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「高齢社会を見据えた上での インフラ整備のあり方」に関する提案
「高齢社会を見据えた上での インフラ整備のあり方」に関する提案 平成22年3月 株式会社 現代文化研究所 1 目 次 Ⅰ.調査目的 ................................................................... 1 Ⅱ.経緯と今後の展開 ........................................................... 2 1.背景 ...................................................................... 2 2.インフラ整備課題 .......................................................... 2 3.今後に向けて .............................................................. 3 Ⅲ.各インフラ整備課題の現状と検討内容 ......................................... 4 1.道路案内標識の適切な文字サイズ・濃度の検証 ................................ 4 2.照明等の適切照度の検証 .................................................... 9 3.標識と照明の最適な組合せの検証 ............................................ 12 4.道路標識や信号機の適切な設置位置や高さの検証 .............................. 14 5.交差点等における理想的な信号制御のあり方の検証 ............................ 17 6.中央線、路側帯における標示手法の検証 ...................................... 20 7.理想的な一時停止線の位置・デザインの検証 .................................. 23 8.理想的な右折導入路・右折レーン・及び交差点形状のあり方の検証 .............. 26 9.右折や追越といった複数の作業を伴う運転操作時の情報提供のあり方の検証 ...... 32 10.逆走への注意喚起を呼びかける標識・標示等の検証 ........................... 35 Ⅳ.とりまとめ一覧表 ........................................................... 37 参考.直近の高齢ドライバー支援に関する調査・研究動向 ........................... 39 1.高齢運転者支援のための重点施策推進計画 .................................... 39 2.高齢社会と道路交通環境のあり方についての提言 .............................. 41 2 Ⅰ.調査目的 わが国人口の年齢構造をみると、65 歳以上の老年人口比が 22.8%に達するなど(総務省 「推計人口」 、平成 21 年 11 月1日現在) 、高齢化が急速に進展している。それに伴い、い わゆる高齢ドライバー数や、交通事故に占める高齢者の割合も増えつつある。そのため、 自動車ユーザーの高齢化に貢献しうるインフラ整備について、どのような方針・方向性が 効果的なのか、望まれる改良・改善方法は何か等を検討し、そのあり方を提言することは 意義深い。 以上の背景を踏まえ、平成 19 年度には主に高齢ドライバー自らの視点に基づいたインフ ラ整備の意向を、平成 20 年度には主に高齢ドライバーを客観的視点から評価したインフラ 整備課題を、それぞれとりまとめた。ただし、双方の視点に差異があることから、その結 果について整合を図る必要がある。 またこれらの調査により、一口に高齢ドライバーと言っても、その特徴や傾向等は個人 差が大きいことや、居住地域の気候特性や都市化の進捗状況といった環境条件等により求 められる施策の方向性が大きく異なることも分かった。そのため、高齢ドライバーのため のインフラ整備に対して統一的な提言を行うことは、難しい一面があることも明らかにな った。 以上の状況を踏まえると、平成 19 年度及び 20 年度調査の実施結果を活かすためには、 まず提言にあたっての視点を整理し、提言に向けた検討作業を支援する基礎資料を整えて おく必要がある。そこで本調査では、自動車ユーザーの高齢化に貢献しうるインフラ整備 のあり方について、平成 20 年度調査で明らかにしたインフラ整備課題ごとに、主に平成 19 年度調査で得られた現状や検証事項、例示を再整理することにより、地域あるいは支部 といった地方単位ごとでの具体的な展開・提言の支援に資する調査報告書を取りまとめる ことを目的とする。 1 Ⅱ.経緯と今後の展開 1.背景 わが国の尐子高齢化の進展とともに、ドライバーの平均年齢も上昇し、いわゆる高齢 ドライバーが増加している。にもかかわらず、これまでの道路交通施策における高齢者 の基本的位置づけは、歩行者や交通弱者としてその安全を守ることに主眼が置かれ、ド ライバーとしての高齢者を支援する施策は尐なかった。 そのため、高齢者のドライバーとしての立場に基づき、その運転を支援するインフラ 整備のあり方を検討・提言することは、「自動車ユーザーに対し、安全と安心の支えとな るサービスを提供するとともに、交通の安全と円滑のための事業活動を積極的に推進す る」JAF の基本理念と照らし合わせても、意義あることと考える。 2.インフラ整備課題 このような情勢に鑑み、 JAF では 3 年間をかけて高齢ドライバーの運転実態の把握や、 高齢ドライバーへのアンケート調査等を行い、高齢ドライバーが抱える身体的・技術的 課題を整理した。それに基づき、高齢ドライバーの増加に対応するインフラ整備課題と して次を定めた。 なお、各整備課題においては、高齢ドライバーの現状を整理するとともに、高齢ドラ イバーが安全で快適に運転できる、インフラ整備の提言に向けた検討内容及びそのポイ ントをとりまとめている。 表2 インフラ課題 ・道路案内標識の適切な文字サイズ・濃度の検証 ・照明等の適切照度の検証 ・標識と照明の最適な組合せの検証 ・道路標識や信号機の適切な設置位置や高さの検証 ・交差点等における理想的な信号制御のあり方の検証 ・中央線、路側帯における標示手法の検証 ・理想的な一時停止線の位置・デザインの検証 ・理想的な右折導入路・右折レーン及び右折矢印信号のあり方の検証 ・右折や追越といった複数の作業を伴う運転操作時の情報提供のあり方の検証 ・逆走への注意喚起を呼びかける標識・標示等の検証 ※ここでは、 原則として道路インフラに関係するものを検討対象とし、 例えば ITS の活用による情報提供や、 安全運転教育の推進及び法規制強化といった、道路インフラ整備の範疇を超えるものは対象としない。 