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石油精製・販売業界
CORPORATES JANUARY 29, 2016 RATING METHODOLOGY 石油精製・販売業界 Refining and Marketing Industry 概要 目次: 概要 1 格付対象について 2 格付手法について 4 主要格付要因 6 格付マッピング表の前提と限界、 およびその他の格付上の考慮事項 13 他の格付け上の考慮事項 14 本格付手法は、世界の独立系石油精製・販売会社の信用リスク評価におけるムー ディーズのアプローチを説明し、発行体、投資家、およびその他の市場参加者に、 主要な定量的・定性的なリスク要因がどのように格付結果に影響するかを理解する 一助となる全般的なガイダンスを提供することを意図している。本稿はムーディーズ の格付に反映されるすべての要因を網羅しているわけではないが、精製・販売業 界の格付において、検討する際に通常、最も重要と考えられる定性的な考慮事項、 財務情報・指標の理解に役立つと考える。 結論:マッピング表に基づく 17 格付結果のまとめ 付録 A:世界の精製・販売業界の 格付手法に基づくマッピング表 18 付録 B: 格付マッピング表が 示唆する格付 20 付録 C:精製・販売業界の概観 23 関連リサーチ 24 コンタクト: 東京 03.5408.4100 本稿は、2009 年 12 月発行(ムーディーズ・ジャパン版:2010 年 10 月発行)の「世 界の石油精製・販売業界」を代替するものである。本稿は旧格付手法と同一の中 核となる原則の多くを反映しているものの、精製・販売業界の企業にとって通常最 も重要な格付上の考慮事項をより透明な形で示し、業界の主要な信用ファンダメン タルズをより反映すべく、ムーディーズの分析を精緻化したものである。本格付手法 の発行に伴う格付変更はない。 本稿には、詳細なマッピング表と格付要因がどのように表にマッピングされるかを 示す例を掲載している。マッピング表は、精製・販売会社の信用力の推定に多くの 場合用いる参照ツールを提供する。マッピング表は、精製・販売会社に格付を付与 するにあたり、通常、最も重要とされる要因を示しているが、格付上の全ての考慮 事項を含んでいるわけではない。マッピング表の各要因のウエイトは格付の決定に おける重要性の推定を示しているものであり、実際の重要性は大きく異なることが ある。また、本稿に掲載したマッピング表は過去の実績に基づいたものだが、実際 の格付は将来の予測を織り込んでいる。従って、マッピング表により推定された結 果が、実際の格付と一致しない例は多々ある。 This rating methodology is based on Moody’s Investors Service’s rating methodology titled “Refining and Marketing Industry, (August 28, 2015).” The rating approach described in the Moody’s Investors Service report was adopted on January 29, 2016. ムーディーズ・ジャパン株式会社 CORPORATES 格付マッピング表は、精製・販売業界の格付評価を行う際に、ムーディーズが重要と考える 次の 5 つの要因から構成される。 1. 規模 2. 事業プロファイル 3. 収益性と効率性 4. 財務方針 5. レバレッジとカバレッジ 主要要因は複数のサブ要因で構成される。特定の主要要因またはサブ要因についての発行体 のスコアが最終格付と一致しないことがしばしばあるため、この点が理解しやすいように、付録 B に「アウトライヤー」(マッピング表上の特定のサブ要因のスコアが実際の格付と大きく異なる事 例)について解説した。 本格付手法は、精製・販売業界に対する格付において、考慮すべき全ての要因を網羅したもので はない。格付分析では、本稿では詳細に説明していない全ての業種に共通する要因(株主構成、 経営陣、流動性、企業の組織構成、コーポレート・ガバナンス、カントリーリスク等)や、特定の企 業において重要となりうる要因も考慮している。ムーディーズの格付には、これ以外のマッピング 表に明確に示すことができない定性的な考慮事項や要因が織り込まれる。本格付手法で用いる マッピング表は、それにより推定される結果が実際の格付により近いものとなるような複雑性の 高いものとはしておらず、多くの場合、このセクターの格付において最も重要な要因を簡潔かつ透 明な形で示すものとした。 本稿では特に、次の事項に焦点を当てる。 » 精製・販売業界の格付対象会社の概要 » 格付手法の概要 » 格付のドライバーとなる主要な要因の説明 » 格付マッピング表に含まれない検討事項の考察など、格付手法の前提と限界についてのコメ ント 付録には、マッピング表(付録 A)、格付を付与している発行体にマッピング表を適用した例、およ び各要因について、サブ要因についてマッピング表から推定される結果と実際の格付の間に比 較的大きな差があるケースについての説明(付録 B)1、業界の概観(付録 C)を掲載した。 本格付手法では、信用格付に用いられる分析のフレームワークを紹介する。場合によっては、業 種に固有ではない分析上の考慮事項(短期債務格付、様々な債務クラスやハイブリッド証券の相 対的な格付、ソブリン債の格付が他の発行体に及ぼす影響、他の事業体からの信用サポートの 評価など)に関するレポートを参照している。こうしたクロス・セクター格付手法は、こちらから参照 されたい。 格付対象について 本件は信用格付付与の公表で はありません。文中にて言及され ている信用格付については、 ムーディーズのウェブサイト (www.moodys.com)の発行体の ページの Ratings タブで、最新の 格付付与に関する情報および 格付推移をご参照ください。 2 JANUARY 29, 2016 本格付手法は、石油精製およびその副生成物の各種加工製品(ガソリン、軽油、ジェット燃料等) を主たる事業とする企業に適用される。精製・販売会社は、独立系の大規模企業と小規模企業、 政府保有/支援企業、極めて規模が大きい高格付の企業が出資する発行体で構成されるグルー プである。ムーディーズは世界の精製・販売会社 31 社に格付を付与しており、格付対象債務の 総額は約 400 億ドルである。 ムーディーズが格付する精製・販売業界の発行体は、世界の 10 以上の国に所在している。本格 付手法に基づき格付が付与された発行体の半数以上は米国に所在する。格付対象発行体のコ ーポレート・ファミリー・レーティング(CFR)またはシニア無担保債務の格付は A1 から B3 に分布し、 Baa に集中している。 格付手法:石油精製・販売業界 CORPORATES 次表に精製・販売業界の格付分布を示した。 図表 1 世界の精製・販売業界の格付対象発行体 格付 固有の信用力 またはベースライン 信用リスク評価 Administracion Nacional de Combustibles-ANCAP B1 caa1 Alon USA Partners, LP B1 会社名 見通し 安定的 ウルグアイ 安定的 米国 ポジティブ インド B1 安定的 米国 CITGO Petroleum Corporation B3 安定的 米国 CVR Refining, LLC Ba3 安定的 米国 Deer Park Refining Limited Partnership A2 安定的 米国 安定的 チリ 安定的 米国 ba2 ポジティブ 韓国 Bharat Petroleum Corporation Limited Calumet Specialty Products Partners, L.P. Empresa Nacional del Petroleo Flint Hills Resources, LLC Baa3 Baa3 ba2 b2 A1 国 GS Caltex Corporation Baa3 HollyFrontier Corporation Baa3 安定的 米国 Indian Oil Corporation Ltd. Baa3 ba2 ポジティブ インド IRPC Public Company Limited Ba1 ba3 ネガティブ タイ JX Holdings, Inc. Baa2 安定的 日本 Marathon Petroleum Corporation Baa2 安定的 米国 Motiva Enterprises LLC A2 安定的 米国 Northern Tier Energy, LLC B1 ネガティブ 米国 PBF Holding Company LLC Ba3 ポジティブ 米国 Petroleum Co.of Trinidad & Tobago (Petrotrin) Ba1 ネガティブ トリニダード・トバゴ Philadelphia Energy Solutions R&M LLC B1 Phillips 66 b1 安定的 A3 ba1 米国 安定的 米国 安定的 ポーランド Polski Koncern Naftowy Orlen S.A. Baa3 Reliance Industries Limited Baa2 SK Innovation Co. Ltd. Baa2 baa3 安定的 韓国 S-OIL Corporation Baa2 baa3 安定的 韓国 安定的 米国 baa2 安定的 タイ ポジティブ 1 インド Tesoro Corporation Ba1 Thai Oil Public Company Ltd. Baa1 Turkiye Petrol Rafinerileri A.S. (Tupras) Ba1 安定的 トルコ United Refining B2 安定的 米国 Baa2 安定的 米国 B1 安定的 米国 Valero Energy Corporation Western Refining 格付および見通しは 2015 年 8 月 17 日時点 付録 B のマッピング例には、発行体より単独での信用力がはるかに高いまたは低い親会社の所 有により、格付が大きな影響を受けている非政府系発行体は含まれていない。また、構造転換期 にあり、過去の実績から将来の予測が不可能な発行体も含まれていない。 