...

国際陸上科学掘削計画(ICDP)への わが国の参加について

by user

on
Category: Documents
9

views

Report

Comments

Transcript

国際陸上科学掘削計画(ICDP)への わが国の参加について
国際陸上科学掘削計画(International Continental Drilling
との関係、放射性廃棄物などの有害物質を安全に処理する技術、
Program : ICDP)は全地球システムの地球科学的解明を目
堆積盆や炭化水素資源の成因や進化、多様な地質学的条件下
標として行われる、多様な掘削プロジェクトを援助・調整するた
での鉱床形成、プレートテクトニクスならびに地殻内での熱、物
めに1996 年 2 月にドイツ、アメリカ、中国の共同で発足しまし
質および流体の移動に関する基本的な物理学等の研究テーマ
た。1998 年には日本も加盟しました。過去の 5 年間に約 70
が重要視されています。
以上ものプロジェクト提案が寄せられ、ODP(国際深海掘削
ICDP では掘削プロジェクトへの援助の他に、掘削プロジェクト
計画)と並ぶ地球のなぞを解明する国際共同科学プロジェクト
の検討や準備のための国際ワークショップへの資金提供や、掘
の一つです。
削技術・検層・サンプリング技術等の普及・教育を含んだ研修・
本計画は科学掘削というユニークな手段を用いて得られる地
トレーニングコースやサマースクールを行います。
殻の組成、構造、形成過程に関する重要な知識や情報を世界中
ICDPではこれまでに環境変動(バイカル湖・アフリカ地溝帯)、
の科学者に提供しようという試みであり、特に地震や火山噴火
火山システム(ハワイ島・雲仙火山)、隕石衝突孔(ユカタン半
の原因となる物理的・化学的過程、過去の地球における気候変
島チチュルブ隕石孔)、地震断層(サンアンドレアス断層)、超
動の実体とその変動の原因、気候変動や大量絶滅に対する巨
高圧変成帯(中国大別変成帯)等の掘削プロジェクトが提案さ
大隕石衝突の影響、地下生物圏の性質と様々な地質学的過程
れています。
2月
3月
4月
5月
国内作業
委員会 / 議会
1/15 プロポーザル締切
日本からのプロポーザルの検討、提出者への助言
SAG 候補の選出
1/10 第 1 回国内実施委員会
(国内プロポーザル検討)
SAGにプロポーザル送付
SAG/EC 開催
(各地で掘削進行)
●巻頭言
国際陸上科学掘削計画(ICDP)へのわが国の参加について 齋藤常正(日本学術会議会員・東北大学名誉教授)
●特 集
雲仙掘削
●事務局通信
ICDP 国内実施委員会事務局
宇都浩三(産業技術総合研究所地球科学情報研究部門)
中田節也(東京大学地震研究所)
国際陸上科学掘削計画(ICDP)への
わが国の参加について
齋藤 常正
ICDP 本部
2/8-9 GFZ 関係者来日
CONTENTS
東北大学名誉教授
ICDPカレンダー
1月
2001.6
GFZ 関係者来日、対応
(海洋科学技術センター、雲仙掘削現場視察)
EC 対応案作成、ホームページ作成
SAG/EC 委員会議(SAG、EC 対応協議)
掘削決定プロジェクトの広報。
EC 議事録作成と案件の対処
第 2 回国内実施委員会(SAG、EC 報告と
国内研究者へのサポート協議)
ニュースレター発行
国際陸上科学掘削計画( ICDP:Interna-
く、日本人を研究代表者とする掘削計画も複
tional Continental Scientific Drilling
数提出されておりました。
Program)は、1996 年、
ドイツを中心にア
国際陸上科学掘削計画への参加により、日本
メリカと中国が参加して、国際共同研究プロ
の研究者は次のような研究支援を享受出来
ジェクトとして発足しました。その目的は、陸
ることになります。①陸上掘削に向けて、国際
上から地殻内部にボーリング(掘削)を行い、
的に研究費を集め、国際的に研究費の配分を
地殻の変動の歴史試料を地下から採取する
受ける権利を共有できる。②日本の掘削計画
ことと、地震・火山噴火・深層の地下水の流動
だけでなく、世界の第1級の掘削プロジェクト
など、動く地球の姿を直接観測することにあ
に参加し、データや掘削資料を得ることが保
6月
地球惑星合同学会にて普及活動
7月
ICDPプロジェクトへ日本人参加者の通知
ります。
証される。③世界最新の掘削技術動向の情
トレーニングコース参加者の通知
このような国際プロジェクトは、さらに多くの
報が得られる。④わが国が 21 世紀において
国が参加することで、研究費を持ち寄ること
中心的役割を担おうとしている国際深海掘削
トレーニングコース
プロポーザル応募案内を主要雑誌に掲載、
メーリングリストでの流布、AOG 対応案作成
9月
10月
AOG 対応協議
AOG 開催
11月
ニュースレター発行
12月
日本からのプロポーザルの検討、
提出者への助言
第 3 回国内実施委員会
(国内プロポーザル検討)
GFZ :ドイツ地球科学研究センター
SAG :科学諮問グループ
EC :執行委員会
AOG :理事会
事務局アドレス情報
● ICDP に関するホームページ
http://icdp.gfz-potsdam.de/html/welcome_icdp.html
● ICDP プロポーザルに関するホームページ
http://www.jamstec.go.jp/jamstec-j/international/icdp/icdp_hocoku.html
海洋科学技術センター
深海地球ドリリング計画推進室
〒237-0061神奈川県横須賀市夏島町2-15
TEL.0468-67-3997 FAX.0468-66-5351
URL:http://www.jamstec.go.jp/
Email:[email protected]
第 1 号/平成 13 年 6 月 1 日発行
が可能となり、また国際協力により全地球的な視野で掘削地点
計画を補完して、大陸 - 深海というグローバルな視点で地球内
を選ぶことが出来るという理由で、1993 年、
ドイツのポツダ
部を探ることが可能になる。
ム大学で「陸上科学掘削に関する国際会議」が開催され、研究
現在、この国際計画のもとで研究が着手あるいは実施が検討さ
の実施体制と学術目標が検討されました。この集会には、わが
れている課題には、中・長期地球環境変動解析(バイカル湖・ア
国からも 22 名の研究者が参加し、日本がこの国際計画に参加
フリカのマラウイ湖・アンデスのチチカカ湖)、火山システム(ハ
することの重要性を実感しました。そのような背景のもとで、
ワイ島キラウエア- マウナ・ロア、長崎県雲仙)、巨大隕石衝突孔
1995年、日本学術会議第4部会にICDP小委員会が設けられ、 (ユカタン半島)、地震断層(カリフォルニア州サンアンドレアス
I C D P へ の 加 入 を 勧 告 す る対 外 報 告 が 提 出 さ れ た ほ か 、
断層・台湾の車龍埔断層)、超高圧変成帯(中国の大別山 - 蘇魯
1996 年には、当時の科学技術庁の航空・電子等審議会の地球
帯)などがあります。また、毎年新しい研究課題を公募しており
科学技術部会が“地球変動予測の実現に向けて”深海掘削計画
ますので、日本からも興味ある掘削計画の提案が期待されます。
(OD21)とICDP が重要であるとの意見表明を行いました。
