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[成果情報名]アユ飼育水に用いる給水の亜鉛の基準濃度 [要 約]アユ
[成果情報名]アユ飼育水に用いる給水の亜鉛の基準濃度 [要 約]アユ飼育時の給水中の亜鉛濃度は現行の水産用水基準に即したものでかまわないが、 0.001mg/ℓ未満であることが望ましい。 [部 署]山形県水産試験場・浅海増殖部 [連 絡 先]TEL 0235-33-3150 [成 果 区 分]指 [キーワード]アユ、亜鉛濃度 -----------------------------------------------------------------------------------------[背景・ねらい] アユ種苗の生産現場では、水質基準として水産用水基準が利用されており、亜鉛は検出されない こと(公定法の検出下限値は 0.005mg/ℓ)で、ヒトの飲料水の基準(1mg/ℓ以下)よりはるかに厳 しいものとなっているため、アユの用水確保の上で、現場で苦慮する場合がある。しかし、水産用 水の亜鉛基準は、多様な生物の知見を総合的に加味したもので、必ずしもアユに関するデータを反 映したものとは言えなく、アユに関するデータはほとんどないのが実情である。 そこで、アユについて、成長段階や海水混合時などの状況について、亜鉛による影響を調べ、生 産現場で利用可能な亜鉛濃度の基準値を明らかにする必要がある。 [成果の内容・特徴] 1.2012 年に山形県栽培漁業センターで種苗生産されたアユ(平均体重 1.0g)を使用した。 2.1.2kℓのFRP水槽を5水槽準備し、それぞれに 200V(500W~2KW)のチタンヒーター、サー モスタットおよびエアレーション用のエアストーンをとりつけた。 3.亜鉛は硝酸亜鉛を使用し亜鉛あたりの濃度をあらかじめ溶かしておいた水溶液を添加希釈して使 用し、試験濃度とした。 4.対照区として、1 kℓの井戸水をFRP水槽に満たした。試験区 1 として 0.0001mg/ℓの濃度に亜鉛 を溶かした井戸水を 1 kℓFRP水槽に満たした。試験区 2 として 0.001mg/ℓの濃度に亜鉛を溶か した井戸水を 1kℓFRP水槽に満たした。試験区 3 として 0.005mg/ℓの濃度に亜鉛を溶かした井戸 水を 1kℓFRP水槽に満たした。試験区 4 として 0.010mg/ℓの濃度に亜鉛を溶かした井戸水を 1 kℓ FRP水槽に満たした。 5.試験水槽にはそれぞれ供試アユを 100 個体づつ収容した。試験開始後は斃死個体数と水温の推移 を観察した。試験期間は 3 月 7 日から開始し、11 日間飼育を行った。試験終了後は、生残したア ユの全長と体重を全数測定した。 6.試験期間中は水温 12℃設定で飼育水を加温し、給排水は行わなかった。飼育槽への給餌は魚体重 の 3%として、各水槽に 3gづつ、1 日 4 回に分けて、9:00,11:30,14:00,16:00 に 0.75gづつ 行った。 7.試験期間中の生残率を表1に、飼育水温、試験終了後の魚体サイズを表2に示した。 8.試験例は 1 回と少ないが、今のところ、飼育水中の亜鉛濃度は公定法の検出限界値である 0.005mg/ℓ以下でかまわないが、0.001mg/ℓ未満で飼育することが望ましい。 [成果の活用面・留意点] 1.養魚技術指導および相談の基準として利用できる。 2.アユの中間育成場や栽培センターでの水質基準として利用できる。 3.内水面水産試験場の技術指導資料として利用できる。 [具体的なデータ] 表1 各亜鉛濃度における生残率 対照区 試験区1 試験区2 試験区3 試験区4 亜鉛濃度mg/ℓ 収容個体数 生残率(%) 0.0000 100 100 0.0001 100 100 0.0010 100 99 0.0050 100 98 0.0100 100 88 表2 飼育期間中の水温および試験終了後の体サイズ 飼育期間中の水温(℃) 試験終了後の全長(mm) 試験終了後の体重(g) 対照区 12.1±0.5 68.9±6.0 1.4±0.5 試験区1 12.5±0.4 67.7±5.6 1.3±0.4 試験区2 12.4±0.6 67.0±5.6 1.2±0.4 試験区3 12.5±0.5 68.7±6.0 1.6±0.6 試験区4 12.6±0.4 67.4±5.7 1.3±0.4 [その他] 研究課題名:増養殖技術指導 予算区分:県単 研究期間:平成 25 年(平成 25~29 年度) 研究担当者:本登 渉 発表論文等: