーテル、クリプタント、シクロファ
ン、シクロデキストリン、カリックスアレーンなどの大環状配位子が挙げられる。
クラウンエーテルでは、クラウンエーテルがホスト分子、陽イオンがゲスト分子として
機能する。環状構造内に存在する酸素原子の非共有電子対が、カリウムイオンなどの陽イ
オンと相互作用するため、環の大きさに応じて陽イオンを選択的に取り込むことができる。
現在ではより高度な分子認識がなされるようになり、エナンチオマーの不斉認識も可能に
なった。生物化学との関連で、ホスト−ゲストの化学はさらに展開し、レセプター化学が
注目されている。
2
[第 1 章]
分子インプリントポリマーの概念と鋳型分子に対する特異結合性
1.2.1.2
分子インプリント法は Wulff や Mosbach によって開発された鋳型重合法の一種である 1, 17,
20)
。鋳型物質と呼ばれるゲスト分子の共存下で、配位性モノマー、あるいは機能性モノマ
ーと呼ばれる鋳型物質に配位するモノマーと架橋性モノマーを共重合させることにより、
鋳型物質に相補的な空孔を有し、分子形状を識別できるホスト機能を持つ共重合体を合成
する方法である。この方法は、配位性モノマーを選択することにより、任意の分子を認識
する材料を作成できるという利点を持っている。分子インプリント法の概略を Fig. 1-1 に
示す。
Complexation
Functional monomer
a) Covalent bonds
Template
b) Non-covalent
interactions
Crosslinking
monomer
Copolymerization
Removal of template
a) Dessociation
b) Extraction
Molecularly imprinted
polymer (MIP)
Formation of a recognition site
in polymeric structure
Fig. 1-1
Molecular imprinting
a) covalent approach
b) self-assembly approach
MIP の合成法として、Wulff らが開発した a) covalent approach20)と Mosbach らが開発した
b) self-assembly approach 1, 14)が代表的である。
3
[第 1 章]
まず、鋳型物質と相互作用する官能基と共重合に関与する官能基(ビニル基)を併せ持
つ配位性モノマーと鋳型物質の複合体を形成させる。このとき、a) では複合体形成に共有
結合を用いる。また、b) では各種相互作用(水素結合や静電的相互作用、疎水性相互作用、
双極子−双極子相互作用など)による自己組織化により、重合可能な鋳型物質−配位性モ
ノマー複合体を形成させる。鋳型物質に結合可能な官能基が少ない場合、あるいは結合反
応により鋳型物質の構造が変化する恐れのある場合には、a) 共有結合を用いる方法は適用
できないという欠点があり、b) 非共有結合を用いる方法が一般的である。
次に、鋳型物質−配位性モノマー複合体と架橋性モノマーを共重合させる。この操作に
より、鋳型物質の構造と相補的な空孔を有し、相互作用点に官能基を配置したポリマーが
得られる。さらに、このポリマーに結合している鋳型物質を抽出除去することにより、鋳
型物質と特異的に相互作用する部位を有するポリマーが得られる。a) では、鋳型物質とポ
リマーは共有結合により強く結合しているため、化学的処理により共有結合を開裂させる
必要がある。b) では、鋳型物質とポリマーは共有結合に比べて弱い相互作用により結合し
ているため、超音波洗浄などにより鋳型物質を抽出することができる。
以上の操作により得られたポリマーでは、分子認識部位にある配位性モノマー由来の官
能基は、鋳型物質に対して最適な結合距離および結合角をとって配置している。また、分
子の形状も鍵と鍵穴の関係でポリマーに認識され、結果として鋳型物質はポリマー中の分
子認識部位に空間的に認識される。したがって、ポリマーの三次元網目構造中に進入した
鋳型物質は、高分子中に形成された分子認識部位に特異的に結合する。
MIP は生体高分子に比べ簡単かつ安価に生産でき、物理的・化学的安定性も高い
8)
。
さらに MIP では、理論的にはいかなる物質でもそれに配位するモノマーさえあれば鋳型物
質として使用できるため、化学物質を特異結合する数多くの人工レセプターを、テーラー
メイドで作製できると期待できる。MIP の持つこれらの利点は、各種センサー、吸着剤、
レセプター機能を持つ生体模倣膜などへ応用できる。
4
[第 1 章]
1.2.1.3
分子インプリントポリマーの例
MIP の 一 例 と し て 、 Mosbach ら が 作 製 し た テ オ フ ィ リ ン イ ン プ リ ン ト ポ リ マ ー
(Theo-MIP) を Fig. 1-2 に示す。1章、2 章では、Mosbach らの研究を参考に全く同じ組成、
ほぼ同じ手順で Theo-MIP を作製している 1, 17)。
Crosslinking monomer
Ethylene glycol dimethacrylate (EDMA)
O
O
O
O
O
O
O
H
O
O
H
O
HN N
O
H
H3
O
NC
N
C O
H3
O
H
O
O
O
Methacrylic acid (MAA)
Initiator
O
Functional monomer
2,2’-Azobis(isobutyronitrile) (AIBN)
Extraction
Template
O
O
O
O
H
O
O
O
O
H
H
N
O
N
CN N
H3
C
H3
H
O
H
O
O
O
O
O
O
O
Rebinding
Radical
co-polymerization
Theophylline
O
Hydrogen bond
Other interactions
Fig. 1-2
Synthetic procedure of theophylline imprinted copolymer
Mosbach らは配位性モノマーにメタクリル酸(MAA)
