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Flight Simulator Experience Successfully!
マレーシア航空のシミュレータ体験ツアーに参加してきた!
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している日本から見ると実にうらやましい話だ
が、幸いにしてマレーシア航空のFFS体験訓練
は日本人でも参加することができる。航空会社
の訓練スケジュールが優先されるために事前調
整は必要だが、そうした手配は旅行代理店の(株)
パーパスジャパンが代行してくれる。
基本プランはマレーシア航空を利用する4日
間で、料金は時期によって異なるものの2名参加
で 万 9 0 0 0 円/人 か ら。昼 の 飛 行 機 で ク ア
ラルンプールに移動し、翌日に体験訓練を実施。
翌々日の深夜便で日本に帰国する。
体験訓練は座
学を含む約2時間で、FFSでのフライトは約1
時間。
つまり2名参加ならば1人 分ずつコント
ロールホイールを握れるということになる。
訓練はマレーシア航空の教官により英語で行
なわれるが、ホテルからの送迎を担当してくれる
日本人アシスタントが通訳をしてくれるので語
学の苦手な人でも心配はない。操縦についても
まったくの素人で大丈夫だが、軽飛行機やPCフ
ライトシミュレータに馴染んでいる人ならばさ
らに奥深い楽しみを味わうこともできるだろう。
また予約申込時に操縦したい旅客機の希望を
いうことはできるが、あくまで航空会社のパイ
ロットたちの訓練が優先されるのでその通りに
なる保障はないそうだ。現在、マレーシア航空の
FFSは365日 時間態勢で稼動しており、そ
のうち機種によって 〜 %あるという空き時
間が一般公開にあてられているにすぎないから
だ。
だが、どの機種にあたってもそれぞれに魅力が
ある。
ボーイング式FBW(フライバイワイヤ)
制
御の777、
4発巨人機の747 4-00、世界で
最も多く活躍する旅客機のスタンダード737
4-00、そしてサイドスティックのA330な
ど、いずれも僕ら素人には手強く、冷汗をたっぷ
りとかきながら楽しむことができるだろう。
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旅客機のタキシングというのは、ちょっと新鮮
な体験である。
スラストレバーを少し進めて走り
出し、左手のステアリングチラーを回して進路を
コ ン ト ロール す る。自 動 車 の ハ ン ド ル が 形 を 変
えただけとは思っても、操作のフィーリングはま
るで違う。
少し気を抜くとカクカクしてしまうの
だ。これが本物の旅客機ならば、キャビンではま
だCAたちが乗客のシートベルトを最終点検し
て歩いているだろう。
あまり乱暴に操作すると転
んでケガをしかねない(という気持ちをFFSで
も忘れてはならない)
。
それにしても空港で見る旅客機は、みな見事に
ノーズタイヤがセンターラインに乗っていると
改めて感心する。
しかもパイロットはタキシング
中に舵の作動確認や離陸前のチェックリストな
どもこなしているが、僕にはとてもそんな余裕は
な かった。半 分 以 上 の チェック リ ス ト を 省 略 し
て、なんとか滑走路の端にたどりつくのがやっと
である。
ため息をつきながらも、フラップが離陸ポジ
ションになっていることを確認。実は以前、別の
777のFFSでこれを忘れてスラストレバー
を進め、猛烈な警報音に驚かされたことがある。
最近の旅客機では、ミスをすると機械に怒られて
しまうのだ。
空を飛ぶ前からむずかしい
それが旅客機の面白さだ
ことも積極的にリクエストしてみるといい。
僕が
機長席に座ったとき、目の前に見えたのは滑走路
で は な く ビ ル の 外 壁 だった。飛 行 機 は ス ポット
に停止しており、僕はエンジン始動からプッシュ
バック、そしてランウェイまでタキシングしてい
くところからスタートした。だが、ひたすら長く
飛んでいたいという人は、ランウェイに乗ってい
るところからスタートすることもできる。
また腕
に自信があるならば、飛行中に何らかのトラブル