この計画への参加国は、当初の 3 カ国から大幅に増加し、現在、
そして、1998 年、わが国はこの国際計画の正式メンバーにな
日本・メキシコ・ポーランドが国として参加しているほか、ユネ
りました。
スコおよびフランスの検層会社シュランバジェ社が加入し、
すでに、日本の参加が正式に決定される以前から、この国際計
2001 年中には、カナダ・オーストリア・イタリア・ノルディック
画が発足すると同時に、わが国の科学者の貢献が求められてお
共同体の参加も予定されております。
り、日本人の委員が科学諮問委員会に参加してきたばかりでな
普賢岳
橘湾
雲仙科学掘削の現状と
ICDP火道掘削に向けて
第II期
火道掘削
平成新山
妙見岳
千々
野岳
産業技術総合研究所地球科学情報研究部門(旧地質調査所)宇都
東京大学地震研究所
石断
平成11年度
山体掘削地点
層
浩三
中田 節也
眉山
雲仙科学掘削の経緯と概要
る」というpre-proposal が、1996 年 John Eichelberger
れる。
妙
ジウムが開催された。このシンポジウムにおける討議を受け、
火道掘削の技術的デザインを決めるための掘進長 350m の
科学技術庁(当時)に対し、科学技術振興調整費総合研究を提
パイロット掘削を実施中である。第 2 期では、平成新山溶岩ド
案した。平成 10 年度のフィジビリティ研究を経て、平成11年度
ームを形成したマグマの供給火道へ達する1ないし 2 本の火
より「雲仙火山:科学掘削による噴火機構の解明とマグマ活動
道掘削(掘進長 2000m 程度)を計画している(右図)。計画
解明に関する国際共同研究」として採択された。本研究は、科
当初より、火道掘削は ICDP:International
学掘削を重要な研究手段として、国際協力の元に雲仙火山に
Scientific Drilling Program(国際陸上科学掘削計画)との
おけるマグマの上昇・噴火機構を明らかにし、同火山の形成史、
共同研究として実施することを念頭に置いており、平成 12 年
内部構造を解明することを目的としている。本研究では、雲仙
度には、火道掘削の技術的課題を議論するための国際技術ワ
火山の三次元構造、マグマ上昇噴火過程の解明のために科学
ークショップの開催をICDPの費用で実施し、その結果を受けて、
掘削以外にも多様な研究を盛り込んでおり、産学官の合計 16
平成 13 年1月には本プロポーザルを提出した。
谷
断
層
深江町
定している。これまでのコア解析結果から、雲仙火山の形成初
区における第1号の掘削井(USDP-1)では、深度 750m のオ
期には、現在とは異なった爆発的な噴火活動をし、その後も現
ールコア掘削を行い、90% 以上の高回収率でコアを得ること
在のドーム崩壊型とは異なる爆発的な火砕流噴火が頻発した
が出来た。また、温度、地震波速度、電気伝導度、密度、などの
ことが明らかになった。また、約 20 万年前に多数回の火砕流
項目について坑内計測を実施し、深度 350m の位置に地震計
噴火がおこり、その時期に、東西性の千々石断層が極めて急速
を設置した。平成 12 ∼ 13 年度の 2 年間をかけて、雲仙火山
に活動し、大きな変位が生じたと推定されている。今後のコア
東麓の深江町上大野木場地区において第2号の掘削井(USDP-
解析と、地表での地質調査、地球物理観測などを組み合わせる
2)を掘削中である。平成 12 年度は深度 900mまでオールコ
ことにより、より詳細な火山成長史が明らかになると期待される。
ア掘削し、平成 13 年度に深度 1400m 程度までの増掘を予
ICDP プロジェクトとしての火道掘削へ向けて
火砕流
N
平成 11 年度に実施した雲仙火山北東麓の島原市南千本木地
野
松
Continental
1期の山麓掘削
と
赤
無
目的とした山麓部での2本の掘削(750mおよび1400m)と、
岳
の
山
体
崩
壊
島原市
水
に提出され、翌 97 年の 5 月に島原市において雲仙国際シンポ
岳
壊
総合研究の第1期では、火山の内部構造、形成発達史の解明を
崩
見
(アラスカ大学)と中田節也により国際陸上科学掘削計画(ICDP)
体
期のおわりには、第 2 期に移行するかどうかの中間評価が行わ
山
った岩石を採取し、マグマの上昇脱ガスプロセスを明らかにす
年
研究機関が参加し、第 1 期 3 年と第 2 期 3 年に分けられ、第 1
92
「噴火後間もないマグマの通り道に穴を開けて、高温状態を保
17
平成12・13年度
山体掘削地点
川
8月
山体崩壊
(点線は伏在)
活断層
崩壊壁
島原湾
写真提供:アジア航測(株)
は、なるべく標高が高く山頂ドームに近い地点から掘削を開始
に ICDP の支援の元、2000 年 10 月に島原市において雲仙
することが望ましい。
国際科学掘削技術ワークショップを開催し,
国内および国外の
2
火道掘削には、1600m 以上の広さを持った平坦な敷地とそ
掘 削 技 術 者と 討 議 を 行った 。そ の 結 果 、平 成 新 山 の 北 西
こまで掘削資機材及び多量の冷却水を輸送するための道路が
1.5km の地点にある、標高 840m の平坦面を掘削候補地とし
必要であるが、当然のことながら雲仙山頂周辺には存在しない。
て選定した。この地点までは、荒廃した林道の改修と多少の増
当初候補に上がったのが、普賢岳の南にある薊谷である。標高
設で資機材を運搬することが可能である。この地点から火道掘
1100m のこの地点は、平成新山溶岩ドームの南 800m の位
削が実現可能かどうかを確かめるための掘進長 350m のパイ
置にあり、傾斜角 40 度で掘削すれば、海抜 0m 付近で火道を
ロット掘削を 2001 年 1 ∼ 3 月に行ない、その結果は、現在解
掘り当てることが可能である。しかし、この地点まで資機材を
析中である。
運ぶ道路はなく、かつ規制が最も厳しい国立公園の特別保護
今後のスケジュールとしては、本年秋に、振興調整費総合研究
地域の中であり、自然林から成る国有林内でもあった。環境庁、
の第1期のレビューおよび第 2 期提案審査が行われ、第 2 期で
林野庁森林管理署、長崎県などへ掘削の目的・概要などを繰り
の火道掘削を中心とした研究へ移行の可否が決まる。また、同
返し説明した結果、学術的な目的には前向きな理解を頂いたが、
じころに ICDP より火道掘削の本プロポーザルの採否の回答
国立公園内の貴重な自然の保護、景観への配慮、観光客への
がある予定である。国内、国外の承認が得られれば、2002 年
雲 仙 火 山 の 1 9 9 0 ∼ 9 5 年 噴 火 で は、山 頂 の 直 下 0 . 5 ∼
を採集して岩石組織や鉱物組成を調べたり、火道周辺の物理
支障などについて、多くの制限事項を示された。安全で確実な
4 月から火道掘削の準備を始め、同年の秋には本掘削を開始で
1.5km付近でマグマの発泡・脱ガスや地下水との接触など様々
状態を坑内検層により調べることが、噴火メカニズムの解明に
掘削を行う点では、かなり厳しい条件もいくつかあり、他の候
きると期待される。資金的な余裕があれば、本坑一本だけでは
な火山現象が起こったと推定されている。その深度で火道を
重要である。従って、火道掘削により科学的成果を得るためには、
補地点の検討を行った。
なく、複数のサイドトラックを行い、火道の形状を面的に明らか
