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ぜんそくミニ辞典
ぜんそく Topics せき 咳 ぜんそく 咳ぜんそくは,喘鳴や息苦しさはないものの,乾いた咳だけがつづく病気です.最近,患者さんが 増えていて,長引く咳の原因として最も多い病気となっています. 原因は,ぜんそくと同じく気道の炎症です. 咳ぜんそくは喘鳴や発作を起こすことはありませんが,治療をせずに咳をがまんしていると,典 型的なぜんそくになることがあります. 気管支拡張薬がよく効くので,咳の治療に気管支拡張薬を使って,はじめて咳ぜんそくとわかるこ ともあります. ぜんそくミニ辞典 ― 成人・高齢者編 ― [監修]国立病院機構相模原病院 病院長 秋山 一男先生 高齢者ぜんそく ぜんそくの治療に吸入ステロイド薬が使われるようになって,ぜんそくでお亡くなりになる患者さん は少なくなりました.今では年間2500人を下回るほどに減少しています. 一方で,ぜんそくでお亡くなりになる方の中で,高齢者が占める割合が高くなっていることが指 摘されています. ご高齢の患者さんで,薬の使い方がよくわからない方や,上手く使えない方は,医師に相談して みましょう. また,ご家族にご高齢のぜんそく患者さんがいらっしゃる場合は,薬をきちんと使うことができて いるかどうか見てあげてください.もし,上手に使うことができない場合は,介助をしたり,医師また は薬剤師にご相談ください. on mati Infor [Abbott せき辞典] http://www.sekijiten.jp/ 「せき辞典」は , 咳などのつらい呼吸器症状に悩んでいる患者さんやご家族のため の情 報が詰まったサイトです. 咳を主な症 状とする 3 つの病 気「大 人のぜんそく」 「子どものぜんそく」 「COPD」についてご紹介しています. こちらもぜひ , ご覧ください . 病・医院名 Abbott せき辞典(http://www.sekijiten.jp/)もご覧ください . 2011年6月作成 30D157120 発行:アボット ジャパン株式会社 東京都港区三田 3-5-27 ぜんそくは子どもの病気? ぜんそくはどうして起こる? 大人のぜんそくの 6 〜 8 割は,成人後に発症. 高齢になってから発症する人も. 日本のぜんそく患者さんのうち 65 歳以上の患者さんは 45%にも. ぜんそくというと,主に子どもがかかる病気という印象をもっている方が多いのではないで しょうか? 大人のぜんそく患者さんを対象に「ぜんそくをいつ発症したか」を調べてみると,子ども (0 ~ 9 歳)の頃に発症した人は 2 割程度で,多くの人は成人後に発症しており,高齢になっ てから発症する人もいます. 日本のぜんそく患者さんのうち 65 歳以上の患者さんは,約 45%にも上っています (グラフ). ぜんそく患者さんの年齢分布 ぜんそくは,気道が狭くなって, 空気が通りにくくなる病気. その原因は,症状がないときでも慢性的に 起きている気道の炎症. 呼吸するときに空気が通る通路を「気道」といいます. ぜんそく患者さんの気道には,症状がないときでも炎症が起きていて,粘膜がむくんだ り,粘液がたくさん出たりしています.このような状態の気道は,傷口に水がしみるのと 同じように,わずかな刺激にも敏感になっています. そのため,ぜんそく患者さんがダニ,ハウスダスト,カビ,ペットの毛,花 粉などのアレ ルゲンや,タバコ,排 気ガスなどの 汚 れた空 気などを吸い 込むと,これに気 道 が反 応 して,きゅっと縮んでしまいます.