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平成27年度 研究開発実施報告書
平成 27 年度指定 スーパーサイエンスハイスクール 研究開発実施報告書 経過措置1年次 平成 28 年3月 青森県立八戸北高等学校 ● SS リサーチ(2年次 SSH クラス 学校設定科目)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 県外研修(8月) 生徒研究発表会(12月・校内) 科学英語(4・5・7・1〜3月) 数学ゼミ(3月) ● SS インテグレイト(3年次 SSH クラス 学校設定科目)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 科学英語(4〜6月) 学習成果発表会(6月) i ● SSH 講演会/その他の活動 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ マス・フェスタ(8月) SSH 講演会(10月) 全国 SSH 生徒研究発表会(8月) 東北地区 SSH 指定校発表会(1月) ●1年次生「総合的な学習の時間」 ( 旧 SS アクティベイトⅠ)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ESD 校外学習(7月) ディベート(12〜3月) ii は じ め に 校 長 竹浪 二三正 平成27年度、本校は経過措置1年という形で SSH 事業を継続することとなりました。そのため、 2・3年次 SSH クラスに対してはこれまでの成果を生かした事業を実施できましたが、SSH の対象外 となった今年度の入学生に対しては、従来と同様の事業に取り組むことができませんでした。過去10 年間 SSH の指定を受けていた本校にとって、また生徒・保護者にとっては指定を受けることができな かったということは大変大きな出来事でしたが、現在、再指定に向けた準備を進めているところです。 さて、1年生は SSH の対象からは外れましたが、 「総合的な学習の時間」にこれまでの SSH 事業で 培ってきたノウハウをつぎ込み、青森県主催の『探究型学習によるたくましい高校生育成事業』を活用 したプログラムに取り組んできました。これは、SSH 事業の校内における普及でもあり、2年次以降 の各分野の探究活動や言語活動の基礎を築く内容となったと考えています。 2年次 SSH クラス生対象の SS リサーチでは、本校 SSH のメインである課題研究を4月~12月ま で行いました。9月には中間発表会、11月には高校生科学研究コンテストにおいて4班が参加発表を 行いました。そして、12月の本校での生徒研究発表会及び県内の理数系課題研究発表会では全員が口 頭発表を行いました。さらに、1月の東北地区 SSH 指定校発表会で、2つの班による口頭とポスター 発表を行っています。この課題研究では、課題の設定を自ら行い、仮説の設定とそれを検証していくと いうプロセスを丁寧に扱うことで、生徒の探究心・創造性・論理的な思考力が高められ、科学研究に対 するモチベーションが向上するとともに、プレゼンテーション能力の伸長が図られました。このような 対外的な発表の他に、11月の科学の甲子園青森県大会に6名が参加し、数学部門賞を受賞しました。 また、8月は従来東京方面で行われていた県外研修を仙台方面に変更し、角田宇宙センターや東北大学 金属材料研究所等への訪問により科学技術への興味関心を喚起しました。課題研究終了後の授業は、こ れまで3年次に取り組んでいた科学英語や数学の教科書では扱わない分野を学ぶ数学ゼミに活用して います。 3年次 SSH クラスでは4月から科学英語に全員が熱心に取り組み、6月の学習成果発表会では運営 指導委員の先生方から多くの質問や激励を受けていました。今年度から本校に勤務することとなった私 は今回はじめて参加しましたが、発表と質疑応答すべてを英語で行うレベルの高さに驚かされました。 全校生徒に対する事業としては、東北大学の堀切川一男教授による『摩擦の科学「トライボロジー」 で凄ワザに挑む』と題した講演を実施し、大学での研究による社会貢献について生徒の好奇心を高める ことができました。 以上、かいつまんで SSH 事業の紹介をして参りましたが、最後に本校 SSH 事業を推進するに当た り、文部科学省、JST、青森県教育委員会、SSH 運営指導委員の先生方、大学や研究機関等の先生方、 他校の ALT 等、数多くの方々から多大なるご支援、ご指導、ご協力をいただきました。この場をお借 りして、厚くお礼申し上げます。 1 目 次 Ⅰ 研究開発実施報告(要約) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 3 Ⅱ 研究開発の成果と課題 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 5 1 6年間を通じた取組の概要 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 11 2 学校の概要 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 16 3 研究開発課題 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 16 4 研究の概要 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 16 5 研究開発の実施規模 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 16 6 研究内容・方法・検証等 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 17 7 研究計画 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 18 8 研究開発の経緯 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 18 ①課題研究 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 20 ②県外研修 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 26 ③科学英語 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 27 ④数学ゼミ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 28 ①科学英語 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 29 ②学習成果発表会 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 30 ③発展数学 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 32 ①SSH 講演会 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 33 ②〜⑧他の活動等 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 34 10 実施の効果とその評価 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 36 11 校内における SSH の組織的推進体制 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 41 Ⅲ 研究開発実施報告書(本文) 9 研究開発の内容 (1)SS リサーチ (2)SS インテグレイト (5)SSH 講演会及び他の活動等 12 研究開発実施上の課題及び今後の研究開発の方向・成果の普及 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 41 1 教育課程 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 43 2 研究組織の概要 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 46 3 運営指導委員会 会議録 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 47 4 生徒対象アンケート集計結果 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 49 5 課題研究テーマ一覧 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 50 Ⅳ 関係資料 2 青森県立八戸北高等学校 指定第2期目 27 ❶ 平成27年度スーパーサイエンスハイスクール研究開発実施報告(要約) ① 研究開発課題 探究心や創造性に優れ、国際社会に通用する調和の取れた科学技術系人材の育成 ② 研究開発の概要 (1)大学や研究機関等との連携を強化し、課題研究の質的向上を図る。 (2)国際性の育成に関するカリキュラムを充実させ、国際社会に通用する調和の取れた科学技術系人材 の育成を目指す。 (3)効果的な指導を行うため、生徒の変容及び到達度を測定する評価方法を研究する。 ③ 平成27年度実施規模 (1)年間を通して対象となった生徒数は以下の通り(学校設定教科「総合 SS」の履修生徒数) ・SS リサーチ(2単位) …2年次 SSH クラス生(39名) ・SS インテグレイト(1単位) …3年次 SSH クラス生(40名) 合計79名 (2)他の事業への参加生徒数 ・SSH 講演会…全校生徒(709名) ・生徒研究発表会…1年次及び2年次生全員(476名) ④ 研究開発内容 ○研究計画 2年次 SSH クラス生については、SS リサーチでの課題研究において仮説設定プロセスやデータの収集・ 分析・解釈等について特に重点的に指導することにより、課題研究の質的向上を目指す。また、SS リサ ーチの枠の中で、SS インテグレイトで行われていた科学英語すなわち課題研究の内容を英語で表現する 活動を可能な限り実施する。3年次 SSH クラス生については、従来どおり SS インテグレイトにおいて 3年間のカリキュラムを完成させる。科学英語及び学習成果発表会においては、英語科教員と課題研究 担当者との連携を深める。また、ALT 及び国内在住の外国人留学生等の活用により効果的指導を図る。 発展数学においては、事象の解析に関して活用できる内容を設定する。 ○教育課程上の特例等特記すべき事項 研究開発課題に取り組むに当たって、既存の教育課程における教科・科目では対応できないことから、 次のとおり学校設定教科「総合 SS」を開設する。2年次 SSH クラス生に対し「化学」及び「総合的な 学習の時間」各1単位を減じて「SS リサーチ」を、3年次 SSH クラス生に対し「総合的な学習の時間」 1単位を減じて「SS インテグレイト」を履修させる。 ○平成27年度の教育課程の内容 (1年次生)国語総合、現代社会、数学Ⅰ、数学 A、化学基礎、生物基礎、体育、保健、音楽Ⅰ/美術Ⅰ(選 択)、コミュニケーション英語Ⅰ、英語表現Ⅰ、家庭基礎、社会と情報、総合的な学習の時間 (2年次 SSH クラス生)現代文 B、古典 B、世界史 A、日本史 B/地理 B(選択)、数学Ⅱ、数学 B、 物理基礎、化学、物理/生物(選択)、体育、保健、コミュニケーション英語Ⅱ、英語表現Ⅱ、 SS リサーチ (3年次 SSH クラス生)現代文、古典、日本史 B/地理 B、数学Ⅲ/探究数学γ(選択)、探究数学δ、 化学、物理/生物 (選択)、体育、コミュニケーション英語Ⅲ、英語表現Ⅱ、SS インテグレイト ○具体的な研究事項・活動内容 (1)2年次 SSH クラス生に対する研究開発 <SS リサーチ> ・課題研究(4〜12月) :理科及び数学の各テーマに関する課題研究及びプレゼンテーション。 3 ・県外研修(8月) :角田宇宙センター、東北大学金属材料研究所等への訪問研修。 ・科学英語(1〜3月) :課題研究の内容の英訳、ポスター作成、用語や表現の学習、発音練習等。 ・数学ゼミ(3月) :高校数学の範囲にとらわれない数学7分野のゼミ。 (2)3年次 SSH クラス生に対する研究開発 <SS インテグレイト> ・科学英語(4〜6月) :2年次に行った課題研究の内容の英訳、スライド作成、発音練習等。 ・学習成果発表会(6月) :課題研究の内容に関する英語でのプレゼンテーション及び質疑応答。 ・発展数学(9月) :高校数学範囲外の数学の理解。 「偏微分」と「行列」 。 (3)SSH 講演会及び他の活動等 ・SSH 講演会(10月) :東北大学大学院工学研究科 堀切川一男 教授による講演を聴講。 ・全国 SSH 生徒研究発表会(8月) :課題研究生物班が代表として参加し、ポスター発表。 ・他校 SSH 事業参加(8月) :大阪府立大手前高校「マス・フェスタ」に課題研究数学班が参加。 ・科学の甲子園青森県大会(11月) :2年次 SSH クラス生希望者6名が参加。数学部門賞受賞。 ・高校生科学研究コンテスト(11月) :課題研究物理班・生物班・地学班が参加。 ・青森県理数系課題研究発表会(12月) :弘前大学理工学部において、全課題研究班が口頭発表。 ・東北地区 SSH 指定校発表会(1月) :課題研究班のうち3班が発表。本校が会場校として協力。 ・科学オリンピック(7・1月) :物理・生物学・化学・数学に合計28名が参加。 ⑤ 研究開発の成果と課題 ○実施による成果とその評価 (1)SS リサーチ 課題研究においては、仮説設定プロセスやデータ分析、生徒の主体性の向上を重視した。課題研究終了 後のアンケートでは「実験・観察、データの扱いなどの基本的技能が身についた(92%) 」 、SSH 意識 調査においては「独自なものを創り出そうとする姿勢が増した(97%) 」という結果を得た。また、プ レゼンテーション能力向上のため校外での発表会へ積極的に参加させ、SSH 意識調査において「発表し 伝える力が増した(100%) 」という結果を得た。現在、課題研究の概要の英訳、ポスター及び発表原 稿の作成等を内容とした科学英語に取り組んでおり、年度末までに十分な成果が期待できる。 (2)SS インテグレイト 科学英語では英語科教員や本校及び他校 ALT 以外に、今年度は市内の大学から留学生の協力も得た。学 」 、 「英語プレゼンテーシ 習成果発表会後のアンケートでは「英語学習への興味関心が高まった(98%) ョンの方法が理解できた(88%) 」 、 「英語コミュニケーション能力が高まった(90%) 」となり、運 営指導委員からは「長年の取組によって洗練されてきた」と評価された。発展数学では昨年度と同様に 「発展的数学への興味をもったか」について実施前45%か 偏微分と行列を扱った。アンケートの結果、 ら63%へ増加し、一定の効果があった。 ○実施上の課題と今後の取組 (1)課題研究への取組において、仮説設定プロセスやデータの収集・分析・解釈等の点で改善の余地が あるため、科学的探究方法の理解を徹底させていきたい。また、これまで生徒の英語のコミュニケーシ ョン能力や英語プレゼンテーション能力の向上を図ってきたが、さらに効果を上げるために、3年間の 系統立った科学研究に必要な英語運用能力育成プログラムを研究開発していきたい。 (2)データを適切に扱い根拠に基づいた判断で結論を導く能力は、本来どの生徒にとっても必要なもの である。今後は全クラスにおいて生徒自らが設定したテーマについて探究的な活動に取り組ませたい。 (3)1年次の「総合的学習の時間」での活用を想定し、汎用性のあるカリキュラムとして研究開発した SS アクティベイトⅠの実施効果をさらに上げるため、工夫・改善を継続していきたい。また、その構成 プログラムの実施方法や開発教材の公開等、普及にも力を注いでいきたい。 4 青森県立八戸北高等学校 指定第2期目 27 ❷ 平成27年度スーパーサイエンスハイスクール研究開発の成果と課題 ① 研究開発の成果 (1)SS アクティベイトⅠ <理科基礎実験> 最初の計画では SS アクティベイトⅡの構成プログラムであったが、実験を行う機 会を1年次生全員に拡大する目的で SS アクティベイトⅠに移行させた。各1時間であったが、理科 4分野を網羅し、第4・5年次は環境関係のテーマで実験内容を構成することにより、体験を通じた 環境理解につながった。 <ESD> 講演会と講座で構成した。講演会では岩手大学に講師を依頼し、ESD の理念と実践例につ いて聴講し理解が深まった。当時は現在ほど ESD が知られていなかったため、教員の研修の機会と しても重要であった。