、架橋性モノマーにジメタクリル
酸エチレングリコール(EDMA)、鋳型物質にテオフィリン、重合開始剤に 2,2’-アゾビス
イソブチロニトリル(AIBN)を用いた。また、これらを溶媒 N,N’-ジメチルホルムアミド
(DMF) 中で混合し、紫外線を照射することでラジカル重合を生じさせ Theo-MIP を作製
した。このポリマーは、超音波洗浄によりテオフィリンを抽出すると、再びテオフィリン
を選択的に結合できることが確認されている。
この Theo-MIP においては、鋳型物質であるテオフィリンのアミノ基とメタクリル酸の
カルボキシル基の間に静電的相互作用、同時に、テオフィリンの極性官能基との間に水素
結合が生じる。さらに、双極子−双極子相互作用、あるいは疎水性相互作用も同時に生じ
ていると予想される。
また、Mosbach らは、Theo-MIP を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の固定相カラ
ムに充填し、溶出時間から Theo-MIP のテオフィリンに対する特異結合性を評価した
17)
。
その結果、テオフィリンの類似構造物質であるキサンチン誘導体(カフェイン、3-メチル
キサンチンなど)に対して、テオフィリンを 100 倍以上結合した。また、Theo-MIP は、テ
オフィリン抗体を用いた酵素免疫定量法(enzyme- multiplied immunoassay technique: EMIT)
に比べても同等の、テオフィリンに対する高い選択結合性を示した。
5
[第 1 章]
今後、MIP の更なる発展には、特異結合部位の量、その有効率および分布を調べ、有効
な特異結合部位を数多く形成できるよう、重合過程を工学的に至適設計することが必要で
ある。そのためには、特異結合部位形成において強く影響すると考えられるゲルの内部表
面積、空孔体積、平均孔径を調査することも必要である。また、配位性モノマーを現在は
試行錯誤的に選択していることがほとんどであるが、鋳型物質との間の相互作用の種類や
その強度を明確にし、選択すべきである。さらに、これらの相互作用に起因した MIP の鋳
型物質認識機構を明らかにする必要がある。
1.2.1.4
鋳型物質(Template)と配位性モノマー(Functional monomer)
MAA は、テオフィリン・カフェインをインプリントする以外にも、s-トリアジン型の除
草剤をインプリントするなど、
多くの MIP 作製の際に用いられている 17)。
MAA 以外にも、
テオフィリン・カフェインをインプリントできるアクリル酸 21)、テストステロンをインプ
リントできる 2-ジエチルアミノエチルメタクリレート 22)、塩酸トリメチルアミノエチルメ
タクリレート、2-ジエチルアミノエチルメタクリレート 23)、アトラジンをインプリントで
きる 2-トリフルオロメチルアクリル酸 24)、シアル酸をインプリントできる P-ビニルフェニ
ルボロン酸 25) など多くの種類がある。これらの配位性モノマーは、共重合に関与するビニ
ル基と鋳型物質と相互作用しうる官能基(カルボキシル基など)を共に有している。
1.2.1.5
架橋性モノマー(Crosslinker)
架橋性モノマーのみで作製したゲルを用いたクロマトグラフィー分離でも、ある程度の
分子認識能を示す 24)。このことから、架橋された三次元網目構造自体も鋳型物質の大きさ
や形状を認識するために必要である。しかし、鋳型物質と配位性モノマーを適切な比率で
用い作成した複合体を共重合する場合に、最も高い分子認識能を示す MIP を作製すること
ができる。
6
[第 1 章]
1.2.1.6
希釈剤(Progen)
希釈剤とは、ポリマーを多孔質化する溶剤である。特に、非共有結合的アプローチでは、
溶媒は分子認識の効率を決定させる重要な要因となっている。MIP の多くは比較的非極
性・非プロトン性溶媒、例えばクロロホルムやトルエンを使って合成される。アルコール
のようなプロトン性溶媒は水素結合を競合的に阻害するため、ほとんど使用されない。ク
ロロホルムも水素結合に対してかなり強いプロトン供与体であることが知られており
26)
、
鋳型物質によっては N,N-ジエチルホルムアミド(DMF)やジメチルスルホキシド(DMSO)
などの希釈剤を使用した方が良い場合もある 1, 17)。
また、鋳型物質に類似構造を持つ希釈剤を使用すると、他の希釈剤を用いて作製した
MIP よりも鋳型物質に対して高い特異結合性を示す MIP を作製することができる。この効
果は「溶媒インプリンティング効果」と呼ばれている 27)。以上の観点から、MIP 作製時の
溶媒の選択は、生成するポリマーの構造や特異結合能に影響を与えると考えられる。
1.2.1.7
MIP の組成
作製時のモノマー混合物のモル比として、鋳型物質:配位性モノマー:架橋性モノマー:
溶媒=1:8:40:120 が典型的な MIP の組成とされている 8)。この条件は、組成を変えて作製
した MIP の特性評価を行い、その中で最高の特性を発揮する組成を見出すという試行錯誤
法により決定されている。しかし最近、コンビナトリアルケミストリーの手法を応用して
最適組成を決定する方法が開発された 28)。
また、重合前のモノマー混合物の最適組成に関しては信頼できる評価法を開発すること
が重要である。鋳型物質−配位性モノマー複合体については 1H-NMR を用いて研究された
例がある 29)。
さらに、配位性モノマー、あるいは配位性モノマーと同じ官能基を持ち類似構造を有す
る化合物で、鋳型物質と架橋性モノマーの混合物を滴定し、その混合物中の鋳型物質−配
位性モノマー複合体を UV で調査する方法もある 30, 31)。混合物の UV スペクトルのわずか
な変化を検討することにより、モノマーと鋳型物質の最適混合比の決定、新しい配位性モ
ノマー、鋳型物質の構造について検討されている。
7
[第 1 章]
1.2.1.8
インプリントにおけるラジカル重合
鋳型物質に対する特異選択性(インプリント効果)の向上には、複合体の安定化が重要
である。非共有結合型のインプリントでは、鋳型物質と配位性モノマーが水素結合や静電