すると,気道に空気が通りにくくなり,咳が出たり,息苦 しくなります. ぜんそく発作のメカニズム 発作の原因となる刺激 ダニ,ハウスダスト,カビ,ペットの毛,花粉,ある種の薬剤,タバコ, 排気ガス,気温の変化,急な運動,かぜ,疲労,ストレスなど 発作の ないとき 発作 厚生労働省:平成 20 年患者調査 症状がないときでも気道には炎症が起きて いて,わずかな刺激にも敏感になっている 2 刺激に反応して,気道が狭くなり, 気道に空気が通りにくくなる 3 ぜんそくの重症度 ぜんそくの症状 せき ぜんめい ぜんそくの主な症状は,咳や息苦しさ,喘 鳴など. ひどくなると,呼吸さえも苦しくなる「ぜんそく発作」に. ぜんめい ぜん そくに か かると,咳こんだり,息苦しくなったり, 「 喘 鳴 」といって 呼 吸とともに “ゼイゼイ” “ヒューヒュー”という音がします.症状がひどいときは,苦しくて動くことも, 横になることもできなくなります.これが「ぜんそく発作」です. ぜんそくが軽症のうちは,症状が出ても軽く,短時間でおさまり,頻度も週に1回かそれ より少ない程 度ですが,重症化すると毎日症状が出るようになり,発 作も頻繁になって きます. ぜんそく発作は,とくに深夜から明け方にかけて起こりやすいのが特徴です.ほかにも, 季節の変わり目など気温差が激しいときや天候が不順なとき,かぜをひいたとき,疲れて いるとき,あるいは運動したときなどに起こりやすいので気をつけましょう. ●季節の変わり目 日本アレルギー学会による「喘息予防・管理ガイドライン」では,ぜんそくの重症度を,症状 の強さや頻度などから4つの段階に分類しています. 症状が起きても週に1回未満の場合は「軽症間欠型」,症状が週に1回以上起きるけれども 毎日ではない場合は「軽症持続型」,症状が毎日あるものの日常生活に支障を来すほどで はない場合は「中等症持続型」,症状が毎日あって,治療をしていても悪くなることがあり, 日常生活にも支障が出ている場合は「重症持続型」 とされます. ぜんそくの重 症 度 重症度 ぜんそく発作が起こりやすいとき ●深夜,早朝 ぜんそくの重症度は,症状の強さや頻度などによって 4 段階に分けられる. ●急な気温の変化 頻度 ぜんそく症状 の特徴 ●かぜをひいたとき ●疲労やストレスが たまっているとき 軽症間欠型 軽症持続型 中等症持続型 重症持続型 週 1 回未満 週 1 回以上だが 毎日ではない 毎日 毎日 症状は 軽度で短い 月 1 回以上 日常生活や 睡眠が 妨げられる 週 1 回以上 日常生活や 睡眠が 妨げられる 日常生活に制限 短時間作用性 吸入β2 刺激薬 頻用がほとんど 毎日必要 治療下でも しばしば増悪 週 1 回以上 しばしば 症状の 程度 ●急に運動をしたとき 夜間症状 月に 2 回未満 月に 2 回以上 日本アレルギー学会「喘息予防・管理ガイドライン」,2009 より一部改変 4 5 ぜんそく治療の目標 毎日の生活の中で気をつけたいこと 発作の予防には,体調の管理が大切 . 室内環境を整えて,発作の原因となるアレルゲンを 遠ざけましょう . 発作を起こさないようにするためには,毎日の生活の中で気をつけたいことがいくつか あります. か ぜ をひ いたり,疲 労 やストレス,睡 眠 不足で 体 調 をくず すと,発 作 が 起こりやすく なるので,日頃から体調管理を心がけましょう. また,ダニやホコリ,カビ,ペットの 毛 ,花 粉などのアレルゲンは発 作 をまねく原 因と なります.こまめに掃除をするなど,室内の環 境を整えましょう. ぜんそくにタバコは禁 物です.患者さんご自身はもちろん,周囲の方にも禁煙・分 煙に 協力してもらいましょう. 発作を予防するために気をつけたいこと ●かぜの予防 ●疲れやストレスをためない ●十分な睡眠 ●バランスのよい食事 ぜんそく治療の目標は, 「健康な人と変わらない生活」. ぜんそくは,きちんと治療をすれば咳や喘鳴などの症状がなくなり,発作を心配することも なく,健康な人と変わらない生活を送ることができます. 日本アレルギー学会による「喘息予防・管理ガイドライン」では,次の7つの項目を治療の 目標にかかげています. ぜんそく治 療 の目標 ①健康な人と変わらない日常生活 ②肺の機能を正常近くに保つ ③夜間・早朝の咳,呼吸困難がなくなり,十分な睡眠がとれる ④ぜんそく発作が起こらない ⑤ぜんそく死の回避 ⑥治療薬による副作用がない ⑦気道のリモデリング (気道の壁が厚くなり,固くなってしまうこと) を防ぐ 日本アレルギー学会「喘息予防・管理ガイドライン」,2009 より一部改変 ここで大切なことは,発作が起きて苦しいと きだけ治療しても,目標には届かないという ことです. 