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思春期・青年期の不登校とひきこもり(PDF:944KB)

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思春期・青年期の不登校とひきこもり(PDF:944KB)
∼
対
応
の
し
か
た
∼
∼
理
解
の
し
か
た
∼
1. はじめに
近年、一見健康そうに見えるのに、社会からひきこもって生活
し続ける人のことがよく話題にのぼるようになってきました。も
ともと精神科領域では、ひきこもりの問題は珍しいものではあり
ません。しかし最近は、精神症状が一見して必ずしもはっきりし
ない場合が増えていると言われています。
そのような中で、「ひきこもり」を定義して対応方法について
の調査や研究を行う動きがあり、期間としては6か月以上とじこ
もっている人を対象にしています。その一方、「ひきこもり」と
いう言葉があたかも精神医学的な診断名のように一人歩きするの
を危惧する声もあがっています。
「ひきこもり」は精神医学的な診断名ではなく、閉じこもって
いる状態を表現する言葉です。ですからすべての「ひきこもり」
に共通の対応方法や治療方法があるわけではなく、個別に評価を
行って援助のしかたを決めていく必要があります。この冊子では、
「ひきこもり」を中学生・高校生の年代の不登校と、それ以降の
年代のひきこもりとに分けて、理解のしかたや対応方法について
まとめてみました。
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2. 思春期・青年期の発達課題
思春期(おおむね10歳∼18歳)には、第二次性徴という急激
な体の面の変化が起こり、女の子では月経が始まって胸が大きく
なり始め、男の子では精通が起こり、それぞれ女らしいまたは男
らしい体つきになってきます。それに伴って、急激な体の変化を
どのように受け止めるか、悩むことが少なくありません。しかし
性の悩みは親には相談しづらく、同性の友人に相談することが増
えてきます。以前は親に何でも話していたのが、次第に親にはす
べてを語らず秘密をもつようになり、親が必要以上に自分の部屋
にはいったり干渉し過ぎたりするのを嫌い、自己主張をするよう
になります。そして親の示してきた規範や、学校に代表される社
会の規範にも反発し始めるようになります。その延長線上に、夜
遊びや家出などの非行の問題も生じてくることがあります。
すべてが親の言うとおりではない自分の世界をもてるようにな
ることと関係して、この時期に、自分の親をモデルにしながら、
将来どのような職業につくことをめざすか、どのような異性と結
婚して幸せな家庭をつくるかというような、自分の将来の夢や理
想像ができてくる時期でもあります。
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思春期に、自信をもって自分を表現したり主張したりできるよ
うになり、自分の理想像を描いていける子供もいれば、自己表現
がうまくできず不登校や家庭内暴力を繰り返すようになり、将来
の夢が心の中から消えてしまっている子供もいます。しかしその
場合でも、親の理解や専門家の援助によって不登校から抜け出し、
前向きに自分の将来に向かっていけるようになる子供も少なから
ずいます。
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高校卒業後の年代(18才以上)になると、思春期に描いた自
分の夢や理想、自分らしい考え方をもとにして、それをよりまと
まりのあるものとして一つにまとめあげることが課題になってい
きます。そして、社会の中でどのような生き方をしていくかにつ
いての現実的な判断を迫られてきます。
この時期に自分の道をうまく見出して社会に踏み出していくこ
とができる人もいれば、自分の将来像を描ききれず、ひきこもり
がちの生活にはいってしまうこともあります。その場合には、対
人関係に自信をつけながら、自分の進みたい方向を見出し、社会
に出て行く準備をする必要がでてきます。
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3. 思春期の子どもへの接し方
この年代の子どもに対応する上で大事なことは、子どもが親離
れをして秘密をもったり、自分の判断を大事にしたりすることを、
正常な親離れの過程として認めてあげることです。とはいえ、子
どもは自分の将来像をうまく組み立てていく上で十分な情報を持
ち合わせているわけではないため、親をはじめとするまわりの大
人が、職業や恋愛・結婚について話題にし情報を提供し、方向を
指し示していくことも必要となります。職業選択については、親
の仕事について語ったり親の希望を述べるのはかまいませんが、
親の夢を子どもに押し付けるのではなく、あくまでも本人が決め
ることと伝えます。また異性関係についても、親の経験からみて
良かったと思うことや危ないと思うことなど、親の異性観を伝え