1 3 JANUARY 29, 2016 Reliance Industries Limited については、自国通貨建て格付の見通しがポジティブ、外貨建て発行体・債務格付の見通し が安定的。 格付手法:石油精製・販売業界 CORPORATES 格付手法について 本稿では、7 つのセクションに分けて精製・販売会社の格付手法を説明する。各セクションの概要 は次の通りである。 1. 格付マッピング表の構成要因の特定と検討 本格付手法の格付マッピング表では、以下の 5 つの主要格付要因に注目する。5 つの主要格付 要因は、要因を詳細に評価するためのサブ要因から構成される。 図表 2 グローバル石油精製・販売業界 主要要因 規模 要因のウェイト 25% サブ要因 サブ要因のウェイト 原油精製能力(千バレル/日) 15% 大規模製油所の数 10% 事業プロファイル 20% 事業プロファイル 20% 収益性と効率性 15% EBIT/総精製量(ドル/バレル) 7.5% EBIT/平均キャピタリゼーション 7.5% 20% 財務方針 20% 財務方針 レバレッジとカバレッジ 20% EBIT/支払利息 5% 有利子負債/EBITDA 5% RCF/有利子負債 5% 有利子負債/キャピタリゼーション 5% 合計 100% 合計 100% 2. 格付マッピング表の主要要因とサブ要因の測定または推定 以下に、各格付要因のスコアリングについての全般的なアプローチを説明し、格付マッピング表 で用いるウエイトを示す。また、これらの要因が信用力の指標として重要な理由も説明する。格付 要因とサブ要因の評価に用いる情報は通常、各社の財務諸表を用いるか(もしくはそれを参考に 算出)、またはその他の情報から導くか、あるいはムーディーズのアナリストが推定する。 ムーディーズの格付は将来を見据えたものであり、将来の財務と事業実績についてのムーディー ズの予想を織り込む。ただし、過去の実績は、企業および比較対象企業の実績のパターンやトレ ンドを把握するうえで有益である。本稿では、格付マッピング表の適用例を示すため、過去のデー タ(過去 12 カ月のデータ、ただしその期間は発行体によって異なることがある)を用いる。定量的 信用指標はいずれも、損益計算書、キャッシュフロー計算書、貸借対照表に対し、構造改革費用、 減損費用、オフバランス項目、売掛債権証券化プログラム、年金積み立て不足、オペレーティン グリース等に関わるムーディーズの標準的調整を加える。 ムーディーズが通常用いる 比率の定義については、“Moody ’ s Basic Definitions for Credit Statistics, User’s Guide“ (June 2011)を参照されたい。ムーディーズの標準的調整については、 “Financial Statement Adjustments in the Analysis of Non-Financial Corporations“(ムーディーズ・ジ ャパン版「事業会社の分析における財務諸表の調整」)を参照されたい。これらのレポートは、ム ーディーズのウェブサイト www.moodys.com の Research and Ratings のディレクトリーから入手可 能である。 本稿では、原則として過去 12 ヵ月の財務データーを使用しているが、格付マッピング表の要因は さまざまな期間を用いて検討することがある。例えば、格付委員会が過去の実績に加え、向こう 数年間の予想業績分析が有用と考える場合もある。 4 JANUARY 29, 2016 格付手法:石油精製・販売業界 CORPORATES 3. 格付カテゴリーへの要因別マッピング サブ要因を推定または評価した後、各サブ要因の評価結果を格付カテゴリー(Aaa、Aa、A、Baa、 Ba、B、Caa)にマッピングする。 4. 格付マッピング表への発行体のマッピングとアウトライヤー 付録 B では、サンプルとなる公開企業が、各主要要因およびサブ要因にどのようにマッピングさ れるかを表で示す。ムーディーズは、特定のサブ要因についての格付マッピング表による推定結 果が、実際の格付より文字格付で 2 カテゴリー以上高いまたは低い場合に注目し、特定のサブ 要因についてそうしたポジティブアウトライヤーおよびネガティブアウトライヤーとなった理由を説 明する。 親会社からのサポート、政府所有、その他の制度的サポートによる格付アップリフトの恩恵を受 ける発行体については、固有の信用力またはベースライン信用リスク評価を、格付マッピング表 に示唆される格付と比較する。 5. 格付マッピング表の前提と限界、マッピング表に含まれない考慮事項 このセクションでは、実際の格付に対し、格付マッピング表を用いる限界について説明する。格付 マッピング表には含まれないが格付を決定する際に重要となりうる追加的要因や、格付手法全般 における限界と主な前提について説明する。 6. 格付マッピング表が示唆する格付の決定 格付マッピング表が示唆する格付を決定するにあたり、ムーディーズは、各サブ要因のスコアを 次の格付スケールに基づいて数値に変換する。 図表 3 Aaa Aa A Baa Ba B Caa Ca 1 3 6 9 12 15 18 20 各サブ要因の数値スコアには、当該サブスコアのウエイトが乗じられ、それらが合計されてウエイ ト適用後のスコアが決定される。次に、ウエイト適用後の合計スコアが、次の表に基づいて数値 付加記号付き格付にマッピングされる。 図表 4 格付マッピング表が示唆する格付 5 JANUARY 29, 2016 格付マッピング表が示唆する格付 要因別スコアの加重平均 Aaa x < 1.5 Aa1 1.5 ≤ x < 2.5 Aa2 2.5 ≤ x < 3.5 Aa3 3.5 ≤ x < 4.5 A1 4.5 ≤ x < 5.5 A2 5.5 ≤ x < 6.5 A3 6.5 ≤ x < 7.5 Baa1 7.5 ≤ x < 8.5 Baa2 8.5 ≤ x < 9.5 Baa3 9.5 ≤ x < 10.5 Ba1 10.5 ≤ x < 11.5 Ba2 11.5 ≤ x < 12.5 Ba3 12.5 ≤ x < 13.5 格付手法:石油精製・販売業界 CORPORATES 図表 4 格付マッピング表が示唆する格付 格付マッピング表が示唆する格付 要因別スコアの加重平均 B1 13.5 ≤ x < 14.5 B2 14.5 ≤ x < 15.5 B3 15.5 ≤ x < 16.5 Caa1 16.5 ≤ x < 17.5 Caa2 17.5 ≤ x < 18.5 Caa3 18.5 ≤ x < 19.5 Ca x ≥ 19.5 例えば、加重平均スコアが 11.7 の発行体の場合、格付マッピング表では Ba2 となる。同様の手順 で格付マッピング表の示唆する格付を導き出し、サンプル例において示している。 7.付録 付録では、過去の財務情報に基づいて格付マッピング表から推定した格付の例を示すとともに、 業界の信用リスクについてのコメントおよび洞察を述べる。 主要格付要因 精製・販売業界の分析では、次の 5 つの主要格付要因に注目する。 1. 規模 2. 事業プロファイル 3. 収益性と効率性 4. 財務方針 5. レバレッジとカバレッジ 本稿のマッピング例では通常、ムーディーズの標準的調整を加えた過去の財務情報を用いる。 要因 1:規模(ウェイト 25%) この要因を重視する根拠 規模は非常に重要な格付要因である。規模の大きい精製・販売会社は、より多くの財務資源を有 し、より多角化されている傾向があり、それによって変動性および信用リスクを低減することが可 能である。 大規模な精製能力と複数の大規模精製設備を有する会社は通常、事業および地理面での分散 度も高い。例えば、複数の製油所や大規模な製油所を保有していれば、マージンの変動に合わ せて原油供給源、精製量、油種構成を調整できる幅が広がる。また、大規模であれば、良好な時 期だけでなく、サイクルを通じて資本市場にアクセスすることが可能となる傾向がある。 原油精製能力 この指標は、原油の種類や、精製される製品の種類を問わず、精製会社の 1 日当たりの原油精 製能力総計を把握するものである。 過剰生産能力の影響を受けやすい業界では、事業の規模自体は許容可能なリターンを保証する ものではないが、石油精製は生産量により収益性が左右される事業であり、大きな割合を占める 固定費において規模の経済が効く。大規模な能力を有する会社は、小規模の会社に比べ、原油 その他の原料調達におけるボリューム・ディスカウントの交渉力が高い。また、パイプラインやター ミナルなどの輸送設備を保有していることが多く、効率的に市場に製品を供給できる。 6 JANUARY 29, 2016 格付手法:石油精製・販売業界 CORPORATES 大規模製油所の数 ムーディーズは、10 万バレル/日を超える原油精製能力を持つ設備を大規模製油所と定義してい る。また、ムーディーズは精製設備における余剰トレインの数も考慮する。これは、複数のトレイン を備えた大規模設備には余剰能力があり、予定外の稼動停止が発生した場合、その影響を緩和 することができるからである。例えば、2 つの完全なトレインを持つ、精製能力 50 万バレル/日の 精製設備であれば、大規模設備 2 つに相当すると見做す。 大規模製油所では、規模の経済によって単位あたりのコストを削減し効率性を改善できるという 利点があり、小規模製油所と比べ、精製マージンが低位にある時期でも収益性を維持できる可能 性が高い。また、大規模製油所は、能力増強や設備改良の面でも選択肢が多く柔軟性が高く、そ れが信用力にプラスとなりうる。 オペレーション面での多角化が進んだ会社は、この事業に固有の不測の下降期にも対応できる 優位性をもつ。一方、製油所が 1 箇所のみの会社は、自然災害(洪水、ハリケーン)や、一部の 加工設備での火災や漏出などの事故、ストライキにより、長期間の停止・閉鎖、それに伴うキャッ シュフローの喪失に見舞われる。 格付マッピングの評価方法 規模は、原油精製能力(千バレル/日)および大規模製油所の数を用いて測定(将来の見通しに ついては推定)される。 図表 5 要因 1 (25%) サブ要因の ウェイト Aaa Aa A Baa Ba B Caa Ca 原油精製能力(千バレル/日) 15% ≥3,000 2,000 3,000 1,000 2,000 500 - 1,000 250 - 500 50 - 250 25 - 50 <25 大規模製油所の数 10% ≥15 9 - 14 6-8 3–5 2 1 0 および複 0、1箇所の 数の小規 小規模製 模製油所 油所 要因 2:事業プロファイル(ウェイト 20%) この要因を重視する根拠 事業プロファイルは、精製・販売会社の業績、競争力、長期的な持続可能性のばらつきを示すも のである。