症状や発作がないときでも,生活の工夫をし たり,治療薬をきちんと使いつづけることが 目標への近道なのです. ●禁煙 ●こまめに掃除 ●ホコリがつきやすいものを 置かない ●毛の長いペットを 飼わない 高齢者ぜんそく 上記のように,ぜんそく死を防ぐことは治療目標の1つです. ぜんそくの治療に吸入ステロイド薬が使われるようになって,ぜんそくでお亡くなりになる患者さん は少なくなり,今では年間2500人を下回るほどになりました. しかし,ぜんそくでお亡くなりになる方のうち,高齢者が占める割合は年々高くなっています. ご高齢の患者さんで発作をくり返している方や薬の使い方がよくわからない方は,医師または薬剤 師にきちんと相談しましょう. 6 7 ぜんそくの治療 「長期管理薬」を毎日使って, 発作を起こさないようにコントロール. 発作が起きたときは,速効性の「発作治療薬」を. ぜんそく患者さんの気道には症状がないときにも炎症が起きています (→p.3). そのため,発作が起きたときだけ治療をしても,気道の炎症は治らないばかりか,むしろ悪 化して,再び発作が起きてしまいます. こうしたことからぜんそくでは,発作を起こさないようにするために毎日使う「長期管理 薬」と,発作が起きたときだけ使う「発作治療薬」を組み合わせた治療が行われます. 長期管理薬の主役は炎症をしずめる作用をもつ吸入ステロイド薬で,必要に応じて気道を 広げる作用をもつ長時間作用性の気管支拡張薬やロイコトリエン受容体拮抗薬なども使 われます. 一方,発作が起きたときには,狭くなった気道をすみやかに広げるために短時間作用性の 気管支拡張薬を使います. ぜんそくの主な治療薬 毎日使う 長期管理薬 狭くなった 気道を 広げる 注意事項 ●吸入ステロイド薬(吸入) ●ロイコトリエン 受容体拮抗薬(内服) ●抗アレルギー薬(内服) ●長時間作用性β2 刺激薬 (吸入,貼付) 発作のとき だけ使う 発作治療薬 発作をしずめるための薬 吸入薬 貼付薬 吸入器には 種類があります ●テオフィリン 徐放製剤 (内服) ●長期管理薬は,症状がおさまっても自分の 判断で薬をやめず,指示された通りに続けま しょう . ●短時間作用性β2 刺激薬(吸入) ●発作治療薬は,発作が軽いうちに早めに吸入 しましょう. ●発作治療薬が 1 〜 2 時間おきに必要になった り,発作治療薬を吸入してから 3 時間たって も発作がおさまらないとき,あるいは症状が 悪くなっていくときは,すぐに救急外来を受 診してください. 薬の使い方や使用回数については,医師・薬剤師の指示を必ず守りましょう. 8 ぜんそくの治療には錠剤などの内服薬だけでなく, 「吸入薬」や「貼付薬(テープ剤)」が 使われます. 吸入薬は,薬を直接気道に届けるために,専用の器具(吸入器)を使って薬を吸い込む 薬剤です.貼付薬は,薬を皮膚から吸収させて気道に届けます.薬を気道に届けるルート はそれぞれ違いますが,いずれも気道に薬をしっかり届けるために工夫された形です. これらの薬は,患者さんの年齢や好み,適切に使えるかどうかなどによって使い分けられ ます.吸入薬は,吸入器を正しく使うことができないと,薬の効果が出なくなってしまい ます.一方,貼付薬は使い方が簡単です. なお,吸入薬には,薬剤が霧状のガスになって出てくるタイプ( pMDI) と,細かいパウダー になって出てくるタイプ (DPI)の2種類があり,種類によって吸入器の使い方も違います. 使い方がわからないときや,上手く使えないときは,どのような薬剤が自分に合っているか を医師に相談してみましょう. 吸入薬と貼付薬 発作を起こさないようにするための薬 気道の 炎症を しずめる 吸入薬や貼付薬(テープ剤)で, 薬を気道にしっかり届ける . 