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(1)低地の領域の決め方 ボーリングによる液状化判定の結果を低地全体
(1)低地の領域の決め方 ボーリングによる液状化判定の結果を低地全体で見ると、黄色で表示されている「液状 化の可能性中」がいちばん広く分布しています。そのため、赤色で表示されている「液状 化の可能性が高い地域」と、緑色の「液状化の可能性が低い地域」をまず決定し、残った 場所を黄色で表示されている「液状化の可能性がある地域」としました。 1) 「液状化の可能性が高い地域」 (赤色の領域)の決め方 赤色の領域は、赤色のボーリング判定点がまとまっている場所を囲むようにして決めて います(図 1) 。ボーリングデータの精度を考えて、最低でも 2 点以上の赤色の「液状化の 可能性大」のボーリング判定点があるときに領域としました。赤色の領域の中には、赤色 よりも少ない数の黄色や緑色のボーリング判定点が混在している場合もあります。 図 1 低地の赤色の領域の例(大田区蒲田周辺) 図 1 低地の赤色の領域の例(大田区蒲田周辺) 2) 「液状化の可能性が低い地域」 (緑色の領域)の決め方 緑色の領域は、基本的には緑色の「液状化の可能性小」のボーリング判定点のみの範囲 を囲んでいます(図 2) 。この場合も、最低 2 点以上の緑色のボーリング判定点を領域とし ています。ただし、1、2 点の黄色のボーリング判定点が含まれていても、柱状図と液状化 判定結果を確認して、液状化の可能性が低いと判断された場合には緑色の領域とした場所 もあります(図 3) 。 図 3 低地の緑色の領域の例(1,2 点の 黄色のボーリング判定点を含む例) (中央区京橋周辺) 図 2 低地の緑色の領域の例(荒川区南千住周辺) 3) 「液状化の可能性がある地域」 (黄色の領域)の決め方 黄色の領域は、液状化の可能性が高いとはいえないが、起こってもおかしくないと判断 した地域です。前にも述べたように、低地では黄色の領域の範囲が他の領域よりも広いこ とから、赤色と緑色の領域を決めた後に、残った範囲を黄色の領域としています。黄色の 領域は、黄色の「液状化の可能性中」のボーリング判定点が数として多いのですが、その 中には赤色や緑色のボーリング判定点も混在しています(図 4) 。低地でもボーリング判定 点がほとんどない場所もありますが、そのような場所も液状化の可能性が低いとは判断す ることができないため、黄色の領域としています(図 5) 。また、赤色、黄色、緑色がほぼ 同数混在していて、判断が難しい場所も黄色の領域としました。 図 4 低地の黄色の領域の例 (中央区日本橋周辺) 図 5 ボーリング判定点がほとんどない箇所の黄色の領域の例 (足立区入谷周辺) (2)埋立地の領域の決め方 港湾地域の埋立地の領域の決め方は基本的には低地と同じですが、領域の境界線につい ては埋め立て時期や埋め立てた土質がわかる埋立工事履歴図を利用しています。以下に埋 立地の領域の決め方について 2 例示します。 図 6 の右図が埋立工事履歴図で、埋立土質区分としては砂と粘土が不規則に分布する場 所となっています。右図にみられる黒線が、埋立土質区分を工事履歴から細分化した線で す。このような埋立地で赤色や緑色の領域を決める際には、埋立工事履歴図の区分を同じ 性質を持つ領域と考え、ボーリング点の判定結果から決めた領域をこの線状の範囲まで拡 張した場所があります。 図 7 は埋立工事履歴図を参考に領域を決定したもう一つの例です。右の埋立工事履歴図 で、黄色の部分は廃棄物で埋立てた区画であり、その左側の緑色の部分は砂質土で埋立て た区画です。廃棄物地盤は基本的に液状化しない土であるため、この右側の黄色の範囲に はボーリング点の判定結果では赤色と黄色の点が数点見られますが、埋立土質の区分を優 先して、液状化の可能性は低いと判断しました。判断にあたっては、この赤色と黄色の柱 状図と FL 深度分布図を調べ、液状化が起きる可能性が低いことを確認しています。 領域を埋立工事履歴図の区 画に合わせて拡張した箇所 埋立工事履歴図 図 6 ボーリング判定結果に加え、埋立工事履歴図を参照して 領域を決定した例その 1(江東区青海周辺) 廃棄物で埋立てた区画 埋立工事履歴図 図 7 ボーリング判定結果に加え、埋立工事履歴図を参照して 領域を決定した例その 2(江東区若洲周辺) (3)河谷底の領域の決め方 河谷底では、液状化の可能性がある場所は低地よりもかなり少なく、大部分が緑色の領 域となります。