発行体の製油所の特徴および事業環境の強みに注目する。事業プロファイルの評価 に含める要因としては、(i)市場の分散度とファンダメンタルズ、(ii)油種構成の質、(iii)原料調達の 柔軟性、(iv)川下統合、(v)規制環境が挙げられる。精製・販売セクターには本質的に変動性・循環 性があるが、同セクターの発行体には、事業プロファイルのこれらの要因において顕著な差がみ られることがある。 市場の分散度とファンダメンタルズ ムーディーズは、国内外の最終需要家の分散度と性質、市場における精製製品の需要構造、価 格動向に有利となる場合もならない場合もある、ニッチ市場・規制市場・競争の熾烈な市場に対 するエクスポージャーの度合いを考慮する。また、より有利な価格動向を支えるものであれば、地 域における市場地位も考慮する。 最終需要家の分散度が高ければ、キャッシュフローの変動性抑制に寄与しうる。季節性、マージ ンの特徴、需給構造、規制、その他の要因は、市場や国によって異なることがある。例えば、精製 会社が少なく、価格優位性があり、パイプラインの制約から輸入による競争圧力が弱いニッチ市 場で地位を確立していれば、キャッシュフローにプラスとなりうる。 油種構成の質 ムーディーズは、高級品得率(中質留分、特殊潤滑油、ガソリン、高い環境基準を満たす製品の 割合)、および低級品得率(燃料油、環境負荷の高い製品の割合)の度合いを検討する。また、油 種構成に対する需要構造や、油種構成の柔軟性も考慮する。通常、最高級品からは軽油や潤滑 7 JANUARY 29, 2016 格付手法:石油精製・販売業界 CORPORATES 油が得られ、残油得率は小さくなる。処理能力が中位の製油所ではガソリン留分得率が相対的 に高い。処理能力が低位の製油所では通常、残油得率(環境負荷の大きい油の割合)が高くなる。 製油所の製品得率に高付加価値製品の割合が高いほど、製油所の複合度が高く(より多くの精 製設備を有し)、精製製品の価値が高い。残油の割合が大きい製油所は、油種構成が中・高級 留分およびガソリンで構成される製油所よりも売上高が小さくなる。しかし、市況や、軽質油・重質 油の相対的な価格差によっては、複合度の高い製油所が必ずしも、業界サイクルにわたって最も 高い利益率を確保できるとは限らない。同様に、複合度の低い製油所でも、ニッチ市場での地位 を確立していれば、大規模で複合度の高い製油所より利益率が高くなることもある。 原料調達の柔軟性 ムーディーズは、発行体が、各種の原油を有利な条件で調達できるか、各種の原油を処理できる か(処理過程が複雑で高い処理能力を要するため)、輸入に依存しているかを検討する。また、発 行体が他社に対して調達コスト面で優位にあるかどうかも考慮する。 原料費は、原油価格の全般的な水準、製油所の構成(製油所内の精製設備)に基づき処理可能 な原油の種類(油種構成)、製油所の立地(拡大する原油生産地、内陸、川上、港湾の近く等)、 輸送費用に左右される。ムーディーズは、精製会社の原油調達先が十分に分散されているかど うかを考慮し、特定の調達先からの調達が不可能になったり短期間内に大幅に減少する可能性 がある場合に、操業停止を余儀なくされることがないかを検討する。また、精製会社の相対的な 競争力とエネルギーコストを検討する。精製会社にとって、エネルギーコストは原油コストに次い で大きいコストである。また、地域内で原油供給源と統合された精製設備を有する精製会社は、 原油を輸入に依存しなければならない精製会社に比べて、輸送費用が小さくなる。一方、成熟し た、あるいは生産量が減少している地域の原油生産に依存している場合、精製会社は供給リス クおよび利益の悪化に見舞われる可能性がある。 川下統合 ムーディーズは、精製会社の事業が、小売販売、石油化学資産、川中物流インフラとどの程度統 合されているかを分析する。 精製事業と、小売販売網や、石油化学事業との経済的統合は、精製会社の収益およびキャッシ ュフローの多様化に寄与しうる。パイプライン、ターミナル、車両、タンカー、貯蔵設備、処理・積出 設備といった大規模な川中物流インフラを有していれば、原油調達、各種精製製品の最終需要 家への供給、追加的な価値および第三者からの利益の源泉のいずれの面でも有利となりうる。 川下統合がなされていれば、仲介業者が介在せず、能力過剰時の値引き販売の必要性が小さく なる。また、原油価格の変動に伴う仕切価格(卸価格)の変動が小売価格に反映されるまでには 時間がかかるため、販売事業は精製事業と比べ、収益の安定性が高い傾向がある。小売販売部 門を有していない精製会社は通常、大規模な小売事業を有する会社よりマージンの変動性が高 い(最高水準がより高く最低水準がより低い)。 規制環境 ムーディーズは、政府の規制および事業環境が、発行体の長期的な業績にとって、有利か、中立 的か、不利かを検討する。規制対応に高水準の支出が必要か、有効なコスト転嫁に関してどのよ うな政府方針があるか、参入障壁や輸入に対する保護があるかも考慮する。 政府規制が、精製会社の信用力を支える場合も、中立的な場合も、圧迫する場合もある。世界の 精製・販売業界に対する環境規制は次第に厳しくなっており、資産に対する大規模な投資を行う よう求める一方で、高い価格での価格保証の形で必要な補償を行わない状況となっている。この ような、リターンが期待できない、あるいは低い投資の決定により、精製会社はしばしば、投資を 実行するか、あるいはより厳格な規制を満たさない製油所を閉鎖するかの選択を迫られている。 例えば、米国、特に環境トレンドの先行的な目安となるカリフォルニア州では、厳しい環境規制が 課され、それにより、業界では多額の強制的な設備投資が求められ、精製会社の事業費用が上 昇している。 政府の価格政策も、精製会社の信用力に影響を及ぼしうる。例えば、中国、ブラジル、インドとい った国々では、政府が消費者保護の目的から価格統制を行い、景気拡大やインフレに伴う市況 8 JANUARY 29, 2016 格付手法:石油精製・販売業界 CORPORATES 商品価格の高騰によるマイナスの影響を低減している。厳しい政策圧力により、精製会社は自主 的に精製製品の価格を引き下げる(あるいはタイムリーな引き上げを抑制する)ことがある。 参入障壁または輸入に対する保護も、精製会社が市場でどのような位置付けにあるかを示唆しう るため、考慮する重要な要素である。例えば、韓国では、国内への石油製品の安定供給を確保 するための、政府によるインフラ規制が極めて複雑であることにより、新規参入が阻害される。 ポーランドなどのように、輸入依存度の高い国々では、政府規制により、精製・販売会社が精製 製品の最低備蓄を維持することを求められる。それにより、高水準の運転資本が必要となり、多く の場合、負債による調達が行われている。 格付マッピングの評価方法 事業プロファイルのカテゴリーは A を上回ることはない。精製・販売セクターは固有の循環性およ び変動性、資本集約性、環境・法的リスクを伴うことから、そのリスクが Aa や Aaa に相当するとは みなされない。 ムーディーズは、発行体が特定のカテゴリーに示された特性に完全に合致するとは考えていない。 ムーディーズはカテゴリーに最も合致することを基準として、この要因のスコアを決定する。弱い 要素があればスコアの水準が制約される傾向がある。特に、市場の多様性が限定的である場合 (特に事業多角化の度合いが限定的であることに起因する場合)、または川下統合が限定的であ る場合は、いずれもキャッシュフローの安定性にマイナスの影響を及ぼしうることから、全体のス コアに影響を与える可能性がある。また、不利な、あるいは脅威となる規制環境に対するエクス ポージャーが大きい場合も、スコアを制約する可能性がある。図表 6 図表 6 要因 2: 事業プロファイル (20%) サブ要因の ウエイト 事業プロ ファイル 20% Aaa Aa A Baa Ba B Caa Ca 非常に良好 良好 平均的 平均以下 弱い 圧迫されて 業界リス 業界リス いる クは Aaa クは Aa 格 非常に良好な市 良好な市場の多 中位の市場の多 限定的な市場の多 弱い市場の多 格に相当 に相当し 場の多様性とファ 様性とファンダメ 様性とファンダメ 様性とファンダメン 様性とファンダ 非常に弱い市 ンダメンタルズ、 ンタルズ、質の ンタルズ、良好な タルズ、質の低い メンタルズ、弱 場の多様性と ない。 しない。 非常に質の高い 油種構成、非常に 高い原料調達の 柔軟性、広範な川 下統合、支援的な 規制環境 高い油種構成、 高い原料調達の 柔軟性、大幅な 川下統合、支援 的あるいは中立 的な規制環境 油種構成、中程 度の原料調達の 柔軟性、中程度 の川下統合、中 立的な規制環境 油種構成、限定的 な原料調達の柔軟 性、限定的な川下 統合、中立的ある いは不利な規制環 境 い油種構成、 弱い原料調達 の柔軟性、弱 い川下統合、 不利な規制環 境 ファンダメンタ ルズ、非常に 弱い油種構 成、非常に弱 い原料調達の 柔軟性、川下 統合の不在、 脅威となる規 制環境 要因 3:収益性と効率性(ウェイト 15%) この要因を重視する根拠 収益性および効率性の指標は、市況商品事業である精製・販売セクターの経営陣および投資家 にとって重要である。基本的に、精製会社の収益性と収益性が安定していれば、業界の環境に かかわらず今後も継続企業として存続できることを示している。 精製会社の収益性のトレンドを分析することによって、様々なマージンの変動サイクルを通して収 益とキャッシュフローを左右する要因を特定することができ、事業の効率性と精製・販売資産の質 について有益な示唆を得られる。このような要因が把握できれば、精製会社の資産の収益力と、 将来にわたる収益の維持に必要とされる設備投資を行う能力について、ムーディーズは総合的 な意見を形成することが可能になる。また、効率性指標は、企業の負債による調達の影響を反映 し、多額の設備投資額を織り込む。 製油所の粗利益(クラック・スプレッド)とは、精製製品の価格と原料コスト(80%以上が原油コス ト)の差である。