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【2014 年度卒業論文】 地域(早船)生物図鑑の作成
【2014 年度卒業論文】 地域(早船)生物図鑑の作成 CE2011-015 小島 ジャーミー (指導教員:国武 陽子) 摘要:本研究では様々な生物図鑑のタイプについてまとめ、その中で地域図鑑に注目し、その意義と必要条件を考 察した。さらに早船里山をフィールドにして地域図鑑の制作を試みた。図鑑作りを通して早船里山は谷津田、雑木 林、水路、田んぼなど様々な環境が凝縮された場所であり、早船里山に依存していかなければ生きていけない生物 の多さ、また、危険生物や希少な生物が多く判明した。そして保全や今後の調査また環境教育への活用などに有用 な情報が蓄積された。 キーワード:地域図鑑、図鑑、早船里山、里山 1. 生物図鑑について 1.1 生物図鑑とは 広辞苑によると『 「図鑑」とは写真や図を系統的に配列して、説明を加えた書物』と定義されている (1) 。私が 考える生物図鑑とは昆虫や植物を中心に写真等を用い様々な形式で(大型版・教科書版・ポケット版)生物の特徴、 生態、生息地等を解説した書物である。生物図鑑は多岐にわたり様々な種類の図鑑が存在する。 1.2 図鑑の意義 図鑑の意義として大きく二つ挙げられる。 (1)生物の名前を調べたり、知るための手段(2)図鑑を通じて自 然への興味が高めるものである。 (1)に関しては他の書物と比較して正確な情報が得られるものである。 (2)に 関して私が図鑑購入するためにネットサーフィンをしていると意外にも図鑑を購入している人が多いことがわか った。図鑑を購入してその内容に感化されて里山ツアーなどに参加している人もいる (2)。また、子供の教育のた めに購入したはずが父親の方がクワガタなどの育成や採集に夢中になることなどもよくあることである。図鑑は万 人に対して何か心がくすぐるものを持っているのではないだろうかと感じている。 1.3 図鑑の種類 先に述べたが図鑑の種類は多岐にわたる(表1) 。図鑑のタイプの多様性にはまず表現方法の違いがある。例え ばDVDが図鑑に附属してあるタイプのものが最近は増えており、そのDVD内の昆虫の解説の動画を見ながら図 鑑と照らし合わせて楽しむことができる(例えば、虫の鳴き声はこの昆虫のこの部分から発せられるなど) 。今は 静止画だけでなくメディアで手軽に動いた状態を見る事ができる。今はCDや図鑑に関しては鳴き虫に限らず様々 な昆虫の鳴き声を聞くことができる。又、iPhone,iPod,iPad などにデジタルデータを入れる事でどこでも手軽に聞 くことができる。子供向けの図鑑に関しても様々な工夫が凝らされており、例えば、図鑑に記載されている昆虫全 てがシールになっていて、全て剥がす事が可能で子供が好きな場所に貼って楽しむものや(例えば、自分のノート に貼ったり、ゲーム機に貼ったりなど) 、マンガという形でさらに読みやすい図鑑も存在する(例えば小学生など 1 にわかりやすい昆虫採集のやり方や昆虫採集を行う際の注意点など) 。しかけ図鑑などページを開くと昆虫達が飛 び出してくる面白い図鑑も存在する(例えばページをめくると昆虫の絵が飛び出してきたり、葉っぱを食べる姿を 再現されていたりなど) 。 場所別の図鑑になるとその場所に住む生物を徹底的に調べており、その場所に住む生物が一目でわかり、覚えや すい工夫が凝らしてある(例えば、田んぼにこういった生物がいて、それらはどんな役割をしているか、又はその 生物は元々日本にいた在来種なのか外来種なのかを記載してあるなど) 。目的に応じた図鑑になると、日本にいる 蝶だけが徹底的に掲載されていたり、その蝶の生態や分布など詳しく記載されている。別の観点から見ると園芸を 行う家庭などで害虫の名前を知るために購入し、名前を同定(名前を判明させ、その害虫の習性を知る手段として) し、対策を調べるために使うケースもある。 フィールド図鑑やハンドブック図鑑になると、1つはここでしか見られない希少生物や特定の環境でないと生き ていけない生物など、その生物がどれだけ貴重な存在であるかという事を伝えたりする。又、フィールドワークを しながら昆虫を探す時に用いるためこうした図鑑は小さくて軽く持ち運びしやすくなっている。季節別図鑑はその 季節に出会える昆虫を季節事に分類してあり、その季節にどのような生物がいるかを把握して調査し、フィールド ワークが出来る。 2.地域図鑑について 図鑑の種類として地域の生物を対象にした地域図鑑と呼べるタイプがある。本項では地域図鑑に注目し以下に説 明する。 2.1 地域の図鑑を作成することの意義 地域図鑑を作成する意義として以下の 4 点が考えられる。 (1)地域の自然の価値の見える化、 (2)地域の生物 データの網羅的な記録、 (3)地域の環境教育への活用、 (4)情報の受け継ぎと共有、である。 (1)に関しては、その地域を訪れた人に、そこの生物相のあり方、その環境の希少性や価値を知ってもらう。 生物は地域特異的な性質をもち、分布域内でも近隣の場所に生息していない種が特定の場所には生息しているなど ということも多くある。また、発生時期も局所的に異なることも多い。したがって、その地域の環境に注目した生 物情報の掲載ができることが地域図鑑の醍醐味である。 (2)に関しては地域の生物相をデータとして蓄積していく事で、早船里山のどんな生物が増減したか、また、 元々いた生物がいなくなってしまったこと、あるいはまだ存在しているかなどがわかる。