講座は、校内の教員が各自で ESD 関連のテーマを決めて講義を行う形式とし たが、座学での理解に留まっていた。そこで第5年次は、校外学習を含む ESD プロジェクトの実施 に踏み切った。これにより、見学や体験を通して ESD への理解が深まり、さらに学年内発表会を行 うことでプレゼンテーション能力を向上させることもできた。 <科学史・科学倫理> 講演会と講座で構成した。講演会では大学教員・社会人に講師を依頼し、毎回 興味深い講演を聴講することができたが、一度の講演会では内容を十分深められなかった。講座は、 校内の教員が各自で科学史・科学倫理関連のテーマを決めて講義を行う形式とした。開発したスライ ドやワークシート等の活用により、生徒に対して十分な学習効果があった。ただし、科学史と科学倫 理をセットにしたことにより、プログラムのねらいがやや不明瞭になった。 <環境・エネルギー講座> 八戸工業大学に講師を依頼し、環境及びエネルギーに関する工学的発想や 研究、社会での実践について聴講した。第1年次は当日聴くだけであったため、第2年次から事前学 習を導入したことにより、内容の理解が深められるようになった。ただし、高校1年生にとっては内 容が専門的になりすぎるものもあり、また、必ずしも実感が伴うものばかりではないため、配属され たテーマによって実施効果に差も見られた。 <ディベート> 第1期は SSH クラスのみ対象であったが、第2期 SS アクティベイトⅠでは1年次 生全員を対象に実施した。毎年、対抗戦終了後「もう一度やってみたい」との声が聞かれ、理由や 根拠に基づく主張の重要性を理解させることができていると評価している。第4年次から「環境・ エネルギー・ESD」関連のテーマから選択させる方式をとっており、科学的リテラシーを身につける 機会としても実施意義が高まった。 ■「SS アクティベイトⅠ」総合評価 ■ …………………………… 第1期は事業の対象を SSH クラス生のみとしていたが、第2期は SS アクティベイトⅠを学校設定 科目として新設し、事業の対象を1年次生全員に拡大した。本科目のねらいは、①科学的論理的な思 考力とコミュニケーション能力の育成、②科学技術に対する興味・関心の喚起、③科学に対する素養 や態度の習得である。5年の期間で「環境・エネルギー」を基軸に各プログラムの内容を構成・改善 し、総合的にねらいを十分達成できたと評価している。平成27年度1年次一般クラス生対象(SSH クラスを除く)SSH 意識調査において、 「科学技術に対する興味関心が増したか」及び「社会で科学技 術を正しく用いる姿勢が増したか」の肯定的回答は、それぞれ87.6%、76.1%という過去最高 の結果となった。本科目は、他校においても「総合的な学習の時間」で活用できることを想定しなが ら、 「持続可能で汎用性のあるカリキュラム」として研究開発してきた。今年度、本校は経過措置とな ったが、 「総合的な学習の時間」を活用しながら SS アクティベイトⅠの内容を改善し、一層完成度を 5 高めた。今後は研修会等での積極的な情報提供により成果の普及を図っていきたい。 (2)SS アクティベイトⅡ <情報基礎実習> 内容はおもにプレゼンテーション及び表計算ソフトの習得とした。1年次一般クラ ス生の「社会と情報(2単位) 」と比較すると充当できる時間が少ないが、SSH クラスは明確な目的 をもって実践的に活用する場面が多かったため、3年間で高い情報活用能力が身についた。 <IT ラボ> ロボットアームの遠隔操作やゲームプログラミングなどの情報通信技術について、八戸工 業大学主導で体験できる実習であり、普通高校では経験できない内容であるため貴重である。IT への 興味関心を高める効果とともに、科学技術系人材としての進路を考える上での一助となった。 <森林環境講座> 森林の役割と保全を通して環境への理解を深めることをねらいとしていたが、連携 先との関係で学習にふさわしい場所や内容を固定しにくかった。第3〜5年次は震災被災地域や産業 廃棄物不法投棄現場での植樹を導入し、ESD 関連の内容に改善して実施効果を上げた。 <センター研修> 第1年次は理科4分野の実験・観察の体験を主としていたが、青森県総合学校教育 センターからの助言により、第2年次より物理や化学分野をテーマとした探究活動に内容を変更した。 これにより、仮説の設定や誤差を含んだデータの扱い、ポスターによるプレゼンテーションなど一連 の研修ができ、科学的探究能力の基礎が身につくようになった。 <発生実習> 普段の授業で海洋生物について時間をかけて実験・観察することは困難であり、この研 修は非常に貴重である。専門の大学教員による解説・実験と海岸でのフィールドワークの組み合わせ により、高い教育効果がある。顕微鏡に触れる時間も長く、その操作においても上達が認められた。 <青森サイエンスキャンプ> 2日間の日程で大学での研究活動を体験するプログラムであり、短時間 の実験・観察では得られないやりがいを感じさせることができた。運営面も含めて大学側との連携も 着実に進み、研究体験内容の難易度が参加生徒の実態と次第に合うようになってきた。SSH クラス生 は理系大学への進学希望者であるため、進路選択の参考にもなった。 <放射線実習セミナー> 原子力文化振興財団のプログラムを活用した。第1・2年次は自然放射線の 測定も行ったが、SS アクティベイトⅠでも扱うことから、第3〜5年次は実習内容を放射線の遮蔽 及び霧箱の製作とした。この相乗効果により SSH クラス生は他クラスよりも理解が深まった。 <次世代エネルギー関連施設見学> 第1・2年次に核関連施設や風力発電所の見学を行ったが、発電 効率・安全性・将来性等の点で疑問を持った生徒も多かったようである。第2年次は震災後であった ためか訪問先によっては見学への対応が悪く、生徒の興味関心は高まらなかった。核燃料サイクル事 業の見通しも立たないため、訪問するエネルギー施設を地熱発電所に変更することとした。 <地学巡検> 八戸市の海岸を観察しながら地質学的見方を養うプログラムであり、郷土の自然を理解 するという点でも意義があった。第3〜5年次は次世代エネルギー関連施設見学で述べた状況を踏ま え、訪問するエネルギー施設を地熱発電所に変更し、従来の地学巡検と合わせて「地学・エネルギー 巡検」とした。地学関連の訪問先は溶岩流や天文台等に変更したが、学習効果は維持された。 <アウトリーチ・ラボ (E)> 米軍三沢基地内高校への訪問が第3年次に実現できた際、プログラム名 を「アウトリーチ・ラボ E」とし、アウトリーチ・ラボⅠと区別していた。内容は英語による実験紹 介を通じたコミュニケーション能力の育成であったが、実験内容及び英語力が相手方とかみ合わず、 十分な効果を上げることができなかった。そこで第4・5年次は訪問先を基地内小学校に変更したと ころ、活発なコミュニケーションが成立するとともに、普段科学実験を行う機会が少ない児童にも大 変喜んでもらえた。また、本校生徒の語学習得への意欲も大きく向上した。 <ALT ラボ I> ALT の指導により、重力加速度の測定(物理)や金属イオンの分離(化学)の実験 を行った。英語を用いた実験への興味関心が高まり、事前学習にも生徒は意欲的に取り組んだことか ら当初のねらいは達成できたといえる。これが進級後のプログラムに連結するよう、第5年次は実験 6 の前に「科学的探究方法」や「実験計画方法」について英語の講義を行った。1年次生にとって難易 度が高かったが、この経験がアウトリーチ・ラボの準備に生かされた。 <アウトリーチ・ラボ I> 市内2か所の小学校へ出向いて実験紹介を行うプログラムであった。児童 の科学への興味関心を引き上げるとともに、本校生徒のコミュニケーション能力を育成する効果があ った。これを単発のサイエンスショーではなく、小中学生による本格的な探究活動に発展させるため に、第4年次からの2年間、科学技術人材育成重点枠事業「小中高連携フィールドワーク及びウェル カムラボ」へ移行させた。その際、本校生徒を小中学生のサポート役とすることにより、生徒自身も 探究活動を深く理解し、プロセスを定着させる機会となった。 ■「SS アクティベイトⅡ」総合評価 ■ …………………………… 本科目のねらいは、①研究者や技術者に必須な実験技術、データ処理、実験レポートの作成等の習熟、 ②科学技術に関する興味関心の喚起、③SSH クラス生としての自覚と目的意識の涵養であり、第1期 の学校設定科目 Basic SS の流れを汲むものである。科目を構成する各プログラムの改善・再編により 1年次 SSH クラス生の科学的探究能力の基礎を効果的に育成し、上記のねらいを達成できたと評価し ている。SSH 意識調査においても、 「科学技術に対する興味関心が増したか」及び「科学技術に関する 学習に対する意欲が増したか」の肯定的回答が、5年間ではじめて両方とも100%に達した。これ らに加え、アウトリーチ・ラボの導入により英語コミュニケーション能力を高めることもできた。 (3)SS リサーチ <課題研究> 第2期は課題研究の進め方・指導という面で大きな転換期となった。運営指導委員から の助言で「仮説の設定」を徹底したことにより、課題研究全体の質的向上が見られた。これは生徒が、 仮説の検証という過程で研究をとらえるようになってきたことによると思われる。この過程により思 考が論理的になり、正しいデータ解釈の追求や考察の深まりにつながった。グループ研究ではあるが、 中間発表会では個人にプレゼンテーションさせ、その観点別評価によってプレゼンテーション能力も 向上した。校内での研究発表会における運営指導委員の評価も年々高まってきたことに加え、生徒が 作成する課題研究報告書やポスターも分かりやすく、また洗練されてきた。総合的に科学的探究能力 の育成が効果的に図られていると評価してよいと考える。 <ALT ラボ Ⅱ> ALT の指導により、酵素の性質や遺伝子組換えの実験(いずれも生物)を行い、英 語を用いた実験への興味関心及び英語学習へ意欲を喚起することができた。特に、酵素実験の内容に は探究の過程が含まれており、実施効果は大きかった。第5年次は、ALT ラボⅠ同様、 「科学的探究 方法」と「実験計画方法」に関する英語の講義を聴講し、グループ別の実験・まとめ・プレゼンテー ションを行うことで、進級後の SS インテグレイトを意識させることができた。 <数学ゼミ> 数学科教員6または7名が同時にゼミ形式で実施した。生徒に普段の授業では触れてい ない世界を体験させることにより興味関心を高め、数学の有用性を理解させることができた。3時間 連続の授業としたが少人数指導であるため細部にまで指導が行き届き、テーマによっては工作なども 取り入れたことにより数学が苦手な生徒からも好評であった。 <青森サイエンスセッション> 第1・2年次は、1日目に口頭及びポスター発表、2日目に他校生と の共同実験で構成されていた。1日目は参加できる人数が限られており、2日目は内容が PCR や電 気泳動といった高度な実験であったため、理解や操作が困難であった。また、共同実験には米軍三沢 基地内の高校生を参加させたが、活発なコミュニケーションには至らなかった。第3年次からは国際 交流分野を切り離し、1日開催で規模を拡大した研究発表会とした。これにより、生徒同士の質疑応 答が活性化されるとともに探究活動への興味関心が引き上げられ、また、1・2年次 SSH クラス生 全員を参加させることも可能となった。第4年次からはこの形態を継承するとともに、さらに参加校 を広範囲に募集することで大規模化を図るため、科学技術人材育成重点枠へ移行させた。国際交流分 7 野については、SS アクティベイトⅡのプログラム「アウトリーチ・ラボ」として独立させることで ねらいを明確化させ、成果を上げた。 <アウトリーチ・ラボ Ⅱ> 第1年次は市内の水産科学館で試行的に実施し、第2・3年次は市総合 教育センターで実験紹介を行った。対象とした中学生の科学に対する興味関心が喚起され、本校生徒 のコミュニケーション能力の向上も認められた。この2年間で中学生との交流の感触がつかめたため、 単なる科学体験から本格的な探究活動に発展させることができる見通しが立った。この理念を継承し、 科学技術人材育成重点枠事業で具体化させることにより一層の成果を上げた。 <サイエンス・ダイアログ> 日本学術振興会が費用を負担する企画であるため、本校も早くから実施 していた。しかし、数回事前学習を行っても、英語を聴く力が飛躍的に伸びるわけではなく、講義内 容の理解は困難であった。アンケート結果では、本プログラム実施前後において講義内容への興味関 心に変化がないなど実施効果が認められなかったため、実施を打ち切って ALT ラボ Ⅱの充実に時間 をかけることとした。 <ラボ・インターンシップ> 将来の科学技術系人材を育成するために、SSH とキャリア教育のリン ク、いわば SSH 版進路指導を模索した研究開発であった。市内の工業大学の協力により、理系大学 における研究と地域社会への貢献、大学卒業後の進路について研修できる稀有な内容であり、生徒は 大学を多様な視点から理解することができた。実施に当たっては、課題研究に本格的に取り組んでい る時期であることから日程確保が難しいという課題が残った。 <東京研修> 第1・2年次は SS アクティベイトⅡで実施していたが、研修内容の理解という観点か ら第4年次から SS リサーチへ移行した。日本科学未来館では展示内容の学習と班内でのプレゼンテ ーションを課し、生徒は意欲的に取り組んだ。また、時期的にも生徒の科学的知識が十分であったた め、東京大学地震研究所での施設見学及び講義聴講も効果が高く、興味関心も高まった。第5年次は パシフィコ横浜にて生徒研究発表会を参観させたことにより、全国レベルの研究に刺激を受け、その 後の課題研究の充実やプレゼンテーション上達の大きな要因となった。今年度、経過措置により予算 を縮小せざるを得なかったため、訪問先と実施日数を調整して名称を「県外研修」としたが、研究活 動に対する理解及び科学技術に対する興味関心の喚起という点で十分な効果が認められた。 <科学英語(経過措置対応)> 経過措置により2年次生は新年度 SSH 対象外となることから、課題 研究終了後の期間を科学英語に充てた。現在、生徒は ALT と英語科教員指導のもとでポスター及び 発表原稿の作成、概要の英訳等に意欲的に取り組んでいる。評価については本報告書発行に間に合わ ないが生徒の活動状況は良好であり、3年次での科学英語とは異なる学習効果が期待できる。 ■「SS リサーチ」総合評価 ■ …………………………………… 本科目のねらいは、①課題研究等による探究心・独創性・創造性及び科学的・論理的な思考力の育成、 ②数学の特別講座による数学への興味関心の喚起、③ALT の英語による実験及び講義による科学英語 の重要性の理解であり、第1期の学校設定科目 Study SS が核となっている。課題研究では、仮説の明 確な設定と論理的な検証を重視する指導を行うことにより、①のねらいを達成するとともにプレゼン テーション能力についても合わせて育成できたと評価している。課題研究担当教員からは生徒の主体 性や分析力、情報収集力等が増したことが報告されており、運営指導委員からも論理展開や発表態度・ 技術において高い評価をいただいている。今年度の SSH 意識調査における肯定的回答は、 「探究心が 」 、 「発表し伝える力が増したか(100%) 」となった。②、③については個々 増したか(97.3%) のねらいを達成できるプログラムを実施した。科目を構成する各プログラムの改善・再編にも努め、 科学技術人材育成重点枠を活用しながら、重要度の高いものに時間をかけて取り組めるよう改良した ことにより大きな成果が見られた。今年度は経過措置のため、前倒しで科学英語に取り組んでいる。 発表用のポスター作成では生徒自身の思考過程が整理される利点が認められるため、他の言語活動に も応用できると考えられる。 8 (4)SS インテグレイト <科学英語・学習成果発表会> 科学英語の授業は、課題研究グループごとに英語科教員1名が担当す る形式をとり、英語表現・発音、スライド作成・発表方法について指導した。また、ALT も全体指導 に関わり、質疑応答の練習では地区の他校 ALT からも複数回の協力を得た。その結果、コミュニケー ション能力の向上及び英語学習への意欲の喚起、学習成果発表会における英語によるプレゼンテーシ ョン能力の向上を達成させることができた。指導は計画的かつ組織的に行われており、毎年細かな改 善を施しながらその完成度を高めてきた。発音の聞き取りやすさやプレゼンテーション能力という観 点で運営指導委員による評価も年々高まり、このプログラムはねらいどおりの成果をあげたと評価で きる。今年度は市内の大学から留学生に来校してもらい、実践練習に協力いただいた。今後は複数回 依頼し、質疑応答の力を向上させるとともに指導効果に対する客観的評価も進めていきたい。 <発展数学> 本プログラムは、数学の発展的内容を集中的に学習し、科学技術における数学の有用性 を実感させることをねらいとしている。アンケートの結果、どの分野を学んでも生徒の興味関心は喚 起され、大学の数学に期待する声が聞かれた。