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第45回ERA-EDTA - フレゼニウス メディカル ケア ジャパン
Congress Service 45th Congress of the ERA-EDTA Mai 10-13, 2008, Stockholm, Sweden - 和訳版 - 目次 1. 2. 3. 4. 5. 貧血 骨病変とミネラル代謝 心血管系疾患 透析 慢性腎臓病(CKD)の疫学と予後成績 4 7 11 17 25 第 45 回 ERA-EDTA 抄録集より抜粋 Stockholm, Sweden May 10-13, 2008 編集: Fresenius Medical Care International Marketing & Medicine Christina Lage, MD Ilona Weber-Fürsicht 和訳: フレゼニウス メディカル ケア ジャパン株式会社 マーケティング・学術部 3 1. 貧血 貧血管理に対する新旧 K/DOQI ガイドラインにおける Hb 目標値を外れる時間に関する考察 Hans-Joachim Müller1, Patrick Biggar2, Jan Galle3, Lars-Christian Rump4, Matthias Girndt5, Hans-Gernot Asmus6, Roland Winkler7, Johann Braun8, Johannes Mann9, Christoph Wanner10, Frank Dellanna11 1 Dept. of Nephrology, Klinikum Fulda, Germany; 2 KfH Nierenzentrum Coburg, Germany; 3 Dept. of Nephrology, Klinikum Lüdenscheid, Germany; 4 Dept. of Nephrology, University of Düsseldorf, Germany; 5 Dept. of Nephrology, University of Homburg, Germany; 6 KfH Nierenzentrum Berlin, Germany; 7 Dialysegemeinschaftspraxis Rostock, Germany; 8 KfH Nierenzentrum Nürnberg, Germany; 9 Dept. of Nephrology, Klinikum München-Schwabing, Germany; 10 Dept. of Nephrology, University of Würzburg, Germany; 11 Dialysegemeinschaftspraxis Düsseldorf, Germany 序論と目的: 質的な管理は,透析施設で重要な因子となり,また,ガイドラインを充分に満たすことは 重要な部分を占める.貧血管理に対する最近のガイドラインは変更され,目標範囲以下,範囲内および 範囲以上に属する患者の分布状態も同様に変化している.その様なことから,本研究では古い目標値 (11-13g/dL)と新しいガイドライン(10-12g/dL)において,三種類の異なる層に関する患者分布の変化を 分析した. 方法: ドイツの AENEAS データ・ベースによる成績を用いて多施設(n=26)のレトロスペクティブな検討を 行なった.全例(n=901; 年齢=65.3±14.2 歳; 男性=512 名; 糖尿病=402 名)において,12 ヵ月間の Hb(2006)ならびに月に最低一回の Hb における赤血球造血刺激剤(ESA; Erythropoiesis-Stimulating Agent)のデータが含まれた.目標範囲を外れる時間を計算するため,全 Hb の連続値を直線で結び,上 限と下限を表わす交差ポイントを計算した.即ち,二つの交差間の時間は,目標範囲の下方,内部と上 方の時間を示す.異なる三群内部の時間を,新旧ガイドラインの充足度につき比較した. 結果: 平均観察期間は,343±6.7 日になった.観察期の平均 Hb 値は,11.76±0.85g/dL になった(正常 に分布). 異なるガイドラインにおける目標範囲の下方に対する平均時間は,各々19%(旧)と 0%(新) (p<0.001),目標範囲内で 62%(旧),50%(新)で(n.s.),上方が 6%(旧) ,40%(新)であった(p<0.001) (F-Test). 結論: この極めて良く管理された患者コーホートスタディーによると,貧血管理に関するガイドライン の変更では,目標値内の時間に属する患者割合を有意に増加させることなく,目標を下回る時間内の患 者群を目標を上回る時間内の患者群の方に顕著にシフトするであろう.従って,新規ガイドラインを遂 行しても特にメリットを見い出すことはできなかった. 4 1999 年から 2005 年までの英国の血液透析患者でヘモグロビン値の高低に伴う死亡リスクの変化: 32,500 患者年を観察したデータ Eight Best Abstracts David Ansell1, Dan Ford1, Donald Richardson2 1 UK Renal Registry, Bristol, United Kingdom 2 Renal Unit, York District Hospital, York, United Kingdom 序論と目的: ヘモグロビン値は,13g/dL(英国では 12.5g/dL)を下回る新しい上限値以内に維持すべきと する新ガイドラインが大いに注目されている.この数値は,高 Hb 患者で血栓症リスクの増加を示す無 作為試験での懸念から提唱された.該当した腎施設の患者ヘモグロビン値が正常に分布しており,また, より小さな裾野をもって上方の高い Hb と下方の低い Hb 値への狭い分布をさせることは非常に難しいた め,この上限値には不安がもたれている.新しいガイドライン戦略におけるリスクは,10g/dL 以下のヘ モグロビン濃度の患者数の増加を招くかもしれないということである.低ヘモグロビン値のリスクは, 高ヘモグロビン値と同じなのか? 方法: UK Renal Registry(英国腎臓学会統計)は,その当初から四半期毎の Hb 値を集計し,1997 と 1998 年の患者数が小規模だったので,我々は 1999 年から 2005 年のデータだけを選んだ. データは,病院の腎 IT システムから自動的にソフトウェアー・データ抽出過程を介して収集した.毎年 HD を行なう全患者を対象にした.2005 年の母数には 8,500 名の患者が含まれた.年間の 4 四半期毎の ヘモグロビン結果を平均し,その翌年の死亡の相対リスク(Hb10.0-10.9g/dL で比較)は,年齢,基礎診 断,RRT(腎代替療法)の経過時間で補正計算した. 結果:異なるヘモグロビン値に対する死亡の相対リスクは,7 年の期間で一貫しているように思われる. Hb 値>10g/dL 群の相対死亡リスクは低い. 結論:この観察期で患者群が低 Hb 群から高 Hb 群に大きくシフトしたが,相対死亡リスクの安定が見ら れ,また,このことは患者の因子よりもむしろ Hb 基準値の達成に関係すると言える. 英国国内では HD 患者の平均 Hb 濃度は,毎年改善が続いている.Hb<10g/dL の患者は,1999 年では 36% であったが,2005 年では 13%まで改善した.同様に,1999 年で Hb>13g/dL の患者はわずか 11%しかな かったのに比べて,2005 年は 22%まで上昇した. これは観察データだが(無作為比較試験ではない),低 Hb で見られる高いリスクに比べて,高 Hb を達成 することが死亡に対する高リスクである可能性は提示していない. むしろ Hb 上限値の新たな設定は,死亡リスク増加との関係が知られる 10g/dL を下回る Hb 値を維持す る患者の増加につながるかもしれない. 5 定期的な血液のサンプリングは腎臓病患者への鉄剤の必要量に関与するか? 血液透析群と腹膜透析群の比較 Best Abstracts Presented by Young Authors William Herrington, Ramesh Naik, Mobin Mohteshamzadeh, Emma Vaux, Lindsey Barker Renal Unit, Royal Berkshire Hospital, Reading, Berkshire, United Kingdom 序論と目的: 全ての透析患者には,貧血,電解質バランス,血液由来のウイルスと至適透析をモニター する目的から定期的な血液検査が行われている.当透析施設の穿刺による採血方法は,VacutainerⓇを 用いることによって,各検査で事前に決められた血液量を採血するものである.HD 患者は PD 患者より 多くの頻度の鉄剤投与を必要としており,特に PD 患者よりも頻回に血液検査が行われている.本研究 の目的は,一施設における腹膜透析(PD)と血液透析(HD)患者群の血液量を計算し,定期的な血液検査に おける鉄除去量を推定することである. 方法: 2006 年 1 月 1 日から 2006 年 12 月 31 日までに透析施設の全ての透析患者(最低 90 日)を分析した. データは,患者の概要分布が示された臨床用のコンピューター・データベースからレトロスペクティブ に採集した. 血液検査では,血漿ヘモグロビン(Hb)とフェリチン濃度の測定,また,赤血球造血刺激 剤(ESA;Erythropoiesis-stimulating agent),鉄静注量(IV)および輸血量が記録された.データから, 年間の血液量と鉄除去量を予測した. 結果: 224 名の HD 患者と 118 名の PD 患者が分析対象になり,各々191 と 93 回の治療年に相当した.患 者構成は 72%が白人で占め,男性 63%,糖尿病の罹患率は 30%で,HD 患者は PD の 58 歳よりも 63 歳と年 齢が高かった(p<0.01, paired t-test). ワーファリンの投与比率は,同等だった(14%). 結果を下表 に示す. 結論: HD 患者は,PD 患者よりも Hb 濃度は低値を示し,ESA と IV 鉄投与量が高値となった.定期的な血 液採取は,HD 患者において顕著に鉄を除去しており,その量は2倍であった.このことは,標準単位の 必要検査量よりも多いが,実際の IV の鉄補給量と比べて小さい(HD の 6%と PD の 35%). HD 患者は,透 析中に鉄を損失するが,この事実は全ての相違を説明するには不十分で,PD 患者には適用できないこと を確認した.例えば消化管出血の発症の様に,その他の鉄損失の原因を考察する必要がある.血液採取 量を標準レベルまで引き下げようとの方針は,HD 患者において必要とされる IV 鉄投与量に対して大き な影響を与えることはないであろう. 6 2. 骨病変とミネラル代謝 血液透析患者に対するリンの臨床実践ガイドラインの施行を透析施設で長期に渡って安定して 行なえるか? 