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報 告 書 - 経済産業省

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報 告 書 - 経済産業省
平成20年度経済産業省委託調査
3Rシステム化可能性調査事業
-鉄鋼業における植物由来廃棄物を原料としたバイオ
コークスの活用法と循環システム構築に係る調査-
報
告
書
平成 21 年 3 月
株式会社 建設技術研究所
本業務は、経済産業省製造産業局鉄鋼課製鉄企画室の委託により株式会社建設技術
研究所が実施したものである。
管理技術者、担当技術者などは以下のとおりである。
【受託者】
株式会社 建設技術研究所(担当窓口:東京本社社会システム部資源循環室)
東京都中央区日本橋浜町3-21-1 日本橋浜町 F タワー
電話(代表) 03-3668-4171,FAX 03-5695-1905
【担当者】
管理技術者:岡田敬志
照査技術者:西山勝栄
担当技術者:伊藤
明
萬條和広
山形英生
江副拓良
営業担当者:高倉逸朗
東京本社 社会システム部 資源循環室 主任技師
(技術士:衛生工学部門)
東京本社 社会システム部 資源循環室 室長
(技術士:建設部門)
東京本社 社会システム部 資源循環室 次長
(技術士:総合技術監理部門、建設部門、衛生工学部門)
東京本社 社会システム部 資源循環室主任技師
(技術士:衛生工学部門、環境計量士(濃度関係)
)
東京本社 社会システム部 資源循環室 主任技師
(技術士補:衛生工学部門)
東京本社 社会システム部 資源循環室
技師(技術士補:上下水道部門)
東京本社 営業部 東京事務所
【工期】
平成 20 年 10 月 30 日~平成 21 年 3 月 24 日
3Rシステム化可能性調査事業
-鉄鋼業における植物由来廃棄物を原料としたバイオコークスの活用法
と循環システム構築に係る調査-
目
次
1.調査事業の目的とアプローチ
1.1
調査事業の目的 ----------------------------------------------------1-1
1.2
調査事業のアプローチ ----------------------------------------------1-1
2.調査事業の概要
2.1
調査内容
2.1.1 バイオコークスの資源分野の実態 --------------------------------2-1
2.1.2 循環システム構築に向けた検討 ----------------------------------2-1
2.1.3 バイオコークス活用による期待効果 ------------------------------2-2
2.1.4 製鉄プロセスへの投入に際した課題 ------------------------------2-5
2.2
調査方法 ----------------------------------------------------------2-5
2.2.1 各種公表データ等の調査・分析 ----------------------------------2-5
2.2.2 ヒアリング調査 ------------------------------------------------2-6
2.2.3 検討委員会の設置・開催 ----------------------------------------2-6
2.2.4 運営委員会及び展示会(エコプロダクツ2008)への対応 --------2-7
3.バイオコークスの資源分野の実態について
3.1
バイオコークス ----------------------------------------------------3-1
3.1.1 バイオコークスとは --------------------------------------------3-1
3.1.2 バイオコークスの製造方法 --------------------------------------3-3
3.1.3 バイオコークスの特徴と位置づけ --------------------------------3-6
3.2
原料として期待される植物由来廃棄物の状況 --------------------------3-8
3.2.1 バイオコークス原料の条件 --------------------------------------3-8
3.2.2 植物由来廃棄物の発生状況と利用状況 ----------------------------3-9
3.2.3 利用可能な植物由来廃棄物の検討 --------------------------------3-16
3.2.4 利用可能な植物由来廃棄物の将来推計 ----------------------------3-18
4.循環システムの構築に向けた検討
4.1
バイオコークスによる循環システムの構築 ----------------------------4-1
4.1.1 バイオコークス循環シナリオ ------------------------------------4-1
1
4.1.2 植物由来廃棄物別の資源特性と供給能力 --------------------------4-3
4.2
循環システムの構築に向けた課題と解決方法 --------------------------4-5
4.2.1 バイオコークス循環システムの課題と解決方法 --------------------4-5
4.2.2 法令・制度面の課題と解決方法 ----------------------------------4-8
4.3
バイオコークス循環システムの将来像 --------------------------------4-12
4.3.1 林地残材等の未利用バイオマスの利活用と林業と鉄鋼業の連携 ------4-12
4.3.2 鉄鋼業の排熱の有効利用による省エネルギーと温暖化対策の推進 ----4-13
4.3.3 低環境負荷、低 CO2 社会、省資源化社会に向けて-------------------4-14
5.バイオコークス活用による期待効果
5.1
経済的期待効果 ----------------------------------------------------5-1
5.1.1 FS 検討シナリオの設定 -----------------------------------------5-1
5.1.2 FS 検討条件の設定 ---------------------------------------------5-2
5.1.3
5.2
FS 検討結果 ---------------------------------------------------5-8
地球温暖化対策効果 ------------------------------------------------5-14
5.2.1 検討フロー ----------------------------------------------------5-14
5.2.2 検討条件の設定 ------------------------------------------------5-14
5.2.3 検討結果 ------------------------------------------------------5-16
5.3
課題の抽出と改善方法の検討 ----------------------------------------5-18
5.3.1 課題の抽出 ----------------------------------------------------5-18
5.3.2 改善方法の検討 ------------------------------------------------5-20
6.鉄鋼業におけるバイオコークスの期待効果と利活用に向けた課題
6.1
バイオコークスの期待効果 ------------------------------------------6-1
6.2
資源対応力面における現状の課題と期待効果 --------------------------6-2
6.2.1 鉄鋼業における原燃料需給の課題 --------------------------------6-2
6.2.2 植物由来廃棄物(バイオマス)における現状の課題と期待効果 ------6-3
6.3
温室効果ガス排出面の課題と期待効果 --------------------------------6-5
6.4
鉄鋼業におけるバイオコークスの代替可能性と課題 --------------------6-7
6.4.1 鉄鋼業におけるコークス利用用途 --------------------------------6-7
6.4.2 石炭及び石炭コークスの使用条件とバイオコークス特性 ------------6-11
6.4.3 バイオコークスのコークス代替可能性と課題 ----------------------6-13
6.4.4 バイオコークス製造の事業化のための課題と解決方法 --------------6-17
6.5
バイオコークス利活用に向けた技術開発及び資源開発 ------------------6-20
6.5.1 バイオコークスの技術開発要素 ----------------------------------6-20
6.5.2 バイオコークス原料の資源開発 ----------------------------------6-21
2
1 調査事業の目的とアプローチ
1.1 調査事業の目的
鋼材の世界的な需要及び生産の拡大により、近年、鉄鋼原料需給は逼迫し、その価格は高騰傾
向がある。特に、良質な原料ではその傾向が一層強く、鉄鋼業では従来、低品位原料の使用比率
向上により資源対応力強化に努めてきている【資源対応力強化】
。
また、我が国鉄鋼業の強みともなっている高炉法による製鉄プロセスでは、大量に石炭コーク
スを使用するため、構造的に二酸化炭素(CO2)が多く排出されることから早急に実践的な対応
が求められている【環境対応】
。
以上のような背景から、従来有効活用されていなかった資源を活用し、かつ、カーボンニュー
トラルである新原料『バイオコークス』は、2 つの課題を同時に解決し得るものとして有望視し
ているが、『バイオコークス』原料の回収から製造までの、いわゆる静脈ルートについては未整
備な状況にあり、製鉄プロセスで適用しようとする際、安定操業を行うに当たっての不安材料と
なる。
そこで、本調査事業では、次の4点について調査・検討を行う。
(1) バイオコークスの資源分野の実態について
(2) 循環システム構築に向けた検討について
(3) バイオコークス活用による期待効果について
(4) 製鉄プロセスへ投入した際の課題について
1.2 調査事業のアプローチ
調査事業のアプローチは、目的に取り上げた4項目の調査検討について、以下のアプローチに
より調査を行う。
(1) バイオコークスの資源分野の実態について
バイオコークスに利用可能な植物由来廃棄物は、発明者である近畿大学井田准教授のアド
バイスを得て、これまでの研究成果やバイオコークスの原料条件などに基づき抽出し、既存
文献調査により利用可能な植物由来廃棄物の全体量を把握するとともに、ヒアリングにより
発生源の実態を把握する。
(2) 循環システム構築に向けた検討について
バイオコークスの製鉄プロセスに対する供給ルートの持続性の検討項目は、植物由来廃棄
物の発生に依存する要素(季節性など)と循環システム(現状におけるリサイクルルート、
経済性、法制度など)に依存する要素がある。
これらの要素を踏まえ、循環システム構築に向けた課題を抽出し、課題解決方法について
提案する。
(3) バイオコークス活用による期待効果について
地球温暖化防止対策期待効果は、バイオコークスの代替により削減されるコークス等の削
減量を計算し、CO2 の排出量の収支を算出することで効果を把握する。
経済的期待効果は、バイオコークスの製造コストを求めた上で、廃棄物処理費の削減など
による効果を試算する。
1-1
(4) 製鉄プロセスへの投入に際した課題について
製鉄プロセスへの投入に際した課題については、使用を想定する製鉄プロセス箇所と代替
元資源特性を比較し、相違点を明らかにするとともに、バイオコークスを使用することのメ
リット・デメリットを整理する。
植物由来廃棄物の発生実態調査
製鉄プロセスに対する供給ルート
の持続性調査
植物由来廃棄物の発生
中間処理(焼却他)
リサイクル
バイオコークス製造
製品(肥飼料他)
製品(バイオコークス)
エネルギー回収
最終処分
製鉄プロセスへ投入した際の課題
特定・対策検討
市場へ(肥飼料等)
鉄鋼業(製鉄所他)
経済性の評価
廃棄物処理ルート
リサイクルルート
バイオコークスルート
地球温暖化防止対策としての期待
効果、経済的期待効果に関する調査
図 1.1 調査アプローチのイメージ
1-2
2 調査事業の概要
2.1 調査内容
2.1.1 バイオコークスの資源分野の実態
バイオコークスの原料となる植物由来廃棄物の現状を把握するため、調査は、以下の2点を実
施した。
(1) 原料となる植物由来廃棄物の資源量の把握
バイオコークスとして利用可能な植物由来廃棄物の把握は、近畿大学井田准教授の助言に
基づき、既存データベース等を用いての把握ならびに利用可能量の推計を行った。
調査は、白書ならびに既存データベースの調査を実施、植物由来廃棄物の種類別の賦存量、
利用可能量を把握するとともに、バイオコークスの製造歩留よりバイオコークスの資源ポテ
ンシャルを算出し、鉄鋼業へのバイオコークス利用量を想定し供給量を比較検討した。また、
それぞれの植物由来廃棄物が抱える課題を整理するとともにバイオコークス製造における課
題を整理し取りまとめた。
(2) 植物由来廃棄物のリサイクル・処理状況の把握
植物由来廃棄物のリサイクル・処理状況の把握は、(1) で把握した植物由来廃棄物の中か
ら、市場規模や実証試験の進捗状況、実現可能性などを考慮し以下の7種類の植物由来廃棄
物を抽出し調査対象とし、それぞれの植物由来廃棄物について文献調査ならびにヒアリング
を実施した。
製材所残材
農作物非食用部(もみ殻)
林地残材(間伐材等)
建設発生木材
茶殻・コーヒーかす
オカラ
堤防刈草
2.1.2 循環システム構築に向けた検討
循環システム構築に向けた検討は、2.1.1(2)で把握した植物由来廃棄物別のリサイクル処理状
況などから、循環システム構築の障害となっているボトルネックを把握するための調査を実施、
バイオコークスを製造することでどのような解決手段を示せるかについて検討を行った。
主な調査項目は、表 2.1 に示す。
2-1
表 2.1 循環システム構築のための調査内容
調査項目
植物由来廃棄物
発生状況
法的規制の状況
現状の収集運搬・
処分状況
バイオコークス製造にお
ける基本的条件と、バイオ
コークスに求められる要
求性能の把握
調査内容
調査対象の植物由来廃棄物について、発生量、発生の状況(大量
排出/小口)
、季節性、介在物の有無等について調査した。
調査対象の植物由来廃棄物の収集運搬・処分、リサイクルに関し
て適用される法的規制等について調査した。
現在の植物由来廃棄物の処理状況(自社処理/他社委託)
、リサイ
クル率、リサイクル用途、処理価格等について調査した。
バイオコークス製造における基本条件:植物由来廃棄物の含水
率、形状、荷姿、密度、前処理の有無(破砕・乾燥)等
要求性能:発熱量、元素組成、大きさ、物性等
2.1.3 バイオコークス活用による期待効果
バイオコークス活用による期待効果の調査は、経済的期待効果、地球温暖化対策効果、につい
て実施した。
(1) 経済的期待効果
経済的期待効果は、バイオコークス製造に係る一連の費用を算出し、バイオコークスの製
造原価を算出するとともに、還元材・熱源等に用いられる化石燃料における位置づけを示し
た。また、植物由来廃棄物の廃棄物処理を行っている場合や逆有償取引を行っている場合は、
廃棄物削減を処理コスト削減として経済的期待効果とした。林地残材等については、CO2 の
排出削減量を排出権クレジットに換算し経済的期待効果とした。
バイオコークスの製造プラントは、NEDO で研究開発が行われている実証プラント※をベ
ースとして、用益及びイニシャルコストは NEDO の研究開発における開発目標値を基準とし
た。表 2.2 に基準としたバイオコークス製造プラントの仕様を示す。
※(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の平成19年度イノベーション実用化開発費助成金(大学発事
業創出実用化研究開発事業、通称:NEDO マッチングファンド)「鋳造コークス代替となる高硬度固形バイオ燃料の量産機
開発と実証」
2-2
表 2.2 基準としたバイオコークス製造プラントの仕様(10t/24h プラント)
項
目
能力
機器仕様
用益
設置面積(建物仕様)
運転日数
点検
補修費
運転人員
主要付帯機器
オプション
価格(戦地工事費込み)
条 件
10t/24h(バイオコークス製造プラント入口ベース)
※乾燥・粉砕後のバイオコークス原料
バイオコークス製造装置
56 ユニット
(縦型シリンダー:ホットプレス)
1ユニットで直径 10cm×長さ 1m のバイオコークスが1サイク
ル1時間で製造される
冷却水(循環式:チラーで冷却)
熱媒体(鉱油:循環式)
消費電力 340kw
W50m×D15m×H15m
年間 300 日
年2回
イニシャルコストの2%(想定)
管理者:1名
運転員:2名(2交代)×4班
メンテナンス員:1名
天井クレーン、原料投入ホッパー、製品搬送コンベア、製品落と
し割り装置
乾燥装置(植物由来廃棄物の種類により設置)
粉砕装置(植物由来廃棄物の種類により設置)
100,000 千円/10t(NEDO 研究の目標値)
(データは、近畿大学井田准教授提供)
(2) 地球温暖化対策効果
地球温暖化対策効果は、バイオコークス製造から使用に至るまでの CO2 発生量を計算、コ
ークス置き換えに伴う CO2 削減量と比較し地球温暖化対策効果とした。
林地残材においては、
森林吸収量の検討も合わせて行い、地球温暖化対策効果として加算した。
計算にあたっては、植物由来廃棄物からバイオコークスの消費地までの一連のプロセスの
フロー・計算シートを表計算ソフトにて作成、シートにパラメータを入力することで物質収
支と用益収支、エネルギー収支、CO2 収支を求めた(図 2.1)
。
計算は、輸送に消費する軽油の使用量、原料を乾燥するための灯油の使用量、バイオコー
クスを製造するための粉砕処理ならびにバイオコークス製造プラントにおける電気使用量を
資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」の標準発熱量表を使用し熱量に換算、エネルギー
収支を求めるとともに、環境省「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル」に従い CO2 排
出量を算定、バイオコークス製造における CO2 収支を算出しコークスの CO2 発生量と比較し
た。
2-3
輸送(
4
tトラック)
積載重量
積載量
収集必要台数
1台あたり収集距離
総延長距離
軽油消費量(輸送)
換算熱量(輸送)
4
12.6
3
0
0
0.00
0
※想定4tトラック荷台積載イメージ
D
W
H
6 m×
2.1 m×
t
t
台
km
km
L
MJ
1 m=
12.6 m3
※空車回送は算入していません
植物由来廃棄物(入荷品)
全量
(内水分)
(内乾量)
含水率
粒度
比重
35,000
28,000
7,000
80%
0.0005
1
kg
kg
kg
m/m
自然乾燥条件
乾燥後含水率
蒸発量
蒸発潜熱
(単位あたり)
自然乾燥
80%
0 kg・H2O
0 MJ
0.00 MJ/kg
植物由来廃棄物(自然乾燥後)
全量
(内乾量)
(内水分)
含水率
粒度
比重
35,000
7,000
28,000
80%
0.0005
1
kg
kg
kg
m/m
乾燥・粉砕条件設定セル
乾燥
1
粉砕
0
消費電力参照セル 2400
前処理プラント
乾燥を行う場合
粉砕を行う場合
機械乾燥
蒸発量
蒸発潜熱
単位あたり乾燥必要熱量
27,222 kg・H2O
61,413 MJ
1.75 MJ/kg
全量
(内乾量)
(内水分)
(入荷品基準)
乾燥機効率
乾燥必要熱量
燃料使用量
粉砕
乾燥後原料
乾燥熱源
含水率
比重
粒度
7,778
7,000
778
10%
0.7
0.0005
粉砕後植物由来廃棄物
kg
kg
kg
全量
比重
粒度
粉砕能力
消費電力
消費電力量
換算熱量
m/m
消費電力
消費電力量
換算熱量
バイオコークス投入前原料
全量
7,778 kg
778 kg
10%
1.4
(内水分)
含水率
比重
基数
1基
余剰原料 -2222.2 kg
余剰原料 -29%
(投入前原料基準)
バイオコークス発熱量
22
MJ/kg
バイオコークス製造プラント
投入原料
歩留
7777.78 kg
100%
プラント稼働率
77.8%
バイオコークス
バイオコークス製造で得られるエネルギー
バイオコークス熱量
エネルギー出力計
全量
バイオコークス
0
0
102,356
0
12,269
644
115,269
MJ
MJ
MJ
MJ
MJ
MJ
MJ
1tあたり
0
0
13,160
0
1,577
83
14,820
7,778 kg
778 kg
10%
1.4
171,111 MJ
(内水分)
MJ
MJ
MJ
MJ
MJ
MJ
MJ
含水率
比重
発熱量
171,111 MJ
171,111 MJ
22,000 MJ
22,000 MJ
積載量
台数
輸送距離
延べ輸送距離
換算熱量
55,842 MJ
55,842 MJ
燃費
軽油熱量
4.15 km/L
38.2 MJ/L
省エネ法に基づく(10t車)
省エネ法に基づく
※空車回送は算入していません
輸送(10tトラック)
積載重量
軽油消費量
正味利活用エネルギー
正味利活用エネルギー
正味利活用エネルギー(自然乾燥除外)
7,778
10
1
70
70
16.8675
644.337
kg
t
台
km
km
L
MJ
7,180 MJ
7,180 MJ
消費地(製鉄所)
温室効果ガス収支表(バイオコークス生産量あたり)
バイオコークス製造で発生するCO2
原料収集CO2
乾燥必要CO2(灯油換算)
粉砕動力換算CO2
バイオコークス製造プラント動力CO2
バイオコークス輸送CO2
発生CO2計
kg/h
100 kw
0 kwh/日
0 MJ
バイオコークス製造プラント動力
36.7 MJ/L
※このセルは自動計算されます。
エネルギー収支表(バイオコークス生産量あたり)
製造に消費するエネルギー
原料収集エネルギー
自然乾燥蒸発潜熱
乾燥必要熱量
粉砕動力換算熱量
バイオコークス製造プラント動力換算熱量
バイオコークス輸送エネルギー
エネルギー入力計
0
※粉砕を行わない場合は、消費電力を0にしてください
60%
102,356 MJ
2,789 L(灯油換算)
蒸発潜熱(水1kg)
2.256 (MJ/kg)
灯油熱量
粉砕動力
7,778 kg
0.7
0.0005 m/m
バイオコークス
0.00
6.94
0.00
1.89
0.04
8.88
t・CO2
t・CO2
t・CO2
t・CO2
t・CO2
t・CO2
1tあたり
0.000
0.893
0.000
0.243
0.006
1.142
t・CO2
t・CO2
t・CO2
t・CO2
t・CO2
t・CO2
バイオコークスを使用することでカーボンフリーとなるCO2
コークス置き換え削減CO2
18.45 t・CO2
カーボンフリーCO2計
18.45 t・CO2
2.372 t・CO2
2.372 t・CO2
コークス製造時における発生CO2
コークス製造時発生CO2
4.2572 t・CO2
0.547 t・CO2
CO2収支
CO2収支(+でバイオコークス使用メリット)
13.82 t・CO2
1.777 t・CO2
※本計算では、カロリーを等しくした場合の石炭コークス削減のCO2を計算しています
(バイオコークスの燃焼に伴うCO2発生は、カーボンフリーとして算入していません)
※CO2排出係数(環境省温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度に基づく)
電気
0.00056 CO2/kwh
灯油
0.0185 tC/GJ
0.00007 tCO2/MJ
軽油
0.0187 tC/GJ
0.00007 tCO2/MJ
コークス 0.0294 tC/GJ
0.00011 tCO2/MJ
バイオコークス-コークス換算計算
7.8 tあたり 171,111 MJ
バイオコークス熱量
バイオコークス熱量(1kg)
22 MJ/kg
コークス熱量
29.1 MJ/kg
コークス熱量
7.8 tあたり 226,333 MJ
換算係数
0.76
(バイオコークス1tに対しコークス0.76t)
コークス発生CO2
コークス
7.8 tあたり
24.40 t・CO2
コークス製造時発生CO2
コークス
1 kgあたり
0.724 kg・CO2
1 tあたり
0.724 t・CO2
8 tあたり 5.63111 t・CO2
図 2.1 バイオコークス物質収支・エネルギー収支・CO2 収支計算シート(例)
2-4
142 kw
3,408 kwh/日
12,269 MJ
2.1.4 製鉄プロセスへの投入に際した課題
バイオコークスを使用した場合における製鉄プロセスへの投入に際した課題は、以下のとおり
調査した。
(1) バイオコークスの特徴の整理と比較
バイオコークスが持つ特徴(成分、燃焼特性、強度等)を整理し、鉄鋼業で使用されるコ
ークスとの比較を行った。
(2) 製鉄プロセスへの利用可能性の検討
製鉄プロセスとコークス利用状況を整理し、各製鉄プロセスにおいてバイオコークスの利
用可能性を検討した。
また、利用が難しい場合の課題の整理と解決策の提示、利用拡大への方策について検討し、
今後のバイオコークスの開発フェーズを明らかにした。
2.2 調査方法
2.2.1 各種公表データ等の調査・分析
バイオコークスに利用可能な植物由来廃棄物の調査は、既存文献調査や既存データベースの調
査を中心に実施した。調査した文献・データベースは、以下のとおりである。
「食品循環資源の再生利用等実態調査報告 農林水産省統計部」
2007 年版エネルギー白書(資源エネルギー庁)
平成 20 年度環境・循環型社会白書(環境省)
平成 20 年度版 森林・林業白書(林野庁)
(平成 11 年~平成 20 年度)食料・農業・農村白書(農林水産省)
バイオマス・ニッポン総合戦略(農林水産省)
バイオマス賦存量/利用可能量の推計 GIS データベース(新エネルギー産業技術総合
開発機構)
バイオマスニッポンヘッドクォーター統計資料((株)東大総研)
「バイオマス賦存量・利用可能量の推計~GIS データベース~ 新エネルギー産業技
術総合開発機構」
その他資料(国立国会図書館での文献検索、インターネット調査他)
これらの統計から、バイオコークスに利用可能な植物由来廃棄物発生量を把握、整理した。将
来の発生量の推計は、整理したデータを基に、回帰計算により 10 年後の植物由来廃棄物発生状
況を推測した。
2-5
2.2.2 ヒアリング調査
(1) 植物由来廃棄物排出者等へのヒアリング(個別の植物由来廃棄物を対象)
植物由来廃棄物の排出状況の実態を把握し、植物由来廃棄物の課題やバイオコークスの経
済的期待効果を明らかにするため、ヒアリングは、植物由来廃棄物の発生源や取り扱ってい
る事業者を対象に実施した。
ヒアリング内容:個別の植物由来廃棄物の排出状況と処理状況の現状把握、廃棄
物処理価格、現状におけるリサイクルの課題等
ヒアリング先:森林組合、農協、食品メーカー、産業廃棄物処理会社等
(2) 電気炉メーカーヒアリング
電気炉メーカーへのヒアリングは、電気炉製鉄におけるバイオコークスの利用拡大の可能
性を把握するため実施した。
2.2.3 検討委員会の設置・開催
「バイオコークスの利用可能性」と「バイオコークス循環システムの課題検討」及び「製鉄プ
ロセスにおける利用用途の検討」を議論するため、検討委員会を設置、3回の検討委員会を開催
し議論を行った。
各検討委員会の議題は表 2.3 に、検討委員会委員名簿は表 2.4 に示す。
表 2.3 各検討委員会における議題
検討
委員会
第1回
開催日時
場所
議題
議題1.「委員会の目的と検討方針について」
議題2.
