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Twinkle:Tokyo Women`s Medical University

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Twinkle:Tokyo Women`s Medical University
Title
Author(s)
Journal
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Barre-Lieou 症候群を呈する頭・頸部外傷の臨床的研究
毛利, 泰子
東京女子医科大学雑誌, 43(8):635-651, 1973
http://hdl.handle.net/10470/2198
Twinkle:Tokyo Women's Medical University - Information & Knowledge Database.
http://ir.twmu.ac.jp/dspace/
15
(東女医大誌 第43巻 第8号頁 635∼651昭和48年8月)
Barr6−Lieou症候群を呈する頭・
頸部外傷の臨床的研究
東京女子医科大学 脳神経センター(所長:喜多村孝一教授)
脳神経外科(主任
大学院学生 毛
喜多村孝一教授)
利
リ
モウ
泰
子
ヒ官
コ
(受付 昭和48年5月21日)
ACli㎡cal Study on Barr6.Lieou Syndro血e due to Post・traumatic
、E血。にphalopathy and Traumatic Cerv且cal Syndrome
Hiroko MOHRI, M.D.
Department of Neurosurgery,(Director:Pro£Koichi KITAMURA)
Tokyo Women,s Medical College
Among the patients with post−traumatic cncephalopathy and traumatic cervical syndromc,80 cases,
who showed Barr6−Licou syndrome and had no morphological lesion in thc cerebrum, were su句ected
to series of examination. Thc examination consisted of exact neurological examination, Mccholyl test,
evaluation of cerebro−spinal Huid pressure during Mecholyl tcst, EEG and EMG。
Conclusion:
1.Exact observation of clinical symptoms is important to diagnose these patients.
2.Many of the paticnts showed N type in Mccholyl t6st.
3.By Mecholyl i切ection the C.S.E pressure in lumbar puncture rose and was paralled with the
rise of pulse rate.
4.In EEG, no abnormal activities werc observed with Bemegride.
5.Abnormal且ndings were fbund in 52 cases(65%)out of 80 by rout量ne EMG examination.
61Kinegiologic EMG examination showcd many abnormal丘ndings in nechnuscles.
From these rcsults, thc author suggested that not only cervical sympathetic irritation but also neuro,
且1nctional or organic impairment of brain stem could take a part in pathogenesis of Barr6−Licou syndrome,
目
(4) 通常筋電図検査
次
1.序論
(5) 頚部動作時筋電図検査
H.対象ならびに研究方法
(6)Mecholyl試験
(7)Mecholyl負荷時の髄液圧測定
1.対象
2.方法
皿.結果
(1)症候学的観察
1.東京女子医大脳神経センターにおける頭頚部外
(2) 通常記録法による脳波検査
傷患者の実態
(3) Bemegride賦活脳波検査
2.Barr6↓ieou症候群の症候学的検討
一635一
16
1)Barr6−Lieou症候群の概念と分類
1972年の4月には重症死亡例こそ減少したが,頭
2)Barr6−Lieou症候群の各型の症候学的特徴
頚部外傷受傷老総数は再び全外傷の40%に増加
3)小括
し,いまだに事態は解決されていない.
3.Barr6−1・ieau症候群の脳波学的検討
一方,社会的問題とは別に,医学的にも頭頚部
1) 通常記録法による脳波所見
外傷後遺症の病態については今日なお不明な点が
2)Bemegride賦活による脳波所見
多い.その理由は,これらの症候群が多彩な自覚
3)小話
的症状を訴えるにもかかわらず,それに対応する
4.Barr6−heou症候群の筋電図学的検討
他覚的所見が得られないこと,ひいては病理解剖
1)通常記録法による所見
2)動作時筋電図所見
学的裏付けを伴なわないことなどであるが,さら
3)小括
に補償,賠償などの経済的,社会的,心理的要因
が大きく関与していることなどに基づいている.
5.Barr6−Lieou症候群における自律神経機能の検
頭頚部外傷後遺症の臨床症状は多彩であるが,
討
1)Mecholyl testの成績
なかでも,Barr6−Lieou症候群と呼ばれる一群の
2)Mecholyl test時の髄液圧の変動
症状は,治療に抗しなかなか治癒しない.本症候
3)小括
群の発症機序は頚部交感神経系の緊張状態とされ
IV.考按
ているが,その他に微小器質的変化や精神的因子
1.頭部外傷ならびに頚部外傷におけるBarr6−Lie−
の関与も考えられている.
ou症候群の発生について
そこで著者は,頭頚部外傷後遺症のなかでBa−
2.頭頚部外傷によるBarr6−Lieou症候群の発生機
rr6↓ieou症候群を呈する症例を研究の対象とし
序ならびに病態生理
て取り上げ,多角的な検索,検討を試みた.ここ
3.Barr6−Lieou症候群の臨床上の重要性と今後の
にその知見を報告し,この方面の臨床活動への一
問題点とくに治療への推論
資料たらしめたい.
V,結論
文献
II・対象ならびに研究方法
1・序
論
1.対象
脳神経外科領域において,頭頚部外傷は重要な
東京女子医大脳神経センター頭頚部外傷外来で受診し
診療対象のひとつである.外傷急性期における病
た患者を検討し,特にBarr6一■ieou症候群を呈する患者
態の解明と治療対策は急速に進展し,ほぼ完成の
80名を選出し検索の対象とした.これらの患者はいずれ
域に近いといってよい.一方,近年では,頭部外
傷後遺症および外傷性頚部症候群の病態が大きな
研究課題となってきたわが国でほぼこれらの問題
が活発に検討されだしたのは,ほぼ1958年頃から
のことであるが,自動車交通の発達と共に,交通
事:故による傷害が激増し,頭頚部外傷後遺症は一
も受傷時に明らかな意識消失がなく,神経学的に器質的
障害の明らかでないものである.さらに受傷時より1週
間から6ヵ月以上を経てなお自覚的に多彩な愁訴を有す
る.患者の受診期間は3週間より2年4ヵ月に及ぶ.こ
の研究においては,頭頚部外傷以外の患者5名,8arr6−
Lieou症候群を伴なわない頭頚部外傷患者17名,正常人
10名,計32名を対照群とした.
時社会的な問題となるに至った.ところで,近年
2.研究方法
のわが国の交通事故による頭頚部外傷患者の実態
(1) 症候学的観察(検索症例80)
症候を詳細に観察分析するために特別な病歴を作成し
をみると,1960年頃から次第に増えはじめ,1962
年には全外傷の23%となり,1964年には全外傷の
47%を占めるに至った.しかしその後,交通事故
た.本症候群を形成する.あるいはこれに伴なう症候な
らびに愁訴をあらかじめできるだけ多く列挙しておき,
その中から患者自身に該当するものを選ばせた(表1).
の非惨さに対する社会の認識が高まったためか,
同様のことを診療の都度行ない,その記録から症状の増
1969年および1970年には32%に減少した.しかし
悪,軽減状態,恒常性,持続などをできるだけ具体的に
一636一
17
Table 1
An Example of the Protocol in the Survey of Post.Traumatic Encephalopathy
and Cervical Injury in our Clinic
皆さんが苦痛と思う症状を次に書いてあります.非常に大切なことですから正直に記入して下さい.
全部忘れずに記入して下さい.
症状がありましたら十に○をし,さらに右か左かに○を,両方あれば右と左に○をして下さい.
矧
愁
訴
(苦痛に思う症状)
① 頭
痛
②頭が重い
③くびすじが痛む
④ 肩がこる
⑤ 肩が痛む
⑥ 胸が痛む
⑦胸が苦しい
⑧動悸がする
⑨ 背中が痛む
年 月
日
日
年
一 十(右左)不明
一 十(右左)不明
十(右左)不明
一 十(右左)不明
一 十(右左)不明
+〔右左)不明
一 十(右左)不明
一 十(右左)不明
一 十(右左)不明
⑩ 腰が痛む
一 十(右左)不明
⑪.歯が痛む
一 十(右左)不明
⑫ 耳が痛む
⑬眼の奥が痛む
一 十(右左)不明
十(右左)不明
⑭においがわからなくなる
一 十(右左)不明
⑮肘から上がしびれる
一 十(右左)不明.