50 施設の 7,900 名のデータから Alexandra Hodsman1, Julie Gilg1, Yoav Ben-Shlomo2, Paul Roderick3, David Ansell1, Charlie Tomson1 1 UK Renal Registry, Southmead Hospital, Bristol, United Kingdom; 2 Social Medicine, University of Bristol, Bristol, United Kingdom; 3 Public Health Sciences, University of Southampton, Southampton, United Kingdom 序論と目的: UK Renal Registry(英国腎臓学会統計)は,継続する生化学データを集めた独自な統計 であり,英国(腎臓学会)の臨床実践ガイドラインに基づき検査を行った上で集計されている.例として リン酸を用いた本研究は,透析施設の治療実践状況を査察するための経年的と横断的な分析を統合でき るという利益を提示する. 方法: 2005 年の HD 母集団を分析した.2005 年に PO4 濃度が 3 未満の患者を対象から除外した.各施設 で PO4 が<1.8mmol/L(現行のガイドライン)の患者比率を,2005 年の最終四半期(Q4)と年間平均値(MAV) の数値両方を用いて算出した.平均値が Q4 値を含むことから,MAV と Q4 値の差対 MAV と Q4 の平均値を 比較するため,Bland-Altman プロットを比較するために用いた. 各施設において,四半期毎の PO4<1.8mmol/L の患者比率を,施設実践状況を経年的に分析するために使 用される統計的実践プロセス管理チャートにプロットした. 最低 7 回の連続的データポイントは,時間経過で有意な変化を検出するために必要なことから,データ は 2005 年の前後でプロットした.このデータを 2005 年データに対する Bland-Altman プロットと比較 した. 結果: 分析は,50 施設の 7,912 名の HD 患者を対象にした.Q4 値を用いた PO4<1.8mmol/L の患者比率と MAV は強く相関した(r2=0.87, p<0.0001). Q4 と MAV の差を施設毎の平均値に対してプロットしたとき に,Bland-Altman プロットは 1.79%(CI=0.68-2.9)の平均有意差を示した. 2 施設が基準限界値の外に位置した(+/- 2SD).統計的実践プロセス管理チャートによりこれは説明され た.基準範囲内に入っている殆どの施設において,PO4<1.8mmol/L の患者比率は,4 四半期に渡って安定 していたので,Q4 値は年間実施状況の良い評価基準と言える.基準範囲を外れた施設では,2005 年の データポイントは,時間経過において結果に有意な変化を示す統計的実践プロセス管理チャート上にお いて“不安定過程“の部分である.この様な施設においては Q4 データ単独では実践状況の良い評価基 準にはならない. 結論: 時間経過での施設実践状況の安定性は,予後結果に施設間相違を把握する上で重要な因子になる. 統計的実践プロセス管理チャートにより,施設実践状況の改善/増悪の早期の同定が可能になり,臨床 医が新しい実践状況を改善するように設計された新たな臨床プロセスの効果を追跡することを可能に する. 7 リンの負荷は血液透析よりも腹膜透析で高い Pieter Evenepoel1, Björn Meijers1, Bert Bammens1, Kathleen Claes1, Dirk Kuypers1, Dirk Vanderschueren2, Yves Vanrenterghem1 1 University Hospital Gasthuisberg, Nephrology, Dialysis and Transplantation, Leuven, Belgium; 2University Hospital Gasthuisberg, Endocrinology, Leuven, Belgium 序論と目的: リンの負荷は,腹膜透析(PD)と比べて血液透析(HD)でより高くなると一般的には考えられ ている.透析前のリン濃度は,血清リン濃度の透析時間中と透析と透析との間での有意な変化が無視さ れるため,HD においてはリンの影響の測定法としては誤解を与えやすい.本研究の主目的は,PD と HD 患者の二つの非選別群間のリンの恒常性を比較検討することである.副次的な目的は,維持透析患者の FGF-23 値の決定因子を明確にすることである. 方法: 79 名の HD 患者と 61 名の PD 患者を対象に,ミネラル代謝パラメータのカルシドール,biointact PTH と FGF-23 を測定した.PD 患者のリン濃度は,日中に測定した.HD では,時間平均リン濃度は,週 中間の透析前と透析後に測定しモデル化した. 週単位の腎,透析および総リンクリアランスは,総除去量と同様に,採尿と透析液を採取することによ って算出した. 結果: HD 患者における時間平均の血清リン濃度(3.5±1.0mg/dL)は,PD の日中濃度(5.0±1.4mg/dL) よ りも有意に低かった(p<0.0001).反対に,透析前のリン濃度(4.6±1.4mg/dL)は PD 群との間に差は認め なかった. bi PTH(119 対 82ng/L, p<0.05)と FGF-23(10334 対 5075 ng/L, p=0.008)は,PD 群で高かった. 高い残存腎機能にも拘らず,総リンクリアランスは PD 群で有意に低かった(p<0.0001). 反対にリンの総除去は,PD 群で有意に高かった(p<0.05). 多変量解析では時間平均のリン濃度,血清カルシウム濃度,残存糸球体濾過率,年齢,活性型ビタミン D 剤の使用と尿素窒素の総除去が,FGF-23 とは独立的関係であることを認めた.これらの変数により, FGF-23 の変化の 57%は説明できる(p<0.0001). 結論: これまで議論されてきた考察とは対照的に,我々のデータは PD 治療患者のリン負荷が,HD 治療 の患者と比較して高いことを示した.食事による多量のリン摂取と低いリンクリアランスは,このよう なリン負荷の増加に関与する.血清リン濃度の目標値は,PD 患者では下方に共に修正する必要がある. 8 血液透析患者群のカルシウム/リン代謝の目標値への達成に対する低カルシウム透析液 使用の影響について Best Abstracts Presented By Young Authors Adrian Dorin Zugravu1, Simona Hildegard Stancu1, Roxana Martinescu2, Christian Klein2, Gabriel Mircescu1 1 Dr. Carol Davila Clinical Hospital of Nephrology; Carol Davila University of Medicine and Pharmacy, Bucharest, Romania; 2 Carol Davila Fresenius NephroCare Dialysis Center, Bucharest, Romania 序論と目的: 透析患者では,血管石灰化の存在とカルシウム/リン代謝の異常に関係する心血管系疾患 の罹患率と死亡率が増加している.血液透析患者群のミネラル代謝パラメータに対する低カルシウム透 析液(AF13-1.25mEq/L カルシウム-Fresenius Medical Care 社製, Germany)を用いる影響の評価を研究 目標とした. 方法: 補正した血清カルシウム,血清リン,カルシウム・リン積と PTH を 172 名の安定期の慢性血液透 析患者を対象に,低カルシウム透析液を使用する前と開始後を 9 ヵ月間で検討した. 低カルシウム透析液は,カルシトリオールの様なビタミン D 製剤の投与が不可能で,また,その後に起 こる高カルシウム血症のためにカルシウム含有のリン結合剤の用量を更に増量することが出来なかっ た,血清カルシウム濃度が既に高い患者群に使用した. 結果: 試験対象は,長期透析を行う若年患者からなり,副甲状腺機能低下症が頻繁に散見され,ビタミ ン D 製剤の投与が少なかった患者群である.論文報告されたデータ比較では,正常なカルシウム値の患 者は高い比率であり,高カルシウム血症患者比率は低かった.正常なリン値の患者比率はわずかに高か った.この様な対象は,低カルシウム血症への発展と副甲状腺機能亢進症や更なる高カルシウム血症を 誘発することから,細心の注意を払うべきである. 結論: 低カルシウム透析液の適用は,ガイドラインで推奨されるカルシウム/リン代謝への目標値を達 成しようとした場合に有用である.それにもかかわらず,他のアプローチ(非カルシウム含有リン結合 剤,抗高カルシウム血症性のビタミン D 製剤,カルシウム受容体作動薬)は,目標値に達成するために 必要になる. 参考文献: Kovesdy CP et al. Clin J Am Soc Nephrol, doi: 10.2215/CJN. 03850907 9 血清フェチュイン-A は骨外石灰化ストレス下においてカルシウム,マグネシウム,リン酸との 沈降性複合体を形成する Isao Matsui, Takayuki Hamano, Satoshi Mikami, Kodo Tomida, Hirotaka Tanaka, Yoshitaka Isaka, Takahito Ito, Enyu Imai Nephrology, Osaka University Graduate School of Medicine, Suita, Osaka, Japan 序論と目的: 血管石灰化は,ヒトの慢性腎臓病で骨外石灰化の最も典型的なタイプである. 透析患者では,カルシウム・リン沈降を強力に抑制する血清フェチュイン-A 濃度が,心血管系疾患患 者の高い死亡率と負の相関のあることが最近解明された.しかし石灰化に対するフェチュイン-A の防 御的メカニズムは良く解明されていない.この機序を解明する目的から,次の動物実験を行った. 方法: アデニン誘発性腎不全モデルを作成し,PCR,イムノブロット解析および質量分析等,通常のラ ボラトリー検査法を用いたリアルタイムの分析を行なった. 結果: 肝臓では正常ラットに比べてアデニン群のラットでは,フェチュイン-A mRNA のレベルは下方に 調節された.イムノブロット解析では,肝臓におけるフェチュイン-A の蛋白濃度において血清濃度が 大きく変わらなかったにも拘らず,アデニン群のラットでは肝臓におけるフェチュイン-A は殆ど消失 したことが示された.フェチュイン-A の mRNA がアデニン群のラットの睾丸において上方に調節された ことを発見したので,この矛盾は,フェチュイン-A の肝臓外産生が部分的に関与するものと思われた. また,血清フェチュイン-A の物理的特性は,コントロール群とアデニン群のラットで全く異なること も発見した.