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1126.それでもアメリカは銃を手放せないのか 銃社会の住人の本音(下

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1126.それでもアメリカは銃を手放せないのか 銃社会の住人の本音(下
1126.それでもアメリカは銃を手放せないのか 銃社会の住人の本音(下)
日本経済新聞2013.2.1.
(傍線:吉田祐起引用)
「(事件後に)売り上げは増えている。売る銃が足りないくらいだ」――。米国では政府による銃規制
の動きを受け、駆け込み需要が発生しているという。児童20人を含む26人が亡くなったコネティカ
ット州の小学校の銃乱射事件の記憶は生々しいが、一般市民の銃に対する考え方は変わっていな
いのだろうか。
米コネティカットの銃乱射事件発生後、銃の駆け込み需要が増えている=ロイター
「銃が売れている」と歯切れのよい口調で語ったのはロサンゼルスの銃販売店「ロサンゼルス・ガ
ン・クラブ」の男性店員だ。
「銃規制が強まると懸念し、様々な人が銃を買いにきているんだ。皆、憲法に保障されている権利
を行使しているだけさ。客はこう言うよ。『これは、銃の問題じゃない。それを悪用する人が問題な
んだ』とね」
■銃の駆け込み需要増
オバマ大統領の銃規制強化の意向を受け、米国内では、規制強化前に銃を購入しようという人が
増えているという。「家に一人でいるときなど、銃があると何かあった場合に自分の身を守りやすく
なるので安心する」と話すのはオハイオ州の検事、メリッサ・シッフェルさん(30)。「これ以上銃規制
を強化すべきではない。規制強化しても、犯罪者はなにかしらの手段で銃を手に入れるだろう。規
制強化は法に従う善良な国民から銃を奪うだけだ」と力を込める。
野放しのようにみえる米国だが、銃を携行するには所持するのとは別に免許が必要となるなど、
細かな規制もかけられてきた。その流れを知らないと「これ以上規制を強化すべきではない」という
発言は理解できそうにない。
オハイオ州の30代の男性警察官も「戦闘に使う高機能な銃は、一般市民に必要ないので規制し
てもいいと思うが、小型の護身用の銃まで規制しては、自分の身を守ろうとする市民の権利を奪っ
てしまう。犯罪者は必ず凶器を手に入れる。犯罪者から身を守ろうとする善良な市民への配慮も必
要だ」と話す。
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全米ライフル協会は銃規制に反対する姿勢を貫いている=ロイター
オハイオ州に住む1児の母、ローレン・ジャスティスさん(31)は銃を持っておらず、買う予定もな
いと言うが「規制強化では問題の解決にならない」と話した。「銃所持の権利を脅かされるとなった
ら、不満に思う米国民が増えると思う。人々のフラストレーションがたまり疑心暗鬼になることで、
もっと問題が増え、凶悪犯罪も増えるのではないか。コネティカット州の事件も、銃規制が強化され
ていたとしても防げたとは思えない」と話す。
銃社会への批判が高まるなかで、全米ライフル協会(NRA)の副会長が発したコメントは日本でも
注目された。「こうした事件を防ぐには、全米の学校に武器を持った人を配備して守る必要がある」
あんな事件があったのに、なぜ「みんな持たない」でなく「みんなで持つ」となるのか。“非銃社会”
の住人にとってついていけないものがあるが、NRA副会長の発言は業界団体ばかりでなく、米市
民の考え方の一面を反映していると見なくてはならないようだ。
コネティカット州の事件を受け、米国の学校では、教師に銃の使い方や銃から身を守る護身術な
どを教える取り組みも始まっている。
銃の使い方を学ぶ教師。米国では、教師に銃の使い方や護身術を教える取り組みも増えてきた
(1月11日、フロリダ州)=ロイター
米国では、武器の所有を米国憲法修正第2条で市民の権利として認めている。銃についてのスイ
スの調査会社、スモールアームスサーベイの2007年のデータによると、米国市民が所持する銃
7000
の数は2億7000
7000万丁。100人あたり89丁の計算だ。米国は17世紀に英国から清教徒が移住し
た当初から、自分の身は自分で守るという自己防衛意識がある。まだ弱かった政府には頼りたくて
も頼れなかった。そんな歴史はいまでも人々に根付いている。
経済の悪化で警察官のリストラなどが相次ぎ、公的な守りが手薄になっていることも、自分の身
は自分で守らねばと考える市民が増えている要因になっている。
■憲法は時代遅れ?