ると、子どもにとってはとても参考になります。
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4. ひきこもりの背景にある精神疾患
先に述べた不登校の場合は、思春期の年代に特有な一時的な問
題で、長期間の治療を必要とするような精神疾患とは異なります。
しかし不登校やひきこもりの期間が長引き、他の精神症状も出現
するような場合には、次のような様々な精神疾患の可能性も考え
る必要がでてきます。
★ひきこもり以外の精神症状が、比較的見分けやすいもの
…統合失調症(精神分裂病)、気分障害(うつ病)、
強迫性障害(強迫神経症)
、パニック障害、摂食障害(拒食、過食)など
★心理的な理由で対人関係を避ける傾向があるもの
…社会恐怖(対人恐怖)、回避性人格障害、分裂病質人格障害、
自己愛性人格障害など
★心理的な発達上の問題を抱えているもの
…高機能広汎性発達障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、
学習障害、軽度精神遅滞など
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すなわち、同じひきこもりを呈していても、その状態や対応方
法には個別性があるため、「見立て」が大事になってきます。具
体的には、①精神科の医療機関を受診して薬物療法を含めた治療
を受ける必要がある場合、②薬物療法は必要ないが対人関係での
自信をつけるために精神療法・集団療法(グループ活動)、ある
いは生活技術の練習などが必要となる場合、などがあります。い
ずれの場合にも、家族など身近で接する人や学校での接し方につ
いては、専門家の助言を得ることが有益です。
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5. 不登校・ひきこもりへの対応と援助
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中学生・高校生の不登校への対応と援助
中学生・高校生の時期に不登校に陥った場合に、学校に行けな
い本人自身もなぜ学校に行けないのか、理由がよくわからないこ
とも少なくありません。子どもによっては学校に行く準備をする
のですが、朝になるとどうしても玄関を出ることができないとい
う場合もあります。このような場合には、登校するように冷静に
伝えながらも、叱ったりせかしたりはせず、子どもの気持ちを理
解するように努めながら、子ども自身が前に進む動きを再開する
のを待つ必要があります。学校生活の中で、いじめにあうなど不
登校に至るような原因があると考えられる場合には、その問題を
解決することが必要になりますが、原因がはっきりしない形の不
登校も少なくありません。
家庭で暴力をふうる場合には、暴力は容認せず、暴力をふるわ
ないよう毅然とした態度で伝える必要があります。また暴力や脅
しにのって金銭を提供したりするような対応は避け、1か月に渡
す小遣いの金額を両親が話し合って決め、それ以上は決して渡さ
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ないという対応が有効です。それと同時に、暴力が起きやすくな
るきっかけを把握し、親の側から不必要に本人を刺激しないよう
にします。いずれの場合にも、子どもの自己主張をどこまで許容
するのか、どのように対応するかについて、両親がよく話し合い
協力することが大事です。両親の対応方法が食い違っていると、
一人一人は頑張っていてもなかなか効果はあがりません。夫婦関
係に問題を抱えている場合でも、子どもへの対応に関しては手を
結び、話し合いをもつ必要があります。家族と学校とで協力して
も解決が困難な場合には、早めに専門家に相談するのがよいでし
ょう。多くの場合、家族が対応方法についての助言を受けること
が有益です。また本人の側に相談したいという動機がある場合に
は、本人が直接相談に通う方法をとります。その場合でも、本人
が相談に通えるようになるまでの働きかけ方については、家族が
専門家と相談を重ねることが必要です。
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大学生年代以降のひきこもりへの対応と援助
高校卒業後の年代には、進学や就職など社会的な自立の課題に
直面することが増えますが、その時に自分の将来像を描ききれな
いでいる場合には、引きこもりがちな生活に陥ることがあります。
人の性格や行動パターン、将来の夢や理想などは、おおまかな部
分は思春期の時期にできあがってきます。したがって、この時期
にひきこもる場合には、ひきこもることを本人自身が選びとって
いる側面があるため、どちらかというと長期化しやすい特徴があ
るようです。ひきこもりが長期化すると、本人も家族も焦る気持
ちが湧いてきますが、ひきこもっている本人に対して、叱咤激励
して無理に外にでるよう仕向けようとしたり、家族の焦りやいら
いらした気持ちをぶつけたりすることは意味がありません。また
逆に、本人まかせにして見守るだけでは、問題の解決にはつなが