コントロール群のラットでは形成しなかったが,アデニン群の血清は,室温かつ 16,000G で2時間遠心分離した後,沈降を形成した.クマーシー染色(Coomassie-Stain)で後処理をする SDS-PAGE では,質量分析によってフェチュイン-A 含有 59kDa 帯であることが明らかにされた.沈降物質は,カ ルシウム,マグネシウムとリンを含み,また,遠心分離に先駆けて血清に EDTA を添加することによっ て沈降形成が起こらなかった.補足として,アデニン群のラットにおける沈降形成物質と血管石灰化の いずれも,週単位でアレンドロン酸を皮下投与することによって消失した. 結論: フェチュイン--A ミネラル複合体は骨外石灰化に作用し,また,この複合体の検出は石灰化リス クの評価に有用であることが我々のデータによって示唆される. 10 3. 心血管系疾患 透析導入時に著明な冠動脈病変がない血液透析患者に対する冠動脈心疾患の確認検査時期は いつが最適か? Nobuhiko Joki1, Yuri Tanaka1, Hisao Hara2, Masao Moroi2, Hiroshi Fukuda2, Igor G. Nikolov4, Yoshitsugu Iwakura1, Haruka Masuda1, Hiroyasu Ishikawa1, Yoji Inishi1, Sonoo Mizuiri3, Hiroki Hase1 1 Division of Nephrology, Toho University Ohashi Medical Center, Tokyo, Japan; 2 Division of Cardiovascular Medicine, Toho University Ohashi Medical Center, Tokyo, Japan; 3Division of Nephrology, Toho University Omori Medical Center, Tokyo, Japan; 4 Inserm Unit 845, Necker Hospital, Paris, France 序論と目的: 透析治療導入時における冠動脈病変(CAD)のスクリーニングは,実際に K/DOQI ガイドライ ンの推奨事項として記載されている.透析導入時において顕著な CAD がない透析患者では,CAD の適正 な二次スクリーニングには議論の余地が残っている.本研究の目的は,(1)HD 導入時に CAD がない血液 透析(HD)患者の生存率の検討,(2)心疾患イベントの主な予測因子,(3)HD 導入後の最適な二次 CAD の検 査時期の 3 点である. 方法: CAD がない血液透析(HD)患者において新たな主要有害心イベント(MACE)からの生存率を調査する 目的から,HD 導入時の CAD に対する正常な画像スクリーニング検査を HD 患者に前向きに行った.CAD 発見のため,HD 開始後 1 ヵ月以内に新 HD 患者の 305 名中 177 名に冠動脈血管造影法や thallium-201 単 一光線照射断層画像(SPECT)の薬学的ストレスを用いて検討した.177 名の患者の内 100 例は,有意な CAD がなく,平均 24 ヵ月追跡調査した. 結果: 5 症例の MACE を経過中に観察したが,HD 導入後 1 年以内には MACE は 1 例も見られなかった.全 5 症例は HD 導入後 2 年目に発生した.MACE5 症例中の 2 症例が HD 導入した 1 年後の直後に発症した. Cox 回帰分析を用いて,上昇した C 反応性蛋白(CRP)は,MACE の唯一の独立的予測因子であることが判 明した(危険率: 1.39; 95%信頼幅: 1.03-1.78, p=0.008). MACE の予測に対する CRP の至適 cut-off ポ イントが 3.5mg/L と算出された.2 年の MACE 所見なしの比率は,CRP>3.5mg/L の患者よりも CRP が 3.5mg/L 以下の患者群で有意に高かった. 結論: 結論として,HD 導入後 1 年は,HD 導入時に CAD がない患者では二次スクリーニングの検査時期 に最適である.HD 導入時に血清 CRP 濃度が 3.5mg/L 未満の場合,CAD の二次スクリーニング時期はそれ よりも延長することを考える必要がある. 11 週三回 8 時間および 4 時間血液透析における冠動脈石灰化の進行速度の比較 Soner Duman1, Gulay Asci1, Ebru S. Gunay1, Mumtaz Yilmaz1, Mehmet Ozkahya1, Alfert Sagdic2, Siddik M. Adam2, Sihli Caliskan2, Hakan Kaplan2, Ercan Ok1 1 Nephrology, Ege University School of Medicine, Izmir, Turkey; 2 FMC Turkey Clinics 序論と目的: この前向きコントロール研究において,冠動脈石灰化(CAC)の進行率を前向きな方法で週 三回 8 時間および 4 時間 HD 治療を比較検討した. 方法: 最低 6 ヵ月間週三回 4 時間 HD(n=46)あるいは 8 時間 HD(n=43)を受けている 89 名の患者が試験対 象になった.CAC は,同一の放射線医による multi-slice のコンピューター断層画像や Agatston 法のス コアー化により 10 ヵ月間隔で 2 回の測定をした.人口統計的,臨床および時間平均で実験データを評 価した.統計分析には student’s t-test,Wilcoxon rank sum tests と Pearson and Spearman 相関分 析,およびロジスティック回帰分析を用いた. 結果: 4 時間と 8 時間群に年齢(各々48±13 と 51±10 歳),透析期間(各々63±56 と 64±49 ヵ月)と糖尿 病罹患率(各々20%と 16%)に関して有意差はなかった.8 時間の HD 群は男性が多数を占めた(8 時間群 69% と 4 時間群 56%). 平均 HD 時間と平均血流量は,4 時間群で各々241±24 分と 267±24mL/min,8 時間群 で各々405±46 分と 238±18mL/min だった. リン結合剤の必要量が 4 時間 HD よりも 8 時間 HD 群で低かったにもかかわらず(534±440 と 2563± 1788mg/day, p<0.001),血清リン濃度(4.0±0.9 と 4.9±1.1mg/dL, p<0.001)と Ca×P 積(36±11 と 43 ±11mg2/dL2, p<0.01)は,4 時間 HD 群と比較して 8 時間 HD 群で有意に低かった. CAC 初期値は,通常透析に比べて少なくとも 6 ヵ月間は 8 時間 HD 患者群で低かったが,統計的な有意差 には至らなかった(平均 CAC 値が 312 と 468).経過中に両群で CAC 値が有意に増加した.進行率には有 意差がなかった(8 時間と 4 時間群で各々⊿CAC が 116 と 127).初期値 CAC が 200 以上の高い患者では, 進行率は 4 時間群よりも 8 時間群で著明に低く,平均⊿CAC が各々141(67-291)と 372(142-695)だった (p<0.001). ⊿CAC は,透析前後値の尿素(r=0.42 と r=0.43)とクレアチニン(r=0.33 と r=0.39),リン (r=0.42),Ca×P 積(r=0.41),リン結合剤投与量(r=0.46)に正の相関をし,また,血清バイカーボネー ト(r=-0.34),Kt/V(r=-0.39)と HD 時間(r=-0.35)に逆相関した.多変量解析では血清リン濃度が CAC 進行に対する独立的な予測因子になった. 結論: 長時間の血液透析は,200 以上の高い CAC 値の患者に冠動脈石灰化の進行を遅らせ, 良好なリンのコントロールに関係する可能性がある. 12 腎代替療法の早期と後年における血液透析と腹膜透析で治療した患者の動脈コンプライアンスの 比較 Grzegorz Wystrychowski, Ewa Zukowska-Szczechowska Department of Internal Medicine, Diabetology and Nephrology, Medical University of Silesia, Zabrze, Poland 序論と目的: 初期段階の腎代替療法(RRT)の数年間において,血液透析(HD)を上回る腹膜透析(PD)の生 存メリットおよび後期段階での反対の傾向は,多くの研究によって報告されている. これら観察的研究の起源は,完全な解明には至っていない.そこで動脈硬直-心血管系疾患による死亡 に関する独立的予測危険因子-が初期2年間の RRT およびその後に HD と PD 患者で相違があるかについ て検討することを目的とした.仮に存在すれば,この様な相違は,両治療間の死亡率に関するこれまで の観察的研究で示された差異を説明し,またその解明に貢献できる可能性がある. 方法: 最低 3 ヵ月間,血液透析または腹膜透析を行っている末期腎疾患患者 100 名全員を対象にした. 除外基準は,急性的な臨床症状,重度心不全,不整脈,心臓弁異常と RRT 療法の変更とした.2 年以下 の透析を行なっている HD 患者 31 名および PD 患者 18 名(各々男性 15 名,女性 16 名; 年齢 61.3±12.4 歳と男性 11 名,女性 7 名,年齢 50.6±15.3 歳)の対象群と,同様に 2 年より長期の透析を行っている HD 患者 32 名および PD 患者 19 名(各々男性 15 名,女性 17 名,年齢 55.7±12.1 歳と男性 13 名,女性 6 名,年齢 58.4±14.1 歳)の母集団を検討した.大血管(C1)と小血管(C2)におけるコンプライアンス指標 は,HD 患者において透析前,また PD 患者においては透析液貯留状態で,パルス波の改変 Windkessel モ デル分析(HDI/Pulse Wave CR-2000 Research Cardiovascular Profiling System)を用いて非侵襲的に て評価した.血圧と脈拍を記録し,主要な検査項目を評価した.C1 と C2 は,単変量テストを用いて RRT (腎代替療法)を≦2 年および>2 年行なっている HD と PD 患者を比較し,動脈コンプライアンスの独 立的相関に対して補正した共分散分析も同様に行い,以前に報告された(WCN2007)ステージ 2 から 5 の慢性腎臓病(CKD)患者群 226 名を精査した.この中には,年齢,平均血圧,体表面積,同様に心拍 数とアンジオテンシン阻害剤の投与(C1)や血清 CRP と 16 年を超える糖尿病期間(C2)を含めた. 結果: RRT の最初 2 年と後年における両療法では,C1 と C2 の未補正値および補正値において有意差を 認めなかった(下表). 結論: 動脈コンプライアンスは,血液透析と腹膜透析で治療した患者群において腎代替療法の早期やそ の後においても差がなかった.