しかし、ベンチマークのクラック・スプレッドは、製油所の収益性を必ずしも適切に 9 JANUARY 29, 2016 格付手法:石油精製・販売業界 CORPORATES 表わしているとは限らない。低価格の製品(副産物)で発生する損失や、製油所によって発生する 可能性のある原油または製品の格差、その他の現金ベースの事業コストが考慮されていないか らである。そのため、一般的なクラック・スプレッドに含まれる不要な情報を取り除くために、製油 所で精製される 1 バレル当たりの実現された収益性に着目することが重要である。 サイクルを通じて、競争力のある収益性と効率性を確保するには、精製・販売会社は、最適な設 備投資水準を保ちつつ、無駄のないコスト構造を維持し、現金ベースの事業コストをコントロール する必要がある。精製事業はオペレーティング・レバレッジが高く、精製量に左右されることから、 精製会社のコスト構造と、計画外の操業停止期間を最短にとどめるような製油所の操業管理の 実績にもムーディーズは焦点をあてる。 精製会社は資本集約度が高く、維持費も高い。定期的な維持の他、4-5 年おきに、より広範な補 修が必要となる。また、環境規制にも対応しなければならない。精製会社の製品構成を改善し、 製品得率を高め、原油調達コストを低減するための戦略的プロジェクトには、多額の資金が必要 となることがある。 各社の全体的な収益性および効率性に加えて、製油所ごとの収益性の分析が、特に比較的資 産の少ない小規模精製会社の場合、重要であるとムーディーズは考えている。製油所別の分析 は、製油所の地理的な特性を考察することや、操業実績や収益性を改善するために将来設備投 資を行う必要性があるかどうか、特定の製油所がマージン変動の影響を他の製油所よりも受け やすいかどうか、マージン縮小が長期化するとみられる場合、その製油所が操業停止の対象に なるかどうかを評価するのに役立つ。また、精製設備が債務の担保となった場合の製油所の評 価にも役立つ。 ムーディーズは信用力を評価する相対的な基準であることから、精製会社の収益性を地域およ び海外の競合他社と比較し、異なる精製マージン水準における相対的なパフォーマンスを評価す る。収益性と効率性の指標には、精製業界のサイクルに沿った変動性および循環性がある。ム ーディーズの分析において重要な要素は、サイクルを通じた各社間の相対的なランキングである。 格付マッピングの評価方法 収益性と効率性の要因は A 格を上回ることはない。精製・販売セクターは固有の循環性および 変動性、資本集約性、環境・法的リスクを伴うことから、そのリスクが Aa や Aaa に相当するとはみ なされない。 EBIT/総精製量 ムーディーズは、発行体の 1 年間の単位当たりの連結 EBIT(必要に応じ、その米ドル換算額)を 用いる。小売販売、石油化学事業、他の非精製事業を除く精製事業のみの EBIT は、継続的なベ ースでは公表されていないため、用いない。ムーディーズは精製会社の EBIT の金額よりも、単位 当り EBIT を評価する方が有用であると考えている。そこで、EBIT(精製事業のみではなく発行体の 全事業からの収益を含む)を全製油所の総精製量(精製量とは、年間に製油所で精製される原 油および他の原料の量) で除する。この単位当り EBIT を用いれば、精製能力の差による数値の 歪みを取り除くことができ、より公正な精製会社間の比較が可能になる。例えば、ある精製会社 は EBIT の金額では他社を上回るが、単位当り EBIT でみた収益性では劣ることもあり得る。 精製ユニットの粗利益と現金ベースの事業コストも有用な評価基準であるが、各社は競争上の理 由からこのデータを公表しないことが多い。データが公表される場合でも、精製マージンや小売マ ージンの算出方法が会社によって異なることが、データの比較を困難にしている。補修コストを資 産計上する精製会社の場合、ムーディーズはこれらのコストを営業費用とみなし、EBIT を調整す る。また、原油在庫と製品在庫の価値の変動を考慮するために、非現金ベースの棚卸資産損益 について EBIT を調整し、ムーディーズの標準的調整手法にしたがって他の項目についても EBIT に調整を加える。 10 JANUARY 29, 2016 格付手法:石油精製・販売業界 CORPORATES 図表 7 要因 3:収益性と効率性(15%) サブ要因の ウェイト Aaa Aa A Baa Ba B Caa Ca $1 - $2 $0 - $1 <$0 4% - 7% 0% - 4% <0% EBIT/総精製量(ドル/バレル) 7.5% 業界リスクは Aaa 格に相当 しない。 業界リスクは Aa 格に相当 しない。 ≥$8 $4 - $8 $2 - $4 EBIT/平均キャピタリゼーション 7.5% 業界リスクは Aaa 格に 相当しない。 業界リスクは Aa 格に相当 しない。 ≥15% 12% - 15% 7% - 12% 要因 4:財務方針(ウェイト 20%) この要因を重視する根拠 財務リスクに対する経営陣と取締役会の許容度は、債務水準、信用力、資金調達・資本構成にマ イナスの変化が生じるリスクに直接影響を与えることから、格付上の重要な決定要因である。 財務方針の評価には、財務リスクを監視する取締役会および経営陣の許容度と、将来的な会社 の資本構成の方向性も対象に含める。また、その領域における公的なコミットメントや、コミットメ ントの堅持に関する実績、目標達成能力に対するムーディーズの見方も考慮する。 財務リスク許容度は、投資および資本配分の基準となる。経営陣が信用プロファイルの維持・改 善改善にコミットするとの見通しはしばしば、格上げを支える必要要件となる。例えば、ある企業 が、格付カテゴリーで想定される柔軟性を高めても、その柔軟性を、戦略的買収、株主還元、スピ ンオフ、その他のレバレッジ取引に使用すると考えられる場合には、当該企業を格上げしないこと がある。一方、経営陣が、信用指標を取引以前の水準まで回復させることを重視し、過去の行動 でそうしたコミットメントを一貫して示してきた実績があれば、信用格付の範囲内である程度のレ バレッジ取引の影響を吸収できる可能性がある。 格付マッピングの評価方法 ムーディーズは、発行体の目標とする資本構成や信用プロファイル、過去の実績、コミットメントの 実行を評価する。景気サイクルの様々な局面での、経営陣の事業実績やキャッシュフローの使途 に着目する。また、信用市場や流動性環境の変化、法的措置、競争上の課題、規制・環境面での 圧力といった主要課題への経営陣の対応にも着目する。 M&A に対する経営陣の選好も、取引のコスト、種類、資金調達に関する判断に注目して検討す る。買収の頻度や重要性、過去の資金調達方法も考慮する。負債調達による買収、あるいは信 用力を変化させる買収の実績は一般的に、この要因のスコアの低下につながる。 また、企業およびその所有者の、株主還元と債権者利益のバランスに関する過去の実績も考慮 する。債権保有者より株主利益を優先させてきた実績があれば、この要因のスコアリングではネ ガティブに判断される。 ムーディーズは、この要因を、精製・販売セクターの相対的な事業リスクの高さ(固有の変動性・ 循環性、高水準の必要運転資本等)に照らして検討する。親会社または制度に基づく財務支援 の可能性は、格付マッピング表には反映されないが、格付分析には織り込まれる。 11 JANUARY 29, 2016 格付手法:石油精製・販売業界 CORPORATES 図表 8 要因 4:財務方針 (20%) サブ要因 のウェイト 財務方針 20% Aaa Aa A Baa Ba B Caa Ca 極めて保守 的な財務方 針をとるとみ られる。非常 に安定した財 務指標。長期 にわたる非常 に強固な信 用プロファイ ルの維持へ のコミットメン トを表明。 非常に安定した 保守的な財務 方針をとるとみ られる。安定し た指標。格付変 更につながるイ ベントリスクが ほとんどない。 長期にわたる 強固な信用プロ ファイルの維持 へのコミットメン トを表明。 債権者の利益を 守る予見可能な 財務方針をとる とみられる。ある 程度のイベントリ スクがあるが、レ バレッジへの影 響は小さく一時 的なものとみら れる。強固な信 用プロファイル への強いコミット メント。 債権者の利 益と株主の利 益を均衡させ る財務方針を とるとみられ る。負債調達 による買収、 あるいは株主 還元が信用 プロファイル の悪化につ ながるリスク が幾分ある。 債権者より株 主を優先する 財務方針をと るとみられる。 株主還元、買 収、その他の 大幅な資本構 成の大幅な変 更を要因として 財務リスクが 平均を上回 る。 債権者より株 主を優先する 財務方針をと るとみられる。 株主還元、買 収、他の資本 構成の大幅な 変更を要因と する財務リス クが高い。 経済環境が 変化した際 に、債務再編 リスクの高ま りにつながる 財務方針をと るとみられ る。 良好な経済 環境下でも、 債務再編リス クの高まりに つながる財務 方針をとると みられる。 要因 5:レバレッジとカバレッジ(ウェイト 20%) この要因を重視する根拠 レバレッジとカバレッジは、企業の財務の柔軟性と長期的な存続可能性を示す指標である。財務 の柔軟性は、精製・販売会社が業界が底にある局面に対応するうえで重要である。精製・販売会 社にとって、負債による調達への過度の依存は信用力にマイナスである。これは、同セクターが、 マージンおよびキャッシュフローの突然の低下に左右されやすく、事業の資本集約性が極めて高 いためである。 従って、ムーディーズは、精製会社が、精製サイクルを通じ、キャッシュフローによって負債を返済 できる度合いを検討する。ムーディーズの分析では、運転資本必要額、配当、設備投資も考慮に 入れる。精製会社が、定期的なメンテナンスや補修を行わない、あるいは長期間にわたり延期す る余地は限られている。精製会社にとってこれらは確実なパフォーマンスを維持するために必要 不可欠である。一方、能力拡大またはボトルネック解消のためのプロジェクトへの戦略的な投資 の抑制は、メンテナンスおよび環境規制対応のために必須となる設備投資の抑制より容易である。 しかし、能力拡大のためのプロジェクトがいったん実行された後に、それを中止する柔軟性は低 い。 この格付要因は以下の 4 つのサブ要因から構成される。 EBIT/支払利息は、営業利益から利息や他の固定費用を支払う能力の評価に用いる。 有利子負債/EBITDA は、債務履行能力とレバレッジを示す指標で、精製・販売セクターでは、相対 的な財務力を示す大まかな目安として用いられる。 