しかし、さすがに事件の衝撃は大きかったようだ。銃所持を認める憲法自体、今の時代に合って
-2-
いないという声が大きくなっている。日本に住む米国人人類学者(30)は「この条項が書かれた時
代は、未開拓地で身を守るために銃が必要だった。また、国の軍隊もなかったため、自分たちで自
分たちの身を守る必要があった。それに、この条項は人を殺すために作られた高性能な小銃など
を想定していない」と指摘する。
オハイオ州に住む2児の母、ローレン・オドネルさん(31)は銃規制強化を求める一人だ。「護身用
に銃を持つ必要はないと思う。もし、その銃を子供が見つけて、自分を撃つなどしてしまったらと思
うと恐ろしい。銃を所持する人が少なくなれば、より安全な社会になる」と言う。
銃規制強化を求める動きも広がっている(首都ワシントン)=AP
首都ワシントンの男性会社員、リン・ホアンさん(30)も「銃は人々を恐怖に陥れ、多くの人を殺す
もの。文明国にあるべきではない。罪のない人の命を救うためにも、規制強化が求められる」と強
調する。
メリーランド州の女性会社員、アニータ・ヨディチカスさん(29)は「コネティカット州の事件では、犯
人の母親が精神的に問題のあった息子がいたにもかかわらず、銃を犯人の手の届かない場所に
保管していなかったのが問題だ」と話す。
「護身用に銃が必要な人などの権利を守るためにも、銃を買う審査段階で購入者だけでなく、そ
の家族や、安全に保管する場所があるかどうかも審査し、犯罪を起こす可能性のある人の手に渡
らないようにすべき」
■アメリカ合衆国憲法の修正第2条
Right to Bear Arms
A well regulated militia, being necessary to the security of a free state, the right of
the people to keep and bear arms, shall not be infringed.
武器を携帯する権利
規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるので、人民が武器を保有し、携帯する権利
は、これを侵してはならない。
1787年に制定されたアメリカ合衆国憲法は、1791年に人民の権利を定める10条の修正(権利
章典)が加えられ、第2条で武器を所持する権利を定めた。この条項が銃規制反対派の論拠となっ
ているが、相次ぐ銃犯罪で、解釈について様々な議論を呼んでいる。
コ ネティカットの事件の記憶が薄れないうちに、という銃規制派の動きは急だ。その筆頭は歴代で
「最も銃を嫌う大統領」といわれるオバマ大統領。州単位でもカリフォルニア州議会議員が7日、銃
販売店によるすべての販売歴の届け出や、購入者の身分証明書提出の義務付けなどを柱とした規
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制強化法案を提出。2年前にアリゾナ州の銃乱射で重傷を負ったガブリエル・ギフォーズ前下院議
員が元宇宙飛行士の夫マーク・ケリー氏と、銃犯罪撲滅を目指す団体を8日に立ち上げた。こうした
動きが支持を得るかどうか、市民の意識の変化が注目される。
銃規制について話すバイデン副大統領。
オバマ大統領は銃規制の大統領令発令を検討している=ロイター
今でも銃を自由に買えるわけではない。事件のあったコネティカット州の銃所持に関する規制法
は、全米でも厳しい分類に入る。それでも事件は起こった。
■犯罪抑止する社会構造を
このため、まず犯罪を生む社会構造を変えなくてはという声も高まっている。数年前、養父を何者
かに銃で撃ち殺されたニューヨークの女性弁護士(28)は「どんな厳しい法律があっても、人を殺し
たいという人は人を殺す」と話す。彼女の養父は、自動車内で友人を待っていたところ、何者かに頭
部を撃たれて死亡した。犯人はいまだ捕まっておらず、警察の話では暴力組織が度胸試しで無差
別発砲したのではないか、ということだったという。
彼女は「米国の犯罪は、銃の有無より、もっともっと根深い問題だ」と話す。「コロンバイン高校の
銃乱射事件(1999年、15人が死亡)の犯人は、爆弾も作っていた。この爆弾はスーパーで買える
ような素材で作れるもの。そのありきたりな素材を全て廃止することなどできない。銃も同じだ。問
題 は、なぜ、人がこういった凶悪犯罪を起こすのか、だと思う。今の社会は、人を殺すビデオゲー
ムや映画であふれている。こうした、暴力にあふれた社会を見直し、犯人の精神構造なども解明し
ない限り、なにを規制しても、こうした犯罪は起こり続ける」と指摘する。
多くの米国民は自衛のために銃を所持している=ロイター
日本在住のある米国人男性(30)も「狩猟用ライフルと、人を殺すために作られた小銃を一緒に考
えてはならない。自動小銃などは、銃所持禁止の日本と同じレベルに規制すべきだ。それに加え、
貧困を減らし教育水準を高めるなどより安全な社会を構築すべきだ」と話す。
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記者が米国の高校に通っていた14年前、社会科のクラスで銃に関するディベートをした際の教師
の発言を思い出した。
「もし、警察が駆けつけるまで30分以上かかり、隣の家まで数キロ離れているような状況で、強盗
があなたの家に押し入ろうとしていたら、あなたはどうしますか。それでも、銃なしで自分の身を守
れますか――」
銃を持つ恐怖と持たない恐怖の間で、米国の市民はなお揺れ動いている。
(電子報道部 岸田幸子)
ヨシダコメント:
本稿の(上)は本コラムNo.1034:「米国市民に聞いた銃の購入、所持、保守管理の実際銃社会
の住人の本音(上)」(2013年1月15日)です。・・・・よ~く覚えていたでしょう!エっへへ・・・。
No.1027:「米で進む「学校の武装化」乱射事件から1カ月(フィリピンでは武装化が常態化) 」でも
コメントしていますので、今回はやめときます。本稿のカッコ内タイトルはヨシダ引用です。
No.1(1-300)
No.2(301-400)
No.7(996-1100)
No.3(401-500)
No.4(501-700)
No.8(1101-1300)
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No.5(701-900)
No.6(901-996)
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