透析治療期間を条件としての両群間の生存率の変化は,動脈硬直によっ ては究明されない様に思われる. 13 血液透析に由来する心筋機能障害は透析中の心室期外収縮の発症増加に関係する James Burton1, Shvan Korsheed1, Ben Grundy2, Christopher Mclntyre1,3 1 Department of Renal Medicine, Derby City General Hospital, Derby, United Kingdom; 2 Department of Clinical Measurement, Derby City General Hospital, Derby, United Kingdom; 3 School of Graduate Entry Medicine and Health, University of Nottingham, Nottingham, United Kingdom 序論と目的: 通常の血液透析(HD)は,患者に極めて高い比率で透析中の虚血性心疾患を引き起こす.部 分的な心筋虚血は,結果的に左心室の局所壁運動異常(RWMAs)を進行させる.突然死は,HD 患者の死亡 で最もありうる原因になっている.本研究は,左心室 RWMAs と心不整脈の亢進との関係を探索すること を目的に行った. 方法: 40 名の HD 患者は,透析前に 12 リードホルター心電記録を 24 時間行った.分離した期外収縮の 頻度は,それぞれの期間中にホルター心電図で総拍動の比率として分類した.心室性不整脈は,Lown 分 類に応じて階層化した.クラス 3 以上を複合性心室不整脈(CVAs)とした.また対象は,RWMAs の疾病併 発の亢進を評価する目的で,開始時と透析中に心エコー測定を行った.血液は,透析前後に生化学検査 のために採取した. 結果: 早期心室期外収縮(VEs)は患者の 63%に検出され,25%が頻回(全体の>1%)として分類された.多く の期外収縮は,以降のモニター期間よりも HD 中に発生し(p<0.01),また,53%が CVAs として分類され た.RWMAs に進展した患者は,透析終了後よりも HD 中に VEs が有意に発生した(p<0.0001). 虚血性心 疾患(IHD)と左室肥大(LVH)の両方を併発した患者は,この合併症のない患者に比べて HD 中に高頻度の VEs を発生させた(各々p<0.03 と p<0.02,下図参照). 結論: 心不整脈は,HD 患者によく発生する合併症である.VEs の頻度は,RWMAs に進展した患者で HD 中 に有意に高く,また,虚血好発に関係する因子に関連する可能性がある. 14 心性自律神経活性の評価による血液透析患者の突発性心臓死の予測 Masato Nishimura1, Toshiko Tokoro2, Masaya Nishida3, Tetsuya Hashimoto3, Hiroyuki Kobayashi3, Satoru Yamazaki3, Ryo Imai4, Koji Okino5, Hakuo Takahashi6, Toshihiko Ono3 1 Cardiovascular Division, Toujinkai Hospital, Kyoto, Japan; 2 Division of Nephrology, Toujinkai Hospital, Kyoto, Japan; 3 Division of Urology, Toujinkai Hospital, Kyoto, Japan; 4 Division of Orthopedics, Toujinkai Hospital, Kyoto, Japan; 5 Division of Surgery, Toujinkai Hospital, Kyoto, Japan; 6 Department of Clinical Sciences and Laboratory Medicine, Kansai Medical University, Hirakata, Osaka, Japan 序論と目的: 突発性心臓死は,慢性血液透析の患者で主要な死因の一つになっている.閉塞性冠動脈疾 患は突然死に大きく関与するが,幾つかの不整脈のメカニズムも血液透析患者の突発性心臓死に関係す ると思われる.本研究では致死的な不整脈を誘発する可能性のある心臓の自律神経の不均衡が,透析患 者で突発性心臓死の発症に関係するかについて検討した. 方法: 前向きに 175 名の慢性維持血液透析を行う無症状の患者を検討対象にして,透析間に 24 時間ホ ルター心電計を装着して検討した(男性/女性,105/70; 平均年齢 66±12 歳; 平均透析歴 90.5 ヵ月). 心筋梗塞の既往と冠動脈再建術の患者は,対象から除外した.心拍数変化の時間/頻発領域分析を行っ た.心臓の副交感神経活性のパラメーターとして 50 msec(pNN50)以上の隣接する NN 間隔と高周波 component (HF, 0.15-0.40Hz)の相違率を計算し,また,低周波 component 比率(0.04-0.15 Hz)/HF (LF/HF) を交感神経活性のパラメーターとして計算した. 結果: 4.5±1.9 年の経過観察中,突発性心臓死は 23 名の患者で確認された.突発性心臓死は,stepwise Cox ハザード分析で年齢または LF/HF 率に正相関し,また,pNN50 には逆相関の傾向になった(表). Kaplan-Meier 分析によると,突発性心臓死を起こさなかった場合の 5 年生存率は,LF/HF 率が 1.9 以上 と 1.9 未満の患者で各々29.4%と 98.1%であった. 結論: 損傷した副交感神経活性を伴う心臓交感神経の過度の活性は,維持透析患者に突発性心臓死を誘 発すると思われる.心拍数変化を用いて心臓の自律神経の不均衡を検討することは,血液透析患者の突 発性心臓死の高いリスク群の発見に有用と思われる. 15 収縮期血圧の動態は事象発生した血液透析患者の死亡予測になる―Markov モデルの応用 Peter Kotanko, Len Usvyat, Stephan Thijssen, Nathan W. Levin Renal Research Institute, New York, NY, USA 序論と目的: 120mmHg 未満の透析前収縮期血圧(SBP)は,慢性血液透析(HD)患者の生存予後不良に関与し ている.本研究は,低 SBP に加えて SBP の変化自体が死亡予測因子になるかの仮説を検証する目的で行 った. 方法: 2002 年 10 月 1 日から 2006 年 12 月 31 日までの Renal Research Institute と New York Dialysis Services(RRI および NYDS)の施設で初回透析日(FDD:First date of dialysis)を含む維持血液透析患者 の全ての発症データを検討した.透析前に測定した座位の SBP(pre-sSBP)を施設治療で毎回収集し,研 究期間中に毎月の平均値を算出した.初回透析日から最低 240 日生存した患者だけを分析対象に含めた. 二つの吸収状態(absorbing states)(死亡 ;下記に概説する諸理由の検閲を実施)の Markov モデルは, 初回透析日(初期状態マトリックス)から 6-8 ヵ月の平均 pre-sSBP に基づいて展開させた.対象は, pre-sSBP が<120,120-160 と>160mmHg の三群に分けた.生存状態は各患者で記録し,また,Markov 移 行マトリックスは,初回透析日から 9-11 ヵ月中の結果に基づいてコンピュータによる算出を行った. 患者は他施設への転院,腎移植,他の理由による透析施設からの退院や追跡期間の終了の際に検査,確 認した.Markov モデルとの比較のため,Kaplan-Meier(KM)生存曲線も同じ母集団につき作成した. 結果: 4,494 名の事象発生した HD 患者を対象にした(女性 55%,平均年齢±SD 63.8±15.5 歳,糖尿病 49%).初期状態に基づくグループ分布は,6.4%(<120mmHg),62.7%(120-160mmHg)と 30.9%(>160mmHg)と なった.移行マトリックスは表に記載した. 結論: HD 患者の生存は,pre-sSBP に基づいた Markov モデルによって 2.5 年までの期間は予測出来た. 低 pre-sSBP 及び/または低下した pre-sSBP は,心血管系疾患,慢性炎症,感染症や栄養不良の様な共 通する末期経路や異なる病態過程を表わすとの仮説を立てた.2.5 年後にパターンが変わったことで, 時間依存型の移行マトリックスの適用が必要かもしれない.加えて人種,性別,年齢,糖尿病の罹患に より階層化した Markov モデルは洞察力のある分析を可能とするかもしれない.この概念のさらなる評 価は,死亡に対する有用な予測指標にもなり得る.30 ヵ月までは Markov モデルは,正確な生存率を予 測した. 16 4. 透析 オンライン HDF(血液透析濾過)法は末期腎不全(ESRD)患者の入院リスクを低下させる Ana Natario, Jose Vinhas, Alvaro Vaz, Carlos Berreto, Jose Assuncao Kidney Center, Fresenius Medical Care, Setubal, Portugal 序論と目的: ハイ・フラックス血液透析(HD)と他の拡散を基盤にした従来の透析法は,尿毒症物質の除 去機能には限界があり,また,罹患率と死亡率に対して相対的に高い発症と関係する.オンライン血液 透析濾過(online HDF)は,高いコンベクション(対流)による液置換,ハイ・フラックス膜ダイアライ ザーと超純粋透析液の使用を組合せることにより,小分子量物質を更に効率的に除去し,また,中分子 量物質(MM)と他の主に蛋白と結合した物質,などの尿毒素のクリアランス増加が提示される.これまで の諸観察研究の結果は,オンライン HDF が罹患率と死亡率の低下と関係することを示唆している.本研 究では,入院率に対するオンライン HDF の影響を検討した. 方法: 一施設で 28 ヵ月以上の期間に透析中に発症した全例を検討した.この歴史的コホート研究では, 136 名の透析を行っている末期腎不全患者を対象にした.75 名の患者がハイ・フラックス血液透析を行 ない,61 名がオンライン HDF を行った.記述的な統計により研究対象患者の特徴を明確にした.生存率 分析に際しては,透析方法の如何により,Kaplan-Meier 法を用いて初回入院までの時間差を検討した. Cox 比例 hazard 回帰モデルは,初期特性と入院との関係に対する補正後の危険率と 95%信頼幅を算出す る為に使用した.全モデルは,8 項目の共変数で補正された. 結果: 全対象群の平均年齢は,66.5±14.3 歳(21-90)で 52.2%を男性が占め,糖尿病は 26.5%であった. HDF 群の平均置換量は,13.3±2.3(8.2-18.9)L だった.