また、筆記試験を課して適度な緊張感を与えることに より内容の理解も深められた。当初高校範囲外を想定していたが、実際は数学の授業の進度の関係で 扱う内容には限界があった。これまでの研究開発の結果、理系大学進学予定者として「行列」と「偏 微分」を学習させるのが適切であると結論した。 ■「SS インテグレイト」総合評価 ■ …………………………… 本科目のねらいは、①課題研究の内容を英語で表現させる、それを英語でプレゼンテーションさせる などの、科学で必要とされる英語運用能力の向上、②発展的数学の有用性の実感と数学学習への意欲 の喚起であり、第1期の学校設定科目 Advanced SS の流れを継承している。①については、生徒の 変容の観察及び運営指導委員の評価を総合して、ねらいは十分達成できたと判断している。今年度の SSH 意識調査では、 「英語表現力や国際感覚が増したか」の肯定的回答が90.0%に達し過去最高 となった。英語運用能力のさらなる向上を図るには、最上級生となってからの取組としてではなく、 3年間の系統立ったプログラムとしての改善・充実が必要である。②については、教員側が難易度を 合わせればねらいは達成されるといえる。生徒は特に分野にこだわっているわけではなく、むしろ、 教員側が「将来の科学技術系人材として何を学ばせればよいか、何が理系進路への達成意欲を高める か」という観点で分野を判断する必要がある。今後の研究開発の方向として、大学進学後に学ぶ線形 代数や高度な微積分を早めに体験させる以外に、数学の有用性をより実感させるため積極的に物理分 野と関連づけることも考えられる。 (5)その他の活動 <各種科学技術,理数系コンテスト・コンクール等入賞(第2期)> 日本学生科学賞青森県審査 最優秀賞2点 青森県高等学校総合文化祭自然科学部門 最優秀賞1点 優秀賞1点 優良賞4点(4年連続で全国大会に出場) 青森県高校生科学研究コンテスト 最優秀賞1点 優秀賞1点 東北地方 ESD チャレンジプロジェクト発表大会 青森県知事賞 東北植物学会第3回大会 高校生・中学生研究発表会 優秀賞 日本地質学会仙台大会 第11回小、中、高校生徒「地学研究」発表会 優秀賞 科学の甲子園青森県大会参加状況(5年間で10チーム参加) <国際科学オリンピック参加人数・成績(第2期)> 物理・化学・生物学・地学・数学の各部門で合計172名が参加した。数学オリンピックでは、北海 道・東北地区表彰者2名、地学オリンピックでは成績優秀者1名が出た。 9 ② 研究開発の課題 (1)科学的探究能力を身につけ,科学研究で必要とされる英語運用能力を備えた,国際的に活躍できる 科学技術系人材を育成すること 課題研究におけるこれまでの取組の結果、生徒は主体性や情報収集能力などが向上してきたが、仮説の 設定やデータの収集・分析・解釈等の点で改善の余地がある。研究活動の質をさらに高めていくために、 1年次から論理的思考に基づいた探究活動を経験させるとともに、科学的探究方法の一層の理解を目指 していきたい。また、これまで地域の特性を生かして、米軍三沢基地内の児童・生徒との交流や課題研 究の英語での口頭発表・質疑応答及び事前練習をとおして、生徒の英語のコミュニケーション能力や英 語プレゼンテーション能力は向上が図られ、英語学習への強力な動機づけともなった。さらに効果を上 げるために、科学分野で用いる語彙や表現に慣れさせる段階からプレゼンテーション時の質疑応答の練 習まで、3年間の系統だった英語運用能力育成プログラムとして改善を図っていきたい。 (2)根拠に基づいた判断により結論を導き,分かりやすく伝える能力を育成すること 課題研究の指導においては、実験・調査データにより仮説を論理的に検証することを特に意識させてい る。このようにデータを適切に扱い、根拠に基づいた判断により結論を導く能力は、課題研究に取り組 む SSH クラス生だけではなく、本来どの生徒にとっても必要なものである。論証過程を明確に示すこと は、分かりやすいプレゼンテーションや質疑応答においても必須といえる。今後は生徒自らが設定した テーマについて探究活動に取り組ませる時間を設け、全クラス共通で論証を基軸とした基礎的探究能力 を育成していきたい。 (3)科学的リテラシーを身につけた,持続可能な地域社会の形成者を育成すること 第2期では、1年次生対象の汎用性のあるカリキュラムとして SS アクティベイトⅠを研究開発してき た。これは、科学技術との関連(環境と開発、エネルギー問題など)についても問題意識を持ち、科学 的知識を積極的に活用して意思決定し、課題を解決する態度と能力(科学的リテラシー)を育成するこ と、また、グローバル化が急速に進展する中、世界の一部として地域社会を理解することをねらいとし ていた。具体的には、地域のリソースを生かした ESD 関連プログラム、環境理解を目的とした理科実 験及びディベートを通して、自然界及び人間の活動によって起こる自然界等の変化について理解させる 内容である。これは今年度も1年次生の「総合的な学習の時間」で実施しており、その成果について青 森県主催の探究型学習事業の課題研究等成果発表会にて、来場した高校生、教員及び一般参観者に公開 した。今後はさらに各プログラムの内容について実施方法や開発教材の公開等、普及に力を注いでいき たい。 10 1 6年間(第2期5年間+経過措置1年間)を通じた取組の概要 【仮説1】 大学・研究機関等との連携を一層強化して、実験・実習及び課題研究の内容を高度化し探究心や創造性 を育むとともに、新たに *科学史や科学倫理の講座を導入したり、米軍三沢基地内高校との相互乗り入 れによる交流を図るなど、各種事業を効果的に組み合わせることで、国際社会に通用する*調和の取れた 科学技術系人材を育成することができる。 「*科学史や科学倫理の講座」及び「*調和のとれた科学技術系人材を育成」 については、 P.13 の【仮説2】を参照のこと。 (1)実 践 対応する取組 ▶ SS アクティベイトⅡ、SS リサーチ、SS インテグレイト SS アクティベイトⅡ ①情報基礎実習:データ処理、画像処理、プレゼンテーション用スライド作成技術の習得。 ②IT ラボ:ロボットアーム、ゲームプログラム、スロースキャンコンピュータ等、IT 技術の理解。 ③森林環境講座:森林の役割や保全に関する講義及びフィールドワークや植林活動。 ④センター研修:物理または化学実験を題材とした探究活動、プレゼンテーション方法の理解。 ⑤発生実習:東北大学浅虫海洋生物学教育研究センターでのウニの発生実習、海岸フィールドワーク。 ⑥地学・エネルギー巡検:松川地熱発電所や焼走り溶岩流等での自然エネルギーと地学に関する学習。 ⑦青森サイエンスキャンプ:2日間に渡る大学での研究体験及びレポートを作成。 ⑧放射線実習セミナー:放射線の遮蔽実験、霧箱の製作等の実習を含む放射線理解のための講義。 ⑨ALT ラボⅠ:ALT の指導による英語を用いた物理または化学実験、科学的探究方法の講義。 ⑩アウトリーチ・ラボ:米軍三沢基地内の児童・生徒に対する、英語での実験紹介。 ■変更点■・次世代エネルギー関連施設見学(第1・2年次実施)と地学巡検(第1・2年次実施)を 第3年次から地学・エネルギー巡検に統合した。 ・理科基礎実験(第1年次実施)を、第2年次から SS アクティベイトⅠへ移行させた。 ・東京研修(第1・2年次実施)を、第3年次から SS リサーチへ移行させた。 ・アウトリーチ・ラボⅠ(第1〜3年次実施)を、第4年次から内容を改善した上で、小 中高連携フィールドワーク及び小中高連携ウェルカムラボ(科学技術人材育成重点枠)に 移行させた。 SS リサーチ ①課題研究:理科及び数学の各テーマに関する課題研究及びプレゼンテーション。 ②ALT ラボⅡ:ALT の指導による英語を用いた生物実験、英語によるプレゼンテーション。 ③数学ゼミ:高校数学の範囲にとらわれない数学6分野のゼミ。 ④東京研修:JAXA、NIMS、日本科学未来館、国立科学博物館等の訪問、SSH 生徒研究発表会の参観。 ⑤ラボ・インターンシップ:地域社会における理系大学の貢献に関する研修。 ■変更点■・青森サイエンスセッション(第1〜3年次実施)を、第4年次から内容を改善した上で 地域連携サイエンスセッション(科学技術人材育成重点枠)に移行させた。 ・アウトリーチ・ラボⅡ(第1〜3年次実施)を、第4年次から内容を改善した上で、小 中高連携フィールドワーク及び小中高連携ウェルカムラボ(科学技術人材育成重点枠)に 移行させた。 ・サイエンス・ダイアログ(第1・2年次実施)は学習効果を上げることは困難と判断し、 11 第3年次から実施を取りやめて ALT ラボⅡの充実に時間を活用した。 ・東京研修は、第1・2年次は SS アクティベイトⅡで実施していた。 ■経過措置での対応■・東京研修を県外研修とし、訪問先を東北地区に変えて1泊2日で実施した。 ・3年次 SS インテグレイトの取組である科学英語を2年次に実施した。 SS インテグレイト ①科学英語:SS リサーチで行った課題研究の内容の英語表現、スライド作成、発音練習等。 ②学習成果発表会:課題研究の内容に関する英語でのプレゼンテーション及び質疑応答。 ③発展数学:高校範囲外の数学の理解。行列、偏微分、電気数学等。 (2)評 価 ①校内・校外における研修 SS アクティベイトⅡの授業及び大学等での研修により、科学技術に関する興味関心が喚起され、実 験技術やデータ処理等の習熟が図られた。また、フィールドワークや巡検をとおして自然の探究の仕 方が身についた。これらに加えて、青森県総合学校教育センターにおける研修により、探究活動の進 め方に関する理解が進み、2年次の課題研究を行うための基礎が育成された。事業効果を高めるため に、 第2期の5年間でSSアクティベイトⅡを構成する各プログラムの改善・再編を積極的に行った。 ②課題研究 仮説の明確な設定と論理的な検証を重視する指導を行うことにより、研究内容の質的向上が図られた。 また、中間発表会の実施及びその改善や他校の研究発表の参観により、プレゼンテーション能力も高 まった。これらについては、運営指導委員からも高く評価していただいており、さらなる向上を目指 した詳細な助言をいただいている。加えて、生徒は教員からの指示がなくても自分たちで研究を進め られる主体性及び分かりやすいポスターの作成能力も育成された。 ③国際性の育成プログラム 1・2年次の ALT 指導による実験により科学研究で用いる英語への興味関心が喚起され、その活用 の重要性の理解が進んだ。また、1年次に英語を用いた実験紹介をとおして米軍三沢基地内生徒との 交流を深め、国際感覚を養うことができた。3年次には、2年次の課題研究の英訳や発音・発表練習 に取り組み、成果としてプレゼンテーション能力及びコミュニケーション能力の向上が図られただけ でなく、より進んだ英語学習へ関心を引き上げることとなった。 ④SSH 意識調査(第4・5年次 SSH クラス生)の比較 次の観点における肯定的回答の割合の増加から、生徒自身による自己評価も高まったといえる。 ここで、肯定的回答の割合とは、ⅰ)大変増した、ⅱ)やや増した、ⅲ)もともと高かった、 ⅳ)わからない、ⅴ)効果がなかった、のうち、ⅰ) ・ⅱ) ・ⅲ)の合計から算出した割合を指す。 「探究心」=探究心が増したか、 「創造性」=独自なものを創り出そうとする姿勢が増したか、 「英語表現力/国際感覚」=英語表現力や国際感覚が増したか 探究心 創造性 英語表現力/国際感覚 第4年次 第5年次 第4年次 第5年次 第4年次 第5年次 1年次生 87.5 97.4 55.0 79.5 65.0 94.8 2年次生 92.3 97.3 59.0 92.1 71.8 86.9 3年次生 87.2 97.5 63.9 75.0 79.5 90.0 以上により、 「国際社会に通用する科学技術系人材」の育成が図られ、仮説は支持されたといえる。 12 【仮説2】 学校設定科目「SS アクティベイトⅠ」 (1単位)を、1年次生全員に履修させる他、同じく学校設定科 目である「SS アクティベイトⅡ」と「SS リサーチ」に、SSH クラス生以外の希望する一般生徒を積 極的に参加させるなどして研究開発の実施規模を拡大することで、SSH 校以外でも活用可能な汎用性 と持続性を備えたカリキュラムを開発できる。 (1)実 践 対応する取組 ▶ SS アクティベイトⅠ、SS アクティベイトⅡ SS アクティベイトⅠ ①理科基礎実験:理科4分野における環境理解を目的とした実験。 ②ESD(講演会・講座・プロジェクト) :岩手大学教授による講演。ESD の考え方に基づく行動に関 する講座と校外実習。 ③科学史・科学倫理(講演会・講座) :大学及び市民の外部講師による講演。科学技術の発展と倫理に 関する講座。 ④環境・エネルギー講座:八戸工業大学教員による計7テーマの講座。 ⑤ディベート:各論題に対する調査・検討及びクラス内での対抗戦。 ■変更点■・理科基礎実験は、第1年次は SS アクティベイトⅡで実施していた。 ・環境・エネルギー講座(第1〜4年次実施)は配属テーマで学習効果の差が大きいと判 断し、第5年次は実施を取りやめて ESD の充実(ESD プロジェクトの実施)に時間を 活用した。 SS アクティベイトⅡ(一般クラス生対象) ①IT ラボ:ロボットアーム、ゲームプログラム、スロースキャンコンピュータ等、IT 技術の理解。 ②青森サイエンスキャンプ:2日間に渡る大学での研究体験及びレポートを作成。 ■変更点■・東京研修(第1・2年次実施)を、第3年次から SS リサーチへ移行させたことにより、 一般クラス対象プログラムから除外した。 ・一般クラス生の SS リサーチへの参加については単位数や指導体制の課題が解決できず、 参加可能な科目は SS アクティベイトⅡの校外研修2件となった。 (2)評 価 ①汎用性と持続性を備えたカリキュラム SS アクティベイトⅠは1年次生全員を対象とし、 「科学的論理的な思考力とコミュニケーション能力 の育成」 、 「科学技術に対する興味関心の喚起」及び「科学に対する素養や態度の習得」をねらいとし ている。本科目は他校において「総合的な学習の時間」で活用することを想定し、汎用性と持続性す なわち適用範囲の拡大や費用の抑制などの特性を持たせるよう研究開発した。 ②理科基礎実験/ESD/科学史・科学倫理/環境・エネルギー講座 ESD 及び科学史・科学倫理の各講座・講演会にて、科学への興味関心を喚起するとともに科学に対 する調和のとれた見方や考え方を育成することができた。また、環境理解のための理科実験を通じて 実感を伴う理解が得られた。第5年次には ESD 校外学習の発表会にてプレゼンテーション能力も養 うことができた。 ③ディベート ディベートの実施により、情報を収集・整理し、論理的に考える力が育成された。テーマを環境・エ ネルギー・ESD 関連としたことにより SS アクティベイトⅠ全体のまとめになり、社会的な問題に 13 対する科学的な判断力も養われた。さらに、グループでの活動及び対抗戦の実施によりコミュニケ ーション能力も向上した。 ④SSH 意識調査(第4・5年次 1年次一般クラス生及び SSH クラス生)の比較 次の観点における肯定的回答の割合の増加から、生徒自身による自己評価も高まったといえる。 「興味関心」=科学技術に対する興味関心が増したか、 「思考力」=考える力が増したか、 「科学の活用姿勢」=社会で科学技術を正しく用いる姿勢が増したか 興味関心 思考力 科学の活用姿勢 第4年次 第5年次 第4年次 第5年次 第4年次 第5年次 一般クラス 80.3 87.6 68.9 77.8 51.8 76.1 SSH クラス 97.5 100 77.5 92.3 57.5 94.8 以上により、本科目のねらいを達成するとともに、汎用性と持続性を備えたカリキュラムの開発が 進み、仮説は支持されたといえる。 【仮説3】 これまでの小学生を対象とした出前実験を中学生を対象とした科学実験講座にまで拡大したり、県内の 科学に興味を持つ高校生が一堂に会して実験・実習・発表等を行うサイエンスセッション等を主催し、 また、それらの機会により多くの教育関係者に本校の SSH 事業を理解してもらうことで、その成果を 還元(持続可能で汎用性のあるカリキュラム等の提案)し、地域の理科教育をリードする拠点校として の役割を果たすことができる。 (1)実 践 対応する取組 ▶ SS アクティベイトⅡ、SS リサーチ、科学技術人材育成重点枠事業<中核拠点> SS アクティベイトⅡ ①アウトリーチ・ラボⅠ(第1〜3年次実施) :児童対象の実験紹介、2班に分かれて市内小学校訪問。 ■変更点■・アウトリーチ・ラボⅠは、第4年次から内容を改善した上で小中高連携フィールドワー ク及び小中高連携ウェルカムラボ(科学技術人材育成重点枠)に移行させた。 SS リサーチ ①青森サイエンスセッション(第1〜3年次実施) :各校からの課題研究の発表及び共同実験。 ②アウトリーチ・ラボⅡ(第1〜3年次実施) :中学生対象の実験紹介、会場は市教育センター利用。 ■変更点■・青森サイエンスセッションは、第4年次から内容を改善した上で地域連携サイエンスセ ッション(科学技術人材育成重点枠)に移行させた。なお、持続可能で汎用性のあるカ リキュラムの提案等については、本プログラム中の実施は困難であった。 ・アウトリーチ・ラボⅡは、第4年次から内容を改善した上で小中高連携フィールドワー ク及び小中高連携ウェルカムラボ(科学技術人材育成重点枠)に移行させた。 科学技術人材育成重点枠事業<中核拠点>(第4・5年次 [=指定期間] 実施) ①コンソーシアム青森:青森県及び岩手県北におけるタンポポの分布と生態に関する共同研究。 ②小中高連携フィールドワーク:小中学生による野外実習を題材とした探究活動。 ③地域連携サイエンスセッション:ポスターセッションを中心とした大規模な研究発表会。 ④小中高連携ウェルカムラボ:小中学生による屋内実験を題材とした探究活動。 14 (2)評 価 ①アウトリーチ・ラボⅠ/アウトリーチ・ラボⅡ(ともに第1〜3年次実施) 第1期で行われていた、小学校を訪問しての実験紹介は参加児童に喜ばれるとともに新聞でも報道さ れ、SSH の取組を広く知らせるのに有効であった。アウトリーチ・ラボⅠはそれを第2期に継承し たものであり、アウトリーチ・ラボⅡは対象を中学生に拡大したものである。これらは小中学生の科 学への興味関心を引き上げるのに効果があったが、単発のサイエンス体験となる懸念があった。 ②青森サイエンスセッション(第1〜3年次実施) 1日目に口頭及びポスター発表、2日目に共同実験を行っていたが、1日目は参加できる人数が限ら れており、2日目は実験内容が高度であったため理解や操作が困難であった。共同実験には米軍三沢 基地内の高校生が参加したが、活発なコミュニケーションには至らなかった。第3年次から国際交流 を別のプログラムとして切り離し、1日のみの開催で発表件数24件に規模を拡大した研究発表会と した。これにより、生徒同士の質疑応答が活性化し探究活動への興味関心が引き上げられただけでな く、1・2年次 SSH クラス生全員を参加させることも可能となった。 ③科学技術人材育成重点枠事業<中核拠点>(第4・5年次 [=指定期間] 実施) コンソーシアム青森では、青森県の中学生と高校生及び岩手県の高校生が共同研究を通して探究活動 を理解・実践できるようになり、科学系部活動も活発化した。連携校へのアンケートでは、 「研究意 欲」及び「科学への興味関心」について「とても高まった・やや高まった」がともに96%だった。 地域連携サイエンスセッションでは、北海道から福島県まで計15校の広範囲の参加が得られ、生徒 522名による活発なポスターセッションにより互いに刺激を与え合った。連携校へのアンケートで は、 「探究活動への関心・意欲」について「とても高まった・やや高まった」が96%、 「探究活動の 活性化への効果」について「とても役立つ・やや役立つ」が100%となり、各校の指導教員や運営 指導委員も開催意義を高く評価した。 小中高連携フィールドワークと小中高連携ウェルカムラボでは、市内及び周辺地区の対象児童・生徒 全人数分の案内を、各小中学校をとおして配付したことによりこの取組が広く知られることとなり、 参加者が急激に増加した。長時間に渡る探究活動をとおして、参加した小中学生の科学的な見方や考 え方が養われ、見せるイベントから地区の小中学生を育てるプログラムへ改善できた。アンケート結 果では、 「予想を立てて確かめることの大切さ」について「とても理解できた・やや理解できた」が フィールドワークで95%、ウェルカムラボで100%となった。 *上記に加え、第5期は「東北地区 SSH 担当者等教員研修会」の幹事校を務め、事業成果に関する 情報共有や SSH の課題に関する講演等による研修の機会を企画・運営した。今年度は経過措置期 間中ではあったが「東北地区 SSH 指定校発表会」の会場校となり、前日の会場設営や当日の司会、 終了後の会場復元作業などを行うことで本発表会の円滑な運営に協力した。また、SSH の対象か ら外れた1年次生に対しても、従来の「SS アクティベイトⅠ」をさらに改善した内容を「総合的 な学習の時間」に実施し、青森県主催の「探究型学習によるたくましい高校生育成事業」の課題研 究等成果発表会で発表することで、取組の成果の普及・還元を図った。 以上により、 「地域の理科教育をリードする拠点校」としての役割を果たすことができ、仮説は支持 されたといえる。 15 2 学校の概要 あおもりけんりつはちのへきたこうとうがっこう (1)学校名 校長名 (2)所在地 電 話 青森県立八戸北高等学校 竹浪 二三正 青森県八戸市大字大久保字町道8-3 0178-33-0810 (FAX 0178-33-2439) (3)課程・学科・学年別生徒数・学級数及び教員数(平成28年3月1日現在) 第1学年 課 程 学 科 普通科 全日制 第3学年 計 生徒数 学級数 生徒数 学級数 生徒数 学級数 生徒数 学級数 242 6 194 (115) 5 (3) 195 (124) 5 (3) 631 16 0 0 39 1 40 1 79 242 6 233 6 235 6 710 普通科 SSH 計 第2学年 2 18 普通科( )内は SSH クラスを除く理類型の生徒数及び学級数 養護教諭 校長 教頭 教諭 臨時 非常勤 実習 事務 技能 講師 講師 講師 職員 職員 4 2 2 4 2 /臨時養 護助教諭 1 1 44 2 A そ L の T 他 1 1 計 64 3 研究開発課題 探究心や創造性に優れ、国際社会に通用する調和の取れた科学技術系人材の育成 4 研究の概要 (1)大学や研究機関等との連携を強化し、課題研究の質的向上を図る。 (2)国際性の育成に関するカリキュラムを充実させ、国際社会に通用する調和の取れた科学技術系人材 の育成を目指す。 (3)効果的な指導を行うため、生徒の変容及び到達度を測定する評価方法を研究する。 5 研究開発の実施規模 学校設定教科『総合 SS』を設定し、各科目の名称と対象を以下のとおりとする。 SS リサーチ …2年次 SSH クラス生 SS インテグレイト …3年次 SSH クラス生 課題研究発表会は1・2年次生全員を、SSH 講演会は全校生徒を対象とすることで SSH 事業の効果を 学校全体が享受できるようにする。また、科学部・地学部の活動を推進するとともに、SSH クラス生及 び科学分野に高い関心を持つ他クラス生徒に対しては、科学オリンピックや科学の甲子園への積極的な 参加を促す。 16 6 研究の内容・方法・検証等 (1)現状の分析と研究の仮説 <現状の分析> 1期目5年間の取組では、SSH クラス生に対して実験・観察を基礎・基本とする理科の学習や課題 研究を中心とする学校設定教科「総合 SS」5単位を履修させることで、探究心や科学的論理的な思考 力等に富む人材の育成を図った。課題研究の内容も年々レベルが上がり、確実に成果が上がったと判断 している。また、国際性を育成する取組として、課題研究の内容を英語でプレゼンテーションさせた り、ALT による実験やサイエンスダイアログ等で英語によるコミュニケーション能力の向上に努めて きた。以上を踏まえ、2期目の研究開発に取り組み、さらに充実した成果を上げてきた。一方、SSH の取組を終える段階ではあるが、課題研究では仮説設定プロセスやデータの収集・分析・解釈等の点 で、まだ改善できる余地があると考えている。また、課題研究の内容を英語でプレゼンテーションす る場合、聴く側が理解しやすくなるように研究目的・動機に重点を置いた内容構成にすることや、質 疑応答に改善の余地が残されている。 <研究の仮説> 仮説設定プロセスやデータの収集・分析・解釈等について特に重点的に指導することにより、課題 研究の質的向上が図られ、探究心や創造性が育成される。また、国内在住の外国人留学生等の活用に より、聴く側が理解しやすくなるような発表ができ、質疑応答にもより円滑に対応できるようになる。 (2)研究内容・方法・検証 <研究内容・方法> ①学校設定科目「SS リサーチ(2単位) 」では,物理・化学・生物・地学・数学のいずれかの分野に おいてテーマを決定し、大学や研究機関等と連携しながらグループで課題研究を行う。この活動を とおし、探究心・独創性・創造性・科学的論理的な思考力の育成を目指す。また、課題研究の要旨 を英語で表現することを通して、国際性の育成を図る。 ②学校設定科目「SS インテグレイト(1単位) 」は3年次前期に週2時間開講し、科学研究で必要と される英語運用能力の向上を目指し、課題研究等の内容を英語でプレゼンテーションする。また、 高校では取り扱わない発展的な数学の内容を集中的に学習することで、科学技術の発展に数学が果 たす役割を実感させる。 ③指導と評価の一体化を図り、生徒の変容や到達度を測定する評価方法を研究する。 <研究開発の仮説検証> 検証作業チームが整理したデータをもとに、定期的に SSH 推進委員会及び運営指導委員会等で協議 を行い、事業目標の達成度や生徒の活動状況、変容を中心に評価・検証する。また、外部評価につい ても積極的に取り入れる。 (3)必要となる教育課程の特例等 ①必要となる教育課程の特例とその適用範囲 環境・エネルギー教育の推進とコミュニケーション能力の育成、及び研究開発課題に取り組むに 当たって、既存の教育課程における教科・科目では対応できないことから、下記の目標を設定した 学校設定教科「総合 SS」を実施する。 (ア)実験・観察を基礎・基本とする理科の学習や課題研究への取り組みを通して、事象を科学的・ 論理的に探究し思考する能力と態度を育てるとともに、創造性や独創性の基礎を培う。 (イ)課題研究への取り組みや発表を通して、プレゼンテーション能力の向上を図るとともに、英 語を積極的に活用しようとする態度を養う。 17 学校設定教科「総合 SS」の科目構成及び対象生徒・実施形態は,次のとおり。 <SS リサーチ(2単位)> 対象生徒 実施形態 2年次 SSH クラス生 「化学」 ・ 「総合的な学習の時間」各1単位を減じ、木曜日の6・7校時に連続 で実施する。 <SS インテグレイト(1単位)> 対象生徒 実施形態 3年次 SSH クラス生 「総合的な学習の時間」1単位を減じ、前期にまとめ取りして火曜日の5校時 と金曜日の7校時に実施する。 研究開発の対象である2年次及び3年次 SSH クラス生は、1年次に「SS アクティベイトⅠ(1 単位) 」及び「SS アクティベイトⅡ(2単位) 」を履修済みであり、 「総合 SS」の単位数の合計は 6単位となる。 (ただし、 「SS アクティベイトⅡ」については、学校外の学修による単位認定により 1単位増単となるため、これを含めると単位数の合計は7単位となる。 ) ②教育課程の特例に該当しない教育課程 なし 7 研究計画 2年次 SSH クラス生については、SS リサーチでの課題研究において、仮説設定プロセスやデータの 収集・分析・解釈等について特に重点的に指導することにより、課題研究の質的向上を目指す。また、 SS リサーチの枠の中で SS インテグレイトで行われていた科学英語、すなわち課題研究の内容を英語で 表現する活動を可能な限り実施する。 3年次 SSH クラス生については、従来どおり SS インテグレイトにおいて3年間のカリキュラムを完 成させる。科学英語及び学習成果発表会においては、英語科教員と課題研究担当者との連携を深める。 また、ALT 及び国内在住の外国人留学生等の活用により効果的指導を図る。さらに、発展数学において は、事象の解析に関して活用できる内容を設定する。 学校設定教科「総合 SS」及び SSH 事業全体の評価については、次の方法・観点で行う。 a 生徒自己評価(実施前後における内容理解・意識の変容等) b 言語活動の観察(態度,活発さ,明瞭さ,正確さ,質疑応答等) c レポート(内容,構成,論理性,正確さ等) d 到達度テスト(知識・理解) e 学力分析(定期考査・模擬試験等の活用) f 外部評価(運営指導委員会・学校評議員等による) g 内部調査(教員対象意識調査,事業全般への理解・意識の変容等) h 追跡調査(進学状況,大学等進学後の意識・状況等) 8 研究開発の経緯 1年次生 2年次生 3年次生 21年度 Basic SS Study SS Advanced SS 22年度 SS アクティベイトⅠ・Ⅱ Study SS Advanced SS 23年度 SS アクティベイトⅠ・Ⅱ SS リサーチ Advanced SS 24〜26年度 SS アクティベイトⅠ・Ⅱ SS リサーチ SS インテグレイト - SS リサーチ SS インテグレイト ◎27年度 18 (1)2年次 SSH クラス生に対する研究開発 <SS リサーチ> ①課題研究(4〜12月) :理科及び数学の各テーマに関する課題研究を行い、探究心・創造性・科学 的論理的な思考力を高め、研究成果を発表することでプレゼンテーション能力を養った。 ②県外研修(8月) :角田宇宙センター、東北大学金属材料研究所等を訪問して科学技術への関心を高 めるとともに、生徒研究発表会の参観により課題研究及びその発表への意欲を高めた。 ③科学英語(1〜3月) :課題研究の内容に関して英語でポスター発表することを目指し、用語や表現 等を学び、英訳及び発音の確認をした。 ④数学ゼミ(3月) :高校数学の範囲にとらわれない7テーマについて学び、数学各分野に対する関心 を高めるとともにその有用性を理解した。 (2)3年次 SSH クラス生に対する研究開発 <SS インテグレイト> ①科学英語(4〜6月) :2年次に行った課題研究の内容に関する英語の用語や表現等を学び、英訳及 び発音の確認をした。指導には本校英語科教員及び ALT 以外に他校 ALT の協力も得た。 ②学習成果発表会(6月) :課題研究の内容について「科学英語」の授業で英訳した内容を、観衆の前 でプレゼンテーションし、その後の質疑応答も英語で行った。 ③発展数学(9月) :将来の探究活動や理系分野の専門的内容に役立てられるよう「偏微分」と「行列」 を学び、進学後の数学への橋渡しを目指した。 (3)SSH 講演会及び他の活動等 ①SSH 講演会(10月) :講師として 東北大学大学院工学研究科 堀切川一男 教授を招き、 『摩擦の 科学「トライボロジー」で凄ワザに挑む』と題した講演を聴講した。 ②全国 SSH 生徒研究発表会(8月) :課題研究『オオハンゴンソウによる植物の生育抑制について』 を行った生徒が代表として参加し、インテックス大阪にてポスター発表を行った。 ③他校 SSH 事業参加(8月) :大阪府立大手前高校 数学生徒研究発表会「マス・フェスタ」に代表生 徒2名が参加し、課題研究『八戸市でのスギ花粉飛散予測』のポスター発表を行った。 ④科学の甲子園青森県大会(11月) : 2年次 SSH クラスの希望者6名が参加し、数学部門賞(数学 分野1位)を受賞した。 ⑤高校生科学研究コンテスト(11月) :県内高校生による科学系研究発表会で、今年度3回目の開催 となった。2年次の課題研究班のうち、物理分野2班、生物分野1班、地学分野1班が参加した。 ⑥青森県理数系課題研究発表会(12月) :弘前大学理工学部において、県内 SSH 校及び理数科設置 校計3校が合同で行う発表会で、本校2年次の課題研究班すべてが口頭発表を行った。 ⑦東北地区 SSH 指定校発表会(1月) :2年次生の課題研究班のうち、2班が代表として口頭及びポ スター発表を行った。本校が会場校となり、設営及び運営にあたった。 ⑧科学オリンピック(7・1月) :物理チャレンジ、生物学オリンピック、化学グランプリ、数学オリ ンピックに生徒合計28名が参加した。 19 < 学校設定科目 > SS リサーチ 1 対象生徒 2年次 SSH クラス生 2 単 位 数 2単位( 「総合的な学習の時間」1単位 及び「化学」1単位の代替) 3 年間計画 《実施時期》 [1] 課題研究 1 仮 説 《実施内容》 4月〜12月 課題研究 8月 県外研修 12月 生徒研究発表会 1月〜 3月 科学英語 3月 数学ゼミ <実施日>平成27年4月〜12月 仮説・実験・考察及び発表という一連の活動を通して、探究力が育成されるとともに、 プレゼンテーション能力が向上する。 2 内容・方法 物・化・生・地・数の分野10テーマで実施し、生徒研究発表会等で発表した。 ○課題研究中間発表会 <実施日>平成27年9月10日(木)、<会場>生徒会館 <聴講者>本校教員、3年次 SSH クラス生徒 ○生徒研究発表会 <実施日>平成27年12月11日(金) 、<会場>第1体育館 <聴講者>1・2年次生全員 3 結果・検証 中間発表会は昨年度から方法を改良した。生徒全員が1人ずつポスターを前にして プレゼンテーションと質疑応答を行い、それを当該テーマ担当教員以外の複数の教 員が評価する方法をとった。評価の観点は以下の通り。 ①研究の目的・仮説の設定は適切か。…………5点 ②調査・実験等の方法は適切か。………………5点 ③ポスターはわかりやすいか。…………………5点 ④プレゼンテーションはわかりやすいか。……5点 ⑤質問に対する回答は適切か。