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安心して使えるお札<大切な商品
2016年4月21日 神奈川新聞 掲載 「日銀 支店長の目」 [テーマ]安心して使えるお札<大切な商品> とあるメディアのインタビューで、「日本銀行横浜支店として一番大切な仕事はなんですか」と問 われ、「きれいなお札を安心して使ってもらうことです」とお答えしたら、やや意外といった反応であ った。いやいや我々にとってお札は商品、それを安心して使って頂けることはもちろん我々にとっ て一番大切なことである。 実際、横浜支店の職員のうち、約半数は発券課というお金を扱うセクションで働いている。読者 の皆さんがお金を引き出してどこかのお店で使うと、そのお店は金融機関にお金を預ける。預か った金融機関は、それを「銀行の銀行」である日本銀行に預ける。そして必要な時に引き出す。 しんがん 我々は預かったお札の真贋、汚れ、破損などを一枚一枚チェックし、もう使えないと判断したもの はシュレッダーで細かく裁断して廃棄する。こうして当支店で受払する現金は昨年度で合計4・5 兆円に上る。これは全国の支店のなかでは大阪、名古屋、福岡、仙台に次いで第5位である。そ のほとんどが金融機関の方々との大口のやりとりである。 一方で個人の方々でも我々の窓口にいらっしゃるケースがある。それは、お札が不幸にして焼 けた、焦げた、破れた、あるいはつぼから虫食いの旧札が出てきたなどのケースで、その場合は 我々の窓口で一定のチェックを行い、引き換えて新札をお渡しする。 最近多いのが、お札がぬれたので、これを乾かそうと電子レンジで温めたら燃えた、というケー スである。日本の銀行券にはいろんな仕掛けがあって、電子レンジで温めると燃える。お願いです ので、お札は電子レンジで温めないでください。 あとは、例えばペットの犬や猫や鳥がかんで、突いて破れた、穴が開いたというケースで持ち込 まれることもある。これくらいであればまあかわいらしいとも言えるが、東日本大震災の際の被災 地支店での対応は大変であったと聞く。今も熊本や大分では我々の同僚が身体を張って頑張って いる。 お金というのは不思議なもので、なぜあんな紙切れが人々の大いなる欲望の対象になるのか。 それは、それを価値あるものとして受け取ってくれる人がたくさんいるからだ。効率的な経済活動 には、そうした状況が成立することが不可欠であり、このお金の価値をきちんとコントロールする のが金融政策である。そして我々は実際に使われるお金という実物のクオリティーを、日々しっか りと誇りを持って管理している。ですので皆さん、安心して(無理のない範囲で)お金をしっかり使っ て下さい。 日銀横浜支店長 岩 崎 淳