⑯肘から下がしびれる
⑰手先がしびれる
⑱頭がしびれる
十(右左)不明
一 十(右左)不明
+(右左)不明
⑲顔がしびれる
十(右左)不明
⑳足がしびれる
十(右左)不明
⑳手や腕に力が入らない
四型農撹弓怒1灘
初
診
男 女
二
一 十(右左)不明
⑫ 足に力が入らない
一 十(右左)不明
㊧腕がつかれやすい
一 十(右左)不明
一637一
月
年
日
月
一 +(右左)
イ マ ハ
一 十(右左)
一 +(右左)
一 十(右左)
イ
イ
ロ
ハ
一 +(右左)
イ
ロ
ハ
一 +(右左)
イ
ロ
ハ
一 十(右左)
イ
ロ
ハ
一 十(右左)
イ
μ
ハ
一 十(右左)
イ
ロ
ハ
一 十(右左)
イ
ロ
ハ
イ
ロ
ロ
ハ
ハ
一 十(右左)
イ
ロ
ハ
一 十(右左)
イ
ロ
ハ
一 十(右左)
イ
ロ
ハ
一 +(右左)
イ
ロ
ハ
一 +(右左)
イ
ロ
ハ
一 +(右左)
イ
ロ
ハ
一 十(右左)
+ 一(右左)
イ
イ
ロ
ハ
ロ
ハ
一 十(右左)
一 十(右左)
イ
イ
ロ
ハ
μ
ハ
一 +(右左)
一 十(右左)
イ
イ
ロ
ハ
一 十(右左)
イ
ロ
ハ
一+(右左)
イ
ロ
ハ
ロ
ハ
一 十(右左)
イ
ロ
ハ
一 十(右左)
イ
ロ
ハ
一 十(右左)
一 十(右左)
イ
イ
ロ
ハ
一 十(右左)
イ
ロ
ハ
ロ
ハ
一+(右左)
イ
ロ
ハ
一 十(右左)
一 +(右左)
イ
イ
ロ
ハ
一 十(右左)
イ
ロ
ハ
一 +(右左)
イ
ロ
ハ
ロ
ハ
一 +(右左)
イ ロ ハ
一 十(右左)
イ ロ 一
一 十(右左)
一+(右菱)
イ
イ
ロ
ハ
一 +(右左)
イ
ロ
ハ
一 十(右左)
イ
ロ
ハ
ロ
ハ
一 十(右左)
イ
ロ
ハ
一 +(右左)
イ
ロ
ハ
一 +(右左)
一 十(右左)
イ
イ
ロ
八
ロ
ハ
一 十(右左)
一 十(右左)
イ
イ
ロ
ハ
ロ
ハ
日
i8
十(右左)不明
⑳足がっかれやすい
㊧ 全身に力が入らない
十
⑳全身が疲れやすい
⑳手がふるえる
⑱足がふるえる
⑳目がはれぼったい
十
⑳頚がはれる
⑳ 便
⑭ 下
不明
不明
⑳ 排尿の回数が多くなった
十
⑳ 排尿しにくい
⑰歩きにくい
十
十
⑳ 目 ま い
⑲ 立ちくらみ
⑳音が聞えにくい
十
十
十
ロ
ハ
十
ロ
ハ
イ
ロ
ハ
イ
ロ
ハ
一 十(右左)
イ
ロ
六
一 十(右左)
イ
ロ
ハ
一 十(右左)
イ
ロ
イ
ロ
一
不明
イ
ロ
一
不明
イ
ロ
一
不明
イ
ロ
一
不明
イ
ロ
一
不明
イ
ロ
一
不明
イ
ロ
一
不明
イ
ロ
一
不明
ハ
一 十(右左)
イ
ロ
ハ
十
十
一 十(右左)
十(右左)不明
十
ロ
ハ
一 +(右左)
一 十(右左)不明
痢
イ
イ
十(右左)不明
十
ロ
ロ
一
一 十(右左)不明
び
イ
イ
一 十(右左)不明
⑳ 手足がっつばる
一 +(右左)
イ
一
一 十(右左)不明
⑳手足がはれぼったい
一 十(右左)
一
イ
ハ
十
ロ
ハ
一 十・(右左)
イ ロ 一
一 十(右左)
イ
ロ
ハ
一 +(右左)
イ
ロ
一
一 十(右左)
イ
μ
ハ
一 十(右左)
イ
ロ
ハ
一 十(右左)
ハ
イ
十
一
一
イ
十
一
ハ
イ
十
一
ハ
イ
十
一
一
イ
十
一
一
イ
十
一
一
イ
十
一
一
イ
十
一
一
イ
ロ
一
十
ロ
四
十
ロ
ハ
十
ロ
ハ
十
ロ
一
十
ロ
ハ
十
ロ
ハ
十
ロ
一
十
P
ハ
(5)頚部動作時筋電図検査(検索症例80)
詳しく調査できるように計画した.また診療内容,検査
同心型一芯針電極を用いて被検筋内刺入法を施行し
所見,加害者との関係,家族環境など社:会心理学的背景
た.電極は直径0.2磁m,長さ3.5cmの三門針を用い,針
の経験も記録し分析に資した.
(2)通常記録法による脳波検査(検索症例80)
の表面は絶縁塗料でコーティングして用いた.検査筋は
閉眼安静時,開閉眼,過呼吸時の脳波を記録し,さら
両側の頭半棘筋,頚板状筋,胸鎖乳突筋,僧帽筋で,ポ
に光刺激,頚動脈洞圧迫試験による変化を観察した.脳
波の記録法は当教室で用いる標準的方法によった
リグラフを用いて記録した.患者は坐位の自然位から最
大前屈位,中間位,最:大後屈位,左右回旋位などの動作
(3)Bemegride賦活脳波(検索症例25)
をさせ,繰り返えし行なって各パターンを解折した.正
Bemegride(Megiba1)を5mg/5秒の割合で75田9まで
常人10名に同様の検査を実施し対照とした.
静注し,脳波上発作性放電を認めたものを異常とした,
(6)Mecholy1試験(図1)(検索症例25)
(4)通常筋電図検査(検索症例80)
安静仰臥位を30分以上保たせた後,血圧,脈拍数を
反復測定し,安定した値を検査即値とした.Mecholyl
針電極(あんま針)を用いて左右両側の頚板状筋,頭
半棘筋,僧帽筋,胸鎖乳突筋,上腕二頭筋,上腕三頭
(塩酸メタコリン注射液)を体重60㎏当り10㎎の割合で
筋,母指対立筋の諸筋を検査し,安静時,随意収縮時,
筋注し,注射後最初の5分間は30秒毎に,次の5分間は1
最:大収縮時の筋電図を記録した.併せてBarr6−Lieou症
1分毎に,その後10分間は2分毎に計20分間連続的に血
候群のない頭頚部外傷患者17名について同様の検査を行
圧,脈拍数を測定し,その値をグラフに記入した.同時
ない,比較検討した.
にこの経過中の皮膚潮紅,熱感,発汗,流誕,動悸,瞳
一638一
19
Table 2
Mech・lyr test判定墓準*
判 定基準
型
反 応型
Age
No. of Cases
下降した血圧が「α前後で
s−type
isympαむheL「c
獅凾垂?秩│reαctor)
譿?
越加OmmH9鉱上の
繽クを示す着の。
1α
20」
,儲■旛艦窪礁9「oup) i臓
1α
繰…講鞭鍵i
2α
10−!9
159 (11.9%)
20−29
483 (36.2タ6)
30−39
323 (24.2%)
40−49
158 (11.8タ6)
50一59
113(8.5タ6)
60一
1〔)0(7.596)
Tota1
「
20」
1336 ( 100%)
Age distribution in each decade of the patients
with post−traum翫tic encephalopathy and cervical
syndrome due to miscellaneous causes including
*沖中疲法による
Hg.1. Standardized type of responses in Me,
traf壬ic accidents
cholyl test(according to Okinaka, Saishin−IGA−
KU,14;10,1959)
Table 3
Age
孔径の変動,尿意,悪感などの副症状の出現の有無,持
続,程度なども併せて記載した.検査三値を基線とし±
10m皿㎏の範囲の変動は,基線に含まれる誤差範囲とし
た.反応の様式を図1に示したごとく3型に分類し判定
した(沖中1)),対照として頭頚部外傷以外の患者5名に
同様の検査を実施した.