的相互作用などの弱い結合で自己組織化した複合体を架橋することで、ポリマー中に鋳型
物質に対する特異結合部位を形成する。このとき、複合体の安定性は重合時の温度に依存
することから、重合時の温度条件が最終的に生成される MIP のインプリント効果に影響を
与える。
本論文の第 1 章から第 4 章においては、配位性モノマーに MAA、架橋性モノマーに
EDMA、ラジカル重合開始剤に AIBN を用いて、鋳型物質テオフィリンをインプリントし
た。AIBN を開始剤として用いた MAA と EDMA のラジカル共重合反応は Fig. 1-3 のよう
に進行する。
N N
CN
hν or ∆
2
・ +
N2
CN
NC
NC
COOH
・
COOH
NC
CN
HOOC
O
O
COOH
O
COOH
O
O
O
O
COOH
O
Fig. 1-3
AIBN の分解反応により開始される MAA と EDMA のラジカル共重合反応
テオフィリンのインプリントにおいては、MAA とテオフィリンの複合体を安定化させ
るため、低温下でラジカル重合を生じさせる必要があると報告されている
32)
。AIBN は熱
によっても紫外線照射によっても分解反応を起こしラジカルを発生させるが、エントロピ
ーの増大にともなう複合体の不安定化を防ぐため、本研究では紫外線照射によってラジカ
ル重合反応を開始した。
8
[第 1 章]
1.2.1.9
MIP の鋳型物質に対する選択的応答性
吉見らは、テオフィリンをインプリントしたポリマーをラジカル重合法によりグラフト
したインジウム−スズ酸化物(ITO)電極を作製した(Theo-MIP-ITO)2)。さらに、この電
極を作用極として用いた Fig. 1-4 のような実験系で、フェロシアン化カリウムをマーカー
とするサイクリックボルタンメトリーを行い、テオフィリン存在下における作用極の酸化
電流密度を測定した。
Electrode
Recorder
WE: working electrode
Theo-MIP or Non-MIP
grafted on ITO
Potentiostat
CE: counter electrode
Non-treated ITO
Salt bridge
RE: reference electrode
Ag/AgCl electrode
Test solution
Redox marker
5mM potassium ferrocyanide
WE
CE
RE
Supporting electrolyte
100mM Potassium nitrate
Template
0 or 5mM theophylline
Fig. 1-4
Polymer
Saturated KCl solution
Experimental apparatus for cyclic voltammetry
その結果、フェロシアン化カリウムの酸化電流値は、テオフィリンの影響を受け、2 倍
以上に増大した。それに比べ、同作用極を用いたテオフィリンに類似した構造をもつカフ
ェイン存在下での酸化電流密度には、非存在下と比べ有意な変化は見られなかった。
一方、何もインプリントしていない、単なる共重合体をグラフトしただけの電極
(Non-MIP-ITO)を作用極に用いた場合、フェロシアン化カリウムの酸化電流値はテオフ
ィリンの影響をほとんど受けなかった。
この結果、MIP の特異結合性という挙動が大きく現れていることから、鋳型物質に対し
て選択的応答性があることが示された。
また、鋳型物質であるテオフィリン存在下でマーカー物質であるフェロシアン化カリウ
ムの酸化電流値が増大したことから、ITO 電極表面にグラフトされている MIP 層の形状が、
テオフィリンとの相互作用により変化したことが示唆され、鋳型物質存在下でのゲート効
果が確認された。
9
[第 1 章]
1.2.1.10
鋳型物質存在下における MIP ゲルの表面形状の変化
吉見らは原子間力顕微鏡(AFM: SDM-9500, 島津製作所)を用いて分子インプリントゲ
ルグラフト ITO 電極の表面形状解析を行った 2)。
AFM は 1986 年に G.Binning、C.F.Quate および C.Gerber らによって、別々に開発された
探針走査型の顕微鏡である。試料と探針との間に働く力を検出し、探針を表面に沿って走
査することで、表面の像を構成する。原子的スケールの空間分解能を持ち、特殊な動作環
境を必要としない。また、一般に近傍する 2 つの物質間には、必ずお互いにファンデルワ
ールス力などの力が生じるため、AFM では試料に対する制約が原理的には存在しない。ト
ンネル顕微鏡で観察できない電気的絶縁性試料に対しても観察が可能である。一般に無極
性の中性原子間の相互作用は、遠距離で分散力による引力が、近距離では交換相互作用に
よる斥力が働く。AFM においては、曲率半径の小さな探針を持つ板バネ状の感知レバーの
曲がりを測定することにより、探針−表面間に働くこの局所的な力を検出し、試料表面の
力を二次元的に情報から像を構成する。この力を一定にするように試料の z 方向の位置を
制御しながら、試料を走査することで、表面の微細形状もまた知ることができる。
さらに、測定時に高真空である必要がないため、生体試料の観察や液相中での測定も行
うことができる。
吉見は、鋳型物質存在下では分子インプリントゲルグラフト ITO 電極表面の凹凸が大き
くなり、鋳型物質の存在が分子インプリントゲルの空隙率を増大させたことを明らかにし
た。Fig. 1-5 はその様子を表した AFM 画像である。
Fig. 1-5
Morphological change of MIP-grafted electrode by the presence of template
left)Surface of MIP-grafted electrode in the absence of template
right)Surface of MIP-grafted electrode in the presence of template
この AFM 画像から、ITO 表面にグラフトされた分子インプリントゲルの表面の形状は
10
[第 1 章]