元々いた生物の地域的な 絶滅や個体数の減少を情報として明らかにすることで、環境の改良などの保存対策に役立たり一度でも生物がいな くなると元に戻る可能性が少ない事を知ってもらうという役割がある。 (3)に関してはそもそも地域にはどのような生物がいるのかを地域の人々に把握してもらう事である。又環境 教育の一環としてどんな生物相があるのか実際にフィールドへ持って行きながら調べられる事や、危険生物の把握 をすることでより安全にフィールドへ入る事が出来、身近な危険生物も把握し危機回避能力も身に付く。 (4)に関しては(2)で述べたように地域独自の生物が存在していて、その生物相のバランスが崩れていない かを確認するための手段である。例えば私は現在卒業研究で調査しているフィールドに1種でも多くの生物が存続 する事を願いながら後輩に我々が集めた情報をバトンタッチしたいと考えている。 2 表 1 様々な図鑑の種類 (タイプ) 分類群別 地域別 場所別 教育課程別 目的別 季節別 その他 (例) 鳥類図鑑、昆虫図鑑、魚類図鑑 蝶図鑑 (参考) 小学館の図鑑ネオぽけっと昆虫(2010、小学館) 決定版 日本のハゼ(2004、平凡社) 日本産アリ類全種図鑑(2003、学習研究社) 昆虫(野外観察図鑑)(1998、旺文社) 魚(小学館の図鑑NEO)(2003、小学館) 今村光彦 世界昆虫記LNSECTS ON EARTH(1994、福音館書店) 昆虫(学研の図鑑LIVE(ライブ))(2014、学研マーケティング) 鳥の生態図鑑(1993、学研教育出版) DVD付 昆虫(講談社の動く図鑑MOVE)(2011、講談社) DVD付 新版 昆虫(小学館の図鑑NEO)(2014、小学館) 比べて識別!野鳥図鑑670(2014、文一総合出版) ときめくチョウ図鑑(2012、山と溪谷社) 魚の顔図鑑(2004、ファインド) 身近な鳥の図鑑(2009、ポプラ社) 魚の名前(2006、東京書籍) 原色非実用野鳥おもしろ図鑑(2009、日本野鳥の会) 原色日本海魚類図鑑(1990、桂書房) サメガイドブック 世界のサメ・エイ図鑑(2001、ティビーエス・ブリタニカ) カブトムシの百科(1993、データハウス) 小学館の図鑑NEO昆虫シール(まるごとシールブック)(2003、小学館) 昆虫(ポプラディア大図鑑WONDA)(2012、ポプラ社) 新装版山溪フィールドブック⑤ 蝶(2006、山と溪谷社) 海野和男 蛾蝶記(1998、福音館書店) 日本の昆虫1400②トンボ・コウチュウ・ハチ(ポケット図鑑)(2013、文一総合出版) 日本の昆虫1400②チョウ・バッタ・セミ(ポケット図鑑)(2013、文一総合出版) 小学館の図鑑ネオぽけっと 昆虫(2013、小学館) 昆虫(ニューワイド学研の図鑑)(1999、学研) 新・ポケット版 学研の図鑑 昆虫(2002、学研教育出版) 鳥類図鑑(2006、東京書籍) バッタ・コオロギ・キリギリス生態図鑑(2011、北海道大学出版) 成東・東金食虫群落ガイド(2000、山武市教育委員会) ガイドブック 札幌の昆虫(2006、北海道大学図鑑刊行会) 丸の内生きものハンドブック(2013、三菱地所株式会社 環境・CSR推進部) 探そう!ほっかいどうの虫(2006、北海道新聞社) 北海道の野の花(2005、北海道新聞社) 新北海道の花(2007、北海道大学出版会) 東大農場・演習林の生きものたち(2003、東大農場・演習林の存続を願う会 代表宮崎啓子) ~河川の外来種図鑑~(2005、財団法人リバーフロント整備センター) 野山の鳴く虫図鑑(2010、偕成社) 河、田んぼ、海、日本 日本の海水魚(1997、山と溪谷社) 東京湾の魚類(2011、平凡社) 花の虫さがし(1996、福音館書店) いろんな場所の虫さがし(2004、福音館書店) 昆虫 小さな虫たちのせかい(1987、岩崎書店) 田んぼの生きものたち(2011、社団法人 農山漁村文化協会) 日本の野鳥650(2014、平凡社) 日本外来哺乳類フィールド図鑑(2005、旺文社) 日本の外来魚ガイド(2008、文一総合出版) 日本の鳥500 山野の鳥(2000、文一総合出版) 日本の鳥550 水辺の鳥(2000、文一総合出版) 学研の図鑑 世界の昆虫(2004、学習研究社) 学習図鑑 学研の図鑑 生きもののくらし(2007、学習研究社) 学研の図鑑 カブトムシ・クワガタ(1996、学習研究社) 学研の図鑑 昆虫(1970、学習研究社) 学研の図鑑 世界の昆虫(1997年、学習研究社) 学研の図鑑 鳥(1999、学習研究社) 小学館の図鑑NEO 鳥(2002、小学館) 小学館の図鑑NEO 昆虫(2002、小学館) 小学館の図鑑NEO 原寸大 昆虫館(2010、小学館) りったい昆虫館(小学館の図鑑NEOのクラフトぶっく)(2005、小学館) ふしぎ・びっくり?!