………………10点 昨年度と同様、3年次 SSH クラス生の前でも発表し、先輩からの助言の時間も取っ た。生徒全員が発表を経験したことによりそれぞれの研究に対する理解が深まり、そ の後の研究意欲も高まった。12月の校内生徒研究発表会でも自信を持ってプレゼン テーションし、活動を通じた成長が感じられた。発表会終了後に行ったアンケート結 果では、 「研究分野への興味関心」が実施前の4.47から、実施後は4.76へと増加 し、 「研究分野への理解」は実施前の3.79から、実施後は4.42へと増加した。ま た、 「研究への取り組み姿勢」は94% が「意欲的だった・とても意欲的だった」と 回答している。下記の「4 生徒の変容」 、 「5 生徒の感想」も合わせて、本研究開発 の仮説については支持されたといえる。 20 4 生徒の変容 今年度は研究内容に独自性を求めたためか、テーマ設定に時間がかかる班が目立ち、 実験のスタートが少し遅れ気味となった。しかし、次第に各班内にリーダーシップを とれる生徒が生まれ、その都度役割を決めながら実験するようになった。また、得ら れた結果について班内で考察し、次に確かめたい現象や実験装置の改良について提案 するようになった。いずれの班も失敗を恐れず果敢に挑戦する姿勢が見られるように なり、地道な操作も確実に成し遂げるようになった。9月に中間発表会を行ったが、 教員が手を貸さなくても自主的に研究を進め、ポスターにまとめたことによって研究 内容への理解が深まり、どの生徒も自信を持って発表していた。昨年度のように全国 生徒研究発表会を参観することはできなかったが、校内の生徒研究発表会や青森県理 数系課題研究発表会、東北地区 SSH 指定校発表会などで経験を積み、プレゼンテー ション能力やコミュニケーション能力は十分向上した。 <生徒自己評価における肯定的回答の割合> 1)他のメンバーと協力し、ねばり強く研究を進めましたか。 (85%) 2)スライドや要旨、報告書の作成に積極的に取り組みましたか。 (84%) 3)仮説の検証を目指して、論理的に研究を進めましたか。 (79%) 4)発表会や書面で研究内容をわかりやすく伝えるよう努めましたか。 (95%) 5)実験・観察、データの扱いなどの基本的技能が身につきましたか。 (92%) 6)配色や字の大きさに配慮し、他人に伝わるスライドを作成しましたか。 (87%) 7)先行研究等を十分調査をし、それを踏まえて研究を進めましたか。 (82%) 8)新たな知見も活用し、研究内容を確実に理解しましたか。 (86%) 5 生徒の感想 ○最初は何をすればよいのか分からなかったが、回数を重ねるにつれて着目すべき所 や改善点が出てきて、追究していく姿勢に変わっていった。 ○正確な値を得るために条件を同じにして比較対象をつくること、記録を確実に残し 仮説に対して深く考察することの重要性を実感できた。 ○思うような実験結果が得られなかった原因を究明する力や発想力がついた。また、 事象を細分化して調べながら進めると上手くいくことが分かった。 ○論理的に考えて実験を行うことで、1つの実験から同時に複数のデータを集めたり、 色々な角度から考察できることを学んだ。 ○同じグループのメンバーと協調性を持って1つのテーマに向かっていく中で、最後 まで粘り強く研究を進める力が身についたし、研究自体が楽しかった。 ○ポスターやスライドを作成する中で、自分たちの研究内容をもっと理解することが できた。他の人に伝える立場になってみることはよい経験だと思った。 ○校外での発表会やポスターセッションでは、他校生徒の研究や発表方法から多くの ことを吸収できた。自分たちよりもっと奥が深い所まで研究していた。 ○研究発表をすることの大変さを感じたが、何度も発表会を重ねるうち、自分たちの 研究をいかに分かりやすく伝えるかということに気を配るようになった。 ○歴史遺産や地域についての興味・関心が強くなった。SSH クラスだったから、じっ くり課題研究に取り組めた。最後までやり遂げたことに感動している。 6 指導上の工夫 と教員の変容 ○自分たちで見通しを立てさせ、手に負えるテーマを設定するよう助言した。 ○はじめのうち、役割分担や期限設定など声をかけながら生徒を動かす工夫をした。 ○教員の考えを押し付けず、まず生徒が用意した考察を聞くというスタンスで指導した。 また、次にどうすればよいと思うかと問いかけながら生徒からアイデアを導き出した。 ○図やグラフを用いて直感的に分かりやすいスライドづくりを心がけさせた。 21 ○つい手を出したくなるところも我慢し、生徒が実験し始めるのを見守った。 ○算額の研究では、その時代の言語や解法をできるだけ用いて理解するよう促した。 ○物理の授業が始まっていなかったため、研究に必要な知識や数式の扱いを指導した。 ○課題研究のテーマと授業で扱っている単元との関連が深かったため、その分野に対 する自分自身の興味も増した。 ○授業で説明する際、順を追って論理的に説明することを心掛けるようになった。 ○生物を飼育する際の環境を適切に整えられず、生物担当教員として生命を扱うこと の難しさを考えさせられた。 ○紙上の演習問題をただ解くのではなく、五感を用いて事象を確かめさせるのが真の 理科の授業だと考えるようになった。 課題研究 <テーマ別一覧> 【1】磁性流体による磁場測定 <物理分野> 担当=阿部 磁性流体とは、強磁性微粒子(約 10 nm)、溶媒、界面活性剤からなる、磁 石にひきつけられる性質を持ったコロイド溶液である。磁性流体は、磁場を 近づけると突起を形成する性質を持つ(スパイク現象)。磁性流体が形成する 突起は、影響する磁場の大きさによって形が変化する。この性質から、磁性 流体によって簡易的な磁場測定ができると考え、磁場の変化による突起の変 化を測定することにした。磁場の大きさを簡単に変えることができないため、 磁石と磁性流体との距離を変化させることで磁場の変化とした。測定した値 は、距離、突起の数、垂直方向からの角度、突起の高さである。得られたデ ータをグラフ化し、高校2年生で習っている数学で数式化を試みた。理論上 は磁場の強さ、磁力線の数は距離の2乗に反比例するが、数式化した結果は 理論値よりずれていた。その原因究明が今後の課題である。 【2】波による砂の侵食 <物理分野> 担当=櫻庭・奈良壮 波の影響により、砂浜が減少しているという事実を知った。砂浜は消波の 役割を果たしており、砂浜が減少すると波が住宅地に押し寄せる可能性が あるため、砂浜を保全することが重要となる。そこで、現在実用化されて いる四脚ブロックよりも単純な構造の障害物で、効率よく砂の侵食を抑え ることを本研究の目的とした。波のエネルギーが波の高さの二乗に比例す ることに注目し、本研究では浮き、球体ブロック、板、網等を用いて消波 効果を比較した。実験の結果、何も置かない状態と比べ、障害物を設置し た場合では砂の侵食を約 65%まで抑えることができた。しかし目標として いた四脚ブロックの性能には届かなかった。目標の性能に達しなかった理 由の一つとして、障害物の配置方法により波の干渉がおこったことが考え られる。今後は障害物の配置方法を工夫するなど、より効果的な条件を探 っていきたい。 22 【3】バイオエタノールの生成について <化学分野> 担当=兼平 バイオエタノールとはサトウキビやトウモロコシなどのバイオマスを発酵 させ、蒸留して生産されるエタノールを指す。バイオエタノールは、再生可 能な自然エネルギーであり、 その燃焼によって大気中の二酸化炭素量を増や さない利点があることから、新しいエネルギー源として期待されている。本 研究では、麹とドライイーストを用いた先行研究をもとに、身近にある廃棄 物のうち、どれがより多くのエタノールを生じるか比較した。実験の結果、 用意した廃棄物のうちで落ち葉を利用した場合が最も多くのエタノールを 生じた。しかし、蒸留後の液体量はどの廃棄物の場合も少なく、蒸留時は共 沸によって高純度のエタノールが得られなかった。今後、よりの多くのエタ ノールを得るために、麹とドライイーストの最適な培養条件、及び他の廃棄 物の利用についても可能性を求めていきたい。 【4】コーヒー粕による植物の生育促進作用について <化学分野> 担当=漆原 熱湯抽出後のコーヒー粕には植物の生育阻害作用がある、という先行研究 をもとに、廃棄物であるコーヒー粕を雑草駆除に利用できないかと考えた。 論文では、有機溶媒処理したコーヒー粕では阻害作用がないことが報告さ れていたことから、阻害物質は有機層に溶解する性質を持っていると考え た。そこで、今回の研究では、コーヒー粕のメタノール抽出物を濃縮後に 水溶液とし、それを浸透させた脱脂綿上でコマツナを発芽・生育させるこ とによりその作用を確認した。実験の結果、逆に生育促進作用が認められ、 コーヒー粕そのものを用いた先行研究とは異なる結果となった。生育促進 作用の原因として、コーヒーに多量に含まれているクロロゲン酸及びその 分解産物であるカフェ酸とキナ酸が考えられたため、各試薬の水溶液を用 いて確認したところ、キナ酸の作用がメタノール抽出物を用いた場合と類 似していた。メタノール抽出物中のキナ酸の存在はまだ確認できていない。 【5】シャボン玉の着色について <化学分野> 担当=宇波 2010 年、地上ではできない色のついたシャボン玉が宇宙でできたことが話 題となった。地上では色素がシャボン玉の下に沈着し、着色した状態を保 つことが難しいとされている。そこで、割れにくいシャボン玉を作り、色 素沈着を防ぐことができれば地上でも色のついたシャボン玉を作ることが できるのではないかと考えた。本研究では、洗剤、添加物や着色料の組み 合わせや混合する割合を変えて一定の大きさのシャボン玉を作り、シャボ ン玉が割れるまでの時間を測定した。着色したかどうかは人間の目によっ て判断した。実験の結果、洗剤にゼラチンを加えると割れやすくなるが、 蜂蜜や洗濯のりを加えた場合より着色した。さらにゼラチン単独より、蜂 蜜と洗濯のりを同時に加えた場合が最も着色した。着色料には赤の食紅と 染料インキ、墨汁を用いた。墨汁を用いた場合に全体に色がついた。シャ ボン玉の強度と色素沈着を防ぐことに相関関係は見られなかった。 23 【6】オオハンゴンソウの生長抑制作用について <生物分野> 担当=川村 オオハンゴンソウはキク科の多年草植物であり、日本には明治中期に観賞用 として輸入された。1955 年に野生化が確認され、現在では特定外来生物に 指定され駆除が義務づけられている。八戸市では国立公園である種差海岸で の繁殖が問題となっている。そこで、この植物がもつアレロパシー作用(あ る植物による他の植物の生長抑制効果及び動物や微生物に対する忌避また は誘引効果の総称)に注目し、駆除したオオハンゴンソウの有効な活用法を 探った。オオハンゴンソウの乾燥粉末及び抽出液が、コマツナの発芽に与え る影響について調査するとともに、①園芸用品種のニチニチソウに対する抑 制作用、②自らの種子の発芽に対する抑制作用についても調査した。実験の 結果、①ニチニチソウに対する明確な抑制作用は確認できなかった。また、 ②自らの種子に対する発芽抑制作用は確認できた。 【7】魚の睡眠についての研究 <生物分野> 担当=清水 昨年の魚(アゴハゼ)の睡眠行動に関する研究で、①睡眠について時間的周 期性が確認されない、②ヒトと同様に疲労により睡眠が増加するとの2点に ついて結果を得ている。しかし、自然光下での実験であったことから、各波 長と睡眠との関連性までは考察できなかった。今回、昨年度の研究の再現性 を確認した上で、白・赤・青色光をそれぞれ 24 時間照射下で観察し、一定 時間で魚の動きが静止した回数を数値化することで、睡眠に与える光の影響 の有無について調査した。結果としては大きな変化は見られず、各波長にお ける影響はないものと考えられる。学校でこの実験を行うに当たっては温度 管理が難しいが、ぜひ一定温度下でのデータを取ってみたい。また、発育段 階の違いにおいてもまだ研究の余地があると考えている(幼魚の時には浮き 袋があることから、活動が活発であることも参考にしたい) 。 <連携先>青森県立八戸水産高等学校 河村明見 教諭 【8】八戸市から産出した縄文土器の胎土分析 <地学分野> 担当=岩岡 私たちの学校がある八戸市には多くの縄文遺跡がある。しかし、私たちは 地域にある歴史遺産のことをあまり知らない。そこで理解を深めると同時 に、高校生でもできる研究で地域に貢献したいと考え 2011 年から研究を行 っている。昨年度までは牛ヶ沢遺跡と一王寺遺跡について研究し、時代に よって土器の胎土が変化したことを明らかにした。今年度は新たに、これ までと同じ新井田川流域にある石手洗、重地、松ヶ崎の3つの遺跡につい て研究を行った。分析は土器を薄片にして偏光顕微鏡を使い鉱物組成を調 べ、一部の土器については EPMA も用いた。その結果、重地と松ヶ崎遺跡 については土器の胎土が一様で、現地にて土器が作成されたものと考えら れるが、石手洗遺跡については土器胎土が一定ではなく、時代によって他 地域から土器が運ばれてきている可能性が高いことがわかった。 <連携先>弘前大学理工学部 柴 正敏 教授 / 八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館 24 【9】算額の研究と問題の作成 <数学分野> 担当=沼宮内 算額とは、額や絵馬に数学の問題と解答を書き、寺院や神社に奉納したもの であり、解法は掲載されていない。今回訪問した光龍寺(八戸市)では球体 の問題が奉納されており、年度内に解くことはできなかった。また、南宗寺 (八戸市)に以前奉納されていた問題は三次方程式を使うものであり、現代 的解法で解くことができた(当時は算木を使って解いていた) 。このような 研究を進めながら独自の算額を作成することにも取り組み、円を複数絡めた 問題を完成させた。これは和算公式と言われるものを使って解ける問題であ り、現在普及している西洋数学を使って解ける問題でもある。作成過程の中 で、数値の設定や江戸時代に用いられていた言語の解読などに苦労した。今 後は、解けなかった問題に再挑戦するとともに、楕円や立体などを絡めた問 題作成にも取り組み、実際に奉納したいと考えている。 <連携先>光龍寺 【10】ルービックキューブの操作と小方体の位置の関係について <数学分野> 担当=大滝 誰でも一度は遊んだことがあるルービックキューブを用い、各操作による小 方体の位置情報の変化を具体的に把握することで、簡単に全面を揃える方法 を見つけることを目標とした。2×2のルービックキューブにおいて重要な 操作は、小方体の向きを変えることと、位置を変えることの2種類だけであ ることに気づき、全面を揃えることができるようになった。本研究では、あ る一面が位置も向きもそろっている場合に限定し考察した。このとき、そろ っている面以外の小方体の位置、向きにどのようなパターンがあるのかを数 式を用いて予想し、実際にルービックキューブを操作することによって予想 が正しいことを確かめた。紙に書き出すだけではなく、表計算ソフトを用い て数え漏らしがないか確認するなど多角的に考察することができた。今後の 展望としては、今回の内容について群論等を用いて整理することが考えられ る。 25 [2]県外研修 1 仮 説 <実施日>平成27年8月6日(木) 〜8月7日(金) 最先端科学技術やそれに携わる研究者について見聞を広げることで、研究活動に対す る理解が深まり、科学技術に対する興味関心が喚起される。 2 内容・方法 <1日目>国立天文台水沢キャンパス、角田宇宙センター <2日目>東北大学金属材料研究所、仙台市科学館 3 結果・検証 これまで本研修では、日本科学未来館や JAXA 等、東京・つくば方面への訪問を主と した内容を実施してきた。昨年度は、パシフィコ横浜での SSH 生徒研究発表会に合 わせたことで、全国レベルの研究内容とそのプレゼンテーションについて学ぶ機会に もなった。しかし、今年度は SSH 生徒研究発表会が大阪であったことや経過措置に よる予算縮小のため従来の内容では実施困難と判断した。代わりに東北地区内の訪問 を通して生徒の科学技術に対する興味関心を喚起するプログラムとし、名称も「東京 研修」から「県外研修」へ変更した。今回の訪問先のうち、東北大学金属材料研究所 では、 「不定比化合物材料学研究部門」 、 「磁気物理学研究部門」 、 「錯体物性化学研究 部門」 、 「計算材料学センター」の中から2か所を選択し、最先端の研究施設を見学し ながら研究活動や成果についての説明を受けた。その際、 「高校では特定の教科だけで なく文系の分野でも幅広く学習すること、その積み重ねが大学での研究で役に立つ」と アドバイスされ、その後の研究活動に積極性が増すなど具体的な変化が現れた。課題 研究を始めて4か月が経過しており、大学教員から刺激をもらえたことは生徒にとっ てプラスに作用したといえる。金属材料研究所での研修内容への興味関心に対する肯 定的回答は、実施前62%から実施後89%に増加した。また、本研修の他の訪問先 でも各数値は増加しており、本研修の仮説は支持されたと考えられる。 