「バイオコークスプレゼンテーション」
(井田委員
平成 20 年 12 月 17 日
(水)
より)
9:30~12:00
議題3.
「バイオコークスの活用法と循環システム構築に
経済産業省 17 階
関する既存文献調査」
第 6 共用会議室
議題4.
「鉄鋼業におけるバイオコークスの活用法と循環
システム構築について」
議題1.
「バイオコークスの製鉄プロセスにおける利用に
第2回
平成 21 年 1 月 27 日(火)
ついて」
9:30~12:00
議題2.
「バイオコークスの原材料とヒアリング調査内容」
経済産業省別館5階第5
議題3.
「バイオコークスの循環システムの概要」
26会議室
議題4.
「林地残材の利用課題」
(石島委員より)
第3回
平成 21 年 3 月 10 日(火)
議題1.
「ヒアリング調査結果」
9:30~12:00
議題2.
「バイオコークス利活用のための循環システム」
経済産業省別館10階
議題3.
「バイオコークスの事業化方策の検討」
1031号会議室
2-6
表 2.4 検討委員会名簿
氏
名
役職
所
属
有山 達郎
教授
東北大学多元物質科学研究所
附属資源変換・再生研究センター
石島 操
代表理事専務
全国森林組合連合会
井田 民男
准教授
大迫
政浩
室長
独立行政法人国立環境研究所
循環型社会・廃棄物研究センター
循環技術システム研究室
熊崎
実
名誉教授
筑波大学
松村
幸彦
教授
広島大学大学院工学研究科
機械システム工学専攻
森澤
克彦
事務局次長
社団法人日本有機資源協会
米澤
公敏
部長
新日本製鐵株式會社
技術総括部
近畿大学理工学部機械工学科
2.2.4 運営委員会及び展示会(エコプロダクツ2008)への対応
経済産業省リサイクル推進課が委託し実施した、「3Rシステム化可能性調査事業」の運営委
員会に出席し本調査事業の主旨ならびに進捗説明を行った(表 2.5)。
表 2.5「3Rシステム化可能性調査事業」の運営委員会説明・報告内容
運営委員会
日時
説明内容
第1回
平成 20 年 10 月 31 日
1.業務計画書(実施計画書)の説明
第2回
平成 21 年 1 月 22 日
1.FS調査の概要説明
2.FS調査の進捗状況と今後のスケジュール
3.課題及び論点等
第3回
平成 21 年 3 月 10 日
1.FS調査に関する最終報告
また、「3Rシステム化可能性調査事業」において企画された、環境展示会「エコプロダクツ
2008(平成 20 年 12 月 11 日~13 日:東京ビックサイト)」への出展は、本調査の主旨を記載し
たパネルを展示した(図 2.2)。
2-7
図 2.2 エコプロダクツ 2008 展示パネル
2-8
3
バイオコークスの資源分野の実態について
3.1 バイオコークス
3.1.1 バイオコークスとは
バイオコークスは、バイオマスから作られる固形の新エネルギー源であり、様々な利用用途が
期待されている。開発意図は、植物由来廃棄物の有効利用およびカーボンニュートラルの特性を
生かした熱源やコークス代替材としての利用である。
バイオコークスは、ほぼすべての光合成由来の植物性廃棄物から製造可能である。これまで実
証された原料には、お茶がら、コーヒーかす、もみ殻、豚糞、木くず(コナラ、サクラ)、のこ
ぎり屑、樹皮、リンゴの皮、バナナの皮、焼酎かす、おから、葦などがある。
バイオコークスの特徴は、以下のとおりである。なお本章の内容は、近畿大学井田准教授の研
究成果ならびに(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の平成19年度イノベー
ション実用化開発費助成金(大学発事業創出実用化研究開発事業、通称:NEDO マッチングフ
ァンド)「鋳造コークス代替となる高硬度固形バイオ燃料の量産機開発と実証」を踏襲する。
(1) バイオコークス技術の特長
バイオコークス技術の特長は、以下のとおりである。
① 植物由来廃棄物を植物が持つリグニン、セルロース、ヘミセルロースで結合さ
せた新しいコンセプトの原燃料であり、炭化していない分、木炭などでは利活
用できない揮発成分のエネルギーを利活用できるため、エネルギーの有効利用
ができる。
② 生産工程においてごみ(残渣)が発生しない(理論上歩留まり 100%)
。
③ カーボンニュートラルによる CO2 削減効果がある。
④ 比重(密度)が 1.3~1.4 と木くず等の木質バイオマス(杉材で 0.4 程度)に比
べ高く、バイオコークスを製造することにより輸送効率を上げることができる。
⑤ 吸水・腐敗せず、長期間の保存が可能である。
⑥ 冷間強度が高い(200MPa:石炭コークスの 10 倍)
。
⑦ 木くず、紙くずなどに比較して着火性が低く緩やかに燃焼する。
(2) バイオコークスの利活用への期待
鉄鋼業では、前々章に示した背景から早急に実践的な二酸化炭素(CO2)対策が求められ
ている状況である。
このような中で、バイオコークスを利活用することができれば、鉄鋼業において
① カーボンニュートラルによる CO2 排出量の削減
② 鉄鋼業における廃棄物の有効利用による環境貢献
③ 既存設備の転用が検討でき、安価な設備投資での対策可能性
といった効果が期待できる。
さらに、バイオコークスの利活用による波及的な効果として、以下の効果が期待できる。
① 石炭などの化石燃料の節約
② CO2 排出削減による地球温暖化防止効果
3-1
③ 未利用植物由来廃棄物の有効利用により廃棄物削減等環境負荷低減
④ バイオマス資源排出者との win-win 関係の構築
⑤ 国内で炭素循環が行われることにより海外からの温室効果ガス排出権購入の削
減が図れる
以上の効果ならびに冷間強度や比重などの特徴により、バイオコークスは、特に鉄鋼業
のコークス代替材料、熱源代替材料として期待されている。
(3) バイオコークスの性状等
バイオコークスの性状は、以下のとおりである(表 3.1)。
表 3.1 バイオコークスの性状
指標項目
重量(炭素)収率
発熱量
見かけ比重
初期強度-最高圧縮強度
灰分
サイズ
内容
ほぼ 100%
約 5,000kcal/kg
(炉内で炭化が進行するに従い、8,000 kcal/kg 相当に変化)
1.3~1.4
(木質の真比重に漸近)
40~200 MPa
(参考:石炭コークス 20MPa)
数%
基本形:円柱形(長さはフレキシブル)
鋳造用:φ50~φ100mm
高炉用:φ30~φ60mm
出典:高温学会 第 1 回高温環境セミナー(H20.10.6)配付テキスト
図 3.1 バイオコークスの外観
(出典:近畿大学リエゾンセンターKLC/NEWS2008 年新春号)
3-2
3.1.2 バイオコークスの製造方法
(1) 原理
バイオコークスの製造原理は、植物由来廃棄物が持つリグニン、セルロース、ヘミセルロ
ースを加熱することで架橋させ、高分子の縮合度を上げることにより強度と密度を上げるこ
とである。また、加圧することで植物由来廃棄物の間の空隙が充填されることにより、密度
が上がり植物由来廃棄物の欠点の一つである、エネルギー密度(体積あたりのエネルギー量)
を解決することができる。
バイオコークスの製造原理は、図 3.2 に示す。
<木材:バイオマスの骨格成分>
□ セルロース繊維
□ ヘミセルロース
□ リグニン
(C,H,O による主要3成分)
<バイオコークス作製時>
・ヘミセルロースが融解しセルロース繊
維を熱可塑的にバインドする。リグニン
分子内で自己縮合また、リグニンポリマ
ー単位間で熱硬化的な架橋が生じる。
・セルロース繊維をリグニンがバインす
ることにより木材繊維を形成する。
出典:近畿大学井田准教授提供資料
図 3.2 バイオコークスの製造原理
3-3
(2) 製造工程
バイオコークスの製造工程のイメージは、図 3.3 とおりである。本プロセスは、セラミッ
クスの成形等に用いられるホットプレス法の応用であり、工程の内容は、表 3.2 に示す。
バイオコークスの製造工程のイメージ
1.充填過程
2.加圧過程
3.加熱過程
4.冷却過程
出典:近畿大学井田准教授提供資料
図 3.3 バイオコークスの製造工程のイメージ
表 3.2 バイオコークス製造工程と内容
製造工程
内容
1.充填過程
数ミリ角に粉砕した原料をシリンダー内に充填する。
2.加圧過程
ピストンにより原料を圧縮する。
3.加熱過程
圧縮した状態のまま、約 200℃の加熱を 30 分行う。
4.冷却過程
圧縮した状態のまま常温まで冷却し、冷却後取り出す。
3-4
(3) 製造装置の仕様
バイオコークスの製造装置の仕様は、近畿大学資源再生研究所(北海道恵庭市)にあるバイオ
コークス量産試験機(図 3.4)と開発中の 10t/日量産機の仕様を表 3.3 に示す。
図 3.4 量産試験機の全景
表 3.3 量産試験機と量産機(開発中)の仕様
製造能力
加熱方式
操作方式
加圧方式
成型条件
形状
量産試験機
製造実績としては、108kg/10h(原
料手投入の場合)
熱媒式(熱媒/冷媒切替)と電気ヒー
ター式の並列
原料投入:手投入
熱媒方式:加熱-冷却制御、加圧-
排出制御
電気ヒータ方式:ヒータブロック設
置・取外、加圧-排出制御
加圧方式:油圧ピストン(高速/低速
切り替え)
水分調整したバイマス粉体を原料と
し、約20MPa(約 200kg/cm2)
で加圧 160~230℃に加熱・保持後、
冷却して、成型する。
バイオコークスの成型形状:100mm
φ×100-650mmL において、1
本あたりの重量:約1~6.3kg/
本
10t/日規模量産機(開発中)
10t/24h
熱媒式(熱媒/冷媒切替)
原料投入:自動投入
制御方式:加熱-冷却制御、加圧-排出
制御
同左
同左
100mmφ×1000mmL
出典:近畿大学井田准教授提供資料
3-5
3.1.3 バイオコークスの特徴と位置づけ
(1) バイオコークスの特徴
バイオコークスの特徴は、表 3.4 に示す。バイオコークスのエネルギー的位置づけは、重量あ
たりエネルギーが木質ペレット相当、体積あたり熱量がコークスを上回る。
表 3.4 バイオコークスの特徴
特徴
成分構成
バイオコークスの
熱分解特性
バイオマスの
リサイクル性
バイオコークスの
生成条件
バイオコークスの
圧縮特性
内容
植物由来の3成分で構成される。また、植物由来であるため硫黄が
少ない特徴を持つ。
①セルロース(40%)
:極めて複雑な三次元構造 ⇒ 高硬度特性、
反応活性
②ヘミセルロース(30%)
:重合度 50~200・分岐した構造 ⇒ 接
着剤効果
③リグニン(25%)
:重合度 2,000~15,000・鎖状ポリマー ⇒ 初
期高硬度・高温硬度特性
バイオコークスは、植物系バイオマスが持つ 300℃近辺の熱分解
が生じず、600℃近辺で揮発分は直接ガス化する。
バイオコークス自体の製造歩留まりは 100%(但し、投入条件を
揃える必要がある)
生成温度:170℃~200℃前後
含水率:10~15%
生成圧力:20MPa 程度の圧力
(植物の種類などにより若干異なる)
一軸圧縮強度:200MPa 程度
重量あたり熱量
バイオコークスのエネルギ
備長炭
木炭/半炭化
コークス
Calorific density (MJ/kg)
ー的位置づけ
バイオコークス
木質ペレット
生 木
3
Calorific density(GJ/m )
3-6
体積あたり熱量
(2) 他の固形燃料との比較
バイオコークスと、その他の固形燃料との比較は、表 3.5 のとおりである。
バイオコークスの有位点は、見掛け比重が大きいこと、揮発分が多いこと、灰分が少ない
ことである。水分や N 分、S 分、灰分は比較対象の固形燃料に近い。
表 3.5 バイオコークスと他の固形燃料の比較*
バイオコークス
コークス
石炭
(一般炭)
木炭
発熱量 [kJ/kg]
20,900
31,350
24,280(褐炭)~
35,160(瀝青炭)
27,797~31,500
冷間強度 [MPa]
100~200
20
-
(木炭硬度 8~20)
見かけ比重
1.38
0.7
0.8
0.07~1.2
(真比重)
水分
3~10%
7~10%
(製鉄用微粉炭)
5~11%
N分
茶・コーヒー:2~3%
木材:0.2~1.0%
りんご:0.6%
2.2%
0.2~2%
-
S分
木材:0.7%
0.6~0.7%
0.2%~1.2%
-
C分
約
50%
ほぼ
0%
80~90%
55%~74%
70~80%
(灰分を除くほとんど) (産地・種類による) (固定炭素として)
灰分
3~5%
(種類による)
鋳物用:6~10%
高炉用:10~22%
5.9%~12%
(産地・種類による)
0.9~4.7%
揮発分
30~40%程度
(種類による)
5%以下
18%~37%
8.7%~24.5%
鋳物用:30-40%
高炉用:45-50%
-
約 40%
気孔率
ほぼ
0%
*第1回 高温・環境セミナー「新固形燃料を実用化するための要素技術と品質維持について」
(三菱重工環境エンジニアリング(株)
)より抜粋
木炭は、岸本他 日本林學會誌 Vol.34, No.8(19520825) pp. 251-253 、みなべ川森林組合ホームページを基
に作成
石炭は、(社)日本エネルギー学会編 コークスノート 2004 年版 を基に作成
3-7
3.2 原料として期待される植物由来廃棄物の状況
3.2.1 バイオコークスの原料の条件
バイオコークスに製造に適した原料の条件は、以下のとおりである。
(1) 成分
セルロース、ヘミセルロース、リグニンが含まれていること。あるいは、これを添加して
成型できること。これらは、植物の構成成分の大部分を占める(樹木で約 95%※)。これまで
の試験では、お茶がら、コーヒーかす、もみ殻、豚糞、木くず(コナラ、サクラ)
、のこぎり
屑、樹皮、リンゴの皮、バナナの皮、焼酎かす、おから、葦などの植物由来廃棄物で製造が
確認されている。ただし、これら植物系以外の成分(プラスチック等)が多く含まれると製
造に支障をきたすことが考えられる。
※
独立行政法人森林総合研究所 研究の”森”から 第 120 号
(2) 含水率
バイオコークス製造条件として、原料の含水率が 10~15%必要となる(重量百分率による
含水率:最適な含水率は、植物由来廃棄物の種類による)。これより含水率の多い植物由来廃
棄物は、事前に乾燥して含水率を調整することが必要である。
(3) 大きさ
バイオコークスの製造工程は、一軸圧縮による加圧と、200℃までの加熱工程とその後の冷
却工程で構成される。特に搬送ラインの詰まり解消や、バイオコークスの空隙(巣)解消の
ために、数ミリ角までの破砕が必要である。なお、一定の大きさ以上の植物由来廃棄物を細
かく破砕するためには、処理効率や刃の空隙の関係から一次破砕と二次破砕の2段階の破砕
が必要になると考えられる。
(4) 均質性と介在物
バイオコークス製造において原料の均質性と介在物は、条件の一つとなる(表 3.6)。安定
的かつ品質の良いバイオコークスを製造するには、均質性を保つとともに介在物を除外する
ことが必要となる。
表 3.6 成分、均質性と介在物による想定される事象
条件
均質性
介在物が含まれる
(塩分、硫黄分など)
プラスチックなど
の混入
条件が保てない場合に想定される事象
雑多な廃棄物でバイオコークスを製造する場合は、大量生産を
行うと原料組成が変動し、適切な製造条件から外れることによる
製造歩留まりの悪化(成型しない等)
。
バイオコークスの用途先の利用条件が制約される(銑鉄への影
響や設備の腐食など)
。
成形性の不良など。
3-8
3.2.2 植物由来廃棄物の発生状況と利用状況
表 3.7 に代表的なバイオマス資源の区分・内訳を示す。
表 3.7 代表的なバイオマス資源とバイオコークス製造可能性
廃棄物系バイオマス
種類
発生量
(万 t)
未利用バイオマス
バイオ
コークス
製造
可能性
家畜
排せつ物
8,700
◎
食品廃棄物
2,000
◎
黒液
(製紙工場廃液)
7,000
×
8,000
○
建設発生木材
470
◎
製材工場等
残材
440
◎
3,700
◎
1,400***
○
-
×
下水汚泥
廃棄紙
生ごみ
(厨芥)
廃食用油
種類
農作物非食
用部(稲わ
ら、麦わら、
籾がら等)
林地残材(間
伐材、被害木
等)
その他剪定
枝(果樹剪
定、公園剪定
等)
刈草(堤防、
道路法面等)
バイオ
発生量 コークス
(万 t)
製造
可能性
資源作物
1,400
◎
糖質資源
(サトウキビ等)
350
◎
でんぷん資源
(トウモロコシ等)
117**
○
油脂資源
(なたね等)
-
○
海草
◎:製造可能なもの(確認済)
、○:確認されていないが製造可能とされるもの、×:製造困難なもの
※資源作物は、バイオコークスの検討主旨から外れるため、調査対象としない。
参考:廃棄物系バイオマス発生量 30,310 万 t 、未利用バイオマス発生量 1,750 万 t(バイオマスニッポン総
合戦略 2007)
無印:バイオマスニッポン総合戦略推進アドバイザリーグループ第 10 回会合配布資料より、
**バイオマス賦存量/利用可能量の推計 GIS データベースより
***バイオマスニッポンヘッドクォーター統計資料より
バイオコークスとして利用可能な植物由来廃棄物の発生状況と利用状況は、「バイオマス・ニ
ッポン 総合戦略」をもとに、
「食品廃棄物」
、
「製材工場などの残材」、
「建設発生残材」、
「林地残
材」、
「農作物非食用部」を対象に以下の統計資料に基づき、発生状況および利用状況の推移を整
理した。
・食料・農業・農村白書(2006 年)
・バイオマスニッポン総合戦略(2006 年)
・バイオマスニッポン総合戦略推進アドバイザリーグループ第 10 回会合配布資料(2007 年)
図 3.5 に 2002 年及び 2005~2007 年の植物由来廃棄物の発生状況と利活用状況の推移を示す。
3-9
発生量は、食品廃棄物が最も多く、2,000 万t程度であり、合計は 4,500 万t程度である。2002
年から 2007 年まで発生量には大きな変動はない。
一方、利用量の合計は、近年増加傾向にあるが、1,500 万t前後である。
5,000
4,500
発
生
量
・
利
用
量
未利用量
3,500
3,000
2,500
[
2,000
1,500
1,000
500
食品廃棄物
製材工場
等残材
建設発生
木材
林地残材
農作物
非食用部
2006
2007
2007
2002
2005
2005
2006
2006
2007
2002
2002
2005
2006
2007
2007
2002
2005
2005
2006
2006
2007
2002
0
2002
2005
]
万
t
利用量
4,000
合計
出典:バイオマスニッポン総合戦略推進アドバイザリーグループ第 10 回会合配布資料
図 3.5 植物由来廃棄物の発生量と利用量
3-10
(1) 製材所残材
製材所残材は、95%が再利用されている。主な用途は、マテリアルリサイクルとして、敷
料、堆肥、チップ化されて木質ボードやパルプ原料に利用されているほか、サーマルリサイ
クルとして、木材の乾燥用熱源や、工場の稼動用電力需要をまかなうための燃焼やガス化に
1,000
発生量
利用率
100%
900
90%
800
80%
700
70%
600
60%
500
50%
400
40%
300
30%
200
20%
100
10%
0
利用率
発生量[万t]
よる発電・熱利用システムに利用されている。
0%
2002
2005
2006
2007
バイオマスニッポン総合戦略・食料・農業・農村白書を基に作成
図 3.6 製材工場等残材の発生量と利用率
(2) 農作物非食用部
農作物非食用部(水稲の稲わら・もみ殻等を含む)は、約 70%が未利用であり、利用部分
の 30%の内訳は、たい肥、飼料、畜舎敷料等である。未利用のほとんどが、収穫後のほ場へ
2,000
発生量
利用率
100%
1,800
90%
1,600
80%
1,400
70%
1,200
60%
1,000
50%
800
40%
600
30%
400
20%
200
10%
0
利用率
発生量[万t]
のすき込みである。
0%
2002
2005
2006
2007
バイオマスニッポン総合戦略・食料・農業・農村白書を基に作成
図 3.7 農作物非食用部の発生量と利用率
3-11
(3) 林地残材
林地残材の利用率は、非常に低く 1%程度であり、紙製品等の原材料としての僅かな利用
1,000
発生量
利用率
100%
900
90%
800
80%
700
70%
600
60%
500
50%
400
40%
300
30%
200
20%
100
10%
0
利用率
発生量[万t]
に留まっている。間伐材は、森林にそのまま放置される等、殆どが未利用という状況である。
0%
2002
2005
2006
2007
バイオマスニッポン総合戦略・食料・農業・農村白書を基に作成
図 3.8 林地残材の発生量と利用率
(4) 建設発生木材
建設発生木材は、『建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律』(通称:建設リサイク
ル法)、や『電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法』
(通称:RPS法)
が 2002 年に完全施行されたことを契機に利用率は、40%から 70%に向上している。利用用
1,000
発生量
利用率
100%
900
90%
800
80%
700
70%
600
60%
500
50%
400
40%
300
30%
200
20%
100
10%
0
利用率
発生量[万t]
途は、製紙原料、ボード原料、家畜敷料等のほか、熱源としても利用されている。
0%
2002
2005
2006
2007
バイオマスニッポン総合戦略・食料・農業・農村白書を基に作成
図 3.9 建設発生木材の発生量と利用率
3-12
(5) 茶がら、コーヒーかす
全国的な推計量については、NPO 法人日本炭化研究協会が発表している(図 3.10)。
出典:NPO 法人日本炭化研究協会ホームページ
図 3.10 茶がら、コーヒーかすの全国推計量
全国におけるお茶がら発生量は、2004 年でお茶がら 42.3 万トン、コーヒーかす 52.4 万ト
ンの合計 94.7 万トンが発生していると推計されている。
大手飲料メーカーが環境報告書等で公表しているお茶がら、コーヒーかす等の発生量とリ
サイクル率は、表 3.8 に示す。
表 3.8 大手飲料メーカーのお茶がら、コーヒーかすの発生量とリサイクル率
廃棄物発生量(t/年)
全体
内食品系
食品系全体
茶殻
コーヒーかす その他植物系
その他
食品系以外
リサイ
クル率