このため、河谷底の部分の一部に散在する黄色の領域を拾い出すことで領 域を決めています。今回の検討では、河谷底には赤色の領域はありませんでした。 河谷底では、ボーリング判定点の分布する密度が低地部よりも少ないため、最低 2 点以 上の黄色のボーリング判定点(赤色がある場合も含める)を囲むす領域としました。また、 河谷底では低地の場合と異なり、赤色のボーリング判定点は孤立した 1 点であっても局所 的な部分のみ黄色の領域としています(図 8) 。なお、河谷底では緑色の領域の中にも孤立 した黄色のボーリング判定点を局所的に含む場所もあります(図 9) 。 図 8 河谷底の黄色の領域の例(新宿区市ヶ谷周辺) (赤線で囲んだ部分は赤色 1 点のボーリング判定点から黄色の領域としている) 図 9 河谷底の緑色の領域の例(黄色のボ ーリング判定点を部分的に含む) (4)領域の補正方法 ボーリング判定の結果だけで液状化の可能性を判定できる領域は多いのですが、それ以 外の地盤の情報として土地条件図の地形区分や、液状化履歴図での被害発生の範囲と地盤 災害がなかった範囲についても判定に加えて、ボーリング判定の結果から定めた領域を一 定の範囲まで拡張した場所があります。以下に例をいくつか示します(図 10~図 19) 。 図 10 は、河谷底にある 2 点の黄色のボーリング判定点を囲んだ黄色の領域の例で、左 が領域判定の結果、右は土地条件図です。黄色の 2 点を囲む際には、土地条件図の河谷底 (土地条件図の地形区分は盛土地)の形状から領域を決めています。 昭和 45 年版 土地条件図 図 10 河谷底でボーリング判定結果と土地条件図から領域を決定した例‐その 1 (渋谷区渋谷駅北西側:右側の土地条件図の左半分は土地条件図をデジタル化をしていな い範囲であるため、平成 24 年版土地条件図から赤線で河谷底の位置をトレースした) 図 11 も河谷底の黄色の領域の例です。土地条件図の河谷底の範囲まで、黄色・赤色の ボーリング判定点を囲む領域を広げています。ただし、緑色のボーリング判定点のある場 所までは黄色の領域を広げずに、緑色の領域としました。 昭和 45 年版 土地条件図 この範囲は緑色のボーリング判定 点があるため緑色の領域とした 図 11 河谷底でボーリング判定結果と土地条件図から領域を決定した例-その 2 (谷田川の流域:北区西ヶ原~文京区千駄木~台東区池之端) 図 12 も同じく河谷底の黄色の領域の例です。左が領域判定結果、中央の図は昭和 45 年 版の土地条件図、右は昭和 55 年版の土地条件図です。左図の中央付近の 2 箇所について は、土地条件図の河谷底の範囲で黄色・赤色のボーリング判定点を囲んで領域を決めた場 所です。ただし、左上の黄色の領域では、昭和 45 年版の土地条件図では、黄色の領域が 台地の赤色の部分に半分程度はみ出していますが、ボーリング柱状図を確認したところ、 明らかに河谷底の土質を示していました。右の昭和 55 年版の土地条件図を参照すると、 この場所は河谷底となっていたので、図のような領域としています。 図 13 には、台地と低地の境界付近の領域の例を示します。図 12 と同様に左が領域判定 結果、中央が昭和 45 年版の土地条件図、右が昭和 55 年版の土地条件図です。左図の中央 付近の緑色と黄色の領域の境界については、土地条件図の台地と低地の境界で黄色・赤色 のボーリング判定点を囲んで領域を決めていますが、昭和 45 年版の土地条件図では台地 の赤色の部分に黄色の領域が半分程度はみ出しています。ここでもボーリング柱状図は低 地の土質であったため、右の昭和 55 年版の土地条件図の台地と低地の境界を基に領域を 決めました。 昭和 45 年版 土地条件図 図 12 昭和 55 年版 土地条件図 河谷底でボーリング判定結果と土地条件図から領域を決定した例-その 3 (豊島区大塚周辺) 昭和 45 年版 土地条件図 図 13 昭和 55 年版 土地条件図 台地と低地の境界付近の領域の例(板橋区蓮根一丁目周辺) 図 14 はボーリング判定結果に加えて、 液状化履歴図を参照して領域を決定した例です。 図 14 の左の図のうち、左上の緑色の部分はボーリング判定結果が緑色で、右の液状化履 歴図でも 1923 年関東大地震で地盤災害がなかった範囲(緑色)になっています。