2 3.今後に向けて 今後は各インフラ整備課題について、その整備方針及び対応策の検討を進める。その 際、JAF が有する組織や人脈を最大限活用しながら高齢ドライバーの声を反映させるた め、各支部において、その地域のロケーションに応じ、個別かつ具体的な検討を行うこ ととする。これを踏まえ、ドライバーの視点に立つという JAF の機能や特徴を活かした 「高齢社会を見据えた上でのインフラ整備のあり方」の提言を行う所存である。 将来的には、より良質な道路インフラ整備の実現化を促進することにより、高齢者を 含む全てのドライバーが安全・快適に運転できる、理想的な交通環境整備が実現するこ とを期待するものである。 3 Ⅲ.各インフラ整備課題の現状と検討内容 1.道路案内標識の適切な文字サイズ・濃度の検証 ●高齢ドライバーの現状 高齢者の身体機能の特徴として、視力の低下や小さい文字の読みにくさが指摘 されるほか、判別距離が短くなる傾向があげられる。高齢ドライバーの意見とし ても、基本的に標識の文字を「大きく」することが望まれている。 ●検討する内容 道路案内標識における判読しやすい文字の最適な大きさや濃度、輝度等につい て検討が必要である。 また、1ヶ所に複数の標識が設置されている箇所では逆に見にくいとする意見 もみられることなどから、理想的な設置位置や設置個数について検討を要する。 ●検討のポイント ・既に推進されている道路標識・道路標示の大型化・高輝度化、あんしん歩行エ リア等について、道路標識・道路表示の効果検証 ・道路案内標識の文字サイズや画数、濃度等についての理想的なあり方、交差点 等での最適な標識数といった情報提供の手法や情報量 ・個別に問題のある標識・標示について、具体的な課題とその改善策 4 ◎関連動向 (1) 関連する既存施策例 施 策 わかりやすい道案内の推進 道路標識・道路標示の大型化・ 高輝度化等 視認性・耐久性に優れた大型固 定標識及び路側可変標識の整備 ルート番号等を用いた案内標識 の設置 あんしん歩行エリア 内 容 通りの名称を活用した道案内の実施、複数の言語を表 示した地図標識の設置を行う。 道路標識の高輝度化・大型化、道路標示の高輝度化を 推進する。 時間別・車種別等の交通規制の実効を図る視認性・耐 久性に優れた大型固定標識及び路側可変標識の整備を 図る。 主要な幹線道路の交差点及び交差点付近におけるルー ト番号等を用いた案内標識の設置を図る。 住居系地区又は商業系地区について、交通規制の実施 や信号機の設置、道路標識・道路標示の整備、歩道整 備等面的かつ総合的な事故抑止対策を実施する。 (2)関連する高齢ドライバーの現状 ●高齢運転者の運転行動上の特徴 ・加齢に伴い、運転に必要な情報を得るための視力や聴力は低下していく。中で も動体視力や夜間の視力の低下には、加齢の影響が強く現れる。さまざまな情 報を一時的に記憶する能力、複数の事象に適切に注意力を配分する能力も低下 する。 ・近づく地名標識を判読してその方向のレーンに車線変更を行う実験をしたとこ ろ、高齢者の判読が終わる距離は若年層と比べ半分程度に縮まってしまった。 ただし、静止した状態で標識の地名漢字をみる実験では老若差が見られなかっ た。 ・高齢ドライバーの運転行動特性として、道路案内標識の地名判読距離が短いと いった実験結果がある。 ・動体視力が低下し、標識の判読が遅くなり、標識を見落としたり、車線変更が 遅れがちになる。 5 ・判別距離(標識の地名の判断が完了した場所から標識までの距離)は、いずれ の速度においても老若差が認められ、概ね 20~30 歳代は 120m、60 歳代は 90 m、70~80 歳代は 60mであった。夜間も、同様の傾向がみられ、標識から 10 ~20m の地点、つまりクルマの運転席に座った状態でウィンドウシールドから見 上げるような位置まで標識に近づかないと地名の判読が完了していない。 図 3-1-1 判別距離 資料:高齢ドライバーの標識判読に関する実験的研究 ・標識内文字の画数別の標識判別結果(標識にある目的地の地名・地名文字をな す漢字のうち画数が多いほうの文字数について、8画以下と 10 画以上に分けた 場合の標識の地名の判断が完了した場所から標識までの距離)は、画数が多い ほど距離が短くなった。また、いずれの画数においても老若差が認められた。 図 3-1-2 画数別標識判別結果 資料:高齢ドライバーの標識判読に関する実験的研究 6 ●高齢者の事故実態や身体機能の状況 ・75 歳以上の高齢者における遠距離(3m)生活視力をみると、いずれの視標面 照度においても若年層のそれを下回っている。 ・75 歳以上の高齢者における近距離(30cm)生活視力をみても、いずれの視標面 照度においても若年層のそれを下回っているほか、年齢層間の差が遠距離生活 視力における差よりも大きくなっている。 図 3-1-3 遠距離(3m)生活視力 近距離(30cm)生活視力 資料:高齢者身体機能データベース ・視覚に関係した日常生活の不具合点をみると、「小さい文字は読みにくい」は、 若年層がほとんど不具合を感じていないのに対し、高齢者は不具合を感じる割 合が高く、両者の差が大きくなっている。 図 3-1-4 日常生活の不具合点 駅名や運賃表示が読みにくい 急に暗い場所に行くと戸惑う 街灯やヘッドライトが眩しい 薄暗い場所は歩きにくい 靴下の色を間違えることがある 色が分かりにくい 数 値 は 「不 具 合 を 感じ る」割合 本を読みつづけると目が疲れる 小さい文字は読みにくい 資料:高齢者身体機能データベース 7 ○参考:高齢運転者アンケート調査における回答者からの主な意向及び提案 ・信号機に標示板で交差点名が表示されているが、遠くから読めるように文字を もっと大きくする。 ・道路標識が見えづらい。近くにやたらと他の標識が多すぎることも原因です。 ・道路標識は詳しく。数も多い方がよい。 ・分かりにくい道路標識があるので改善を望む。 ・道路標識の規制標識は1箇所に多くあり、そのうちの1つ2つは見ますが走行 状態でそれ以上の理解は無理です。 ・道路の構造、信号機、道路に書かれている文字等は出来る限り統一して欲しい。 ・高齢者にとっては道路標識や信号全てが小さすぎ、その規格を高齢者社会に相 応しいものにすべく根本的に見直すべきと思います。 ・道路標識について;交差点名称が小さいのではないか。 ・雤天時の夜間における道路標識が見えにくい。 ・遠くから読めるように文字をもっと大きく ・路面標識で「止まれ」という大きな文字を表示しては ・字も大きく ・交差点名が小さい。高齢者のためにも大きい幅に交換 ・より大きな字を使って ・学校周辺の「スクールゾーン」標識を大きく分かりやすく ・文字を太くして縦書きにして車線の中央に掲示 ・より大型で見えやすいものに工夫しては ・道路の構造、信号機、道路に書かれている文字等は出来る限り統一 ・一方通行の標識は気付きにくい。