No。 of Cases
10−19
53 (8.Qタ6)
20−29
215 (32.3タ6)
30−39
219 (32.896)
40−49
78 (11.7タ6)
50−59
58 ( 8.7%)
43 ( 6.5%)
60一
(7)Mecholyl負荷時の髄液圧測定(検索症例25)
Tota1
Mecholyl試験実施の際に,腰椎穿刺により髄液圧を
666 (100%) 666/1336 (49.9タ6)
Age distribution in each decade of the patients
測定した.検査前賢およびMecholy1負荷後,20分間の
with post,traumatic encephalopathy and cervical
髄液圧の変動を測定した.測定はガラス圧棒と物尺を使
syndrome due to traf澄。 accidents.
用し,㎜の値まで読みとるようにした.対照5例につい
に分類し表2に示す.受傷患者は20代,30代に多
ても同様の検索を行なった.
皿.結
く,10代,40代がこれに次いだ.受傷原因は自動
果
車の交通事故による受傷が最も多い,表3に交通
1。東京女子医大脳神経センターにおける頭頸
事故を原因とした受傷患者の年齢別例数を示す.
部外傷患者の実態
20代,30代では他の原因による受傷は,泥酔によ
まず著者の研究対象であるBarr6−heou症候群
を呈する頭頚部外傷患者の実態を示す.昭和44年
る頭部打撲と頚椎捻挫,けんかによる頭・頚部傷
5月,東京女子医大に脳神経外科学教室が設立さ
害,スポーツ外傷などが多い.10代ではオートバ
れて以来,47年10月末日までに受診した頭頚部外
イの追突事:故傷害と転倒事故傷害,スポーツ時受
傷患者数は3,561名であった.当初から46年1月
傷が目立つ.40代,50代になると歩行中自動:車ま
末日までの1,344名についてはすでに報告2)した
たは自転車との接触転倒事故が多い.自動車事故
通りである.46年2月1日より昭和47年10月末日
の中では,車の後部座席に乗車中追突され,頚
までの頭頚部外傷患者数は2,217名となる.この
部に損傷を受けたいわゆるむちうち損傷が多かっ
うち12歳以上の患者数は1,336名で,性別では男
た.
(2)頚部損傷(いわゆるむちうち損傷)例の
子904名(67.7%),女子432名(32.3%)であっ
た。
年齢別分類.
むちうち損傷なる傷病名については,いろいろ
(1) 頭頚部外傷受傷者の年齢別分類
12歳以上の頭頚部外傷患者,1,336名を年齢別
議論があり,著者はこれを用いないことにしてい
一639一
20
220
215
後遺症のため,正常な職務に復帰できず,医療を
219
求めていることは,社会的にも,臨床的にも重要
こ
旺
200
な聞題であり,著者が研究の対象としてとり上げ
heqd αRd cer)icαl syndrome
たゆえんでもある.
whiplαsh injury
「80
2。露arr6・Lieou症候群の症候学的検討
Barr6↓ieou症候群の症状については,すでに
!60
多くの記載がある.しかしこの症候がいかなる発
i39
壼140
症機序によつているかは今日でも明確でない.最
124
嚢120
近これら複雑な,そして多彩な症状をいくつかの
.イ
原因に分けて説明しようと試みる研究者もある.
r/
ゆo
しかし実際上症状の個々を取り上げてその成因
78
80
60
53
を明確にすることは困難なことが多い.例えぽ,
53
Barr6−Lieou症候群の主症状として;挙げられてい
58
る頭痛,頭重感,耳鳴,めまい,種々の眼症状,
43
睡眠障害,根気なし,いらいら,不安感,注意散
40
30
26
漫などを,自律神経系の症状,あるいは椎骨動脈
23
20
系の循環障害の症状として,区別することはむず
かしい.
10∼
20∼
30∼
40−
50∼
60∼
一方,本症候群を,頚部損傷に由来する頚部組
Fig.2. Age distribution of the patients with trau−
織の機能的,器質的異常により発症するとする説
matic cervical syndrome(White columns indi−
c・te亡h・nαmbe・s・f th・、 pat三・nts w三th head三n−
がある.事実,本症候群は頚部損傷後に多発する
jury=Cross.hatched colu血ns indicate the number
が,頭部外傷後遺症においても認められることは
of the patients w三thout head injury)・From the
古くより気付かれており,頚部損傷における本症
traumatic patients due to traf且c accidents
候群と頭部外傷における本症候群の異同性につい
る.しかし,とくに自動車事故による受傷者の中
ても,今日種々の問題がある.またこれらの症候
には,頭部には一見なんらの損傷もなく,また瞬
群のある症状ひとつをとつても連続性,あるいは
間の意識消失もなく,明確な他覚的神経所見も認
断続性,局在の有無,愁訴の強弱など種々の差異
められないが,明らかに外傷を契機として多彩な
が存在する.したがつて本症候群を正確に把握
頚部症候群を訴えるものが多い.著者は,これら
し,その病態を明確にするためには,慎重な経過
の受傷機転の明らかなものを一応いわゆるむちう
観察の上で,個々の症状を繰り返えし検討してゆ
ち損傷例として,図2にその数と年齢的な関係を
く必要がある.他覚的所見の明瞭でない本症候群
示した.
においては,症状の詳細な観察こそが重要な手段
いわゆるむちうち損傷例は,395名で,12歳以
であり,そうすることによつてしか,本質に迫る
上の頭頚部外傷患者1,336名中の29弩を占め,交
ことはできない.現在の時点では,単なる心因
通事故受傷患者666名中では59%を占める.年齢
性の神経症として処理する訳にはゆかないのであ
別の分類では図2のごとく,20代,30代に多い。
る。
高臣3),岡村4)5>らのむちうち損傷例の統計的観
(1)Barr6−Lieou症候群の概念と分類
察によれぽ,むちうち損傷は高年齢者に多いと報
1926年,Barr6は頭痛,顔面痛,耳鳴,めまい,
告されているが,著者の調査では,20代,30代が
視力障害,咽頭部異物感,嚥下困難,一過性覆声
多く,自動車事故による受傷患者総数の年齢的に
などの諸症状をまとめて一つの症候群とし,これ
重要な位置を占める青壮年層の老が,頭頚部外傷
は頚部の深部交感神経系の刺激により惹起される
一640一
21
と報告した6).いわゆるBarr6−heou症候群がこ
不眠の順である.不安感,いらいら,不眠,注意
れである.
散漫などの症状は,受傷後1週間から1ヵ月半の
ところで,頭・頚部外傷後の患者には,頭痛,
期間で最も強く,その後は比較的減弱する傾向が
頭重感,めまい,耳鳴り,視力障害などがしぼし
ある.頭痛は意外に少なく,あっても断続的なも
ぼみられ,その症状の発現機序は現在のところ不
のが多い(22%).ただし項部の過屈曲,過回旋運
明である.外傷後にみられるこの症状は,いわゆ
動を続けると,頭痛,頭重感,めまいを訴える患
るBar婚Heou症候群に極めてよく類似している
ので,主として整形外科方面では,いわゆるむ
者が28%に及んだ.