このた め、液状化履歴図の緑色の範囲の中で緑色のボーリング判定点を囲むように領域を決めて います。液状化履歴図には右下にもう1箇所、関東大地震で地盤災害がなかった場所があ りますが、こちらの範囲の中にはボーリング判定点がないため、黄色の領域としています。 図 15 もボーリング判定結果と液状化履歴図から領域を決定した例です。図 15 の左の図 の赤色の領域は、ボーリング判定結果から決めた領域に加えて、右の液状化履歴図の 1923 年関東大地震で激しい液状化が生じた範囲(赤色、薄茶色、桃色)および土地が陥没した 地域(紫色)まで領域を拡張しています。 図 16 と図 17 は、2011 年東北地方太平洋沖地震の際の液状化履歴を基に、領域を決定し た例です。右側の図の赤紫色の場所は、2011 年東北地方太平洋沖地震の際に噴砂などの液 状化が広範囲に発生した所です。これらの場所では、ボーリング判定結果に加えて、液状 化の履歴の範囲まで赤色の領域を拡張しています。 この範囲の中にはボーリング判定 点がないため黄色の領域とした 液状化履歴図 図 14 ボーリング判定結果と液状化履歴図から領域を決定した例-その 1 (大田区下丸子周辺) 液状化履歴図 図 15 ボーリング判定結果と液状化履歴図から領域を決定した例-その 2 (大田区羽田空港周辺) 液状化履歴図 図 16 ボーリング判定結果と液状化履歴図から領域を決定した例-その 3 (江東区新木場周辺) 液状化履歴図 図 17 ボーリング判定結果と液状化履歴図から領域を決定した例-その 4 (江戸川区清新町周辺) 河谷底では低地に比べてボーリング資料の数が少ないため、判定の精度を上げるために、 既存の地盤情報を参考にして領域を決定した場所もあります。図 18 はその 1 例で、図中 の黄色のボーリング判定点は 1 点のみですが、既存の地盤情報を使って黄色の領域を左右 に拡張するとともに、河谷底の形状に幅を広げています。 多摩川 図 18 既存の地盤情報を 参照して領域を決定した例 (稲城市南多摩駅周辺) 海面や河川、河川敷の部分は判定から除外しています(図 19) 。 多摩川 図 19 河川、河川敷の部分を白抜きにした例(大田区六郷土手周辺の多摩川河川敷) (5)いくつかの地盤情報を総合して領域を決めた例 いくつかの地盤情報を組み合わせて総合的に領域を決めた例として、図 20~図 25 に 6 つの事例を示します。それぞれの図は左が領域判定結果、中央が液状化履歴図、右が昭和 45 年版の土地条件図となっています。 図 20 は低地と台地(図の下側)の境界付近の例で、右の図には液状化の可能性が高い と考えられる旧河道が土地条件図中に見られます。液状化履歴図の中央付近には、1923 年 関東大地震の際に激しい液状化が生じた桃色の領域が新河岸川左岸沿いに分布していま す。このケースでは、まず、赤色と緑色の領域をボーリング判定の結果から決め、その後 に台地と低地の境界線に合わせて緑色の領域を広げるとともに、液状化履歴の境界に合わ せて赤色の領域を広げています。ボーリング点の判定結果と液状化履歴をあわせた判定で は、旧河道の部分は一部が赤色の領域となっていますが、そのほかの旧河道ではボーリン グ点の判定結果から黄色の領域と判定しています。 荒川 旧河道 新河岸川 図 20 河川沿いの低地に液状化履歴がある箇所の判定例 (北区浮間、板橋区志村周辺) 図 21 は、台地(右の土地条件図の赤色)の中の河谷底(クリーム色の部分)での判定 の例です。 図の中央付近を流れる石神井川沿いの河谷底には、いくつかの赤色や黄色のボーリング 点の判定結果が見られることから、これらを囲んで河谷底の両側の範囲まで黄色の領域を 拡張しています。その他、黄色や赤色のボーリング点 2 点を囲んだ小規模な黄色の領域が、 いくつかあります。また、図の右上の台地と低地の境界で、緑色と黄色の領域を分けてい ます。大部分が台地なので、液状化が発生したという履歴は、この地図の範囲には見られ ません。なお、この地域の河谷底で液状化の可能性があると判定されている地層は、やや N 値の低い洪積層(更新世の地層)の砂層です。 石神井川 図 21 台地内に液状化の可能性がある河谷底の判定例 (北区十条、板橋区本町周辺) 図 22 は低地で黄色の領域の中に赤色の領域が大きな割合を占める場所での判定例です。 