変化していることが示唆されるが、AFM では MIP 層一部分の情報しか得られないため、
MIP 層全体の空隙率の変化を定量的に評価できないのが現状である。本研究においては、
鋳型物質による MIP 層の膨潤収縮の挙動を定性的に評価するために AFM を利用した。ま
た、AFM からの情報では表面の形状が変化していることは確認できても、形状変化が起き
るときに鋳型物質と MIP との間にどのような相互作用が生じているのかは特定できない。
11
[第 1 章]
1.2.2
1.2.2.1
透析 6)
人工腎臓
体外循環している血液中から透析膜を介して病因物質を除去した後、浄化した血液を再
び体内に戻すことにより、腎不全患者の治療に用いられているのが現行の人工腎臓である。
透析は、膜中での拡散速度の差を利用して、血液中の溶質を分子量の差で除去している。
人工腎臓の主な役割は、尿素、クレアチニンなどのタンパク質代謝産物の除去、血中イオ
ンのバランス、とくに酸‐塩基平衡の調節である。また、透析による溶質除去と同時に、
圧力差を推進力として患者の体内に蓄積した過剰水分の除去も行っている。透析を主とす
る血液浄化では、対象となる病因物質の分子量の範囲によって除去法が選択されるが、免
疫疾患におけるグロブリン分画のタンパク質、免疫複合体、抗体などの除去、薬物中毒患
者からの薬物の除去、肝不全患者からのビリルビンの除去、家族性コレステロール血症に
おける低密度リポタンパク質の除去などが行われている。
1.2.2.2
透析膜
一般に汎用される RC 系透析膜は尿素、クレアチニン、ブドウ糖など、分子量の小さい溶
質は透過するが、赤血球などの血球成分や、分子量 1 万以上のタンパク質などは透過しな
い。しかし、最近は β2-ミクログロブリン(MW 11800) など分子量の大きい病因物質の除去
も意識されている。
透析現象を考える際、膜の細孔によるふるい分けの考え方を採用するとイメージしやす
い。細孔の中に水層が存在し、この水層を溶質が拡散するモデルを考えると、膨潤度の増
加によって溶質が通過しやすくなることが容易にイメージできる。
透析膜に要求される条件は、溶質透過速度と高い透水性を有し、しかもそのバランスよ
く、湿潤時の機械的強度や生体適合性が充分に高く、滅菌操作に対して耐性を持ち、さら
に安価なことである。
しかし、これらの条件を同時に満たすことは極めて難しい。例えば、一般に膜の強度と
溶質透過性は相反する条件である。また、疎水性の膜は水分子が高分子鎖の間を通るとき
抵抗を受けにくいため透水性に優れているが、一方タンパク質が吸着しやすいという欠点
もある。
透析膜の素材は多種多様であり、RC、酢酸セルロースといったセルロース由来の透析膜、
またポリメチルメタクリレート、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニト
リル、ポリスルホンなどの合成高分子透析膜が用いられている。その中で最も広く用いら
れているのは銅アンモニア法によって作製された RC 膜であり、低価格、溶質透過能およ
び機械的強度に優れていること、などの利点から長い間実用されている。
通常、溶質除去に関して透析膜は充分な性能を有していると言われているが、透析患者
の数多くの合併症を考えると、除去しきれない高分子量の病因物質はまだ数多いと考えら
れる。
12
[第 1 章]
近年、分子量の大きい病因物質が明らかにされており、透析膜の透過限界分子量を更に
大きくする改良がなされている。例えば、長期透析患者に見られる手根管症候群の関連物
質として、β2‐ミクログロブリンが同定されて以来、透析速度が特に大きいハイパフォー
マンス透析膜による除去が試みられている。この高性能透析膜も溶質の選択的除去能およ
び生体適合性の観点から見ると不充分な点が多い。低分子量タンパク質を積極的に除去し、
有用成分であるアルブミン(MW 60000)などを維持するには、鋭い分子量分画特性を有する
透析膜が要求される。しかし、生体にとって必要な低分子量の溶質の透析による漏出は避
け難い。
透析の原理を考えると、溶質の選択的除去は難しいため、特定の有害物質の血中濃度に
応じて拡散透過速度を制御できる透析膜を作製できれば、その利便性は高い。
13
[第 1 章]
1.2.2.3
透析液
現在行われている通常の透析では、膜を介して血液と向流に透析液を流すことにより、
溶質分離の効率を上げている。しかし、一般に使用されている透析膜は分子量の小さい溶
質に関してはほとんど非選択的に透過してしまうため、透析液組成で溶質の除去速度を制
御している。透析液の組成は正常な血清イオン組成に近いが、腎不全患者の血清イオン濃
度の異常を正常な状態に戻すため、体内から除去すべきイオンの透析液中の濃度は血清中
の濃度より低く、体内に補給すべきイオンの透析液中の濃度は血清中の濃度より高く調製
されている。通常は、何種類かの市販透析液の中から適当な組成を有する透析液を選択す
る。患者によって血清イオンの濃度は異なるので、患者に適した透析液を処方するのが理
想である。しかし、このような処方は行われておらず、透析器による選択のみで対処して
いるのが現状である。
実際には、透析膜の透過速度に応じて透析液濃度を選択する。例えば、透析膜の透過速
度が大きい場合は、体内に補給するカルシウムイオンや炭酸水素イオンなどの透析液濃度
を標準濃度より低く抑える必要があり、体内から除去するナトリウムやカリウムなどのイ
オンの透析液濃度を標準濃度より高くしなければならない。また,体内に補給するイオン
の流入量は濾過流量の影響を強く受ける。炭酸水素イオンなどの体内への流入量は濾過流
量が大きくなると小さくなる。
このように、透析液の処方は多くの要因に左右されるため、透析液の調節だけでは、患者
の容態に合わせた治療が難しいと考えられ、透析膜自体の改質が試みられている。
14
[第 1 章]
1.2.3
1.2.3.1
DDS7)
DDS の目的
生体の恒常性はきわめて緻密な調節機構によって維持され、ホルモンやサイトカインな
どの生理活性物質が重要な役割を果たしている。これらの作用はレセプターとの相互作用
などによって制御されているが、その分子機構も解明されつつある。しかしながら、生体