(%)
文献名
A社
119,000
91,000
B社
17,069
12,613.6
C社
19,497
10,788
8,709
D社
193,061
132,488
60,573
100 CSR 2008 HP
E社
97,000
58,000
100 環境報告書2008 HP
28,000
99.7 CSRレポート2008 HP
100 環境報告書2008 HP
39,000
100 環境報告書2008 HP
F社自社
1,284
150
113
1,021
95
F社委託
46,646
46,646
113
1,021
98.3
G社
18,243
環境報告書2008 HP
100 環境報告書2007 HP
3-13
(6) おから
おからの全国発生量は、年間約 70 万トンである(全国豆腐油揚商工組合連合会発表:産経
新聞静岡版 2008.2.9)。しかしながら、統計としておからのリサイクル率を整備している資
料は、発見されなかった。リサイクル例としては、堆肥、飼料などがある。おからの飼料化
の割合は、約 47%である((社)全国肉用牛振興基金協会会誌 び~ふキャトル(第 8 号)平
成 19 年 4 月)
。
(7) 堤防刈草
堤防刈草は、街路樹の剪定と同様に公共系の維持管理作業により発生する廃棄物であり、
通常はその発生形態から一般廃棄物または産業廃棄物として焼却処理されてきた。近年では
大気環境保全の観点から有効利用が検討され、堆肥化や土壌改良剤としての利用が主流であ
る。
堤防刈草については全国規模の統計データは存在しないが、一級河川の場合には年 2~3
回の防刈草作業によって一河川当たり年間数千 t から 1 万 t 程度が発生しているものとみ
られる(環境省:第8回エコ燃料利用推進会議 資料より)
。
(8) その他
その他として、今後のバイオコークスの用途開発で原料として期待される材料に食品廃棄
物、家畜糞尿ならびに下水汚泥などが挙げられる。
以下に、食品廃棄物、家畜糞尿と下水汚泥の発生量と利用率を示す(図 3.11~図 3.13)。
食品廃棄物は、再資源化率が約 60%であり、500 万 t 弱の未利用廃棄物が存在する。平成
19 年の農林水産統計によると、特に食品小売業(40%)、外食産業(31%)の再資源化率が低く、
課題となっている。
家畜糞尿と下水汚泥においては、70~90%のリサイクル率があるが、発生量の単位が大き
く(7,000 万 t~9,000 万 t)、市場が大きい。しかし、硫黄やリン、重金属類の含有など鉄鋼
業への利用の阻害要因もある。今後のバイオコークスの開発次第では、市場での利活用が期
待される。
出典:農林水産統計 平成 19 年食品循環資源の再生利用等実態調査結果
図 3.11 食品廃棄物の発生量と再利用率
3-14
発生量[万t]
100%
9000
90%
8000
80%
7000
70%
6000
60%
5000
50%
4000
40%
3000
30%
2000
20%
1000
10%
0
利用率
発生量
利用率
10000
0%
2002
2005
2006
2007
バイオマスニッポン総合戦略・食料・農業・農村白書を基に作成
発生量
利用率
10000
100%
9000
90%
8000
80%
7000
70%
6000
60%
5000
50%
4000
40%
3000
30%
2000
20%
1000
10%
0
利用率
発生量[万t]
図 3.12 家畜糞尿の発生量と利用率
0%
2002
2005
2006
2007
バイオマスニッポン総合戦略・食料・農業・農村白書を基に作成
図 3.13 下水汚泥の発生量と利用率
3-15
3.2.3 利用可能な植物由来廃棄物の検討
表 3.9 に、利用可能な植物由来廃棄物の種類と特徴、原料の条件を示す。これらの植物由来廃
棄物は、3.2.1 で示したバイオコークス原料の条件に適合している。調査対象とする植物由来廃
棄物は、これらの植物由来廃棄物の中から以下のとおりを選定した。
表 3.9 植物由来廃棄物の種類と特徴
植物由来
廃棄物の種類
対象
もみ殻
農作物
非食用部
稲わら
麦わら
食品廃棄物
お茶がら・
コーヒーかす
おから
生ごみ
木質系
家畜
排せつ物
建設発生
木材
製材工場
残材
林地残材
その他
剪定枝
刈草
家畜糞尿
収集
含水率
大きさ
均質性
精米所等で集中的に発生。
推定 75%が田にすき込み(回収シ
ステムに難)
。
作付面積が米に対して少なく発生
量が少ない。
○
○
○
○
△
○
△
○
△
○
△
○
飲料工場から発生。
○
△
○
○
○
豆腐工場から発生。
食品会社、外食産業、コンビニ、
一般家庭から発生。均質性に難。
○
△
○
○
○
○
△
△
△
建設工事現場、解体現場から発生
○
○
△
○
○
製材所から発生。
○
○
△
○
○
林業事業者(山林)で発生。
果樹剪定(農家)や公園剪定(公
共事業)により発生。
公共事業(刈草)により発生。
△
△
△
○
○
○
△
△
○
○
△
△
○
酪農より発生。
△
△
○
○
下水処理場より発生。リンを大量
○
△
○
に含む(乾量:P2O5 で 3.9%※)
。
○:問題はない(収集:集中して発生)
、△:対策が必要である(収集:小口分散・広域的に発生)
。
黒液(製紙工場廃液)
、廃食用油、資源作物は、バイオマスの特性上調査対象外とした。
※
東海農政局 -家畜ふん尿堆肥の生産、流通利用の現状と問題点
(http://leio.lin.go.jp/syoko/kouen/toukai/toukai2.html)より
下水汚泥
調査
対象
○
特徴
下水汚泥
○
○
(1) 農作物非食用部
農作物非食用部は、もみ殻を調査対象とした。稲わら、麦わらの賦存量は多いが、収集運
搬コストが高騰することが予想されたため、集中して発生するもみ殻でバイオコークスの経
済性を検討することとした。
(2) 食品廃棄物
食品廃棄物は、お茶がら・コーヒーかす、おからを調査対象とした。生ごみ等は、バイオ
コークス原料条件である「均質性」の確保が難しいため、今後の利活用の課題である。
3-16
(3) 木質系
木質系は、発生量が多く、均質性も確保できることから、建設発生木材、製材工場残材、
林地残材、刈草を調査対象とした。その他剪定枝は、発生が小口分散であることなどから収
集運搬コストが高騰することが予想されたため、今回の検討対象外とした。
(4) 家畜排せつ物
家畜排せつ物は、酪農の地域性があることなどから今回の検討対象外とした。
(5) 下水汚泥
下水汚泥は、将来的なバイオコークス原料として期待されるものであるが、リンを多量に
含むことにより鉄鋼業への利用に向かないこと、近畿大学井田准教授の研究で製造が確認さ
れていないことから調査対象外とした。
3-17
3.2.4 利用可能な植物由来廃棄物の将来推計
利用可能な植物由来廃棄物の将来推計は、3.2.2
植物由来廃棄物の発生状況と利用状況でま
とめた植物由来廃棄物の内、過年度の統計データが存在する「製材所残材」
、
「農作物非食用部」
、
「林地残材」、「建設発生木材」、「茶がら・コーヒーかす」、「家畜糞尿」、「下水汚泥」について、
過年度の発生量を基に将来的な発生量を推計し 2017 年(平成 30 年)における発生量と、利活
用量を推計した。
将来推計は、文献等により集計した過年度の利用可能量を基に推計式(べき乗、回帰計算、対
数等の近似式:表 3.10)より算出した。推計結果においては、それぞれの植物由来廃棄物にお
いてより現実的と考えられる推計式を選択し使用した。
なお、本推計は、過年度の発生量・利活用量の傾向から推計を行うものであり、バイオマスや
廃棄物の施策の変更等は考慮しないものである。
表 3.10 推計に用いた推計式と特徴
推計式
直線式
自然対数式
指数式
べき乗式
ロジスティック式
数式
y=aX+b
y=alogX+b
y=abX
y= aXb
y=k/(1+ea-bX)
特徴
単調な増加(減少)を示す直線式
年次とともに増加(減少)率が収縮していく曲線式
年次とともに緩やかに増加(減少)していく曲線式
年次とともに増加(減少)率が増大する曲線式
最初は増加(減少)し、中間で増加(減少)率が最
大になった後無限年後に飽和する曲線式
y:廃棄物量、X 年度、a,b,k:係数
3-18
(1) 全体推計
図 3.14 にバイオコークス原料として可能性のある植物由来廃棄物の発生量推計と利用量
推計を示す。二次回帰は、廃棄物の発生量が現状より著しく増加するシナリオのため、検討
から除外する。植物由来廃棄物の発生は、微減傾向、利用量は増加傾向となる。平成 30(2018)
年度における再資源化率は、99%(指数回帰)~86%(対数回帰)と推測される(表 3.11)
。
23,000
発生実績
発生一次回帰
発生指数回帰
発生対数回帰
発生べき乗回帰
発生二次回帰
利用実績
利用一次回帰
利用指数回帰
利用対数回帰
利用べき乗回帰
利用二次回帰
22,000
発生量・利用量(万t)
21,000
20,000
19,000
18,000
17,000
16,000
15,000
14,000
13,000
10
15
20
年度
25
30
図 3.14 植物由来廃棄物の発生量・利用量推計
表 3.11 平成 30 年度における植物由来廃棄物推計発生量と利用量
一次回帰
指数回帰
対数回帰
発生量
20,764
20,768
20,881
利用量
19,421
20,511
94%
99%
再資源化率
べき乗
二次回帰
現状維持
20,883
31,109
21,274
17,999
18,552
19,791
14,407
86%
89%
64%
68%
回帰
※二次回帰は発生量が著しく乖離するため検討対象外とした。
3-19
(2) 各植物由来廃棄物の推計量
10 年後(平成 30 年度:2018 年度)の推計式別の植物由来廃棄物推計発生量と推計利用量
は、表 3.12 に示す。本表において、ほとんどの植物由来廃棄物の利用率が 100%に近づくが、
林地残材と農作物非食用部は、利用率が上がらず未利用率が高い傾向となった。
林地残材や農作物非食用部では、今後バイオマス利活用施策のさらなる推進が求められる。
表 3.12 平成 30 年度における植物由来廃棄物推計発生量と推計利用量
(単位:万 t)
植物由来廃棄物種類
製材所残材
農作物
非食用部
林地残材
建設発生
木材
茶がら・
コーヒーかす
食品廃棄物
家畜糞尿
下水汚泥
一次回帰
指数回帰
対数回帰
べき乗
回帰
二次回帰
現状維持
発生量
12
193
148
251
586
495
利用量
83
208
186
258
891
456
利用率
692%
108%
126%
103%
152%
92%
発生量
1,604
1,626
1,514
1,520
5,379
1,325
利用量
481
488
454
456
1,614
398
利用率
30%
30%
30%
30%
30%
30%
発生量
242
261
276
286
297
363
利用量
23
111,591
17
3,344
-794
4
利用率
10%
42755%
6%
1169%
-267%
1%
発生量
442
443
449
450
805
470
利用量
663
1,234
556
810
384
282
利用率
150%
279%
124%
180%
48%
60%
発生量
132
146
117
123
71
86
利用量
131
145
116
122
70
85
利用率
99%
99%
99%
99%
99%
99%
発生量
1,145
1,145
1,142
1,142
1,051
1,135
利用量
1,079
1,343
965
1,107
858
576
利用率
94%
117%
84%
97%
82%
51%
発生量
7,736
7,807
8,053
8,090
7,422
8,850
利用量
9,270
9,472
8,865
8,978
-1,538
7,738
利用率
120%
121%
110%
111%
-21%
87%
発生量
20,764
20,768
20,881
20,883
31,109
21,274
利用量
19,421
20,511
17,999
18,552
19,791
14,407
利用率
94%
99%
86%
89%
64%
68%
※網掛けは、推計量が乖離する等により信頼性が低いデータ
※現状維持は、過年度データの平均値
3-20
備考
いずれの推計値も利用率 100%を超過してい
るため、限りなく再資源化されると推測され
る。
発生量が著しく乖離するため二次回帰を検
討外とした。
本データは、稲わらの田へのすき込みを未利
用とした。
いずれの推計値も利用率 100%を超過してい
るため、限りなく再資源化されると推測され
る。
直近データで利用率 99%のため、発生量のみ
推計した
いずれの推計値も利用率 100%を超過(又は
有意でない)しているため、限りなく再資源
化されると推測される。
4 循環システムの構築に向けた検討
4.1 バイオコークスによる循環システムの構築
4.1.1 バイオコークス循環シナリオ
本節では、バイオコークス利活用の循環システムについて、各ケースの課題や問題点について
整理し、事業性向上のための方策を検討した。
バイオコークスの利活用による循環システムのフレームは、図 4.1 のとおりである。バイオコ
ークスの循環シナリオは、バイオコークス製造プラントの設置場所によって、A シナリオ:発生
場所設置型、B シナリオ:中間地設置型(小口発生源集約)
、C シナリオ:消費地設置型の3シ
ナリオが考えられる(表 4.1)。
CO2 吸収
植物資源
CO2
山林・田畑
CO2 発生
バイオコークスプラント
廃棄物
の削減
製鉄所
(消費地)
化石燃料
の削減
植物由来廃棄物発生源
:炭素循環の流れ
化石燃料
図 4.1 バイオコークスの利活用による循環システム(炭素循環)
4-1
表 4.1 バイオコークスの循環シナリオ
シナリオ
模式図
特徴
バイオコークス
プラント(工場)
A
発生工場
製鉄所
(食品工場/製材所等)
バイオコークス輸送
(消費地)
バイオコークス
プラント(集積地)
原料輸送(小口輸送)
B
製鉄所
発生源
バイオコークス輸送
(大口輸送)
バイオコークス製造プラント発
生場所設置型
バイオコークスの原料発生源と
なる製材所や食品工場至近にバ
イオコークス製造プラントを設
置し、バイオコークスを製造す
る。本シナリオは、バイオコーク
スの原料がまとまって発生する
工場等が対象となる。
バイオコークス製造プラント中
間地設置型:小口発生源集約
中小規模の排出源を対象に原料
を小口収集し、原料を集積させ、
集積所にバイオコークス製造プ
ラントを設置しバイオコークス
を製造する。製造したバイオコー
クスは、まとめて製鉄所に供給す
るシナリオである
(消費地)
(林地残材等)
バイオコークス
プラント(集積地)
C
原料輸送(小口輸送)
製鉄所
(消費地)
発生源
(植物由来廃棄物発生源)
4-2
バイオコークス製造プラント消
費地設置型
製鉄所(消費地)にバイオコーク
ス製造プラントを設置し周辺の
植物由来廃棄物発生源から原料
の収集を行い、バイオコークスを
製造するシナリオである
4.1.2 植物由来廃棄物別の資源特性と供給能力
調査を行った植物由来廃棄物を中心に資源量と利用量の状況は、表 4.2 に示す。
表 4.2 植物由来廃棄物別の資源量と利用量の状況
種別
賦存量 [千t] 利用量 [千t] 未利用量[千t] 未利用率
*1
取引状況
10,361
9,583
778
7.51%
有価
*1*
農作物非食用部(稲わら) 9,196
2,308
6,888
74.90%
-
農作物非食用部(もみがら) 1,263
796
467
36.96%
無償
3,356
3,158
199
5.92%
未回収
5,242
3,198
2,044
39.00%
逆有償
11,352
6,698,000
4,654
41.00%
逆有償
947
939
8
0.80%
逆有償
745
745
0
0.00%
有価
製材所残材 林地残材 *1
*1
建設発生木材 食品残渣
(内訳)
*2
お茶がら・コーヒーかす (内訳)
*3
おから *4
903
228
674
74.70%
逆有償
下水汚泥 *1
79,757
21,081
58,677
73.57%
逆有償
家畜糞尿 *1
74,894
65,245
9,649
12.88%
逆有償
30,302
7,556
22,746
75.06%
-
刈草 古紙 *5
バイオコークス製造量(含水10%)[千t]
未利用量のみ
467
賦存量
6,217
未利用量のみ
6,544
賦存量
8,736
未利用量のみ
444
賦存量
1,200
未利用量のみ
119
賦存量
2,014
未利用量のみ
1,942
賦存量
4,980
未利用量のみ
1,862
賦存量
4,541
未利用量のみ
3
賦存量
331
未利用量のみ
0
賦存量
223
未利用量のみ
405
賦存量
542
未利用量のみ
7,628
賦存量
10,368
未利用量のみ
2,895
賦存量
22,468
未利用量のみ
25,020
賦存量
33,332
*1 賦存量及び未利用量:NEDO 「バイオマス賦存量・利用可能量の推計」(稲わらは、未利用率のほぼ全量がすき込み)
*2 賦存量:日本炭化研究協会ホームページ
利用量:社団法人全国清涼飲料工業会ホームページ
*3 賦存量:「有機廃棄物資源化大辞典」
利用量:ヒアリング調査結果
*4 賦存量及び未利用量:ヒアリング調査結果を基に河川延長((社)日本河川協会ホームページ)から推計
*5 賦存量及び未利用量:社団法人古紙再生促進センターホームページ
*6 すき込みを有効利用とすると0%
*7 バイオマスニッポン総合戦略より
植物由来廃棄物別の資源特性は、表 4.3 に整理した。製鉄法別の粗鋼生産量と現状のバイオコ
ークス利用可能性量は、表 4.4 に示す(製鉄プロセス別のバイオコークス利用可能量については、
第 6 章を参照)
。鉄鋼業における全国のバイオコークス利用可能量を、1,575 千 t/年とした場合、
バイオコークス量換算で、品質重視で 46,170 千 t/年、発生形態重視で、22,765 千 t の資源量が
見込まれる。家畜糞尿や下水汚泥は、製鉄用途に対しては様々な課題(硫黄分、リン分、重金属
類など)はあるものの、製鉄所のバイオコークス利用可能量に対して 10 倍以上のキャパシティ
があるため、今後課題の解決が期待される植物由来廃棄物である。
個別の植物由来廃棄物においては、製材所残材、農作物非食用部(稲わら)、林地残材、建設
発生木材、古紙等について供給量を確保できる市場がある。
4-3
表 4.3 植物由来廃棄物別の資源特性とバイオコークス資源ポテンシャル
バイオコークス
発生形態
含水
品質
季節性
資源量(千t/年)
6,217
製材所残材 ◎
◎
◎
◎
◎
8,736
△
△
◎
◎
農作物非食用部(稲わら)
(秋冬)
○
1,200
農作物非食用部(もみがら) ◎
◎
△
◎
○
2,014
◎
◎
林地残材 △
○
(寒冷地は△)
○
4,980
◎
◎
◎
◎
建設発生木材 (分別要)
○
4,541
食品残渣
○
△
△
◎
○
331
○
△
◎
◎
お茶がら・コーヒーかす
△
223
○
△
◎
◎
おから
△
542
△
刈草 △
○
◎
(春夏)
△
10,368
◎
△
△
◎
下水汚泥 ◎
22,468
△
△
◎
◎
家畜糞尿
(養鶏場等○)
◎
33,332
○
◎
○
◎
古紙
(家庭系は△)
◎
品質が◎の合計
46,170
発生形態が◎の合計
22,765
総合計
94,953
資源量:バイオコークス資源ポテンシャルとして年間1000万トン以上◎、100万トン以上○、100トン未満△
(表7.11より賦存量ベースの資源ポテンシャルを算出)
発生形態:広域分散△、小口分散○、集中発生◎
含水率:含水率15%未満◎、含水率50%以下○、含水率51%以上△
品質:一定◎、変動がある○、介在物または製鉄の阻害要因がある△
季節性:◎季節性なし、△季節性あり
課題
種別
他の利用用途との価格競争力
季節性
広域収集体制整備と収集コスト
季節性
伐採後の植林・育林コスト
広域収集体制整備、利用率の向上
他の利用用途との価格競争力
他の利用用途との価格競争力
含水率、介在物(塩類、プラスチック等)
他の利用用途との価格競争力
含水率
他の利用用途との価格競争力
含水率
季節性
広域収集体制整備
硫黄、リンの含有
含水率
他の利用用途との価格競争力
広域収集体制整備、含水率
他の利用用途との価格競争力
表 4.4 製鉄法別の粗鋼生産量と現状のバイオコークス利用可能性量
粗鋼生産量に対する
バイオコークス利用可能割合
89,238
1.5% 1)
29,505
0.8% 2)
118,743
製鉄法 粗鋼生産量[千t/年]
高炉
電炉
合計
製鉄所におけるバイオコークス
利用可能量[千t/年]
1,339
236
1,575
資料:粗鋼生産量は鉄鋼統計要覧2008より引用
1) 高炉での廃プラスチック利用最大量と同量を設定した。(粗鋼1t当り15kg)
中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会プラスチック製容器包装に係る再商品化手法専門委員会、
産業構造審議会環境部会廃棄物・リサイクル小委員会容器包装リサイクルWG
プラスチック製容器包装に係る再商品化手法検討会合同会合(第2回)議事次第・資料より
2) ヒアリング調査結果より、電炉での粗鋼1t当りコークス使用量0.8kgを設定した。
4-4
4.2 循環システムの構築に向けた課題と解決方法
4.2.1 バイオコークス循環システムの課題と解決方法
バイオコークスの循環システムに係る課題と解決方法は、表 4.5 に示すとおりである。
植物由来廃棄物や林地残材のような未利用バイオマスがコスト高となっている一因に、化石燃
料に対しエネルギー密度が低いことが挙げられる。バイオコークスの製造は、比重 0.3~0.4 相
当の林地残材等の植物由来廃棄物を比重 1.4 に高めることでエネルギー密度を増加させ、収集運
搬コストの削減を図るとともに利用先においても保管容量の削減などの効果を期待することが
できる。特に堤防刈草のような広範囲で収集運搬が必要な植物由来廃棄物では、図 4.2 に示すと
おり有効な輸送コスト削減手段である。今回の検討ケースにおいて、バイオコークス製造後に輸
送を行った場合は、原料をそのまま輸送することに対し輸送コストが約 20%に削減された。
4-5
表 4.5 バイオコークスと循環システムにおける課題と解決方法
下水汚泥
廃棄紙
○
○
