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日本の高齢社会から学ぶもの 陳 暁嫻 皆さん。こんにちは。陳 暁嫻と申します。私は現在九州大学の大学院で高齢化問題に ついて勉強しております。 皆さんは高齢化問題や高齢社会についてどう思っていらっしゃるでしょうか?今日は、 この「高齢社会」について、みなさんと一緒に考えてみたいと思います。 国連の規定によりますと、高齢化率、つまり 65 歳以上の人口が7%を超える社会は「高 齢化社会」といい、14%を超えると「高齢社会」と呼びます。現在日本の高齢化率は1 8%を超え、 「高齢社会」どころか、 「超高齢社会」に突入しています。 一方、私の祖国中国の高齢化はといいますと、実は水面下で「密かに」進んでいるので す。今、私は「ひそかに」という表現を使いました。それは、中国の状況が、今日の日本 のように「高齢化」 「高齢化」と皆が関心を持っている状況とはだいぶ違っているからです。 中国でも、よく知られている「一人ッ子」政策の実施により、高齢化が急速に進んでい ます。現在中国の高齢化率は既に7%を突破し、本格的な高齢化社会を迎えています。に もかかわらず、高齢化問題はまだ一般レベルで議論されていませんし、きちんとした高齢 者福祉制度のビジョンもまだ出されていない状況にあります。1980 年代から始まった改革 開放政策は、竜巻のように中国全土を席巻し、子供から高齢者まで全ての世代がまき込ま れています。経済中心・生産第 1、国を挙げて経済を発展させる、国民の生活を豊かにしよ うとする大きな社会風潮です。その様子はまさに東京オリンピックが開かれた頃の日本に 似ていると言われています。 ところで、私が日本に来て、一番驚いたことは、中国と比べると町の中で車椅子の人を 多く見かけることでした。不思議でした。いくら戦争した国といっても、それは既に半世 紀も前のことで、戦争で足などを無くしてしまった人ではないでしょう。しかも車椅子に 乗っている人の中には若い人も結構いました。本当に不思議でした。なぜ?そしてあらた めて考えて見ると、車椅子を日常的に見かけるということは、つまりこの町は、車椅子の 方にとって多少不便があっても、それなりに、外に出られるように整備されていることを 意味しています。なるほど。これがバリアフリーか、と少し悟りました。一方、中国の事 情を考えてみると、町に車椅子が少ないというのは、車椅子の方が少ないというのではな く、おそらく車椅子に乗って外に出ること自体が不可能なのです。町はまだバリアフリー とかユニバーザルデザインで整備されていませんし、車椅子どころか、普通のちょっと足の 弱い人、年配の人にとってもたいへん危険です。親切な町作りとは言えないと思いました。 さらに高齢化社会について考える時、最も大事なのは建築とか都市計画といった空間の バリアフリーではなく、心のバリアフリーではないでしょうか?日本は介護保険制度を象 徴として、既に法律的に高齢者福祉制度ができています。しかし、制度だけではまだ足り ません。実は、私は、日本の老人ホームで実習した経験があります。老人ホームには、も ちろん親切な職員の方もいますが、しかし、何となくわびしさが感じられました。そして、 そこに足りないのは家族のぬくもりや笑顔ではないかと思いました!! 高齢化問題に対して、私たちはどう対応すればよいのでしょうか?私はなんと言っても 意識の変革が大事だろうと思います。高齢化問題は、高齢者だけの問題だと、傍観者の目 で見るだけでは問題は解決しません。また高齢者が増えることは、即 国民負担の増加を 意味すると考える「お荷物感覚」もいけません。さらに、高齢者をすべて要介護者と思い こむのも危険です。もう少し明るく考えてみてはいかがでしょうか。まず 65 歳以上の人を 一律に高齢者と規定し、枠にはめることには無理があるのではないでしょうか。元気な高 齢者もいっぱいいらっしゃいます。さらに、ここで言いたいのは、高齢社会だからこそ、 私たちは今日まで歩んできた大量生産・大量消費の道から抜け出し、もっと心のゆとりを 持った豊かさ、生活の質、文化、これらを重んじる自分のライフスタイルや人生設計を見 直すきっかけとしなければならないと思います。 21 世紀は生活の質や文化・環境を重視する世紀になると思います。バブル崩壊期の10 年間を、日本ではよく「経済面では、失われた10年」と言われています。しかし、この 10年間を、NPO、NGO、さらにボランティアの観点から考えるととても輝かしい10年 だったと思います。これまでの道を反省し、新たなライフスタイルが提案されつつありま す。高齢化問題は避けて通ることはできません。高齢化で世界の先頭を走る日本がアジア 諸国に対して果たす役割や貢献はなんでしょう。アジアの国々に日本の経験や情報を提供 し、特に経済的な豊かさが絶対という考え方から心のゆとりを重視しようとする、日本が 歩んできた紆余曲折を、アジアに発信したらいかがでしょうか。高齢社会のあり方を始め 新しい価値を創造しようとしている日本に、アジアの国々が学ぶものは多いと思います。 この文化メッセジーは是非日本からアジアの国々へと発信されるように、切に願いつつ、 私のお話を終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。