こども図鑑 むし(2004、学習研究社) 超はっけん大図鑑9 こんちゅう(2003、ポプラ社) 鳥の形態図鑑(2008、偕成社) 原色ワイド図鑑 鳥(2002、学習研究社) ペンギン大図鑑(2008、PHP研究所) こども生物図鑑(2014、河出書房新社) 雑草林で虫さがし(2007、文化出版局) フィールド図鑑、ハンドブック図鑑 身近な昆虫識別図鑑(2013、小川雄一) ハゼガイドブック 改訂版(2013、五百井至) ネイチャーウォッチングガイドブック スズメダイ(2011、誠文堂新光社) 世界カエル図鑑300種(2008、ネコ、パブリッシング) イモムシハンドブック(2010、文一総合出版) イモムシハンドブック②(2012、文一総合出版) イモムシハンドブック③(2014、文一総合出版) 日本原色カメムシ図鑑(1993、全国農村教育協会) 日本原色アブラムシ図鑑(1983、全国農村教育協会) 日本のチョウ(2012、誠文堂新光社) 蛾と蝶の写真図鑑(1996、ヴォーグ社) 道ばたイモムシ、ケムシ(2012、東京堂出版) オサムシー飛ぶことを忘れた虫の魅力(2008、八坂書房) 庭のイモムシ、ケムシ(2011、東京堂出版) 里山の野鳥ハンドブック(2011、NHK出版) 虫こぶハンドブック(2003、文一総合出版) 虫の卵ハンドブック(2013、文一総合出版) フィールドガイド淡水魚識別図鑑(2014、誠文堂光新社) 野鳥の羽ハンドブック(2008、文一総合出版) 鳥の原寸大足型足跡ハンドブック(2012、文一総合出版) 外来鳥ハンドブック(2012、文一総合出版) 里山蝶ガイドブック(2003、ティビーエス・ブリタニカ) 水生昆虫ファイルⅠ(2002、つり人社) 水生昆虫ファイルⅡ(2003、つり人社) 水生昆虫ファイルⅢ(2005、つり人社) 改訂版日本カエル図鑑(1989、文一総合出版) 日本のカエル+サンショウウオ類(2002、山と溪谷社) 365日出会う大自然(2012、誠文堂新光社) カレンダー 水生昆虫大集合(2009、誠文堂新光社) 今森光彦 昆虫記 DAYS OF INSECTS(1988、福音館書店) 365日出会う大自然 野鳥(2012、誠文堂新光社) (小学館の子ども図鑑)きせつの図鑑(2007、小学館) 平野伸明 野鳥記(1997、福音館書店) 日本のカメ・トカゲ・ヘビ(山と溪谷社) 種別同定図鑑 大人のためのバードウォッチング入門(2009、東洋館出版社) 昆虫のクイズ図鑑(NEW WIDE学研の図鑑)(2014、学研教育出版) 寄り鳥見鳥(2010、産経新聞出版) 昆虫交尾図鑑(2013、土井尚) 決定版 日本の野鳥巣と卵図鑑(2011、世界文化社) 改訂新版 日本の野鳥 羽根図鑑(2001、世界文化社) 世界の美しい飛んでいる鳥(2013、エクスナレッジ) 決定版 日本の両生爬虫類(2002、平凡社) 日本の爬虫両生類157(2009、文一総合出版) (図説)鳥名の由来辞典(2005、柏書房) (図説)日本の野鳥(2000、河出書房新社) (図説)川と魚の博物誌(1999、河出書房新社) (図説)日本のゲンゴロウ(1993、文一総合出版) 3 2.2 地域図鑑に求められること 私が考える地域図鑑に求められることそれは以下の5点である。 (1)その地域の生き物を把握できるような情報を掲載すること (2)安全性の具体的な情報を掲載すること (3)地図など地理情報の掲載 (4)地域図鑑だからこその地域独自の生態情報など面白さ (5)地域の自然環境保全への貢献 (1)に関しては地域にどんな生物が存在するか認識してもらう。 (2)関しては毒があるタイプの昆虫など触 れてはいけないものをリスト化する。 (3)に関しては早船里山にはこんなにも様々な環境があり様々な生物相が ある事を理解してもらう。どこに行けば何が見られるかわかり、また生物の生息環境の情報が蓄積され、よりその 環境を守っていこうという意識を持ってもらう。 (4)に関しては独特な図鑑でもあり、そこには生態情報が記載 されている地域独自の面白い図鑑である。 (5)に関しては地域に残った限りない自然を守っていきたいという声 が大きくなってきている。例えば『この都市の中の身近な自然が末永く残ることを願う』(3)などの地域の想いで ある。 2.3 早船里山について 早船里山は千葉県山武市に位置する里山であり水路、谷津田、雑木林、様々な環境がモザイク状に存在している。 水路にはヒメゲンゴロウ、ヒメゲンゴロウの幼虫、ヤゴ、アメンボ、ヌマエビ、メダカ、ドジョウ、外来種ではあ るがサカマキガイ、アメリカザリガニなど水路だけでも多様な生物が見られる。又、その水路の環境は彼らにとっ てオアシスのような存在であり枯れ枝や落ち葉が堆積しているので冬眠も可能である。アオコが大量に発生してい る場所はヒメゲンゴロウやヤゴなどの隠れ家になっていた。1本ずっと続いている水路だが様々な環境が密集して いる。深い場所や浅い場所、水草が豊富に生えている場所など様々である。そのせいか場所によって採取できる生 物がまったく違っていた。 谷津田環境にはメダカ、ヌマエビ、マルタニシ、トウキョウダルマガエル、ハシリグモ、シュレーゲルアオガエ ル、外来種であるアメリカザリガニやサカマキガイなどが生息する。特に田んぼの周りの生態系が豊かで様々なカ エルやトンボ類が集まってきている。ノシメトンボをはじめ、コノシメトンボ、アキアカネ、ナツアカネ、マユタ テアカネトンボ、マイコアカネ、シオカラトンボ(別名ムギワラトンボ) 、ハグロトンボ、チョウトンボ、ショウ ジョウトンボ、コシアキトンボ、オニヤンマなどその姿を見て私はまるで早船里山の水を取り合うかのように感じ た。 雑木林にはバッタ類はヒメバッタ、ツチイナゴ、ヒシバッタなど比較的どこでも見られるバッタが多く存在する。 コウチュウ類はヒゲナガハナノミ、オオサビキコリ、キボシカミキリ、リンゴカミキリ、ナガゴマフカミキリ、ト ラカミキリ、ホソヒョウタンゴミムシなど生態系の役割としては分解者にあたるコウチュウ類が数多く存在した。 又、蛾の幼虫も様々な種類を発見できた。特に食害が酷いフクラスズメの幼虫は体のカラーリングがグロテスクで 簡単に発見できた。このようにわずか 40ha の里山に様々な環境とそこを住みかとする生き物が生息している。 しかし、今早船里山は、様々な環境変化にさらされている。