掘り抜き、火道を充填する未だ高温の岩石や火道周辺の岩石
海水面より浅い深度で火道を掘り抜く必要がある。そのために
この問題を世界の掘削技術者と共に検討するため、前述のよう
にし、マグマの上昇脱ガス過程を解明したいと考えている。
国際陸上科学掘削計画(International Continental Drilling
との関係、放射性廃棄物などの有害物質を安全に処理する技術、
Program : ICDP)は全地球システムの地球科学的解明を目
堆積盆や炭化水素資源の成因や進化、多様な地質学的条件下
標として行われる、多様な掘削プロジェクトを援助・調整するた
での鉱床形成、プレートテクトニクスならびに地殻内での熱、物
めに1996 年 2 月にドイツ、アメリカ、中国の共同で発足しまし
質および流体の移動に関する基本的な物理学等の研究テーマ
た。1998 年には日本も加盟しました。過去の 5 年間に約 70
が重要視されています。
以上ものプロジェクト提案が寄せられ、ODP(国際深海掘削
ICDP では掘削プロジェクトへの援助の他に、掘削プロジェクト
計画)と並ぶ地球のなぞを解明する国際共同科学プロジェクト
の検討や準備のための国際ワークショップへの資金提供や、掘
の一つです。
削技術・検層・サンプリング技術等の普及・教育を含んだ研修・
本計画は科学掘削というユニークな手段を用いて得られる地
トレーニングコースやサマースクールを行います。
殻の組成、構造、形成過程に関する重要な知識や情報を世界中
ICDPではこれまでに環境変動(バイカル湖・アフリカ地溝帯)、
の科学者に提供しようという試みであり、特に地震や火山噴火
火山システム(ハワイ島・雲仙火山)、隕石衝突孔(ユカタン半
の原因となる物理的・化学的過程、過去の地球における気候変
島チチュルブ隕石孔)、地震断層(サンアンドレアス断層)、超
動の実体とその変動の原因、気候変動や大量絶滅に対する巨
高圧変成帯(中国大別変成帯)等の掘削プロジェクトが提案さ
大隕石衝突の影響、地下生物圏の性質と様々な地質学的過程
れています。
2月
3月
4月
5月
国内作業
委員会 / 議会
1/15 プロポーザル締切
日本からのプロポーザルの検討、提出者への助言
SAG 候補の選出
1/10 第 1 回国内実施委員会
(国内プロポーザル検討)
SAGにプロポーザル送付
SAG/EC 開催
(各地で掘削進行)
●巻頭言
国際陸上科学掘削計画(ICDP)へのわが国の参加について 齋藤常正(日本学術会議会員・東北大学名誉教授)
●特 集
雲仙掘削
●事務局通信
ICDP 国内実施委員会事務局
宇都浩三(産業技術総合研究所地球科学情報研究部門)
中田節也(東京大学地震研究所)
国際陸上科学掘削計画(ICDP)への
わが国の参加について
齋藤 常正
ICDP 本部
2/8-9 GFZ 関係者来日
CONTENTS
東北大学名誉教授
ICDPカレンダー
1月
2001.6
GFZ 関係者来日、対応
(海洋科学技術センター、雲仙掘削現場視察)
EC 対応案作成、ホームページ作成
SAG/EC 委員会議(SAG、EC 対応協議)
掘削決定プロジェクトの広報。
EC 議事録作成と案件の対処
第 2 回国内実施委員会(SAG、EC 報告と
国内研究者へのサポート協議)
ニュースレター発行
国際陸上科学掘削計画( ICDP:Interna-
く、日本人を研究代表者とする掘削計画も複
tional Continental Scientific Drilling
数提出されておりました。
Program)は、1996 年、
ドイツを中心にア
国際陸上科学掘削計画への参加により、日本
メリカと中国が参加して、国際共同研究プロ
の研究者は次のような研究支援を享受出来
ジェクトとして発足しました。その目的は、陸
ることになります。①陸上掘削に向けて、国際
上から地殻内部にボーリング(掘削)を行い、
的に研究費を集め、国際的に研究費の配分を
地殻の変動の歴史試料を地下から採取する
受ける権利を共有できる。②日本の掘削計画
ことと、地震・火山噴火・深層の地下水の流動
だけでなく、世界の第1級の掘削プロジェクト
など、動く地球の姿を直接観測することにあ
に参加し、データや掘削資料を得ることが保
6月
地球惑星合同学会にて普及活動
7月
ICDPプロジェクトへ日本人参加者の通知
ります。
証される。③世界最新の掘削技術動向の情
トレーニングコース参加者の通知
このような国際プロジェクトは、さらに多くの
報が得られる。④わが国が 21 世紀において
国が参加することで、研究費を持ち寄ること
中心的役割を担おうとしている国際深海掘削
トレーニングコース
プロポーザル応募案内を主要雑誌に掲載、
メーリングリストでの流布、AOG 対応案作成
9月
10月
AOG 対応協議
AOG 開催
11月
ニュースレター発行
12月
日本からのプロポーザルの検討、
提出者への助言
第 3 回国内実施委員会
(国内プロポーザル検討)
GFZ :ドイツ地球科学研究センター
SAG :科学諮問グループ
EC :執行委員会
AOG :理事会
事務局アドレス情報
● ICDP に関するホームページ
http://icdp.gfz-potsdam.de/html/welcome_icdp.html
● ICDP プロポーザルに関するホームページ
http://www.jamstec.go.jp/jamstec-j/international/icdp/icdp_hocoku.html
海洋科学技術センター
深海地球ドリリング計画推進室
〒237-0061神奈川県横須賀市夏島町2-15
TEL.0468-67-3997 FAX.0468-66-5351
URL:http://www.jamstec.go.jp/
Email:[email protected]
第 1 号/平成 13 年 6 月 1 日発行
が可能となり、また国際協力により全地球的な視野で掘削地点
計画を補完して、大陸 - 深海というグローバルな視点で地球内
を選ぶことが出来るという理由で、1993 年、
ドイツのポツダ
部を探ることが可能になる。
ム大学で「陸上科学掘削に関する国際会議」が開催され、研究
現在、この国際計画のもとで研究が着手あるいは実施が検討さ
の実施体制と学術目標が検討されました。この集会には、わが
れている課題には、中・長期地球環境変動解析(バイカル湖・ア
国からも 22 名の研究者が参加し、日本がこの国際計画に参加
フリカのマラウイ湖・アンデスのチチカカ湖)、火山システム(ハ
することの重要性を実感しました。そのような背景のもとで、
ワイ島キラウエア- マウナ・ロア、長崎県雲仙)、巨大隕石衝突孔
1995年、日本学術会議第4部会にICDP小委員会が設けられ、 (ユカタン半島)、地震断層(カリフォルニア州サンアンドレアス
I C D P へ の 加 入 を 勧 告 す る対 外 報 告 が 提 出 さ れ た ほ か 、
断層・台湾の車龍埔断層)、超高圧変成帯(中国の大別山 - 蘇魯
1996 年には、当時の科学技術庁の航空・電子等審議会の地球
帯)などがあります。また、毎年新しい研究課題を公募しており
科学技術部会が“地球変動予測の実現に向けて”深海掘削計画
ますので、日本からも興味ある掘削計画の提案が期待されます。
(OD21)とICDP が重要であるとの意見表明を行いました。
この計画への参加国は、当初の 3 カ国から大幅に増加し、現在、