(ii) Barr6・Lieou症候群+根症状型の特徴
ちうち損傷時にみられるこれらの諸症状をB3rr6−
この群は単純レ線像で何らかの異常を認めるも
Heou症候群とみなしてぎたのである.むちうち損
のが多い。異常は椎間板狭小化,骨棘形成,局部
傷時の諸症状が果してBarr6のように頚部深部交
的三曲異常などである.症状の中で最も多いもの
感神経系の刺激によるものであるか否かは明らか
は,項頚部痛である.その特徴は局在性があり,
Tahle 4 Clinical Types of Post−Traumatic
Encephalopathy&Traumatic CervicaI
Symptom
cllnical type
Barr6−Lieou syndrome
Barr6−1.ieou十radiculopathy
痛が同部位にあるものは症状が連続的で,増悪す
れば頭痛,口区:気,ロ区吐が現れ,視力障害なども訴
No。 of cases
32(40%)
8(10%)
Barr6−Lieou十myelopathy
20(25%)
Barr6↓ieou十radiculo−myelopathy
11(14%)
Barr6−1.ieou十〇thers
後頭骨の頭頚部伸筋群付着部付近が多い.また圧
9(11%)
える.安静時は軽減しているが,仕事や乗車など
で起こりやすく,仕事あるいは乗車の時間に比例
して症状が増悪する.発汗,不眠,いらいら,根
気なしなどの症状は純粋型における愁訴と有意の
差はない.
(iii) Barr6−Lieou症候群十三髄症状型り特
徴
単純レ線像では20例中13例に異常所見がみられ
でない.著者は臨床的Barr6−Heouに症候群と診
た。異常所見の主なものは,局部的蛮曲異常,椎
断された患者の,愁訴の連続性,局在性,増悪,
弓孔狭小,側蛮などである.症状の特徴は上下肢
軽減などの臨床観察所見を整理し,Barr6−Lie・u
のしびれ感と脱力感である.しかしいずれも感覚
症候群を中心とした幾つかの型を分類した(表
脱失は訴えない.上下肢のしびれ感のうち,上肢
のしびれだけを訴えるものが約2/3である.他は肩
4).
(i)
Barr6−Lieou症候群純粋型
月甲部痛,胸部痛,腰痛などの症状が多い.痛みは
(ii)
8arr6−Heou症候群十根症状型
上部頚椎よりも下部頚椎に多く,頚部運動で嫁前
(iii)
Barr6−1・ieou症候群十脊髄症状型
屈と回旋時に痛みを訴える例が多く,後屈では少
(iv)
Barr6−Lie・u症候群+根症状+脊髄症
ない.
(iv) Barr6・Lieou症候群十根症状十脊髄症
状型
(v)Barr6−Lieou症候群十その他の症状型
状型の特徴
単純レ線像では11例中7例に異常所見がみられ
以上の子別に従って症状の特徴を次項に述べる.
2)Barr6−Lie・u症候群の各型の:症候学的特徴
た.症候学的観察では頚項部痛に次いで,頭痛,
(i) Barr6−Lieou症候群純粋型の特徴
頭重感がみられた。しびれ感は感覚障害を軽度に
症状のなかで最も多いのは項部痛である.この
伴う例が多く,そのうち触覚の鈍麻を訴えるもの
項部痛の特徴は局在がはっきりしない.圧痛点が
が多い.頚部運動で症状が増悪したものは8名を
ない,持続性がないなどである.次に多い症状は
占めた.
(v) Barr6・Lieou症候群十その他の症状二
眼症状(主として三明),耳鳴り,めまい,発汗,
一641一
22
Table 5 EEG Act量vated with Bemegride in
の特徴
Patients with Barr6−Lieou Syndrorne
単純レ線像での異常はほとんどない.症状の主
aboorrnal normal
clinical type
なものは外傷後から起こったと訴える下痢,腹痛
などの腹部症状.健忘症,性格上の変化,特に怒
EEG
EEG
Barr(…_Lieou syndrome
0
/7
Barr6−1、ieou十radiculol)athy
0
1
βarr6−Heou十myelopathy
1
3
3)小禄
Barr6一工ieou十radiculo−myelopathy
1
0
Barr6↓ieou症候群の症状を愁訴とする頭・頚
Barr6−1・ieou十〇thers
王
1
3
22
りやすいなどの症状であった.この群では脳波検
査で5例に異常がみられ,うち3例では発作性異
常が認められた。
部外傷患者80例を,症状の内容を詳細に調べ,そ
total
の特徴から5つの群に分類した。
Barr6−Heou症候群の主症状は項頚部の痛みで
遥一
翫・
あった.その痛みは局在性の場合と,非局在性の
場合とがあり,また持続性の場合と断続性の場合
@
し轟τ
とがある.非局在性の項部痛を訴えるものにおい
一静闘∼柵聯一…
一“画旭幅照撫伽凸
v,一轡一丁い諏’一伽
@
R^T
て他の症状も多彩であった.Barr6一■ieou純粋型
馬
は頭痛は少なく,あっても持続性でなかった.発
馬一
・一一プ轟掘南画姻
一一一一一卿蜘財欲一噺・い一一
・
轟
汗,不眠,いらいら,根気なし,不安などの症状
は,受傷後1週間からユヵ月半の期間が最も強か
“C
@・
L’
@
一一一∼一_一w岬w画
・一一一・》榊匝嫡嗣
一
一一刷蝋帆噛歴〉噛一
一一
一一一一幅耐い、帰一・帆
』吃
った.
し。
a Barr6・Lieov症候群における脳波学的検討
@
R摯
一_入_一L.一_し.」.一」一一..一一
一
and Torres7)らの報告がある.彼らによれぽ脳波
A
上の異常所見はおもに,低振幅波,徐波群発,律
∼解Mv鴨㌔画一
{一一諮v納晒晒〉恥一
EC6
8arr6−LieQU症候群の脳波に関しては, ShapirO
@
一一函施一一・一
〕
B
A 25years old, female;No paroxysmal dischar.
ges were activa重ed even with Bemegride量nje−
動異常,diぼuseαなどが多く,約50%に異常所
ctio nof 75mg・
B 36years old, male;Di飾se high vQltage slow
見を見たと述べている,わが国では,三村8),中
井9)らの報告がある.明らかな異常を認めず,
wave bursts were activated with Bemegride
injection of 35mg. Such Bemegride activation
Border−line以上の所見はないと述べているもの
effects were seen only three cases of the exa−
など所見はまちまちである,8emegride(Megim−
mined patients・
L:Left R:Right F:Frontal AT;Anterior Tem.
poral C:Cen亡ral P:Pa・ie書al O:Occipital
ECG:Electrocardiogram, Lead 豆
ide)賦活では,太田10)らが頭部外傷後遺症とむ
ちうち症において同様の検査所見を報告している
が,いずれも異常所見は少ない.著者の検査所見
Hg。3. A record of Bemegr量de activation of
でも脳波上の異常例は,Bemegride賦活脳波も
EEG on the pathient with Barre.Lieou syndrome
含めて少なかった.
Barr6−Lieou症候群における脳波の異常所見は
2)Bemegride賦活脳波所見
Bemegr三de賦活脳波で異常を示したのは3例
少なく,BOrder−lineを含めて80例中19例であっ
で,いずれも通常脳波で異常のみられたものであ
た.いずれも低振幅波と律動異常が特徴で,その
る.正常脳波群と異常脳波群の症候学的観察にお
1)通常の記録法による脳波所見
他にはdi飾seαなどが主な所見℃あった。臨床
いて丁丁的な差は認められなかった.各臨床型の
症状および受傷後経過期.間と脳波所見との間には
脳波異常例数と異常波所見を表5と図3に示す.
3) 小門
特別の関係は認められなかった.