1つは森林と田の境界部に道路が建設され遮断され たこと。2つはそれに伴って土掘りの水路がコンクリート化されることである。そこで私たちは水路がコンクリー 4 ト化され、環境が変化する前に記録を残し今後の今後の変化をみていくためにも図鑑の作成をすることとした。 3.本研究の目的 以上をふまえた、本研究の目的は以下のとおりである。 1. 早船里山のフィールドにその地域の生物図鑑を作成する。 2. 早船里山にはどんな生物が存在するか等生物相の把握。 3. 調査した生物を図鑑にして生態や早船での分布域の魅力などの情報を整理する。 (1)に関しては早船里山という環境がどれだけ貴重であり、そこには様々な生物が生息していることを示したか った。 (2)に関しては、 (1)によりどんな生物が生息しているかを整理し、生物相の把握を行うことで、早船里 山特有生物、または希少生物が存在するか把握する。また訪れた人に早船里山の環境がここに残されている意味と この環境がどれだけ重要なのかを知る。 (3)に関しては各個体の生息情報を整理し、図鑑にする。その情報の中 には毒など危険生物情報も掲載する。 4.早船図鑑作成の方法 4.1 フィールド調査 早船の動物相を明らかにするため、昆虫や水生昆虫、魚類等の水生生物が生息していると思われる水路、谷津田、 雑木林などの環境を主に調査した。調査期間は2014年の4月~10 月であり原則として最低月に2度行った。水 路調査は長さ25cm 幅30cm 網目幅2mm のタモ網を繰り返し入れて、網の中に入った生物について撮れる限り写 真を撮った(小さすぎて撮れない場合はマクロショットが得意な Optio RZ10(PENTAX)を使用) 。捕獲方法はスィ ーピング法(葉などに止まっている昆虫をすくいとる方法であり主にカメムシ、ハエ、トンボ、コウチュウに有効) を行い採取を行った。これで採取したトンボなどは頭部、胸部、腹部の写真を3枚撮り逃がした。トンボの種類に よっては死んでしまうと色が変わってしまう個体が多いため、なるべく捕獲し次第写真を多めに撮る工夫をした。 ビーティング法(植物を棒でたたいて落ちてきた昆虫をとる方法主にカミキリムシ)ではキボシカミキリムシ、ナ ガゴマフカミキリムシ、などを採取した。トラップによる調査(ピットホールトラップというトラップを使って地 表性の昆虫を採取した)ではゴミムシ、アオオサムシなど分解者にあたる昆虫を採取した。しかしピットホールト ラップの中に仕掛けた液体がカルピスであるため、糖質に対して大量のアリが集まっていた。トラップに落ちた昆 虫を採取する際特に注意しなければならないのは毒や匂いであった。ゴミムシは素手で触ると臭い体液をし、4日 間ほど臭いがとれないほど強烈である。アオオサムシは触ると毒があり、水膨れなどになるので注意が必要であっ た。トラップから取り出す際は軍手をしてピンセットで取り出した。トラップを行った経過も記録に残し写真も出 来る限り撮った。現地でわからない昆虫や水生昆虫の場合はジップロックに入れて持ち帰り、図鑑を使って同定し た。見つけ取り法(見つけて網などで採取する方法)では特にチョウやトンボを多く採取した。一度狙った個体は なるべく採取するよう心掛けた。トンボなどは採取する際、運動神経が必要とされるのでかなりの体力勝負である。 トンボを採取する際は悟られないようにジッと気配を消して待つことが採取のポイントである。雑木林での調査は 5 蚊が多いため夏場でも長袖、帽子(なるべく白色)を着用する必要がある。とても暑いが蚊に刺されずにすむ他、 毒性のある植物や昆虫などの対策にもなる。バッタ類、コウチュウ類は捕まえ次第、トンボと同様に頭部、体を撮 って逃がした。蛾の幼虫に関しては触れないように写真を撮影した。又、その蛾の幼虫が食べていた植物の葉と全 体も写真におさめておくと同定作業が比較的容易だった。幼虫に関して同定が難しい場合があり、図鑑にも載って いない場合は家庭菜園の本など参考にすると良く、本研究では「予防と対策!野菜・草花・果樹・庭木の病害虫が わかる本 根本久・善林六朗著」を使用した。同定作業と同時に図鑑の作成も行うため、なるべく自然体の姿の昆 虫達を写真におさめるため写真を撮るのに何時間も粘り撮影した。撮影機具にはデジタルスチルカメラ Cyber-shot DSC-WX300(SONY) 、Optio RZ10(PENTAX)を使用した。 4.2 図鑑作成 早船里山で撮影した写真を日付ごとにUSBメモリー内にフィルダーとして保存していった。その際にわかる昆 虫、水生昆虫、水生生物に関してはできるだけ名前を付けて保存した。図鑑作成には Microsoft Office 2012 Power Point を使った。写真は極力早船里山で自然体の姿が撮れた写真を採用した。様々な成長段階の写真撮影する努力 をしたが全種類は不可能であった。図鑑作成にあたり、体長、生息場所、生息地、分布、出現季節、生態や形態の 特徴、正確な学名を記載することが重要である。コメントでは自分達の苦労話やその昆虫に対する思いを熱く語っ た。 5.早船図鑑 今年1年の結果として早船里山に生息する 184 種の生物について図鑑に掲載した。コウチュウ、トンボ、水生昆 虫担当は共同研究者原地が担当し、チョウ、ハエ、バッタ、貝類、魚類、ヒル類は小島自身が担当した。図鑑は末 尾に掲載する。 6.考察 本研究では様々な生物図鑑のタイプについてまとめ、その中で地域図鑑に注目し、その意義と必要条件を考察し た。さらに早船里山をフィールドにして自ら地域図鑑の制作を試みた。