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我が国はアジア ・ モンスーン地域に位置しているため、 台風 警 梅雨時に
ハザードマップ基礎情報(地理情報)の整備に向けて 国土地理院北陸地方測量部 専門職 田中勝「 1.はじめに 我が国はアジア・モンスーン地域に位置しているため、台風・梅雨時に集中豪雨が発生しやすい気 象条件下にある。さらに急峻な山地(国土の75%)、短く急勾配な河川を有していること、人口の 集中する平野部の多くは沖積層1という軟弱な地盤からなることに加えて、地殻変動の影響を受けた 多くの構造線や断層・活断層が挙達する脆弱塗地質構造も併せ持っている◎このため、過去に幾度と なく水害、土砂災害と卑こ、地震、火山噴火等の自然災害が発生し、人命等め被害はもとより・交通 ・通信・ライフラインなど甚大な被:害を被ってきた。 国土地理院では、自然災害に対応した全国レベルの地理情報を早急に整備すること、そして、、被害 の軽減を図るため他の防災機関や国民に対して迅速な情報提供を行うことを目的に、平成14年度よ り「ハザードマップ基礎情報(地理情報)」の整備に大きく動き出すこととなった。ここでは、これ ま磁土騨院灘僻てき鯨蝋割こ関わる主な調査と≧もに遡方雑誌総力言賄するハザ ードマップ、災害データ・ミース作成に資する地理・地形調査事業を紹介する。 2.轟然災害と国土地理院の関わり みた災害調査の発端である。 .,、 馨 その後、水害競想定した体系的な調査は、輸34磯 .に発生した騰舗潮災割・始まる・この時め高潮嘆 洪水被害調査結果が、昭和31年に作成された「木曽川流域難 濃尾平野水細形分類図鰍1β・鋤の洪水鰍区域と耀 ほとんど一致して曜とから、蹄状況と地形」との相灘鍵譲、 『が山地・丘陵地にまで広げられ、調査の目的も水害・’地震防 図一1 災資料としてだけでなく、土地の開発・保全も含めた基礎資 昭和34年1d月11鮒中部日本新聞 料作成へと拡大された(昭科38年、土地条件調査に名称変更)。 「 3.土地条件調査(土地条件図)とな 生活の場としているその土地がどのような成り立ちで形成されたのか、洪水などの災害を起こしや 一289一 、 地域は沿岸流等により供給された砂礫が堆積し、砂州4として 図一2 土地条件図「金測の一部(原寸) 発達(一部は風成の砂丘)したことが伺える。やがて閉塞されたこの地域は河北潟のような潟湖を生 ヒ じさせ、その後、次第に犀川等の河川による堆積作用で沼沢地、湿地、そして現在見られるような沖 積低地を形成した。このため、シルト・粘土等の細流物質が厚く堆積し、軟弱な地盤(地震時の揺れ が増幅しやすい)を有している。また、氾濫時に自由蛇行を繰り返していた犀川の旧河道が帯状に残 存(河川氾濫時、水が滞留しやすい)するとともに、海岸付近のため勾配も緩く、自然堤防5はほと んど見られない。標高1∼2mの平地には近年、宅地等による都市化が進んでいるが、豪雨時、排水 不良による内水氾濫が懸念される。このように、土地条件図からは土地に関 わる様々な事象を読みとることができるとともに、災害リスクのある地域を 明らかにする、いわばその土地・地域に対する二二診断」を行うことが可 能稀1際した土地条件図に減簾二藍な畑二二とし鍛 て「火山土地条件図」、沿岸域を対象としたギ沿岸海域土地条件図」がある。 このほかに地震を想定した「都市圏活断層調査(図一3)角も新たに加わり、三一3 都市圏活断層画 国土における基礎的な地理情報整備を実施、継続中である。 「長剛の一部(50%縮小) 4.ハザードマップ基礎情報(地理情報)の整備 平成14年、水防法の一部が改正され、洪水予報河川の拡充、浸 水想定区域公表等の施策が講じられた。このことは氾濫:区域内に位 置する地方自治体での洪水ハザードマップ作成を促すことを意味し. ている・このような状況から・殴地理院では基礎的な地鮪報難 特に未整備地区を対象とした土地条件図の早急なる整備・施策を懇歎i謝儀鑛 Uることとなった。 決壊したと仮定し、浸水したときの水深をO∼2m以上まで5段階 図一4 白根市ハザードマップ (50cm毎)に色別区分し、浸水危険度を表している。 の一部(50%縮小) 一290一 を把握することができれば、ハザードマップ作成時の基礎的な地理 隅一5土地条件図 情報として有用といえる。現在、±:地条件図(109面作成)は全 ・・噺潮の一部(30.%縮小)・ 国の主要な平野部を中心に作成されており・関東・中部・近畿地区を中心に整備済みである6今後・ 北海道、九二地区等の未作成地区についても順次整備を進める母画である。北陸では新潟及び傘沢の 一部で作成されており、数年後には富山1福井でも整備が完了する予定である、土地条件図の内容に ついては、土地分類等め基本的なものはそのままであるが、’ハザードマーップ基礎情報としてのわ炉り やすさ」利用しやすさをめざ’し、’見直しの段階中である。 ・5。最新技術の研究開発 平成12年・東海:地方は記録的な集中心止8に見舞われ・庄内川水系新川で約1001n破:謁するな ’ど雨水糖嘩大であった・一法1【論敵進んでい否が沖梱ノ・1嘩備が追南か鮒とい う現実、そして都市化の拡大は今後頻発するであろう都市型水害を暗に示している。このことから国 土地理院では現在、都市域の詳細なデータ(地形・建物)を三次元で記録し、管理・提供する研究・ 開発に全力を注ヤ、でいる。この研究はレーザースキャナ等を用いた技術により、都市域における最新 (小貝川両岸沿いに周囲より濃く表示した凹地)に慮一華, は、洪水時に水が留まりやすい地域として区分されて葱i一 A おり、低地の微細な地形表現には「段彩図」が有効と蟹、. いう結果が出ている。今後、山地・傾斜地(火山』6 崩壊地)等についても検証ゐ予定であるが、こうした ・ 甲酔略 カラー段読図と地盤高線図の重ね合わせ図 一291一 新技術が実用化されると、一より実体に即した氾濫シミュレーションなど、自然災害危険度の分布を詳 細にシミュレートすることができ、都市域の高度な防災に向けた基礎データ整備が可能と塗る。 6.おわりに 土地条件図・火山土地条件図等の基礎的な地理情報(ハザードマップ基礎情報)は、その土地に刻 まれた過去数千年∼数十万年に及ぶ地形の状態から、将来起こり得る可能性のある大規模な地震や火. 山院漂水等の災害規模を予測することが可能である。こうした地理情報の整備は、被害を最小限に留. めるという防災対策の二助となり得るものであり、地理情報システム(GIS)を用いての活用が防 災予測に最も効果を発揮できると言える。とのため、国土地理院では平成17年康までに土地条件図 (作成済みの既存図)の数値:化を完了させるとともに、順次インターネット等による公開を予定して いる。今後、最新技術成果を含め、国で整備した地理情報めみならず、地方自治体等が保有する各種. 地理情報が整備・数値化されることにより、都市域はもとより、河川、海岸、山地斜面等におけるf防 災(打S基礎データ」として、’ l々な災害を想定した利活用に弾み力弐つぐことが期待できる。 ※1沖積層:’2万年前∼1万8千年前の低海面期以降に川や海の作用によって堆積し、沖積低地を形成した地層。一’ 般的には約1万年前から現在までの完新’世に堆積してできた地層をいう。 巌2カ日リーン台風:昭和22年9月.、マリ、アナ諸島沖で発生した台風と秋雨前線との相乗効果で記録的な豪雨を降 らせた。この豪雨により関東・.東北地方を中心とした各地の裸害は死者・行方不明者1,930人、家屋全半壊 ..・流出9,『298戸にのぼった。 廉3伊勢湾台風高潮災害;昭和3:4年9月伊勢湾台風が紀伊半島潮岬に上陸。・この時、台風通過時と満潮が重なった ため・さらに被害を大きく干た・5・000入を越零る死者・行方不明者とともに・家屋の全寮填は1『q万戸に のぼった。また、長i期にわ詣る湛水(2.g日前後)溺続いた。 ※4砂州:沿岸流の影響で堆積、形成さ射た帯状の墨壷地。豪州や砂浜を供給源とし、冬の強小卓越風による飛砂は 海岸砂丘として発達ずること溺ある(石川県あ内灘砂丘はかまぼこ抹を呈し、標高50瓶前後に兆達〉。・ ※5自然堤防:自然堤防は河川の上流から運搬されてきた砂塗どが河道あ岸に沿って堆積して形成された微高地。周 .辺の土地と比べて冠永》にくい(異常洪水時を除く)ため、古くから集落や畑地として利用されてきた。 ’‘ ヲ6都市圏浩断層調査:平成7年に発生し、戦後最悪の被害を生じた阪神・淡路大震災L《死者昏000人以上、全半壊約 20万戸)を契機に、都市及びその周辺地算における活断層の位置を詳細に記した都市圏活断層図(縮尺工!25・oOO). の作成が開始された。..数千年から数万年の周期で活動を繰り返す「活断層」の表示以外に、設丘・沖積低地など『 の地形も併せて表示している。北陸地区においては、新潟4面、金沢・福井の各・1面が作成されてお緊今年度 中には薪潟(新発田・’新津)、富山(富山他2面)を柞成予定。総作成面数は平歳14年度で100面を予定。 巌7後背低地:自然堤防の背後に位置妹自然堤防群や台地などに取り囲まれτ浅い凹地になっている.所を吟う。. 二藍に榊構醜く・低湿で鱗泥炭地や湿婆になつでいるとこ苓も多ヤ’・’ 楽8東海豪雨=平成12.年白月、.台風の影響を受けた前線活動により1名古屋市でユ臼降水量428訓を観測(過去丁 参繍総総騨’.嗣撃9万眺被害騨8・…馴灘省鵡陶ぼつ鵡” 国坤理嘩酪(…2)・:離畢院鱗二二・.黙’4年2月・.139亭P 甲坤群伽2) ス尾3鞭鱒ヒヴス癖ナを活臥た聯鱒に関する嗣牒・牒実 :『 話鵠1平成牌3月15冒・’‘122P早悟.. 国輿聾⑳)2).1雌騨システム《GIミ潤郵庁連絡会三下集ほ1き・P. 品物{2QO2)=ノ)ザ州㍗ズ喋穣雌・・L52・叫岬鱒r 白根㎡(i甥)も白干市洪水避難地図 (洪水パザ憎ドマツプ)・縮尺1/25,000. 一292一