一642一
23
Table 6 Analysis of rout三ne EMG in Each
脳波検査における,Barr6−Lieou症候群の異常
Clinical Type
例は少ない.また賦活脳波でも異常例は少なく,
clinical type
賦活脳波で異常を示したものは通常脳波でも異常
がみられたものであった,
Barr6.Lieou syndrQme
4.Barr6・恥eou症候群の筋電図学的検討
Barr6”Lieou十radiculopathy
頭頚部傷患者において,項頚部の痛み,上下
cases with
cases
abnormal EMG
32
2Q(63%)
8
7(88%)
Barr6一工三eou十n}yelopathy
20
い.またその原因は,頚椎,脊髄,神経根,腕神
Barr6−neou十
radiculo−myelopathy
11
9(8296)
経叢などの損傷に求められている.このため補助
Barrε一Lieou十〇thers
9
3(3396)
80
52(65%)
肢のしびれ感などが訴えられることはきわめて多
診断法として筋電図検査を用いるのは合理的であ
total
13 (65タ6)
る.著者は8arr6−Lieou症候群の患者80例に,通
常筋電図検査および頚項部の動作時筋電図検査を
施行した.’そして本症候群の発生機序に重要な役
_L
L L L LN_
L LL 』
一「「r「「「「.「
割を果すとされている頚部交感神経異常と頚項筋
群の異常緊張性との関連性について検討した.
F萱g.4.Calibration curve in EMG recording.
1)通常記録法による所見
Each deflection indicates 50μV(upward defle−
表6に各臨床型別の筋電図所見を示す.安静
ctionl negative, d・wnwardl positive)
時,髄液収縮時,最大収縮時の異常波出現状況を
表7に示す.Barr6−heou症候群では,安静時,
丘brillationの出現は少なかった.特にBarr6−Heou
splenius rト
純粋型では!例もなかった.全般的に言って異常
波の波形としては,頚項筋,特に頚板状筋群と僧
帽筋に多発するgronping dischargeが重なもので
あった(Fig.4,Fig.5).その出現は最大収縮時
Fig.5. A sample of EMG records in a patient,
より中等度の随意収縮時に多く見られた。comp−
37years old, female. The ex鼠lnined皿uscle is
1ex NMUと,high ampiitude NMUは,根症状
M.trapezius on the Ieft side.There are grouping
型に比較的多く見られた.異常波の出現状況を各
discharges.
Table 7 EMG F童ndings(80 cases)
voluntary muscle con亡raction
at rest
clinical type
一 國 「 }
@
tion)
maximal
moderate
iFibrila−
comlpex
high
m.M.U.、
≠高垂?奄狽浮р
・
X「ouplng
complex
high
m.M.U.
≠高垂撃奄狽浮р
0
X「Quplng
Barr6−Lieou syndrome
0
4
5
20
4
8
17
Barr6−Lieou一←radiculQpathy
1
3
3
4
3
3
4
Barr6−1・ieou十myelopathy
2
2
5
9
5
6
4
Barr6.Lieou十radiculo.myelopathy
1
2
2
6
2
2
6
Barr6−1.ieou一←others
0
1
0
2
1
1
2
4
12
!5
4!
15
2G
33
tota1
一643一
24
Table 3 FMG Findings in Examined musc豆es
voluntary muscle contraction
at rest
mUSC至e
@
t三〇n)
maxima1
詔黙瀦1、、。d。 g・・up・・g
認欝臨、、。d。9・・u…g
8
5
36
癒
20
旦4
/6
/7
29
24
5
4
6
5
22
19
19
11
23
22
l
1
5
6
5
43
36
16
15
25
35
29
2
3
12
9
5
4
3
4
3
1
4
4
8
9
RT.
O
6
.LT.
o
4
M・sem・・p・nal・・cap・…呈平:
2
M。splenius capitis
2
RT.
M・trapezius
工T.
RT.
M,sternocleidomastoideus
上T.
一 皿
moderate
i負bri玉la−
5
!5
/3
19
M.biceps brachii
RT.
LT.
2
10
16
27
11
!
7
/4
22
8
28
24
29
25
M。triceps brachii
RT.
LT.
3
8
5
14
19
10
24
10
17
8
19
19
14
M・oPPonens pollicis
RT.
LT.
11
5
18
13
18
13
9
6
18
0
17
77
127
327
1
1
tota1
Table 9 Analysis of Kinesiologic EMG in
18
15
245
299
電図にも異常が見られた.その波形は血続的な高
Each CHnical tiye
clinical type
!53
!2
振幅波で,実例の一部を対照正常人の波形と比較
lca・e・
caseS WIth
して,Fig.6,7,8,9に示す,通常筋電図で
abnOrmal EMG
群化パターンが患側にのみ見られるような異常所
32
24(7596)
8
8(88%)
Barr6−Lieou十myel・pathy
20
14(7吻)
Barrε一Lieou十
11
9(8296)
に著明に出現し,最大後屈位では明らかでなかっ
9
4(44%)
た.各筋子の筋電図所見を表!0に示す.
80
58(73%)
Barr6−LieQu syndome
Barr6−LieQu十radiculopathy
radiculo−myelopathy
Barr6−Lieou十〇thers
tota正
見の場合は動作時筋電図でも同様に患側にのみ詠
振巾波が見られた.異常例における詠振巾波は,
Fsg.7とFig.9に示すごとく最:大前屈位と回旋位
3)小括
Barr6↓ieou症候群80例について筋電図学的検
筋群別に表8に示す.対照群として,Barr6一工ieou
査を行ない,
症状のない頭頚部外傷患者17名を検査したが,
(i)通常筋電図で65%に異常所見が認めら
9rouping dischargeの出現率は低い,また, grou−
れた.その多くは頚項筋群のgrouping discharge
ping dischargeが見られても,多発する傾向はな
で,その他cQmplex NMUやhigh ampHtude NMU
く,high amplitudeやcomplex NMUなどの波
も見られた。
形に混在して見られ,大半は最大収縮時に見られ
た。
(ii)動作時筋電図でも,高振幅波を連続的に
認める例が高率に見られた.通常筋電図で異常所
2) 動作時筋電図所見
見が見られる症例では,動作時筋電図でも同様に
筋電図学的検索をさらに詳細に行なうために頚
連続的な高振幅波による異常所見が認められ,異
項筋群の動作時筋電図を記録した.その結果を表
常に左右差のあるものは,動作時筋電図でも同様
9に示す.通常所見を示す症例はすべて動作時筋
に左右差が見られた.
一644一
25
KINESIOLOGIC EMG PATTERN. tN CONTROL
KiNESIOLOGIC EMG PATTERN
'
IN CONTROL
tt
egei ・.-"-・rH Rt M.SPENtUS
fet9Jkec".--- Lt M.TRAPEZtVS
・1 T l'1 '''
/' rll
ttt t t
'
CALeBRATION
fl
maiv-----------
E- iil.tt.,-l-l- [・l・i li l・i'I・- 1・・・' .i "Ei,
ROMTION-.Rt
i
-lt-., ht.,,M
Rt M. SPENIV$
"t"`'""wh-.""""'-"-------------・-..-..w..........
tttt e t
tt
FLEX:ON
Lt M.TRAPEZ;US
I・:;r"T-::
b rr-r:-L"
l tswh
ili
t.・t;l,:K,,7T・-・-t-・t-r7・L・-Ttt-・-・"LT7・t".1i,
eq- tw.twi Tr7rrrrew"i-・・・・i,.,.i,,i.
u.
'
tt/tt /ttl
1'1''t
tt
'1/ .I '1/.・ ' . x'
tt tt111
t tttttt/
l.,l・.lli'1
11 - --- h"t,4
i!isidi
l
lrY-W-------
t'
,
i1.r 1.1'1 I1 I・
EXTENSION
moTas10N - k
5Q"Vq 1.5mwt
5QnAVut 15eem
25 ""/" sec
'
25 ma/sfrc
22yrs MALE
22yrs MALE
Fig. 6. Moderate amplitude interference voltages
EIg. 8. Moderate amplitude interference voltages
were observed in rotation Rt. and rotation Lt.
were observed in flexion and extension movement.
movement.