早船里山は谷津田、雑木林、水路、田んぼ など様々な環境が凝縮された場所であり、早船里山に依存していかなければ生きていけない生物が沢山いるという 事がわかった。生物図鑑をまとめていく上で早船に存在する危険生物や希少な生物がどんどん判明し、そして何よ りも保全や今後の調査また環境教育への活用などに有用な情報が蓄積された。又早船里山にわずかに残された様々 な環境が彼らにとって最後の砦であることがわかった。 図鑑作成と同時進行にビオトープ作成も行った。初期の掘っただけのビオトープの状態で、まだ雨水が溜まっ たままの状態の時、真っ先にビオトープに入った生物がシュレーゲルアオガエルであり、さらに産卵の準備までし ていた。あの姿を見た時ビオトープは時期の遅い早いは関係なくもうすでにここからビオトープが始まっているの だと感じた。未完成であるにも関わらずヒメゲンゴロウの幼虫、ヒメゲンゴロウ、ハイイロゲンゴロウ、ボウフラ の仲間、様々なトンボのヤゴなどももうすでに入ってきていた。 ビオトープ作りや図鑑作成を通じて自ら自然への興味や関心がより深まり、自らを環境教育していたとも言える。 昆虫に対する知識も深まり、城西国際大学紀要第 23 巻第 7 号に「早船谷津田の生物相」 (共著)という論文も発表 することができた。さらに図鑑作成を通じて早船里山の生物相の把握がつながったことは、地域の自然の価値を再 6 評価するという地域貢献もできたのではないかと考えている。 この図鑑は今後早船において環境教育の教材としても使ってほしいと考えている。しかし今年度だけで全ての生 物を掲載したというには程遠く、以下の課題が残る。1、特に蛾類やハチ類などの分類群のは掲載が少なく、幼虫 の同定はできたが成虫の写真が撮影できなかったものが多い。2、図鑑に載っていない昆虫や正確な学名が不明な ものが多く残った。これらをふまえて今後図鑑作成に要求されることは正確な同定技術である。まだまだ未完成で あることから卒業後も出来る限り早船里山図鑑の作成を行っていきたいと考えている。 7.あとがき 約1年という短い期間、就職活動を行いながら早船里山を舞台に図鑑作成とビオトープの設計を行った。ビオト ープを設計にあたり様々な方々からの知恵をいただき、ここまでビオトープ設計が遂行できた事が私にとって嬉し かった。しかし早船里山には課題がたくさんあり、私達がビオトープを作った際にも様々な問題が浮上した。ゼミ 生メンバーみんなでその課題に立ち向かう姿勢、そして時にはお互いに意見をぶつけあったりしてそうした中で出 来たビオトープは立派で自慢できるものとなった。又初めてみんなで何か1つの物をやり遂げられた事がすごく嬉 しかった。ビオトープが出来る前からそうだったが1週間に2回ほど大学にいる時間より里山にいる時間が多くな った。私は東京出身なので東京から3時間(電車移動2時間30分、大学から里山までの移動時間30分)かけて ほぼ毎日のように早船里山へ行っていた。都会では味わえない本当の自然が私にとって1番楽しくもあり、勉強さ せられる場所であった。時には講義をすっぽかして早船里山へ向かっている自分もいた。真夏はとても暑くて2L 持参していた水がなくなってしまうほど暑かった。着替えも3着用意し、お弁当は持って行くと暑さで傷んでしま うのでカロリーメイトとスポーツドリンクをリュックに入れて早船里山へ入っていくのだ。今でも夏場の早船里山 の景色が思い浮かぶ。日陰で休憩していると山からの颪風がクーラー冷気のような冷たさだった事を覚えている。 夏場の早船里山の生物のにぎわいはまるで渋谷のスクランブル交差点のようににぎやかでデジカメのバッテリー が毎度毎度2%になるぐらい写真を撮りまくった。山に入ればセミの大合唱が聞こえ、うるさいという概念をくつ がえすほどだった。しかし一方でそのセミ達の一生懸命生きている姿を見ることとなった。例えばセミカビにやら れてしまったセミのその姿は儚くも力強く命がなくても木にしがみついて落ちない。自然界の厳しさとたくましさ を目の当たりにした。秋になるにつれて早船里山は静かになっていく。風も冷たく感じる頃にはいつの間にかカエ ル達の姿がなく、見られるのはメダカとマルタニシ、アキカネぐらいまで減っていった。日に日に行くたびに静か になっていく早船里山を見ているとさびしくなったものだ。私が早船の好きな季節は春~夏~秋にかけてである。 キハダカノコガという昼間に活動する蛾のカラーリングがハチそっくりだったり、トラカミキリも遠くから見たら アシナガバチにしかみえない。夏型、秋型と言って色や変わる昆虫も沢山いる(例えばモンシロチョウ、アゲハチ ョウ、キタキチョウ、キアゲハなど) 。このように多様な種が多様に生きている姿を早船里山に訪れた際には見て ほしい。そして最後に早船里山は人と自然が作り出した自然本来の姿であり、様々な環境が凝縮された最後の砦と 言える場所である。この図鑑や論文を通して見たり、読んだりした方が小さな里山でまだこんなにも自然が残って いて小さな生物が一生懸命生きていると感じてほしいと考えている。 7 謝辞 本研究を遂行するためにあたり、以下の方々にお世話になった。さんむ・アクションミュージアム代表の木下敬 三氏には私達の活動やイベントにおいて助言やサポートしていただいた。パルシステムの原覚俊氏には水田の生物 調査について貴重な助言をいただいた。東金青年の家には2日間連続調査の際に宿泊を提供していただいた。城西 国際大学環境社会学部の国武陽子准教授には図鑑作成や調査及び卒論などに関する助言、指導をいただいた。同江 口元治氏には地域住民と連絡や調査地への移動等で大変尽力していただいた同小川航司には生物調査のノウハウ の指導やサンプル採取調査に対して指導していただいた。