リテインド・キャッシュフロー(RCF)/有利子負債は、債務元本を返済する能力を示す指標である。 債務残高比での、運転資本増減前および配当支払い後のキャッシュフロー生成を測定する。 一部の独立系精製会社は定期的な配当を実施していない。しかし、精製会社のキャッシュフロー の変動性が高いこと、およびそうした高い変動性を認識しながら、最終手段としての場合を除き、 多くの精製会社が配当削減に消極的なことから、配当を実施している精製会社については配当 を「固定費用」とみなす。 有利子負債/キャピタリゼーションは、発行体の資本構成において負債および負債類似債務がど の程度の割合を占めるかの指標である。この指標はバランスシートに基づくため、他の多くの信 用指標より変動性が低い。有利子負債/キャピタリゼーション比率は、負債に対する許容度や、成 長または規制対応のための支出をいかにして調達してきたかを含む、経営陣の財務方針の指標 ともいえる。 12 JANUARY 29, 2016 格付手法:石油精製・販売業界 CORPORATES 格付マッピングの評価方法 レバレッジとカバレッジのスコアは A 格を上回ることはない。精製・販売セクターは固有の循環性 および変動性、資本集約性、環境・法的リスクを伴うことから、そのリスクが Aa や Aaa に相当する とはみなされない。レバレッジとカバレッジの要因では、精製サイクルのステージによって変動しう る、1 年の比率を用いる。マッピング表の境界点はサイクルの中間地点の状態に基づいて設定さ れている。ムーディーズは、サイクルの中間地点および底にあたる時期の分析を含め、異なる精 製マージン環境の収益およびキャッシュフローの感応度分析を行う。分析では、発行体が、低い マージン水準でも収益性を維持できるか、どの程度のキャッシュフロー創出が見込めるか、債務 履行および配当を十分に賄えるか、精製事業を良好な状態に維持し環境基準を満たすための十 分な再投資ができるかを検討する。 EBIT/支払利息 本稿のマッピング例では、直近 4 四半期の利息・税前利益(EBIT)を、当該 4 四半期の支払 利息で除した数値を用いる。 有利子負債/EBITDA 本稿のマッピング例では、総有利子負債を、直近 4 四半期の利息・税・償却前利益(EBITDA) で除した数値を用いる。 RCF/有利子負債 本稿のマッピング例では、直近 4 四半期のリテインド・キャッシュフロー(RCF、FFO から配当を 控除したもの)を、総有利子負債で除した数値を用いる。 有利子負債/キャピタリゼーション 本稿のマッピング例では、総有利子負債をキャピタリゼーション(総有利子負債、資本金、少 数株主持ち分、繰延税金資産の合計)で除した数値を用いる。 図表 9 要因 5:レバレッジとカバレッジ (20%) サブ要因 のウエイト Aaa Aa A Baa Ba B Caa Ca 1x - 2.5x 0.5x - 1x <0.5x EBIT/支払利息 5% 業界リスクは 業界リスクは Aaa 格に相 Aa 格に相当 当しない。 しない。 ≥10x 5x - 10x 2.5x - 5x 有利子負債/EBITDA 5% 業界リスクは 業界リスクは Aaa 格に相 Aa 格に相当 当しない。 しない。 <2x 2x - 3x 3x - 4x 4x - 6x 6x - 8x ≥8x RCF/有利子負債 5% 業界リスクは 業界リスクは ≥40% Aaa 格に相 Aa 格に相当 当しない。 しない。 25% - 40% 10% - 25% 5% - 10% 1% - 5% <1% 有利子負債/ キャピタリゼーション 5% 業界リスクは 業界リスクは <25% Aaa 格に相 Aa 格に相当 当しない。 しない。 25% - 35% 35% - 50% 50% - 70% 70% - 90% ≥90% 格付マッピング表の前提と限界、およびその他の格付上の考慮事項 本格付手法のマッピング表では、複雑性を高め実際の格付により近いマッピングを行うよりも、透 明性を向上させるため簡便性を追求することに重点を置いた。格付マッピング表で用いられる 5 つの主要格付要因は、精製・販売業界の格付で重視されるすべての考慮事項を網羅したもので はない。また、ムーディーズの格付は将来のパフォーマンスの予想を織り込んでいるが、本稿の マッピング例では主に過去の財務情報を用いている。一部のケースでは、開示できない機密情報 に基づいて将来のパフォーマンスを予測している。過去のパフォーマンス、業界トレンド、需給・価 格見通し、競合他社の動向、他の要因に基づいて、将来の業績を推定する場合もある。また、精 製マージンが低水準にある時期の、有利子負債に対するキャッシュフローの水準を検討するため のストレスケースを用いることもある。いずれにせよ、将来の予測は相当に不正確なものとなるリ スクがある。 13 JANUARY 29, 2016 格付手法:石油精製・販売業界 CORPORATES ムーディーズによる予想は、マクロ経済環境と全般的な金融市場環境、業界の競争状況、行政 措置や法的措置といった想定外の変化によって、不正確なものになり得る。 本セクターに適用する主要な格付上の想定としては、次のようなものがあげられる。ソブリンの信 用リスクは他の国内発行体の信用リスクと強い相関性があること、法的な請求権優先順位は 様々な債務クラスの平均回収率に影響を与えて同一発行体の異なる債務クラスの格付差異を十 分に正当化すること、流動性調達力は信用リスクの重要な決定要因になることなどである。 本格付手法のマッピング表で用いる指標を選択するにあたり、経営陣の質と経験、コーポレート・ ガバナンス評価、財務報告と情報開示の質など、あらゆる業界のすべての企業に共通するいくつ かの重要な要因を、明示的な形では含めなかった。それらをマッピング表に基づいて格付カテゴ リーでランキングすれば、他の様々なセクターの格付対象発行体に対して特定の発行体の相対 的ランキングが緻密になりすぎる場合もある。 格付には、定量化が難しいが、特定の場合に限り信用力の差別化に有効となる追加要素が含ま れることもある。そうした要因には、財務管理、一部諸国における政府介入の可能性、訴訟、流動 性、技術、風評リスク、マクロ経済動向、親会社や制度上のサポートなどが含まれる。これらは重 要な考慮事項ではあるが、格付マッピング表で正確に表現しようとすれば、過度に複雑になり透 明性が大幅に低下することは避けられない。また、格付には、特定の要因のウエイト付けが格付 マッピング表で用いるウエイトとは大きく異なっている状況を考慮している場合がある。 格付での考慮事項としてのこのようなウエイトの変更は、格付マッピング表には含めなかった格 付要因にも適用されるケースがある。例えば、流動性は格付に極めて重要な影響を与えうる要因 であるが、状況によっては、類似した信用プロファイルの発行体の差別化に実質的な影響を与え ないこともある。デフォルト・リスクを高めるような極めて低い流動性は、格付に大きく影響する。し かし、2 社の信用プロファイルが全く等しく、唯一の違いが、一方は流動性が良好であり、もう一方 が「極めて」良好であるという場合、両社の格付は同じになることがある。ただし、格付が低い企 業の比較で、流動性が相対的なデフォルトリスクに差をつける場合は除く。 他の格付け上の考慮事項 格付は多くの追加的な考慮事項も反映している。経営陣の質、コーポレート・ガバナンス、財務管 理、流動性管理、イベントリスクを含むがこれに限定されるものではない。これらの要因の分析は 引き続き、ムーディーズの格付プロセスの重要な部分である。 経営戦略 経営陣の質は企業の信用力を支える重要な要因である。長期的な事業計画の実行状況の評価 は、経営陣の事業戦略・方針・哲学を評価する一助となり、競合他社のパフォーマンスやムーディ ーズによる予想と比較した経営陣のパフォーマンスの評価となる。経営陣の質の一貫性の実績 があれば、将来のストレス状況下での経営陣のパフォーマンスについての知見が得られ、設定し た計画や指針から大きく逸脱する傾向を示す指標となり得る。 コーポレート・ガバナンス コーポレート・ガバナンスの評価において注目する分野には、監査委員会の財務に関する専門知 識、上級幹部の報酬制度が規定するインセンティブ、関連当事者間取引、外部監査人とのやり取 り、所有構造などがある。 投資・買収戦略 ムーディーズは信用評価において、経営陣の投資戦略を考慮に入れる。投資戦略については、 ムーディーズが格付を付与する他社と比較し、その一貫性をさらに検証する。買収は発行体の事 業を強化しうる。特定格付水準における、発行体の買収許容度の評価では、次の点を考慮する。 すなわち、(1)経営陣のリスク許容度(中期的にさらなる買収を実行する可能性を含む)、(2)自社 株買い、(3)特定のレバレッジ目標に対する企業のコミットメント、および(4)主要事業および取得し た事業の変動性である。買収後にレバレッジが一時的に通常許容範囲を上回ったとしても、格付 が維持されることがある。ただしこれは、(1)戦略との整合性、(2)買収後の推定キャピタリゼーショ ンおよびレバレッジ、および(3)比較的短期間に信用指標が回復するとのムーディーズの確信に 基づく。 14 JANUARY 29, 2016 格付手法:石油精製・販売業界 CORPORATES 財務管理 ムーディーズは、監査済み財務諸表の正確性を信頼して、格付の付与とモニタリングを行ってい る。こうした正確性は、業務の一元化、経営陣の適切な方針、会計方針と手続きの一貫性といっ た、強力な内部統制によって可能になる。監査人による財務諸表への意見表明、財務諸表の修 正や規制当局への提出遅延は、内部統制の弱さを示しうる。 流動性管理 流動性管理は全ての精製・販売会社にとって重要な格付上の考慮事項である。流動性は、事業 上・財務上の柔軟性が低い、投機的等級の精製・販売会社にとってとりわけ重要となりうる。流動 性は、精製会社のキャッシュフローを制約しうる、マージンが圧迫された環境下や、高水準の運転 資本が必要となる、原油価格が高値推移あるいは急上昇している時期に、非常に重要となる。投 機的等級の精製会社は、原油調達を支えるものとして信用状を提出しなければならない場合がし ばしばある。ムーディーズは、キャッシュの源泉および使途の観点から短期的に必要になるとみ られる流動性についての意見を形成し、また、原油価格が高値推移する環境下で信用状が最も 必要となる状況も考慮する。