薬を霧状のガスや非常に細かいパウダーにしたも のを専用の器具(吸入器) を使って吸い込みます. 薬が気道に直接届くので効果が高く,反対に気 道以外の臓器には薬が届きにくいことから,副作 用を減らすことができます. 薬を含んだテープで,胸,背中,腕などに貼って 使う薬です.薬が皮膚から血液に入り,血液をめ ぐって気道に運ばれるため,肺のすみずみにまで 薬が送り届けられます.使い方が簡単で,子どもや お年寄りにも好まれます. ご高齢の患者さんと,ご家族の方へ 吸入薬を正しく使うことができていますか? ご家族にご高齢のぜんそく患者さんがいらっしゃる場合は,吸入薬をきちんと使うことができてい るかどうか見てあげてください.もし,上手く使うことができない場合は,介助をしたり,医師または 薬剤師にご相談ください. 9 ピークフローで知る自分の状態 ぜんそく治療は段階的.現在の治療で十分に コントロールできないときはステップアップ, コントロールの良い状態が続いたらステップダウン. ピークフローは, 自分のぜんそくの状態を知るための指標. 悪化のきざしを察知できるので,発作の予防にも. 日本アレルギー学会による「喘息予防・管理ガイドライン」では,症状の程度に合わせた 段階的な治療が勧められています. 現状の治療で十分にコントロールできないときは,治療の段階をステップアップして,薬の 量や種類を増やします.反対に,コントロールの良い状況が続いたらステップダウンして, 薬の種類や量を減らします. ただし,薬の増量や減量は必ず医師の指示のもとで行ってください. ピークフローとは,思いきり深く息を吸って,勢いよく吐き出したときの息の最 大 速 度 です.ぜんそくによって気道が狭くなっていると空気が通りにくくなり,ピークフローが低 くなります. ピークフローは, 「ピークフローメーター」とよばれる簡単な測定器を使うと,自分で測 定することができます.毎日,朝と夜に測定し,測定値を記録しておくと,その変化から 自分のぜんそくの状態を知ることができます. 標準値(年齢と身長によって異なる)や自己最高値を基準として,測定値がその80%以上 あれば良好な状 態(グリーンゾーン) ,50~80%のときは悪化しないように注意が必 要 な状 態(イエローゾーン) ,50%未満は発 作が起こりやすい,あるいは発 作 状 態(レッド ゾーン) です. コントロールの良い状態と不十分な状態 コントロール良好 コントロール不十分 (すべての項目が該当)(いずれかの項目が該当) 喘息症状 (日中および夜間) な し 週 1 回以上 発作治療薬の使用 な し 週 1 回以上 運動を含む活動制限 な し あ り 正常範囲内 予測値あるいは 自己最高値の 80%未満 (FEV1 呼吸機能 ※1 および PEF ) ※2 PEF の日 (週) 内変動 20%未満 20%以上 増 悪 な し 年に 1 回以上 コントロール不良 ピークフローによるぜんそくの自己管理 ピークフローメーターには, いくつかの種類があります コントロール不十分の 項 目が3つ以 上 当て はまる ピークフロー (測定値÷自己最高値) ×100 もしくは (測定値÷標準値※) ×100 月に 1 回以上※ 3 ※ 1: FEV1(1 秒肺活量) ) :短時間で可能な限り最大量の息を吐き出したときに,最初の1秒間に計測する肺活量のことで,気管支の狭さ具合の 目安となる. ※ 2: PEF(ピークフローまたは最大呼気流量) :吐く息の最大瞬間風速を示し,気管支の狭さ具合の目安となる. ※ 3:増悪が月に 1 回以上あれば他の項目が該当しなくてもコントロール不良と評価する. 日本アレルギー学会「喘息予防・管理ガイドライン」,2009 80%以上 グリーンゾーン 良好な状態 50〜80% イエローゾーン 悪化しないように注意が必要な状態 50%未満 レ ッド ゾ ーン 発作が起こりやすい,あるいは発作状態 ※ピークフローの標準値は,年齢や身長によって変わります. 10 11