標識と共に路面にラインを太いものから細い ものにグラデーションにする ・高速道路や幹線道路の「曲り道」等にも必ず太く大きく「→」矢印か蛍光色を 取り入れた標識を設置 ・近くでなければ読めぬ文字よりマークを描けば万人が分かる ・標識等を大型化し絵文字等を取り入れて 8 2.照明等の適切照度の検証 ●高齢ドライバーの現状 高齢ドライバーは現状の照明を「暗い」と評価し、より明るい照明の設置・増 設を望んでいる。特に地方部においては、「暗い道路が多く明るくしてほしい」、 との意見が目立つ。 また、高齢者の身体機能の特徴として「急に暗い場所に行くと戸惑う」との指 摘があり、明暗の変化への対応がより困難なことから、その対応も望まれている。 ●検討する内容 夜間や雤天時といった低照度下における視認性向上を支援するための照明のあ り方についての検討が必要である。 また昼間走行時にトンネルを通過する場合等、明暗差が非常に大きくなる場所 や場面について、その対応策も検討を要する。 ●検討のポイント ・照明の適切な照度、設置位置、バランス(交差点付近のみ明るくするべきか、 道路全体を明るくするべきか)等についての理想的なあり方 ・個別にトンネルや夜間暗い道路等照明に課題のある箇所を抽出した上で、例え ば出来る限り明るいものとするべきであるのか、昼夜間で変化をつけるべきで あるのかといった、具体的な改善策 ◎関連動向 (1)関連する既存施策例 施 策 内 容 道路照明の増設 道路照明の設置・増設を行う。 幹線道路における交通事故 交差点改良、歩道等の整備、道路照明の設置等を実施する。 対策の重点的実施 9 (2)関連する高齢ドライバーの現状 ●高齢運転者の運転行動上の特徴 ・高齢者の視野は、夜間になるとほとんど見えない人もいる。目のレンズである 水晶体が濁り、明るさを感じる視細胞が減るのが主な要因である。 ・暗順応では若齢群が6~7秒、高齢群が 22~23 秒と有意差があり、暗さに順応 するまでの時間が高齢群で若齢群の約 3.5 倍の時間を要する。 ・夕方5時台が、最も高齢者の死者数が多い。 ●高齢者の事故実態や身体機能の状況 ・白昼の屋外白壁の照り返しなどの明るい環境に目が慣れた状態から、急に薄暗 いところに目を移して文字を読みとろうとする(明順応後)実験をしたところ、 25~34 歳は平均して黒色濃度 20%未満の薄い文字でも読み取り可能だが、75 歳以上になると、平均して同 40%程度とコントラストの明確な文字でないと文 字の読み取りが困難となる。 図 3-2-1 明順応と読み取り文字のコントラスト 資料:高齢者身体機能データベース ・高齢者のほうが、明順応後の読み取り可能な文字濃度が高く、コントラストが はっきりしない文字の読み取りが困難な様子がうかがえる。 10 ・視覚に関係した日常生活の不具合点をみると、 「急に暗い場所に行くと戸惑う」 や「薄暗い場所は歩きにくい」は、若年層があまり不具合を感じていないのに 対し、高齢者は不具合を感じる割合が高く、両者の差が大きくなっている。 図 3-2-2 日常生活の不具合点(再掲) 駅名や運賃表示が読みにくい 急に暗い場所に行くと戸惑う 街灯やヘッドライトが眩しい 薄暗い場所は歩きにくい 靴下の色を間違えることがある 色が分かりにくい 本を読みつづけると目が疲れる 数 値 は 「不 具 合 を 感じ る」割合 小さい文字は読みにくい 資料:高齢者身体機能データベース ○参考:高齢運転者アンケート調査における回答者からの主な意向及び提案 ・一般道路の「トンネル内」の照明が暗い。特に地方に行けばその量が多い。 ・夜間の照明;信号交差点や横断歩道はできるだけ明るい電灯を付けて欲しい。 ・郊外の道路の街灯が極端に尐ないように思う。 ・トンネル内の照明について;主要幹線道路のトンネルは明るいが、地方の県道 や市町村道のトンネルは非常に暗い。 ・照明の明暗の度を天候によって変化するような設備 ・商店の看板のネオンを規制 ・歩道に明るい照明 ・信号交差点や横断歩道はできるだけ明るい電灯を付けて ・交差点での横断歩道が青信号の時、1m位の高さで白色電球で歩道路面を明る くしたらどうか ・明るいトンネルに改良 11 3.標識と照明の最適な組合せの検証 ●高齢ドライバーの現状 道路照明と路面標示の組合せによる事故類型別事故抑止率が高いという調査結 果があり、効果的な組合せの実現が望まれる。 ●検討する内容 「道路案内標識の適切な文字サイズ・濃度」「照明等の適切照度」の検討と併せ て、個別の環境や条件に最適かつ効果的な組合せ手法の検討が必要である。 ●検討のポイント ・特に事故多発地点や、問題のある交差点等を個別に抽出した上で、具体的な課 題と最適な組合せ手法のあり方 ◎関連動向 (1)関連する既存施策例 施 策 視線誘導標等の設置 内 容 カーブ部等で運転者への線形誘導を行うとともに、点滅さ せる光の流れを適正な速度とすることで車両の速度抑制 を図る視線誘導標を車両の流れに沿って点滅させる。 12 (2)関連する高齢ドライバーの現状 ●高齢運転者の運転行動上の特徴 ・組合せ対策と単独対策における効果比較の一例として、道路照明と路面標示及 びその組合せの際の、事故類型別事故抑止率をみると、人対車両、正面衝突、 追突、右左折時について、組合せの抑止率が高い。これは、照明の設置により 路面標示の視認性が向上したことによる相乗効果と考えられる。 図 3-3-1 各単独対策と組合せ対策の死傷事故件数抑止率の比較 資料:交通事故削減に向けた取り組み ○参考:高齢運転者アンケート調査における回答者からの主な意向及び提案 ・カーブのある道には夜間塗料表示または蛍光シールを貼るよう義務付けて欲し い。 ・信号機のある地点は照明を付ける ・太陽光熱エネルギー活用のテープ及び板など、反射するものを路面にペイント で表示 ・案内の文字は発色性の良いものを ・夜の道路標識は電灯で見やすくする。又は標識そのものを電気で信号の様に ・夜間反射剤を取り入れた道路標識が有効 ・道路標識は夜光塗料文字とする 13 4.道路標識や信号機の適切な設置位置や高さの検証 ●高齢ドライバーの現状 信号機の LED 化を望む意見のほか、太陽光や街路樹等に遮られるために見にく い道路標識や信号機がある、という意見が見られる。 また、高齢者の視覚特性として視力の低下、特に上方の視野が狭いといった特 徴があるため、現状の道路標識や信号機の位置が高くて見にくい可能性がある。 ●検討する内容 太陽光や街路樹等による視界の遮りについては、地形や環境、周辺建築物とい った個別条件に合わせた最適な設置位置や対応手法に関する検討が必要である。 上方の視野狭窄については、高齢ドライバーの実際の上方視野を考慮しつつ、 最適なあり方の検証が求められる。 ●検討のポイント ・太陽光や街路樹等による視界の遮りについて、個別に課題となっている箇所を 挙げた上で、例えば信号機等そのものに対して太陽光を遮るカバーの設置とい った、具体的な改善策 ・上方の視野狭窄に関し、信号機や道路標識の設置位置の高さについて、道及び 車双方の関係を考慮した関連インフラトータルとしての理想的なあり方 ・個別に最適位置を検討する必要のある箇所について、高齢者の上方視野とヘッ ドライトの照射範囲等を踏まえた望ましい位置関係や事前掲出のタイミング ◎関連動向 (1)関連する既存施策例 特に具体的な既存施策例は見受けられなかった。 14 (2)関連する高齢ドライバーの現状 ●高齢運転者の運転行動上の特徴 ・高齢者の視力は、加齢に伴う焦点調節機能の低下に加え白内障による視力の低 下が多い。また緑内障による視野狭窄も高齢者には尐なくない。 ・高齢者の場合、まぶたが垂れ下がっていて上を見ることが得意でなくなってい る。今の標識は比較的高いところに付いていて、高齢ドライバーからすると不 親切な可能性がある。 ・信号、標識の見落としが多い(ぼんやり運転や進む方向だけに気を取られがち) 。 ・高齢者の視野は、左右 30 度の範囲までは若者と変わらないが、左右 60 度以上 になると見えなくなる人が出てくる。目のレンズである水晶体が濁り、明るさ を感じる視細胞が減るのが主な要因である。 ●高齢者の事故実態や身体機能の状況 ・視野の計測結果をみると、左右方向は高齢者と若年者との間に大きな差はない が、上方の視野については高齢者の方が狭くなっている。 図 3-4-1 視野 資料:高齢者身体機能データベース 15 ○参考:高齢運転者アンケート調査における回答者からの主な意向及び提案 ・従来の信号機では直射日光が当たると殆ど色の識別ができない。最近開発され た「LED」の早急な取り替えを望む。 ・信号機の改良;最近尐しずつLED化し、よく見るようになっているが、もっ と積極的に推進すべき。LEDは明るく、視認性よく、消費電力が尐ない。 ・信号;朝日や西日により場所と時間により信号が見えにくい時がある。 ・太陽灯の光と信号が同一視線上になり見えない。 ・全面的に信号機を大型に順次改善してください。 ・特に場所は限定できないが、樹木が繁っていて信号が見えにくい。道路への庭 木の出っ張り等で通行しにくくなっている箇所があります。 ・樹木で信号が見えづらい箇所が、時々ある。 ・立木、樹木等により信号がかくれるケースがあります。特に春から夏にかけて の成長の活発な時。 ・一方通行標識の高さはもう尐し上の方がいい ・新しい道路が作られ途中まで出来上がって、その先の道路が出来ていない時、 かなり手前で行き止まりを知らせるのと旧道に続く道をわかるように ・カーブの先の信号機には予告灯を設置 ・主要交差点の行先案内の予告標識をもっと設置 ・大きな枠を付けて太陽光を遮る ・機械的に色板等を昔の腕木式フラッシャーの如くに使う ・逆光で信号色が見えにくいのを防ぐためシャッター式カバーを作動させる ・ 「LED」の早急な取り替えと共に時差式信号を廃止し、矢印信号を増やす ・予告信号があれば追突事故が起きにくい ・国交省整備局などの上級官庁が指導して、国・市町村道の信号配置に整合性を 持たせるべき ・高さを変えて3箇所ぐらいにあれば解決 ・左側にも補助信号機を設置 ・標示板は道路中央に張り出す ・信号機に大きなカバーを設ける等、太陽光を遮る個別の対策を実施する。 16 5.交差点等における理想的な信号制御のあり方の検証 ●高齢ドライバーの現状 人と車双方がスムーズかつ安全に通行できる歩車分離の交差点形態を望む意見 がみられる。 ●検討する内容 深夜時間帯の点滅式、青時間の長さ調整といった信号制御の手法について、理 想的なあり方の検討が必要である。 また、交差点における望ましい歩車分離のあり方の一つとして、例えば、車と 歩行者の動きを完全分離することが可能なスクランブル交差点の導入など、高齢 ドライバー・高齢歩行者双方の使いやすさや安全性を踏まえた検討が求められる。 ●検討のポイント ・既に推進されている交差点改良や歩行者専用レーン、歩道橋、あんしん歩行エ リアといった施策について、歩車分離及び双方の利便性や安全確保の観点から の効果検証 ・例えばスクランブル交差点は安全性が高まる半面、各信号の青時間が短くなる など、条件や立場により意向・意見が異なるため、それらを踏まえた歩車分離 の理想的なあり方 ・個別にこれらの対策が必要な交差点を抽出し、具体的な課題とその改善策 17 ◎関連動向 (1)関連する既存施策例 施 策 内 容 幹線道路における交通事故 交差点改良、歩道等の整備、道路照明の設置等を実施する。 対策の重点的実施 あんしん歩行エリア 住居系地区又は商業系地区について、交通規制の実施や信 号機の設置、道路標識・道路標示の整備、歩道整備等面的 かつ総合的な事故抑止対策を実施する。 歩行空間のバリアフリー化 道路の改築事業等による整備と併せて歩道及び自転車道 等の整備を実施する。 スクランブル交差点 車両に対するすべての信号を停止信号にし、歩行者が交差 点内をどの方向にも進めるようにすることで、車と歩行者 の動きを完全分離することのできるスクランブル交差点 を導入する。 図 3-5-1 スクランブル交差点例 資料:YAHOO 画像検索 (2)関連する高齢ドライバーの現状 ●高齢運転者の運転行動上の特徴 ・事故の多くが交差点内で発生、交差点内とカーブでの発生率は、高齢者の方が より高い。 18 ●高齢者の事故実態や身体機能の状況 ・年齢階層別に道路形状別人身事故件数割合をみると、高齢者は若年層に比べ、 「単路」の割合が低い一方、「交差点」の割合が高い。概して高齢者は交差点内 での交通事故が多いと考えられる。 図 3-5-2 年齢階層別道路形状別人身事故件数割合 0% ~64歳 50% 41.8% 100% 0.0% 13.0% 42.2% 2.9% 0.0% 65~69歳 50.6% 10.4% 35.4% 3.5% 0.1% 70~74歳 49.8% 10.5% 35.9% 3.7% 0.0% 75~79歳 49.2% 10.7% 36.0% 4.0% 0.1% 80歳以上 48.5% 交差点 10.8% 交差点付近 単路 踏切 36.6% 4.0% 一般交通の場所 資料:交通事故総合分析センター ○参考:高齢運転者アンケート調査における回答者からの主な意向及び提案 ・ドイツなど海外での信号表示「青→黄→赤→黄→青」の方式は判りやすく、日 本でも導入すべきだ。 ・交差点での歩車分離の促進 ・交差点の信号は全て人・車別方式とする ・主要交差点以外の信号を午前1時から午前6時まで点滅信号機に ・時差式信号を廃止し、矢印信号を増やす ・歩行者の押しボタンは尐し時間が掛かりすぎる。もう尐し短く 19 6.中央線、路側帯における標示手法の検証 ●高齢ドライバーの現状 特に夜間や雤天時を中心に、中央線や路側帯等の表示をより見やすくしてほし い、とする高齢ドライバーの意見が多い。 その一方、高齢ドライバーの運転の傾向として、ハンドル操作がより急、カー ブ走行中ハンドルを必要以上に左右に切る、ハンドル操作が多いといった特徴が あり、その支援が求められる。 ●検討する内容 カーブ等走行時でのふらつきやはみ出しを防ぐための施策である区画線の高輝 度化や視線誘導標の是非、その照度等について、理想的なあり方の検討が必要で ある。 また、車線逸脱対策としての中央分離帯や、線上に凹凸の突起物を付けるラン ブルストリップス等の是非も含め、より安全に通過可能な中央線のあり方につい ての検討が求められる。 ●検討のポイント ・既に推進されている区画線の高輝度化等中央線、路側帯における標示手法の効 果評価 ・例えばランブルストリップスについては、ドライバーが中央線をはみ出してい ることを認知しやすい半面、中央線上通過時に不快な振動や音を発生させるた め、その是非やあり方 ・個別にこれらの対策が必要な箇所を抽出し、具体的な課題とその改善策 20 ◎関連動向 (1)関連する既存施策例 施 策 区画線の高輝度化 内 容 急なカーブ等の対向車線へはみ出す可能性がある箇所や、 長い直線区間等の漫然運転、居眠り運転等となりやすい箇 所に対し、中央線及び外側線の線上に凹凸の突起物を付け ることで、タイヤが区画線を踏むと音が鳴り、運転者への 注意喚起を行う。また、夜間及び雤天時にはヘッドライト が突起物に反射するため、運転者への視線誘導となる。 図 3-6-1 区画線の高輝度化イメージ 区画線の高輝度化 資料:交通事故対策・評価マニュアル 及び交通事故対策事例集 21 (2)関連する高齢ドライバーの現状 ●高齢運転者の運転行動上の特徴 ・ハンドル操作速度を みると、高齢者のほ うが、ハンドル操作 の開始~終了間の 操作速度 高齢者 非高齢者 高齢者 非高齢者 瞬間 最大値 40km/h 14.45 13.51 54.5 47.0 走行速度 50km/h 18.53 16.20 61.1 51.2 自由速度 17.10 15.10 53.8 49.7 操作速度、及びその 間の瞬間最大値とも高く、ハンドル操作がより急となっている。 ・カーブ走行中のハンドル角の標 準偏差をみると、全ての走行に 高齢者 非高齢者 おいて高齢者の方が大きく、高 40km/h 4.14 2.59 走行速度 50km/h 4.17 3.07 自由速度 4.07 2.66 齢者はカーブ走行中、ハンドルを必要以上に左右に切りながら走行している様 子がうかがえる。 40km/h ・カーブ走行中の急なハンドル操 高齢者 非高齢者 作の発生回数をみると、高齢者 4 1 走行速度 50km/h 5 2 自由速度 6 1 のほうが多くなっている。 資料:高齢運転者のカーブ走行時特性に関する一考察 ○参考:高齢運転者アンケート調査における回答者からの主な意向及び提案 ・雤が降る夜間は停止線などの道路の標識やセンターラインなど見えなくなる。 ・道路の外側線やセンターラインが明確であって欲しい。歩道のない所は特に外 側線が重要である。 ・道路上の白線が不明確になっている場所が目立つ。 ・誰もが感じることは、夜間の雤降りで路面が光って運転しずらいことと走行分 離帯、中央車線分離帯の見ずらいこと。 ・本線なのに直角に曲がる場合、2車線ともきれいに白線を引くべき ・標識やセンターラインなど見えなくなる。表示塗料にガラスなどの反射成分を 増やして ・センターライン、側線ラインに反射剤等を入れてライトに反射するように 22 7.理想的な一時停止線の位置・デザインの検証 ●高齢ドライバーの現状 高齢ドライバーの交通事故件数割合をみると、一時不停止による事故の割合が 高い。 その一方、高齢ドライバーの意見として、一時停止線の位置が手前過ぎて安全 確認しにくいという不満がみられる。 ●検討する内容 一時停止であることを分りやすく示す標識や信号制御、道路線について、存在 の認知度や注意喚起効果の向上を図る理想的な手法に関する検討が必要である。 特に一時停止線の位置については、周辺確認を容易にするための具体的な改善 手法や、ハンプやクランクを設置する手法の是非等に関する検討が求められる。 ●検討のポイント ・一時停止表示のあり方について、例えばより前方への移動や複数本引くといっ た、位置やデザイン、表示回数等に関する理想的なあり方 ・ハンプやクランクといった物理的に減速を促す施策について、プラス、マイナ ス双方の特性を鑑みた有用性の検討が必要。例えばハンプは速度減速を促す物 理手段として効果は高いものの、ドライバーに不快感も与える可能性があるた め、イメージハンプの導入も含め、その是非やあり方 ・一時停止規制が設定されている個別の問題箇所を抽出した上で、具体的な課題 とその改善策 23 ◎関連動向 (1)関連する既存施策例 施 策 ハンプ 内 容 車道路面に凸型舗装等を施すことにより、その上を車が通 過する際に、車の速度に応じた加速度で車を垂直に押上げ る。 図 3-7-1 ハンプ例 (2)関連する高齢ドライバーの現状 ●高齢運転者の運転行動上の特徴 ・道路標識等による一時停止場所で、停止線の手前で減速しないまま通過した者 の割合が、記憶力、判断力等が低下している恐れのない者に比べ、これらの機 能が低下している恐れがある者については3割増、認知症のおそれがある者に ついては8割増となる。 ・高齢運転者による交通事故の発生については、他の年齢層に比べて運転操作不 適、一時不停止、安全不確認等の割合が高く、その原因は、身体機能の変化、 交通安全意識の不徹底によるものと考えられる。 ・安全不確認、一時不停止の割合が高い(長年の運転の慣れから一時不停止によ る事故が多い)。 24 ●高齢者の事故実態や身体機能の状況 ・年齢階層別に法令違反別人身事故件数割合をみると、高齢層では、概して「信 号無視」や「一時不停止」といった違反の割合が若年層より高い。特に、 「75~ 79 歳」と「80 歳以上」の後期高齢者は、 「信号無視」や「一時不停止」の割合 が高い。 図 3-7-2 年齢階層別法令違反別人身事故件数割合 0% 50% 100% 2.9% 3.2% 4.3% 1.2% ~64歳 4.5% 11.8% 24.5% 32.2% 15.5% 3.6% 3.9% 5.9% 1.1% 65~69歳 4.8% 17.6% 9.1% 37.2% 16.7% 4.0% 3.7% 6.4% 1.4% 70~74歳 5.3% 4.8% 3.6% 7.0% 2.0% 75~79歳 6.1% 18.4% 9.3% 19.5% 35.4% 8.6% 16.2% 32.2% 16.3% 5.2% 3.6% 7.7% 2.4% 80歳以上 6.4% 19.9% 信号無視 ハンドル操作不適 動静不注視 8.5% 30.9% 交差点交差道路通行車両 ブレーキ操作不適 安全不確認 15.3% 一時不停止 前方不注意 その他 資料:交通事故総合分析センター ○参考:高齢運転者アンケート調査における回答者からの主な意向及び提案 ・停止線で止まっても左右車が来ているか見えない。あの停止線が何とかならな いか。尐し動いて左右見る。それで一旦停止でスローで見える所で止める。 ・交差点の手前、停車ラインがあっても乗り越えて止まる癖の車があります。