そして、1998 年、わが国はこの国際計画の正式メンバーにな
日本・メキシコ・ポーランドが国として参加しているほか、ユネ
りました。
スコおよびフランスの検層会社シュランバジェ社が加入し、
すでに、日本の参加が正式に決定される以前から、この国際計
2001 年中には、カナダ・オーストリア・イタリア・ノルディック
画が発足すると同時に、わが国の科学者の貢献が求められてお
共同体の参加も予定されております。
り、日本人の委員が科学諮問委員会に参加してきたばかりでな
普賢岳
橘湾
雲仙科学掘削の現状と
ICDP火道掘削に向けて
第II期
火道掘削
平成新山
妙見岳
千々
野岳
産業技術総合研究所地球科学情報研究部門(旧地質調査所)宇都
東京大学地震研究所
石断
平成11年度
山体掘削地点
層
浩三
中田 節也
眉山
雲仙科学掘削の経緯と概要
る」というpre-proposal が、1996 年 John Eichelberger
れる。
妙
ジウムが開催された。このシンポジウムにおける討議を受け、
火道掘削の技術的デザインを決めるための掘進長 350m の
科学技術庁(当時)に対し、科学技術振興調整費総合研究を提
パイロット掘削を実施中である。第 2 期では、平成新山溶岩ド
案した。平成 10 年度のフィジビリティ研究を経て、平成11年度
ームを形成したマグマの供給火道へ達する1ないし 2 本の火
より「雲仙火山:科学掘削による噴火機構の解明とマグマ活動
道掘削(掘進長 2000m 程度)を計画している(右図)。計画
解明に関する国際共同研究」として採択された。本研究は、科
当初より、火道掘削は ICDP:International
学掘削を重要な研究手段として、国際協力の元に雲仙火山に
Scientific Drilling Program(国際陸上科学掘削計画)との
おけるマグマの上昇・噴火機構を明らかにし、同火山の形成史、
共同研究として実施することを念頭に置いており、平成 12 年
内部構造を解明することを目的としている。本研究では、雲仙
度には、火道掘削の技術的課題を議論するための国際技術ワ
火山の三次元構造、マグマ上昇噴火過程の解明のために科学
ークショップの開催をICDPの費用で実施し、その結果を受けて、
掘削以外にも多様な研究を盛り込んでおり、産学官の合計 16
平成 13 年1月には本プロポーザルを提出した。
谷
断
層
深江町
定している。これまでのコア解析結果から、雲仙火山の形成初
区における第1号の掘削井(USDP-1)では、深度 750m のオ
期には、現在とは異なった爆発的な噴火活動をし、その後も現
ールコア掘削を行い、90% 以上の高回収率でコアを得ること
在のドーム崩壊型とは異なる爆発的な火砕流噴火が頻発した
が出来た。また、温度、地震波速度、電気伝導度、密度、などの
ことが明らかになった。また、約 20 万年前に多数回の火砕流
項目について坑内計測を実施し、深度 350m の位置に地震計
噴火がおこり、その時期に、東西性の千々石断層が極めて急速
を設置した。平成 12 ∼ 13 年度の 2 年間をかけて、雲仙火山
に活動し、大きな変位が生じたと推定されている。今後のコア
東麓の深江町上大野木場地区において第2号の掘削井(USDP-
解析と、地表での地質調査、地球物理観測などを組み合わせる
2)を掘削中である。平成 12 年度は深度 900mまでオールコ
ことにより、より詳細な火山成長史が明らかになると期待される。
ア掘削し、平成 13 年度に深度 1400m 程度までの増掘を予
ICDP プロジェクトとしての火道掘削へ向けて
火砕流
N
平成 11 年度に実施した雲仙火山北東麓の島原市南千本木地
野
松
Continental
1期の山麓掘削
と
赤
無
目的とした山麓部での2本の掘削(750mおよび1400m)と、
岳
の
山
体
崩
壊
島原市
水
に提出され、翌 97 年の 5 月に島原市において雲仙国際シンポ
岳
壊
総合研究の第1期では、火山の内部構造、形成発達史の解明を
崩
見
(アラスカ大学)と中田節也により国際陸上科学掘削計画(ICDP)
体
期のおわりには、第 2 期に移行するかどうかの中間評価が行わ
山
った岩石を採取し、マグマの上昇脱ガスプロセスを明らかにす
年
研究機関が参加し、第 1 期 3 年と第 2 期 3 年に分けられ、第 1
92
「噴火後間もないマグマの通り道に穴を開けて、高温状態を保
17
平成12・13年度
山体掘削地点
川
8月
山体崩壊
(点線は伏在)
活断層
崩壊壁
島原湾
写真提供:アジア航測(株)
は、なるべく標高が高く山頂ドームに近い地点から掘削を開始
に ICDP の支援の元、2000 年 10 月に島原市において雲仙
することが望ましい。
国際科学掘削技術ワークショップを開催し,
国内および国外の
2
火道掘削には、1600m 以上の広さを持った平坦な敷地とそ
掘 削 技 術 者と 討 議 を 行った 。そ の 結 果 、平 成 新 山 の 北 西
こまで掘削資機材及び多量の冷却水を輸送するための道路が
1.5km の地点にある、標高 840m の平坦面を掘削候補地とし
必要であるが、当然のことながら雲仙山頂周辺には存在しない。
て選定した。この地点までは、荒廃した林道の改修と多少の増
当初候補に上がったのが、普賢岳の南にある薊谷である。標高
設で資機材を運搬することが可能である。この地点から火道掘
1100m のこの地点は、平成新山溶岩ドームの南 800m の位
削が実現可能かどうかを確かめるための掘進長 350m のパイ
置にあり、傾斜角 40 度で掘削すれば、海抜 0m 付近で火道を
ロット掘削を 2001 年 1 ∼ 3 月に行ない、その結果は、現在解
掘り当てることが可能である。しかし、この地点まで資機材を
析中である。
運ぶ道路はなく、かつ規制が最も厳しい国立公園の特別保護
今後のスケジュールとしては、本年秋に、振興調整費総合研究
地域の中であり、自然林から成る国有林内でもあった。環境庁、
の第1期のレビューおよび第 2 期提案審査が行われ、第 2 期で
林野庁森林管理署、長崎県などへ掘削の目的・概要などを繰り
の火道掘削を中心とした研究へ移行の可否が決まる。また、同
返し説明した結果、学術的な目的には前向きな理解を頂いたが、
じころに ICDP より火道掘削の本プロポーザルの採否の回答
国立公園内の貴重な自然の保護、景観への配慮、観光客への
がある予定である。国内、国外の承認が得られれば、2002 年
雲 仙 火 山 の 1 9 9 0 ∼ 9 5 年 噴 火 で は、山 頂 の 直 下 0 . 5 ∼
を採集して岩石組織や鉱物組成を調べたり、火道周辺の物理
支障などについて、多くの制限事項を示された。安全で確実な
4 月から火道掘削の準備を始め、同年の秋には本掘削を開始で
1.5km付近でマグマの発泡・脱ガスや地下水との接触など様々
状態を坑内検層により調べることが、噴火メカニズムの解明に
掘削を行う点では、かなり厳しい条件もいくつかあり、他の候
きると期待される。資金的な余裕があれば、本坑一本だけでは
な火山現象が起こったと推定されている。その深度で火道を
重要である。従って、火道掘削により科学的成果を得るためには、
補地点の検討を行った。
なく、複数のサイドトラックを行い、火道の形状を面的に明らか
掘り抜き、火道を充填する未だ高温の岩石や火道周辺の岩石
海水面より浅い深度で火道を掘り抜く必要がある。そのために