全体の調節においてはこのような生化学的・静的な因子だけでなく、さらに体内動態の空
間的・時間的制御と組み合わされることによって、緻密な調節が行われている。
したがって、
サイトカインなどの生理活性物質を治療目的で薬物として投与する場合、生体動態の制御
が効果の決定要因となる。
また、近年では、微量でも強い治療効果を発現する反面、副作用も強く投与に工夫が必
要な薬物も数多く開発されている。既存の薬物投与形態では、副作用の強い薬物の導入な
どの場合には未だ不十分な点が多く、有効性と安全性を両立させる最適な薬物投与形態が
望まれている。これらの薬物投与の最適化を意図し、薬物の体内動態の精密制御を目的と
した新しい投薬形態が DDS である。
1.2.3.2
DDS における薬物の動態制御の対象と方法
現在、DDS の開発においては、種々の薬物生体移行過程のうち、1)生体に対する薬物
供給、2)生体表面吸収障壁の通過、3)臓器、組織間での分布の振り分け、の 3 つの過程
が制御対象として最もよく取り上げられており、それぞれの過程に対し、Fig. 1-6 のように
それらを制御する方法とそれを具現化した DDS が開発されている。薬物によっては過程 1
である薬物供給速度をコントロールすることを目的とする場合が多い。作用部位で適切な
薬物濃度−時間パターンを得ることが可能な場合も多く、このためコントロールドリリー
ス型製剤の開発が活発である。
15
[第 1 章]
Fig. 1-6
Development of DDS 7)
また、薬効は、最終的に特定の作用部位に薬物分子が到達し作用することによって発現
され、作用部位以外への薬物の移行は副作用の原因となる。したがって、3)の過程を制御
し薬物を標的作用部位に選択的に作用させることを目的とした、ターゲティング技術の開
発も進められている。
16
[第 1 章]
1.2.3.3
インテリジェントマテリアルの DDS への応用
DDS においては、必要な機能を有する材料の開発も必要である。各種材料のうち高度な
機能性を有したインテリジェントマテリアルは DDS の開発に大きく貢献する。特に外界の
変化を化学シグナルとして検知し、適当な応答を示すことができる刺激応答性を有する材
料が、コントロールドリリースやターゲティング機能を有する DDS の機能材料として応用
されている。
本研究で作製する MIP 膜も、外界からのシグナルとなる化学物質を鋳型物質として作製
すれば、DDS の機能材料として幅広い応用が期待できる。MIP 膜の利点として、現状の
DDS ではある化学物質に対して個別のインテリジェントマテリアルの開発が必要となる
が、MIP の場合は配位性モノマーの選択により、化学物質に対して応答する数多くの膜を
オーダーメイドできる点が挙げられる。また、ゲート効果の機構が解明できれば、特定の
物質の存在に応じて、溶質の透過を制御する膜の設計が期待でき、DDS 機能材料の開発に
貢献できる可能性がある。
考えられる応用例としては、制癌剤やインシュリンを内包するためのカプセルが挙げら
れる。がん細胞からは腫瘍成長因子や血管誘導因子などの化学物質が放出されるため、そ
れを鋳型物質とする MIP 膜でカプセルを作製し、制癌剤を内包すれば、がん細胞の活動が
活発なときは制癌剤の放出も多くなり、がん細胞からの信号が少ない場合は制癌剤の放出
は少なくなるという放出制御が可能である。これにより、薬効と副作用軽減の両方が実現
できる。また、グルコースを鋳型物質とする MIP グラフト膜でインシュリンを内包すれば、
インシュリンの放出制御ができるため、人工膵臓の開発も期待できる。このような応用例
を考えても MIP グラフト膜の実用性は高いといえる。
17
[第 1 章]
理論
1.3
1.3.1
1.3.1.1
平膜に対する溶質透過速度の評価 6)
総括物質移動係数の定義
透析器における物質移動を考えるとき、総括物質移動抵抗(総括物質移動係数の逆数)
には、透析膜による物質移動抵抗に加えて、透析膜の両側に形成される境膜による物質移
動抵抗が加わる。その様子を Fig. 1-7 に示す。
Boundary
film 1
Boundary
film 2
Membrane
JS
CB
CBi
CBM
1
1
1
kB
kM
kD
CDi
CDM
1
KL
Fig. 1-7
CD
Concentration profile and mass transfer of solute across dialysis membrane
境膜内では分子拡散のみによって溶質が移動するため、血液側境膜、透析膜、透析液側
境膜による 3 つの物質移動抵抗が存在する。これらの抵抗を含めて溶質透過流束を考えた
時の物質移動係数が「総括」物質移動係数である。境膜モデルでは、溶質透過流束 JS は
J S = K L (C B − C D )
で与えられる。血液側と透析液側の境膜物質移動係数を kB, kD とすると
J S = k B (C B − C Bi )
= k D (C Di − C D )
また溶質透過係数を kM とすると、膜面において不連続性が存在するため
Dm
(CBM − CDM ) = Dm K d (CBi − CDi )
∆X
∆X
= km (CBi − CDi )
JS =
となる。
18
[第 1 章]
ここで、Dm は膜内拡散係数、Kd は平衡分配係数で、CBM/CBi および CDM/CDi に等しい。
また、膜内拡散係数に平衡分配係数を乗じた値を膜の厚みで割った値は溶質透過係数 kM
に等しい。この溶質透過係数は溶質、温度によって変化する膜固有の値で、溶質の膜への
溶解および膜の多孔性の影響を含んでいる。
したがって、平面透析膜の総括物質移動係数 KL は次式で表される。
1
1
1
1
=
+
+
K L kB kM kD
1.3.1.2
平面透析膜の性能評価
平面透析膜の溶質透過係数の厳密な測定をするには、恒温になるように工夫した二室回
分型透析器を用いた非定常透析実験を行う。片側に純水、反対側に濃度の薄い試験液(尿
素、クレアチニンの水溶液など)を満たし、両側の溶質濃度を経時的に測定すると、Eq.