○
○
○
○
△
○
○
○
○
○
○
○
○
○
、○
○
○
○
○:適用される、△:条件により適用される
4-6
○
○
○
○
○
○
○
○
家畜糞尿
・腐敗しやすい原料
があり、原料の長期
保管がきかない。
・含水率の高い原
料では、採算条件
が悪化する。
食品残渣
製造・用途
・収集運搬コスト
の低減。
堤防刈草
収集・運搬
建設発生木材
・発生が定常的で
なく 季節性が あ
る。
△
林地残材
・間伐の補助金を増
額する。
・排出権クレジット
に森林助成分を追
加し上乗せ負担と
する。
・適切な保管場所を
確保する。
・季節に合わせたバ
イオマスを収集し
て稼働率を上げる。
(例:堤防刈草とも
み殻を組み合わせ
る)
・河川に流す(筏・
ゴムボート)など自
然を利用した回収
方法を検討する。
・空荷の収集運搬車
両・船舶を活用す
る。
・移動式バイオコー
クス製造プラント
を検討する。
・船舶による大規模
輸送を検討する。
・入荷→即製造とい
う生産体制を確立
する。
・搬出時までに自然
乾燥を行い、乾燥コ
ストを低減する。
・製鉄所排熱など未
利用の低温排熱(~
200℃程度)を利用
する。
もみがら
・間伐材・林地残
材が 山林で滞 っ
てい て収集さ れ
ていない。
おから
解決方法
お茶がら・コーヒーかす
発生源
課題
製材所残材
対象
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
バイオコークストンあたり製造コスト(千円)
60.0
50.0
バイオコークス輸送費用
前処理・製造費用
原料集荷費用
40.0
0.0
29.7
4.7
30.0
20.0
30.6
23.6
10.0
0.0
0.0
発生源で製造
製鉄所に集荷
※刈取コストに刈取場所-製造場所の小運搬を含む
図 4.2 堤防刈草における発生源製造と製鉄所製造のコスト比較
ヒアリング調査によると林地残材等は、伐採後の植林・育成費用を捻出できないことから、間
伐自体が行われない状況となっている。そのため、林業の循環システムを構築できるような課題
解決方法が期待される。
堤防刈草やもみ殻は、発生源の季節性(もみ殻:秋季~春季、堤防刈草:春季~秋季)がある。
このため、バイオコークスプラントを通年で稼働させることが難しくなるため、季節性に応じた
原料の調達が重要となる。
収集運搬コストの低減は、植物由来廃棄物やバイオマスに共通の課題である。この解決方法と
して船舶輸送、空荷の収集運搬車両の有効利用などをが挙げられる。
お茶がら、コーヒーかすなどは、腐敗しやすい、含水率が高いという特徴がある。このため、
原料を保管せずに製造することが求められる。また、お茶がら、コーヒーかすのような定常的に
発生し含水率の高い植物由来廃棄物は、製鉄所の排熱でバイオコークスを製造するシナリオが有
効である。
4-7
4.2.2 法令・制度面の課題と解決方法
(1) 法令面における利用の課題と検討方法
バイオコークスのに法令面における利用の課題と解決方法は、表 4.6 に示す。
表 4.6 バイオコークス事業における法令面の課題と解決方法
下水汚泥
廃棄紙
家畜糞尿
食品残渣
・発生場所からリサ
イクル先への輸送距
離に規制(50km)が
ある。
・マテリアルリサイ
クル優先である。
堤防刈草
建設リ
サイク
ル法
建設発生木材
省エネ法
林地残材
消防法
もみがら
・対象物が廃棄物に
該当し取引が生じる
場合、業許可を取得
する必要がある。※
・対象物が廃棄物に
該当し、破砕・乾燥
を行う場合は施設設
置許可が必要とな
る。※※
・廃棄物処理施設に
おける保管期限は、
処理量の 14 日分と
なる。
・廃棄物の収集運搬
には、収集運搬業許
可ならびに車両の表
示義務がある。
(産業
廃棄物:都道府県単
位、一般廃棄物:市
町村単位)
・廃棄物固形燃料の
保管基準を満たす必
要がある。
・木くず等の 1000m3
以上の保管は届け出
制となる。
・大規模プラントの
場合、年次報告なら
びにエネルギー削減
義務が生じる。
おから
廃棄物
処理法
検討方法
お茶がら・コーヒーかす
課題
製材所残材
法令
(発生したものを
自ら利用する場合
は許可不要)
○
○
○
-
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
・リサイクル品が有価
物の場合は適用され
ないため、バイオコー
クスで保管する。
・廃棄物処理法の広
域利用認定または、
食品リサイクル法
の認定を受けると
許可不要となる。
・散水装置、消火栓
等を設置する。
・消防当局の指導に
応じ、消火設備を設
置する。
・排熱利用等、エネ
ルギー削減措置を
講じる。
・プラントを改良
し、エネルギー使用
量を削減する。
・建設リサイクル法
の距離規制を緩和
する。
○
○
△
○
○
○
○
△
○
△
○
○
○
○
○
○
△
○
○
○
○
△
○
○
○
○
○
○
○
・バイオコークスを
「縮減」でなく「再
○
資源化」に位置づけ
る。
食 品 リ ・発生場所からリサイ ・食品リサイクル法
サ イ ク クル先への輸送距離に の距離規制を緩和
○
○
○
ル法
規制(75km)がある。 する。
・肥料・飼料優先で ・バイオコークスを
ある。
「再生利用」に位置
○
○
○
づける。
○:適用される、△:条件により適用される
※廃棄物の定義は、廃棄物処理法第2条とする(リサイクルされていても、逆有償の場合と無償利用は廃棄物とする)
。
※廃棄物処理法の施設設置許可は、5t 以上の施設(産業廃棄物:破砕、乾燥、焼却など法令で定められた施設、一般廃棄物:
すべての施設)
4-8
主に適用される法律として、廃棄物処理法、消防法、省エネ法(施設が大きい場合)
、建設
リサイクル法、食品リサイクル法などがある。
特に植物由来廃棄物を扱う場合に必須となる、廃棄物処理法ならびに法令でリサイクル方
法や地域が指定されている建設リサイクル法、食品リサイクル法は重要となる。
4-9
(2) バイオコークス事業における制度面の課題と解決方法
バイオコークスの事業における制度面の課題と解決方法は、表 4.7 に示す。
表 4.7 バイオコークス製造における制度面の課題と解決方法
下水汚泥
廃棄紙
家畜糞尿
食品残渣
・高齢化で林業従
事 者が減 り間 伐
が進まない。
バ イ オ マ ・価格が安価で利
ス 利 用 の 用 しやす いた め
推進
化 石燃料 から バ
イ オマス への 転
換が進まない。
廃 棄 物 の ・リサイクルにおけ バ イ オ コ ー ク ス の
有効利用
るバイオコークス 付加価値を上げる。
の経済的メリット
が未知数である。
・家畜糞尿、下水汚 ・未利用バイオマス
泥な、食品残渣など の バ イ オ コ ー ク ス
未利用率の高いバ 検 討 と 用 途 検 討 を
イオマスが活用さ 進める。
れていない。
・異業種連携のため ・バイオコークス利活
ニーズの相違があ 用の勉強会を開催し、
る。
相互理解を深める。
環境保全
・里山や国有林等の ・未活用森林バイオマ
十分に活用されて ス 利 活 用 と保 全 に 補
いない森林バイオ 助制度を創設する。
マス資源がある。
○:適用される、△:条件により適用される
堤防刈草
・切捨間伐に対して
補助金を削減する。
・間伐材利用に対し奨
励金制度を整備する。
(現在は間伐材利
用で補助金削減)
機 械 化 林 業を 推 進 し
効率的な回収を行う。
・森林組合や企業な
どによる林業経営
を推進する。
・化石燃料のバイオ
マス転換に対する
補助制度を整える。
建設発生木材
・省エネ法により、CO2
の削減がカウントさ
れない場合がある。
・育成林を育てる
コ ストが 捻出 で
き ないた め間 伐
できていない。
・搬出コストが高
いため、切捨間伐
となっている。
林地残材
・CO2 排出権の価格を
適正な価格とする。
・CO2 排出権に上乗せ
価格を設定し、上乗せ
分 の 利 益 を林 業 の 推
進 や バ イ オマ ス 利 活
用に当てる。
・森林吸収による CO2
削 減 の 排 出権 を 売 買
し、鉄鋼業から林業へ
金銭を循環させる。
・加炭材などの代替に
も CO2 削減ができるよ
う制度を改正する。
・大規模林業、機械化
林業を推進し、林業の
経営効率を上げる。
もみがら
・排出権価格が安
価であるため CO2
削 減対策 が進 捗
しない
おから
間伐利用
の推進
検討方法
お茶がら・コーヒーかす
CO2 排出権
課題
製材所残材
制度
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
△
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
△
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
4-10
○
○
○
○
○
制度面の課題解決方策の考え方は、資源循環や炭素循環のシステムを構築し、鉄鋼業と植
物由来廃棄物を排出する製造業や農林業でバイオコークスを軸とした循環システムとするこ
とである。
そのためには、地球温暖化対策に対する制度的バックアップや、利活用が進まない間伐材
の利用用途拡大、将来的な資源の枯渇に対応した循環システムの構築が重要となる。
4-11
4.3 バイオコークス循環システムの将来像
本項では、前項に取り上げた課題がある程度解決し、バイオコークスが普及した場合の循環シ
ステムの将来像について、
「林地残材等の未利用バイオマスの利活用と林業と鉄鋼業の連携」、
「鉄
鋼業の排熱の有効利用による省エネルギーの推進と温暖化対策の推進」の2つのテーマで循環シ
ステムの構築イメージを提案する。
4.3.1 林地残材等の未利用バイオマスの利活用と林業と鉄鋼業の連携
バイオコークスを森林資源で製造し、製鉄業へ供給する場合は、カーボンニュートラルによる
CO2 削減効果と森林吸収を考慮し、鉄鋼業と林業の間に CO2 排出権をベースにした経済的な循
環が生まれるシステムを検討する(図 4.3)。CO2 の排出削減余地が多く残るものの、資本投入
が必要な林業と、排出権購入のためにコストに迫られる鉄鋼業が連携することで、CO2 とバイオ
マス、資金が循環するシステムを構築できることを目指す(排出権クレジット、CO2 排出量算定
については、第 5 章を参照)。
年間間伐面積
17.9km2
森林吸収クレジット
約 19,720 千円/年
排出権販売(収入)
排出権購入(森林吸収)
森林吸収削減量
約 11,600t-CO2/年
森林経営資金の捻出
CO2 排出量の削減
原料輸送(小口輸送)
バイオコークス
プラント(集積地)
発生源
(林地残材等)
製鉄所
バイオコークス輸送
(大口輸送)
安定的な森林経営
カーボンニュートラルな
原料の購入
主伐材・間伐材の利用
促進による収入増
バイオコークス販売(収入)
(消費地)
CO2 排出量の削減
カーボンニュートラル削減量
約 55,000t-CO2/年
削減クレジット
約 93,500 千円/年
図 4.3 林地残材利活用シナリオにおけるバイオコークス循環システム
(削減量は、室蘭における 70t/日プラントを想定:クレジット 1,700 円/t-CO2)
4-12
このシステムの普及の鍵として、国内における温室効果ガスの排出権取引の普及が挙げら
れる。現在国内の排出権取引は、環境省による「自主参加型国内排出量取引制度」が進めら
れている状況であり、全事業者が参加する枠組みとしては機能していないのが現状である。
このため、林業に排出権のクレジットを還流させるためには、温室効果ガスの排出権の取引
制度を整備する必要がある。
平成 20 年 11 月に「環境省オフセットクレジット制度(J-VER)
」の運用が開始され、第 3
者機関による温室効果ガスの認証制度がスタートした(図 4.4)。このような、排出企業と森
林資源供給者との間で、クレジットを融通させるシステムは、バイオコークスの普及ならび
に林業の普及推進に重要な位置づけになると考えられる。J-VER による制度を適用した場合、
図 4.3 に記載のクレジット取引ならびに CO2 の取引が想定される。
プロジェクトの申請
温室効果ガス排出削減プロジ
ェクトや森林整備プロジェク
トの実施者
環境省
気候変動対策認証センター
オフセットクレジット
の発行
オフセットクレジット
の代金
オフセットクレジット
の売却
カーボンオフセットの実施者
図 4.4 環境省オフセットクレジット制度(J-VER)の仕組み
4.3.2 鉄鋼業の排熱の有効利用による省エネルギーと温暖化対策の推進
含水率が高い廃棄物の処理は、乾燥コストに要するコストが高く、廃棄物処理コスト高と
なるとともに、エネルギーを消費し多くの CO2 が発生する。
鉄鋼業の排熱を乾燥に利用することは、エネルギー消費の節約、CO2 排出量の削減つなが
るとともに、現在未利用の低温排熱を使用し、乾燥コストを低減することができる(図 4.5)。
特に、含水率の高い、お茶がら・コーヒーかす、おから、家畜糞尿等に対し有効な方法であ
る(エネルギー収支・CO2 削減については第 5 章を参照)
。
4-13
バイオコークス
プラント(集積地)
原料輸送(小口輸送)
製鉄所
経営効率化
カーボンニュートラルによる
CO2 削減量
約 5,570t-CO2/年
社会的責務
発生源
(植物由来廃棄物発生源)
カーボンニュートラルな
原料の購入
廃棄物処理費
(消費地)
CO2 排出量の削減
排熱利用によるエネル
ギーの有効利用
付加価値上昇と排熱エネル
ギー利用による廃棄物処理
コストの削減
エネルギー削減量
(バイオコークス 1t あたり)
約 12,700MJ/t
(灯油換算:約 360L)
リサイクル率の向上
乾燥熱源による CO2 削減量
約 2,580t-CO2/年
図 4.5 製鉄所設置シナリオにおけるバイオコークス循環システム
(数字は、お茶がら・コーヒーかすから 10t/日プラントで製造した場合)
4.3.3 低環境負荷、低 CO2 社会、省資源化社会に向けて
木質バイオマスや廃棄物利用における課題として、コストの問題が挙げられる。特に CO2
の排出権の価格や化石燃料の価格は、一時期の高騰から暴落し、現在の市場において価格競
争力を得ることは難しくなっている。しかしながら、長期的視点では、地球温暖化対策や省
資源の観点から低環境負荷、低 CO2 社会、省資源化社会に向かっていくものと考えられる上、
施策的な課題としては早急に取り組む必要のあるものである。
制度面の改善は、実用化に向けたバイオコークスの検討への取り組みに合わせ、CO2 排出
権や間伐コストの捻出、化石燃料の転換推進に重点を置いた施策を検討することにより、結
果的にバイオコークスの普及につながるものと考えられる。
4-14
5 バイオコークス活用による期待効果
本章では、バイオコークス活用による期待効果を検討するため、バイオコークスの原料と事業
地域を設定してフィージビリティ・スタディ(FS)を行い、検討ケース毎の事業性や CO2 削減効
果について評価した。また、各ケースの課題について整理し、事業性向上のための方策を検討し
た。
5.1 経済的期待効果
5.1.1 FS 検討シナリオの設定
バイオコークス原料及び循環シナリオは、バイオコークス製造プラントの設置場所によって、
A シナリオ:発生場所設置型、B シナリオ:中間地設置型(小口発生源集約)
、C シナリオ:消費
地設置型の3シナリオを設定した(表 5.1)。
表 5.1 循環シナリオの設定
シナリオ
模式図
特徴
バイオコークス
プラント(工場)
A
発生工場
製鉄所
(食品工場/製材所等)
バイオコークス輸送
(消費地)
バイオコークス
プラント(集積地)
原料輸送(小口輸送)
B
製鉄所
発生源
バイオコークス輸送
(大口輸送)
バイオコークス製造プラント発
生場所設置型
バイオコークスの原料発生源と
なる製材所や食品工場至近にバ
イオコークス製造プラントを設
置し、バイオコークスを製造す
る。本シナリオは、バイオコーク
スの原料がまとまって発生する
工場等が対象となる。
バイオコークス製造プラント中
間地設置型:小口発生源集約
中小規模の排出源を対象に原料
を小口収集し、原料を集積させ、
集積所にバイオコークス製造プ
ラントを設置しバイオコークス
を製造する。製造したバイオコー
クスは、まとめて製鉄所に供給す
るシナリオである
(消費地)
(林地残材等)
バイオコークス
プラント(集積地)
C
原料輸送(小口輸送)
製鉄所
(消費地)
発生源
(植物由来廃棄物発生源)
5-1
バイオコークス製造プラント消
費地設置型
製鉄所(消費地)にバイオコーク
ス製造プラントを設置し周辺の
植物由来廃棄物発生源から原料
の収集を行い、バイオコークスを
製造するシナリオである
5.1.2 FS 検討条件の設定
(1) バイオコークス消費地及び消費量の設定
バイオコークスの消費地は、製鉄所を想定する。消費地の設定は、表 5.2 のとおりである。
表 5.2 バイオコークス消費量の設定条件
高炉/電気炉
高炉
電気炉
製鉄所におけるバイオコークス消費量の設定条件
高炉におけるバイオコークス利用量は、廃プラスチック利用の最大量(粗鋼
1t 当り 15kg)と同程度を設定する。粗鋼生産量の 1.5%である。
電気炉メーカーヒアリング調査結果より、10 バッチ/日、365 日稼動より粗鋼
生産量を推計した。電気炉でのバイオコークス利用量は粗鋼生産量の 0.8%に
設定した(詳細は第 5 章参照)
。
(2) 植物由来廃棄物別の FS 条件の設定
植物由来廃棄物別の FS 条件は、ヒアリング結果や植物由来廃棄物の発生地などを基に表
5.3 のとおり設定した。
(3) 検討ケース
表 5.4 は、FS の検討ケースと設定条件を示したものである。また、同表は、上記(1)~(3)
までの設定条件に基づいてバイオマス利用可能量、バイオコークス製造量やバイオコークス
消費量について整理した。これらの評価は 5.1.3 節で示す。
5-2
表 5.3 植物由来廃棄物別の FS 検討条件
検討
ケース
Case1
Case2
Case3
Case4
植物由来
廃棄物
(バイオコーク
ス原料)
検討
対象
地域
バイオマス発生
量
循環
シナ
バイオコークス リオ
製造利用可能量
製材所残
九州圏
材
・林地残材は安定的に製材所で発生す
る。
・残材の利用率はほぼ100%であるが、
ボイラー燃料として自社利用している
量が多く、バイオコークス原料として
利用が可能である.
・九州圏は製材所残材賦存量が多い
(NEDO資料)
A社製材工場に
おける原木量や
製品量当りの製
材残材発生量の
割合より、原木
量や製品量から
推定する。
発生する製材残
材のうち、自社
利用される量を
利用可能量とす
る。自社利用率
はA社製材工場
の残材自社利用
率(約26%)を用い
る.
お茶が
関東エ
ら・コー
リア
ヒーかす
・お茶がら・コーヒーかすはバイオコークス
製造の実績がある。
・安定的に飲料メーカーの工場で発生
する。
・お茶がら・コーヒーかすは全量を逆
有償で堆肥化業者に引き渡している。
・関東エリアは大手食品工場があり、バイオ
コークスの消費地となる製鉄所も多い.
飲料メーカーE
社のお茶がら・
コーヒーかす発
生量をもとに設
定する。
関東エ
リア
・おからは安定的に豆腐工場で発生す
る。
・全量を飼料として売却しているが、
乾燥コストにより収支が取れていな
い。
・関東エリアはおからの発生量が他のエリア
と比して1オーダー多い(有機廃棄物資源化
大辞典)
・関東エリアはバイオコークスの消費地となる製
鉄所も多い.
G社豆腐工場の
ヒアリング調査
結果より設定す
る。
茨城県
・もみ殻はバイオコークス製造において粉砕
や乾燥の前処理が不要である.
・発生したもみ殻は無償で地元農家や
堆肥化業者に引き渡している.
・茨城県はもみ殻の賦存量が北海道に
次いで2番目に多い(NEDO資料).
・関東エリアはバイオコークスの消費地となる製
鉄所も多い.
B社農協組合に
おける籾荷受量
当りのもみ殻発
生量より推計す
る。
おから
もみ殻
バイオコークス
製造プラント規
模
(t/年) (t/日) と設置箇所数
製造量
自然※
乾燥
前※
粉砕
10t車
50
含水率20%と想
定※ 。
有
50%
20%
有
55,500
185
発生するお茶が
ら・コーヒーか
すの全量とす
る。
B
関東の2工場で
発生するお茶 工場間の
がら・コー
距離60
ヒーかすを1
km
工場に収集す
る。
10t車
75
現在の処理状況
を踏まえ自然乾
燥は行わない。
有
75%
75%
無
3,900
13
発生するおから
の全量とする。
A
収集なし
-
80
現在の処理状況
を踏まえ自然乾
燥は行わない。
有
80%
80%
無
2,600
8.6
-
165t/日と20 t/
日の2箇所に
輸送条件
循環シナ 輸送距離
リオ
(km)
車両
バイオ
コークス
利用によ
る効果
Bシナリオ
300
なし
13t/日
Bシナリオ
55
処理コス
ト(逆有
償)
9t/日
Aシナリオ
25
なし
10t車
発生するもみ殻
の全量をバイオ
コークス製造利
用可能量とす
る。
発生する間伐材
のうち搬出可能
量をバイオコー
クス製造利用可
能量とする。
Case6
建設発生 関東エ
木材
リア
・100%リサイクルしているが、逆有償で業者
に渡している。
・関東エリアは発生量が最も多い(NEDO資
料)
・関東エリアはバイオコークスの消費地となる製
鉄所も多い.
各中間処理会社
が公表している
データを基に設
定する。
発生する建設発
生木材の全量と
する。
Case7
関東エ
リア
・刈草は牧草や堆肥化した上で無償で
引き渡しいる.堆肥化コスト等の収支が取
れていない。
・関東エリアはバイオコークスの消費地となる製
鉄所も多い.
H、I河川事務
所ヒアリングか
ら、河川延長当
りの刈草発生量
より推計する。
発生する刈草の
全量とする。
刈草
自然乾燥条件
B
C社森林組合に
おける間伐実施
面積当りの間伐
材推計量を基に
設定する。
Case5-2 林地残材 北海道
収集方法
初期含
水率
収集距離 収集車両 (%)
宮崎県下の9工
場より発生す 製材所間
る製材所残材 の平均距
を1工場に収集 離15 km
する。
・林地残材のほとんどが利用されずに
林地に残存されている。
・森林によるCO2吸収効果も期待でき
る。
・大阪では林地残材を積極的に有効利
用しようと考えている(ヒアリング調査)
・北海道は林地残材賦存量が全国1位
(NEDO資料)
Case5-1 林地残材 大阪
機械乾燥
収集運搬条件
設定条件
設定根拠
B
県下10ヶ所の
カントリーエ
レベータから
収集.