ムーディーズは内部および外部の流動性を検討する。その際、コミッ ト済み銀行クレジット・ファシリティの質、短期債務調達、アンコミット信用枠への依存度も考慮する。 また、銀行とのコベナンツやコンプライアンス状況に関する余地をみて、緩やかな業界下降期や 発行体固有の業績低下に直面した場合に、当該企業がコベナンツの減免を必要とするかどうか を検討することがある。 イベントリスク ムーディーズは、予想外のイベントの発生により発行体のファンダメンタルな信用力が突然、大幅 に低下する可能性があることを認識している。例外的なイベントの例として、買収・合併、資産売 却、スピンオフ、資本再編計画、訴訟、株主への利益配分などがある。 親会社および制度上のサポート 親会社のサポート 精製会社が高格付の所有者により所有されており、当該所有者にとって戦略的重要性をも つ場合、所有により格付に上方圧力が加わることがある。ムーディーズは、親会社からのサ ポートを分析するにあたり、精製会社がストレスにさらされた場合や、財務上の必要性(大規 模な設備投資や有利な原油調達契約等)がある場合に、親会社がサポートを提供する財務 能力と戦略的重要性があるかどうか、また過去にサポートを提供した実績があるかどうかを 考慮する。一方、発行体から親会社への配当負担が重く、それによって柔軟性が低下した場 合には、格付にそれらのリスクが織り込まれる。 精製・販売セクターの多くの発行体は、政府サポートが見込まれることを理由に、格付のアッ プリフトが行われている政府系発行体である。一方、一部の発行体では、所有がベースライ ン信用リスク評価にマイナスの影響を及ぼすころがある。例えば、価格統制、複雑な税制、高 水準の配当は、発行体の信用プロファイルにマイナスの影響を及ぼすことがある。 その他の制度上のサポート 一部の国(日本、韓国等)では、石油セクターの戦略的な重要性、および石油輸入への依存 度の高さを背景として、大規模な精製会社が財務難に見舞われた場合には政府または銀行 からのサポートを受けるとみられる。日本では、事業会社に対するムーディーズの格付には、 大規模でシステム上重要な企業に対して作用する固有のサポートシステムが考慮されてい る。これにより、そうしたサポートシステムがない場合に比べて、デフォルト発生は低水準で 推移してきた。ムーディーズのアプローチは、グループや銀行との関係性を重視する。日本 の精製会社の格付には、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)からの サポートも織り込まれている。それにより、石油備蓄法に基づく石油備蓄に関わる高水準の 運転資本負担が軽減されている。韓国では、石油の安定供給維持を目的として、政府が主 要精製会社をサポートする強い意思を有する。政府は、韓国石油公社を通じ、SK Innovation (旧 SK Corp)に 5 億米ドルの緊急信用枠を提供した。同社は、グループの関連会社である SK Networks(旧 SK Global)における財務危機後、原油調達資金のための銀行信用枠の確保が 困難な状態にあった。 15 JANUARY 29, 2016 格付手法:石油精製・販売業界 CORPORATES 事業の多角化 精製・販売セクターの多くの発行体は、他の事業ラインへの多角化により恩恵を受けている。例え ば、幾つかの発行体は、大規模な上流部門投資を行った。それらは統合型の企業ではないが、 その信用プロファイルは、収益およびキャッシュフローの多様性による恩恵を受け、上流部門資 産からもある程度の統合の恩恵を受けている。 16 JANUARY 29, 2016 格付手法:石油精製・販売業界 CORPORATES 結論:マッピング表に基づく格付結果のまとめ マッピング表の適用結果と、親会社や、政府、その他の制度的サポートの恩恵を受ける発行体の 格付け、固有の信用力、ベースライン信用リスク評価を比較すると次のようになる。詳細について は付録を参照されたい。 17 JANUARY 29, 2016 » 8 社のマッピング表に基づく格付と実際の格付が一致した。 » 13 社のマッピング表に基づく格付と実際の格付の差が 1 ノッチとなった。 » 5 社のマッピング表に基づく格付を実際の格付の差が 2 ノッチとなった。 » 数字付加記号付き格付で 3 ノッチ以上の差が生じた企業はなかった。 格付手法:石油精製・販売業界 CORPORATES 付録 A:世界の精製・販売業界の格付手法に基づくマッピング表 サブ要因のウェイト Aaa Aa A Baa Ba B Caa Ca 原油精製能力 (千バレル/日) 15% ≥3,000 2,000 - 3,000 1,000 - 2,000 500 - 1,000 250 - 500 50 - 250 25 - 50 <25 大規模製油所の数 10% ≥15 9 - 14 6-8 3–5 2 1 要因 1:規模(25%) 0、 複数の小規模 0、1 箇所の小規模 製油所 製油所 要因 2:事業プロファイル(20%) 事業プロファイル 20% 非常に良好 業界リスクは Aaa 業界リスクは Aa 格 格に相当しない。 に相当しない。 非常に良好な市場 の多様性とファンダ メンタルズ、非常に 質の高い油種構成、 非常に高い原料調 達の柔軟性、広範な 川下統合、支援的な 規制環境 良好 平均的 平均以下 弱い 圧迫されている 良好な市場の多様 性とファンダメンタ ルズ、質の高い油 種構成、高い原料 調達の柔軟性、大 幅な川下統合、支 援的あるいは中立 的な規制環境 中位の市場の多様 性とファンダメンタル ズ、良好な油種構 成、中程度の原料調 達の柔軟性、中程度 の川下統合、中立的 な規制環境 限定的な市場の多様 性とファンダメンタル ズ、質の低い油種構 成、限定的な原料調 達の柔軟性、限定的 な川下統合、中立的 あるいは不利な規制 環境 弱い市場の多様 性とファンダメンタ ルズ、弱い油種構 成、弱い原料調達 の柔軟性、弱い川 下統合、不利な規 制環境 非常に弱い市場の 多様性とファンダメン タルズ、非常に弱い 油種構成、非常に弱 い原料調達の柔軟 性、川下統合の不 在、脅威となる規制 環境 要因 3:収益性と効率 (15%) EBIT/総精製量 (ドル/バレル) 7.5% 業界リスクは Aaa 業界リスクは Aaa 格に相当しない。 格に相当しない。 ≥$8 $4 - $8 $2 - $4 $1 - $2 $0 - $1 <$0 EBIT/平均キャピタリ ゼーション 7.5% 業界リスクは Aaa 業界リスクは Aaa 格に相当しない。 格に相当しない。 ≥ 15% 12% - 15% 7% - 12% 4% - 7% 0% - 4% <0% 18 JANUARY 29, 2016 格付手法:石油精製・販売業界 CORPORATES 要因 4:財務方針(20%) 財務方針 20% 極めて保守的な 財務方針をとると みられる。非常に 安定した財務指 標。長期にわたる 非常に強固な信 用プロファイルの 維持へのコミット メントを表明。 非常に安定した保 守的な財務方針を とるとみられる。安 定した指標。格付 変更につながるイ ベントリスクがほと んどない。長期に わたる強固な信用 プロファイルの維持 へのコミットメントを 表明。 債権者の利益を守る 予見可能な財務方 針をとるとみられる。 ある程度のイベント リスクがあるが、レ バレッジへの影響は 小さく一時的なもの とみられる。強固な 信用プロファイルへ の強いコミットメント。 債権者の利益と株 主の利益を均衡さ せる財務方針をと るとみられる。負債 調達による買収、 あるいは株主還元 が信用プロファイル の悪化につながる リスクが幾分ある。 債権者より株主を優 先する財務方針をと るとみられる。株主 還元、買収、その他 の大幅な資本構成の 大幅な変更を要因と して財務リスクが平 均を上回る。 債権者より株主を優 先する財務方針をと るとみられる。株主還 元、買収、他の資本 構成の大幅な変更を 要因とする財務リスク が高い。 経済環境が変化 した際に、債務再 編リスクの高まり につながる財務方 針をとるとみられ る。 良好な経済環境下 でも、債務再編リス クの高まりにつな がる財務方針をと るとみられる。 要因 5:レバレッジとカバレッジ (20%) EBIT/支払利息 5% 業界リスクは Aaa 業界リスクは Aa 格 格に相当しない。 に相当しない。 ≥10 倍 5-10 倍 2.5-5 倍 1-2.5 倍 0.5-1 倍 <0.5 倍 有利子負債/EBITDA 5% 業界リスクは Aaa 業界リスクは Aa 格 格に相当しない。 に相当しない。 <2 倍 2-3 倍 3-4 倍 4-6 倍 6-8 倍 ≥8 倍 RCF/有利子負債 5% 業界リスクは Aaa 業界リスクは Aa 格 格に相当しない。 に相当しない。 ≥40% 25-40% 10-25% 5-10% 1-5% <1% 有利子負債/キャピ タリゼーション 5% 業界リスクは Aaa 業界リスクは Aa 格 格に相当しない。 に相当しない。 <25% 25-35% 35-50% 50-70% 70-90% ≥90% 19 JANUARY 29, 2016 格付手法:石油精製・販売業界 CORPORATES 付録 B: 格付マッピング表が示唆する格付 特定のサブ要因に基づくマッピング結果が、実際の格付よりも 2 カテゴリー以上高いか低い発行体を、そのサブ要因に関するポジティブあるいはネガティブなアウトライヤーと 定義している(例えば、特定のサブ要因に基づくマッピング結果が Baa となる B 格の企業は、そのサブ要因におけるポジティブ・アウトライヤーとして表示)。緑色のセルはポジ ティブ・アウトライヤーで、特定のサブ要因において、マッピング結果がムーディーズによる格付を文字格付で 2 カテゴリー以上上回る。赤色のセルはネガティブ・アウトライヤ ーで、特定のサブ要因のマッピング結果がムーディーズによる格付を文字格付で 2 カテゴリー以上下回る。 