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1 〔出題の趣旨〕 行政行為の附款の意義、その違法性についての理解を

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1 〔出題の趣旨〕 行政行為の附款の意義、その違法性についての理解を
既修者認定試験/行政法問題の出題の趣旨・解説
〔出題の趣旨〕
行政行為の附款の意義、その違法性についての理解を問う問題である。法令で、行政行為
(処分)の主たる内容を制限するために「条件をつける」とされているのは、行政法学では,
「附款を付す」(大部分は「負担」である)ということである。そして、行政法学の一般理論
では、附款を付しうるのは、法令において明文で認められている場合、あるいは、そのこと
について行政庁に裁量の余地が認められている場合にかぎられ、さらに、附款を付しうると
されても、行政処分の目的にてらして必要な限度にとどまらなくてはならないとされている。
デモ行進の許可制については、事柄が表現の自由に関わるため、憲法学上も批判がつよく、
デモ行進したいという者の申請を許可することに対して制限的に働く附款には、とくに厳格
な解釈が要求されている。
〔試験問題の解説・模範解答例〕
1
進路の変更指定
1のデモ行進の許可処分に付された進路の変更指定については、まず、それが附款である
のか、それとも、申請を拒否する処分と進路の変更命令が複合したものと考えるべきなのか
という対立があるが、ここでは、いちおう判例に従って前者の立場をとる。
A 県条例では、明文で申請にある進路の変更を条件に申請を許可することができるとして
いる。その場合進路を変更しうるかは,「公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明ら
かに認められる場合」、「公共の秩序又は公衆の衛生を保持するためやむを得ない場合」の解
釈に関わる。一種の国民に対するデモンストレーションであるデモ行進は、表通りで行われ
てこそ意味があるのに、それを大部分裏通りに変更するのであるから、変更が正当化される
のは、その解釈として、当日表通りの該当部分において、まったく通行不能であるとか物理
的にデモ行進ができない特段の事情がある場合に限定され、それ以外はすべて違法である。
設問の進路変更が違法であるとして、それが重大かつ明白な暇疵をもち無効であるかどうか
が問題となる。かりに無効であるとして、それが許可処分にどのような影響をもつかだが、
判例は、進路指定のみ無効とする(申請者は.申請どおりの進路を進める)傾向にある(東京地決
昭 42・6・9 行集 18 巻 5=6 号 737 頂)。また、無効とまでいえないときは、進路指定だけの
執行停止の訴えが可能である。
2
附款と比例原則
2の附款は、直接には「交通秩序維持に関する事項」に関連すると思われる。デモ行進の
態様については、いろいろなものがあり、道いっぱいに広がる行進、すわり込み、ジグザグ・
渦巻き・蛇行行進など、交通秩序維持という観点からは、問題のものも確かにある。これら
の行進をしないようにという附款が付されたのであれば、それはデモ行進の指揮者が守るべ
き必要最小限度の事項を明確にしたということで、なんら比例原則に反するものではない。
それに対して、
「五列縦隊以上にならないように」とすることは、道路の状況に照らして、そ
の必要性があったかどうかが問題となる。また、「かけ足行進・ことさらな停滞をしないよう
に」とすることも、どの程度まで許されるのか明確ではないし、交通秩序維持という名目で
それが必要かどうかについても疑いがある。
とくに本条例では、附款の不履行に対しては罰則があり、附款自体がその構成要件を構成
することになるので、その内容は抽象的なものであってはならず、附款は違法となりうる。
3
撤回権の留保
3は、負担的附款が履行されない場合の効果に関する問題であるが、行政法の一般理論に
よれば、それが履行されない場合でも行政処分の効力は当然には失効せず、ただ、その不履
行を理由に処分を撤回しうるにすぎないとされている。したがって、行政庁は、デモ行進を
許可するにあたって、その間の関係を明確にする意図でこのような附款を付したものと思わ
れる。しかし、行政庁が撤回権をあらかじめ留保する附款を付していても、字義どおりには
意味をもたないとされている。撤回できるかどうかは、撤回の一般理論により、そこでは、
受益的行政処分の撤回は自由ではないとされている。
とくに、本条例では、附款の不履行に対しては事後的な罰則が用意されており、それとの
バランスで、デモ行進の最中に行進を中止させることになる撤回はできないと考えられる。
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