この問題を世界の掘削技術者と共に検討するため、前述のよう
にし、マグマの上昇脱ガス過程を解明したいと考えている。
国際陸上科学掘削計画(International Continental Drilling
との関係、放射性廃棄物などの有害物質を安全に処理する技術、
Program : ICDP)は全地球システムの地球科学的解明を目
堆積盆や炭化水素資源の成因や進化、多様な地質学的条件下
標として行われる、多様な掘削プロジェクトを援助・調整するた
での鉱床形成、プレートテクトニクスならびに地殻内での熱、物
めに1996 年 2 月にドイツ、アメリカ、中国の共同で発足しまし
質および流体の移動に関する基本的な物理学等の研究テーマ
た。1998 年には日本も加盟しました。過去の 5 年間に約 70
が重要視されています。
以上ものプロジェクト提案が寄せられ、ODP(国際深海掘削
ICDP では掘削プロジェクトへの援助の他に、掘削プロジェクト
計画)と並ぶ地球のなぞを解明する国際共同科学プロジェクト
の検討や準備のための国際ワークショップへの資金提供や、掘
の一つです。
削技術・検層・サンプリング技術等の普及・教育を含んだ研修・
本計画は科学掘削というユニークな手段を用いて得られる地
トレーニングコースやサマースクールを行います。
殻の組成、構造、形成過程に関する重要な知識や情報を世界中
ICDPではこれまでに環境変動(バイカル湖・アフリカ地溝帯)、
の科学者に提供しようという試みであり、特に地震や火山噴火
火山システム(ハワイ島・雲仙火山)、隕石衝突孔(ユカタン半
の原因となる物理的・化学的過程、過去の地球における気候変
島チチュルブ隕石孔)、地震断層(サンアンドレアス断層)、超
動の実体とその変動の原因、気候変動や大量絶滅に対する巨
高圧変成帯(中国大別変成帯)等の掘削プロジェクトが提案さ
大隕石衝突の影響、地下生物圏の性質と様々な地質学的過程
れています。
2月
3月
4月
5月
国内作業
委員会 / 議会
1/15 プロポーザル締切
日本からのプロポーザルの検討、提出者への助言
SAG 候補の選出
1/10 第 1 回国内実施委員会
(国内プロポーザル検討)
SAGにプロポーザル送付
SAG/EC 開催
(各地で掘削進行)
●巻頭言
国際陸上科学掘削計画(ICDP)へのわが国の参加について 齋藤常正(日本学術会議会員・東北大学名誉教授)
●特 集
雲仙掘削
●事務局通信
ICDP 国内実施委員会事務局
宇都浩三(産業技術総合研究所地球科学情報研究部門)
中田節也(東京大学地震研究所)
国際陸上科学掘削計画(ICDP)への
わが国の参加について
齋藤 常正
ICDP 本部
2/8-9 GFZ 関係者来日
CONTENTS
東北大学名誉教授
ICDPカレンダー
1月
2001.6
GFZ 関係者来日、対応
(海洋科学技術センター、雲仙掘削現場視察)
EC 対応案作成、ホームページ作成
SAG/EC 委員会議(SAG、EC 対応協議)
掘削決定プロジェクトの広報。
EC 議事録作成と案件の対処
第 2 回国内実施委員会(SAG、EC 報告と
国内研究者へのサポート協議)
ニュースレター発行
国際陸上科学掘削計画( ICDP:Interna-
く、日本人を研究代表者とする掘削計画も複
tional Continental Scientific Drilling
数提出されておりました。
Program)は、1996 年、
ドイツを中心にア
国際陸上科学掘削計画への参加により、日本
メリカと中国が参加して、国際共同研究プロ
の研究者は次のような研究支援を享受出来
ジェクトとして発足しました。その目的は、陸
ることになります。①陸上掘削に向けて、国際
上から地殻内部にボーリング(掘削)を行い、
的に研究費を集め、国際的に研究費の配分を
地殻の変動の歴史試料を地下から採取する
受ける権利を共有できる。②日本の掘削計画
ことと、地震・火山噴火・深層の地下水の流動
だけでなく、世界の第1級の掘削プロジェクト
など、動く地球の姿を直接観測することにあ
に参加し、データや掘削資料を得ることが保
6月
地球惑星合同学会にて普及活動
7月
ICDPプロジェクトへ日本人参加者の通知
ります。
証される。③世界最新の掘削技術動向の情
トレーニングコース参加者の通知
このような国際プロジェクトは、さらに多くの
報が得られる。④わが国が 21 世紀において
国が参加することで、研究費を持ち寄ること
中心的役割を担おうとしている国際深海掘削
トレーニングコース
プロポーザル応募案内を主要雑誌に掲載、
メーリングリストでの流布、AOG 対応案作成
9月
10月
AOG 対応協議
AOG 開催
11月
ニュースレター発行
12月
日本からのプロポーザルの検討、
提出者への助言
第 3 回国内実施委員会
(国内プロポーザル検討)
GFZ :ドイツ地球科学研究センター
SAG :科学諮問グループ
EC :執行委員会
AOG :理事会
事務局アドレス情報
● ICDP に関するホームページ
http://icdp.gfz-potsdam.de/html/welcome_icdp.html
● ICDP プロポーザルに関するホームページ
http://www.jamstec.go.jp/jamstec-j/international/icdp/icdp_hocoku.html
海洋科学技術センター
深海地球ドリリング計画推進室
〒237-0061神奈川県横須賀市夏島町2-15
TEL.0468-67-3997 FAX.0468-66-5351
URL:http://www.jamstec.go.jp/
Email:[email protected]
第 1 号/平成 13 年 6 月 1 日発行
が可能となり、また国際協力により全地球的な視野で掘削地点
計画を補完して、大陸 - 深海というグローバルな視点で地球内
を選ぶことが出来るという理由で、1993 年、
ドイツのポツダ
部を探ることが可能になる。
ム大学で「陸上科学掘削に関する国際会議」が開催され、研究
現在、この国際計画のもとで研究が着手あるいは実施が検討さ
の実施体制と学術目標が検討されました。この集会には、わが
れている課題には、中・長期地球環境変動解析(バイカル湖・ア
国からも 22 名の研究者が参加し、日本がこの国際計画に参加
フリカのマラウイ湖・アンデスのチチカカ湖)、火山システム(ハ
することの重要性を実感しました。そのような背景のもとで、
ワイ島キラウエア- マウナ・ロア、長崎県雲仙)、巨大隕石衝突孔
1995年、日本学術会議第4部会にICDP小委員会が設けられ、 (ユカタン半島)、地震断層(カリフォルニア州サンアンドレアス
I C D P へ の 加 入 を 勧 告 す る対 外 報 告 が 提 出 さ れ た ほ か 、
断層・台湾の車龍埔断層)、超高圧変成帯(中国の大別山 - 蘇魯
1996 年には、当時の科学技術庁の航空・電子等審議会の地球
帯)などがあります。また、毎年新しい研究課題を公募しており
科学技術部会が“地球変動予測の実現に向けて”深海掘削計画
ますので、日本からも興味ある掘削計画の提案が期待されます。
(OD21)とICDP が重要であるとの意見表明を行いました。
この計画への参加国は、当初の 3 カ国から大幅に増加し、現在、
そして、1998 年、わが国はこの国際計画の正式メンバーにな