'
KiNESiOLosIC EMG enTTERN iN BARRE-LiEOU
SYNDReME
'1
KINE$10LosIC EMG MTTERN [N BARRE-LIEOU SYNDROME
Rt M. SPreNIUS
Lt M.TRAPEZIUS
( g-d-/' '''
tw,,',i,,ww,i,tAtw,tw,"fittw-tiwtpmtwff"'vsrt}tgee
vepm4t
im, ewiQ.wh--N-.asw
"''1/i'1''1'''1'/ 1' '
$ii],i,j.Yiww.,iwwelllfigfFIkie}rw.wwlil,Felii["i/i",eWi9i,91jmaiilg
'lll S.l'. il: ,'['''1 ' '
Y. :iY, . , .iek,:lff£t,tl-tsL"itiwti lji tivaf:itx l/'a;-vviwLbisFgAekly
,iitii
itigipmil
Re;IATfON-+Rt Rt M. '$PENeUS
'
t ./
FLEXION
Lt M.TRAPEZIUS
'
'[.#,.,,.iiilFR.i,i,ii.iiiiiIF,8'・'Pft'・'/F・iSiT・-.k''.iT-
::..I:1.me:.. ZTI,J/'"7-7 tt・ '- t - cr--・tr-rr/T・
Npmxts'rv""'tlj'"as,iViMv-'irwtdylj"iby,ivrN,,pa,h,Kdi,'ljVvt',ttr:S#s(itAeag,Iv
i(iilittii"letsWwweqtsglWBIif([ilifelilldi・ifiitiBiSIVitsillllEleljma
i/ / i・ ・ /, ,ll , i ・ i . I. , ; , /, , ,'pm'"'"rTe"rrl"rtrrv tw,
EXTENSSON
ROTIATION --" Lt
5QiiV= 1.5 mm
25 M%ec
5QLaV= 1.5mm
'
36yrs MALE
36yrs MALE 25Mfllxgec
Fig. 7. Abnormally high amplitude NMU were
Fig. 9. Abnormally high amplitude NMU were
observed in flexion and extension movements
particulary marked in flexion.
observed in rotation Rt. and rotation Lt. movements.
'
- 645 -
26
Table 100ccurrence of High Voltage EMG Pattern in Kinesiologic EMG Examination
丘exson
rotation→RT.
■
??狽?獅唐撃盾
Barr6.
P.ieOU
musCle controI
contro1
Barr6−
controI
kieou
rotat至on→■T.
Barr6−
Borr6−
controI
kieOU
teOU
M.splenius capitis
1
38
0
18
1
28
1
30
M・trapezius
0
38
0
18
0
28
0
30.
M.semispinalis cap量tis
0
23
0
12
0
24
0
29
M.sternocleidomastoideus
0
23
0
12
0
24
0
29
cases 80, control cases 10
Table ll Reaction type to Mecholyl ln the
(iii)動作時筋電図で前屈時に異常波が現われ
Patients with Brrr壱一Lieou Syndrome and
やすいことを知った.このことは,臨床的に頚部
controlS
運動のうち,とくに前屈の障害が多いことを筋電
type of
図学的に裏付けている,
(iv)神経学的所見,レ線所見で異常を欠く症
例でも筋電図には異常所見がみられた.
5.Barr・6]Lieou症候群における自律神経機能
の検討
齢reactlon
control
Barr6−Heou
Total
唐凾獅р窒盾高
Stype
2
0
2
N
2
18
20
P.
1
7
8
tota1
5
25
30
Bar呼Lieou症候群の病態が自律神経系の機能
異常であり,その発症は頚部交感神経系の過敏,
被刺激状態であるとの仮説に対して,果してどの
Table 12 Reaction type to Mecholyl test in the
程度自律神経系の異常がおきているかどうかを検
Patients with Barr6−Lieou Syndrome and Controls
討することは,重要な意義のあることである.と
type of
くに著者の興味をひくことは,本症候群の発症
reactlon
clinical type
S
N
P
Barr6一工ieou syndrome
0
13
4
弩
Barr6−Lieou一トradiculopathy
0
0
1
螢
Barr6−Lieou十myelopathy
0
3
1
Barr6−Ueou十radiculo−myelopathy
0
1
0
Barr(…一1、ieou一←others
0
1
1
epilepsy
1
0
0
spino−cerebral degeneration
1
0
o
cerebro_vascular disease
0
0
1
muscIe contraction headache
0
2
0
に,視床下部における自律神経系中枢の機能異常
が関与するか否かという点である.
自律神経系の検査法としては,Mecholyl, N・r−
adrenaline, Atropine, Adrenaline, Adrenaline, Pi1−
霧
ocarpineなどによる薬理学的検査法があるが,視
床下部の機能を調べるには,Mecholyl試験が適
巻
当と考えられる。したがって著老は本法により検
妻
8
索をこころみた.またMecholyl試験の際に同時
に髄液圧を測定し,その結果を検討した.
1)Mecholyl試験の成績
正常のN型の他に,10分値の一血圧および脈拍数は
Barr6−L至eoa症候群を呈する患者25例に, Mec−
基線に復帰せず高い値を示し,最終値の20分でよ
holyl試験を実施した.結果は表11に示す。本症
うやく基線に復帰する型があった.著者はこの
候群においてはN型の反応が最も多く,25例中18
型をとるものをN−S型と称することにした.一
例であった.次に臨床各型別にMecholylに対す
方,10分値では低値を示し,20分値で基線に戻る
る反応をみた(表12).Bar6−Lieou純粋型・に特に
N−P型もあった.Barr6−He・u純粋型のN型13例
N型が多かった.N型を更に細かく分析すると,
中,正常N型6例,N−P型4例, N−S型3例であ
一646一
27
rnm卜駈。
CSF
150
200
200
167
100
145
80
薯50
100
mmHg
BP
150
150
150
130
100
106
⑩0
n’m
puI§e
150
150
150
紛0
100
10
84
5’
A
10
15
20’
B
.
5’
10/
15’
C
20’
5’
ヨ1げ
15’
2σ
LongitudinaI observations on the changes of cerebrospinal 且uid pressure, blood pressure and pulse
rate after Mecholyl inject三〇n in three control healthy subjects.
A:37years, female B:26 years, female C:32 years, male
The changes of values i cerebrospinal fluid pressure, blood pressure and pulse rate were markedly
different in the individuals
Fi琶.10. C。S.F. pressure, blood pressure and pulse rate in control
Table 13 Correlation between PuIse rate and
つた.脊髄症状を伴なう型のN型は3例で,その
うち2例はN−P型,後の!例はN−S型で,正常
C.S.F. Pressure during Mecholyl test
clinical type
のN型は1例もなかった.P型は全体で7例あ
り,そのうち3例は20歳台の青年層であった.
similar not similar
course
course
12
5
Barr6_Lieou十radiculopathy
0
!
候群の髄液圧測定では,いずれも高い値を示し
た.また圧の上昇は検査終了後もなを続いた.
Barr6一■reou十myelopathy
2
2
Barr6−Lieou一トradiculo−Myelopathy
0
1
Barr6−1ieou純粋型と,.Barr乱ieou症候群十脊髄.
Barr6−Lieou十〇thers
1
1
Harr6−Lieou syndrome
2).Mecholyhest時の髄液圧の変動
Mecholyl試験の際に行なったBar」6−Lie・u症
症状型では,髄液圧の上昇と共に脈拍数の変動が
を対照と共にFig・10,11に示す. Fig・!0のごとく
3)小括
Barr6−Lieou症候群はMecholyl試験ではN型
対照型には上記傾向は1例も認められなかった,
を呈するものが多い.Mecholyl試験と同時に行
脈拍数と髄液圧の関係をまとめて表13に示す,
なった髄液圧の測定では,8arr6−Lieou症候群の
並行して現われる傾向を示した.この実例の1部
一647一
28
mm㌦0
2500
CSF
200
200
00
150
175
75
120
50
88
m齢
50
150
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1」ongitudinal observations on the changes of cerebrospinal fluid pressure, blood pressure and pulse
rate after Mech・lyl injecti・n in three patients.
A:23years, female B:36 years, male C:42 years, female
In three cases, the changes of C.S.F.pressure and pulse rate showed almost simHar course except
for the responses of blood pressure which belong to N−type
Fig. U. C.S.E pressure, blood pressure and pulse rate in Barre−Lieou syndrome
著明なものには髄液圧の上昇が見られ,左の上昇
状が遷延性となり,そこからいわゆるBar臨Lieou
は20分後もなお持続する傾向が見られた.さらに
症候群という特殊な症状が発現するものと述べ
脈拍数の変動と髄液圧上昇が並行関係を呈した.