4 生徒の感想 ○月面着陸など先進的なことに取り組んでいることに驚いた。発射までの過程を分かり やすく説明してもらえて、宇宙の研究施設がとても身近に感じられた。 ○宇宙の起源や天文学について知ることができ、新たな疑問がたくさん湧いてきたので、 さらに追求していきたいと思ったし、自分もその研究に関わりたいと思った。 ○日本のロケット作りの技術・打ち上げ技術の高さに舌を巻いた。またエンジン部分の 精巧な構造も学ぶことができた。 ○磁石という身近な物質を利用した様々な最新鋭の機器に魅力を感じた。科学の最先 端を垣間見ることができ、勉学の必要性を改めて感じた。 ○どの施設も国を支える大切な研究をしていることが理解できた。しかも、その施設 が意外に身近にあることに驚いた。 ○普段の生活の中で目にしたり教科書で見たりして、少しだけ知っていたことを模型 や実験装置で確認でき、さらに理解が深まった。 <対象>2年次 SSH クラス生、<担当>日戸・木村 26 [3] 科学英語 <実施日>平成28年1月〜3月, ALT による講義=平成27年4月9日(木),5月21日(木),5月28日(木) ALT による実験=平成27年7月27日(月) 1 仮 説 今年度の課題研究の内容を、英語を用いてポスター形式で発表することを目標に、英 語で要約し、発表練習・質疑応答練習することにより科学英語に対する関心が高まり、 コミュニケーション能力が向上する。 2 内容・方法 1年間の経過措置により2年次生は次年度の SS インテグレイトが実施できないこと となったため、12月まで行った課題研究の内容を英語で表現する活動を、今年度内 期間で実施することとした。1月に「効果的な口頭発表及びポスター発表」について ALT から指導を受け、英語による発表用ポスターは日本語のポスターとは異なる構成 要素があることについて、具体例を通じて理解を深めた。その後、課題研究班ごとに ポスター及び発表原稿の作成、概要の英訳等に取り組んでいる。 3 結果・検証 科学で用いる英語に早い時期から慣れ、かつ、課題研究に具体的に役立てられるよう、 4〜5月に「テーマ設定の仕方」及び「実験計画の立て方」についての講義を ALT に よる英語で実施した。また、夏期休業中を利用して「英語による実験」も行い、従来 の ALT ラボに近いプログラムを体験させることにより、2年次の限られた時間内で可 能な限り英語に触れる機会をつくるよう努めた。12月まで取り組んできた課題研究 に関して校内での研究発表会を1つの区切りとし、ALT の指導によって1月から集中 的に科学英語に取り組んでいる。今年度まで3年次生が行っていた PC のスライドを 用いた口頭発表ではなくポスターを用いる発表を目標としているため、当初は生徒に 戸惑いも見られた。しかし、高校卒業後、多くの生徒がこうした発表の機会に遭遇す ることを認識させ、モチベーションを高めさせた。現在、各グループ内で英訳作業に 取り組ませており、次年度4月に何らかの機会を活用して発表させる予定である。 ALT による講義|解説画面(一部)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ALT による実験の様子 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ <会場>情報処理室・視聴覚室・化学室、<対象>2年次 SSH クラス生、<担当>Mitchell・英語科 27 [4] 数学ゼミ 1 仮 説 <実施日>平成28年3月3日(木) 高校数学の範囲にこだわらない内容を学ぶことで、数学に対する興味関心が高まり、 その有用性が理解できる。 2 内容・方法 以下のテーマのうちから1つ選び、担当教員指導のもと3時間連続で学習した。 A【結び目理論】結び目を作り、自らの手で触ってわかる『数学』を体験する。 B【テーラー展開】テーラー展開を利用し、自分で三角比の表をつくる。 C【RSA 暗号】素数の性質、余りを求める計算(mod)を用いて暗号をつくる。 D【確率・統計】モンティホールの問題や囚人のジレンマから確率を考える。 E【ヨセフスの問題】ヨセフスの問題から規則性を探る。 F【偏微分】空間における『接する』という事象を考える。 G 【フィボナッチ数列と母関数】 フィボナッチ数列の一般項を、 母関数を用いて考える。 3 結果・検証 3時間連続の授業において、数学各分野の関連や日常的・統計的分野への応用などを学 んだ。数学の有用性を理解しながら、生徒とともに数学科教員も楽しめたようである。 アンケートの結果、 「講義内容がとても難しかった・やや難しかった」が63%となっ たが、全員「意欲的に取り組んだ」と答え、 「選択テーマの内容が理解できた・十分理 解できた」は97%に達した。 「興味関心」の変容については、実施前の「とても関心 がある」45%が、実施後「とても関心が高まった」86%へ大幅に増加した。生徒の 感想からも満足感や達成感が滲み出るような記述が多く、総合的に見て仮説は支持され たといえる。 4 生徒の感想 ○RSA 暗号で個人情報が守られているという事実を知り、社会での数学の活用のされ 方について理解が深められた。 ○ヨセフスの定理のゼミでは、答えが用意されていない問題を仲間で話し合いながら 考えた。結局、規則性は見つけられなかったが、問題を解く楽しさが実感できた。 ○確率の分野で、実際にニュースになった事例をもとにした問題に取り組んだ。校長 先生から解説してもらったとき、視点の違いにとても感動した。 ○テーラー展開について詳しくは知らなかったが、取り組んでみてとても楽しかった し、式に美しさを感じた。 ○一筆書きや結び目理論を体験してみて、指定された図形を作ることに興味をもてた。 また、数学にも様々な分野があることも知った。 ○フィボナッチ数列のゼミでは、解いた後のスッキリ感が最高だった。普段使っている 式を何個も組み合わせると、とても楽しいということが実感できた。 ○数学の奥深さを感じることができた。大学で数学を学ぶのが楽しみになった。 <対象>2年次 SSH クラス生、<担当>校長・南・工藤・瀬戸・大滝・沼宮内・日戸 56 < 学校設定科目 > SS インテグレイト 1 対象生徒 3年次 SSH クラス生 2 単 位 数 1単位( 「総合的な学習の時間」1単位の代替) 3 年間計画 《実施時期》 《実施内容》 4月〜 6月 科学英語 6月 学習成果発表会 9月 発展数学 (前期まとめ取りのため、後期なし) [1] 科学英語 1 仮 説 <実施日>平成27年4月〜6月 2年次に実施した課題研究の内容について、要約して英語でプレゼンテーションを行う ことを目標に、発表原稿の作成・質疑応答の練習を行うことにより、英語学習への関 心が高まり、コミュニケーション能力が向上する。 2 内容・方法 2年次に実施した課題研究の目的・方法・結果・考察等の英訳、プレゼンテーション 及び質疑応答の練習。 3 結果・検証 効果的な英語のプレゼンテーションとスライド作りについて、ALT が全体指導を行い、 その後、課題研究グループごとに英語科教員1名が担当し、発表原稿の作成と質疑応答 の練習を行った。6月の学習成果発表会に向けて、外部の ALT からの指導を2時間× 2回実施した。また、地元の大学の中国人留学生2名の協力を得て、希望するグループ のプレゼンテーションを聞いてもらった。アンケートの結果は、 「英語学習への興味関 心」についての肯定的回答は98%で、うち「大いに高まった」が63%であることか ら、この授業が英語学習への強い動機づけに効果的であったといえる。また、 「コミュ ニケーション能力の向上」についての肯定的回答は90%で、うち「ある程度高まった と思う」が50%と半数を占めた。この授業におけるコミュニケーションとは、おもに 発表内容に関する質疑応答である。英語による相手の質問内容を正確に理解し、その場 で的確に回答することは、ほとんどの生徒にとって初めての経験で、難易度が高く生徒 全員が満足感を得ることは難しい。しかし、生徒の自己評価での肯定的回答の割合から すれば仮説は十分支持されると言ってよいと思われる。このプログラムに対する評価及 び仮説に対する検証は、英語によるプレゼンテーションの実施とも関連させて評価する とさらに信頼性が向上すると考えられるため、学習成果発表会の報告も参照されたい。 ところで、協力いただいた他校 ALT から「個々の単語の発音練習と英語の発表練習に 力を入れた方がよい」との指摘をいただいた。発表原稿には、英語の教科書には出てこ ないような専門用語が多いためでもあるが、科学分野のプレゼンテーションには欠かせ ないもので有り、次年度以降是非向上を図っていきたい。 29 4 生徒の感想 ○英訳する際、自分で適切な表現を導き出せるよう指導してもらえたことがよかった。 ○4分間という短い時間にまとめていくのは大変だったが、うまく要所をおさえたス ライドをつくることができた。 ○発表する内容や趣旨によって、強めに話すポイントや速度を変えることなどを詳し く指導してもらえたことがよかった。 ○聴く側とアイコンタクトを取りながら、内容を分かりやすく伝えるよう気を配った。 ○事前にスライドや原稿をつくって練習しておくことができず、混乱することがあっ た。早めに準備しておくことが大事だと思った。 ○研究内容への理解がもっと深ければ質疑応答に対応できると思った。単語をもっと たくさん覚える必要性を感じた。 ALT による実践指導 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ <会場>情報処理室、視聴覚室、音楽室<対象>3年次 SSH クラス生、 <担当>岡田・杉山・小原・田村・鎌田・八木田・伊藤・長谷川・山口・Mitchell Yeung Wing Kei(八戸東高) ・Brooks Russell(八戸商業高) Tara Naughton(三本木高) ・Peter Weeks(青森県教育庁) <協力>劉 耘 Liu Yun(八戸工業大学留学生) ・馬 東建 Ma Dongian(八戸工業大学留学生) [2] 学習成果発表会 1 仮 説 <実施日>平成27年6月23日(火) 課題研究の成果を英語で発表することで、英語によるプレゼンテーション能力が向上し、 国際性が育成される。 2 内容・方法 課題研究で取り組んだ成果を、外部からの招待者、保護者及び2年次 SSH クラス生等 を前に発表する。司会・質疑応答もすべて英語で行う。 3 結果・検証 持ち時間8分間の内訳を、研究紹介(4~5分間)+質疑応答とした。どのグループも 原稿を持たずに英語でプレゼンテーションし、他校 ALT や大学教授からの質問に協力 して英語で答えていた。前年度に引き続き、2年次 SSH クラス生から英語で質問させ た。前年度のうちに日本語の発表を聞いていたこともあり、2年生は積極的に質問し、 活発な質疑応答となった。アンケートの結果、 「英語によるプレゼンテーションの方法 を理解できたか」への肯定的回答が88%、 「国際性が身についたと思うか」への肯定 的回答は96%となった。運営指導委員からの評価や生徒の感想と合わせて、仮説は支 持されたといえる。一方、 「自分達の発表はうまくできたか」に対しての肯定的回答は 83%だったものの、うち「とてもうまくできた」は23%にとどまり、自分たちの英 語の発表に満足している生徒ばかりではないことが分かる。英語の発表力を短期間で 30 引き上げることは難しく、1年次から英語の授業で発表する場面を増やすなど、英語 科との連携が今後の課題である。また、参加した2年次 SSH クラス生からは、英語 のプレゼンテーションの難しさを実感するとともに、相手に伝わる発表力を身につけ たいという感想が多く、2年次生にとっても英語学習に対するモチベーションを引き 上げる効果があったといえる。 4 外部の評価 <運営指導委員/他校教員> ○生徒全員が真剣に探究活動に取り組んできたことが伝わってきて素晴らしかった。 ○長年の SSH の取り組みの蓄積によって、この発表会が次第に洗練されたものとなっ てきたのだと思う。データの検証力が上がると、さらに説得力が増すだろう。 ○大変堂々としていた。各班の発表から質疑応答に至る流れや受け答え、進行までも 英語で行い、練習量も相当かと察する。 ○中学を出て数年でここまで英語力が身についていることに驚いた。生徒の努力と先生 方の熱心なご指導に敬意を表したい。 5 保護者の感想 ○難しいテーマばかり扱うのではなく、高校生らしい視点で身近なものをテーマとし た研究もあってよかった。 ○発表会当日までの苦労と努力が十分に伝わってきた。 ○SSH をこのように英語に接する学習と組み合わせていくのは新しい発見であった。 きっと英語に対する学習意欲がわいてくると思った。 ○レベルの高いところで学習できていると改めて実感した。高校生でこうした貴重な 体験をさせていただき感謝している。 6 生徒の感想 <3年次 SSH クラス生> ○抑揚での表現の仕方やスライドの見せ方など、難しくてとても大変だった。日本語 の発表のときとは違う気配りが必要だと思った。 ○納得のいく発表ができた。英語が苦手だったが、少しだがそれを克服できたと思う。 ○短時間で専門外の人々に伝えるということは、これから先もあることだと思う。 ○準備からとても忙しく、スライドができた後も多くの練習を重ねて本番に挑んだ。 その過程が大切だと思ったし、やりがいが感じることができてよかった。 ○伝えたい情報をデザインするということににも興味を持つようになった。 <2年次 SSH クラス生> ○先輩方が堂々と発表し、英語での質問にも答えていてすばらしかった。また、質問 の内容が分からないときの質問者とのやりとりも勉強になった。 ○自分もリスニング力などを鍛えなければ質疑応答に対応できないと感じた。 ○スライド作成技術や人への伝達能力など様々身につけていく必要があると思った。 ○もし自分たちが発表することになったら、大切にしてきた研究内容なので、聞き手 にしっかり伝わり楽しんでもらえるように準備したい。 <会場>生徒会館、<対象>3・2年次 SSH クラス生、<担当>SSH 推進委員会 31 [3] 発展数学 1 仮 説 2 内容・方法 <実施日>平成27年9月1日(火)〜9月18日(金) 数学の発展的内容を学ぶことで、大学での勉学へ興味関心が高まる。 将来理系大学での学びに連結する数学の内容を用意し、各自の進路や興味に応じてい ずれかを選択受講させた。 3 結果・検証 昨年度から、大学一般教養でも必要となるが高校の教育課程から外れた「行列」と、 数学の専門分野である「偏微分」の2分野の選択とした。2グループに分けて講義を 行い、最後の授業では到達度テストも実施した。アンケートの総合結果では、 「興味関 心」の肯定的回答が実施前45%から実施後63%へ増加し、 「理解」の肯定的回答も 実施前23%から実施後65%へ増加した。高校数学を超える難しい内容であり、大 学で学ぶ数学の内容を肌で感じることができる機会となった。生徒からの感想には、貴 重な体験だった、大学での数学が楽しみである、といった前向きなものが多く、仮説は 十分支持されたと考えられる。 行列分野の講義 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 4 生徒の感想 偏微分分野の講義 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ○大学で学ぶ内容を体験できて貴重な時間だった。やはりハイレベルだと感じた。 ○今までにない計算方法で驚いたが、慣れると簡単に解くことができ、興味が湧いた。 ○大学でも偏微分は使うと思うので、高校で早いうちに学ぶことができてよかった。 ○新しいものに出会ったときには、今回のように楽しむ姿勢を持って学んでいきたい。 ○偏微分は物理に使われているので、物理と同時に数学も学ばなければと思った。 ○これまでに経験したことのいない特殊な規則でできた楽しい数学だと思った。行列 がどんなことに利用されているかも知りたい。 ○内容の大半が定義の段階から高校の数学とは違うものだった。大学の講義を先取り して触れることができてよかったし、数学への興味が一層高まった。 <会場>3年4組 HR、選択教室<対象>3年次 SSH クラス生、<担当>舘、奈良 32 <学校設定教科『総合 SS』以外 > SSH 講演会 及び 他の活動等 《実施時期》 《実施内容》 《対象》 7月 物理チャレンジ 希望者 5名 7月 生物オリンピック 希望者12名 7月 化学グランプリ 希望者 2名 8月 生徒研究発表会(全国 SSH) 3年次 SSH クラス生(4名) 8月 マス・フェスタ 3年次 SSH クラス生(2名) 10月 SSH 講演会 全校生徒 11月 科学の甲子園青森県大会 2年次生(6名) 11月 高校生科学研究コンテスト 2年次 SSH クラス生(4班) 12月 青森県理数系課題研究発表会 2年次 SSH クラス生(全員) 1月 数学オリンピック 希望者 9名 1月 東北地区 SSH 指定校発表会 2年次 SSH クラス生(全員) [1] SSH 講演会 1 仮 説 <実施日>平成27年10月2日(金) 第一線で活躍している科学者による専門分野の講義を聴くことで、科学に対する理解 が進み、興味関心が一層喚起される。 