心筋梗塞,脳卒中,下肢切断の割合は,両群で 同等だった. 26 ヵ月の累積の非入院率は,HD 群の 21.9%に比べて HDF 群は 60.6%であった(Log rank 6.112; p=0.013).年齢,性別,透析量,CRP とアルブミン濃度の補正後の Cox 比例 hazard モデルは,HD 群に 比べて HDF 群が 50.0%の低い入院率を示した(HR 0.500; 95% CI 0.277-0.901).糖尿病患者は,入院の リスクが増加した(HR 1.994; 95% CI 1.109-3.584). 低ヘモグロビン値は,入院リスクの増加に関係 した(HR 0.754; 95% CI 0.162-0.930). 結論: 結論として HDF により,患者特性とは独立して入院リスクが減少することを本成績が示唆してい る.しかし HDF での長期治療が臨床的な予後の改善結果になるかは現状では不明瞭である.HDF の潜在 的なメリットは,臨床実践の推奨ガイドラインを作成する前に,無作為臨床試験で確認しなければなら ない. 17 末期腎不全における心拍数変化に対するオンライン血液透析濾過法の効果:2 年間の前向き研究 Soo-young Yoon1, Sang Cheol Lee1, Tae Woon Park1, Sung Ja Young2 1 Internal Medicine, College of Medicine, Kwandong University, Goyang, Republic of Korea; 2 Dialysis Room, Myongji Hospital, Goyang, Republic of Korea 序論と目的: 自律神経系は,血行動態安定性の維持に中心的な役割を担っている.心臓の自律神経障害 は,突発的な心臓死のような重篤な合併症を招く可能性がある.心拍数変化(HRV)は,心血管系疾患が なくても慢性血液透析を行なう患者で著しく低下している.適正な血液透析は,慢性尿毒症で心臓の自 立神経機能の改善予測になる.本研究の目的は,慢性血液透析患者の自律神経系に対するオンライン HDF の効果を検討することである. 方法: 11 名の慢性血液透析患者を対象に前向きな研究を行った.対象の 55%が男性で,平均年齢は 56.5 ±16.0 歳(31-80)で糖尿病が 18%,透析期間が 3-120 ヵ月でハイ・フラックスダイアライザーを用いて週 三回の血液透析を行っていた患者を対象とした.後希釈オンライン HDF の前の,透析と透析の間の 24 時間 HVR の時間と周波数領域を分析し,その後,24 ヵ月間,6 ヵ月ごとに検討した.また,血液サンプ ルは定期検査で採血し,ヘモグロビン,BUN,クレアチニン,カルシウム,リン,アルブミン,総コレ ステロール,トリグリセリド,尿酸,シスタチン C,高感度 C 反応性タンパク(hsCRP),インタクト副 甲状腺ホルモン(i-PTH)とβ2-ミクログロブリン(β2-MG)を測定した. 結果: オンライン HDF の 24 ヵ月後,ヘモグロビン(8.8±1.5 から 10.9±1.2 g/dL, p<0.05),アルブミ ン(3.5±0.3 から 3.7±0.3 g/dL, P<0.05)と HDL コレステロール(28.3±3.8 から 33.2±7.6 mg/dL, p<0.05)は増加し,トリグリセリド(185.7±105.6 から 119.0±17.8mg/dL, p<0.05)とβ2-MG(42.1±10.5 から 25.3±3.5mg/L, p<0.05)は減少した.周波数領域 HRV パラメーターは,初期値に比べて有意に増加 した(HF, 49.8±19.3 対 3.5±3.9ms2; LF 95.5±34.2 対 20.7±7.7 ms2; VLF 558.5±50.3 対 75.4±79.9 ms2; LF/HF, 2.76±1.52 対 1.55±0.58 ms2). 結論: 本研究でオンライン HDF は,慢性血液透析患者の自律神経障害を改善出来ることが示された. 18 血液透析または腹膜透析で治療を受ける患者の体液状態:横断的比較試験 Bertram Schmitt, Kay Herbrig, Frank Pistrosch, Jens Passauer Nephrology, Department of Medicine, University Hospital Carl-Gustav-Carus, Dresden, Germany 序論と目的: 体液過剰は,高血圧および末期腎不全患者における心血管系疾患による死亡増加に関与す る重要な因子と考えられている.従って,ドライ・ウエイトの推定は,血液透析(HD)と腹膜透析(PD)共 に重要である.少なくとも,開始から 2 年目までの両治療法は,同等であると考えられる.しかし,残 存尿量の低下に伴い,厳格な体液コントロールは PD でより困難になる.本研究の目的は,臨床背景の みを基にドライ・ウエイトが処方されている典型的な HD および PD 患者の代表的な症例で体液状態を評 価することである. 方法: 8 施設の PD 患者 77 名を対象とし,体液過剰(OH)は,検証された体組成モデル(BCM;Body Composition Monitor, Fresenius Medical Care 社製,日本国内未導入)を包含する,新たに開発され たバイオインピーダンス分光法(BIS)装置を用いて測定した.加えて,血圧,残存尿量,降圧剤の処方 回数および透析時間を記録した.結果は,5 施設の HD 患者 370 名と比較した.HD 患者の OH は,週の中 間日の透析前に測定し,また,時間平均の体液過剰(TAFO)は,透析を行なっていない期間において体液 過剰が直線的に増加すると仮定して計算した( [透析前 OH+透析後 OH] /2). 結果: TAFO は,わずかであるが HD 患者群よりも PD 患者群の方が有意に高く(1.4±2.2 対 0.9±0.7L, p<0.05),PD 患者群において変化率が高いことを示している.収縮期血圧は両群間で同等だが,拡張期 血圧は HD 群よりも PD 群で有意に高かった(83±13 対 75±13 mmHg, p<0.001).PD 群では,有意に降圧 剤の処方量が多かった. 結論: 本研究によると,体液コントロールおよび降圧剤の使用に関しては,PD は HD と比較すると優れ ていないことが明らかとなった.BIS 装置は,PD から HD への,適正な移行時期を決定するサポートに なると考えられる. 19 バイオインピーダンス分光器で評価した至適な体液状態は血 液透析患者の透析中の症状出現 (IMEs)と入院率を低下させる Machek Petr1, Jirka Tomas1, Moissl Ulrich2, Wabel Peter2, Chamney Paul2 1 Fresenius Medical Care Czech, Prag, Czech Republic; 2 Fresenius Medical Care D GmbH, Bad Homburg, Germany 序論と目的: 血液透析を行う患者の体液状態の評価は,透析治療を良好に実施するための基本的な必要 前提条件の一つである.血液透析患者に長く持続する体液過剰と高血圧は,左心室肥大(LVH),拡張機 能障害と徐々に進行する心不全の進展に関与し,それらが入院期間の増加につながっていく.もう一方 のリスク,脱水(諸条件を一致させた健常者との比較で)は,透析中に低血圧症状のリスクが増加する. 本研究の目的は,第一に極端な体液状態の同定と改善が可能か,また第二に,この減少は,入院と合併 症の発症数に影響するかについての評価である. 方法: 体液過剰の度合いを検討するため,Body Composition Monitor(BCM, Fresenius Medical Care 社 製)を用いて 60 名の HD 患者を対象に平均 9 ヵ月以上で検討した.患者は透析前に測定を行い,体液過 剰はリットル単位で BCM に表示された(0 リットルは正常な体液量を示す).測定は月に最低一回は行い, ドライウエイトを調整しなければならない場合には頻回の測定で始めた.3.5L 以上を示す“重度の体液 過剰“患者のドライウエイトは次第に減少させた.反対に,体液負荷が透析前に-0.5 L よりも少ない “著明な脱水状態“の患者は,ドライウエイトを次第に増加した. 結果: 全例のうちの 30%は,試験の開始段階で重度の体液過剰か脱水状態のいずれかであった.試験終 了時では,この内 50%の患者が正常な体液状態に戻った.全例の過剰体液と分布は,1 L 以上減少した (2 SD).測定期間中で透析以外の時間帯では,肺水腫による緊急透析はなく,心臓発作を観察せず,ま た,低血圧や痙攣のような透析中の合併症は減少した. 結論: 1 年間のモニタリング後に全体の死亡に対する影響を評価するのは早計である.正常な体液状態 の達成,重度の体液過剰や脱水状態の回避は,IME 数と緊急透析の少ない,治療の質の改善になる確証 を本研究で得た.BCM による目標値の設定は,HD 患者の体液状態の評価に計り知れないほど貴重な手助 けになる. ※IMES=Irtradialytic Morbid Events(透析中の症状出現) 20 BCM(Body Composition Monitor)を用いた体液過剰の評価と是正 Pedro Ponce1, Petr Taborsky2, Jiri Vlasak3, Tomas Jirka4, Peter Wabel5, Ralf Wojke6 1 Centro Medical National S.A. FME, Miratejo, Portugal; 2 Dialyzacni Stredisko FME-DS, Praha, Czech Republic; 3 Dialyzacni Stredisko FME-DS, Sokolov, Czech Republic; 4 FME-DS, Praha, Czech Republic; 5 Research & Development FME, Bad Homburg, Germany; 6 Clinical Research FME, Bad Homburg, Germany 序論と目的: 慢性腎不全患者に対する体液過剰の評価と是正は,主要な臨床的課題である[Charra Hemodial Int 2007].体組成モデルによる非侵襲的なバイオインピーダンス分光器は,体液量(総体内 水分[Moissl Physiol Meas 2006]),過剰体液[Chamney Am J Clin Nutr 2007])の評価のための検証さ れた方法である.本研究では,新しいベッドサイド BCM-Body Composition Monitor(Fresenius Medical Care 社製)が,通常の臨床条件において,体液過剰の決定と是正に関して医師の助けとなり得るかどう かを検討する. 方法: 試験には二段階を設けた.体液過剰は,139 名の HD 患者に一度評価し(横断的研究),過剰体液の 一群(n=34)は反復測定し,また,その後に BCM による設定目標値に従って体液過剰を是正させた(縦断 的研究). 