りません。一方、ひきこもりの原因探しをしたり、親が自分自身や
配偶者を責めたりしても、本人の状態の改善にはつながりません。
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さらに、本人が必要としている以上に過保護に世話をし過ぎた
り、本人の言いなりになったりすることも、本人の頑張っていく
力を引き出す上でプラスになるとは言えません。
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事態の改善のためには、外に出て行けずひきこもらざるを得な
い本人の苦境を理解するようになれること、本人の現時点での能
力を把握できるようになることが必要で、家族がよく話し合い、
本人に合った接し方が何かを相談しながら対応していくことが望
ましいと言えるでしょう。具体的には、とりあえずひきこもらざ
るを得ないことは容認しながらも、いつかはひきこもりから抜け
出して自分の道を歩き出すことを励まし、見守る姿勢が必要とな
ります。生活の仕方も本人に合わせて考え、過保護な部分があれ
ばそこは手を離し、金銭の管理などは本人にまかせるのがよいで
しょう。そのようにしながら、本人と家族との間の緊張感が和ら
いで、普通の会話が出るようになり、本人が買い物に外出するな
どの行動が増えたりするのを、根気よく見守ります。一つでも改
善がみられれば、次の働きかけがうまくいく可能性が増してきま
す。
また、思春期の場合と同様、本人に対してどのように対応して
いくのか、家族(両親)がよく話し合い、協力することが非常に
重要です。もし本人・家族(両親)のみの対応では効果がでない
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場合には、本人や家族(両親)が保健所や大学等の学生相談室、
医療機関、精神保健福祉センターなどに相談し、助言を得る必要
があるでしょう。またひきこもりが長期化する場合には、地域の
保健師などに訪問してもらい、状態の判断や対応の仕方について
助言を受けるのもよい方法です。その中で、精神科での判断が必
要と考えられる場合には精神科の医療機関を受診する方向での働
きかけも行っていきます。
短期間で問題が解決しなくとも、あきらめずに家族(両親)と
関係者が協力して、継続的に援助する構えが必要になってきます。
なお、どのように接するべきか、受診させるべきか否か判断に迷
う場合は、保健所や精神保健福祉センターに相談するとよいでし
ょう。
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6. 家族にとっても必要な援助と相談相手
不登校でもひきこもりでも、本人だけではなく、一番身近でそ
れに対応しなければならない家族のストレスも大きく専門家の援
助が必要となることも少なくありません。ひきこもり本人を抱え
た家族全体が、次第に社会からひきこもったようになり孤立して
しまうことがありますが、これは本人の回復の上で良いことでは
ありません。まずは家族が気持ちのゆとりを取り戻し、楽になる
ことが、本人に対するよりよい援助につながっていきます。たと
え本人が登場しなくても、家族を相談などのケアの対象として支
援してゆくことが、本人の回復に役立つと考えられています。従
って関係機関での相談では、本人だけに焦点をあてるのではなく、
家族の苦境や対応方法についても十分時間をとって助言を行うこ
とが必要となります。
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また多くの場合、家族が相談機関に通っていることを、なるべ
く本人に伝えた方がよい結果につながります。ただし、家族が相
談していることを理由に、焦って本人に相談や受診を進めるのは
得策ではありません。家族は、家族として対応のしかたについて
困っているため、家族自身のために相談にのってもらっているの
だということを伝えていきます。
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7. 関係機関との連携
不登校もひきこもりも、長期化してくると解決が必ずしも簡単
ではなく、場合によっては複数の機関が関わることが必要となり
ます。そのような場合に、本人のおかれている状態や対応方法に
ついて、本人や家族の同意に基づいて、関係機関どうしが情報を
交換したり話し合ったりし役割分担を行って関わると、より効果
的な援助を行うことができます。
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思春期・青年期の
不登校とひきこもり
∼理解のしかた・対応のしかた∼
平成15年3月発行 登録番号(14)7
編集・発行
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社会福祉法人 コロニー東村山印刷所
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