2 内容・方法 全校生徒対象の講演会として実施した。 講師=東北大学大学院工学研究科 教授 堀切川 一男 氏 演題=『摩擦の科学「トライボロジー」で凄ワザに挑む』 3 結果・検証 講師の堀切川教授は八戸市の出身で、摩擦に関する応用力学の専門家として第一線で 活躍している。今回は、これまで商品化されてきた研究成果を紹介しながら、発想の 具体化や商品の開発過程、それらを通した地域社会への貢献について講演いただいた。 内容は専門分野の難解な解説ではなく、生徒誰もが興味を持って聴くことができるも のであった。アンケートの結果は表のとおりいずれの観点も増加が見られ、仮説は支 持されたといえる。生徒全員に感想を書かせたが、特に理系の生徒は進学意欲や研究 意欲を大いにかき立てられたようである。 興味関心 実施前 実施後 実施前 実施後 全クラス 3.4 4.5 2.8 4.0 2年次 一般クラス 3.4 4.5 3.1 4.2 2年次 SSH クラス 4.2 4.8 3.4 4.5 3年次 一般クラス 3.5 4.5 3.3 4.3 3年次 SSH クラス 4.0 4.7 3.5 4.2 1年次 4 生徒の感想 理 解 ○堀切川先生が商品化したものは身の回りの製品が多く、自分にはあまり関係のない ものだと思っていた工学研究がとても身近に感じられ興味がわいた。 33 ○科学がこんなにも人や地域・企業などの役に立つとは想像しなかった。開発には時 間がかかるが、満足感や達成感を味わうことができることも納得できた。 ○私も将来工学部に進み、日用品の開発に携わりたいと思っている。講演の中で紹介 された「考える力が夢の実現につながる」という言葉が印象に残った。 ○利益目的ではなく、人のために商品開発をしている堀切川先生は尊敬できる。人々の 役に立つものをたくさんつくるような人生を私も送りたいと思う。 ○摩擦というひとつの分野でここまで幅広い成果を出せることに驚いた。大学の研究 の力はやはりすごいし、自分も発想力を磨いて社会に貢献できるようになりたい。 <会場>第1体育館、<対象>全校生徒、<担当>SSH 推進委員会 [2] 生徒研究発表会(全国 SSH) 1 発表テーマ <実施日>平成27年8月5日(水)~6日(木) 口頭発表=『オオハンゴンソウによる植物の生育抑制について』 <会場>インテックス大阪、<対象>3年次 SSH クラス生(3名) 、<担当>川村 [3] 他校 SSH 事業参加 1 参加事業 大阪府立大手前高校 科学技術人材育成重点枠事業 数学生徒研究発表会「マス・フェスタ」 <実施日>平成27年8月22日(土) 発表テーマ『八戸市でのスギ花粉飛散予測』 (数学) 2 内容・結果 数学のみの発表会は全国的にもめずらしく、他校の研究内容や発表方法から多くのこ とを学べる貴重な機会であった。本発表会において統計分野に関する研究は本校のみ であり、昨年度予測していた今年度のスギ花粉飛散日が的中したことなどを発表し、 参観者には大いに関心を持って聴いていただいた。各方面から多くのアドバイスを受 けるなど充実した発表会となり、参加生徒の進路決定にも大きな影響を与えた。 <会場>エル・おおさか、<対象>3年次 SSH クラス生(2名) 、<担当>日戸 [4] 科学の甲子園青森県大会 1 内容・結果 <実施日>平成27年11月7日(土) 2年次 SSH クラス1チームが参加した。総合競技及び実験競技については、放課後を 利用した対策を実施し本番に臨んだ。惜しくも県代表校は届かなかったが、数学部門賞 を受賞した。 <会場>青森県総合学校教育センター、<対象>2年次 SSH クラス生希望者(6名) 、<担当>日戸・櫻庭 [5] 高校生科学研究コンテスト 1 発表テーマ <実施日>平成27年12月6日(日) 口頭発表1=『磁性流体による磁場測定』 、2=『波による砂の浸食』 3=『オオハンゴンソウの成長抑制作用について』 4=『八戸市から産出した縄文土器の胎土分析』 2 内容・結果 青森大学と青森県教育委員会が共催する高校生科学研究コンテストに参加し、2年次 SSH クラスの課題研究における今年度の成果を発表した。入賞は逃したが、発表の場 34 を数多く経験し、県内の研究活動に取り組んでいる生徒と交流する意味でよい経験と なった。審査員からは数値データの処理方法や実験の際の適切なモデル化に関するアド バイスとともに、環境保全に目を向けたテーマ設定が興味深いとのコメントがあった。 <会場>青森大学、<対象>2年次 SSH クラス生(17名) 、地学部(3名) 、<担当>岩岡・川村・櫻庭 [6] 青森県理数系課題研究発表会 1 発表テーマ <本校分> <実施日>平成27年12月12日(土) 物理: 『磁性流体による磁場測定』 、 『波による砂の浸食』 化学: 『バイオエタノールの生成について』 『コーヒー粕による植物の生育促進作用について』 、 『シャボン玉の着色について』 生物: 『オオハンゴンソウの成長抑制作用について』 、 『魚の睡眠についての研究』 地学:『八戸市から産出した縄文土器の胎土分析』 数学:『算額の研究と問題の作成』 『ルービックキューブの操作と小方体の位置の関係について』 2 内容・結果 三本木高等学校(SSH 指定校)と五所川原高等学校(理数科)の生徒とともに、本校 2年 SSH クラス生が課題研究について口頭発表を行い、他校の発表を聴講した。弘前 大学理工学部及び農学生命科学部の教員に助言者として協力をいただいた。 <会場>弘前大学理工学部、<対象>2年次 SSH クラス生 <引率>校長・漆原・木村・日戸・櫻庭・宇波・沼宮内・奈良 [7] 東北地区 SSH 指定校発表会 1 発表テーマ <実施日>平成28年1月23日(土) ・24日(日) 口頭発表=『波による砂の浸食』 ポスター発表=『ルービックキューブの操作と小方体の位置の関係について』 『シャボン玉の着色について』 2 内容・結果 1日目は口頭発表17件、2日目はポスター発表32件とともに、活発な質疑応答と 生徒交流が行われた。東北各県 SSH 校より193名の生徒が本校に集まり、三本木 高等学校が幹事校として運営に当たった。本校2年次 SSH クラス生は代表者による 口頭・ポスター発表とともに、前日の会場設営や当日の司会、終了後の会場復元作業 などに携わり、本発表会の円滑な運営に協力した。 <会場>青森県立八戸北高等学校、<対象>2年次 SSH クラス生、<担当>漆原・山口・日戸・櫻庭・荒谷 [8] 科学オリンピック参加 1 参加種目 ①物理チャレンジ <実施日>平成27年 7月12日(日) 、<参加数> 5名、<会場>本校 ②生物オリンピック <実施日>平成27年 7月19日(日) 、<参加数>12名、<会場>本校 ③化学グランプリ <実施日>平成27年 7月20日(月) 、<参加数> 2名 ④数学オリンピック <実施日>平成28年 1月11日(月) 、<参加数> 9名 35 10 実施の効果とその評価 (1)生徒の意識について( 「SSH 意識調査」の利用による) 文部科学省及び科学技術振興機構が2月に実施した「SSH 意識調査」から数項目を抜粋し、それら の集計結果を示す。 ・調査年度及び凡例 は各ページの最初のグラフの下部に標記した。 「その他」は「効果がなかった」 と「わからない」を合わせたものであり、値は示していない。 ・今年度は経過措置であるため、1年次生は「SSH 意識調査」の対象となっていない。 ・昨年度のグラフの「1年一般」に「1年 SSH クラス」分の値は含まれていない。 ① SSH 事業を通して、科学技術に対する興味関心が増したか。 《平成27年度》 《平成26年度》 2年次 SSH クラスの肯定的回答は今年度も100% となった。同生徒は既に1年前から科学技術に 対して十分な興味関心を示していたが、課題研究の実施により一層その意識が向上したと考えられる。 また、2年次生は例年2泊3日で県外へ研修に出かけていたが、今年度は経過措置の予算のため近隣 で1泊2日と実施規模を縮小した。しかし、大学や科学館への訪問は生徒に大変好評であり、今回の 肯定的回答の数値にはその効果も含まれていると考えられる。 ② SSH 事業を通して、科学技術に関する学習に対する意欲が増したか。 3年次 SSH クラスの「大変増した」は昨年度より減少したが、2年次 SSH クラスの「大変増した」 は昨年度より増加した。肯定的回答は各年次とも高めで推移しているといえるが、 「その他」に注目 すると2年次生では 2.7%、3年次生では 5.0% おり、どちらも昨年度より増えている。ここ で、 「その他」とは「効果がなかった」と「わからない」を合わせた回答である。実際の生徒の様子 を踏まえると、SSH 事業が学習意欲向上に効果的である生徒が多い中で、進級当初の進路希望に変 化が生じ、必ずしも理数系科目への学習意欲に結びついていない生徒の存在も認められる。 36 ③ SSH 事業を通して、探究心が増したか。 《平成27年度》 《平成26年度》 2年次 SSH クラスの「大変増した」が 79.5% で相当高い値であるが、 「もともと高かった」も 15.4% で特徴的である。これは昨年度の「もともと高かった」17.9% の回答グループと考え られ、1年次に科学技術人材育成重点枠事業の小中高連携プログラムにおいて、児童生徒への指導 を通じて生徒自らの探究活動への理解が深まったことによると思われる。一方、3年次 SSH クラス の「大変増した」も 50.0% で比較的高く、課題研究を直接行っていないにも関わらず、探究心 は維持されていることは興味深い。 ④ SSH 事業を通して、考える力が増したか。 2年次 SSH クラスの 71.8% という数字は、課題研究において仮説の設定とその検証に取り組 むことを通じて、考える力が向上したという実感によるものと思われる。特に「大変増した」に着 目すると、1年次のときと比較して +28.2% となった。3年次 SSH クラスでは「大変増した」 が 45.0% であり、課題研究を実施していないためか2年次生より値が小さいが、それでも昨年 度の3年次生と比較すると +21.9% となった。 ⑤ SSH 事業を通して、問題解決力が増したか。 SSH クラスの肯定的回答は2年次生 97.5%、3年次生 94.8% であり、昨年度とあまり変わ らないが、 「大変増した」の割合は増加している。特に2年次 SSH クラスの推移をたどると、1年 次の 25.6% から +33.4% になり、ここでも課題研究実施の効果が実証されていると考えら れる。一方、直面する課題に対し、その解決に向けた方法を考え実行することについて、なかなか 自信を持てない生徒も毎年何名かいることが分かる。 37 ⑥ SSH 事業を通して、独自なものを創り出そうとする姿勢が増したか。 《平成27年度》 《平成26年度》 SSH クラスの肯定的回答は2年次生 97.4%、3年次生 87.5% となった。その中で、2年次生 の「大変増した」は 64.1% となり、昨年度の2年次生と比較すると 22% 高かった。このこと は、課題研究のテーマ設定の際に、先輩の研究テーマを単純に継続せずにオリジナリティーを求めた 班が多かった事実と重なる。実際、各班ともテーマ設定に時間をかけた分、自分たちの研究として熱 心に取り組み、工夫をこらしていたようである。 ⑦ SSH 事業を通して、発表し伝える力が増したか。 SSH クラスの肯定的回答は 2年次生 100%、3年次生 95.0% となり、値は昨年度と完全に 一致した。ただし、内訳を見ると、2年次生の「大変増した」が 87.2% と顕著であり、昨年度の 2年次生の同回答と比較すると 24.0% 高かった。昨年度のデータも合わせてみると、要因として SS アクティベイトⅡ及び科学技術人材育成重点枠事業での各プログラムの効果に加え、1年次 SS ア クティベイトⅠの ESD プロジェクトにおいて発表会の機会を設けたことにより発表経験が増えたこと による効果もあると考えられる。 ⑧ SSH 事業を通して、英語表現力や国際感覚が増したか。 3年次 SSH クラスの肯定的回答は 87.5% となり、昨年度の3年次生の90.0%よりやや減少し た。しかし、同生徒が2年次生であったときの 21.1% と比較すると着実に増加していることから、 科学英語の実施は効果があったといえる。2年次 SSH クラスの肯定的回答は 100% であったが、 1年次の時期から「大変増した」の割合が高く、SS アクティベイトⅡの各プログラムの成果が土台と なっていると思われる。経過措置により、2年次 SSH クラスは次年度学校設定科目がなくなるため、 従来3年次に行ってきた科学英語に、現在前倒しで取り組んでいる。 38 ⑨ SSH 事業を通して、社会で科学技術を正しく用いる姿勢が増したか。 《平成27年度》 《平成26年度》 3年次 SSH クラスの学校設定科目 SS インテグレイトの主な内容は科学英語であるためか、同生徒が 2年次だったときより肯定的回答の割合及び各内訳に減少が見られる。一方、2年次生の肯定的回答 は 97.4%、うち「大変増した」が 71.1% と大変高い。これは改良を続けてきた SS アクティ ベイトⅠを1年次に履修した効果が大きいと考えられる。また、今年度の SS リサーチで自然を理解 し社会に役立つ内容をテーマとしたものが目立ったのは、こうした生徒の意識と無関係ではないと思 われる。 (2)国公立大学理系進学率の変容について 平成19年度卒業生は最後の理数科生として入学し、3年間の SSH のカリキュラムに基づく指導を受け て卒業した唯一の生徒である。高校入試時には本校が SSH 指定になることを知らずに受検しており、過 去の理数科生と同じ学力層の生徒であった。しかし、3年間の SSH のカリキュラムの結果、資料のとお り過去の理数科生と比較すると明らかに国公立大学理系進学率が上昇していることが分かる。また、平成 20年度 SSH クラス卒業生からは、本校が SSH 指定校であることを知り、はじめから希望して入学し た生徒であり、国公立大学理系進学率に関しては一般理系クラスと比較すると、平成22年度を除き明ら かに高くなっていることが分かる。これらのことは、SSH のカリキュラムが生徒の学習意欲を喚起し、 学力向上及び進学意識の高揚につながった結果と考えられる。本校初の東京大学(理科二類)合格者は 平成26年度 SSH クラスの卒業生(過年度卒)であった。 【資料】国公立大学理系進学率の推移 39 (3)学校設定科目及びその他の活動について ① SS リサーチ 課題研究においては、特に仮説設定プロセスやデータの収集・分析・解釈等について重点的に指導すると ともに、研究全般を通して生徒の主体性の向上を重視した。課題研究終了後のアンケートでは「実験・観察、 データの扱いなどの基本的技能が身についた(92%) 」 、 「他のメンバーと協力し、ねばり強く研究を進め た(85%) 」となった。一方、SSH 意識調査においては「探究心が増した(98%) 」 、 「独自なものを創 り出そうとする姿勢が増した(97%) 」という結果となった。また、プレゼンテーション能力を向上させ るため、理数系課題研究発表会や高校生科学研究コンテスト、東北 SSH 指定校発表会等、校内以外での発 表会へも積極的に参加させた。アンケートでは「発表会や書面で研究内容をわかりやすく伝えるよう努めた (95%) 」 、意識調査においては「発表し伝える力が増した(100%) 」という結果となった。夏季休業を 利用した県外研修は、経過措置による予算縮小のため訪問先を変更せざるを得なかった。しかし、アンケー トの結果、 「興味関心が高まった(89%) 」 、 「研修への意欲的に取り組んだ(91%) 」となり、十分な効 果があったといえる。2年次生は新年度 SSH 対象外となり、これまでの SS インテグレイトを実施できな いため、課題研究終了後は科学英語を前倒しで実施することとした。評価については本報告書発行に間に合 わないが、現在、生徒は ALT と英語科教員指導のもと、ポスター及び発表原稿の作成、概要の英訳等に熱 心に取り組んでおり成果が期待できる。 ② SS インテグレイト 科学英語及び学習成果発表会では、課題研究の英訳や発音・発表練習により、英語学習への興味関心を喚起 させ、英語コミュニケーション能力を向上させることができた。アンケートの結果、 「英語学習への興味関 心が高まった(98%) 」 、 「英語プレゼンテーションの方法が理解できた(88%) 」 、 「英語コミュニケーシ ョン能力が高まった(90%) 」となり、意識調査でも「英語表現力や国際感覚が増した(89%) 」となっ た。運営指導委員からも「堂々とした発表だった」 、 「長年の取組によって洗練されてきた」との評価があり、 十分な成果が得られたといえる。市内の大学から留学生に協力いただいたが、その機会が1度だけであった ためその効果ははっきり分からない。