以上の方々にこの場を借りて深く感謝申し上げる。そし て学校生活を支えてくれた家族に心から感謝したい。最後にサンプルになってもらった昆虫達のおかげでここまで 図鑑作成が進み、かけがえのない事を沢山学ばせてもらった。この場を借りて心より感謝したい。 引用文献 ① ② ③ 新村出編 広辞苑 第六編 1955 年 岩波書店 P1489 Amazon レビュー:http://www.amazon.co.jp 東大農場・演習林の生きものたち 東大農場演習林の存続を願う会 P1 参考文献 ・小学館の図鑑ネオぽけっと昆虫(小池 啓一,町田龍一郎,2010,小学館) ・決定版 日本のハゼ(瀬能宏,2004,平凡社) ・日本産アリ類全種図鑑(山寺 守,2003,学習研究社) ・昆虫(野外観察図鑑) (1998,旺文社) ・魚(小学館の図鑑NEO) (井田 斉,2003,小学館) ・今村光彦 世界昆虫記 LNSECTS ON EARTH(1994,福音館書店) ・昆虫(学研の図鑑LIVE(ライブ) ) (岡島秀治,2014,学研マーケティング) ・鳥の生態図鑑(山岸 哲,1993,学研教育出版) ・DVD付 昆虫(講談社の動く図鑑MOVE) (養老 孟司,2011,講談社) ・DVD付 新版 昆虫(小学館の図鑑NEO) (小池啓一,小野展嗣,町田龍一郎,田辺力,2014,小学館) ・比べて識別!野鳥図鑑670(永井 真人,2014,文一総合出版) ・ときめくチョウ図鑑(今森光彦,2012,山と溪谷社) ・魚の顔図鑑(デヴィッド・デュビレ,2004,ファインド) ・身近な鳥の図鑑(平野 伸明,2009,ポプラ社) ・魚の名前(川崎 洋,田口 哲,2006,東京書籍) ・原色非実用野鳥おもしろ図鑑(富士鷹 なすび,2009,日本野鳥の会) ・原色日本海魚類図鑑(津田武美,1990,桂書房) ・サメガイドブック 世界のサメ・エイ図鑑(アントネッラ・フェッラーリ著 御船淳訳 2001,ティビーエス・ブリタニカ) ・カブトムシの百科(海野 和男,1993,データハウス) ・小学館の図鑑NEO昆虫シール(まるごとシールブック) (林 将之,2003,小学館) ・昆虫(ポプラディア大図鑑WONDA) (寺山 守,2012,ポプラ社) ・新装版山溪フィールドブック⑤ 蝶(松本 克臣,猪又 敏男,2006,山と溪谷社) ・海野和男 蛾蝶記(1998,福音館書店) ・日本の昆虫1400②トンボ・コウチュウ・ハチ(ポケット図鑑) (伊丹市昆虫館,2013,文一総合出版) ・日本の昆虫1400②チョウ・バッタ・セミ(ポケット図鑑) (伊丹市昆虫館,2013,文一総合出版) ・小学館の図鑑ネオぽけっと 昆虫(小池啓一,小野展嗣,2013,小学館) ・昆虫(ニューワイド学研の図鑑) (岡島秀治,1999,学研) 8 ・新・ポケット版 学研の図鑑 昆虫(高橋秀男,2002,学研教育出版) ・鳥類図鑑(本山 賢司,上田 恵介,2006,東京書籍) ・バッタ・コオロギ・キリギリス生態図鑑(村井 貴史, 伊藤 ふくお,2011,北海道大学出版) ・成東・東金食虫群落ガイド(大場達之,中村俊,「成東・東金食虫植物群落」を守る会,山武市教育委員会,2000,山武市教育委 員会) ・札幌の昆虫(木野田 君公,2006,北海道大学図鑑刊行会) ・丸の内生きものハンドブック(自然環境ひろば 丸の内さえずり館,NPO法人自然観察大学,NPO法人生態教育センター,20 13,三菱地所株式会社 環境・CSR推進部) ・探そう!ほっかいどうの虫(堀繁久,2006,北海道新聞社) ・北海道の野の花(谷口 弘一,三上 日出夫,2005,北海道新聞社) ・新北海道の花(梅沢 俊,2007,北海道大学出版会) ・東大農場・演習林の生きものたち(中西 章,2003,東大農場・演習林の存続を願う会 代表宮崎啓子) ・~河川の外来種図鑑~(外来種影響・対策研究会,2005,財団法人リバーフロント整備センター) ・野山の鳴く虫図鑑(瀬長 剛,2010,偕成社) ・日本の海水魚(大方洋二,小林安雅,矢野維幾,岡田孝夫,田口哲,吉野雄輔,岡村収,尼岡邦夫,1997,山と溪谷社) ・東京湾の魚類(河野博,加納光樹,横尾俊博,2011,平凡社) ・花の虫さがし(藤丸 篤夫,1996,福音館書店) ・いろんな場所の虫さがし(藤丸 篤夫,2004,福音館書店) ・昆虫 小さな虫たちのせかい(長谷川 哲雄,1987,岩崎書店) ・田んぼの生きものたち(神山和夫,渡辺仁,佐藤信敏,2011,社団法人 農山漁村文化協会) ・日本の野鳥650(真木広造,2014,平凡社) ・日本外来哺乳類フィールド図鑑(鈴木 欣司,2005,旺文社) ・日本の外来魚ガイド(松沢 陽士, 瀬能 宏,2008,文一総合出版) ・日本の鳥500 山野の鳥(五百澤日丸,山形則男,山形則男,吉野俊幸,五百澤日丸,2000,文一総合出版) ・日本の鳥550 水辺の鳥(桐原政志,山形則男,吉野俊幸,2000,文一総合出版) ・学研の図鑑 世界の昆虫(岡島 秀治,2004,学習研究社) ・学研の図鑑 生きもののくらし(武田 正倫,2007,学習研究社) ・学研の図鑑 カブトムシ・クワガタ(岡島秀治,1996,学習研究社) ・学研の図鑑 昆虫(岡島秀治,1970,学習研究社) ・学研の図鑑 世界の昆虫(岡島秀治,1997年,学習研究社) ・学研の図鑑 鳥(小宮輝之,1999,学習研究社) ・小学館の図鑑NEO 鳥(上田恵介,柚木修,2002,小学館) ・小学館の図鑑NEO 昆虫(小池啓一,小野展嗣,町田龍一郎,田辺力,2002,小学館) ・小学館の図鑑NEO 原寸大 昆虫館(小池啓一,2010,小学館) ・りったい昆虫館(小学館の図鑑NEOのクラフトぶっく) (神谷 正徳,2005,小学館) ・ふしぎ・びっくり?!