日本・メキシコ・ポーランドが国として参加しているほか、ユネ
りました。
スコおよびフランスの検層会社シュランバジェ社が加入し、
すでに、日本の参加が正式に決定される以前から、この国際計
2001 年中には、カナダ・オーストリア・イタリア・ノルディック
画が発足すると同時に、わが国の科学者の貢献が求められてお
共同体の参加も予定されております。
り、日本人の委員が科学諮問委員会に参加してきたばかりでな
普賢岳
橘湾
雲仙科学掘削の現状と
ICDP火道掘削に向けて
第II期
火道掘削
平成新山
妙見岳
千々
野岳
産業技術総合研究所地球科学情報研究部門(旧地質調査所)宇都
東京大学地震研究所
石断
平成11年度
山体掘削地点
層
浩三
中田 節也
眉山
雲仙科学掘削の経緯と概要
る」というpre-proposal が、1996 年 John Eichelberger
れる。
妙
ジウムが開催された。このシンポジウムにおける討議を受け、
火道掘削の技術的デザインを決めるための掘進長 350m の
科学技術庁(当時)に対し、科学技術振興調整費総合研究を提
パイロット掘削を実施中である。第 2 期では、平成新山溶岩ド
案した。平成 10 年度のフィジビリティ研究を経て、平成11年度
ームを形成したマグマの供給火道へ達する1ないし 2 本の火
より「雲仙火山:科学掘削による噴火機構の解明とマグマ活動
道掘削(掘進長 2000m 程度)を計画している(右図)。計画
解明に関する国際共同研究」として採択された。本研究は、科
当初より、火道掘削は ICDP:International
学掘削を重要な研究手段として、国際協力の元に雲仙火山に
Scientific Drilling Program(国際陸上科学掘削計画)との
おけるマグマの上昇・噴火機構を明らかにし、同火山の形成史、
共同研究として実施することを念頭に置いており、平成 12 年
内部構造を解明することを目的としている。本研究では、雲仙
度には、火道掘削の技術的課題を議論するための国際技術ワ
火山の三次元構造、マグマ上昇噴火過程の解明のために科学
ークショップの開催をICDPの費用で実施し、その結果を受けて、
掘削以外にも多様な研究を盛り込んでおり、産学官の合計 16
平成 13 年1月には本プロポーザルを提出した。
谷
断
層
深江町
定している。これまでのコア解析結果から、雲仙火山の形成初
区における第1号の掘削井(USDP-1)では、深度 750m のオ
期には、現在とは異なった爆発的な噴火活動をし、その後も現
ールコア掘削を行い、90% 以上の高回収率でコアを得ること
在のドーム崩壊型とは異なる爆発的な火砕流噴火が頻発した
が出来た。また、温度、地震波速度、電気伝導度、密度、などの
ことが明らかになった。また、約 20 万年前に多数回の火砕流
項目について坑内計測を実施し、深度 350m の位置に地震計
噴火がおこり、その時期に、東西性の千々石断層が極めて急速
を設置した。平成 12 ∼ 13 年度の 2 年間をかけて、雲仙火山
に活動し、大きな変位が生じたと推定されている。今後のコア
東麓の深江町上大野木場地区において第2号の掘削井(USDP-
解析と、地表での地質調査、地球物理観測などを組み合わせる
2)を掘削中である。平成 12 年度は深度 900mまでオールコ
ことにより、より詳細な火山成長史が明らかになると期待される。
ア掘削し、平成 13 年度に深度 1400m 程度までの増掘を予
ICDP プロジェクトとしての火道掘削へ向けて
火砕流
N
平成 11 年度に実施した雲仙火山北東麓の島原市南千本木地
野
松
Continental
1期の山麓掘削
と
赤
無
目的とした山麓部での2本の掘削(750mおよび1400m)と、
岳
の
山
体
崩
壊
島原市
水
に提出され、翌 97 年の 5 月に島原市において雲仙国際シンポ
岳
壊
総合研究の第1期では、火山の内部構造、形成発達史の解明を
崩
見
(アラスカ大学)と中田節也により国際陸上科学掘削計画(ICDP)
体
期のおわりには、第 2 期に移行するかどうかの中間評価が行わ
山
った岩石を採取し、マグマの上昇脱ガスプロセスを明らかにす
年
研究機関が参加し、第 1 期 3 年と第 2 期 3 年に分けられ、第 1
92
「噴火後間もないマグマの通り道に穴を開けて、高温状態を保
17
平成12・13年度
山体掘削地点
川
8月
山体崩壊
(点線は伏在)
活断層
崩壊壁
島原湾
写真提供:アジア航測(株)
は、なるべく標高が高く山頂ドームに近い地点から掘削を開始
に ICDP の支援の元、2000 年 10 月に島原市において雲仙
することが望ましい。
国際科学掘削技術ワークショップを開催し,
国内および国外の
2
火道掘削には、1600m 以上の広さを持った平坦な敷地とそ
掘 削 技 術 者と 討 議 を 行った 。そ の 結 果 、平 成 新 山 の 北 西
こまで掘削資機材及び多量の冷却水を輸送するための道路が
1.5km の地点にある、標高 840m の平坦面を掘削候補地とし
必要であるが、当然のことながら雲仙山頂周辺には存在しない。
て選定した。この地点までは、荒廃した林道の改修と多少の増
当初候補に上がったのが、普賢岳の南にある薊谷である。標高
設で資機材を運搬することが可能である。この地点から火道掘
1100m のこの地点は、平成新山溶岩ドームの南 800m の位
削が実現可能かどうかを確かめるための掘進長 350m のパイ
置にあり、傾斜角 40 度で掘削すれば、海抜 0m 付近で火道を
ロット掘削を 2001 年 1 ∼ 3 月に行ない、その結果は、現在解
掘り当てることが可能である。しかし、この地点まで資機材を
析中である。
運ぶ道路はなく、かつ規制が最も厳しい国立公園の特別保護
今後のスケジュールとしては、本年秋に、振興調整費総合研究
地域の中であり、自然林から成る国有林内でもあった。環境庁、
の第1期のレビューおよび第 2 期提案審査が行われ、第 2 期で
林野庁森林管理署、長崎県などへ掘削の目的・概要などを繰り
の火道掘削を中心とした研究へ移行の可否が決まる。また、同
返し説明した結果、学術的な目的には前向きな理解を頂いたが、
じころに ICDP より火道掘削の本プロポーザルの採否の回答
国立公園内の貴重な自然の保護、景観への配慮、観光客への
がある予定である。国内、国外の承認が得られれば、2002 年
雲 仙 火 山 の 1 9 9 0 ∼ 9 5 年 噴 火 で は、山 頂 の 直 下 0 . 5 ∼
を採集して岩石組織や鉱物組成を調べたり、火道周辺の物理
支障などについて、多くの制限事項を示された。安全で確実な
4 月から火道掘削の準備を始め、同年の秋には本掘削を開始で
1.5km付近でマグマの発泡・脱ガスや地下水との接触など様々
状態を坑内検層により調べることが、噴火メカニズムの解明に
掘削を行う点では、かなり厳しい条件もいくつかあり、他の候
きると期待される。資金的な余裕があれば、本坑一本だけでは
な火山現象が起こったと推定されている。その深度で火道を
重要である。従って、火道掘削により科学的成果を得るためには、
補地点の検討を行った。
なく、複数のサイドトラックを行い、火道の形状を面的に明らか
掘り抜き、火道を充填する未だ高温の岩石や火道周辺の岩石
海水面より浅い深度で火道を掘り抜く必要がある。そのために
この問題を世界の掘削技術者と共に検討するため、前述のよう