を起こしてもらうこともできるだろう。
FFSは
あらゆる状況を再現できるから、実機を飛ばす以
上に多彩な経験を積むことができる。
それを積極
的に楽しまない手はない。
ただし個人的には、ま
ずは正常な状態できちんと離陸して、旋回して、
着陸できるようになるのが先決だとは思うけど。
マレーシア航空の訓練センターは、クアラルン
プールのスバン空港の近くにある。
現在の空港の
あるセパンとまぎらわしいが、訓練所があるのは
旧空港の方だ。
市内からの所要時間は、道路状況
自分のレベルにあった操縦体験を
どんどんリクエストしてみよう
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日本のプロパイロットにもおなじみ
マレーシア航空FFSを操縦できる
現在、航空会社のパイロット訓練や審査のほと
んどは、FFS(フルフライトシミュレータ)
で行
なわれている。本物と同じコクピットを使い、精
密なCGによる外部ビジュアルと6軸モーショ
ンシステムを備えたFFSは、操縦感覚や機体の
反応、景色の動き、そして身体にかかる力までを
きわめてリアルに再現できる。
もはや実機を使っ
た訓練は最初に旅客機の乗務資格を取得するだ
けでよいとされており、あとの定期訓練や審査、
あるいは機種移行などはすべてFFSによって
行なうことができる。
もちろんお値段も相応で、1台あたり十数億
円。
したがって自前のFFSを保有できる航空会
社も限られてしまうが、マレーシア航空は777
737 4-00、そしてA330
や747 4-00、
など多数のFFSを備えた一大訓練センターを
擁し、自社パイロットはもちろん世界各国の航空
会社のパイロット訓練を受け入れている。
日本の
空で活躍するエアラインパイロットの中にも、マ
レーシア航空で訓練を受けたという人は少なく
ない。
だがマレーシア航空のFFSは、あくまでプロ
フェッショナルの訓練のみに使われてきた。
それ
が一般の人にも開放されるようになったのは、2
年前にマレーシア人初の宇宙飛行士が誕生した
のがきっかけだという。2007年 月、シェイ
ク・ムザファル・シュコル博士は国際宇宙ステー
ションに滞在して約 日間のミッションを遂行。
マレーシア国内では一気に航空宇宙に関する関
心が高まり、この分野での教育や啓蒙の重要さが
再認識された。
そこでマレーシア航空も一般の人
にFFSを体験してもらい、空の素晴らしさとと
もにマレーシア航空の安全に対する取り組みを
広く一般の人にも理解してもらおうということ
になったのである。
基本は日本発4日間のツアー
英語が苦手な人でも心配なし
あいかわらず旅客機のコクピットに関するも
ろもろをできるだけ一般の目から遠ざけようと
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200トンを飛行機と一体化する
イメージがつかめれば上達も早い
「さあ、
離陸しよう。
スラストレバーを進めて」
教官にうながされて、スラストレバーをそろり
と進める。
昔のイメージではこれもグワーンと押
し出していくのだが、最近の旅客機はそんなこと
はしない。
まず垂直近くまでレバーを進めて回転
が正常に上がることを確認。
そのうえでスラスト
レバーの向こう側についているTO/GA(テイ
ク オ フ/ゴーア ラ ウ ン ド )ス イッチ を 押 し 込 ん
でやる。
するとあとはオートスロットルが自動的
にエンジンを離陸推力にセットしてくれるのだ。
あなたは視線を滑走路の遠くに置き、足で直進を
維持することに専念すればいい。
離陸滑走中はラ
ダーペダルで進路を変えるのだが、これもやはり
油断するとカクカクとしてしまう。
余裕があれば
PFD(主飛行表示器)
の速度をチラチラとモニ
ターするが、余裕がなければ教官が速度をコール
アウトしてくれる。
( ノッ
コ ン ト ロール ホ イール を 引 く の は、「
ト)
」
と「ブイワン(離陸決心速度)
」
に続いてコー
ルされる「ブイアール(引起し速度)
」
のタイミン
グだ。
ここでどのくらい引くかはPFDに表示さ
れるピンクのFD(フライトダイレクター)
を参
考にする。
