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NICによる音響用活性フィルターの構成
3 − 3 − 15 NICによる音響用活性フィルターの構成* 山崎芳男 大塚隆夫(早稲田大学理工学部) 1. まえがき 一般に音響用フィルターとしては、誘導M型や定K型あるいはワグナー近似によるフ ィルターなどが使われている。これらはいずれもLCフィルターであり、音響帯域特に 低域においてはコイルの大きさ重量ともに大となる。ところでIC化された演算増幅器 等でRC活性回路を作り、これにより等価もLC回路を構成すれば小形軽量のフィルター が実現できるはずである。 また一般にコイルの損失はコンデンサーのそれに比較して大 きいので、この点からも RC 活性フィルターは有利である。このたび活性回路に NIC f0 Q (Negative Inpedabce Converter)を使った、 および 連続可変の分析用バンドパ スフィルターを設計、 試作したのでここに報告する。 2. フィイルターの構成 良く知られているように、NICとは一方の端子から見たインピーダンスが、他のニ 端子に接続したインピーダンスを負にしたような特性を示す四端子装置のことである。 即ちNICの負荷に Z 2を接続したとき、入力インピーダンス Z1は、 となる。 Z1 = −kZ 2 このとき を NIC の変換比という。NIC はその特 k 性から明らかなように、 ニ組の端子間の電流または電 圧を反転させる素子である。 NICは高利得、差動入力の演算増幅器を使用して 図1のように構成した。ここで増幅器への電流流入が E1 = E 2 I 1 R1 = − I 2 R2 ないものとすると、 より 従って、 Z1 = E1 R E R = − 2 ⋅ 2 = − 1 Z2 I1 R2 I 2 R2 図 1.演算増幅器による NIC の構成 k = R1 / R2 となり、図1の回路は変換比 なる電流反転型NICを構成していることがわ かる。 E 2 / E1 次に図2に示すような回路構成を行い、電圧伝達函数 を求めると、 sC1G1 E2 aC1 + G1 = sC1G1 E1 −k + sC 2 + G2 aC1 + G1 −k = 図 2.NIC によるバンドパスフィルターの構成 − skC1G1 s C1C 2 + s (C1G1 + C 2 G2 − kC1G1 ) + G1G2 2 …(1) s (1)式の分母において k は の一次の項にのみ ある。従ってこの回路はバンドパスフィルタ ω0 ω 02 = G1G2 / C1C 2 ーを構成し、 は で決 *Active oFilter for Audio Frequency consisting of Negative Inpedance Converter. By Yoshio Yamasaki and Takao Otsuka (Waseda University). 日本音響学会講演論文集 昭和 45 年 10 月 ―351― Q k り、 に依存しない。 いい換えると k を変化させることにより、フィルターの を周 波数と全く独立に変化可能なことを示している。さて(1)式において、 C1 = C2 ≡ C ω 0 = 1 / CR G1 = G2 = 1 / R E 2 / E1 は とすると、 となり、 伝達函数 − sω 0 k E2 = 2 E1 s + sω 0 (2 − k ) + ω 02 ω0 GV = k /( 2 − k ), となり、 における利得 Q = 1 /( 2 − k ) となる。 具体的に中心周波数 10 Hz ~ 20 KHz , Q が 2 ∼ 100 の範囲で連続変化可能ば分析用 フィルターを設計すると、 CR = 16 ×10 −2 ~ 0.8 × 10 −5 , k = 1.50 ~ 1.99 となる。従っ て図3のように各定数を定めればよい。 図 3.活性フィルターの素子定数 3.測定への応用 Q 図3のパンドパスフィルターは(2)式からもわかるように、 を変えると利得も変化し てしまう。これは定量測定には不向きなので、測定にあたっては図4の如くフィルター の前段に減衰器を設け、その減衰度を Q フィルターの 変化に連動させて変化 f0 させ、系全体における の利得を常に 1に保たせる。 一方、1/3 オクターブ幅フィルター は、図 3 に示すような活性フィルター を 3 個程度使い、各々の中心周波数を 図 4.実用フィルターの構成 若干ずらし従続接続することにより実 現可能である。 4.むすび 図 4 に示すフィルターを試作したところ、その特性図 5 のようになり、ほぼ満足す べき結果といえよう。このフィルターの特長 は小型軽量であることはもちろん、 f 0 および Qが独立にしかも連続的に変化できる点であ ろう。活性フィルターは今度、制御用素子と して広く使われるものと思われる。 最後に常に適切助言を下さった伊藤毅教 授および平田能睦氏に心より謝意を表しま す。 図 5.フィルターの特性 参考文献 J.G.Linvil: RC Active Filter; Proc. IRE, 42, 3, p.37, 1954. 日本音響学会講演論文集 昭和 45 年 10 月 ―352―