にし、マグマの上昇脱ガス過程を解明したいと考えている。
国際陸上科学掘削計画(International Continental Drilling
との関係、放射性廃棄物などの有害物質を安全に処理する技術、
Program : ICDP)は全地球システムの地球科学的解明を目
堆積盆や炭化水素資源の成因や進化、多様な地質学的条件下
標として行われる、多様な掘削プロジェクトを援助・調整するた
での鉱床形成、プレートテクトニクスならびに地殻内での熱、物
めに1996 年 2 月にドイツ、アメリカ、中国の共同で発足しまし
質および流体の移動に関する基本的な物理学等の研究テーマ
た。1998 年には日本も加盟しました。過去の 5 年間に約 70
が重要視されています。
以上ものプロジェクト提案が寄せられ、ODP(国際深海掘削
ICDP では掘削プロジェクトへの援助の他に、掘削プロジェクト
計画)と並ぶ地球のなぞを解明する国際共同科学プロジェクト
の検討や準備のための国際ワークショップへの資金提供や、掘
の一つです。
削技術・検層・サンプリング技術等の普及・教育を含んだ研修・
本計画は科学掘削というユニークな手段を用いて得られる地
トレーニングコースやサマースクールを行います。
殻の組成、構造、形成過程に関する重要な知識や情報を世界中
ICDPではこれまでに環境変動(バイカル湖・アフリカ地溝帯)、
の科学者に提供しようという試みであり、特に地震や火山噴火
火山システム(ハワイ島・雲仙火山)、隕石衝突孔(ユカタン半
の原因となる物理的・化学的過程、過去の地球における気候変
島チチュルブ隕石孔)、地震断層(サンアンドレアス断層)、超
動の実体とその変動の原因、気候変動や大量絶滅に対する巨
高圧変成帯(中国大別変成帯)等の掘削プロジェクトが提案さ
大隕石衝突の影響、地下生物圏の性質と様々な地質学的過程
れています。
2月
3月
4月
5月
国内作業
委員会 / 議会
1/15 プロポーザル締切
日本からのプロポーザルの検討、提出者への助言
SAG 候補の選出
1/10 第 1 回国内実施委員会
(国内プロポーザル検討)
SAGにプロポーザル送付
SAG/EC 開催
(各地で掘削進行)
●巻頭言
国際陸上科学掘削計画(ICDP)へのわが国の参加について 齋藤常正(日本学術会議会員・東北大学名誉教授)
●特 集
雲仙掘削
●事務局通信
ICDP 国内実施委員会事務局
宇都浩三(産業技術総合研究所地球科学情報研究部門)
中田節也(東京大学地震研究所)
国際陸上科学掘削計画(ICDP)への
わが国の参加について
齋藤 常正
ICDP 本部
2/8-9 GFZ 関係者来日
CONTENTS
東北大学名誉教授
ICDPカレンダー
1月
2001.6
GFZ 関係者来日、対応
(海洋科学技術センター、雲仙掘削現場視察)
EC 対応案作成、ホームページ作成
SAG/EC 委員会議(SAG、EC 対応協議)
掘削決定プロジェクトの広報。
EC 議事録作成と案件の対処
第 2 回国内実施委員会(SAG、EC 報告と
国内研究者へのサポート協議)
ニュースレター発行
国際陸上科学掘削計画( ICDP:Interna-
く、日本人を研究代表者とする掘削計画も複
tional Continental Scientific Drilling
数提出されておりました。
Program)は、1996 年、
ドイツを中心にア
国際陸上科学掘削計画への参加により、日本
メリカと中国が参加して、国際共同研究プロ
の研究者は次のような研究支援を享受出来
ジェクトとして発足しました。その目的は、陸
ることになります。①陸上掘削に向けて、国際
上から地殻内部にボーリング(掘削)を行い、
的に研究費を集め、国際的に研究費の配分を
地殻の変動の歴史試料を地下から採取する
受ける権利を共有できる。②日本の掘削計画
ことと、地震・火山噴火・深層の地下水の流動
だけでなく、世界の第1級の掘削プロジェクト
など、動く地球の姿を直接観測することにあ
に参加し、データや掘削資料を得ることが保
6月
地球惑星合同学会にて普及活動
7月
ICDPプロジェクトへ日本人参加者の通知
ります。
証される。③世界最新の掘削技術動向の情
トレーニングコース参加者の通知
このような国際プロジェクトは、さらに多くの
報が得られる。④わが国が 21 世紀において
国が参加することで、研究費を持ち寄ること
中心的役割を担おうとしている国際深海掘削
トレーニングコース
プロポーザル応募案内を主要雑誌に掲載、
メーリングリストでの流布、AOG 対応案作成
9月
10月
AOG 対応協議
AOG 開催
11月
ニュースレター発行
12月
日本からのプロポーザルの検討、
提出者への助言
第 3 回国内実施委員会
(国内プロポーザル検討)
GFZ :ドイツ地球科学研究センター
SAG :科学諮問グループ
EC :執行委員会
AOG :理事会
事務局アドレス情報
● ICDP に関するホームページ
http://icdp.gfz-potsdam.de/html/welcome_icdp.html
● ICDP プロポーザルに関するホームページ
http://www.jamstec.go.jp/jamstec-j/international/icdp/icdp_hocoku.html
海洋科学技術センター
深海地球ドリリング計画推進室
〒237-0061神奈川県横須賀市夏島町2-15
TEL.0468-67-3997 FAX.0468-66-5351
URL:http://www.jamstec.go.jp/
Email:[email protected]
第 1 号/平成 13 年 6 月 1 日発行
が可能となり、また国際協力により全地球的な視野で掘削地点
計画を補完して、大陸 - 深海というグローバルな視点で地球内
を選ぶことが出来るという理由で、1993 年、
ドイツのポツダ
部を探ることが可能になる。
ム大学で「陸上科学掘削に関する国際会議」が開催され、研究
現在、この国際計画のもとで研究が着手あるいは実施が検討さ
の実施体制と学術目標が検討されました。この集会には、わが
れている課題には、中・長期地球環境変動解析(バイカル湖・ア
国からも 22 名の研究者が参加し、日本がこの国際計画に参加
フリカのマラウイ湖・アンデスのチチカカ湖)、火山システム(ハ
することの重要性を実感しました。そのような背景のもとで、
ワイ島キラウエア- マウナ・ロア、長崎県雲仙)、巨大隕石衝突孔
1995年、日本学術会議第4部会にICDP小委員会が設けられ、 (ユカタン半島)、地震断層(カリフォルニア州サンアンドレアス
I C D P へ の 加 入 を 勧 告 す る対 外 報 告 が 提 出 さ れ た ほ か 、
断層・台湾の車龍埔断層)、超高圧変成帯(中国の大別山 - 蘇魯
1996 年には、当時の科学技術庁の航空・電子等審議会の地球
帯)などがあります。また、毎年新しい研究課題を公募しており
科学技術部会が“地球変動予測の実現に向けて”深海掘削計画
ますので、日本からも興味ある掘削計画の提案が期待されます。
(OD21)とICDP が重要であるとの意見表明を行いました。
この計画への参加国は、当初の 3 カ国から大幅に増加し、現在、
そして、1998 年、わが国はこの国際計画の正式メンバーにな
日本・メキシコ・ポーランドが国として参加しているほか、ユネ
りました。
