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リフチングマグネット(永久磁石)の基礎知識

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リフチングマグネット(永久磁石)の基礎知識
リフチングマグネット(永久磁石)の基礎知識
長野労働基準監督署
長野労働基準監督署管内において、クレーン作業中にリフチングマグネット(永久
磁石)を使用して鉄板をつり上げ移動していたところ、作業者の足に鉄板が落下する
労働災害が発生しました。
災害発生原因として、リフチングマグネット(永久磁石)の使用方法等に関して見
落としがちな事項が認められたため、以下のとおり基礎知識に関する資料を取りま
とめました。
クレーン作業においてリフチングマグネット(永久磁石)を使用する場合は、十分
に注意するようお願いします。
リフチングマグネット関係事故の概要
クレーン移動方向
リフチングマグネット
フック
鉄板
使用クレーン
: 吊上げ荷重 2.8t 天井クレーン
リフチングマグネットの性能
: 最大吊上げ能力 400kgN
リフチングマグネットの使用年数
鉄板の仕様
: 約 40 年
: 大きさ約 1.3m×約 0.6m×約 2.7cm、重量約 160kg、材質 SS400
鉄板の落下原因
リフチングマグネット吸着面の荒れ、異物の付着等により吸着力の低下があったと考えられる。
リフチングマグネットの原理・用途
★永久磁石を用いたリフチングマグネットの原理
恒久的な磁界を有する機器で、強磁性を利用してつり荷を吸着し保持する力を発生
させる。通常、吸着又は釈放は ON−OFF レバー操作によって行われる。
★永久磁石を用いたリフチングマグネットの用途
○小物部材の運搬
【鉄工所、製鋼所等】
☆電磁石を用いたリフチングマグネットの原理
電流によって磁界を発生させ、強磁性を利用してつり荷を吸着し保持する力を発生
させる。通常、交流電源を直流に変換して作動させる。
☆電磁石を用いたリフチングマグネットの用途
○鋼板、鋼管、形鋼の運搬
【製鉄所、造船所、鉄工所、倉庫、岸壁等】
○スリップコイルの運搬
【製鉄所、倉庫等】
○スラブ、ビレット、インゴット等の運搬
【製鉄所、製鋼所等】
リフチングマグネット(永久磁石)
吸着力と各条件との相関関係
A 社の仕様説明
B 社の仕様説明
永久磁石を用いたリフチングマグネットの作業要領
1、作業開始前
(1)選定
・リフチングマグネットは、つり荷の形状・材質等を考慮して機種を選
定する。
・つり荷重量(質量表示)が、定格荷重以内であること。
(2)作業範囲の表示
・作業中は、関係者以外立入り禁止とし、他の労働者が作業範囲に立ち
入らないよう標識等で明示する。
(3)本体とつり荷の吸着する面
・吸着する面には、金属片、泥等異物が付着していないこと。
(4)連結部
・本体とつり部の連結が正常であること。
・クレーンフックへの取付け、取外しは、定められた作業標準等による。
(5)つり荷の数量
・複数のつり荷を重ねたり、並列して使用しない。
(6)つり荷の形状
・つり荷がオーバーハングとなる場合は、たわみ量を最小限にするため、
リフチングマグネットを複数台用い、設置ピッチに注意する。
(7)つり荷の温度
・つり荷の温度は、製造者が定めた温度範囲内(例:−20∼50℃)で使用す
る。
2、作業中
(1)吸着
・つり荷の重心かつつり荷の吸着する面が水平となる位置を吸着する。
・吸着するときは、本体及びつり荷に過度の衝撃や振れを与えないよう
に本体を垂直に着床させる。
・吸着後、本体とつり荷が密着していること。
・操作レバーを確実にロックする。
(2)巻上げ移動
・地切り高さまで巻上げ、つり荷が確実に吸着していること。
・移動可能な最低高さまで巻上げて一旦停止後、所定の速度で移動する。
・巻上げ及び移動に際し、荷振れや傾きが出ないように十分注意する。
(3)つり荷の着床
・つり荷が安定を保つことができる場所に着床する。
・着床するときは、過度の衝撃や振れを与えないようにする。
(4)釈放
・つり荷を安定した状態に置いた後、操作レバーを OFF とする。
3、作業終了時
・釈放後、リフチングマグネットに異常がないこと。
・操作レバーは OFF の位置にしてあること。
4、その他の注意
(1)特殊な雰囲気中(高湿度、爆発性、高い塩分濃度等)での使用
・特殊な雰囲気中では、それに対応できる仕様のリフチングマグネット
以外は使用しない。
・特殊な用途でリフチングマグネットを用いるときは、製造者に使用上
の注意について確認する。
(2)その他
・ペースメーカー使用者等医師により就業制限を受けている者には、リ
フチングマグネットを用いる作業に従事させない。
5、点検
(1)作業開始前の点検
・リフチングマグネットを用いて作業を行うときは、その日の使用を開
始する前に、当該リフチングマグネットの異常の有無について点検を
行う。
(2)定期点検
・リフチングマグネットを用いて作業を行うときは、1 月以内ごとに 1 回
及び 1 年以内ごとに 1 回、定期点検を行うこと。さらに、製造者が指
定した間隔で点検を行う。
・事業者が指名した者又は製造者がこの点検を行う。
※出典:一般社団法人
日本クレーン協会
JCAS
6807-2009
リフティングマグネット作業要領
点検チェックリスト(永久磁石)
点検日
点検者・承認者
1、作業開始前点検
番号
点検項目
点検方法
判定基準
合否
否の場合の処置
1
表示部
目視
傷み・汚れ
修理又は清掃
2
本体の損傷、変形
目視
ないこと
取替え
3
吸着面のレベル
レベルが平面
目視
修正
であること
4
吸着面の摩耗、損傷、変形
目視
ないこと
補修又は取替え
5
吸着面の突起、遺物の付着
目視
ないこと
除去
6
操作レバーの損傷、変形
目視
ないこと
修理又は取替え
7
ボルトの緩み
触手
ないこと
増締め
8
補修箇所がある場合には、
その箇所の修復状態
異常がなく、正
目視
是正
常に作動する
こと
2、作業中確認
番号
1
点検項目
吸着状態に異常がないか
点検方法
判定基準
目視
異常がない
こと
点検方法
判定基準
合否
否の場合の処置
是正
3、作業終了後確認
番号
点検項目
合否
否の場合の処置
1
本体の損傷、変形
目視
ないこと
修理
2
操作レバーの損傷、変形
目視
ないこと
修理
3
各部のき裂、損傷
目視
ないこと
修理
作業日誌、申送り等の記入
4
必要事項を記
目視
入しているこ
記入
と
※出典:一般社団法人
日本クレーン協会
JCAS
6807-2009
リフティングマグネット作業要領
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