その十字線に機体のシンボルが一致す
るようにコントロールホイールを操作すれば、飛
行機は適正なルートをたどることができる。
ボーイ ン グ777-200の 機 長 席 か
らの風景。機種はそのときによっ
て変わるが、あなたもこれを目に
することになる。なお空港は色々
と選べるが、ビジュアルが最も精
密なのはクアラルンプール国際空
港だ。
はじめてコントロールホイールを引いた感想
は、人それぞれだろう。
今回一緒に操縦体験をし
た日本人アシスタントの方は、「思ったよりも重
いですね」とうめいていた。777のコントロー
ルホイールの操舵力は人工的に加えられている
ものだが、自動車のパワーステアリングのように
軽くはなく、大きな飛行機にふさわしい重さが与
えられている。
それに対してFDの十字線はなん
と軽やかに逃げ回ることか。
こんなに重い飛行機
を、こんなに軽々と動くFDに合わせて小刻みに
動かそうとしてもうまくいくものではない。
そこ
で、まずは自分が重さが200トンもある巨大な
旅客機を動かしているのだということをしっか
りとイメージしてみよう。
そうして飛行機との一
体感が感じられるようになったならば、少しは落
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当の教官やFFSオペレーターの方と握手をし、
機長席に座らせていただく。
5点式シートベルト
を 締 め、シート 右 下 の ス イッチ で 座 席 位 置 を 調
整。
さらに両足の間にあるレバーを引っ張りだし
てペダルの前後位置を調整する。
「慣れてるね。
飛ばしたことあるの?」
と教官。
「セスナですが自家用パイロットです」
こういうとき、実は返事に悩む。まったくの初
心者には操縦のイロハから教えてくれるが、あま
りに初歩的すぎることから説明されても困る。
な
にしろFFSでの時間はあっという間にすぎて
しまうから、できるだけ有効に活用したい。
かと
いって旅客機の操縦に関しては素人であること
には変わりないから、あまり見栄をはっても苦労
する。
やはりこういうときは「PCでフライトシ
ミュレータは飛ばしていますが本物は未経験で
す」
とか「基本的な計器の読み方はわかりますが
飛ばし方はわかりません」
とか、正直に答えるの
がいいだろう。
その人のレベルにあったフライト
をアレンジしてくれるはずだ。
また、どんなフライトをしてみたいのかという
こちらは「本物のパイロットたち」
の座学風景。
体験で使われるFFSは彼らが実際の訓練で
使うものとまったく同じものであり、
さらにいえば教官も同じである。
フライト・シミュレータの体験ツアーはこれまでもいくつかのエアラインで行なわれてきた。
ここに紹介するのはマレーシア航空のツアー。
マレーシアではシミュレータを積極的にオープンなものにして、
航空会社の安全に対する取り組みを広く知らしめる場としても活用されている。
写真・文=阿施光南
にもよるが車で 分から1時間程度。
ホテルに日
本人アシスタントが迎えにきてくれるので、車内
で訓練の様子やマレーシアの見どころなどを聞
くのもいいだろう。基本プランには自由時間も
たっぷりと用意されているからだ。
なお訓練所に
入るためにはパスポートが必要になるのでお忘
れなく。
400に乗務しているとい
訓練所では747 うイザム・イスマール機長が出迎えてくれた。
こ
こで訓練の概要について説明を受けたが、面白
かったのは緊急時の脱出手順までを説明された
こと。
といっても本物のコクピットからの脱出で
はなく、FFSからの脱出手順。
運転中のFFS
は油圧ジャッキで空中に支えられているだけだ
から、万一の火災の際などには通常の通路(停止
中だけ接続される)は使うことができない。これ
まで何度かFFSに乗せていただいたが、脱出手
順まで説明されたのはこれが初めてである。
そん
なところからもマレーシア航空の安全に対する
取り組みや意識の高さが感じられた。
訓練担
続いて案内されたのは777のFFS。
FFSでの
「フライト」
の前にはマレーシア航空の教官によるブリーフィングを受ける。
通訳もつくので言葉の心配もない。
Flight Simulator
Experience
Successfully!