結果: 対象は,透析前の体液過剰を基本にⅠ(軽度の体液過剰)からⅣ(重度の体液過剰)群の四分位にグ ループ化した.表-1 参照. 平均の過剰な体液量は 1.81±1.83L で,最大値>9L,男性に圧倒的に認められた.体液過剰の大きな患 者群(Ⅲ-Ⅳ群)は,最も高い高血圧発生率と最も多い除水量(UF)であった.BMI(body mass index)高値 の患者は,体液過剰とならない傾向が見られた.全患者群(Ⅰ-Ⅳ)は,縦断的研究で 6 ヵ月間の観察を 行い(平均 5.9±1.7),平均過剰体液は本研究開始時から終了時までの期間において 0.6L 是正された. 表-2 参照. 対象患者は,透析前の過剰体液(高値群: 体液過剰>1.1L)と透析前の収縮期血圧(BP)(高値群: BP>140mmHg)で分類した.高い BP と体液過剰の一群は,試験開始時に透析前の BP が 165±18/77±13mmHg で透析後に 145±19/69±14mmHg,また除水量は研究開始時に 2.5±1.0L を示した.試験終了時では,除 水量がより高く(2.8±0.9L, p=0.044),体液過剰は減少した.低い BP の傾向が透析前 BP で観察された: 157±26/73±11mmHg(p=0.140/p=0.286),透析後 BP が 132±20/64±13mmHg(p=0.035 /p=0.132). 結論: BCM は,本研究で良好に成し得ることが出来たように,体液過剰を簡易に検出し,また,過剰体 液の減少目標を提供する. 21 週三回の 8 時間と 4 時間の血液透析の比較 Best Abstracts Presented by Young Authors Ercan Ok1,2, Soner Duman1, Gulay Asci1, Murat Tumuklu1, Ozen O. Sertoz1, Meral Kayikcioglu1, Huseyin Toz1, Siddik M. Adam2, Mehmet Ozkahya1 1 Ege University, Department of Nephrology & Cardiology, Izmir, Turkey; 2 FMC Turkey Clinics 序論と目的: 血液透析(HD)患者の死亡率は受入れ難い程高いままである.長時間 HD 法は,後ろ向き, 非比較研究では有望な治療と思われる.今回の前向き,比較研究では週三回の 8 時間と 4 時間透析の効 果を比較検討した. 方法: 週三回で夜間 8 時間の施設透析を行なう 224 名の患者と,年齢,性別,糖尿病状態,HD 期間を一 致させた 224 名の 4 時間透析コントロール群を 1 年間で評価した(平均年齢 45±13 歳,透析期間 59±44 ヵ月,女性 32%,糖尿病 20%).全体の死亡率(基本的な予後),および臨床と検査パラメーターの変化を 検討した.心臓の構造と機能を心電計で測定し,QOL と認知機能,うつ病の罹患は,開始時と 12 ヵ月後 に評価した. 結果: 平均追跡調査期間は 12.4±5.0 ヵ月であった.HD の平均時間は 8h 群と 4h 群で,各々,462±18 分と 236±7 分,血流量は各々241±47 と 291±35mL/min で行なった.全般的な死亡率は,8h と 4h 群で 各々1.29/100 名患者/年と 6.03/100 名患者/年となった(p<0.01).補正後の死亡の相対リスクは,8h 群 で 0.22 となった(95% CI 0.06-0.76; p<0.05).8h 透析群で尿素除去率(URR)が 0.75±0.07 から 0.82± 0.06,eKt/V で 1.48±0.34 から 2.62±0.89 へと増加した(p<0.001).透析後の体重は,8h 群で 64.9± 14.6 から 66.7±14.9kg に増加した(p<0.001).平均血圧とヘモグロビン濃度は,追跡期間中,両群で同 じだった.降圧剤とエリスロポエチンの使用は, 8h 群で減少した(各々24 から 8%と 57 から 25%: p<0.01). 透析中の低血圧発症は,8h 群で有意に少なかった(19 と 85/1000 HD 回,p<0.001).アルブミン濃度は, 8h 群で増加した(3.95±0.29 から 4.10±0.30g/dL, p<0.001). 8h 群でリン結合剤の使用量が 81 から 22% と減少したにも拘らず,リン濃度が 4.59±1.31 から 3.82±1.19mg/dL に低下した(p<0.001).4h 群で はリン濃度は 4.82±1.27 から 5.03±1.12mg/dL に上昇した(p<0.001). 8h 群で左室心筋重量比(LVMI)が 141±45 から 120±34g/m2(p<0.01),左心房直径は 4.03±0.58 から 3.73 ±0.53cm(p<0.001)に回復し,左室駆出率は 62±10 から 66±11%に増加した(p<0.001). 直後再生と遅延再生のスコアによる認知機能は,8h の HD 群で改善した(p<0.05).うつ病と不安感のス コアは,両群で変化しなかった.QOL スコアー(精神的な健康,活力と身体の疼痛知覚)は,4h の HD 群 で悪化した(p<0.05).他に,特に示されていないものについては,変化は観察されなかった. 結論: これらのデータは,従来の 4 時間 HD に比べて週三回 8 時間 HD が罹患率と死亡率に関して明らか なメリットになることを示している. 22 短時間連日血液透析の 10 年間の経験 Jules Traeger1, Roula Galland2, Nguen Koa Man2 1 Association Utilisation du Rein Artificiel Lyon (AURAL), Lyon, France ; 2 Centre Associatif de Dialyse (Calydial), Lyon, France 序論と目的: 1997 年以降,短時間連日血液透析(sDHD)を過去 10 年間行なった 61 名の患者での臨床経験 を報告する.殆どの患者は通常の血液透析(SHD)から sDHD に変更しており,二つの透析期間での臨床的 および生物学的な結果を比較検討した. 方法: 男性 49 名と女性 12 名の合計 61 名の患者で平均年齢が 44.5±14.3 歳,通常の血液透析治療期間 (SHD)が 53.4±77.7 ヵ月(0-333),sDHD の平均治療期間が 34.9±23.2 ヵ月(6-131)を示し,16 名は在宅 で行い,35 名がセルフケアー・ユニットで治療し,10 名が透析センターで行なった.観察期間は,137 患者-年になった.59 名の患者は自己シャントを用い,2 例だけが中心静脈カテーテルを使用した.透 析頻度は 5.9±0.4 回/週で(5-6 回),透析時間は 138.9±19.5 分(120-180)だった.この対象の予後は, 28 名が sDHD を継続し,15 名が腎移植を行い,11 名が通常の透析に戻り,7 名が死亡した.死因は,3 例が癌,1 名が事故,1 例で脳卒中,1 例が肝硬変と 1 例で移植肺の拒絶だった.平均の年間粗死亡率は 5%であった.sDHD の適用は,心血管系の不安定(9), コントロール不能な高血圧(8), 低栄養(7), 透析 間の重大な体重増加(13), 患者の経済状態の改善(5), 患者の社会・職業上の理由(14), 妊娠 5 例の患 者であった. 結果: 臨床比較の結果は下表の通りで,透析困難症もみられず結果は良好だった. sDHD の尿素動態:尿素除去率:49.3±3%(38.5-56.7), TAC(時間平均濃度:Time-averaged concentration) 尿素:12.45±2.3mmol/L(17.8-9.4), TAD(時間平均偏差:Time-averaged deviation)尿素:2.39± 0.79mmol/L(2.1-2.5), spKt/V/session=0.8±0.12(0.56-1.1), eKt/V=0.54±0.08(0.37-0.75), std(Kt/V)/週=2.5±0.3(1.91-3.24), 除水量:1.34±0.3L(0.4-2.8). 結論: sDHD の 10 年経験は好成績となり,移植待機リスト患者で以前,移植が延期された患者において も心血管系の改善により腎移植が可能となった.臨床的な改善は,Kt/V=0.37/回の低い透析量でさえも 観察され,透析頻度が至適透析の最重要な因子であることを示している. 23 血液透析患者の生存に対する透析前体温の関係 Len Usvyat1, John Rogus2, Eduardo Lacson, Jr2, Stephan Thijssen1, Nathan W. Levin1, Peter Kotanko1 1 Renal Research Institute, New York, NY, USA; 2 Fresenius Medical Care, Waltham, MA, USA 序論と目的: 透析患者の生存期間に対する体温の関係は,体系的には研究がなされていない.我々は体 温の上昇(炎症や感染症による)は,死亡の増加に関係するのではないか,との仮説を立てた. 方法: 2002 年 1 月 1 日から 2002 年 6 月 30 日において透析施設で週三回の透析を行なう白人(40%)と黒 人(60%)を含む記録の後ろ向きの検討を行なった.平均透析前の体温(各透析前に口腔温度計で測定), 尿素分布体積(V:尿素動態モデルから算出)と患者年齢を記録した. 対象は,人種,V の三分位分布量,体温状態の三分位と年齢(<60 歳と>60 歳)で階層化した.患者の生存 は以後の 5 年間で追跡し(2002 年 7 月 1 日から 2006 年 12 月 31 日), 1000 患者-年の死亡数で表わした. 結果: 1,782 名の黒人患者(51%男性)の平均(±SD)V は 39.8±7.9L で,平均体温は 36.58±0.26℃だった. 白人(n=1,177, 58%男性)の V は 37.6±7.6L で,平均体温は 36.33±0.35℃だった.全対象群を統合して, 加齢,V の低い三分位及び体温の低い三分位は,死亡率の増加につながった (表). 生存に対する体温の影響は,年齢と V に独立しているように思われた. 結論 : 我々の当初の仮説は否定された.高体温の好ましい効果,低い体温の不都合な影響の原因は不 明である.可能な仮説としては,以前の諸研究で観察された低 T3 症候群(Zoccali et al. J Am Soc Nephrol. 2005;16:2789)と,脱共役された酸化的リン酸化の存在下での酸化ストレスの減少などが考えられる. 黒人の高い体温は,増加した筋肉量と両立する. 24 5. 