こども図鑑 むし(高家 博成,2004,学習研究社) ・超はっけん大図鑑9 こんちゅう(海野 和男,2003,ポプラ社) ・鳥の形態図鑑(赤 勘兵衛,2008,偕成社) ・原色ワイド図鑑 鳥(中村登流,2002,学習研究社) ・ペンギン大図鑑(中村 庸夫,2008,PHP研究所) ・こども生物図鑑(デイヴィッド・バーニー,2014,河出書房新社) ・雑草林で虫さがし(河野 修宏,2007,文化出版局) ・身近な昆虫識別図鑑(海野 和男,2013,小川雄一) ・ハゼガイドブック 改訂版(林公義,白鳥岳朋,2013,五百井至) ・ネイチャーウォッチングガイドブック スズメダイ(加藤 昌一,2011,誠文堂新光社) ・世界カエル図鑑300種(松井正文,2008,ネコパブリッシング) ・イモムシハンドブック(高橋真弓,2010,文一総合出版) ・イモムシハンドブック②(安田 守,高橋真弓,中島秀雄,2012,文一総合出版) ・イモムシハンドブック③(安田守,高橋真弓,中島秀雄,四方圭一郎,2014,文一総合出版) ・日本原色カメムシ図鑑(安永智秀,山下泉,川沢哲夫,高井幹夫,川村満,1993,全国農村教育協会) 9 ・日本原色アブラムシ図鑑(森津孫四郎,1983,全国農村教育協会) ・日本のチョウ(久保田修,2012,誠文堂新光社) ・蛾と蝶の写真図鑑(デービッド・カーター,1996,ヴォーグ社) ・道ばたイモムシ、ケムシ(川上 洋一,2012,東京堂出版) ・オサムシー飛ぶことを忘れた虫の魅力(川那部浩哉2008,八坂書房) ・庭のイモムシ、ケムシ(川上洋一,2011,東京堂出版) ・里山の野鳥ハンドブック(小宮 輝之,2011,NHK出版) ・虫こぶハンドブック(薄葉 重,2003,文一総合出版) ・虫の卵ハンドブック(鈴木 知之,2013,文一総合出版) ・フィールドガイド淡水魚識別図鑑(田口 哲,2014,誠文堂光新社) ・野鳥の羽ハンドブック(高田勝,叶内拓哉,2008,文一総合出版) ・鳥の原寸大足型足跡ハンドブック(小宮 輝之,杉田平三,2012,文一総合出版) ・外来鳥ハンドブック(川上和人,叶内拓哉,2012,文一総合出版) ・里山蝶ガイドブック(新開孝,2003,ティビーエス・ブリタニカ) ・水生昆虫ファイルⅠ(刈田 敏,2002,つり人社) ・水生昆虫ファイルⅡ(刈田 敏,2003,つり人社) ・水生昆虫ファイルⅢ(刈田 敏,2005,つり人社) ・改訂版 日本カエル図鑑(前田憲男,1989,文一総合出版) ・日本のカエル+サンショウウオ類(松橋 利光, 奥山 風太郎,2002,山と溪谷社) ・365日出会う大自然(海野和男,2012,誠文堂新光社) ・水生昆虫大集合(築地琢郎,2009,誠文堂新光社) ・今森光彦 昆虫記 DAYS OF INSECTS(1988、福音館書店) ・365日出会う大自然 野鳥(叶内拓哉,2012,誠文堂新光社) ・ (小学館の子ども図鑑)きせつの図鑑(長谷川康男,2007,小学館) ・平野伸明 野鳥記(1997、福音館書店) ・日本のカメ・トカゲ・ヘビ(松橋 利光,2000,山と溪谷社) ・大人のためのバードウォッチング入門(谷口高司,谷口りつこ,2009、東洋館出版社) ・昆虫のクイズ図鑑(NEW WIDE学研の図鑑) (岡島 秀治,2014,学研教育出版) ・寄り鳥見鳥(高円宮妃久子,2010,産経新聞出版) ・昆虫交尾図鑑(長谷川笙子,2013,土井尚) ・決定版 日本の野鳥巣と卵図鑑(柿沢 亮三,小海途銀次郎,黒田 長久,2011,世界文化社) ・改訂新版 日本の野鳥 羽根図鑑(笹川 昭雄,2001,世界文化社) ・世界の美しい飛んでいる鳥(澤井聖一,2013,エクスナレッジ) ・決定版 日本の両生爬虫類(内山 りゅう,沼田 研児,前田 憲男,関 慎太郎,2002,) ・日本の爬虫両生類157(大谷 勉,2009,文一総合出版) ・ (図説)鳥名の由来辞典(菅原 浩, 柿沢 亮三,2005,柏書房) ・ (図説)日本の野鳥(高野 伸二,2000,河出書房新社) ・ (図説)川と魚の博物誌(渡辺 昌和,1999,河出書房新社) ・ (図説)日本のゲンゴロウ(森 正人,北山 昭,1993,文一総合出版) 10 『早船里山に生息する生物図鑑(全184種掲載の一部例) 』(注) (注) 小島の図鑑原稿を基に、鈴木が編集・調整した。 メダカ(ダツ目アドリアニクチス科メダカ属メダカ)希少種 環境省 RDB(絶滅危惧種Ⅱ類) 千葉県 RDB-B(重要保護生物) 【体長】 :4mm 【生息場所】 :川、小川、 【分布】 :本州、四国、九州 【季節】5~10 月 【特徴】 ペットショップで売られている「メダカ」は基本的に観賞魚 として品種改良されている。しかし今回紹介するメダカは天 然のメダカです。こちらのメダカは「ヒメダカ」と違って野 生児であり、ペットショップと違って風格もスタイルもスマ ートです。 【コメント】 やはり水槽で飼うメダカと常に危険にさらされている環境にいるメダカの緊張感がまったく違う。群れで泳いでい ても無駄がない泳ぎ方。自然のメダカの方が水槽で飼育されているメダカより自由でまた違う姿が楽しめます。 ヤマトシリアゲムシ(シリアゲムシ目シリアゲムシ科シリアゲムシ属) 【体長】 :4mm 【生息場所】 :川、小川、 【分布】 :本州、四国、九州 【特徴】 おしりがクルリとカールしているのが特徴であり、肉食性の昆虫。