ている.景山13)らは,頭部外傷後遺症と外傷性頚
W・考
按
部症候群の症状の相違点について,前老では上部
1.頭部外傷ならびに頚部外傷におけるBarr6−
頚椎の症状が多く,後者では下部頚椎の症状が多
Lieou症候群の発生について.
く,また治療期間は後老において長期の場合が多
近藤11)らは受傷機転,すなわち頭部への直達力
いと述べている.これら多くの報告によれば,頭
の有無ならびに頚部への力の作用機序から頭部外
部外傷後遺症と外傷性頚部症候群とは明らかに別
傷後遺症と外傷性頚部症候群(いわゆるむちうち
のものとして扱っており,またBarr6−Lieou症状
損傷)とを明確に区別し,Barrε・■ie・u症候群は
の発症は頚部外傷,なかでもむちうち損傷のさい
頚部損傷すなわち,むちうち損傷により発生する
に見られる症候群であるということになるようで
頚部交感神経系の病的状態によるものであると述
ある.
べている.高臣12)らは,自動車事故に限って起こ
著者は今回,自動車事故による頚部損傷いわゆ
るむちうち損傷では加害者との葛藤や賠償問題な
るむちうち損傷と,頚部のみならず頭部にも外
どの特殊な心因性の条件があり,これによって症
傷機転が働いたと見られる患者について症状の観
一648一
29
察を行なって来た.後者は例えば,スポーツ外傷
れたことなどから,本症の異常脳波は,脳の器質
で,転倒し頭部を打撲するとともに頚部を捻挫し
的病変を意味するものではなく,単なる機能的異
たという例などである.その結果によると,むち
常であって,おそらくは末梢神経の異常刺激に由
うち損傷例とこれら頭部の外傷後遺症との問で症
来するのであろうと述べている.著者の経験で
状の遷延性にはほぼ差がみられなかった,また,
は,Barr6−Lieou純粋型群では!例も異常がなか
むちうち損傷例と頭部を含めた外傷後遺症例で,
った点から見て,脳幹には異常がないかまたは少
Barr6−Lieou症候群の発症時期,症状の強さ,愁
なくとも脳波に表現される程度の脳幹の機能異常
訴の多少に何ら有意の差を認めなかった,このよ
はなく,Barr6−Lieou症候群は異なった次元の問
うな理由から著者は,Barrε一L呈eou症候群は,外
題であると考えるものである.
傷性頚部症候群いわゆるむちうち損傷例のみに
著者は通常の筋電図学的検査と,頚項筋群の動
発症する症候群であるとする立場には同意できな
作時筋電図検査を実施して,8arr6−Lieou症候群
い.Barr6−Ueou症候群は頚部のみならず,頭部
の患者に多数の異常放電を認めた.Barr6−Lieou
外傷後遺症においても同様に見られる症状であっ
症候群の患者に,同様の検査を施行した報告が高
て,頭頚部外傷に起因する何らかの機能的,器質
木ら19)によってなされている.彼らはBarr6↓ieou
的異常による症候群であると考えたい.
症候群を呈しない患者と呈する患者の比較におい
て,前者では筋電図に異常所見が極端に少なく,
2.頭頚部外傷によるBarr6−Lieou症候群の発
後者の患者には多くの異常を認めたと報告してい
生機序ならびに病態生理.
Barr6−Lieou症候群の本態もしくは,発生機序
る.
については,後頚部の交感神経刺激状態に由来す
桧ら20)21)は頚項筋と平衡機能異常との関係につ
るとする説が多い.近藤ら14)15)は頚部交感神経刺
いて筋電図学的に検討し,その密接な関係を述べ
激状態がその一次性原因であり,頚部交感神経系
ている.そして頚部軟部支持組織の異常緊張充進
の病的状態こそが本症候群の諸症状の原因である
が深部受容器を介して脳幹を刺激し,脳幹部の機
としている.片岡16)は頚部外傷による椎問板の変
能障害をおこすと考えを述べている.
化を重視しているが,これによる病的刺激は,洞
著者は動作時筋電図で過屈曲時に異常緊張性の
椎骨神経を介して,後頚部交感神経を刺激し,こ
増大を示す所見を見た.Breig22)は,人間の頚部
れが椎骨脳底動脈,内頚動脈およびそれらの分枝
は後方に伸展した位置が最も弛緩した姿勢であっ
の脈管収縮を導くものとし,結果的にその支配下
て項頚筋群は弛緩し,脊髄は短かくなり直径は増
の視床下部,脳幹部の血流減少を来たして,Bar−
し,椎骨動脈の緊張も軽減されるが,逆に前屈し
r6一正ieou症候群を発すると考えている.土屋ら17)
た場合は,項筋群は伸展し,緊張が充進し,脊髄は
はウサギを用いた動物実験で,自律神経機能の高
延長され神経根も引張られ,軟部組織へのstress
位中枢と目されている視床下部より,受傷後かな
はより大きいといっている.こうしたことから,
りの日数を経て異常脳波が出現し,しかも長;期
頚部に何らかの異常があるときは,前屈位によっ
間,間隔的に現われることを認め,このような視
て頚部の軟部組織とくに頚部諸筋にstress,ある
床下部の変化は神経系または血行性に起こされた
いはnoxioUs st圭muliが加わり,頭頚部外傷症候
失調状態であると述べている.
群の症状発現に関与するのではないかと考えられ
著者が行なった脳波検査においては,B¢megr−
る.交感神経緊張状態を主徴とするBarr6一工ieou
ide賦活脳波の所見も含めて,当初の予想に反し
症候群において,筋電図により頚部諸筋の異常緊
て異常例は少なかった.景山ら1Dは頭部外傷後遺
張性を示す所見を見たことは,上述の点を考慮す
症とむちうち損傷のBemegride賦活脳波所見の
ると興味が深い.この事実から頚部交感神経系と
検討において,混けいれん剤が無効なこと,頚部
頚部諸筋の緊張とを神経生理学的に直接結びつけ
の局麻剤による神経ブロックで異常脳波が改善さ
る事は妥当ではないとしても,間接的な関連性に
一649一
30
なく,他の要因,例えば血液循環障害なども考慮
ついては考慮し得るであろう.
に入れなけれぽならなく,今後も検索を続けたい
Barr6−Lieou症候群においてをま,自律神経機能
の検索が多方面で行なわれている,自律神経系
と考えている.
3.Barr6−Lieou症候群の臨床上の重要性と今
の試験としては,Mecholyl試験による報告が多
後の問題点,とくに治療への推論.
く,反応型の多くはN型であると述べられてい
る.著者の検索結果でも,表11に示すようにN型
著者は,頭頚部外傷後遺症におけるBarr壱一H−
が多かった.大野ら23)24)は,多数の頭部外傷後遺
eou症候群について,多角的に検討を加えてきた
症患者にMecholyl試験を行ない,麻痺,痴呆な
が,本症候群は自覚的愁訴が核心にあり,他覚的
どの重症忌詞をも含めてN型が多いことを指摘し
所見に乏しいことは,しばしぼ触れてきたとおり
た.このことから頭部外傷は自律神経中枢に影響
である。このことは,頭頚部外傷後遺症全般に通
を及ぼさないのではないか,あるいはMecholyI
ずることでもある,臨床の実際において,種々の
試験は自律神経中枢の機能を忠実に反映しないの
検査を行ない,他覚的に異常な所見を把握し得た
ときには,その異常を診断名とし,かつ治療の対
ではないかと推論している.
象とすべきである.このような症例を除外してゆ
著者はMecholyl試験の際に髄液圧の測定を行
ない,その結果,Barr6−Lieou症候群の強い患者
くと,頭頚部外傷後遺症のなかで自覚的愁訴を中
では,髄液圧は,Mecholyl賦活により,脈拍数
心とした一群の症例が残ってくる.そのなかの代
の変動と共に比較的高い圧まで上昇し,20分後も
表的なものがBarr6山ieou症候群である.著老の
なお基線に復帰せず,依然として高い値を示す傾
検索で明らかなように,僅かに他覚的に異常を呈
向を認めた.このことから,頭頚部外傷は脳幹部
するものは筋電図所見のみである.