CE間の平
均距離40
km
10t車
B
森林組合支店
周辺の林地部
から間伐材を
収集。
組合と林
地の平均
距離40km
4t車
B
森林組合支店
周辺の林地部
から間伐材を
収集。
組合と林
地の平均
距離
160km
B
関東の5施設
で発生する原
料を1施設に
収集する
5施設間の
10t車
平均距離
25km
A
収集なし
15
自然乾燥は行わ
ない。
50
自然乾燥後含水
率20%と設定(ヒア
リング調査結
果)※。
4t車
-
-
5-3
15
含水率13%(含
水比15%)と想
定※ 。
50
自然乾燥後含水
率20%と設定(ヒア
リング調査結
果)。
無
15%
10%
無
4,500
15
15t/日
Bシナリオ
45
なし
有
50%
20%
有
3,700
12
12t/日
Bシナリオ
20
なし
有
50%
20%
有
23,400
78
78t/日
Bシナリオ
65
なし
有
15%
13%
有
69,900
233
233t/日
Bシナリオ
70
処理コス
ト(逆有
償)
315
32~36t/日:4箇
所,19~29t/
日:6箇所,6~
11t/日:4箇所
Aシナリオ
平均180km
堆肥化に
かかるコ
スト
有
50%
20%
有
94,480
5-4
電炉
豆腐
工場
おから
Case2
Case3
バイオコークス製造条件である含水率 10%まで原料を乾燥させた時の重量
17.06
刈草→バイオコークス製
関東8河川及び中部
造(河川管理事務
静岡県4河川の計12 発生量:17.06
所等)→輸送→高
河川
利用量:4.32t/年(用
炉
途:堆肥化、牧草等)
高炉:千葉
Aシナリオ
*2
7.40
4.21
0.66
0.48
1.19
1.40
10.00
バイオコークス
原料量[万t/年]
*1
発生量:5施設 計7.4
利用量:7.4(用途:
パーティクルボード原
料など)
発生木材→輸送→
バイオコークス製造(中 都市部(関東)
間処理施設)→輸 中間処理施設:関
東5施設
送→高炉
高炉:千葉
Bシナリオ
Bシナリオ
林地残材→輸送→
バイオコークス製造(森
林地部(北海道) 発生量:4.21
林組合)→輸送→
(間伐実施面積
森林組合:
高炉
1,620ha)
高炉:北海道
林地残材→輸送→
バイオコークス製造(森 林地部(大阪)
発生量:0.66
林組合)→輸送→ 森林組合
(間伐実施面積
電炉:大阪府内2
電炉メーカー
270ha)
箇所
Bシナリオ
Case1 では発生量から利用量を減じた量、その他 6 ケースでは発生量と同量
刈草
発生量:1.19
利用量:1.19(用途:
飼料等)
オカラ→バイオコークス
製造(豆腐工場) 大都市圏(関東)
→輸送→電炉メーカー 豆腐工場:埼玉
電炉:埼玉
Aシナリオ
茨城県:
農作物非食用品→
関東圏(茨城県)
発生量:0.48(もみが
輸送→バイオコークス製
カントリーエレベーター:茨
ら)
造(ライスセンター等)→
城
利用量:0.48(もみが
輸送→電炉メーカー
電炉:茨城県内2
ら)(用途:堆肥化)
箇所
Bシナリオ
発生量:1.4
利用量:1.4(用途:堆
肥)
茶がら等→輸送→
バイオコークス製造(食 大都市圏(関東)
品工場)→輸送→ 食品工場:飲料
メーカー 2工場
電炉メーカー
電炉:千葉
Bシナリオ
バイオマス発生量と
利用量(万t/年)
発生量:52.5
利用量:42.5(用途:
製紙原料、畜産用敷
材、自社ボイラー用燃
料)
想定地域
製材所残材→輸送
九州圏
→バイオコークス製造
製材所:佐賀県内
(製材所)→輸送→
製材工場1社、宮
高炉
崎県内製材工場9社
高炉:福岡
Bシナリオ
物質の流れ
*1
Case7
高炉
高炉
河川事
務所
森林
組合
高炉
林地
残材
電炉
電炉
Case6 建設発生 中間処
木材
理施設
Case5-2
Case5-1
農作物非
食用部
(もみが カントリーエレ
Case4
ら、稲わ ベーター
ら、麦わ
ら等)
電炉
食品
工場
茶がら・
コーヒーかす
Case1
高炉
製材所
製材
残材
利用
場所
製造
場所
バイオコーク
ス原料
検討
ケース
9.48
6.99
2.34
0.37
0.45
0.26
0.39
5.55
バイオコークス
製造量[万t/年] *2
バイオコークス
消費量(万t/年)
特徴
・ヒアリング結果より、宮崎県内の
製材工場の製材生産量から発生する
バイオマス量を推定した。
備考
高炉(利用率1.5%)
(高炉2基):10.0
(粗鋼量667万t/年)
・刈草は牧草、若しくは堆肥化を
行った上で無償で引き渡しおり、
堆肥化コスト等の分が赤字となっ
ている。
・Case6と組み合わせることで、新
日鐵君津の全高炉の利用可能量と
なる。
・中間処理後の建設発生木材は全
量をリサイクルしているが、逆有
償で業者に渡しリサイクルを行っ
高炉(利用率1.5%)
(高炉1基):5.0(粗 ている。
・Case7と組み合わせることで、新
鋼量333万t/年)
日鐵君津の全高炉の利用可能量と
なる。
・ヒアリング結果より関東地方整備
局管理の全河川及び中部地方整備局
管理の4河川より発生する刈草量を
推計した。
・ほとんど利用されていない
高炉(利用率1.5%)
・森林組合のヒアリング結果より北
:2.33(粗鋼量155万t/ ・森林によるCO2吸収効果も期待で
海道の間伐材発生量を推定した。
きる
年)
電炉(利用率0.8%)
(70tバッチ):0.20(粗
・ほとんど利用されていない
鋼量25.6万t/年)
・森林によるCO2吸収効果も期待で
(50tバッチ):0.15
きる
(粗鋼量18.3万t/年)
計:0.35
電炉(利用率0.8%)
(70tバッチ):0.20
・発生したもみがらは無償で地元
(粗鋼量25.6万t/年)
農家や堆肥化業者に引き渡してい
(70tバッチ):0.20
る。
(粗鋼量25.6万t/年)
計:0.40
・原料となる「おから」は安定的
に豆腐工場で発生する。
電炉(利用率0.8%)
・全量を飼料として売却している
(70tバッチ):0.20
(粗鋼量25.6万t/年) が、乾燥コストにより収支が取れ
ていない状況である。
・茶がら等の実績あり(実証プラント
10t/日)
・2工場で発生したバイオマスを1
・原料となる茶がら等が安定的に
電炉(利用率0.8%)
工場に集荷しバイオコークスを製造
食品工場で発生する
(100tバッチ):0.29
する。
(粗鋼量36.5万t/年) ・発生する茶がら・コーヒーがら
の全量を逆有償で堆肥化業者に引
き渡している。
・原料となる製材残材が安定的に
高炉(利用率1.5%)
:5.54(粗鋼量369万t/ 製材所で発生する
・製材所近傍でコークスを製造するの
年)
で原料輸送費が削減できる
表 5.4 FS検討ケースと設定条件
(4) FS検討フロー
1) FS の検討フロー
図 5.1 に、FS の検討フローを示す。FS は、表 5.3 に示す Case1~Case7の 8 ケース
について実施する。
(1)FS 検討条件の設定
(2)事業費の算出
(3)評価
(4)課題・問題点の抽出
(5)事業化に向けての方策検討
図 5.1 FS の検討フロー
2) バイオコークス製造条件
図 5.2 はバイオコークスの製造フローである。
原料
自然乾燥条件
自然乾燥
前処理
乾燥条件
乾燥
粉砕
バイオコークス製造
バイオコークス
図 5.2 バイオコークスの製造フロー
5-5
粉砕条件
製造条件
(5) 費用対効果算出条件
費用対効果は、バイオコークス製造に係るコストを発生費用として計上、バイオコークス
製造により現れる効果を金額に換算し、相互に比較することで行った。
コストと効果の算出項目は、表 5.5 に示す。
表 5.5 FS検討における発生費用(コスト)と効果の算出項目
発生費用
項 目
a) 原料集荷コスト
効 果
c) 運搬コスト
内 容
バイオコークス原料を収集する際のコスト
機械乾燥・粉砕、バイオコークスプラント設置製造に掛
かるコスト
バイオコークスを消費地に運搬する際のコスト
d) 廃棄物処理費
原料となる廃棄物を収集する際の受け入れ費用
e) バイオマス処理費
バイオマスの利用のための処理コスト:バイオコークス製造により
不要となる(プラス効果)
f)排出クレジット費
CO2 削減効果による排出権取引による収入
g) バイオコークスの販売収入
バイオコークスの販売収入
b) 前処理・製造コスト
(6) 事業費算出条件
事業費の算出条件は、表 5.6 に示す。算出の基本条件を実証試験中の日量 10t/24h のバイ
オコークス製造プラントを設定、能力の変動は、用益費、イニシャルコストを変動費として
比例させて算出した。
5-6
表 5.6 事業費の算出方法
項目
①原料購入費 原料購入費
管理者(1名)
②人件費
作業員(8名)
計算方法
計上方法(10t/24hプラント)
バイオコークス原料量 [kg/日] × 単価 [円/kg] ×
運転日数 [日/年]
原則無料。
年収650万円を想定(人員は規模にかかわらず固
定)。
年収450万円を想定(人員は規模にかかわらず固
定)。
人数 [人] × 年収 [円/年]
メンテナンス員(1名)
③用益費
電気
1kwhあたり17円を計上。
(粉砕機消費電力量+プラント消費電力量)
[kwh/日] × 単価 [円/kwh] × 運転日数 [日/年] × 稼
働率 [%]
水道
熱媒体(鉱物油)
-
-
循環利用のため計上せず
循環利用のため計上せず
灯油(乾燥用)
72円/Lを計上
必要蒸発量 [kg- H2O] × 水1kg当り蒸発潜熱
(2.256MJ/kg) ÷ 乾燥機効率 [%] ÷ 灯油熱量
[MJ/ ] × 単価[円/ ] × 運転日数 [日/年] × 稼働率
[%]
プラントメンテナンス費
プラントイニシャルの3%とする。
建築メンテナンス費
プラントイニシャルの1%とする。
バイオコークス製造
プラント
基本能力を10t/24h、300日運転とし、NEDO開発目
標値1億円とした(規模に応じ可変)。乾燥機・ プラント建設費(1億円) × 0.9(残存価格
粉砕器をそれぞれ2500万円とした(規模に応じ可 10%) ÷ プラント法定耐用年数(7年)
変)。残存価格:10%
④メンテ
ナンス費
⑤イニシャル 建物
(W50m×D15m
コスト
(償却費) ×H15m)
付帯機器
地代
金利
⑥一般管理費
⑦租税公課 固定資産税
⑧バイオ
コークス原料
収集運搬費
⑨バイオ
コークス
輸送費
⑩事業費
車両コスト
2
坪(3.3m2)単価:20万円として計上した(規模に
応じ可変)。残存価格:10%
建物面積(W50m×D15m) ÷ 3.3 [m /坪] × 坪
単価(20万円/坪)× 0.9(残存価格10%) ÷ 建
物法定耐用年数(30年)
乾燥機2,500万円/10t
粉砕機2,500万円/10t
(必要に応じ)
設備単価 [円/10t]×原料日量 [t/日]÷10
土地を借地として年額5,000円/m2を計上した(規 建物面積(W50m×D15m) ×
2
模に応じ可変)。
地代(5,000円/ m ・年)
(プラント建設費 + 建物費 + 付帯機器) × 金
3%とした。
利(3%)
バイオコークス売上げの5%とする(売上としてバイオコークス40000円/tを仮定)。
イニシャルコスト(プラント+建物+付帯機器)の1.6%とする。
(原料条件により以下のいずれかを使用)
トラックリース費 [円/日] ×(原料集荷量 [t/
4t:35,000円/日(運転手込み・燃料別)
日]÷ トラック積載量 [t/台] )×( 総運搬距離
10t:49,000円/日
[km/日] ÷ 1台当り走行距離[km/日] )× 運転日
(運転手込み・燃料別:建設物価 H20/7号)
数 [日/年]
1日最大走行距離:200km
燃料コスト
72円/Lを計上
総延長距離 [km/日] ÷ 燃費(10t車:4.15km/ ,
4t車:8.12km/ ) × 燃料費(72円/ )× 運転日
数 [日/年]
車両コスト
10t:49,000円/日(運転手込み・燃料別:建設物
価 H20/7号)
1日最大走行距離:200km
トラックリース費 [円/台・日] × (バイオコーク
ス製造量 [t/日]÷ トラック積載量 [t/台] )×(
総輸送距離 [km/日]÷ 1台当り走行距離 [km/日]
)× 運転日数 [日/年]
燃料コスト
72円/Lを計上
総延長距離 [km/日] ÷ 燃費(10t車:4.15km/ )
× 燃料費(72円/ )× 運転日数 [日/年]
①+②+③+④+⑤+⑥+⑦+⑧+⑨
5-7
5.1.3 FS 検討結果
前項で設定した条件により実施した FS の結果は、表 5.7 に示す。
(1) バイオコークス原料量と消費量
本検討で設定したバイオコークス原料量と、消費量の評価は、表 5.8 に示す。
5-8
表 5.7 FS 検討結果
バイオコークス1tあたりコスト
経済性(千円/t)
検討
ケース
Case1
バイオ
製造
コークス
場所
原料
利
用
場
所
物質の流れ
製材残材→輸送→バ
イオコークス製造(製材
製材残
製材所 高炉 所)→輸送→高炉
材
コスト
バイオマス バイオコー
バイオコーク バイオマス
前処理・製造費
利用可 クス製造
バイオコークス
ス利用量 集荷方
能量
量
輸送方法
前処理
ランニングコスト
イニ
(万t/年)
法
(万t/年) (万t/年)
集荷 シャル
メンテ プラン 一般
粉砕
コスト 乾燥コ コス 人件 ナンス ト電気 管理
スト
費
ト
費
代
費
10.00
5.55
5.54
トラック輸送
(距離:
15km/台)
トラック輸送
(距離:
300km)
0.29
トラック輸送
(距離:
60km)
トラック輸送
(距離:55km)
0.84 10.09
0.92 1.74
1.69
1.15
5.79
効果
小計
2.00 13.30
租税
公課
0.78
輸送
8.20
廃棄 バイオコー
小計
物 クス利用に
受け入 よる効果
れ費
33.20
0
0.00
削減効
排出
果
クレジット費
小計 (t-CO2) (千円/t)
33.20
1.64
1.40
0.39
3.04
8.77
19.18 0.00 12.09
1.15
4.47
2.00 38.89
0.78
7.71
59.17
0
11.50
47.67
2.10
Case3
場
1.19
0.26
トラック輸送
(距離:25km)
0.20
なし
0.40
トラック輸送
(距離:
40km/台)
0.35
トラック輸送
(距離:
40km/台)
トラック輸送
(距離:20km)
2.33
トラック輸送
(距離:160
km/台)
トラック輸送
(距離:65km)
5.00
トラック輸送
(距離:
25km/台)
トラック輸送
(距離:70km)
0.00
8.77
22.76 0.00 17.77
1.15
5.11
2.00 48.79
0.78
5.61
63.94
0
0.00
63.94
1.84
Case4
林地残材→輸送→バ
イオコークス製造(森林組
合)→輸送→電炉メー
電炉 カー
Case5-1
0.48
0.66
0.45
0.37
トラック輸送
(距離:45km)
6.90
7.97
5.94 10.09
0.00 0.00 10.36
0.92 3.36 12.90
1.15
1.15
5.79
5.79
2.00 19.30
2.00 26.12
0.78
0.78
4.54
4.07
39.49
47.00
0
0
0.00
0.00
39.49
47.00
2.71
3.08
3.15
・逆有償でリサイ
・食品リサイクル
クルされており、
法では、肥料化
バイオコークスの
/飼料化が優先
価格が問題とな
されている
る
・排熱の有効利用による
乾燥コストの低減
・食品リサイクル法の見直
し
2.75
・乾燥コストが3割
強を占める
・腐敗しやすいた
め自然乾燥が困
61.19 難
・プラント規模が小
さいため人件費コ
ストが高い
・有価売却して
いるが、乾燥コス
トにより採算が取
れていないた
め、バイオコーク
スの価格が問題
となる
・食品リサイクル
法では、肥料化
/飼料化が優先
されている
・排熱の有効利用による
乾燥コストの低減
・食品リサイクル法の見直
し
4.07
・人件費コストが高
い(約50%)
35.42 ・イニシャルコスト
がコストの20%と高
めである
・比重か低い
(0.1)ため集荷コ
ストが高い。
・発生に季節性
がある(9月~3
月)
ー
・イニシャルコストの低減
・季節に応じた植物由来
廃棄物の組み合わせによ
る稼働率の向上(刈草と
の組み合わせ)
4.61
・イニシャルコスト
・森林吸収によ
がコストの20%と高
・排出権クレジットの価格
・集荷コストが高 る排出権クレ
めである
の上乗せ
ジットは、収支を
42.38 ・プラント規模が小 い
・低コスト集荷により、地
改善できるほど
さいため人件費コ
域的な循環が期待できる
の価格ではない
ストが高い
4.66
・イニシャルコストと
・森林吸収によ
・排出権クレジットの価格
前処理・製造費が ・集荷コストが高 る排出権クレ
の上乗せ
ジットは、収支を
35.46 コストの60%とプラ い
・低コスト集荷により地域
ント経費率が大き
改善できるほど
的な循環が期待できる
い
の価格ではない
Bシナリオ
林地残 森林組
材
合
林地残材→輸送→バ
イオコークス製造(森林組
高炉 合)→輸送→高炉
Case5-2
4.21
2.34
13.66 10.09
0.92 1.73
2.01
1.15
5.79
2.00 13.60
0.78
2.00
40.13
0
0.00
40.13
3.11
Bシナリオ
Case6
発生木材→輸送→バ
イオコークス製造(中間処
建設発 中間処
理施設)→輸送→高
高炉 炉
生木材 理施設
7.40
6.99
1.57 10.09
0.25 1.75
0.67
1.15
5.79
2.00 11.62
0.78
2.02
26.07
40
15.00 -28.94
2.66
Case7
刈草
理施設
17.06
9.48
10.00
なし
トラック輸送
(距離:平均
180km/台)
0.00 10.09
0.92 1.74
6.94
1.15 13.87
2.00 26.62
Aシナリオ
5-9
0.78
4.65
42.13
0
2.35
39.78
1.82
ー
・イニシャルコストと、製造
コストの低減
・輸送コスト低減のため、
消費地近くの発生源の確
保
3.99
・イニシャルコストと
前処理・製造費が
-32.93 コストの85%とプラ
ント経費率が大き
い
・逆有償でリサイ
クルさているた
め、バイオコーク
ス価格が問題と
なる。
・イニシャルコストと、ラン
・建設リサイクル
ニングコストの低減
法では、リサイク
・(設置場所次第で)建設
ル先に距離制限
リサイクル法の距離制限
(50km)がある
(50km)の見直し
2.73
・各河川事務所ご
とにプラントを設置
するため、人件費
が高い。
37.05 ・プラント経費がコ
ストの8割と高い
(プラント電気代だ
けでコストの3割
強)。
・発生源が広域
に分散している
ため大規模プラ
ントの事業は難
しい
・発生に季節性
がある(5月~9
月)
・現在、刈放や
一部では野焼き ・季節に応じた植物由来
が行われるなど 廃棄物の組み合わせによ
リサイクル率が低 る稼働率の向上(もみ殻
いため、リサイク との組み合わせ)
ルを義務付ける ・刈草のリサイクルを義務
制度が必要とな 付ける制度
る
Bシナリオ
刈草→バイオコークス製
造(河川管理事務
中間処
高炉 所)→輸送→高炉
改善策案
制度面
・乾燥コストがコス
トの3割強を占める
44.53 ・腐敗しやすいた
め自然乾燥が困
難
Aシナリオ
農作物非食用品→
カントリー
農作物
輸送→バイオコークス製
エレベー
非食用
造(ライスセンター等)→輸
ター,ライ 電炉
送→電炉メーカー
部(もみ
スセンター
がら)
等
Bシナリオ
循環システム
構築面
2.46
Bシナリオ
オカラ→バイオコークス
製造(豆腐工場)→
豆腐工
おから
電炉 輸送→電炉メーカー
技術面
・輸送距離が長
いためコストが高
い
・発生量の内、
自社ボイラーで
利用されている
ものもある
茶がら等→輸送→バ
Case2
合計
・イニシャルコスト、
ランニングコストが
30.74 コストの半分以上
を占め、プラント経
費が高い
Bシナリオ
イオコークス製造(食品工
お茶が
食品工
場)→輸送→電炉メー
ら・コー
電炉
カー
場
ヒーかす
課題・問題点
CO2削減効果
5-10
Case4
Case7
Case6
Case5-2
発生量:5施設 計7.4
発生量:4.21
(間伐実施面積 1,620ha)
発生量:0.66
(間伐実施面積 270ha)
茨城県:
発生量:0.48(もみがら)
利用量:0.48(もみがら)(用途:
堆肥化)
刈草
発生量:17.06
利用量:4.32t/年(用途:堆肥
化、牧草等)
建設発生
利用量:7.4(用途:パーティクル
木材 ボード原料など)
林地
残材
農作物非
食用部
(もみが
ら、稲わ
ら、麦わ
ら等)
Case5-1
おから
Case3
発生量:1.19
利用量:1.19(用途:飼料等)
お茶が
発生量:1.4
ら・コーヒー
利用量:1.4(用途:堆肥)
かす
発生量:52.5
利用量:42.5(用途:製紙原料、
畜産用敷材、自社ボイラー用燃
料)
製材
残材
Case1
Case2
バイオマス発生量と
利用量(万t/年)
バイオコーク
ス原料
検討
ケース
17.06
7.40
4.21
0.66
0.48
1.19
1.40
10.00
9.48
6.99
2.34
0.37
0.45
0.26
0.39
5.55
・1,620haの林地部を間伐することにより、年間粗鋼量155万t.規模の高炉に
必要なバイオコークス量を確保することができる。
・270haの林地部を間伐することにより、年間粗鋼量25.6万t規模と18.3万t規
模の二つの電炉で必要なバイオコークス量を確保することができる。
高炉(利用率1.5%)
(高炉2基):10.0(粗鋼
量667万t/年)
・発生する刈草は放置されるか、堆肥化したものを無償で提供しており、採
算が取れていないため、発生量全量をバイオコークス原料とする。
・関東8河川及び静岡県4河川(総河川延長1,480km)より刈草を収集し、
Case6の建設発生木材における余剰量と組み合わせることで、年間粗鋼量667
万t規模の高炉2基に必要なバイオコークスを確保できる。
・逆有償でリサイクルを行っているため、発生量の全量をバイオコークス原
料とする。
・関東の中間処理施設の5施設(建設発生木材取扱総量74万t/年)より集荷す
高炉(利用率1.5%)
ることにより、年間粗鋼量333万t/規模の高炉1基に必要なバイオコークス量
(高炉1基):5.0(粗鋼
を確保することができる。
量333万t/年)
・余剰量は、Case7の刈草における不足分を補う。2ケースを組み合わせるこ
とで、年間粗鋼量1,000t規模の高炉に必要なバイオコークス量が確保でき
る。
高炉(利用率1.5%)
:2.33(粗鋼量155万t/年)
電炉(利用率0.8%)
(70tバッチ):0.20(粗鋼
量25.6万t/年)
(50tバッチ):0.15(粗鋼
量18.3万t/年)
計:0.35
・無償でリサイクルを行っているため、発生量全量をバイオコークス原料と
する。
・茨城県下のカントリーエレベーター11箇所(籾受け入れ総量27,000t/年)
より集荷することにより、年間粗鋼量25.6万t規模の電炉2事業所に必要なバ
イオコークス量を確保することができる。
・有価でリサイクルされているが、前処理コストにより採算が取れていない