右の土地条件図の上の方を流れる毛長川沿いには、液状化の可能性が高いと考えられる旧 水面上の盛土地・埋土地と旧河道が見られ、その周辺に自然堤防や氾濫平野、盛土地が分 布しています。 ボーリング点の判定結果では、赤色の点が数多く見られますが、液状化履歴では図のや や右上の方に 1923 年関東大地震で軽度の液状化が生じたオレンジ色の細長い範囲(軽度 の液状化が発生した地域で地域をおおよそ確定でしる)が分布する程度です。領域はボー リング判定の赤色の点を囲んで決めていますが、右の土地条件図の毛長川沿いの旧水面上 の盛土地・埋土地および旧河道と、他の地形区分との境界で赤色の領域を補正しました。 液状化履歴図のオレンジ色の細長い範囲については、ボーリング点の情報と土地条件図 の地形区分のどちらからみても液状化の可能性が高いと判断することができないことか ら、一部を除き黄色の領域としています。 毛長川 図 22 土地条件図の地形区分で領域を補正した判定例(足立区竹の塚周辺) 図 23 は低地に黄色と赤色の領域の中に緑色の小領域がいくつか点在する地域の判定例 です。地形としては、土地条件図の右端を流れる江戸川と左端を流れる中川に挟まれた地 域で、盛土地と自然堤防との周辺には三角州も見られます。 この地区の特徴は、液状化履歴図では図の中央付近(金町駅南側)に激しい液状化が生 じた桃色の範囲(3 段階の内、確度が低い範囲)があることですが、この場所ではボーリ ングの判定結果を見ると、主に緑色の点となっています。ボーリング判定結果をとれば緑 色の領域となり、液状化履歴を重視すれば赤色の領域となります。この予測図ではボーリ ング判定の結果を重視して判定していることから、緑色の点を囲むように緑色の領域を設 定し、それ以外の場所は黄色の領域としました。ただし、この液状化履歴の範囲では、液 状化が起こる可能性について注意する必要があります。このほかの赤色の領域については、 ボーリング判定の赤色の点を囲んで領域を決めています。なお、この図の範囲には、液状 化の可能性が高い地形区分がないため、土地条件図の情報は使っていません。 金町駅 江戸川 中川 図 23 液状化履歴図よりボーリング点の判定結果の領域を重視した判定例 (葛飾区金町周辺) 図 24 は、盛土地や自然堤防、三角州が入り組んだ地形となっている低地の例です。図 の中央上部で中川が枝分かれし、左側を中川、右側を新中川が流れています。予測結果と しては緑色の領域はなく、黄色と赤色が混じった領域となっています。液状化履歴は中川 の左岸に沿って、1923 年関東大地震の際に激しい液状化が生じた赤と薄茶色の範囲が見ら れており、ボーリング判定結果でも大部分が赤色で 2 つの情報は整合しています。この場 所については、赤色のボーリング判定点を囲って赤色の領域としてから、液状化履歴の範 囲に領域を広げました。図に表示した範囲には、液状化の可能性が高い地形区分がないた め、土地条件図の情報は使っていません。 その他の赤色の領域については、ボーリング判定の赤色の点を囲んで領域を決めていま す。 中川 新中川 図 24 液状化履歴図の情報からボーリング点の判定結果の領域を広げた判定例 (葛飾区青砥~奥戸周辺) 図 25 は荒川と中川の左岸部で、地形分類としては盛土地と三角州、自然堤防が分布し ています。 ボーリング点の判定では赤色の点が数多く見られますが、液状化履歴は図の中央付近に 1923 年関東大地震の際に地盤災害のない地域(緑色)が広く分布しています。この場所は ボーリング判定では黄色と赤色の点が多いことから、ボーリング判定から大部分を黄色の 領域としました。ただし、図の中央少し上部の緑色のボーリング判定点 2 点については、 柱状図を確認した上で小規模な緑色の領域としました。 液状化履歴図の右下には、1923 年関東大地震で激しい液状化が生じた赤と薄茶色の範囲 が見られます。この場所は、ボーリング判定では赤点と黄色の点も見られますがが、緑の 点の方が多いことから、赤色の領域と判断ができなかったため、黄色の領域としています。 その他の赤色の領域については、ボーリング判定の赤色の点を囲んで領域としました。 この図の範囲には、液状化の可能性が高い地形区分がないため、土地条件図の情報は使 用していません。 中川 荒川 図 25 液状化履歴図の情報よりもボーリング判定の情報を優先して領域を決めた例 (江戸川区東小松川周辺)