停 車ラインを後1mだけ手前にすれば良いと兼ねてから思っています ・ハンプをもっと多く設置して欲しい。特に交通死亡事故多発地域。 ・横断歩道は車輌の停止線から3m離す。歩道近くは凹凸を路面に作る ・ 「もう一本の停止線」設置要望 ・停車ラインを後1mだけ手前にすれば良い ・道路上に事前に標識と共に凹凸を設置し、自動的に低速される ・ 「止まれ」の所にはハンプを設けて停止違反者を減らす ・一方通行の標識について、標識と共に路面にラインを太いものから細いものに グラデーションして表示する。 25 8.理想的な右折導入路・右折レーン及び右折矢印信号のあり方の検証 ●高齢ドライバーの現状 高齢ドライバーの交通事故実態をみると、右折時の事故の割合が高い。 その対策として、右折導入路・右折レーン及び右折矢印信号の設置推進を望む 意見が目立つ。 ●検討する内容 右折導入路・右折レーン及び右折矢印信号について、課題や理想的なあり方を 検討する必要がある。 その上で、特に問題や課題のある個別の信号や交差点等について、固有の課題 と改善策の検討を要する。 ●検討のポイント ・右折導入路・右折レーン及び右折矢印信号のあり方について、例えば道路標識 や右折矢印信号、導入路の長さ、右折信号機の位置・形状、右折導入路の位置・ デザインといった交差点を構成する要素や付帯設備、交通安全施設等に関する 理想的なあり方 ・個別に問題のある箇所を抽出した上で、右折導入路等の導入の必要性や、既存 施設等に関する課題とその改善策 ◎関連動向 (1)関連する既存施策例 特に具体的な既存施策例は見受けられなかった。 (2)関連する高齢ドライバーの現状 ●高齢運転者の運転行動上の特徴 ・車両相互事故では、出会い頭衝突と右折時衝突の発生率が高い。 ・高齢ドライバーの運転行動特性として、対向車の接近速度と右折限界距離(右 折できる限界だと被験者が判断した距離)が短い、という実験結果がある。 26 ●高齢者の事故実態や身体機能の状況 ・年齢階層別に事故類型別人身事故件数割合をみると、高齢者は若年層に比べ、 「追突」の割合が低い一方で、「出会い頭」や「右折時」の割合が高くなってい る。前期及び後期の高齢者間におけるこの傾向の差はあまりない。 図 3-8-1 年齢階層別事故類型別人身事故件数割合 0% ~64歳 2.3% 50% 36.0% 100% 25.4% 9.3% 2.0% 0.3% 0.6% 8.7% 15.4% 2.3% 0.4% 0.6% 65~69歳 2.5% 23.6% 31.7% 11.2% 9.8% 17.9% 70~74歳 2.7% 23.6% 31.6% 10.8% 2.9%0.6% 0.6% 9.4% 17.8% 3.8% 0.9% 0.5% 75~79歳 3.3% 80歳以上 3.3% 23.6% 23.6% 正面衝突 右折時 路外逸脱 32.3% 32.8% 10.3% 8.9% 10.6% 4.5% 1.3% 0.7% 8.3% 15.0% 追 突 車両相互その他 車両単独その他 16.5% 出合い頭 工作物 その他 資料:交通事故総合分析センター 27 ・年齢階層別に行動類型別人身事故件数割合をみると、高齢者は「直進」の割合 が低い一方、 「右折」の割合が高くなっている。前ページの結果と併せて考える と、タイミングの計測や素早い判断を求められる右折運転時の事故の可能性が 高い様子がうかがえる。 図 3-8-2 年齢階層別行動類型別人身事故件数割合 0% 50% ~64歳 16.4% 51.6% 65~69歳 17.2% 45.4% 70~74歳 16.9% 46.9% 75~79歳 16.7% 49.0% 80歳以上 16.7% 50.4% 発 進 直 進 左 折 100% 8.2% 9.3% 9.2% 8.4% 7.4% 右 折 後 退 14.4% 4.0%5.4% 17.4% 4.8% 5.9% 16.8% 4.8%5.3% 16.6% 5.0%4.5% 16.3% 4.2% 5.1% その他 資料:交通事故総合分析センター 28 ○参考:「高齢者の交通モード別の安全行動等に関する調査研究」(自動車安全運転セ ンター)における実験結果 ●内容 ・高齢者及び非高齢者について、交通モード別に、比較実験を行った。 ●結果(自動車関連項目を抜粋) ・制動実験では、高齢者ほど距離が長くなる。 ・右折可否判断(交差点において被験者を右折待機させた上で対向車を接近させ、 右折可能と判断する距離を測定)では、高齢者は対向車の速度に関係無く距離 で判断する傾向がある。 ○右折可否比:対向車 60km/h で3回測定し た平均値と、同 30km/h で3回測定した平 均値の比。小さいほど、高スピード時で の右折可能と判断する距離が短い。 ○グラフの見方: 最大値 上位 25%の値 中央値 上位 75%の値 最小値 ・模擬市街路走行(障害物や駐車車両等を配置した模擬市街地において被験者に 運転してもらい、先行車から自動車安全運転センター安全運転中央研修所の教 官が被験者の運転行動を観察・評価し得点化)では、全般的に高齢者、特に後 期高齢者の評価は低い。 ○点:教官の評価を場面毎に得点化した、非高齢者、前期高齢者、後期高齢者のグループ別平均点 ・高齢者は「安全運転に心がけている」、「安全確認を行っている」との意識が 強いが、実際の運転行動との間にズレがある。 29 ○参考:「高齢者ドライバーの右折時特性に関する実車実験」(国土技術政策総合研究 所)における実験結果 ●内容 ・高齢者(65 歳以上)と非高齢者(59 歳以下)それぞれ 20 名を対象に、2車線 道路での右折(CaseA)、4車線道路での右折(CaseB)を想定し、対向車の1 台目が通り過ぎた直後に、右折するか否かの判断をする実験を行った。 ・対向車の車頭時間を2、4、6秒に、走行速度を 40、60、80km/h にそれぞれ設 定し実験を行った。 ●結果 ・全体的には、高齢者は非高齢者に比べ、「右折する」の回答割合が低く、慎重 な判断を行っているようである。 ・設定車頭6秒で、対向車速度 40km/h と 80km/h の車頭時間選択率(「右折する」 と回答した割合)は、非高齢者は約 20 ポイントの差であるのに対し、高齢者で は約 50 ポイントもの差が見られる。6秒後に2台目の対向車が通過するという 条件は同一ながらも、高齢者は個々人ごとの判断に差が生じている。 ・右折所要時間をみると、CaseB CaseA の高齢者のみ右折所要時間の平 CaseB 均値及び分散が大きく、幅員の 広い道路における右折所要時間 高齢者 3.7 秒 0.5 4.2 秒 1.1 平均値 分散 平均値 分散 非高齢者 3.7 秒 0.3 3.7 秒 0.5 が長くなっている。 ・実車頭時間から右折所要時間を引いた右折ミス(値がマイナスの場合)の割合 をみると、高齢者の右折ミスの割合は非高齢者に比べ、CaseA で3倍、CaseB で 5倍にのぼる。特に4車線の右折でより危険な状況にある様子がうかがえる。 