慢性腎臓病(CKD)の疫学と予後 血液透析患者での降圧剤(AHAs)と臨床結果: 透析の予後と治療方法についての研究 (DOPPS :The Dialysis Outcomes and Practice Patterns Study) J.L. Bragg-Gresham1, R.L. Pisoni1, B.W. Gillespie2, D.A. Goodkin1, S.P.B. Ramirez1, H. Morgenstern2, V. Andreucci3, S. Jacobsen4, S. Fukuhara5, T. Akizawa6, B.M. Robinson1 1 Arbor Research, Ann Arbor, MI, USA; 2 U of M, Ann Arbor, MI, USA; 3 Universita Federico II di Napoli, Napoli, Italy; 4 Danderyd Hospital, Stockholm, Sweden; 5 Kyoto University, Kyoto, Japan; 6 Showa University School of Medicine, Shinagawa, Japan 序論と目的: アンジオテンシン受容体阻害薬(ARBs)とβブロッカー(BBs)の使用は,大多数の HD 患者の 最近の研究では低い死亡率に関係するが,これらの薬剤の使用が HD 患者で残存腎機能(RRF)の損失を早 めるという懸念がある. 方法: HD を開始した 30 日以内で DOPPSⅠとⅡの研究に参加した 8,176 名を検討した. このサンプルは,12 カ国の 400 を超える透析施設が含まれた.対象は,試験参加時に一種類または二種 類以上の AHAs 服用群に分類した:BB,レニン・アンジオテンシン[RAS]系阻害剤(ARB や ACE 阻害剤),カ ルシウム・チャンネル遮断薬(CCB),末梢ブロッカー/血管拡張剤(PB/V),中枢拮抗剤(CA),利尿剤.死 亡と RRF (24 時間尿量>200mL と定義) の損失時間は,各々の AHA クラスと共に,年齢,性別,人種,国 と相によって階層化された 14 項目にまとめた併発病の状態,によって補正された Cox モデルを用いて 検討した.また,死亡のモデルは SBP(収縮期血圧),RRF とアルブミンで補正した.治療は,患者レベ ル(Y/N)と施設レベル(case mix で補正した,施設で処方した各 AHA クラスでの HD 患者の発症率%)で特 徴づけられた. 結果: BB,RAS と利尿剤は,DOPPSⅠと DOPPSⅡの間に顕著に増加し,各々27%から 33%,28%から 37%と 32%から 43%に増えた.CCB の使用は,同じ期間に 52%から 47%と顕著に減少した.このサンプルの僅か 21%だけが何らの AHA を服用していなかった.大多数の患者で AHA の一種類以上の服用をしていた.最 も共通した組み合わせは,BB/CCB,BB/RAS と RAS/CCB であった.Cox モデルでは,RAS 阻害剤が患者と 施設に基づくモデルでの有意に低い死亡率と,患者に基づくモデルでの RRF の維持に関連していたが, 施設に基づくモデルでは p=0.10 という値にとどまった.死亡率と RRF の関連は,RAS 阻害剤(ACE 阻害 剤または ARB)のタイプによっては変化しなかった.利尿剤は RRF の保持に関係したが,しかしこれは RRF が利尿剤使用の目安であり,利尿剤が腎クリアランスを保持することなく尿量を維持する可能性が あることによるからかもしれない. 結論:HD 患者の中で RAS の使用は(ACEIs と ARBs),生存率改善に関係し,初期 SBP の値で説明される様 に RRF 保持に関与する可能性がある.この成績は,これらの薬剤の使用を概ね支持し,また,これらの 薬剤の使用が HD 患者での RRF 損失を早めるかもしれないとの懸念とは一致しない.他のどの AHA 種類 も,患者と施設を基本にしたモデルにおいては,生存メリットや RRF の損失には関係しなかった. 25 欧州 Fresenius Medical Care(FMC)血液透析ネットワークを基本とした血液透析患者の疫学的 研究:ARO リサーチ・イニシアチブ Alm DeFrancisco1, P. Aljama2, J. Kim3, D. Marcelli4 1 Hospital Marques de Valdecilla de Santander, Santander, Spain; 2 Servicio de Nefrologia, Cordoba, Spain; 3 Amgen Ltd, London, United Kingdom; 4 Fresenius Medical Care, Bad Homburg, Germany 序論と目的:ARO(Analysing data, Recognizing excellence, Optimizing outcomes:データ分析,優 秀さの認識,結果の至適化)慢性腎臓病(CKD)リサーチ・イニシアチブが,欧州の血液透析(HD)患者に対 して,療法選択の告知をより充実化させる目的で,治療方法と予後の充実を更に特色付けるために設立 された. 方法:オープン母集団のデザインでは,患者は FMC の 172 の参加施設から無作為に選別された(約 25 施 設/国,50 名の患者/施設).合計して 11,114 名の患者(n=7,105 安定期,n=4,009 導入期)は,2005 年 1 月から 2006 年 12 月(>15,000 患者-年)まで 2 年の追跡調査を行なった.導入患者は,追跡に先駆けて 6 ヵ月以内の HD を受けた.データは人口学的統計,病歴,検査成績(日ごと)と投薬(日ごと)に関して集 めた.結果は,死因別の死亡率と入院 (ICD-10 コードで対応)に関して利用できる. 結果:人口学的統計と臨床的な特徴は,参加した ARO 諸国で異なっている(表参照).安定期患者(ARO 群の 64%)は,本研究前に平均(±SD)4.9±4.7 年の HD を受けていた.大多数の患者は(69%),自己シャ ントを用いた.慢性腎臓病の原因に最も共通した疾患は,糸球体疾患(15%),高血圧(12%),糖尿病性腎 症(12%),嚢胞性尿管-間質炎(10%),腎臓病(5%),その他と不明(46%)だった.ARO 諸国を通して合併症 分布に幅広い差異があった. 結論:ヨーロッパに存在する FMC 透析施設から得た生データをもちいることにより,ARO の研究結果は 欧州の HD 患者の実践的パターンを把握するためにデザインされた他の大規模な疫学的研究(DOPPS, COSMOS)などと一致しており,またそれらを補足するものであることが判明した. 26 高い Body Mass Index(BMI)は,腹膜透析や血液透析を行なっている確立した腎不全(Established Renal Failure, ERF)患者の長期生存率の改善には関係しない Arthur Doyle1, Roslyn Simms2, Keith Simpson1 1 Renal Unit, Glasgow Royal Infirmary, Glasgow, United Kingdom; 2 Renal Unit, Freeman Hospital, Newcastle-upon-Tyne, United Kingdom 序論と目的:肥満は(BMI>30),一般健常者にとって心血管系疾患の伝統的な危険因子である.これは, 全てを原因とする死亡の増加に関与する.しかし,末期腎不全の維持血液透析患者においては BMI が高 くても,長期の生存率が報告されてきた.この明らかに相反する関係は,腎代替療法の開始が近まって いる過剰体重の慢性腎臓病(CKD)患者に対する最適な管理方法に関する不明点を提起する. 方法:データは,1987 年から 2006 年までに一透析施設で腎代替療法を開始した患者の包括的な電子記 録から得た.対象には,BMI 測定結果を 90 日以上記録した全ての HD 患者および PD 患者が含まれた.対 象は,WHO の BMI 分類でグループ化した(<18.5, 18.5-24.9, 25-29.9 および>30).BMI,BMI の変化,年 齢および生存に伴う合併症(改変 Charleston スコアによる)を短期(2 年)と長期(15 年)で評価した.分 析には Kaplan-Meier,log rank 試験と Cox 比例式危険回帰(CoxR)試験を用いた. 結果:透析を開始した患者 1287 名(HD942 名と PD345 名)のうち,948 例(HD718 名と PD230 名)のデータ が揃った.平均年齢は 60 歳(年齢幅 46-70),BMI は 24.6kg/㎡(幅 21.7-28.0)を示した.2 年以上生存し ている肥満患者では,有意な傾向になかったが,これは長期間でも明らかではなかった.RRT の最初の 月に安定した BMI は,BMI が 2%以上増加(77%)した場合と低下した場合(72%)を比較すると,生存が2年 改善(81%)したことと関係した(log rank 8.59, p=0.014).合併症と加齢は,低い生存率に関係した(CoxR で各々,1.153, p<0.001 と 1.032, p<0.001). 結論:本研究では,EFR に対する HD 患者および PD 患者の肥満と生存に有意な関係が見られなかった. しかし,RRT 開始後第 1 ヵ月目における年齢,合併症および BMI の変化は,低い生存率に関係した.肥 満に関係した生存のいかなるメリットも,RRT を 2 年以上経過した場合には,持続しているようには思 われなかった.我々の結果は,現在の透析患者における肥満管理の変化に対応しておらず,また,これ を従来からの危険因子として扱い続ける必要があることを示唆している. 27 肥満は透析開始後の腎機能低下に対する危険因子になる Best Abstracts Presented by Young Authors Christiane Drechsler1, Renée de Mutsert1, Diana C. Grootendorst1, Elisabeth W. Boeschoten2, Raymond T. Krediet3, Christoph Wanner4, Saskia le Cessie5, Friedo W. Dekker1 1 Dept of Clinical Epidemiology, LUMC, Leiden; 2 Hans Mak Institute, Naarden; 3 Dept of Nephrology, AMC, Amsterdam, Netherlands; 4 Div of Nephrology, Univ. of Wuerzburg, Germany; 5 Dept of Medical Statistics, LUMC, Leiden, Netherlands 序論と目的:残存腎機能(RRF)は透析患者の生存に対するメリットとなり,このことが何故残存腎機能 を保持する必要があるかの理由である.肥満は,一般健常者では腎機能の損失への危険因子である.患 者が一旦,透析を必要になった際,肥満が腎機能に影響し続けるかどうかは知られていない.また更に 透析患者における死亡リスクの因子である過小体重が,RRF に影響するかどうかも知られていない.