マッピング 原油精製 大規模製 表が示唆 能力 する格付 (千バレル/日) 油所の数 EBIT/総精 EBIT/ 平均 事業プロ 製量 (ドル/ キャピタリ ファイル バレル) ゼーション 財務方針 EBIT/ 有利子 RCF/ 有利子負債/ 支払 負債/ 有利子キャピタリゼー 利息 EBITDA 負債 ション 格付または信用力/ベースライ ン信用リスク評価(あれば) 見通し caa1 安定的 Caa1 B Ca B Ca Ca B Ca Ca Ca Caa Alon USA Partners, LP B1 安定的 Ba3 B Ca Ba Baa A B Ba A Caa Caa Bharat Petroleum Corporation Limited ba2 ポジティブ Ba1 Baa Baa Ba Baa Ba Baa Ba B Ba B Calumet Specialty Products Partners, L.P. B1 安定的 B2 B Caa Ba Ba B B Caa B Ca B CVR Refining, LLC Ba3 安定的 Ba2 B B Ba A A B A A Ca Baa Empresa Nacional del Petroleo b2 安定的 B2 B Ba B B Ba B B B Ba Ca GS Caltex Corporation ba2 ポジティブ Ba1 Baa Baa Baa Ba B Baa Ba B Caa Ba HollyFrontier Corporation Baa3 安定的 Baa3 Ba Baa Ba Baa Baa Baa A A Ba A Indian Oil Corporation Ltd. ba2 ポジティブ Ba1 A Baa Ba Baa Ba Baa B B B B IRPC Public Company Limited ba3 ネガティブ B1 B B Baa Ca Ca Ba Ca Ca B Ba JX Holdings, Inc. Baa2 安定的 Baa2 A A Baa Baa B Baa A Caa Ba B Marathon Petroleum Corporation Baa2 安定的 Baa1 A A Baa Baa A Baa A A A Baa Northern Tier Energy, LLC B1 ネガティブ Ba3 B Ca Ba A A B Baa A Ca B PBF Holding Company LLC Ba3 ポジティブ Ba1 Baa Baa Ba B Ba Ba B Baa Ba Ba b1 ネガティブ B2 B B Ba B Caa B Caa B Ba B 社名 Administracion Nacional de CombustiblesANCAP Petroleum Co.of Trinidad & Tobago (Petrotrin) Phillips 66 A3 安定的 A3 Aa Aa Baa Baa A Baa A A A Baa Polski Koncern Naftowy Orlen S.A. ba1 安定的 Ba1 Baa Baa Baa Ba Ba Ba Ba Baa Ba Baa Reliance Industries Limited Baa2 ポジティブ Baa2 A Baa Baa A Ba Baa Baa Ba Ba Ba SK Innovation Co. Ltd. baa3 安定的 Baa3 A Baa Baa Baa B Baa Ba B Ba Ba S-OIL Corporation baa3 安定的 Ba1 Baa Baa Baa B B Ba Baa B B Ba Tesoro Corporation Ba1 安定的 Ba2 Baa Baa Ba Ba Ba Ba B Ba B Ba 20 JANUARY 29, 2016 格付手法:石油精製・販売業界 CORPORATES マッピング 原油精製 大規模製 表が示唆 能力 する格付 (千バレル/日) 油所の数 EBIT/総精 EBIT/ 平均 事業プロ 製量 (ドル/ キャピタリ ファイル バレル) ゼーション 財務方針 EBIT/ 有利子 RCF/ 有利子負債/ 支払 負債/ 有利子キャピタリゼー 利息 EBITDA 負債 ション 格付または信用力/ベースライ ン信用リスク評価(あれば) 見通し Thai Oil Public Company Ltd. baa2 安定的 Ba1 Ba Ba Baa Baa Baa Baa Ba Ba Ba Ba Turkiye Petrol Rafinerileri A.S. (Tupras) Ba1 安定的 Ba3 Baa Baa Ba B B Ba B Ca Caa B United Refining B2 安定的 Ba3 B Ca B A A B Baa A Baa Ba Baa2 安定的 Baa1 Aa Aa Ba Ba Ba Baa Baa Baa Baa Baa B1 安定的 Ba2 B B Ba A A Ba Baa Baa Ba Ba 社名 Valero Energy Corporation Western Refining 2015 年 8 月 17 日時点の格付け。直近の会計年度末(発行体によって異なる場合あり)に基づくマッピング例。 マッピング例からは、単独での信用力が発行体よりはるかに高いまたは低い親会社による所有から格付が大きな影響を受ける非政府系発行体、および過去の実績が将来のパフォーマンス見通しを示唆しない構造転換の途上にある企業は除外した。 21 JANUARY 29, 2016 格付手法:石油精製・販売業界 CORPORATES 要因 1:アウトライヤーの説明 規模 この要因については、ポジティブ・アウトライヤーもネガティブ・アウトライヤーもごく少数である。 Valero Energy と Indian Oil Corporation はこの要因のポジティブ・アウトライヤーである。両者は規 模の経済と事業多角化の恩恵を受ける、大規模な製油所ネットワークを有しているが、一方で、 精製セクターの高い循環性とキャッシュフローの変動性の影響を受けることに変わりはない。 Valero Energy の 格 付 は 、 相 対 的 に 高 い 収 益 変 動 性 に よ っ て 制 約 さ れ て い る 。 Indian Oil Corporation の格付は、弱い財務プロファイルと、製油所の複合性が低く精製マージンが低いこと によって引き続き制約されている。Northern Tier と United はネガティブ・アウトライヤーである。両 社は、キャッシュフロー精製を、1 箇所の小規模製油所に大きく依存している。 要因 2:アウトライヤーの説明 事業プロファイル この要因についてはアウトライヤーは存在しない。 要因 3:アウトライヤーの説明 収益性と効率性 この要因については、ネガティブ・アウトライヤー、ポジティブ・アウトライヤーともに多数ある。ネガ ティブ・アウトライヤーには、定期修繕期間(S-OIL)、または国内需要の低調(JX ホールディング ス)の影響が含まれる。ポジティブ・アウトライヤーは全て米国の精製会社で、北米における原油 生産の拡大や低い天然ガスコストの恩恵を受け、収益性、効率性とも平均以上となっている。こう した企業には、Alon、CVR、Northern Tier、Western が含まれる。 要因 4:アウトライヤーの説明 財務方針 この要因についてはアウトライヤーは存在しない。 要因 5:アウトライヤーの説明 レバレッジとカバレッジ この要因については、精製事業固有の変動性から、ポジティブ・アウトライヤーもネガティブ・アウ トライヤーもある。ENAP と IRPC はネガティブ・アウトライヤーの例である。ENAP は、原油および天 然ガスを輸入に依存しており、債務負担も大きいことから、レバレッジとカバレッジの指標は弱い。 IRPC の指標は、同社の弱い営業利益と高いレバレッジを反映している。United と Western はポジ ティブ・アウトライヤーである。両社は主に、有利な価格での原油調達が可能であることによる、高 い収益およびキャッシュフローから恩恵を受けている。 22 JANUARY 29, 2016 格付手法:石油精製・販売業界 CORPORATES 付録 C:精製・販売業界の概観 世界の精製・販売業界は、細分化しており、世界的にも地域的にも非常に競争が激しく、極めて 資本集約的である。売上高、コスト共に、世界と地域の商品価格の変動に左右され、これを 1 発 行体が調整することは通常は不可能である。 世界の精製能力は総計 9,700 万バレル/日以上 で、多種の原油および他の原料を精製し、ガソ リン、ディーゼル油、ジェット燃料等の石油製品を生産している。一部の精製・販売会社は、規模 の大小はあるが石油化学事業も手掛けている。販売事業では、様々な販売経路を通して卸売業 者および小売業者(ガソリンスタンド) 向けに石油製品を販売している。 2 原油および精製製品は公開市場で自由に取引される国際商品で、オランダ、米国のメキシコ湾 岸、およびシンガポールに主要な取引所がある。精製製品の価格は地域および世界の需給ファ ンダメンタルズによって決定される。この業界は本質的にサイクル性があり、世界および地域の 経済成長や製品需要のパターン、業界の投資や精製能力の過剰・不足のパターンに連動する。 業界特有のトレンドの一つは、精製マージンが高い期間に経済的見地から精製会社は能力増強 を行うことである。需要の伸びが減速、またはマイナスになると、これがマージン圧迫の要因とな る。 2 23 JANUARY 29, 2016 出所:BP Statistical Review of World Energy, June 2015 格付手法:石油精製・販売業界 CORPORATES 関連リサーチ 本セクターにおいて付与される信用格付は基本的に本信用格付手法によって決定される。また、 幅広い格付手法(1 つ以上の副次的に適用される格付手法またはクロスセクター格付手法)にお ける考慮事項が、本セクターの発行体および債券の信用格付の決定時に重要となることもある。 副次的に適用される格付手法およびクロスセクター格付手法となりうるものについては、ムーディ ーズ・ジャパンのウェブサイトを参照されたい。 本格付手法を用いて付与された信用格付の過去の精緻度および予測能力をまとめたデータは、 link に掲載されている。 さらなる情報については、「格付記号と定義」を参照されたい。 24 JANUARY 29, 2016 格付手法:石油精製・販売業界 CORPORATES ムーディーズ・ジャパン株式会社 〒105-6220 東京都港区愛宕 2 丁目 5-1 愛宕グリーンヒルズ MORI タワー 20F Report Number: 187237 (Japanese) 183818 (English) 著者 Gretchen French プロダクション・アソシエイト 渡邉 エリ 著作権表示(C)2016 年 Moody' s Corporation、Moody's Investors Service, Inc.