ツアーに同行していた日本人アシスタン
トの着陸進入。初めてのコントロールホ
イールだが、見事にナイトランディング
を決めてくれた。
の力加減と、さらにそれを押し切って限界を越え
たバンク角まで押し切る感触を試してみたので
ある。
それはさほどの馬鹿力を必要とするほどで
はなかった。
「777は賢いけど、常にパイロットを優先して
くれる飛行機なんだよ」
と教官。
ま た 飛 行 中 は ほ と ん ど オート ス ロット ル を
セットして推力調整を飛行機にまかせていたが、
やはり「ラインパイロット」
といえば左手でコン
トロールホイールを、右手ではスラストレバーを
ガッシリとつかんでいるという印象がある。
ある
いはパワーコントロールなしで、飛行機を操縦し
たなどとは恥ずかしくていえないという気持ち
も。
「パワーもマニュアルでコントロールしてもいい
ですか」
うまく
着陸したはずなのに
どうして停まって
くれないのだ
パワーコントロールをオートスロットルにま
かせていても、777の操縦が手強いことに代わ
りはない。
だが、そうでなければ面白みもない。
次
はいよいよ着陸に挑戦する。
ダウンウインドレグ
で左手にランウェイを見ながらフラップを 度
下げ、ギアダウンをオーダー。着陸と同時に作動
するようにスピードブレーキと車輪ブレーキを
プリセットし、降下しながらベースレグに左旋回
する。そこでさらにフラップをダウン。そして左
前方に見えてきたランウェイに正対するように
ファイナルターンに入る。このあたりの手順は、
基本的に小さなセスナと違いはない。
ランウェイ
横の
(精密進入角指示灯)
は赤赤白白で
適正コースに乗っていることを示している。
この
調子でいけば、うまく降ろせるだろう。再びオー
トスロットルを解除。ただし、今度はあまり動か
さないようにする。
滑走路の進入灯が眼下を流れさり、人工音声が
電波高度計のコールアウトを開始する。
教官の指
示でパワーを絞り、タイミングをはかってコント
ロールホイールを引く。
フレアーをかけたつもり
だったのだが、少し遅すぎた。777は十分に機
首を上げるまでもなくドシンと接地してしまっ
た。
「くそ」
と思わず声が出る。
だが、そんなことを恥
じている暇はない。
オートブレーキとスピードブ
レーキが自動的に作動したのを確認しながら、ス
ラ ス ト リ バーサーレ バーを 引 き 上 げ て 逆 噴 射。
が、
なかなか減速しない。
「滑走路がスリッピー
(滑りやすい)
コンディショ
ンなんだよ」と教官が笑っている。南国のクアラ
ルンプールで路面凍結もあるまいと思ったが、ス
コール で も 降 れ ば ス リッピーコ ン ディション に
なるのだろうか。いずれにせよ、どんなコンディ
ションでも無事に飛行機を降ろすパイロットの
大変さを実感した。
体験訓練を終えたあと、僕は訓練所のアフマ
ド・マネジャーから「777 2-00のシミュレー
タ体験を成功裏に終えました」という認定証を
いただいた。
その「成功裏に(サクセスフリー)
」
と
いう文面にちょっと不甲斐なかった自分が思い
出されて恥ずかしかったけれども、「なあに、次は
もっとうまく飛ばしてみせる」と決意した。いず
れまたマレーシアに、
行こう。
B O E I N G 7 7 7 - 2 0 0・
737-400
BOEING
747-400
マレーシア航空には今回フ
ラ イトした777の ほ か に、
747- 400や737- 400、
A320などのFFSがあり、訓
練で空いているものを使う
ことになる。2010年秋には
世界最大のエアバスA380
のFFSも完成する予定だが、
もしこれが一般にも開放さ
れたらすごいことだろう。
AIRBUS A330
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「ではスラストレバーのグ
リップ 横 の ボ タ ン を 押 し
て」
い わ れ た 通 り に オート
スロットルを解除。それか
らすぐに、速度が安定しな
くなった。慣性が大きく抵
抗 の 小 さ な ジェット 旅 客
機は、小型プロペラ機のよ
う に は 迅 速 に パ ワーコ ン
ト ロール に 反 応 し て く れ
な い。い き お い ス ラ ス ト
レ バーも オーバーコ ン ト
ロールとなり、だんだんと
機体が暴れ出してしまう。
このままでは、着陸なんか
できるはずがない。
「またオートスロットルを
エンゲージしてください」
すぐに速度は嘘のように
安定した。
ささやかな敗北
感。
フライト後のデブリーフィング
が終わるとシミュレーター体験
操縦の認定証(名前つき)をいた
だける。
「 サクセスフリー」とい
う言葉に少し気恥ずかしい気持
ちもあるが、素直にうれしい。
ち着いてFDを追いかけることができるように
なるはずだ。
今回、僕は普通に離陸して、普通にトラフィッ
クパターンを回り、普通に着陸するというフライ
トをお願いした。以前FFSを操縦する機会が
あったときには「ただ飛ぶだけでは面白くない」
と欲を出し、片方のエンジンに火災を発生させて
もらったり、失速からあえて回復操作をせずに墜
落させてもらったりした。
いずれも得がたい経験
ではあったが、あとで「そもそもちゃんと飛ばせ
るのかよ」
と深く反省してしまったからである。
ただしパターンをまわる途中で、教官に断わっ
て 度近いスティープターン(急旋回)は試させ
てもらった。FBW制御の777は、パイロット
が異常な操作をしようとするとコントロールホ
イールの操舵力を大きくして警告してくれる。
そ
60
P
A
P
I
20
希望通りになったらいいな!
操縦可能なマレーシア航空シミュレータ機種
Fly UP