オスがエサを確保し、メスにプレゼントすると いう変わった習性を持つ。秋型はベッコウシリアゲムシと呼ばれ、赤っぽくなる。 【コメント】 変わった虫がいるもんですね。おしりがクルリと曲がっているなんて特徴的。秋型を撮影できたときは嬉しかった。 コガネグモ(クモ目コガネグモ科コガネグモ属)希少種 千葉県 RDB-C(要保護生物) 【体長】:20~25mm 【生息場所】 :田んぼ、草むら 【分布】 :本州・四国・九州・沖縄 【季節】9~11 月(産卵 7 月~9 月) 【特徴】 メスは20mm以上あるがオスは5mmほどしかない。 【コメント】 草むらかき分けて歩いている時にバッと目の前にこの巣とこの大きさがいたら方向変換しちゃいます。結構迫力あ って怖いんですよね。 スジブトハシリグモ(クモ目キシダグモ科ハシリグモ属) 【体長】 :♀20mm, ♂15~20mm 【生息場所】 :水田、水辺 【分布】 :日本全国 【季節】6~9 月 ←生まれたての子グモ 【特徴】 水辺で生活し文字通り水面を走る事ができる。気温が高い日には水面で体温を下げることもする。 【コメント】 「あっ」と見つけた時にはクモの方もこっちに気づいて子グモを守るために一歩も動きませんでした。子グモを守 る母。なんだかかっこいい!! オオトリノフンダマシ♀ (クモ目コガネグモ科トリノフンダマシ属) 【体長】 :♀10~14mm ♂2~3mm 【生息場所】 :草むら 【分布】 :北海道・本州・四国・九州 【季節】7~10 月 ←卵のう 【特徴】 昼間は葉にとまり、夕方に巣をはる。 【コメント】 昼間にこれを見つけた時はクモには見えませんでした。 ホタルガ(チョウ目マダラ科 Pidorus 属) 【体長】 :25~28mm 【生息場所】 :雑木林、市街地 【分布】 :日本全国 【季節】6~7 月・8~9 月 【特徴】 年に二回発生する昼間に飛ぶ蛾。羽を山形にたたんで止まるのが特徴。ホタルといえど大きさも飛び方もまったく 違う。 【コメント】 本種はホタルガだがホタルガをこれを少しスマートにした別種シロシタホタルガという種類も存在する。 シュレーゲルアオガエル(無尾目アオガエル科アオガエル属 希少種 千葉県 RDB-B(重要保護生物) 【体長】 :メス 30、オス 40mm 【生息場所】 :水田、草むら 【分布】 :本州、四国、九州 【季節】 :4 月~10 月(繁殖期 4 月-6月) ←卵 【特徴】 アマガエルとの見分け方としては目から黒いアイラインがあるのがアマガエルでないのが本種シュレーゲルアオ ガエルである。繁殖期は 4~6 月であぜや水辺の岸辺に泡で包まれた卵を産む。泡で包まれているので触るとプル プルでゼリーっぽい感触。写真正面から左側の写真がシュレーゲルアオガエルの卵である。 【コメント】 捕まえることは簡単だが警戒心が強いのですぐに逃げてしまう。この写真はたまたま友人の腕に飛び乗ってきたと ころを撮影した。アマガエルとの見分けがなかなかつかなかった頃は良く私も間違えていた。 トウキョウダルマガエル(無尾目アカガエル科、アカガエル属) 希少種 環境省 RDB-NT(準絶滅危惧種) 千葉県 RDB-B(重要保護生物) 【体長】 :オス 39mm、メス 43mm 【生息場所】 :あぜ道 【分布】 :本州 【季節】 :4 月~7 月 【特徴】 エサは昆虫類を食べる。ヤスデや小型のカエルなども食べ てしまう。4-7 月頃に水田に寒天質に包まれた卵を年に1 回産む。幼体は雑食で落ち葉や水草を食べる。幼体(オタ マジャクシ)は 7-9 月に変態して成体になる。 【コメント】 水中移動能力と警戒心が高いのでなかなかシャッターチャンスなし。しかし息継ぎに上がって来たところをパシャ リ。鳴き声はンゲゲゲ、ンゲゲゲゲと鳴く。 ニホンアマガエル(無尾目アマガエル科アマガエル属) (要注意生物) 【体長】 :22mm 【生息場所】 :田んぼ、あぜ道、草むら 【分布】 :北海道、本州、四国、九州 【季節】3~11 月 【特徴】 日本の緑の代表といえばニホンアマガエルだろう。吸盤が付 いているのでイネに上り害虫を食べてくれる農家さんには大 助かりである。一方カワイイ顔をしているが実は彼らには皮 膚毒があるので触った後は必ず洗う事。触る分には問題ない カラフルなアマガエル達 が傷ついた手で触ったり、触った手で目をこすると激痛がは 【コメント】 しり、目に入った場合 は失明することもある。 様々な色に擬態するアマガエルはとてもカワイイね。でも毒があるので触ったら必ず手を洗いましょう!! ベニシジミ(チョウ目シジミチョウ科ベニシジミ属) 【体長】 :13~19mm 【生息場所】 :原っぱ、畑 【分布】 :北海道・本州・四国・九州 【季節】3~10 月 【特徴】 地面近くを飛び、いろいろな花でよく吸蜜する。人家周辺 でももっとも普通に見られるチョウのひとつ。幼虫の食草 はスイバ、ギンギン。文字通り橙色がきれいな蝶である。 【コメント】 すばしっこくてなかなかシャッターチャンスがなかったが奇跡の1枚になりました。欲張れば葉がかぶっていなけ ればもうちょっと良い写真になっていたと思います。 キアゲハ(チョウ目アゲハチョウ科アゲハチョウ属) 【体長】 :70~90mm 【生息場所】 :草地 【分布】 :北海道、本州、四国、九州 【季節】4~8 月 【特徴】 キアゲハは草地などに多く飛来する。この写真のキアゲハは夏型。 【コメント】 小学生の頃たくさん家で育てて孵化を見ました。孵化がキレイだったのが印象的で今でも見ると思い出す。