(1.1)により総括物質移動係数 KL が求められる。
KL =
ln(∆C1 /∆C 2 )
 1
1 
A + (T2 − T1 )
 Va Vb 
(1.1)
ここで、∆C1、∆C2 はそれぞれ測定時間 T1、T2 における 2 つの相の間の濃度差、A は溶質
が透過する膜の有効断面積、Va および Vb は 2 つの容器の容積である。少量の試料を取り出
し、試料の濃度を断続的に測定する。この場合、測定された濃度の対数を時間に対してプ
ロットして得られる直線の勾配により総括物質移動係数 KL が求められる。次に、Eq.(1.1)
を導出する。
A相 膜表面積 B相
A[m2] CB(t)
VB
CA(t)
VA
t=0のとき、溶質濃度はそれぞれ
CA(0)=C0[mol/l]
CB(0)=0[mol/l]
流束:J(t)=P・A・
(CA(t)−CB(t))
膜
高濃度側の相から移動する溶質の単位時間当たりのモル変化は
dC A ( t )
⋅VA = J( t )⋅ A
dt
ここで、Eq (3.2)は低濃度側の相で増える mol 数に等しいので
… (1.2)
dC B ( t )
⋅ VB = J ( t ) ⋅ A
dt
以下の条件で積分すると、時間変化を与える Eq (1.4)を得る。
… (1.3)
−
−
19
[第 1 章]
= C0 , C = 0
A
A
B
∞
t = ∞ ; C A = C∞
=
C
B = CB
A
t = 0 ;C
 (V + V B )

AK L t 
= exp  − A
 V A・V B

… (1.4)

C 
(V + V B )
AK L t
ln 1 − B∞  = − A


V
・
V
C
A
B
B 

… (1.5)
1−
CB
C B∞
これを書き換えて
Eq.(1.5)に従い、二室回分式透析における任意の時間(t1、t2)での濃度(C1、C2)を
測定することで KL を算出できる。
20
[第 1 章]
1.3.2
Malachite Green 染色によるアニオン性ポリマーグラフトの確認
Malachite Green は、明青緑色の塩基性染料でトリフェニルメタン系染料の一種である。こ
の色素は、Fig. 1-8 のような窒素が正電荷している共鳴構造を有するカチオン性色素であり
負荷電体に化学吸着するため、負電荷の存在を確認できる 33)。
本章において、ラジカル重合によって作製した MIP 膜は、配位性モノマーに由来するカ
ルボキシル基を有するため、水溶液中では負電荷を有している。したがって、本研究では
Malachite Green により、グラフト前後における膜荷電の変化を観察することにより、グラフ
トポリマーの存在を定性的に確認した。
N(C H 3 ) 2
+ N(C H 3) 2
Fig. 1-8
Malachite green の共鳴構造
21
[第 1 章]
1.4.
1.4.1
実験方法
モノマーの蒸留
配位性モノマーの MAA と架橋性モノマーの EDMA に対して減圧蒸留を行った。その際、
重合禁止剤としてヒドロキノンをモノマー80ml に 0.1g の割合で加えた。なお、4mmHg ま
で減圧した場合、MAA では沸点は 352K、EDMA は 428K となった。蒸留後、MAA、EDMA
は遮光して冷所で保存した。ここで使用した試薬は全て和光純薬株式会社(大阪)から入
手した。
1.4.2
RC 膜に対するイソプロペニル基の導入
5×5cm の RC 膜(Cuprophan®150M、AKZO、Germany)を 3-メタクリルオキシプロピルト
リメトキシシラン(3-MPS、信越化学、東京)とヒドロキノンを含有した 10wt%トルエン
溶液中に浸漬し、セパラブルフラスコ内において 353K で 4 時間反応させ、イソプロペニル
基を導入した。反応終了後、膜を取り出してメタノールで洗浄した。また、乾燥して硬化
すると膜が破れてしまうため、メタノール中で保存した。
1.4.3
3-MPS 処理膜への MIP グラフト
シランカップリング剤処理した膜に対する MIP グラフト手順を Fig. 1-9 に示す。鋳型物
質であるテオフィリン 0.62g、あるいはカフェイン 0.74g と、配位性モノマーである MAA 1.2g、
架橋性モノマーである EDMA 12.3g、重合開始剤 AIBN0.35g を含有した DMF 混合溶液 33ml
中に 3-MPS 処理した RC 膜を入れ、窒素ガス雰囲気下でブラックライトを 4 時間照射しラ
ジカル重合させた。EDMA と鋳型物質に配位した MAA が、膜表面に導入したイソプロペ
ニル基を巻き込みながら膜表面で共重合する。
ポリマー生成後、テフロン棒でゲルを砕き、膜を傷つけないように注意しながら取り出
した。この膜を蒸留水中で約 1 時間超音波洗浄することによって、余分に付着したポリマ
ーの除去、
および MIP 膜中から鋳型物質を抽出した。この膜を Theo-MIP あるいは Caffe-MIP
膜とした。また、インプリントしていない単なる共重合体 Poly(EDMA-co-MAA)をグラフ
トした膜も作製した。これを Non-MIP 膜とした。
22
[第 1 章]
OH
OH
3-methacryloxypropyltrimethoxysilane
/toluene (453K, 4hr)
OH
Cellulosic membrane
H2 C
OH
HO
O
HO
O
H 2C
C
CH 3
H2 C
C
CH 3
O
OH
HO
HO
CH 3
Functional monomer( MAA )
Cross linker( EDMA )
Initiator( AIBN )
Template
(theophylline or none )
Solvent (DMF)
Ultraviolet (365nm)
O
C
O
O
MIP-grafted membrane
Fig. 1-9
Grafting procedure of theophylline-imprinted polymer onto cellulosic membrane
23
[第 1 章]
1.4.4
二室回分式透析による MIP グラフト膜に対する溶質拡散透過速度の測定
Theo-MIP 膜、あるいは Non-MIP 膜に対するクレアチニンの KL を、二室回分式透析実験
により測定した。透析実験装置および溶液の組成を Fig. 1-10 に示す。また、本研究で用い
た二室回分型透析器およびスターラーチップの仕様を Table 1-1 に示す。
透析器の片側を蒸留水、反対側を 2.7mM クレアチニン溶液 25ml で満たし、ストロボスコ