ため、発生量全量をバイオコークス原料量とする。
・年間粗鋼量25.6万t規模の電炉に必要なバイオコークス量を確保するには、
豆腐生産量5,000万丁/年、油揚げ生産量5,000万枚/年規模の豆腐工場が必要
となる。
電炉(利用率0.8%)
(70tバッチ):0.20(粗鋼
量25.6万t/年)
電炉(利用率0.8%)
(70tバッチ):0.20(粗鋼
量25.6万t/年)
(70tバッチ):0.20(粗鋼
量25.6万t/年)
計:0.40
・逆有償でリサイクルされているため、発生量全量をバイオコークス原料量
とする。
・粗鋼量36.5万t/年の電炉に必要なバイオコークス量を確保するには、飲料
工場が2工場(2工場で生産量40万k /年)必要となる。
・発生量のうち、未利用となっている量をバイオコークス原料量とする。
・粗鋼量369万t/年規模の高炉に必要なバイオコークス量を確保するには、製
材生産量65,000t/年規模の製材所が10工場必要となる。
評価
電炉(利用率0.8%)
(100tバッチ):0.29(粗
鋼量36.5万t/年)
高炉(利用率1.5%)
:5.54(粗鋼量369万t/年)
バイオコークス
消費量(万t/年)
表 5.8 バイオコークス原料量と消費量の評価
バイオコークス バイオコークス
原料量[万t/年] 製造量[万t/年]
(2) 事業費
各検討ケースにおけるバイオコークス 1 トン当りのコストは、図 5.3 に、バイオコークス
原価を整理したものは、表 5.9 に示す。
バイオコークス 1 トン当りのコストは、約 26 千円/t から約 64 千円/t の範囲となる。
最も高いケースは Case3 のおからで、ランニングコストおよび乾燥コストが他ケースに比
べて高くなっている。最も低いケースは Case6 の建設発生木材で、他ケースに比べて原料集
荷、バイオコークス輸送、ランニングコストが低くなっている。
c
[千円/t]
100
80
集荷
イニシャルコスト
乾燥コスト
粉砕コスト
ランニングコスト
(人件費除く)
人件費
租税公課
輸送
63.94
59.17
60
47.00
40
42.13
40.13
39.49
33.20
26.07
20
0
製造原料
地域
シナリオ
検討ケース
製材残材 お茶がら・
コーヒーかす
おから
もみがら 林地残材 林地残材 建設発生
木材
刈草
(九州)
(関東)
(埼玉)
(茨城)
(大阪)
(北海道)
B
B
A
B
B
B
(関東) (関東・静岡)
B
A
Case1
Case2
Case3
Case4
Case5-1
Case5-2
Case6
Case7
図 5.3 バイオコークス 1 トン当りコスト
表 5.9 バイオコークス原価
検討ケース
Case1
Case2
Case3
Case4
Case5-1
Case5-2
原料
製材所残材
お茶がら・コーヒーかす
おから
もみがら
林地残材(大阪)
林地残材(北海道)
バイオコークス原価(千円/t)
32.65
59.17
63.94
39.49
47.00
40.13
Case6
Case7
建設発生木材
刈草
26.07
42.13
5-11
バイオコークス 1 トン当りのコスト割合は、図 5.4 に示す。また、結果は以下のとおりで
ある。
・Case2 のお茶がら・コーヒーかすと Case3 のおからでは乾燥コストが全体の 3 割以上を
占めている。これは、お茶がら・コーヒーかすとおからの含水率が、他原料に比べて高
いためである。
・Case4 のもみがら、Case5-1 及び Case5-2 の林地残材では、原料集荷に要するコスト割
合が他のケースに比べ高くなっている。もみがらは、比重が低く輸送効率が低いことと
複数の発生源から原料を収集しているため、林地残材は、広域の林地部より原料を集荷
にするため、収集運搬距離が長くなり集荷コストが高くなる。
・Case1 の製材所残材は、バイオコークス輸送コストが他ケースより高くなっている。こ
のケースでは、製造したバイオコークスを宮崎から福岡まで長距離輸送するため、輸送
コストが高くなっている。
・Case2 のお茶がら・コーヒーかす、Case3 のおから、Case4 のもみがら、及び Case5-1
の林地残材(大阪)では、人件費が 20%から 26%を占めている。人件費はプラント規模
によらず、一定の価格を想定しているため、プラント規模の小さいケースでは人件費の
占める割合が高くなる。
輸送
租税公課
100%
13%
90%
人件費
ランニングコスト
(人件費除く)
粉砕コスト
25%
1%
2%
5%
20%
9%
1%
11%
2%
2%
5%
2%
5%
27%
22%
9%
80%
70%
28%
26%
集荷
60%
13%
27%
13%
地域
39%
21%
30%
14%
3%
40%
4%
2%
34%
15%
17%
24%
13%
6%
5%
製材残材 お茶がら・
コーヒーかす
製造原料
7%
1%
36%
20%
10%
0%
25%
7%
2%
32%
30%
20%
2%
16%
19%
23%
5%
3%
11%
4%
2%
50%
40%
3%
3%
34%
乾燥コスト
イニシャルコスト
8%
おから
もみがら 林地残材 林地残材 建設発生
木材
刈草
(九州)
(関東)
(埼玉)
(茨城)
(大阪)
(北海道)
B
B
A
B
B
B
B
A
検討ケース
Case1
Case2
Case3
Case4
Case5-1
Case5-2
Case6
Case7
トンコスト合計[円/t]
33.20
59.17
63.94
39.49
47.00
40.13
26.07
42.13
シナリオ
図 5.4 バイオコークス 1 トン当りのコスト割合
5-12
(関東) (関東・静岡)
次に、バイオコークス 1 トン当りのコストと、バイオコークス製造による効果の比較を図
5.5 に示す。また、各検討ケースのコスト、効果の結果を整理したものを表 5.10 に示す。
Case6 の建設発生木材を除き、効果を見込んだコストは、30 千~60 千円/t となっている。
Case6 では、廃棄物受け入れ費用 40 千円/t を見込むことで採算が取れる結果となる。
排出クレジット費は 2.5 千~4.7 千円/t 程度であり、コストの 10%と低いものとなってい
[千円/t]
る。
80
60
コバ
スイ
トオ
コ
ー
40
ク
ス
20
0
-20
効
果
-40
製造原料
-60
地域
シナリオ
検討ケース
製材残材 お茶がら・
コーヒーかす
おから
もみがら 林地残材 林地残材 建設発生
木材
(九州)
(関東)
(埼玉)
(茨城)
(大阪)
(北海道)
B
B
A
B
B
B
Case1
Case2
Case3
Case4
Case5-1 Case5-2
刈草
(関東) (関東・静岡)
B
A
Case6
Case7
凡例
輸送
バイオコークス輸送コスト
前処理・製造
前処理・製造に掛かるコスト
イニシャルコスト
プラント建設費等
集荷
原料集荷コスト
廃棄物受け入れ費
原料集荷時の廃棄物受け入れ収入
バイオコークス製造による効果
これまで処理に掛けていたコスト
排出クレジット費
CO2 削減による排出権取引収入
コスト
効果
図 5.5 バイオコークス 1 トン当りのコストと効果
5-13
表 5.10 バイオコークス 1 トン当りのコストと効果
検討
単位:千円/t
②効果
原料
①コスト
ケース
①-②
廃棄物処理費
製造効果
排出クレジット費
計
Case1
製材所残材
32.65
0.00
0.00
2.46
2.46
30.19
Case2
お茶がら・
コーヒーかす
59.17
0.00
11.50
3.15
14.65
44.52
Case3
おから
63.94
0.00
0.00
2.75
2.75
61.19
Case4
もみがら
39.49
0.00
0.00
4.07
4.07
35.42
Case5-1
林地残材(大阪)
47.00
0.00
0.00
4.61
4.61
42.39
Case5-2
林地残材(北海道)
40.13
0.00
0.00
4.66
4.66
35.47
Case6
(建設発生木材)
26.07
40.00
15.00
3.99
58.99
-18.99
Case7
刈草
42.13
0.00
2.35
2.73
5.08
37.05
5.2 地球温暖化対策効果
5.2.1 検討フロー
地球温暖化対策効果の検討フローは、のとおりである。原料の収集からバイオコークスの使用
に係る一連のプロセスに要するエネルギーを算出し、用益ごとに換算係数を用いて CO2 発生量
に換算し CO2 収支の計算を行った(図 5.6)。
(1)検討条件の設定
(2)エネルギー収支の算出
(3)CO2 削減量の算出
(4)評価
図 5.6 地球温暖化対策効果検討フロー
5.2.2 検討条件の設定
エネルギー収支の検討に要するパラメータは、省エネ法施行規則などに基づき表 5.11 のとお
り設定する。
エネルギー収支・CO2 収支算出方法は、表 5.12 に示す。
5-14
林地残材を使用してバイオコークスを製造した場合は、森林の吸収を想定して、表 5.13 のと
おり森林吸収量を設定した。
表 5.11 エネルギー収支の検討条件
項 目
燃費(4t車)
燃費(10t車)
灯油熱量
軽油熱量
蒸発潜熱(水1kgあたり)
乾燥効率(理論値に対し)※1
バイオコークス熱量※2
コークス熱量
電力量換算
バイオコークス1kgに対するコーク
スの割合
数 値
8.12
km/L
4.15
km/L
36.7
MJ/L
38.2
MJ/L
2.256
(MJ/kg)
60
%
22
MJ/kg
29.1
3.6
0.76
備考
省エネ法燃費基準
省エネ法燃費基準
理科年表2007
※1想定値
※2近畿大学井田准
教授データによる。
MJ/kg
MJ/kWh
表 5.12 エネルギー収支・CO2 収支算出方法
項 目
①原料収集
CO2 計算方法
原料収集における軽油消費量 [ /日] ×
軽 油 熱 量 ( 38.2MJ/ ) × CO2 排 出 係 数
(0.00007t-CO2/MJ)×運転日数 [日/年]
③機械乾燥
(灯油換算)
④粉砕動力
⑤プラント動力
⑥バイオコークス輸送
⑦コークス置換削減
CO2
軽油消費量 [ ] × 軽油熱
量(38.2MJ/ )
自然乾燥蒸発量 [kg‐H2O]
× 水 1kg 当 り 蒸 発 潜 熱
(2.256MJ/kg‐H2O)
②自然乾燥
乾燥
エネルギー計算方法
灯油換算燃料使用量 [ /日] × 灯油熱
量(36.7MJ/ )× CO2 排出係数
(0.00007t-CO2/MJ)× 運転日数 [日/
年]
粉砕機消費電力量 [kwh/日] × CO2 排出
係数(0.00056t- CO2/kwh)× 運転日数
[日/年]
プラント消費電力量 [kwh/日] × CO2 排
出係数(0.00056t- CO2/kwh)× 運転日
数 [日/年]
バイオコークス輸送における軽油消費量
[ /日] × 軽油熱量(38.2MJ/ )× CO2
排出係数(0.00007t-CO2/MJ)× 運転日
数 [日/年]
バイオコークス製造量 [kg/日] × (バ
イオコークス熱量[MJ/kg] ÷ コークス
熱量 [MJ/kg])× コークス燃焼発生 CO2
[t- CO2/kg] × 運転日数 [日/年]
機械乾燥蒸発量 [kg-H2O] ×
水 1kg 当 り 蒸 発 潜 熱
(2.256MJ/kg‐H2O)
粉砕機消費電力量 [kwh] ×
3.6(単位換算) [MJ/kwh]
プラント消費電力量 [kwh]
× 3.6 [MJ/kwh]
軽油消費量 [ ] × 軽油熱
量(38.2MJ/ )
バイオコークス製造量
[kg]× バイオコークス熱量
(22MJ/kg)
⑧バイオコークス熱量
⑨コークス製造時発生
CO2
バイオコークス製造量 [kg/日] × (バ
イオコークス熱量[MJ/kg] ÷ コークス
熱量 [MJ/kg]) × コークス製造時発生
[t- CO2/kg] × 運転日数 [日/年]
CO2 削減効果
⑦+⑨-(①+②+④+⑤+⑥)
エネルギー収支
⑧-(①+②+③+④+⑤+⑥)
5-15
表 5.13 森林吸収量の設定条件
設定項目
検討ケース
Case 5-1:林地残材(大阪)
Case 5-2:林地残材(北海道)
単位あたり立木
160
間伐率
35%
搬出率
55%
m3/ha
160
m3/ha
35%
55%
3
30.8
日間伐面積
0.85
ha/日
5.4
ha/日
300
日/年
300
日/年
年間稼働日数
年間間伐面積
日量換算
30.8
255.0
ha/年
1,620
ha/年
2.55
km2/年
16.20
km2/年
1.8
t-C/ha
1.8
t-C/ha
1ヘクタール当たりの吸収量
年間間伐面積当たりの吸収量
m /ha
m3/ha
単位あたり搬出量
6.5
t- CO2/ha
6.5
t- CO2/ha
1657.5
t- CO2/年
10,530
t- CO2/年
5.53
t- CO2/日
35.1
t- CO2/日
間伐率は、
「高槻市カーボンニュートラル創造の森づくり推進プラン」の設定を引用。
森林吸収量は、
(財)省エネルギーセンターのホームページに記載の方法を使用
5.2.3 検討結果
(1) エネルギー収支
各検討ケースにおけるエネルギー収支は、表 5.14 に示す。
各検討ケースのエネルギー収支率は、0.34 から 0.93 の範囲となる。
Case2 のお茶がら・コーヒーかす、Case3 のおからは、高含水のため乾燥に要するエネル
ギーが高く、エネルギー収支は、他ケースに比べて低いものとなっている。
表 5.14 エネルギー収支結果
検討ケース
原料
Case1
Case2
Case3
Case4
Case5-1
Case5-2
製材所残材
お茶がら・コーヒー
かす
おから
もみがら
林地残材(大阪)
林地残材(北海道)
Case6
Case7
建設発生木材
刈草
BC 熱量
(MJ/t-BC)
①
22,000
22,000
BC 製造エネルギー
(MJ/t-BC)②
エネルギー収支
(MJ/t-BC)①-②
3,575
10.907
18,425
11,093
エネルギー
収支率
(①-②)/①
0.84
0.50
22,000
22,000
22,000
22,000
14,413
1,622
3,752
2,470
7,587
20,498
18,248
19,530
0.34
0.93
0.83
0.88
22,000
22,000
1,892
5,159
20,108
18,059
0.91
0.82
(2) CO2 削減効果
図 5.7 にバイオコークスコークス 1t 置換あたりの CO2 削減効果を示す。バイオコークス 1
トン製造ごとに約 1.5~3t のコークス置き換えによる CO2 削減効果が期待される。また、各
検討ケースにおける CO2 削減量、及び鉄鋼業における CO2 削減率を表 5.15 に示す。各ケー
スにおける CO2 削減量は、0.4 万 t-CO2/年から 18 万 t-CO2/年である。
5-16
CO2削減効果(t-CO2)
3.50
3.00
2.50
2.00
1.50
1.00
0.50
刈
草
お
製
茶
材
が
残
ら
材
・コ
ーヒ
農
ーか
作
す
物
非
食
お
用
か
部
ら
(も
み
林
が
地
ら
残
)
材
林
(大
地
残
阪
材
)
(北
海
建
道
設
)
発
生
木
材
0.00
図 5.7 バイオコークスコークス 1t 置換あたりの CO2 削減効果
表 5.15
検討
ケース
Case1
Case2
Case3
Case4
Case5-1
Case5-2
Case6
Case7
原料
製材所残材
お茶がら・
コーヒーかす
おから
もみがら
林地残材
(大阪)
林地残材
(北海道)
建設発生木材
刈草
BC 製造量
(万 t/年)
CO2 削減効果
CO2 削減量
森林吸収量
(万 t- CO2/年)
(万 t- CO2/年)
排出
クレジット費
(千円/t)*
5.55
-
9.12
2.46
0.39
-
0.82
3.15
0.26
0.45
-
0.49
1.23
2.75
4.07
0.37
0.18
1.12
4.61
2.34
1.16
7.28
4.66
6.99
9.48
-
18.56
17.25
3.99
2.73
*クレジット価格 1.5 千円/t- CO2 の場合
5-17
5.3 課題の抽出と改善方法の検討
5.3.1 課題の抽出
FS 検討結果から、以下に示す課題が挙げられる。
(1) 乾燥コスト
表 5.16 に、Case2 のお茶がら・コーヒーかすと Case3 のおからのコスト内訳を示す。お
茶がら・コーヒーかすとおからは含水率が高いため、原料の乾燥のために必要である灯油に
かかるコストが約 30%を占めている。おからのように高含水の原料では、乾燥に掛かるコス
トが課題となる。
表 5.16 お茶がら・コーヒーかすとおからの製造原価(コスト)内訳
お茶がら・コーヒーかす
おから
コスト比率
租税公課
一般管理費 1%
輸送
13%
集荷
5%
イニシャルコスト
15%
3%
プラント電気代
8%
一般管理費 租税公課
1%
3%
プラント電気代
8%
輸送
9% 集荷
0%
イニシャルコスト
14%
メンテナンス費
2%
メンテナンス費
2%
乾燥コスト
35%
乾燥コスト
33%
人件費
20%
人件費
28%
粉砕コスト
0%
粉砕コスト
0%
バイオコークス 1 トン当りのコスト
59.17 千円
63.94 千円
5-18
(2) イニシャルコスト
図 5.8 に Case6 の建設発生木材のコスト内訳を示す。Case6 の建設発生木材はイニシャル
コストが 38%を占めている。Case6 ではバイオコークス製造プラントが全ケース中で最大規
模を想定している。本検討ではプラントのスケールアップによるメリットを設定していない
ため、大規模プラントを想定するケースでは、イニシャルコストが課題となる。
租税公課 輸送
8%
3%
一般管理費
8%
集荷
6%
イニシャルコスト
38%
プラント電気代
22%
メンテナンス費
4%
人件費
3%
バイオコークス 1 トン当りのコスト
26.07 千円/t-BC
乾燥コスト
1%
粉砕コスト
7%
図 5.8 Case6(建設発生木材)のコスト内訳
(3) 収集コスト
図 5.9 に Case5-2 の林地残材(北海道)のコスト内訳を示す。Case5-2 では、収集コスト
が 35%を占め、他ケースに比べ高い割合となっている。林地残材を広範囲の林地部より収集
するため、原料収集距離が長距離となっている。林地残材の収集や、原料の長距離輸送を想
定するケースでは輸送コストが問題となる。
一般管理費
5%
租税公課
2%
プラント電気代
14%
輸送
5%
集荷
35%
バイオコークス 1 トン当りのコスト
メンテナンス費
3%
40.13 千円/t-BC
人件費
5%
粉砕コスト
4%
乾燥コスト
2%
イニシャルコスト
25%
図 5.9 Case5-2(林地残材
5-19
北海道)のコスト内訳
5.3.2 改善方法の検討
ここでは、5.3.1 (1) で抽出した乾燥コストに着目して改善方法を検討する。
おからやお茶がら・コーヒーかすなどの高含水率の原料においては、機械乾燥に要するコスト
が高くなっている。この機械乾燥にかかるコストの削減方法として、バイオコークス消費地であ
る製鉄所で発生する排熱を原料の乾燥に利用するシナリオが挙げられる。
表 5.17 には、バイオコークスプラントを製鉄所に設置するシナリオを示す。バイオコークス
プラントを製鉄所に設置することで、製鉄所で未利用の排熱を原料の乾燥に利用することが可能
となる。原料は発生源から小口でプラントまで輸送する。
5.1.2 FS 検討条件の設定の条件を基に、各検討ケースに製鉄所排熱利用シナリオを設定し FS
検討を行った結果は、表 5.18 に示す。
表 5.17 バイオコークスプラントを製鉄所に設置するシナリオ
シナリオ
模式図
特徴
バイオコークス
プラント(集積地)
C
原料輸送(小口輸送)
製鉄所
(消費地)
発生源
(植物由来廃棄物発生源)
5-20
バイオコークス製造プラント消
費地設置型
製鉄所(消費地)にバイオコーク
ス製造プラントを設置し周辺の
植物由来廃棄物発生源から原料
の収集を行い、バイオコークスを
製造するシナリオである
5-21
電炉
高炉
建設発生木
高炉
材
林地残材
Case7 刈草
Case6
Case5-2
Case5-1
農作物非食
Case4 用部(もみが 電炉
ら)
高炉
高炉
高炉
電炉
電炉
電炉
Case3 オカラ
電炉
電炉
お茶がら・コー
Case2
電炉
ヒーかす
利用
場所
高炉
製造
場所
高炉
バイオコークス
原料
Case1 製材残材
検討
ケース
6,600
4,800
11,900
Cシナリオ
Cシナリオ
刈草→輸送→
バイオコークス製
造(高炉)→高
127,000
炉
Cシナリオ
発生木材→輸
送→バイオコーク
ス製造(高炉)→
74,000
高炉
Cシナリオ
林地残材→輸
送→バイオコーク
ス製造(高炉)→
42,100
高炉
Cシナリオ
林地残材→輸
送→バイオコーク
ス製造(電炉)→
電炉メーカー
Cシナリオ
農作物非食用
品→輸送→バ
イオコークス製造
(電炉)→電炉
メーカー
Cシナリオ
オカラ→輸送
→バイオコークス
製造(電炉)→
電炉メーカー
茶がら等→輸
送→バイオコーク
ス製造(電炉)→
14,000
電炉メーカー
製材残材→輸
送→バイオコーク
525,000
ス製造(高炉)→
高炉
物質の流れ
94,800
69,900
23,400
3,700
4,500
2,600
3,900
55,500
トラック輸送
(距離:
なし
平均
104km/台)
なし
なし
なし
バイオ
コークス
輸送
方法
トラック輸送
100,000 (距離:平均 なし
180km/台)
トラック輸送
50,000 (距離:
なし
195km/台)
トラック輸送
23,300 (距離:
なし
224km/台)
トラック輸送
3,500 (距離:
なし
61.5km/台)
4,000
トラック輸送
2,000 (距離:
25km)
トラック輸送
2,900 (距離:
55km)
トラック輸送
55,400 (距離:
300km)
バイオマス バイオコー
バイオコーク
バイオマス
利用可 クス製造
ス利用量
集荷方法
量
能量
(万t/年)
(万t/年) (万t/年)
7.97
8.77
8.77
23.15 10.09
5.17 10.09
19.31 10.09
6.03 10.09
13.71
5.66
11.91
30.23 10.09
集荷
イニ
シャル
コスト
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
乾燥
コスト
1.74
1.75
1.73
3.36
0.00
0.00
0.00
1.74
粉砕
コスト
前処理
0.50
0.67
2.01
12.90
10.36
17.77
12.09
1.69
人件費
コスト
1.15
1.15
1.15
1.15
1.15
1.15
1.15
1.15
メンテ
ナンス
費
13.87
5.79
5.79
5.79
5.79
5.11
4.47
5.79
プラント
電気代
前処理・製造費
ランニングコスト
2.00
2.00
2.00
2.00
2.00
2.00
2.00
2.00
一般
管理費
19.26
11.37
12.68
25.20
19.30
26.03
19.71
12.38
小計
0.78
0.78
0.78
0.78
0.78
0.78