の自律神経中枢にも何らかの影響を与えているだ
一方,本症候群には前庭機能検査あるいは精神
ろうと推論した.この所見がそのまま自律神経中
身体医学的検査でアプローチするものもある.本
枢の機能障害を示す,端的,直接的な証拠になる
症候群はそのアプローチの仕方によって様々の病
とは断言できない.しかしMechloylに対する髄
態をうかがわせはするが,現在のところでは未だ
液圧の反応的上昇が,Barr6−Lieou症状の強い患
本態を明らかにはなし得ない.そこで,本症候群
者において対照群とは明らかに異なることは,血
を形成する個々の症候・症状の症候学,病態生理
圧,脈拍,髄液圧などに関与している自律神経系
学を明らかにする努力が積み重ねられなけれぽな
の機能が,少なくともBarr6−Lieou症候群におい
らないと共に,この症候群を呈する個体の生物学
ては変調もしくは修飾されていることを示すもの
的,社会心理学的二二の調査も欠かせないものと
と考えられる.
考えられる.著者の立場からいえぽ,上記のこと
ところで一方,Mecholyl試験により脈拍数は
を考慮しながら個々の症状あるいは症状の増悪を
変動するにかかわらず,血圧の変動がN型を取る
もたらす因子を排除する方向の治療を行なうこと
ということは,前記の反応像とは矛盾した所見で
が心要であり,またそのことによって本症候群の
ある.この点に関しては,gellhomら25)が一連の
本態にも近付き得ると考えられる.したがって末
研究で指摘したごとく,脳幹の自律神経中枢異常
梢における,筋ブμック,神経ブロック,星状神
は,視床下部前部,後部のいずれかに障害がある
経節ブロック,頚部二筋への理学的療法なども積
ときには,S,またはP型をとるが,交感,副交
極的に行ないながら,今後の研究をつづけたい.
V・結
感の両方に障害を受けた場合には,N型に逆戻り
するものと考えることができる.しかしこれはあ
論
1) Barr6−Lieou症候群は外傷性頚部症候群
(いわゆるむちうち損傷)のみにみられる症候群
くまでも推論であり,なお多くの他の因子も関与
ではなく,広く頭部外傷患者にも見られる.
していると考えられる.またBarr6−Heou症候群
が自律神経系の障害だけで片付けられるものでは
一650一
2)Barr6−He・u症候群の症候学的観察では,
31
愁訴として項部痛が最も多く,その症状は,頚部
候学的観察と筋電図所見より,頚項部諸筋の緊張
の運動によって増悪し,増悪とともに,頭痛,め
異常性が少なくとも本症候群の形成増悪に関与し
まい,嘔吐などの症状が続発する傾向を認めた.
ていることが示された.現在の時点では,両者相
3)Barr6−LieQU症候群においては,通常の脳
倹って症候が形成されると考えるのが妥当であろ
波検査でも,Bemegride賦活脳波でも異常脳波の
う.
出現は少なかった.したがって,Bafr6一工ie・u症
終りに,喜多村孝一教授のご指導,ご校閲に深甚の謝
候群においては,脳幹1こはBemegrideで賦活さ
意を表し,また朝倉哲彦助教授のご指導をはじめ,教室
れるような脳幹機能異常とは全く異なった次元の
の諸氏のご助力に感謝致します.
機能異常の存在の可能性が考えられる.
4)通常の筋電図ではかなり多くの異常所見が
頚項部諸筋に見られた.その多くは,groupiRg
(本論文の要旨は第6回脳神経外傷研究会,第38回東
京女子医科大学々会総会,第2回日本脳波,筋電図学会
総会で述べた。)
dischargeで,その他, complex NMUや, high
文
amplitude NMUも見られた.同様に動作時筋電
献
1)沖中重雄・吉川政己・村地1弟三・小坂徳樹・鎮
目和夫・宇尾野公儀・室隆 雄・井形昭弘・松
田邦夫・二宮陸雄・田辺 等・上田 敏・長滝
図の解折からも多くの高振幅波が見られ,特に前
屈運動時に著明であった.このことは頚部の前屈
重雄:最新医学 14 (10) 183∼197 (1959)
運動が円滑に行なわないことの裏付けとなる.神
2)喜多村孝一・朝倉哲彦:外科治療22(6)651
経学的検査,レ線検査などで異常のみられない症
3)高臣武史:外科治療22(6)655∼659(1970)
例において,筋電図に異常所見が得られた.本症
4)岡村正明:脳・神経外傷3(1)105∼116
候群の症候形成に頚部の筋緊張の異常が関与して
5)米山…幸…作:神経進歩14 (3) 6!5∼620 (1970)
いることがうかがわれた.
6)sa血dstrom, J・A.3 Acta Otolaryng 54207∼
226(1960)
∼654 (1970)
(197!)
5) 従来Barr6−Lieou症候群は頚部交感神経刺
7)ShapP且m, s.K., F. Jorres;Arch Neurol 5
28∼35(1961)
激症状といわれてきたのに加え,末梢のみならず
8)三画面一二精神神経学雑誌66547∼55!(1964)
9)申井 昂・斎藤佐内・渡辺三郎・深井博志:脳
と神経6(11)488∼490(!959)
10)太田幸雄:災害医学12(9)840∼842(1969)
11)近藤駿四郎:引外医学671002∼1006(1966)
12)高臣武史:外科治療22(6)656∼659(1970)
13)景山直樹・田中 衛・池田公行・薄目正二・梁
田邦幸・白井鎮夫・小竹源也:脳と神経21(8)
自律:神経中枢にも障害が存在することが想定され
る.しかしMecholy1試験でN型という反応型が
多い.このことは,視床下部に全く異常がないこ
とを示すものであるかも知れない。しかし一方で
は,視床下部の前部,後部言忌の機能不全から起
893∼895 (工969)
こった逆戻りの現象ではないかとの推論が可能で
14)近藤駿四郎:外科治療8244∼259(1967)
15)池田亀夫・三谷哲史・浅井博一・野村 勇・岩
ある.Mecholyl試験の際に行なった髄液圧の測定
田清二・福田宏明:外科治療22(6)631∼
では,8arr6一工ieou症候群の明瞭なものでは髄液
632 (1970)
圧の上昇が著明で,20分後のテスト終了後もなお
16)片岡 治:災害医学12(9)844∼854(1969)
17)土屋恒篤・土屋弘吉:災害医学12(9)926∼
正常に復帰しない.さらに髄液圧の上昇は脈拍数
935 (1969)
の変動と並行関係を呈した.ゆえに頭頚部外傷後
18)景山直樹・窪田 怪:災害医学13(11)(!971)
19)高木学治・鈴木弘裕・石川芳光;脳・神経外傷
遺症では,一血圧,脈拍,髄液圧などに関与する脳
13 (1) 163∼166 (!971)
幹の調節機構に何らかの機能的・器質的障害が存
20)檜 学:外科治療22(6)664∼667(1970)
21)富永紳介・佐藤日出男・梶川 博・米田俊円・
清水 敏:災害医学12(9)863∼872(1969)
在すると考えられ,上述の推論を有利にする。
22>Breig, A.S.=J Neurosurg 25 (45)126∼
134(1966)
Barr琶一Lieou症候群においては,その発症が中
枢脳幹に由来するものと,頚部軟部組織内の末梢
23)大野恒男・許 端光・間中信也::日災害医
誌 16 (5) (6) 3G3∼309 (1968)
に由来するとするものとがあるが,著老の研究結
24)評家 毅・三上 崇・中島 聡;災害医学12
果からは,脳幹由来とする可能性のみられたが,
(9) 827∼828 (1969)
それを断定する所見は得られなかった.一方,症
25) Gellhorn, E・; Neurology 6335∼340(1956)
一651一
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