高 齢 者 非 高 齢 40km/h 60km/h 80km/h 40km/h 60km/h 80km/h 2秒 - 30 CaseA 4秒 15.4% 14.3% 16.7% 4.5% 3.7% 6秒 0% 0% 0% 0% 0% 0% 2秒 100% 100% - CaseB 4秒 57.1% 41.2% 33.3% 11.1% 11.5% 6秒 0% 0% 0% 0% 0% 0% ○参考:高齢運転者アンケート調査における回答者からの主な意向及び提案 ・大きい交差点であるのに「右折のみ青」の標示時間がない場合、右折がしにく い。時々見かける。 ・時間差信号機で右折の場合、最低4台通過できる時間を設定して欲しい。一般 に3台位で、4台目は殆ど矢印が消えてから強引に曲がっている。 ・右折レーンが設置されている交差点で、右折や進行方向の表示標識がない。 ・主要交差点では矢印信号が設置されているが、ほとんどの信号機の設定されて いる交差点には矢印信号の導入が遅れている。 ・右左折専用レーンの表示は信号手前のみではなく、渋滞すると直前でなければ 分からないので、もう尐し早く表示 ・右折の場合、最低4台通過できる時間を設定 31 9.右折や追越といった複数の作業を伴う運転操作時の情報提供のあり方の検証 ●高齢ドライバーの現状 運転動作のうち、周辺確認や複数の操作を同時に行わなければならない右折や 追越は、複雑な情報を同時に処理することが苦手な高齢ドライバーにとって負担 となっている。 ●検討する内容 高齢ドライバーが落ち着いてスムーズかつ安全に右折や追越等の運転操作を行 えるようにするため、右折矢印信号の位置やタイミング、合流タイミングのめや すの表示といった情報の提供方法について検討を行う。 ●検討のポイント ・高齢ドライバーに右折及び追越を行う場面を想定した上で、障壁や不快に思う こと、あると良いと思う情報及びその提供方法 ・必要に応じ、カーナゲーションからの周辺情報の提供等、車内機器との連携に よるインフラ協調システムを含めた安全運転支援システムのあるべき姿 ◎関連動向 (1)関連する既存施策例 特に具体的な既存施策例は見受けられなかった。 32 (2)関連する高齢ドライバーの現状 ●高齢運転者の運転行動上の特徴 ・交差点では多くの情報を基に瞬時に次の運転行動を決する必要があるが、高齢 運転者は、右左折の時に視線を切り替える回数が尐なく、進行方向を見る時間 が長くなる傾向がある。また、不適切なタイミングで右折を開始する傾向があ る。 ・高齢者の心的特性として、以下が挙げられる -複雑な情報を同時に処理することが難しい -新しい情報に接すると、その直前の情報を失念する傾向が生まれる -行動が自分本位、相手に甘えがち -注意力の配分や集中力の低下 ・高齢ドライバーの事故類型別死亡事故件数でみると、最も多いのが「出会い頭 衝突」 (2000 年)となっている。高齢者は周辺情報が入り乱れると判断を誤りや すいと言われている。この出会い頭衝突というのは「相手が先に通るだろうか」 というような、相手との駆け引きを含めたいろいろな周辺状況を把握したり、 頭の中で情報処理を必要とする状況である。 ○参考:「実車実験に基づく高齢ドライバーの運転特性の一考察」(国土技術政策総合 研究所)における実験結果 ●内容 ・高齢者(65 歳以上)と非高齢者(59 歳以下)それぞれ 20 名を対象に、交差道 路を通過する2台の普通車の間に合流するか否かの判断をする実験を行った。 ・通過車の車頭時間を2、4、6秒に、走行速度を 40、60、80km/h にそれぞれ設 定し実験を行った。 ●結果 ・全体的には、高齢者は非高齢者に比べ、「合流する」の回答割合が低く、慎重 な判断を行っているようである。 33 ・設定車頭6秒で、通過車速度 40km/h と 80km/h の車頭時間選択率(「右折する」 と回答した割合)は、非高齢者は約 20 ポイントの差であるのに対し、高齢者で は約 50 ポイントもの差が見られる。6秒後に2台目の通過車が通行するという 条件は同一ながらも、高齢者は個々人ごとの判断に差が大きい。 高齢者 ・合流所要時間をみる と、進入時間(被験 者が道路上に進入 非高齢者 高齢者 平均値 標準偏差 平均値 標準偏差 非高齢者 し終えるまでの時 40km/h 2.77 秒 0.61 3.07 秒 0.56 60km/h 2.50 秒 0.67 2.73 秒 0.41 80km/h 2.35 秒 0.64 2.44 秒 0.34 間)は、高齢者、非高齢者とも通過車の速度が速いほど短い所要時間で進入し ている。しかし、高齢者のほうが、通過車の速度が速いほど個人差が大きい。 ・到達時間(被験者が 一定の速度に達す るまでの時間)は、 高齢者 平均値 標準偏差 平均値 標準偏差 非高齢者 若干ではあるもの 40km/h 8.33 秒 2.16 7.97 秒 1.92 60km/h 11.79 秒 2.81 11.67 秒 2.80 80km/h 18.33 秒 5.86 17.47 秒 4.53 の高齢者の方が長い傾向にある。 ・合流所要時間から みた合流ミス(理 論上通過車と接 触する場合)の割 合をみると、通過 高 齢 者 非 高 齢 設定車頭時間4秒 ○ △ × 100% 0% 0% 0% 18% 82% 0% 0% 100% 0% 0% 100% 0% 0% 100% 0% 0% 100% 40km/h 60km/h 80km/h 40km/h 60km/h 80km/h 設定車頭時間6秒 ○ △ × 57% 39% 4% 47% 13% 40% 29% 25% 46% 57% 32% 11% 25% 44% 31% 14% 18% 68% 者の速度が速くなるほど、車頭時間が短くなるほど×の割合が高くなる。また、 若干ではあるが、高齢者の方が×の割合が低くなっており、高齢者が慎重に判断 している様子がうかがえる。 34 10.逆走への注意喚起を呼びかける標識・標示等の検証 ●高齢ドライバーの現状 近年、特に高齢ドライバーによる高速道路や有料道路での逆走が増加しており、 その対策が求められている。 ●検討する内容 高齢ドライバーの意見も踏まえながら、逆走の可能性を知らせるために効果的 な具体策や、逆走時にそれを知らせて適切な対応を促す手法を検討することが必 要である。 ●検討のポイント ・高齢ドライバーへの逆走注意に関する効果的な喚起手法 ・逆走による交通事故の多い、高速道路や有料道路の入り口やサービスエリア・ パーキングエリア等での効果的な注意喚起による逆走防止策。実際に逆走事故 が発生した箇所がある場合、その原因やその後の対策についてケーススタディ ・カーナゲーションからの情報提供等、車内機器との連携も含めたインフラ協調 システムとの連携や、ソフト策も含めた対応策のあるべき姿 ◎関連動向 (1)関連する既存施策例 施 策 逆走警告標識 内 容 高速道路等、逆走の発生が想定される箇所に設置されてい る標識。 図 3-10-1 逆走警告標識例 資料:MSN 産経 ニュース HP 35 (2)関連する高齢ドライバーの現状 ●高齢者の事故実態や身体機能の状況 ・高速道路における年齢階層別の行動類型別人身事故件数割合をみると、高齢者 は若年層に比べ「直進」の割合が低い一方、それ以外の行動類型の占める割合 が高くなっている。