0.78
0.78
租税公課
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
輸送
バイオコークス1tあたりコスト
経済性(千円/t)
表 5.18 FS 検討結果(製鉄所廃熱利用シナリオ)
53.28
27.41
42.85
42.10
41.76
41.23
41.16
53.47
小計
0
40
0
0
0
0
0
0
2.35
15
0
0
0
0
11.5
0
バイオ
コークス
廃棄物 利用に
受入費 よる効果
効果
50.93
-27.60
42.85
42.10
41.76
41.23
29.66
53.47
小計
1.82
2.66
3.14
3.11
2.70
2.73
2.75
2.17
削減効果
(t-CO2)
2.73
3.99
4.70
4.66
4.05
4.09
4.13
3.25
排出
クレジット
費
(千円/
t)
CO2削減効果
48.19
-31.59
38.15
37.44
37.71
37.14
25.53
50.22
合計
図 5.10 と表 5.18 は、当初設定したシナリオと製鉄所排熱利用シナリオのバイオコークス
1 トン当りのコストを比較したものである。また、表 5.19 にコスト削減効果を示す。
Case2 のお茶がら・コーヒーかす、Case3 のおからは、当初設定したシナリオに比べコス
トが 30%以上削減され、乾燥コストの削減効果がある。
Case5-1 の林地残材(大阪)以外のケースでは、乾燥コストの削減よりも、原料集荷コス
トの増加が大きくなっている。特に Case1 の製材残材と Case7 の刈草は、原料発生源から消
費地までの距離が長く、原料のまま輸送することで輸送効率が悪化し、集荷コストが Case1
で約 3 倍、Case7 で約 5 倍に増加している。
Case5-1 の林地残材(大阪)において、原料集荷コストが増大していないのは、プラント
から消費地までの距離が短いためである。B シナリオと C シナリオの原料収集距離の差がほ
とんどなく、集荷コストがほぼ同じとなり、C シナリオではバイオコークス輸送コストの分
が削減される結果となる。
製鉄所排熱利用シナリオは、乾燥コストの削減に有効であるが、原料収集コストが増加す
るデメリットがあり、収集距離が長いケースでは最高で約 5 倍も増大する。本検討では乾燥
コストが 30%以上あり、輸送コストが 25%以下のケースでコスト削減効果が見られた。
製鉄所排熱利用シナリオは、お茶がら・コーヒーかすやおからのような含水の高いバイオ
マスをバイオコークス原料として利用するために有効な手段であるといえる。一方、他のケ
ースでは、バイオコークスを製造して輸送することにより輸送コストが削減できる。
集荷
イニシャルコスト
乾燥コスト
[千円/t]
70
粉砕コスト
ランニングコスト
租税公課
輸送
63.9
59.2
60
53.5
53.3
50
47.0
42.1
41.2 39.5 41.8
41.2
40
40.1
42.9
42.1
33.2
26.1 27.4
30
20
10
0
シナリオ
製造原料
検討ケース
B
C
B
C
製材残材 お茶がら・
コーヒーかす
Case1
Case2
A
C
おから
Case3
B
C
B
C
B
C
B
C
もみがら 林地残材 林地残材 建設発生
(大阪)
(室蘭)
木材
Case4
Case5-1
Case5-2
図 5.10 バイオコークス 1 トン当りのコスト比較
5-22
Case6
A
C
刈草
Case7
表 5.19 製鉄所排熱利用シナリオによるコスト削減効果
単位:千円/t
検討ケース
原料
Case1
製材残材
Case2
お茶がら・
コーヒーかす
Case3
おから
Case4
もみがら
Case5-1
林地残材
(大阪)
Case5-2
林地残材
(室蘭)
Case6
建設発生
木材
Case7
刈草
シナリオ
原料集荷
費用
B
C
B
C
A
C
B
C
B
C
B
C
B
C
A
C
0.8
30.2
3.0
11.9
0.0
5.7
6.9
13.7
5.9
6.0
13.7
19.3
1.6
5.2
0.0
23.1
イニシャル 前処理・製造費用
コスト
(乾燥コスト除く)
10.1
10.1
8.8
8.8
8.8
8.8
8.0
8.0
10.1
10.1
10.1
10.1
10.1
10.1
10.1
10.1
12.4
12.4
19.7
19.7
26.0
26.0
19.3
19.3
25.2
25.2
12.7
12.7
11.4
11.4
25.7
19.3
乾燥コスト
0.9
0.0
19.2
0.0
22.8
0.0
0.0
0.0
0.9
0.0
0.9
0.0
0.3
0.0
0.9
0.0
バイオコークス
輸送費用
租税公課
計
削減効果
*1
(削減率)
8.2
0.0
7.7
0.0
5.6
0.0
4.5
0.0
4.1
0.0
2.0
0.0
2.0
0.0
4.6
0.0
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
33.2
53.5
59.2
41.2
63.9
41.2
39.5
41.8
47.0
42.1
40.1
42.9
26.1
27.4
42.1
53.3
20.3
( 61% )
-18.0
( -30% )
-22.7
( -36% )
2.3
( 6% )
-4.9
( -10% )
2.7
( 7% )
1.3
( 5% )
11.1
( 26% )
*1 マイナスで削減効果あり
5-23
6 鉄鋼業におけるバイオコークスの期待効果と利活用に向けた課題
6.1 バイオコークスの期待効果
我が国の製鉄プロセスにバイオコークスを利活用した場合の期待効果として、地球温暖化防止
と資源対応力強化があげられる。
図 6.1 に製鉄プロセスでの活用イメージを示す。
地球温暖化防止効果として、鉄鋼業の原燃料の一部を植物由来廃棄物から製造したバイオコー
クスに置き換えることで、鉄鋼業と植物由来廃棄物間で炭素循環が形成され、鉄鋼業から排出さ
れる CO2 排出量の削減が期待できる。
資源対応力強化面では、国外に依存している鉄鋼業原燃料の調達先を国内に求めることができ
ると同時に、鉄鋼業において農林業の副産物を含む植物由来廃棄物を利用する道が開けることに
よって、国内で後継者不足などにより低迷している農林業の活性化につながることも期待される。
製品/資材
森林・田畑
森林
CO2 の吸収・固定
廃棄物の発生
鋼材
CO2 の発生
廃棄物燃料の製造
製鉄プロセス
バイオコークス
図 6.1 製鉄プロセスでの活用イメージ
6-1
植物由来廃棄物
6.2 資源対応力面における現状の課題と期待効果
6.2.1 鉄鋼業における原燃料需給の課題
石炭の確認可採埋蔵量は世界で 9,844.5 億トンである。可採年数は、石炭は 216 年である。し
かし、コークスの原料となる高品質な石炭(無煙炭・瀝青炭)の量は、4,588 億トン(約 100 年
分)と全確認可採埋蔵量の半分程度である。
(図 6.2)
近年、中国やインドなど新興国を中心とする世界的な石炭需要の高まりにより、石炭価格が高
騰している。特に 2008 年度の強粘結炭の価格は前年度価格の約3倍に高騰した(図 6.3)
。
また、国際市場においては大手鉱山会社4社による市場の寡占化が進んでいる。2006 年の石
炭生産量の国別シェアは、上位6カ国(中国、アメリカ、インド、オーストラリア、ロシア、南
アフリカ)で 78%と資源が偏在している(2008 年版エネルギー白書)
。
将来的には、良質資源の枯渇などに伴いより一層の資源高が懸念されるため、鉄鋼業では、低
品位石炭混合率を高めることや、廃棄物の利用などの技術開発が行われている。
資料:
「NIPPON STEEL MONTHLY 2008.7」
新日本製鐵(株)
図 6.2 世界の石炭と主な資源の確認可採埋蔵量
(ドル/トン)
300
強粘結炭
一般炭
260
220
180
140
100
60
20
'86
'88
'90
'92
'94
'96
'98
'00
'02
'04
'06
'08 (年度)
'10
資料:2005 年度以前:Barlow Jonker「Coal 2005」、2006 年度以降各種情報より作成
強粘結炭 :Goonyella 炭の契約価格
一般炭 :1997 年度までがベンチマーク価格、1998~2002 年度が参考価格、2003 年度が東北電力の長契更新価格
(実勢価格)
、2004 年度以降は電力各社の契約更新価格
図 6.3 石炭価格の推移(強粘結炭と一般炭)
6-2
6.2.2 植物由来廃棄物(バイオマス)における現状の課題と期待効果
バイオマスは、これまで次のような理由により、鉄鋼業で積極的に利活用されてこなかった。
広域分散で発生するため集荷コストが嵩む。
季節性があり安定供給が難しい。
体積あたりのエネルギー密度が低いため、熱量確保に難がある。
コークスに必要な強度特性が得られない。
燃焼特性がコークス等と異なる(燃焼速度が速い)
しかし、バイオコークスに形を変えて利用することにより、バイオマスが抱えるこれらの課題
を解決し、鉄鋼業におけるバイオマス利用を拡大できる可能性がある(図 6.4)。
表 6.1 バイオマスが抱える課題とバイオコークス製造により解決できる内容
バイオマスがかかえる課題
広域分散しており、集荷コストが嵩
む。
比重が低いため、輸送の効率化が図れ
ない。
体積あたり発熱量が低くエネルギー
効率が悪い
季節性があり安定供給が難しい
腐敗するなどにより長期保存に向か
ない
コークスに必要な強度特性が得られ
ない
燃焼速度が早い
バイオコークスを製造することにより
解決する内容
一定規模のバイオコークスプラントを分散配置するこ
とにより、収集距離を削減することで集荷コストを削減
することができる。
比重を原料の 0.3 から 1.4 にまで高めることができるた
め大幅な輸送効率化を実現できる。
体積あたりの発熱量は、木炭やコークス以上でありエネ
ルギー効率が高い。
木炭:10~15GJ/m3
コークス:15~20GJ/m3
バイオコークス:20~25GJ/m3
バイオコークスは、保存性に優れるため、季節性に応じ
た製造が可能となる。
バイオコークスは、200MPa の一軸圧縮強度を持つため
石炭より大きな強度特性を持つ
(石炭:25~50MPa)
バイオコークスは着火性が低く、緩やかに燃焼する。
課題解決
の可能性
○
◎
◎
◎
○
◎
※石炭の一軸圧縮強度は、大久保他 資源と素材 Vol.118 p.23-28 (2002)より引用
◎バイオコークスを製造することにより課題解決の可能性が大いに期待できる。
○バイオコークスを製造することにより課題解決の可能性が期待できる。
また、近畿大学井田准教授の研究では、実機の鋳物用キューポラ炉においてコークスの 11.4%
をバイオコークスに代替して操業することに成功しており、また、置換に伴う炉内温度上昇効果
が確認されている(近畿大学リエゾンセンターKLC/NEWS2008 年新春号より)。
このことから、バイオコークスは、体積あたりの発熱量や、一軸圧縮強度ではコークスの特性
を上回っており、これまでの木質バイオマス等のバイオマス燃料に比べて鉄鋼業での利用可能性
がより高いと考えられる。
6-3
バイオマス燃料が抱える課題
・ 比重が低く、収集運搬効率が上げられない(例:比重 0.3 の木くずの
場合、10t ダンプ車(10m3)に 3t の積載)ことによるコスト高騰。
・ 腐敗しやすい植物由来廃棄物では、リサイクル用途が堆肥等に限られ
る。
・ 体積あたりの熱量が低く、保管や輸送に大型の設備が必要となる。
・ 製鉄利用においては、燃焼特性・強度特性上利用が困難。
バイオコークス製造がもたらす効果
製鉄原燃料の安定供給
未利用廃棄物の有効利用拡大
バイオマスの用途拡大(製鉄用途に
使用できるようになる)
輸送効率化によるバイオマス燃料の
低コスト化
バイオコークス製造によるバイオマス燃料の課題の解消
・ 比重を上げられるため、一般的なバイオマスに対し収集運搬効率が 3
~4 倍に向上できる。
(比重が 1.4 であるので、10t ダンプ車にフル積
載ができる)
。
・ バイオコークスを製造することで長期間の保存が可能になり、在庫調
整が可能になる(バイオコークスは腐敗しない)
。
・ 体積あたりの熱量が、木炭やコークスよりも高く保管や輸送に際しス
ケールダウンが可能。
・ バイオコークスは、鋳造用キューポラで混合利用の実証試験に成功し
ており、製鉄用途への利用ポテンシャルが期待される。
バイオコークスを鉄鋼業で利用するメリット
コークスを置換することによる温室
効果ガス削減
鉄鋼業を中心とした循環型社会の構
築
再生利用エネルギーとして
原燃料の安定供給先確保(枯渇の心
配がない)
鉄鋼業におけるバイオコークス使用
・
・
・
・
・
高炉用コークス代替材
転炉用コークス代替材
PCI 微粉炭代替材
電気炉コークス(加炭材)代替材
電気炉スラグフォーミング用粉コークス代替材
他
図 6.4 バイオコークスを製造することによる得られる優位点
6-4
6.3 温室効果ガス排出面の課題と期待効果
鉄鋼業における主要な温室効果ガスである二酸化炭素排出量は、銑鉄生産量 1 トンあたり約
400kg の石炭コークスを使用することなどから、産業部門・エネルギー転換部門の約 44%、日
本全体の約 12%を占めている(図 6.5)。
しかしながら、日本の鉄鋼業における二酸化炭素排出削減ポテンシャルは、世界で最も低く、
既存技術による温室効果ガスの削減余力は小さい(図 6.6)。
このような状況の中、バイオコークスは、品質の良いコークス等(還元剤・加炭剤・熱源等)
の代替材料として、また二酸化炭素の排出抑制の手段として今後の用途拡大が期待されている。
資料:
「NEDO 技術開発プロジェクト 環境調和型製鉄プロセス技術開発
日本鉄鋼連盟 COURSE50 委員会 2008 年 7 月 30 日」
図 6.5 国内鉄鋼業における CO2 排出の現状
表 6.2 には、日本における製鉄方法別の CO2 発生量を示す。また、図 6.7 には、製鉄所にお
けるカーボンフローと製銑工程における CO2 排出割合を示す。鉄鋼業においては、CO2 発生量
の9割以上が高炉製鉄プロセスから発生し、特に高炉・熱風炉においてその 70%が発生してい
る。例えば、高炉製鉄プロセス(高炉+PCI)において、バイオコークスによりコークスの 1%置
換が可能になった場合、前章で述べたように約 2.5~3tCO2 の削減が可能になるためカロリー換
算の置換率を 0.75(第 3 章を参照)として
4,335(万 t/年)×1%×2.5(t-CO2)×0.75(置換率)=81.3(万 t-CO2/年)
となり、年間 80 万 t 強の CO2 削減効果が期待できる(高炉プロセス排出量の 0.45%に相当)。バ
イオコークスは、高炉操業に影響のない範囲のコークス代替ができれば、即効性のある CO2 排出
量削減技術となる。
6-5
出典:平成 20 年 10 月 29 日 「日本鉄鋼業は世界最高水準のエネルギー効率であることが IEA の文献に示される」(社)日本
鉄鋼連盟 発表より
図 6.6 各国における鉄鋼産業の Best available technology(商用段階の最高技術) による CO2
排出削減ポテンシャル
表 6.2 日本における製鉄方法別の CO2 発生量
電気炉
銑鉄 1t あたり CO2(t)
2007 年粗鋼生産量(万 t)
コークス使用量(高炉+PCI)(万 t)
高炉
0.46
1.99
3,096
9,055
-
4,335
年間 CO2 発生量(万 t)
1,424.2
18,019.5
粗鋼生産量、コークス使用量は鉄鋼統計便覧 2008 より
CO2 単位発生量は「地球温暖化防止への取り組みと提言」(株)東京製鐵より
高炉および熱風炉で
CO2 排出量の約 70%を
排出している。
出典:有山達郎他(社)日本鉄鋼協会高温プロセス部会 CO2 削減シンポジウム講演集平成 18 年 1 月 11 日
図 6.7 製鉄所におけるカーボンフローと製銑工程における CO2 排出割合
6-6
6.4 鉄鋼業におけるバイオコークスの代替可能性と課題
6.4.1 鉄鋼業におけるコークス利用用途
(1) 高炉法の鉄鋼の製造プロセスとコークス等を使用する工程
高炉法による鉄鋼の製造プロセスは、図 6.8 のとおりである。また、コークス等を使用す
る鉄鋼の製造工程は、表 6.3 のとおりである。
高炉では、上部から装入する塊コークスと羽口からの微粉炭吹き込み(PCI)として使用
されており、それぞれ 400kg/銑鉄トン、1~150 kg/銑鉄トンの使用量がある。また、廃プラ
粉が石炭粉の代替として 0~15 kg/銑鉄トン使用されている。
焼結工程では、焼結用粘結材として、鉄鉱石などと混合して焼結設備に装入されている。
使用量は、粉コークスで 60~80 kg/銑鉄トン、無煙炭で 10 kg/銑鉄トン以下である。また、
試験的に木質バイオマスも使用されている。
転炉では、転炉内昇熱用として吹錬中に転炉上部から装入される無煙炭等と、溶鋼への加
炭用として成分調整時に特殊ホッパーから投入される粉コークスが使用されている。使用量
は、転炉内昇熱用が 20kg/銑鉄トン以下、溶鋼加炭用が 3kg/銑鉄トン以下程度である。
表 6.3 コークス等を使用する鉄鋼製造工程*
使用量(単位あたり)
製鉄プロセス
用途・使用方法
目的
一般的な製鉄プロセス
材料
1-1
高炉
① 鉄鉱石の還元材
② 高温高熱を得るための
熱付与材
高炉内へ上部から装入
③ 高炉内の通気・通溶性
を保持するための空隙
維持材
PCI
(高炉内下部から羽口を
鉄鉱石の還元及び熱付与
通じ、微粉炭をインジェク
ション)
1-2
1-3
2-1
2-2
焼結
焼結設備に鉄鉱石など
と混合して装入
鉄鉱石の焼結用粘結材
2-3
3-1
転炉
3-2
単位
量
塊コークス
kg/銑鉄㌧
400程度
石炭粉
kg/銑鉄㌧
1~150
廃プラ粉
kg/銑鉄㌧
0~15
粉コークス
kg/銑鉄㌧
60~80
無煙炭
kg/銑鉄㌧
~10
木質バイオマス
kg/銑鉄㌧
試験的
吹錬中に転炉上部から
装入
転炉内昇熱
無煙炭
土壌黒鉛
コークス粉
kg/銑鉄㌧
~20
成分調整時に、特殊
ホッパーから投入
溶鋼への加炭
粉コークス
ピッチコークス
kg/銑鉄㌧
~3程度
*米澤委員提供資料より抜粋
6-7
6-8
環境調和型製鉄プロセス技術開発
図 6.8 鉄鋼の製造プロセス
出典:「NEDO 技術開発プロジェクト
日本鉄鋼連盟 COURSE50 委員会
2008 年 7 月 30 日」
(2) 電気炉製鉄の製造プロセスと石炭及び石炭コークスを使用する工程
電気炉普通鋼の製造プロセスは、図 6.10 のとおりである。また、石炭及び石炭コークス
を使用する電気炉の製造工程は、表 6.4 のとおりである。
溶解工程では、鉄へのカーボン添加及び融点を低下させるために、3cm 角程度の大きさの
塊状石炭コークスが電気炉に装入されている。使用量は、4 kg/鋼トンである。また、無煙炭
が使用される場合もある。
同じく溶解工程では、スラグフォーミング(スラグの比重を低下させるためスラグを泡立
たせる)用として、0-3mm 程度の大きさの粉状石炭コークスが電気炉に装入されている。使
用量は、4 kg/鋼トンである。また、無煙炭が使用される場合もある。
表 6.4 コークス等を使用する電気炉の製造工程
使用量(単位あたり)
工程
用途・使用方法
目的
一般的な製鉄プロセス
材料
1
溶解
2
電気炉へ装入
単位
量
塊状コークス
鉄へのカーボン添加・融点低
(3cm角程度)
下
無煙炭
kg/鋼㌧
4
粉状コークス(0スラグフォーミング(スラグの
3mm)
泡立たせ)
無煙炭
kg/鋼㌧
4
出典:電気炉メーカーヒアリング結果より
6-9
6-10
図 6.9 電気炉普通鋼の製造プロセス
出典:普通鋼電炉工業会 HP
6.4.2 石炭及び石炭コークスの使用条件とバイオコークス特性
(1) 高炉法における石炭及び石炭コークスの使用条件とバイオコークス特性
高炉法の製造工程における、石炭及び石炭コークスの使用条件は表 6.5 のとおりである。
なお、バイオコークスの特性も併せて示している。
PCI 用石炭は、制約条件が少なく、バイオコークスは揮発分や組成の使用条件を満足して
いる。しかし、気流輸送を行う条件として粒径 0.07mm 以下という物理特性が必要となるた
め、使用にあたってはバイオコークスを粉砕する必要がある。
高炉用の塊状石炭コークスは使用条件が最も多く、特に熱間強度が必要とされるが、バイ
オコークスの熱間強度特性が不明なため、現時点では評価できない。成分では、揮発分が基
準を満たしていない。化学組成について、バイオコークスは原料によって変動するが、木材
を原料とした場合では、窒素(N)分が基準を満たしているが、硫黄(S)分は満たしていな
い。物理特性では、気孔率でバイオコークス(ほぼ 0%)に対し石炭コークス(45~50%)
と大きな差がある。冷間強度は評価方法が異なること、熱間性状はバイオコークスのデータ
がないことから、評価できない。
焼結用や転炉加炭用は、低揮発分という条件があり、バイオコークスはこの基準を満たし
ていない。また、転炉内昇熱用は、硫黄(S)分や灰分といった化学組成の条件があり、木材
を原料とした場合は、硫黄(S)分がこの基準を満たしていない。
表 6.5 石炭及び石炭コークスの使用条件とバイオコークス特性
工程
使用条件
使用量
用途・使用
方法
kg/銑鉄㌧
上部装入
用塊コーク
ス
焼結用粘
焼結 結材用粉
コークス
転炉内昇
熱用コーク
ス粉等
転炉
溶鋼加炭
用粉コーク
ス等
バイオコークス
バイオコークス
(BC)との比較評価
物理特性等
冷間強度
熱間性状
反応性等
400程度
・水分:2~4%程度
(最大20%程度)
・揮発分:5%以下
(~1%程度)
・ash:10%程度 (~12%)
・C品位:85%程度
(82~87%)
・T.S:0.5%程度 (<1%)
・N:1%程度 (<1.5%)
・H:0.3%程度 (~1%)
・O:(0.2~0.7%)
・粒度:25~100mm(平均
50mm)
・嵩比重:600kg-dry/m3程
度
・見掛け比重:約1,000kg/m3
(950~1050)
(真比重:1,900)
・気孔率:45~50%
・発熱量:25,080kcal以上
(28,424~32,604kcal)
1~150
・一般石炭の範囲内でコー
クス用石炭より緩い
・揮発成分などの制約低位
・Sは低い方が好ましい
・揮発分は燃料として活用
できるため高くて良い
・アルカリ成分は低位(0.3%
以下)
・気流輸送、レースウエイで
の燃焼条件から、粒径:
0.7mm以下、70~80%の粒度
が必要
(粒度分布が最も重要)
・強度:通常の石炭強度レベ
ル (硬い場合、粉砕・圧送
時の設備損傷懸念)
ー
ー
・300℃程度で乾留
した場合、粉砕性
の向上が期待され
る。
・燃焼性は微粉
炭と同様。
20~30
・高炉用コークスと同様
・粒度:0~10mm
・特に揮発分は重要:5%以下 ・他は高炉用コークスと同様
(~1%程度)
・圧潰強度:10kg/cm2以上
ー
ー
ー
~20
・S, Ashは低いほど良い(特
・輸送時などでの粉化が少
にSは0.5%以下)
ない方がよい
・その他は比較的緩い
ー
ー
ー
ー
ー
・溶解性が高いこと
ー
・揮発分が多いた
め反応性は比較的
高い。
高炉
PCI用石炭
粉
化学特性
・揮発分:低
~3程度 ・S:低
・N:低
ー
ー
・形状:3mm~100mm程度
まで自由度が大