ープ(Testo, Germany)で攪拌子の回転数を 600rpm に調節した後、両室の溶液から 10 分毎
に 0.2ml ずつサンプリングした。得られたサンプルにピクリン酸 5ml を加えた後、37℃の恒
温槽内で加温し発色させ、吸収波長 520nm における吸光度を吸光光度計(UV-1600PC、島
津、京都)により測定した。この吸光度からクレアチニン濃度を算出し、その経時変化か
ら、クレアチニンの KL を算出した。また、テオフィリン存在下・非存在下、テオフィリン
に類似した分子構造をもつカフェイン存在下でのクレアチニンの透過速度を KL により比較
した。
Creatinine
initially 2.7mM
Creatinine
initially 0mM
Template
0mM or 5mM
Template
0mM or 5mM
MIP grafted
cellulosic membrane
Magnetic stirrer
Stirring bar
Batch dialyzer
Fig. 1-10
Experimental apparatus for batchwise dialysis
Table 1-1
Size of batch dialyzer and stirring bar
Volume [ml]
Membrane area [cm2]
Length of stirring bar [cm]
Diameter of stirring bar [cm]
25
7.07
1.5
0.5
得られた KL を用いて、Eq.(4.1)からゲート効果を評価した。

 K in the presence of theophylline
Degree of gate effect [%] ≡  L
× 100
(4.1)
− 1 in
the
absence
of
theophyll
ine
K

 L
24
[第 1 章]
1.4.5
Malachite Green 染色によるアニオン性ポリマーグラフト成否の確認
0.1M-HCl 10ml に Malachite Green 0.1g を溶解したものを染色液とし、作製した MIP 膜を
それぞれ染色液に浸した。10 分ごとに MIP 膜を取り出して、余分に付着した染色液を蒸留
水で洗い流した。この操作を、3 回繰り返し、染色の度合を比較した。
25
[第 1 章]
1.5. 実験結果および考察
1.5.1
重合操作による RC 膜表面の荷電状態の変化
未処理 RC 膜と分子インプリントをグラフトした RC 膜を Malachite Green により染色し、
その度合を比較した。これにより、MIP グラフト操作によって、膜表面が負荷電している
様子を確認できる。
Fig. 1-11 は Malachite Green 染色液に 40 分間浸した後の膜である。左側が Theo-MIP 膜、
右側が未処理 RC 膜である。ラジカル重合法によってグラフト操作を行った RC 膜の方は青
緑色に染められたが、未処理 RC 膜の方は全く染色されていなかった。これは、未処理 RC
膜の表面に比べ、1.4.2.3 の手順でグラフト操作された RC 膜表面には負電荷がより多く存在
することを意味する。この負電荷の増加はラジカル重合法による MIP のグラフト操作によ
るものであり、アニオン性ポリマーが表面に修飾されたものと考えられる。
以上の結果から、ラジカル重合法による MIP のグラフトが、RC 膜に対して有効に行われ
ていることが示唆された。
26
[第 1 章]
Fig. 1-11
Dye of untreated and MIP-grafted membrane by malachite green
left) MIP-grafted membrane, right) untreated membrane
27
[第 1 章]
1.5.2 Theo-MIP 膜、Caffe-MIP 膜の溶質拡散透過速度にテオフィリン、カフェインが与え
る影響
透析実験により求めた KL の値を比較して、Theo-MIP 膜に対するクレアチニンの拡散透過
速度に、鋳型物質であるテオフィリン、および鋳型類似物質であるカフェインが与える影
響について調査した。結果を Fig. 1-12 に示す。
まず、未処理 RC 膜と 3-MPS 処理膜を比較する。RC 膜は高分子鎖が幾重にも重なって構
成されており、各高分子鎖同士は水素結合で結び付けられているが、水素結合は共有結合
に比べて弱い結合であるため、3-MPS 処理により結合が切れている可能性が考えられた。
局所的に RC 膜の構造が壊れ、水分子を取り込む隙間が増えることにより、膨潤度が増大し、
溶質の透過も速くなると予想したが、実際には 0.2µm/s 程度の僅かな減少しか認められなか
った。シランカップリング剤 3-MPS をトルエン中 353K で 4 時間反応させても基材である
RC 膜の溶質透過性はほとんど変化しないことが示唆された。
次に、MIP を 3-MPS 処理膜に対してグラフトすると、さらにクレアチニンの透過速度が
減少することがわかった。未処理膜、3-MPS 膜に比べて Theo-MIP の方がクレアチニンの透
過が遅いというこの結果は、共重合により RC 膜表面にポリマーがグラフトされ、溶質の透
過を阻害していることを示唆している。
鋳型物質が溶液中に存在する場合としない場合を比較して、Theo-MIP の透過速度には有
意な変化が見られた。溶液中のテオフィリン濃度が 5mM の場合は、テオフィリンやカフェ
インが存在しない場合、あるいは 5mM カフェインが存在する場合と比較して、クレアチニ
ンの総括物質移動係数は約 23%増加した。一方、類似物である 5mM カフェインを存在させ
た場合のクレアチニンの総括物質移動係数は、溶液中にテオフィリンやカフェインが存在
しない場合との間には有意な差は見られなかった。
28
[第 1 章]
Untreated membrane
3-MPS-treated membrane
Theo-MIP membrane
+23 %
±0 %
0.00
1.00
2.00
3.00
4.00
Overall mass transfer coefficient K L [µm/s]
Fig.1-12
Comparison of the overall mass transfer coefficients of creatinine across the
theophylline-imprinted membrane
29
[第 1 章]