、Moody’s Analytics, Inc. 並びに(又は)これらの者のライセンサー及び関連会社(以下、総称して「ムーディーズ」といい ます)。無断複写・転載を禁じます。 Moody's Investors Service, Inc.及び信用格付を行う関連会社(以下「MIS」といいます)により付与される信用格付は、事業体、与信契約、債務又は債務類似証券の相対的な将来の信用リス クについての、ムーディーズの現時点での意見です。ムーディーズが発行する信用格付及び調査刊行物(以下「ムーディーズの刊行物」といいます)は、事業体、与信契約、債務又は債務 類似証券の相対的な将来の信用リスクについてのムーディーズの現時点での意見を含むことがあります。ムーディーズは、信用リスクを、事業体が契約上・財務上の義務を期日に履行で きないリスク及びデフォルト事由が発生した場合に見込まれるあらゆる種類の財産的損失と定義しています。信用格付は、流動性リスク、市場価値リスク、価格変動性及びその他のリスク について言及するものではありません。信用格付及びムーディーズの刊行物に含まれているムーディーズの意見は、現在又は過去の事実を示すものではありません。ムーディーズの刊行 物はまた、定量的モデルに基づく信用リスクの評価及び Moody’s Analytics, Inc.が公表する関連意見又は解説を含むことがあります。信用格付及びムーディーズの刊行物は、投資又は財 務に関する助言を構成又は提供するものではありません。信用格付及びムーディーズの刊行物は特定の証券の購入、売却又は保有を推奨するものではありません。信用格付及びムー ディーズの刊行物はいずれも、特定の投資家にとっての投資の適切性について論評するものではありません。ムーディーズは、投資家が、相当の注意をもって、購入、保有又は売却を検 討する各証券について投資家自身で研究・評価するという期待及び理解の下で、信用格付を付与し、ムーディーズの刊行物を発行します。 ムーディーズの信用格付及びムーディーズの刊行物は、個人投資家の利用を意図しておらず、個人投資家が何らかの投資判断を行う際にムーディーズの信用格付及びムーディーズの刊 行物を考慮することは、慎重を欠く行為です。もし、疑問がある場合には、ご自身のフィナンシャル・アドバイザーその他の専門家にご相談することを推奨します。 ここに記載する情報はすべて、著作権法を含む法律により保護されており、いかなる者も、いかなる形式若しくは方法又は手段によっても、全部か一部かを問わずこれらの情報を、ムーディ ーズの事前の書面による同意なく、複製その他の方法により再製、リパッケージ、転送、譲渡、頒布、配布又は転売することはできず、また、これらの目的で再使用するために保管すること はできません。 ここに記載する情報は、すべてムーディーズが正確かつ信頼しうると考える情報源から入手したものです。しかし、人的及び機械的誤りが存在する可能性並びにその他の事情により、ムー ディーズはこれらの情報をいかなる種類の保証も付すことなく「現状有姿」で提供しています。ムーディーズは、信用格付を付与する際に用いる情報が十分な品質を有し、またその情報源が ムーディーズにとって信頼できると考えられるものであること(独立した第三者がこの情報源に該当する場合もあります)を確保するため、すべての必要な措置を講じています。しかし、ムー ディーズは監査を行う者ではなく、格付の過程で又はムーディーズの刊行物の作成に際して受領した情報の正確性及び有効性について常に独自に確認することはできません。 法律が許容する範囲において、ムーディーズ及びその取締役、役職員、従業員、代理人、代表者、ライセンサー及びサプライヤーは、いかなる者又は法人に対しても、ここに記載する情報 又は当該情報の使用若しくは使用が不可能であることに起因又は関連するあらゆる間接的、特別、二次的又は付随的な損失又は損害に対して、ムーディーズ又はその取締役、役職員、 従業員、代理人、代表者、ライセンサー又はサプライヤーのいずれかが事前に当該損失又は損害((a)現在若しくは将来の利益の喪失、又は(b)関連する金融商品が、ムーディーズが付与 する特定の信用格付の対象ではない場合に生じるあらゆる損失若しくは損害を含むがこれに限定されない)の可能性について助言を受けていた場合においても、責任を負いません。 法律が許容する範囲において、ムーディーズ及びその取締役、役職員、従業員、代理人、代表者、ライセンサー及びサプライヤーは、ここに記載する情報又は当該情報の使用若しくは使用 が不可能であることに起因又は関連していかなる者又は法人に生じたいかなる直接的又は補償的損失又は損害に対しても、それらがムーディーズ又はその取締役、役職員、従業員、代理 人、代表者、ライセンサー若しくはサプライヤーのうちいずれかの側の過失によるもの(但し、詐欺、故意による違反行為、又は、疑義を避けるために付言すると法により排除し得ない、その 他の種類の責任を除く)、あるいはそれらの者の支配力の範囲内外における偶発事象によるものである場合を含め、責任を負いません。 ここに記載される情報の一部を構成する格付、財務報告分析、予測及びその他の見解(もしあれば)は意見の表明であり、またそのようなものとしてのみ解釈されるべきものであり、これに よって事実を表明し、又は証券の購入、売却若しくは保有を推奨するものではありません。ここに記載する情報の各利用者は、購入、保有又は売却を検討する各証券について、自ら研究・ 評価しなければなりません。 ムーディーズは、いかなる形式又は方法によっても、これらの格付若しくはその他の意見又は情報の正確性、適時性、完全性、商品性及び特定の目的への適合性について、(明示的、黙 示的を問わず)いかなる保証も行っていません。 Moody's Corporation (以下「MCO」といいます)が全額出資する信用格付会社である Moody's Investors Service, Inc.は、同社が格付を行っている負債証券(社債、地方債、債券、手形及び CP を 含みます)及び優先株式の発行者の大部分が、Moody's Investors Service, Inc.が行う評価・格付サービスに対して、格付の付与に先立ち、1500 ドルから約 250 万ドルの手数料を Moody's Investors Service, Inc.に支払うことに同意していることを、ここに開示します。また、MCO 及び MIS は、MIS の格付及び格付過程の独立性を確保するための方針と手続を整備しています。MCO の取締役と格付対象会社との間、及び、MIS から格付を付与され、かつ MCO の株式の 5%以上を保有していることを SEC に公式に報告している会社間に存在し得る特定の利害関係に関す る情報は、ムーディーズのウェブサイト www.moodys.com 上に"Investor Relations-Corporate Governance-Director and Shareholder Affiliation Policy"という表題で毎年、掲載されます。 オーストラリアについてのみ:この文書のオーストラリアでの発行は、ムーディーズの関連会社である Moody's Investors Service Pty Limited ABN 61 003 399 657(オーストラリア金融サービス認可 番号 336969)及び(又は)Moody's Analytics Australia Pty Ltd ABN 94 105 136 972(オーストラリア金融サービス認可番号 383569)(該当する者)のオーストラリア金融サービス認可に基づき行わ れます。この文書は 2001 年会社法 761G 条の定める意味における「ホールセール顧客」のみへの提供を意図したものです。オーストラリア国内からこの文書に継続的にアクセスした場合、 貴殿は、ムーディーズに対して、貴殿が「ホールセール顧客」であるか又は「ホールセール顧客」の代表者としてこの文書にアクセスしていること、及び、貴殿又は貴殿が代表する法人が、直 接又は間接に、この文書又はその内容を 2001 年会社法 761G 条の定める意味における「リテール顧客」に配布しないことを表明したことになります。ムーディーズの信用格付は、発行者の 債務の信用力についての意見であり、発行者のエクイティ証券又はリテール顧客が取得可能なその他の形式の証券について意見を述べるものではありません。リテール顧客が、ムーディ ーズの信用格付に基づいて投資判断をするのは危険です。もし、疑問がある場合には、ご自身のフィナンシャル・アドバイザーその他の専門家に相談することを推奨します。 日本についてのみ:ムーディーズ・ジャパン株式会社(以下、「MJKK」といいます。)は、ムーディーズ・グループ・ジャパン合同会社(MCO の完全子会社である Moody’s Overseas Holdings Inc.の 完全子会社)の完全子会社である信用格付会社です。また、ムーディーズ SF ジャパン株式会社(以下、「MSFJ」といいます。)は、MJKK の完全子会社である信用格付会社です。MSFJ は、全 米で認知された統計的格付機関(以下、「NRSRO」といいます。)ではありません。したがって、MSFJ の信用格付は、NRSRO ではない者により付与された「NRSRO ではない信用格付」であり、 それゆえ、MSFJ の信用格付の対象となる債務は、米国法の下で一定の取扱を受けるための要件を満たしていません。MJKK 及び MSFJ は日本の金融庁に登録された信用格付業者であり、 登録番号はそれぞれ金融庁長官(格付)第 2 号及び第 3 号です。 MJKK 又は MSFJ(のうち該当する方)は、同社が格付を行っている負債証券(社債、地方債、債券、手形及び CP を含みます。)及び優先株式の発行者の大部分が、MJKK 又は MSFJ(のうち該 当する方)が行う評価・格付サービスに対して、格付の付与に先立ち、20 万円から約 3 億 5,000 万円の手数料を MJKK 又は MSFJ(のうち該当する方)に支払うことに同意していることを、ここ に開示します。 MJKK 及び MSFJ は、日本の規制上の要請を満たすための方針と手続も整備しています。 25 JANUARY 29, 2016 格付手法:石油精製・販売業界