・水分:3~10%程度
・形状:φ25~75mm(高炉
・揮発分:原料の含有分が
用)
全量残留
φ60mm以上(鋳物用)
・灰分:3~5%程度
・見掛け比重:約1,380kg/m3
・C:50%程度
・気孔率:ほぼ0%
・N:0.2~1.0%(木材)
・発熱量:20,900kJ/kg
・S:0.7%程度(木材)
・揮発分:PCIや転炉用では ・BCは塊コークスの形状に
問題ない。高炉用塊コークス 対応可能。
や焼結用で条件を上回る。 ・見かけ比重はBCが重い。
・組成:BCは原料によって変 ・発熱量はBCの方が低い。
動。木材の場合、N分が高炉
用塊コークス条件を満足。S
分は転炉昇熱用を上回る。
・CSR
・ドラム強度指標DI (coke strength
150/15: 85以上 after CO2
(150回転後の
reaction)※1
15mm以上)
:通常は60%程
度を確保
100~200MPa
冷間強度は基準が BCの特性が不明
異なるため評価で である。
きない。
・熱間強度を維持
するため反応性は
低位であること。
BCは、乾留されて
いるコークスに比
べて揮発分が高
く、反応性は高くな
る。
*1 :粒度 20mm のコークス 200g を 1,100℃で CO2 と 2 時間反応させたのち、室温でⅠ型ドラムにより回転強度を測定
6-11
(2) 電気炉用石炭及び石炭コークスの使用条件とバイオコークス特性
電炉普通鋼の製造プロセスにおける、石炭及び石炭コークスの使用条件は、表 6.6 のとお
りである。なお、バイオコークスの特性も併せて示した。
塊状石炭コークスでは、揮発分や化学組成等の化学特性のほか、比重、冷間強度が必要と
される一方、熱間性状としては崩れやすいことが求められている。比重、冷間強度、形状な
どでは基準を満たしているが、化学組成では木材を原料とするバイオコークスの場合、硫黄
(S)分は基準を満たしていない。揮発分については、絶対的な基準ではないとされているこ
とから、試験等によりバイオコークスの使用特性等を把握することにより、揮発分を評価す
る必要がある。熱間強度は、バイオコークスの崩れやすさが明らかになっていないため、現
時点での評価は困難である。
粉状石炭コークスでは、化学特性、物理特性として形状の条件があるが、揮発分や強度の
制約はほとんどない。化学組成では、硫黄(S)分の基準以外は満足している。
表 6.6 石炭及び石炭コークスの使用条件とバイオコークス特性
工程
用途・使用
方法
塊状コーク
ス(加炭用)
kg/鋼㌧
4
溶解
粉状コーク
ス(スラグ
フォーミング
用)
バイオコークス
バイオコークス
(BC)との比較評価
使用条件
使用量
4
ー
ー
化学特性
物理特性等
・S(イオウ):0.6%以下
・P(リン):0.6%以下
・揮発分:20%以下(絶対的
基準ではない)
・水素:使用時に確認要
・Si(珪素)、Mn(マンガン):
含有が望ましい
・水分10%まで(場合により
15%まで)
・S(イオウ):0.6%以下
・P(リン):0.6%以下
・水素:使用時に確認要
・Si(珪素)、Mn(マンガン):
含有が望ましい
・水分10%まで(場合により
15%まで)
・水分:3~10%程度
・揮発分:原料の含有分が
全量残留
・灰分:3~5%程度
・C:50%程度
・N:0.2~1.0%(木材)
・S:0.7%程度(木材)
・揮発分:粉状コークスでは
問題ない。塊コークスでは原
料による。
・水分:条件を満足。
・組成:BCは原料によって変
動。原料が木材の場合、S分
は仕様基準を上回ってい
る。
・形状:3cm角
・見かけ比重:1.4程度以上
冷間強度
熱間性状
高いこと。
炉投入後に崩れや
搬送時に崩れない すいこと。
こと。
(参考)石炭コーク
ス 20MPa程度
・形状:粉状
0~3mm程度
ー
・形状:φ25~75mm(高炉 100~200MPa
用)
φ60mm以上(鋳物用)
・見掛け比重:約1,380kg/m3
・BCは塊コークスの形状に 石炭コークスと比
対応可能。
べてBCの冷間強
・見かけ比重は、同等程度。 度が高い。
6-12
ー
ー
BCの炉投入後の
崩れやすさは明ら
かではない。
6.4.3 バイオコークスのコークス代替可能性と課題
(1) 高炉プロセス用コークス代替の可能性と課題
高炉プロセス用コークスをバイオコークスで代替する可能性とその課題は、表 6.7 のとお
りである。
PCI に使用されている石炭粉代替は、揮発分や強度に関する条件が緩いため、現状で最も
代替の可能性が高い。しかし、バイオコークスを微粉砕して粒度調整する必要があり、その
手段や採算性等に関する検討が必要である。
次に代替の可能性が高いのは、転炉内昇温用コークス粉である。硫黄(S)分の条件があり、
専用バンカーが必要になるが、S 分が適当なレベルの原料を特定し、採算性を確保しつつ専
用バンカー等の設備投資が可能な場合は、代替できる。
高炉用塊コークス、焼結用、転炉溶鋼加炭用は、現状でのバイオコークス代替は難しい。
しかし、現在不明な熱間強度等を明らかにするとともに、特に熱間強度と揮発分といった代
替条件を満足する方法が開発できれば、代替の可能性がある。また、参考事例として豪州で
2~10%の木屑を石炭と混合してコークスを製造する試験も行われており、コークス製造工程
を経由することにより、揮発分等の代替条件をクリアできる可能性もある。
表 6.7 高炉プロセス用コークス代替の可能性と課題
工程
用途・使用
方法
代替条件
バイオコークスへの代
替に向けた課題
・高炉内での空隙維持材とし ・バイオコークスの熱間
ての粒度と強度。
強度が明らかではない。
・高炉内を降下する際に1,000 ・揮発分は原料の含有
~1,500℃にて強度が低下し 分が全量残っているた
め、高い。
上部装入 ないこと。
用塊コーク ・酸化性雰囲気の高炉内上部 ・原料によって成分、化
における反応後の強度。
学組成が異なる。
ス
・CSR強度による品質管理。 ・冷間強度の評価基準
・揮発分:5%以下。
が異なる。
・成分、化学組成
高炉
・冷間強度
・化学組成:一般石炭の範囲 ・粒度が大きく、微粉砕
内
が必要。
・S分:低い方が好ましい
・原料によって成分、化
学組成が異なる。
PCI用石炭 ・揮発分:高くて良い
・アルカリ成分:低位(0.3%以
粉
下)
・粒径:0.7mm以下(70~80%)
・強度:通常の石炭強度レベ
ル
・成分、化学組成:高炉用塊 ・揮発分は原料の含有
コークスと同様。
分が全量残っているた
・揮発分は重要:5%以下
め、高い。
焼結用粘 ・粒度:0~10mm
・原料によって成分、化
焼結 結材用粉 ・圧潰強度:10kg/cm2以上 学組成が異なる。
コークス
・粒度が大きく、調整が
必要。
・S分:0.5%以下
・輸送時などでの粉化が少な
転炉内昇 いこと。
熱用コーク ・炉上に専用のバンカーが必
要。
今後の対応策
揮発分や化学成分、強
度に関する条件が緩い
ため、代替の可能性が
ある。
しかし、微粉砕が必要と
なるため、そのための手
段や設備等について検
討が必要である。
◎
★豪州のプロジェクトで
は、2~10%の木屑を石
炭と混合してコークス製
造する試験を実施。
★カナダのプロジェクト
でも同様の試験実施(石
炭に2,5,10%のCharcoal
添加)
→CSRからは2%が限
界。冷間強度では10%ま
で代替化可能
★豪州のプロジェクト:
PCI用石炭のバイオマス
転換試験を実施中
★カナダのプロジェクト:
シミュレーション実施
・装入前に揮発分を低下 現状では、揮発分が高
させる方法の検討。
く、粒度調整の必要があ
・代替可能な成分、化学 るなどの理由から代替
組成をもつ原料の特定。 は難しい。しかし、揮発
・効率よく粒度調整する 分を代替条件に近づけ
方法の検討。
る方法と粒度調整の方
法が開発できれば、代
替の可能性がある。
△
ー
○
ー
・効率よく微粉砕する方
法の検討。
・S分及びアルカリ成分
の低い原料の特定。
・原料によって成分、化
学組成が異なる。
・専用バンカーに多額の
設備投資が必要。
・代替可能な成分、化学
組成をもつ原料の特定。
・専用バンカーの整備方
法等の検討。
・揮発分は原料の含有
分が全量残っているた
め、高い。
・原料によって成分、化
学組成が異なる。
・装入前に揮発分を低下 適当な成分・組成の原
させる方法の検討。
料を特定し、揮発分を代
・代替可能な成分、化学 替条件に近づける方法
組成をもつ原料の特定。 を開発できれば、代替の
可能性がある。
転炉
・揮発分:低
・S:低
・N:低
・形状:3mm~100mm程度ま
で自由度が大
参考事例
・試験または実験により 現状では、熱間強度が
熱間強度を評価。
不明であり、揮発分が高
・装入前に揮発分を低下 いなどの理由から代替
させる方法の検討。
は難しい。
・代替可能な成分、化学 しかし、現状不明な部分
組成をもつ原料の特定。 を明らかにするととも
・高炉用コークスの基準 に、特に熱間強度と揮発
で冷間強度を評価。
分を代替条件に近づけ
る方法が開発できれば、
代替の可能性がある。
ス粉等
溶鋼加炭
用粉コーク
ス等
代替可能性
単位発熱量当りのS分
が適当なレベルの原料
を特定し、コスト・品質・
量の確保を行って専用
バンカー等の設備投資
が可能な場合は、代替
できる。
△
△
★豪州のプロジェクトで
は転炉用加炭材として
のCharcoal適用試験実
施。
出典:米澤委員提供資料
6-13
高炉プロセス用コークス代替における課題解決のための技術開発は、以下のとおりである。
1) 高炉コークス置換
・ バイオコークスと高炉コークスが混合利用した場合の強度確認方法を検討する。
・ 高温強度確保策の検討を行う(バインダー・骨材混合等)。
・ 実証試験などを行い、置換割合を決定する。
2) 微粉炭吹込(PCI)代替
・ 微粉炭形状のバイオコークスを検討する。特に、ローコストで製造できるプロセス
を開発する。
・ 実証試験を実施し、置換割合を決定する。
3) 焼結鉱用コークス
・ バイオコークスの揮発分の含有に対する影響を把握し、焼結鉱製造に影響のないプ
ロセスを開発する。
・ PCI 代替と同様に微粉炭形状のバイオコークスを検討する。
4) 転炉用コークス
・ 揮発分が製品に及ぼす影響を検討する。
6-14
(2) 電気炉製鉄におけるバイオコークス代替の可能性と課題
電気炉製鉄においてバイオコークス代替の可能性とその課題は、表 6.8 のとおりである。
加炭用に使用されている塊状石炭コークスは、揮発分や強度に関する条件が緩いため、現
状で代替の可能性が高い。今後、実証試験などによる検討と確認が求められる。
スラグフォーミング用の粉状石炭コークスの代替に向けては、バイオコークスを微粉砕し
て粒度調整する必要があり、その手段や採算性等に関する検討が必要である。硫黄(S)分や
リン(P)分など代替条件に合った成分、化学組成をもつ原料を特定するとともに、バイオコ
ークスの揮発分が電炉に与える影響(炉内状況、排ガス量等)を確認する必要がある。
また、両方の用途に共通の課題として、水素分の確認が挙げられる。
表 6.8 電気炉におけるバイオコークス代替の可能性と課題
工程
用途・使用
方法
代替条件
・S(イオウ):0.6%以下
・P(リン):0.6%以下
・揮発分:20%以下(絶対的基
準ではない)
・水素:使用時に確認要
塊状コーク ・形状:3cm角
ス(加炭用) ・見かけ比重:1.4程度以上
・冷間強度:搬送時に崩れな
いこと。
・熱間強度:炉投入後に崩れ
溶解
やすいこと。
・S(イオウ):0.6%以下
・P(リン):0.6%以下
・水素:使用時に確認要
粉状コーク ・Si(珪素)、Mn(マンガン):含
ス(スラグ
有が望ましい
フォーミング
・水分10%まで(場合により15%
用)
まで)
・形状:粉状
0~3mm程度
バイオコークスへの代
替に向けた課題
今後の対応策
代替可能性
・原料によって成分、化
学組成が異なる。
・揮発分の条件は絶対
的なものではないが、
BCの方が高いと予測さ
れる。
・水素分の確認が必要。
・S分、P分など代替条件
に合った成分、化学組
成をもつ原料の特定。
・揮発分の高さが電炉に
与える影響の確認が必
要。
代替条件に合った成
分、化学組成をもつ原料
を特定し、揮発分が電炉
に与える影響を確認し
問題がない場合は、代
替できる。
・粒度が大きく、微粉砕
が必要。
・原料によって成分、化
学組成が異なる。
・効率よく微粉砕する方
法の検討。
・S分及びP分の低い原
料の特定。
揮発分や化学成分、強
度に関する条件が緩い
ため、代替の可能性が
ある。
しかし、微粉砕が必要と
なるため、そのための手
段や設備等について検
討が必要である。
6-15
○
◎
電気炉製鉄用コークス代替における課題解決のための技術開発は、以下のとおりである。
ヒアリングにより把握した使用条件も「低温で強度があり高温で崩れる」、
「比重が 1.4 程度」
、
「硫黄、リンがそれぞれ 0.6%まで」とバイオコークスの特性に近く、電気炉製鉄用コークス
代替は、バイオコークス最も普及させやすい用途であると考えられる。このためバイオコー
クスの評価のためにも早急な確認が期待される。
1) 電気炉加炭材利用
・ 実証試験などを実施し、性能を確認する。
・ 水素分等の影響を確認する。
2) スラグフォーミング材利用
・ 微粉炭形状のバイオコークスの製造方法を検討する。
・ 水素分等の影響を確認する。
6-16
6.4.4 バイオコークス製造の事業化のための課題と解決方法
鉄鋼プロセスにおいてバイオコークス代替に向けた技術的課題が解決した場合には、バイ
オコークス製造を事業化に向けた検討が必要である。その際に、必要な条件の位置づけとバ
イオコークス普及イメージを図 6.11 に示す。
事業化のためには、植物由来廃棄物の排出側と、バイオコークスを利用する需要側双方の
メリットを見いだす必要がある。ビジネスの推進にあたっては、相互のメリットを生かすた
め、原料条件、製造条件、需給バランス条件、価格競争力について課題を解決する必要があ
る(表 6.9)
。
このように、原料供給側と需要側の立場が大きく異なるため、双方のニーズを反映すると
ともに需給バランスも調整する必要がある。
バイオコークスは、保管が容易で植物由来廃棄物の密度を上げることができるため、需給
調整機能を効率良く行うことができる。
表 6.9 原料供給側と需要側の市場ニーズ
条件
原料の選択
製造条件
供給バランス
条件
価格競争力
原料供給側
(廃棄物発生)
・ある程度以上の原料の
ハンドリングは困難
・廃棄物の性状・組成を
変更することは難しい
(生産物に依存)
・廃棄物発生量は製品製
造量に依存
・安価な廃棄物処理を希
望
バイオコークス製造者
相互のニーズを調整しな
がらバイオコークズ事業
を運営する
6-17
需要側
(バイオコークス購入者)
・用途に適合したバイオ
コークス品質の要求
・用途に適合したバイオ
コークス形状の要求
・一定の需要を満たす供
給条件が必要
・原料代替材の低価格調
達
植物由来廃棄物
多い
発生量
少ない
廃棄紙
農作物非食用部
食品残渣
製材所残材
建設発生木材
下水汚泥
林地残材
刈草
家畜糞尿
良
均質性
不良
排出側における効果
・廃棄物処理費削減
・未利用資源の利活用
・農林業の振興
需給・品質に応じた原料調達
・ 原料の選択
バイオコークス原料
バイオコークス事業に要求される機能
・需給バランス調整
・バイオコークス価値向上
・顧客満足(排出・供給双方)
・ 需給バランス条件
・ 価格競争力
バイオコークス製造プラント
・ 原料条件
・ 製造原価
・ 製造条件
バイオコークス
需給に合わせたバイオコークスの供給
用途に合わせたバイオコークスの製造
鉄鋼用途
高炉
・ 高炉コークス
代替
・ 微粉炭吹込
代替
・ 焼結鉱用粉
コークス
転炉
・ 昇熱用
コークス
・ 加炭材
その他用途
電気炉
・ 加炭材・還元剤
・ スラグフォー
ミング材
その他
・ キューポラ用
コークス
・ 廃棄物溶融炉
用コークス
・ 発電用燃料
鉄鋼業における効果
・資源対応力強化
・地球温暖化対策効果
図 6.11 バイオコークス事業化のための必要条件の位置づけと普及イメージ
6-18
表 6.10 にバイオコークス事業化のために必要な条件と解決のアプローチを示す。
表 6.10 バイオコークス事業化のために必要な条件と解決のアプローチ
事業化のために
必要な条件
他のリサイクルに
対する価格競争力
の確保
バイオコークスを
使用することによ
るメリットの提示
鉄鋼業が要求する
品質基準への適合
鉄鋼業の旺盛な需
要をまかなえる供
給体制
コークスに対する
価格競争力
現状
バイオコークス製造原価が
高いため優位性が見いだせ
ない。
バイオコークスの実証デー
タが不足しておりメリット
を明確に提示しにくい。
今回の調査で高温強度や粒
度などの課題が明らかにな
った。
今後の検討課題であるが、
木質系バイオマスなどでは
最大の課題となっている。
一時期の市況より価格が下
落しコークスの価格競争力
が増した。
解決
期間
解決のプローチ
バイオコークス製造システムは、装置やシ
ステムの見直しにより製造原価を下げる
余地がある。
実証データを積み重ねるとともに、代替材
料と比較できる特性を明らかにすること
により、バイオコークスのメリットをより
明確にする。
鉄鋼業に使用される用途に応じて、品質基
準の確保のための方策を検討する。
(一部バイオコークス原料に依存)
大量の未利用間伐材を抱える林業や未利
用廃棄物の絶対量が多い食品廃棄物、家畜
糞尿などをターゲットに意見交換を行い
ながら最適な需給体制の構築を図る。
今後数年は、不況のため価格競争力確保は
難しいが、資源の枯渇や地球温暖化対策な
どにより長期的には競争力を確保できる
可能性がある。
◎
M
◎
M
○
電気炉:S
PCI:M
高炉:L
○
M
○
L
解決可能性:◎解決は比較的容易、○解決可能、△解決困難
解決期間:S:短期的に解決可能、M:中期的に解決可能(5 年程度)
、L:長期的な視点で解決を図る必要あり
6-19
6.5 バイオコークス利活用に向けた技術開発及び資源開発
6.5.1 バイオコークスの技術開発要素
6.4 項で掲げた鉄鋼業におけるバイオコークス利用に向けた課題を解決するために、バイオコ
ークスの製造、利用の各段階における技術開発が必要となる。
利用段階では、実証試験等によるバイオコークスの特性解明と改良、利用方法の検討などが望
まれる。
製造段階では、用途に応じた性状、形態に対応でき、大量生産に応えるためのバイオコークス
生産技術の向上、生産設備の整備が望まれる。
表 6.11 に利用段階での技術開発要素を、表 6.12 に製造段階での技術開発要素を示す。
バイオコークスの技術開発は、発明されたばかりで端緒についたばかりであり、基礎研究から
1歩進んだ実用化に向けた技術開発が求められている。
表 6.11 利用段階での技術開発要素
工程
用途・使用方法
次の開発要素
上部装入用
塊コークス
・バイオコークスの高温強度特性の解明と改良
・揮発分の利用方法の検討(製鉄プロセス全体での検討)。
・類似プラント(キューポラ、廃棄物溶融炉)での試験の継続。
PCI 用石炭粉
・吹込のための細粒化の方法検討。
・原料の安定供給源の確保。
・石炭価格に対抗できるバイオコークス製造プラントの開発と競争。
焼結用粘結材用
粉コークス
・揮発分の低減化と揮発分の有効利用方策(コークス炉等)の検討。
・最適な原料条件に合った植物由来廃棄物の調査。
転炉内昇熱用
コークス粉等
・専用バンカーの設置等の費用対効果の検討。
・実証試験等によりバイオコークスの性能を確認する。
溶鋼加炭用
粉コークス等
・揮発分の低減化と揮発分の有効利用方策(コークス炉等)の検討。
塊状コークス
(加炭用)
・実証試験等によるバイオコークスの性能確認。
粉状コークス
(スラグフォーミン
グ用)
・細粒化の方法について検討の検討。
・実証試験等によるバイオコークスの性能確認。
高炉
焼結
転炉
電炉
表 6.12 製造段階での技術開発要素
項目
次の開発要素
鉄鋼業の利用用途
に合わせたプラン
トの製造
・製鉄用途の供給条件(小塊、粉末等)に合わせたバイオコークス製造プラントの開発。
・後処理(破砕による粉末化)の検討
・高温強度、VM など高炉コークス代替対応技術の開発
プラントのランニ
ングコストの改善
・乾燥コスト低減のため、製鉄所排熱など未利用の低温排熱(~200℃程度)利用の具
体化。
・用益費(特に電気代)の削減のため熱媒/冷媒システムを見直す。
・排熱利用など、省エネルギー製造システムの具体化を行う
プラントのイニシ
ャルコストの改善
・用途ニーズに応じたプラントの見直し
・部材のコスト削減など
6-20
6.5.2 バイオコークス原料の資源開発
バイオコークスの原料となる循環資源の効率的活用を促進するため、従来廃棄処理していたり、
放置されていたりした資源を活用するような体制整備が必要となる。特に、未利用率の高い、林
地残材、食品廃棄物、下水汚泥などは有用資源としての資源量が期待される。
バイオコークスの原料に適した植物由来廃棄物を表 6.13 に、利用に適した鉄鋼プロセスは、
表 6.14 にまとめた。
今後、バイオコークスの原料資源の開発及び未利用資源の利用促進のため、行政、関連事業者、
研究機関の 3 者協働による、流通システムや法制度に関する検討などの取り組みが望まれる。
表 6.13 バイオコークスの原料に適した植物由来廃棄物
品目
林地残材
堤防刈草
食品廃棄物・お茶が
ら・コーヒーかす
家畜糞尿・下水汚泥
期待効果
必要な取り組み
・未利用木質資源が豊富で、供給不足懸念が少
ない。
・バイオコークスを普及させることで森林整備
が進み森林の付加価値が上がる。
・森林吸収による温室効果ガスの削減が期待で
きる。
・都市部に豊富に存在するバイオマスを有効利
用できる。
・刈り放しにより生じる堤防の管理面の問題を
解決できる。
・野焼き等の解消に伴い環境保全効果が期待さ
れる。
・製鉄所の排熱を使用することにより、ローコ
ストで乾燥ができる。
・廃棄物の有効利用と経済性の両立
・林地残材を使用したバイオコーク
ス製造ビジネスモデルの具体化
・J-VER を使用した CO2 排出権の林
業還元システムの具体化。
・未利用林地残材有効利用方策の具
体化
・堤防刈草を使用したバイオコーク
ス製造ビジネスモデルの具体化
・刈草を使用したバイオコークス製
造をプラントで実証する。
・発生量が豊富で、潜在的資源量が多い。
・廃棄物量を削減でき付加価値を上げることが
できる。
・小規模での実証実験
・実証試験を踏まえたビジネスモデ
ルの具体化
・食品廃棄物(特に外食・小口系)
の実証試験
・介在物(リン・硫黄)への対応技
術の開発
表 6.14 バイオコークスの利用に適した鉄鋼プロセス
工程
用途・
使用方法
高炉
PCI 用石炭粉
代替
・化石燃料の使用削減
・温室効果ガスの低減
・燃焼特性(着火性が低く、燃焼速度が遅い)
・粉砕技術の開発
・コークス炉への投入検討
・利用シミュレーションの実施
転炉
転炉内昇熱
用コークス
粉等代替
・化石燃料の使用削減
・温室効果ガスの低減
・燃焼特性(着火性が低く、燃焼速度が遅い)
・実証試験の実施
電気炉
期待効果
・化石燃料の使用削減
塊状コーク
・温室効果ガスの低減
ス(加炭用)
・比重
代替
・ハンドリング(冷間強度があり高温で崩れる)
粉状コーク
・化石燃料の使用削減
ス(スラグフォーミ
・温室効果ガスの低減
ング用)代替
6-21
必要な取り組み
・実証試験の実施
・粉砕技術の開発
・実証試験の実施
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