30
[第 1 章]
次に、Caffe-MIP のクレアチニンの透過速度に、鋳型物質カフェイン、および鋳型類似物
質テオフィリンが与える影響について調査した。結果を Fig. 1-13 に示す。
溶液中のカフェイン濃度が 5mM の場合、共存物質がない場合に比べてクレアチニンの総
括物質移動係数は 7%程度減少した。また、カフェイン濃度が 10mM の場合も同様に 7%程
度減少した。10mM と 5mM において減少の割合がほぼ一致したことから、クレアチニンの
透過速度に変化を与えるために必要なカフェインの量は 5mM 以下の濃度で足りることが分
かった。一方、溶液中のテオフィリン濃度が 5mM の場合、共存物質がない場合に比べてク
レアチニンの総括物質移動係数は 15%程度増加した。Caffe-MIP 膜における KL の増減に与
えるテオフィリン、カフェインの作用は、Theo-MIP 膜での作用とは全く逆の傾向である。
テオフィリン、またはカフェインをインプリントした膜は、透析時にテオフィリンが存
在した場合とカフェインが存在した場合とでは、拡散透過速度の変化の仕方が明らかに異
なっていた。これらの変化は、鋳型物質との特異的な相互作用による膜表面の MIP 層の形
状変化に起因するものと考えられる。また、ゲート効果の増減の方向が Theo-MIP 膜、
Caffe-MIP 膜で異なることから、MIP との相互作用による MIP 層の膨張収縮の機構が、鋳型
物質ごとに異なることが示唆された。
31
[第 1 章]
Theophylline/caffeine 0mM
Theophylline 5mM
+6%
Caffeine 5mM
-7%
Caffeine 10mM
-7%
0.00
1.00
2.00
3.00
4.00
Overall mass transfer coefficient K L [µm/s]
Fig. 1-13
Comparison of the overall mass transfer coefficients of creatinine across the
caffeine-imprinted membrane
32
[第 1 章]
1.5.3
Non-MIP の溶質拡散透過速度にテオフィリン、カフェインが与える影響
さらに、Non-MIP 膜についても同様の二室回分式透析を行い、クレアチニンの KL にテオ
フィリン、カフェインが与える影響を調査した。結果を Fig. 1-14 に示す。
Non-MIP を用いた場合、
テオフィリン存在下ではクレアチニンの透過速度は 6%減少した。
同様にカフェイン存在下でも 7%減少した。
以上の結果から、Poly(EDMA-co-MAA)をグラフトした透析膜は、元来テオフィリン、
またはカフェインの存在により拡散透過速度が減少する性質を持っていると言える。しか
し、1.5.2 の結果と併せて考察すると、この Poly(EDMA-co-MAA)グラフト膜の性質は、
テオフィリンやカフェインでインプリントすることで、テオフィリンとカフェインを識別
し透過速度を変化させる性質が付与されたと言える。共重合の際に鋳型物質を共存させる
だけの簡便なインプリント操作であっても、テオフィリンとカフェインを識別しうる特異
結合部位が Poly(EDMA-co-MAA)内に形成されたことが示唆された。
以上の議論は、KL による比較であるが、攪拌子の回転数を固定して測定した結果である
ため、境膜抵抗の影響は一定であると予想できる。そのため、得られた KL の変化は溶質透
過係数の変化に起因すると言える。
33
[第 1 章]
Theophylline/caffeine 0mM
Theophylline 5mM
-14%
Caffeine 5mM
-14%
0.00
1.00
2.00
3.00
4.00
Overall mass transfer coefficient K L [µm/s]
Fig. 1-14
Comparison of the overall mass transfer coefficients of creatinine across
the Non-imprinted membrane
34
[第 1 章]
総括
3-MPS 処理、およびラジカル共重合により、RC 膜上に Theo-MIP、あるいは Caffe-MIP
をグラフトした。これらの膜に対するクレアチニンの拡散透過速度にテオフィリン、ある
いはカフェインが与える影響を調査したところ、以下の知見を得た。
1. RC 膜表面にグラフトされた MIP はインプリントした鋳型物質と類似物質を識別し、溶
質拡散透過速度を増加させる。単なる Poly(EDMA-co-MAA)をグラフトした膜では、
テオフィリン存在下での溶質拡散透過速度の変化と、カフェイン存在下での溶質拡散透
過速度の変化に有意な差は認められない。したがって、MIP 膜で認められた鋳型物質存
在下での透過速度の増加は、MIP に対する鋳型物質の特異的な反応に起因する。
2. MIP 膜のゲート効果には、RC 膜表面にグラフトした MIP 薄膜の空隙率が、鋳型物質と
の相互作用により変化し、結果的に膜に対する溶質の拡散透過速度が増加する Fig. 1-15
のような機構が推測される。MIP のゲート効果を利用すれば、特定の物質を分子認識し
て透過速度を自己調節する膜を作製できると期待できる。
35
[第 1 章]
Fig. 1-15
Speculated mechanism of gate effect of MIP-grafted membrane
36
[第 1 章]
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38
[第 1 章]
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39
of
benzyl
N,N-diethyldithiocarbamate”,
[第 1 章]
使用記号
[g・m-2・s-1]
J
拡散透過流束
C
濃度
[mol・m-3] or [g・m-3]
t
時間
[s]
A
有効膜面積
[m2]
V
二室回分式透析器の容積
[m3]
KL
総括物質移動係数
[m・s-1]
KB
血液側の境膜物質移動係数
[m・s-1]
KD
透析液側の境膜物質移動係数
[m・s-1]
kM
溶質透過係数
[m・s-1]
R
相関係数
MW
分子量
[-]
[g・mol-1]
40
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