スコおよびフランスの検層会社シュランバジェ社が加入し、
すでに、日本の参加が正式に決定される以前から、この国際計
2001 年中には、カナダ・オーストリア・イタリア・ノルディック
画が発足すると同時に、わが国の科学者の貢献が求められてお
共同体の参加も予定されております。
り、日本人の委員が科学諮問委員会に参加してきたばかりでな
普賢岳
橘湾
雲仙科学掘削の現状と
ICDP火道掘削に向けて
第II期
火道掘削
平成新山
妙見岳
千々
野岳
産業技術総合研究所地球科学情報研究部門(旧地質調査所)宇都
東京大学地震研究所
石断
平成11年度
山体掘削地点
層
浩三
中田 節也
眉山
雲仙科学掘削の経緯と概要
る」というpre-proposal が、1996 年 John Eichelberger
れる。
妙
ジウムが開催された。このシンポジウムにおける討議を受け、
火道掘削の技術的デザインを決めるための掘進長 350m の
科学技術庁(当時)に対し、科学技術振興調整費総合研究を提
パイロット掘削を実施中である。第 2 期では、平成新山溶岩ド
案した。平成 10 年度のフィジビリティ研究を経て、平成11年度
ームを形成したマグマの供給火道へ達する1ないし 2 本の火
より「雲仙火山:科学掘削による噴火機構の解明とマグマ活動
道掘削(掘進長 2000m 程度)を計画している(右図)。計画
解明に関する国際共同研究」として採択された。本研究は、科
当初より、火道掘削は ICDP:International
学掘削を重要な研究手段として、国際協力の元に雲仙火山に
Scientific Drilling Program(国際陸上科学掘削計画)との
おけるマグマの上昇・噴火機構を明らかにし、同火山の形成史、
共同研究として実施することを念頭に置いており、平成 12 年
内部構造を解明することを目的としている。本研究では、雲仙
度には、火道掘削の技術的課題を議論するための国際技術ワ
火山の三次元構造、マグマ上昇噴火過程の解明のために科学
ークショップの開催をICDPの費用で実施し、その結果を受けて、
掘削以外にも多様な研究を盛り込んでおり、産学官の合計 16
平成 13 年1月には本プロポーザルを提出した。
谷
断
層
深江町
定している。これまでのコア解析結果から、雲仙火山の形成初
区における第1号の掘削井(USDP-1)では、深度 750m のオ
期には、現在とは異なった爆発的な噴火活動をし、その後も現
ールコア掘削を行い、90% 以上の高回収率でコアを得ること
在のドーム崩壊型とは異なる爆発的な火砕流噴火が頻発した
が出来た。また、温度、地震波速度、電気伝導度、密度、などの
ことが明らかになった。また、約 20 万年前に多数回の火砕流
項目について坑内計測を実施し、深度 350m の位置に地震計
噴火がおこり、その時期に、東西性の千々石断層が極めて急速
を設置した。平成 12 ∼ 13 年度の 2 年間をかけて、雲仙火山
に活動し、大きな変位が生じたと推定されている。今後のコア
東麓の深江町上大野木場地区において第2号の掘削井(USDP-
解析と、地表での地質調査、地球物理観測などを組み合わせる
2)を掘削中である。平成 12 年度は深度 900mまでオールコ
ことにより、より詳細な火山成長史が明らかになると期待される。
ア掘削し、平成 13 年度に深度 1400m 程度までの増掘を予
ICDP プロジェクトとしての火道掘削へ向けて
火砕流
N
平成 11 年度に実施した雲仙火山北東麓の島原市南千本木地
野
松
Continental
1期の山麓掘削
と
赤
無
目的とした山麓部での2本の掘削(750mおよび1400m)と、
岳
の
山
体
崩
壊
島原市
水
に提出され、翌 97 年の 5 月に島原市において雲仙国際シンポ
岳
壊
総合研究の第1期では、火山の内部構造、形成発達史の解明を
崩
見
(アラスカ大学)と中田節也により国際陸上科学掘削計画(ICDP)
体
期のおわりには、第 2 期に移行するかどうかの中間評価が行わ
山
った岩石を採取し、マグマの上昇脱ガスプロセスを明らかにす
年
研究機関が参加し、第 1 期 3 年と第 2 期 3 年に分けられ、第 1
92
「噴火後間もないマグマの通り道に穴を開けて、高温状態を保
17
平成12・13年度
山体掘削地点
川
8月
山体崩壊
(点線は伏在)
活断層
崩壊壁
島原湾
写真提供:アジア航測(株)
は、なるべく標高が高く山頂ドームに近い地点から掘削を開始
に ICDP の支援の元、2000 年 10 月に島原市において雲仙
することが望ましい。
国際科学掘削技術ワークショップを開催し,
国内および国外の
2
火道掘削には、1600m 以上の広さを持った平坦な敷地とそ
掘 削 技 術 者と 討 議 を 行った 。そ の 結 果 、平 成 新 山 の 北 西
こまで掘削資機材及び多量の冷却水を輸送するための道路が
1.5km の地点にある、標高 840m の平坦面を掘削候補地とし
必要であるが、当然のことながら雲仙山頂周辺には存在しない。
て選定した。この地点までは、荒廃した林道の改修と多少の増
当初候補に上がったのが、普賢岳の南にある薊谷である。標高
設で資機材を運搬することが可能である。この地点から火道掘
1100m のこの地点は、平成新山溶岩ドームの南 800m の位
削が実現可能かどうかを確かめるための掘進長 350m のパイ
置にあり、傾斜角 40 度で掘削すれば、海抜 0m 付近で火道を
ロット掘削を 2001 年 1 ∼ 3 月に行ない、その結果は、現在解
掘り当てることが可能である。しかし、この地点まで資機材を
析中である。
運ぶ道路はなく、かつ規制が最も厳しい国立公園の特別保護
今後のスケジュールとしては、本年秋に、振興調整費総合研究
地域の中であり、自然林から成る国有林内でもあった。環境庁、
の第1期のレビューおよび第 2 期提案審査が行われ、第 2 期で
林野庁森林管理署、長崎県などへ掘削の目的・概要などを繰り
の火道掘削を中心とした研究へ移行の可否が決まる。また、同
返し説明した結果、学術的な目的には前向きな理解を頂いたが、
じころに ICDP より火道掘削の本プロポーザルの採否の回答
国立公園内の貴重な自然の保護、景観への配慮、観光客への
がある予定である。国内、国外の承認が得られれば、2002 年
雲 仙 火 山 の 1 9 9 0 ∼ 9 5 年 噴 火 で は、山 頂 の 直 下 0 . 5 ∼
を採集して岩石組織や鉱物組成を調べたり、火道周辺の物理
支障などについて、多くの制限事項を示された。安全で確実な
4 月から火道掘削の準備を始め、同年の秋には本掘削を開始で
1.5km付近でマグマの発泡・脱ガスや地下水との接触など様々
状態を坑内検層により調べることが、噴火メカニズムの解明に
掘削を行う点では、かなり厳しい条件もいくつかあり、他の候
きると期待される。資金的な余裕があれば、本坑一本だけでは
な火山現象が起こったと推定されている。その深度で火道を
重要である。従って、火道掘削により科学的成果を得るためには、
補地点の検討を行った。
なく、複数のサイドトラックを行い、火道の形状を面的に明らか
掘り抜き、火道を充填する未だ高温の岩石や火道周辺の岩石
海水面より浅い深度で火道を掘り抜く必要がある。そのために
この問題を世界の掘削技術者と共に検討するため、前述のよう
にし、マグマの上昇脱ガス過程を解明したいと考えている。
Fly UP