本 研究の目的は,肥満と過小体重が透析開始後における RRF 低下に与える影響を検討することである. 方法:オランダにおける透析患者を対象とした前向き多施設・コホート研究(NECOSAD)では,合計 1271 名の RRF を有する患者(年齢 59±15 歳,BMI 24.8±4.1 kg/㎡,GFR 4.7±3.3mL/min,尿量 1,055±702mL/day, HD57%,男性 62%)が選ばれた.対象は,初期の BMI に基づいて低値(<20 kg/㎡ n=112),正常(≧20-25kg/ ㎡ n=620),体重過大(≧25-30 kg/㎡ n=417)および肥満(≧30 kg/㎡ n=122)の4分類とし,透析開始後 18 ヵ月を追跡調査した.6 ヵ月毎に,GFR を血漿サンプルと 24 時間採尿から計算し,尿素とクレアチニ ン クリアランスの平均値として推定した.直線混合モデルを用いた傾斜分析から,GFR の低下は全ての BMI 分類に対して決定され,年齢,性別,原疾患,透析方法,喫煙,CVD(心血管系疾患)および nPNA に対して補正された.Cox 回帰分析は,尿量が<200mL/day を無尿と定義し,その亢進に対する危険率(HR) を計算するために用いた. 結果:初期の GFR は,肥満患者において最も高く(5.8mL/min),その後に体重過大の患者(5.1mL/min), 正常体重(4.6mL/min)と過小体重の患者(3.5mL/min)と続いた.正常体重の患者は,平均 GFR の低下が 1.2mL/min/年になった(95% CI: 0.7-1.6).この対象群と比較して,補正した GFR の損失は体重過剰群 で 0.5(0.02-0.8)mL/min/年高く,肥満患者群で 1.2(0.5-1.8)mL/min/年高くなった.反対に過小体重の 患者群では,正常体重群よりも 0.6(-0.1-1.3)mL/min/年低かった.傾斜分析を初期 GFR の層で行ったと き,結果は同様だった. 過小体重の患者は,無尿のリスク増加となり(粗 HR: 1.49, 95% CI: 1.02-2.18),一方,肥満患者は正 常の体重患者と比較するとその傾向は見られなかった(粗 HR: 1.11, 0.75-1.64).混在因子に対する補 正後,HRs は過小体重群において 1.39(0.94-2.05),肥満群において 0.95(0.63-1.42)となり,また,初 期の尿量に対する追加補正後では各々1.12(0.76-1.66),および 1.21(0.81-1.82)になった. 結論:肥満は,透析導入後の腎機能低下に対する強い危険因子になる.過小体重は,主に初期尿量のた めに無尿リスクが 50%増加する.肥満および過小体重の透析患者が,BMI を正常化することを目的とす る医学的介入によって利益が得られるかについては,更なる検討を重ねる必要がある. 28 バイオインピーダンス分光器(BIS)で評価した体液過剰と低栄養は血液透析患者の死亡率に対する 強い予測因子になる Volker Wizemann1, Christiane Rode1, Paul Chamney2, Ulrich Moissl2, Peter Wabel2 1 Georg-Hass Dialyse Zentrum, Giessen, Germany; 2 Fresenius Medical Care D GmbH, Bad Homburg, Germany 序論と目的:低栄養と体液過剰は,血液透析(HD)患者に共通する問題である.従来の体組成測定法では [例としてバイオインピーダンス分析と二重 X 線吸光診断装置(DEXA)],筋肉量から体液負荷を分離する ことが出来ない.即ち,体液と栄養状態の客観的且つ定量的な評価が現状では不可能である.新しい高 周波バイオインピーダンス分光装置(BCM-Body Composition Monitor, FMC)は,新しい体組成モデルに 基づいた体液過剰と除脂肪組織指標(Lean Tissue Index,以下 LTI)を測定できる(AJCN 85, 2007).以 前の研究では,本装置が体液過剰と(EDTA 2007)低栄養の検討に使用できたことが示されていた.本研 究の目的は,蛋白低栄養や体液過剰が HD 患者の死亡に対する主要な予測因子となるかを検討すること である. 方法:LTI と体液過剰について 156 名の患者に BCM で測定した.LTI と体液過剰の評価に際して,基準 範囲を 18~85 歳の n=1000 の健常者の基準母数(RP)に基づいて設定した.蛋白の低栄養評価では,対象 th th を幾つかの LTI 群に区分した(低値群:LTI<RP の 10 パーセンタイル,正常群:LTI>RP の 10 のパーセ ンタイル).HD 治療の開始時に体液過剰が>2L のときに患者は過剰体液と見なした.生存率分析には, 年齢,性別と糖尿病に対して補正し,Gehan-Breslow 法を用いて算出した.相対的リスクは,odds 比に 基づいて計算した. 結果:測定前の平均 HD 期間は 3.5±5.7 年で平均年齢は 67±13 歳だった.2 年後に全患者の 18%が死亡 した.LTI 低値群は,LTI 正常群に比べて有意に高い死亡率を示した(p=0.009).また,体液過剰群も有 意に高い死亡率を示した(p=0.005). 2 年後に LTI 低値群の患者の 27%が死亡し,一方,正常群では僅か 12%の死亡率であった.LTI<10%と体 液過剰が>2L の群では,正常 LTI と正常な体液状態の患者群に比べて 2.4 倍死亡のリスクが増加した. 結論:低栄養と体液過剰は,HD 患者の死亡リスクに影響を及ぼす.LTI と体液負荷の組み合わせは,そ れらの基準値,幅とともに,生存率に対する重要な予測因子になり,また,BCM-Body Composition Monitor を用いて全ての患者にそれらを簡便に評価することができる. 29 糖尿病の女性における過度な死亡率は男女の透析患者の等しい生存率を説明し得る可能性がある Renée de Mutsert1, Jonas Axelsson2, Juan Jésus Carrero2, Elisabeth Boeschoten3, Raymond Krediet4, Friedo Dekker1 1 Clinical Epidemiology, Leiden University Medical Center, Leiden, Netherlands; 2 Renal Medicine and Baxter Novum, Karolinska Institutet, Stockholm, Sweden; 3 Hans Mak Institute, Naarden, Netherlands; 4 Nephrology, Academic Medical Center, Amsterdam, Netherlands 序論と目的:心血管系疾患(CVD)は,透析導入時の末期腎不全(ESRD)患者で罹患率が高く,また,透析 における主な死亡原因になっている.一般健常者では,女性の方が CVD リスクが低いことが一要因とし て,余命が長いのが実態である.女性の透析患者は,生存率に関する優位性はないが,この理由は未だ に解明されていない.男性の ESRD 患者は,女性の ESRD 患者とは異なる CVD リスクプロフィールを持つ かどうか,また,CVD および糖尿病(DM)が予後にもたらす影響は透析開始時に男女間で異なるかについ て検討した. 方法:ESRD 患者を対象とし,前向きな観察的コーホート研究である NECOSAD のデータから疫学的研究を 行った.患者は,透析開始時から 5 年間,追跡調査された.最初に,logistic 回帰分析を用いて心血管 系疾患の危険因子のベースラインと関連した男女間のオッズ比を計算した.次に Cox 回帰分析から男性 の危険率(HR)を計算し,年齢,透析方法,喫煙,BMI,コレステロール,降圧剤と脂質抑制剤の使用で CVD リスクを補正した.最後に,効果の加法性からの脱却に基づき,性別および心血管系疾患の危険因 子間における相互作用による相対過度リスク(Relative Excess Risk due to Interaction, RERI)を計 算した. 結果:全体で 1276 名の透析患者を対象にした(男性 61%,年齢:59±15 歳,BMI:24.7±4.1kg/㎡).初 期では,より多くの男性患者が心血管系疾患の合併症になったが(女性の 26%に対して 41%,男性:女性 OR:2.26[95% CI:1.71, 3.00]),糖尿病の罹患は女性よりも少なかった(女性 26%に対して 20%,男性: 女性 OR:0.76[0.57, 1.01]).追跡期間に 462 名の患者が死亡し,232 名が CVD を原因とした. CVD(HR:2.09[1.72, 2.55])と DM(HR:2.37[1.93, 2.91])のどちらも死亡リスクの増加に関係した. 予測したよりも男性が CVD による死亡が僅かに多かったが,性別と CVD との相互作用効果は有意ではな かった(RERI:0.43[-0.20-1.05]).非 DM の女性患者との比較では,男性の DM 患者(HR :2.30[1.69,3.11]) は予期したよりも低い死亡リスクになった(DM 女性の HR:3.17[2.33, 4.31]).この性別と DM 間の有意 な相互作用(RERI :-1.05[-1.98,-0.12])は,男女間の生存率が等しいという説明になり得るかもしれな い(HR 男性:0.94[0.77, 1.14]). 結論:本研究によると,初期の2倍以上低い CVD の罹患率にも関わらず,慢性透析治療を始めた女性患 者は,男性患者と同様の死亡リスクとなる.このことは,性別と糖尿病の相互作用の存在が部分的に関 与していると思われ,女性の糖尿病患者において死亡率が高かった結果につながる.透析患者の生存率 の改善のためには,糖尿病の女性透析患者の治療に特別な注意を払う必要がある. 30 altogether more より充実した製品とサービスの提供を目指して ブドウ糖濃度とカルシウム濃度 によるカラーコーディング 切り離し時の安全に配慮 したピンテクノロジー マニュアルで簡便な ディスクシステム 1日目 (在宅) ディスク操作をより安全かつ効率的に 行うディスクホルダー より安心な睡眠を目指した APDサイクラー バイオファイン - 環境に配慮した素材の選択 より生体と環境に優しい 高圧蒸気滅菌の採用 包括的で充実した PD教育プログラム 24時間対応可能なAPD専用 コールセンター 腎代替療法の保存期患者さん向け プログラム 旅行透析サポート - ホリデー・ダイアリシス 2日目 (クリニック) 血液 採血 バッグ 1 バッグ 2 バッグ 3 1 2 3 バッグ4 2- 4 h 貯留時間 (夜間貯留) 透析液 4 5 QAサンプル 尿 開通ミスの危険性を防ぐ λシェイプ構造 医療の質向上の為の PD療法管理ソフトウェア 1 2 3 4 より高度な分析を可能にする 腹膜機能試験 (PFT)