ただし、生徒には適度な緊張感を与えることができただけでなく、発 表練習後の各テーマに関する率直な意見をいただけたことは貴重であった。本科目は SSH における3年間 のカリキュラムの完成とともに理系大学への橋渡しを目的としている。発展数学では昨年に引き続き偏微分 と行列を扱い、大学での数学に対して興味と期待を持たせることを目指した。アンケートの結果、 「発展的 数学への興味をもったか」について実施前45%から63%へ増加し、一定の効果はあったといえる。内容 の理解については「とても理解できた(5%) 」に対し「ある程度理解できた(60%) 」という結果となり、 より効果を上げるための工夫が望まれる。 ③1年次生「総合的な学習の時間」<旧 SS アクティベイトⅠ> 本校では第2期5年間に汎用性のあるカリキュラムとして SS アクティベイトⅠを開発した。これに改善を 加えた内容を、経過措置で SSH 対象外となった今年度の1年次生に対し、 「総合的な学習の時間」を活用 して実施した。今年度は、ESD プロジェクト(校外における ESD 関連活動の調査・見学・まとめ・発表) の実施方法を工夫し、個人新聞作成や学年内発表会等でのアウトプットの機会を十分に設けた。アンケー トでは「校外学習や発表会を通して ESD の見方・考え方が広がった(95%) 」という高い値が得られた。 ディベートについては、今年度は肯定側・否定側の役割を事前に決めず、両面について調査を進めること によって視野を広げることができた。また、対抗戦の回数を増やすとともに、判定をすべてのグループに 担当させることによって、各回とも集中して対抗戦に取り組むことができた。 40 11 校内における SSH の組織的推進体制 研究開発は SSH 推進委員会のうち、特に専従5名(理科2名、数学1名、英語1名、実習講師1名)が 中心となって行っており、校内組織では独立した分掌(狭義の SSH 推進委員会)となっている。各プロ グラムの実施や生徒への指導においては組織的な推進体制が構築され、幅広いサポートが得られている。 2年次生の課題研究では理科・数学科の教員が連携を取りながら指導に当たっているが、同時に英語科教 員も各テーマ担当者を決定することで研究内容の理解に努め、3年次の科学英語及び英語プレゼンテーシ ョン指導に生かしている。学校設定教科「総合 SS」の指導においては、他にも校内講座や校内外研修等 で教頭、情報科・地理歴史科・公民科・保健体育科教員及び実習講師などの協力により、各分野の専門性 を生かした指導と生徒の変容に関する多面的な評価に努めている。また、ALT の指導は単に英語による 発表のための英訳や発音に関することだけではなく、科学の考え方や研究の進め方、プレゼンテーション の方法など多岐に渡り、理科専門の ALT として知識や経験を十分に生かしたものとなっている。今年度 SSH 事業の対象外となった1年次生については、 「総合的な学習の時間」の内容を従来の SS アクティベ イトⅠに改良を加えたものとした。実施に当たっては1学年教員が主担当となって進め、SSH 推進委員 会や他分掌の教員はサポートする側に回ったが、例年以上の成果があり、校内の協力体制がより強固にな ってきたといえる。 12 研究開発実施上の課題及び今後の研究開発の方向・成果の普及 (1)今年度の総合 SS について ① SS リサーチ 大規模な人事異動により、今年度は担当教員のうちの半数以上は課題研究の指導経験がなく、常に経験 者と連携を取りながら発表会や報告書作成までの指導を終えた。また、大学や研究機関等との連携が例 年より少なかったが、外部とのやり取りに慣れていなかったこともその背景にあると考えられる。課題 研究の質的向上を図るために、教員研修の機会を増やすとともに一層の情報共有を進める必要がある。 SS リサーチでは今年度、前倒しで科学英語に取り組んでいる。SS インテグレイトとは異なりポスター 発表を目標としたプログラムであるが、研究内容をシンプルに表現することにより、生徒自身の思考過 程も整理される利点がある。また、英語での研究発表以外の言語活動にも応用きる方法であると考えら れるため、活用の場面を積極的に広げていきたい。 ② SS インテグレイト 今年度は英語科教員や ALT 以外に市内の大学から留学生に来校してもらい、実践練習の場を設けるこ とができた。また、他校 ALT からは「個々の単語の発音練習と英語の発表の練習に力を入れた方がよ い」との助言があった。今後の改善の方向として、一度留学生に聴いてもらい、英語科や ALT の指導 の下で指摘事項を練習した後に再度聴いてもらうことにより、発音やプレゼンテーション能力が向上す るとともに指導効果に対する客観的評価もできると考えられる。円滑な質疑応答にするために、英語運 用能力とともに課題研究への深い理解も必要であるため、SS リサーチの課題研究段階から生徒には意 識させていきたい。発展数学については理系大学での活用を想定し、事象の解析、特に物理分野との関 連性を扱うことにより、数学の有用性の理解と興味関心の喚起を図っていきたい。 41 (2)第2期の課題を踏まえた今後の研究開発について ①科学的探究能力を身につけ,科学研究で必要とされる英語運用能力を備えた,国際的に活躍できる科 学技術系人材を育成する取組 課題研究におけるこれまでの取組の結果、生徒は主体性や情報収集能力などが向上してきたが、仮説の 設定やデータの収集・分析・解釈等の点で改善の余地がある。 研究活動の質をさらに高めていくために、 1年次から論理的思考に基づいた探究活動を経験させるとともに、科学的探究方法の一層の理解を目指 していきたい。また、これまで地域の特性を生かして、米軍三沢基地内の児童・生徒との交流や課題 研究の英語での口頭発表・質疑応答及び事前練習をとおして、生徒の英語のコミュニケーション能力や 英語プレゼンテーション能力は向上が図られ、英語学習への強力な動機づけともなった。さらに効果を 上げるために、科学分野で用いる語彙や表現に慣れさせる段階からプレゼンテーション時の質疑応答の 練習まで、3年間の系統だった英語運用能力育成プログラムとして改善を図っていきたい。 ②根拠に基づいた判断により結論を導き,分かりやすく伝える能力を育成する取組 課題研究の指導においては、実験・調査データにより仮説を論理的に検証することを特に意識させてい る。このようにデータを適切に扱い、根拠に基づいた判断により結論を導く能力は、課題研究に取り組 む SSH クラス生だけではなく、本来どの生徒にとっても必要なものである。論証過程を明確に示すこ とは、分かりやすいプレゼンテーションや質疑応答においても必須といえる。今後は生徒自らが設定し たテーマについて探究活動に取り組ませる時間を設け、全クラス共通で論証を基軸とした基礎的探究能 力を育成していきたい。 ③科学的リテラシーを身につけた,持続可能な地域社会の形成者を育成する取組 第2期では、1年次生対象の汎用性のあるカリキュラムとして SS アクティベイトⅠを研究開発してき た。これは、科学技術との関連(環境と開発、エネルギー問題など)についても問題意識を持ち、科学 的知識を積極的に活用して意思決定し、課題を解決する態度と能力(科学的リテラシー)を育成するこ と、また、グローバル化が急速に進展する中、世界の一部として地域社会を理解することをねらいとし ていた。具体的には、地域のリソースを生かした ESD 関連プログラム、環境理解を目的とした理科実 験及びディベートを通して、自然界及び人間の活動によって起こる自然界等の変化について理解させる 内容である。これは今年度も1年次生の「総合的な学習の時間」で実施しており、その成果について青 森県主催の探究型学習事業の課題研究等成果発表会にて、来場した高校生、教員及び一般参観者に公開 した。今後はさらに各プログラムの内容について実施方法や開発教材の公開等、普及に力を注いでいき たい。 42 1 教育課程 (1)平成27年度入学生(文類型・理類型) 43 (2)平成26年度入学生(理類型 SSH) 44 (3)平成25年度入学生(理類型 SSH) 45 2 研究組織の概要 (1)組織図 (2)業務内容 ①SSH 推進委員会‥‥‥SSH 事業の総括 ②企画・調整 G‥‥‥SSH 事業の企画・運営、内外の連携・調整、高大接続の研究 ③課題研究推進 G‥‥‥1年次理科基礎実験、2年次課題研究の推進 ④カリキュラム開発推進 G‥‥‥SSH カリキュラムマネジメント、横断型授業の推進 ⑤国際性の育成研究 G‥‥‥科学英語力・英語プレゼンテーション能力の育成、国際性の育成の研究 ⑥評価研究 G‥‥‥SSH 事業の評価方法の研究、実施記録・報告書の作成、広報等 ⑦予算・管理 G‥‥‥SSH 事業に関わる経理全般、備品等物品の管理 (3)運営指導委員会 SSH の運営に関する専門的見地からの指導、助言、評価 ①組織 野田 英彦(八戸工業大学大学院工学研究科 教授) 関 秀廣(八戸工業大学大学院工学研究科 教授) 上村 松生(岩手大学大学院連合農学研究科 教授) 鳥飼 宏之(弘前大学大学院理工学研究科 准教授) 平田 淳(弘前大学大学院教育学研究科 准教授) ②活動内容 SSH 事業の運営に関する専門的見地からの指導、助言、評価(6月・12月) 46 3 運営指導委員会 会議録 第1回 運営指導委員会 1 期 日 平成27年6月23日(火)16:00〜17:00 2 場 所 青森県立八戸北高等学校 会議室 3 出席者 運営指導委員:野田 英彦(八戸工業大学大学院工学研究科 教授) 関 秀廣(八戸工業大学大学院工学研究科 教授) 鳥飼 宏之(弘前大学大学院理工学研究科 准教授) 平田 淳(弘前大学大学院教育学研究科 准教授) Abidur Rahman(岩手大学大学院連合農学研究科 准教授) *代理出席 青森県教育庁:髙谷 杉森 悟(学校教育課 副参事) 晋(学校教育課 指導主事) 八戸北高教員:竹浪二三正(校長) 山崎 康浩(教頭) 漆原俊一郎、 山口 泰子、 日戸 櫻庭 4 内 容 孝 健、 荒谷 睦子 (以上5名、SSH 推進委員会) (1)平成 27 年度 SSH 申請結果報告 (2)平成 27 年度 研究開発実施計画説明 (3)平成 27 年度 課題研究進捗状況報告 (4)質疑応答・協議 (5)指導・助言 5 発言内容 《事業概要について》 ・基本的な科学観・方法・基本姿勢をまず身につけることを優先すべきだろう。その 後に想像力や思考力の向上がある。生徒へ提示して意識させていけばよい。 ・想像力や思考力を高めるために、我々大人は「失敗」体験が必要だと分かっている。 うまくいかなかったことのフィードバックを個人内で深める工夫を行ってほしい。 ・教員間の連携・協働は成果の1つである。教員側にも学ぶべきことはあり、他校へ 異動した後も実施できるものを現在経験しているといえる。 《課題研究について》 ・週2時間の課題研究では内容を掘り下げるのに限界がある。専門家のアドバイスを 積極的に活用すればよい。 ・自主性を重視するならゼロベースから研究を始めればよいが、その場合コンテスト での入賞は難しい。大学とのコラボレーションも考えてはどうか。 《評価について》 ・八北高が求める生徒像を定め、それを分析するための枠組みをつくる必要がある。 ・評価の観点を教員から示すだけでなく、生徒に考えさせるのも1つの方法だろう。 ・全体の質を上げようとするのが日本で、責任を明確にするのがアメリカ。アメリカ の教科書は自分で考えて答えを出すようになっている。 ・社会科学では主観性を前面に出す調査が主流。プロセスを分析する Action Research は数値化せず質的変容を捉える立体的評価である。平面的評価方法のルーブリック とは異なる。 47 第2回 運営指導委員会 1 期 日 平成27年12月11日(金)16:00〜17:00 2 会 場 青森県立八戸北高等学校 会議室 3 出席者 運営指導委員:野田 英彦(八戸工業大学大学院工学研究科 教授) 関 秀廣(八戸工業大学大学院工学研究科 教授) 上村 松生(岩手大学大学院連合農学研究科 教授) 鳥飼 宏之(弘前大学大学院理工学研究科 准教授) 平田 青森県教育庁:髙谷 杉森 淳(弘前大学大学院教育学研究科 准教授) 悟(学校教育課 副参事) 晋(学校教育課 指導主事) 八戸北高教員:竹浪二三正(校長) 山崎 康浩(教頭) 漆原俊一郎、 山口 泰子、 日戸 櫻庭 4 内 容 孝 健、 荒谷 睦子 (以上5名、SSH 推進委員会) (1)生徒研究発表会に対する指導・助言 (2)平成 27 年度 SSH 事業に関する報告 (3)第3期申請内容に関する説明 (4)質疑応答・協議 (5)指導・助言 5 発言内容 《課題研究/生徒研究成果発表会について》 ・既に解決されていることや、なぜこうなっているのかという原理をしっかり考え抜く ことが大切。先行研究の調査が表面的にならないように留意するべきである。 ・グラフに表せるような定量的データをとるために、温度や強度など条件固定する必要 がある。そこから相関関係を抽出できるので、メカニズムを考えられる。 ・思いつきを生かすのはいいが、研究方法をいきなり高度化せず着実に確かめていく方 がよい。結論から次に進むべき方向が見えてくる。 ・目標を可能な限り具体的なものにする方が、研究に対する的確な自己評価ができる。 また、研究の進度を保つのにも有効である。 ・発表会の際、画面上の文字だけで伝えようとするのは限界がある。レーザーポインタ も活用するなど工夫してほしい。上手な班もあった。 《協議/指導・助言等》 Q:生徒に課題発見させることを重視してテーマ設定の時間をとってきたか。 A:大学においても学生の思いつきから研究を展開していくのは無理がある。高校生の 場合も適宜専門家が介入する必要があるだろう。大学教員を活用してほしい。 Q:研究内容の深化、レベル引き上げのために他に留意することはあるか。 A:能力のある生徒が集まりやすいように、小中学校との連携も継続した方がよい。 Q:評価についてのアドバイスはあるか。 A:成果主義であれば数値を要求される。しかし、どのような生徒の変容があったのか を evidence とともに質的データとして提示するのもよい。生徒の意欲が高まって いるという教員の実感の記述にも意味がある。 48 4 生徒対象アンケート(自己評価票)集計結果 各プログラムについて、下記と同様あるいは類似のアンケートを実施し、各設問について5段階で評価させた。 ①実施前の興味関心 及び ②理解、 ③実施後の興味関心 及び ④理解、 ⑤取り組み姿勢、 ⑥難易度 実施前後での①と③の各平均値、 ②と④の各平均値 また、プログラムの種類に応じて、仮説の検証に必要な設問に変更、または、新たな設問の追加を行った。 数値の集計結果はグラフに変換して評価に用いたが、紙面の都合上、各プログラム報告中の評価に関連が深 いものを掲載した。生徒の感想については、特徴的なものを各プログラム報告の下部に掲載した。 Sr -[1] 課題研究 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ Sr -[2] 県外研修 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ Sr -[4] 数学ゼミ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 49 Si -[1] 科学英語 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ Si -[2] 学習成果発表会 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ Si -[3] 発展数学 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 5 課題研究テーマ一覧 ○物理分野 ①磁性流体による磁場測定 ②波による砂の侵食 ○化学分野 ③バイオエタノールの生成について ④コーヒー粕による植物の生育促進作用について ⑤シャボン玉の着色について ○生物分野 ⑥オオハンゴンソウの生長抑制作用について ⑦魚の睡眠についての研究 ○地学分野 ⑧八戸市から産出した縄文土器の胎土分析 ○数学分野 ⑨算額の研究と問題の作成 ⑩ルービックキューブの操作と小方体の位置の関係について <課題研究の実施教科・科目(単位数)> 学校設定教科「総合 SS」 ・SS リサーチ(2単位) 50 ! ! ! ! 平成27年度指定 ! ! ! ! スーパーサイエンスハイスクール ! ! ! ! 研究開発実施報告書 ! ! ! ! 経過措置1年次 ! ! ! ! 平成28年3月15日発行 ! ! ! ! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! 発 行 者 青森県立八戸北高等学校 ! ! ! ! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 青森県八戸市大字大久保字町道8-3 TEL:0178-33-0810 FAX:0178-33-2439 印刷/製本 有限会社 八戸プリント