特に「逆走」については、「80 歳以上」において占める割合 が高く、後期高齢者を中心に逆走による人身事故が多い様子がうかがえる。 図 3-10-2 高速道路における年齢階層別行動類型別人身事故件数割合 0% 50% 100% 1.3% 0.2% ~64歳 5.0%4.8%4.8% 4.8% 79.1% 0.8% 0.3% 65~69歳 5.8% 7.4% 7.7% 73.0% 5.0% 1.5% 0.5% 70~74歳 10.2% 5.9% 7.8% 75~79歳 8.1% 5.8% 7.0% 68.3% 5.9% 0.0% 3.5% 66.3% 9.3% 2.4% 0.0% 80歳以上 7.3%2.4% 発 進 63.4% 17.1% 車線変更/右 車線変更/左 追越追抜 7.3% 逆 走 直進 その他 資料:交通事故総合分析センター 36 Ⅳ.とりまとめ一覧表 インフラ 整備課題 道路案内標識 の適切な文字 サイズ・濃度 の検証 高齢ドライバーの現状 検討する内容 検討のポイント 関連する施策事例 関連する高齢ドライバーの現状 実態・状況 ・生活視力は若年層のそれを下 回る ・ 「小さい文字は読みにくい」と 不具合を感じる 高齢者の視力低下や小さい文 字の読みにくさが指摘され、判 別距離が短くなる。基本的に標 識の文字を「大きく」すること が望まれている。 道路案内標識の文字の最適な 大きさや濃度、輝度等の検討が 必要である。 また、複数の標識が逆に見に くいとする意見もみられ、理想 的な設置位置や設置個数につい て検討を要する。 特徴 ・既存施策の効果検証 ・わかりやすい道案内の推進 ・加齢に伴い視力は低下。 ・文字サイズや画数、濃度等の ・道路標識・道路標示の大型化・ ・標識内文字の画数が多いほど 理想的なあり方、最適な標識 高輝度化等 判別距離が短い。 数等の情報提供の手法や情報 ・視認性・耐久性に優れた大型固 ・動体視力が低下し、標識の判 量 定標識及び路側可変標識の整 読が遅くなり、標識を見落と ・個別に問題のある標識・標示 備 したり、車線変更が遅れがち の具体的な課題とその改善策 になる。 照明等の適切 照度の検証 高齢ドライバーは、より明る い照明の設置・増設を望んでい る。特に地方部において、その 意見が目立つ。 明暗の変化への対応が困難な ことへの対応も望まれる。 夜間や雤天時の視認性向上の ための照明のあり方の検討が必 要である。 トンネルの明暗差の対応策に ついても検討を要する。 ・照明の適切な照度、設置位置、 ・道路照明の増設 バランス等についての理想的 ・幹線道路における交通事故対 なあり方 策の重点的実施 ・個別に課題のある箇所の抽出 と具体的な改善策 ・高齢者の視野は、夜間になる ・高齢者のほうが、コントラス とほとんど見えない人もい トがはっきりしない文字の読 る。 み取りが困難。 ・暗さに順応するまでの時間が、 ・「急に暗い場所に行くと戸惑 高齢群は若齢群の約 3.5 倍の う」、「薄暗い場所は歩きにく 時間を要する。 い」と感じる高齢者の割合が 高い。 ・照明の明暗の度を天候によっ て変化するような設備 ・信号交差点や横断歩道はでき るだけ明るい電灯を付けて ・一般道路の「トンネル内」の 照明が、特に地方では暗い 標識と照明の 最適な組合せ の検証 道路照明と路面標示の効果的 な組合せの実現が望まれる。 個別の環境や条件に最適かつ 効果的な組合せ手法の検討が必 要である。 ・問題のある個所を個別に抽出 した上で、具体的な課題と最 適な組合せ手法のあり方 ・道路照明と路面標示及びその 組合せの際の、事故類型別事 故抑止率をみると、人対車両、 正面衝突、追突、右左折時に ついて、組合せの抑止率が高 い。 ・信号機のある地点は照明を付 ける ・道路標識を電灯で見やすく。 又は標識そのものを電気で信 号の様に ・カーブのある道には夜間塗料 表示または蛍光シールを貼る よう義務付けて欲しい。 道路標識や信 号機の適切な 設置位置や高 さの検証 交差点等にお ける理想的な 信号制御のあ り方の検証 太陽光や街路樹等に遮られる ために見にくい道路標識や信号 機がある。 現状の道路標識や信号機の位 置が高くて見にくい可能性があ る。 太陽光や街路樹等による視界 の遮りについて、最適な設置位 置等の対応手法に関する検討が 必要である。 上方の視野狭窄については、 道路標識や信号機の上方限界を 踏まえつつ、最適なあり方の検 証が求められる。 ・個別に課題となっている箇所 を挙げ、具体的な改善策 ・上方の視野狭窄について、信 号機や道路標識の設置位置の 高さについて、インフラトー タルとしての理想的なあり方 ・個別に最適位置を検討する必 要のある箇所について、望ま しい位置関係や事前掲出のタ イミング 人と車双方がスムーズかつ安 全に通行できる歩車分離の交差 点形態を望む意見がみられる。 信号制御の手法について、理 想的なあり方の検討が必要であ る。 例えば、スクランブル交差点 の導入など、高齢ドライバー・ 高齢歩行者双方の使いやすさや 安全性を踏まえた検討が求めら れる。 ・既存施策の効果検証 ・例えばスクランブル交差点は、 条件や立場により意向・意見 が異なるため、それらを踏ま えた歩車分離の理想的なあり 方 ・個別にこれらの対策が必要な 交差点を抽出し、具体的な課 題とその改善策 ・視線誘導標等の設置 - ・幹線道路における交通事故対 策の重点的実施 ・あんしん歩行エリア ・歩行空間のバリアフリー化 ・車と歩行者の動きを完全分離 することのできるスクランブ ル交差点を導入 37 - 参考:アンケート回答例 ・文字をもっと大きく ・より大型で見えやすいものに 工夫しては ・近くに他の標識が多すぎる。 ・加齢に伴う視力の低下、視野 ・上方の視野については高齢者 狭窄も尐なくない。 の方が狭くなっている。 ・高齢者の場合、まぶたが垂れ 下がっていて上を見ることが 得意でなくなっている。 ・信号、標識の見落としが多い。 ・大きな枠を付けて太陽光を遮 る ・高さを変えて3箇所ぐらいに あれば解決 ・標示板は道路中央に張り出す ・樹木で信号が見えづらい箇所 が、時々ある。 ・事故の多くが交差点内で発生、 ・道路形状別人身事故件数割合 交差点内とカーブでの発生率 をみると、高齢者は若年層に は、高齢者の方がより高い。 比べ、「交差点」の割合が高 い。 ・交差点の信号は全て人・車別 方式とする ・歩行者の押しボタンは尐し時 間が掛かりすぎる。もう尐し 短く ・ドイツなど海外での信号表示 「青→黄→赤→黄→青」の方 式を導入すべき。 インフラ 整備課題 高齢ドライバーの現状 検討する内容 検討のポイント 関連する既存施策例 特に夜間や雤天時に、中央線 区画線の高輝度化や視線誘導 ・既存施策の効果検証 ・区画線の高輝度化 中央線、路 側帯におけ や路側帯等をより見やすくして 標の是非、その照度等について、 ・例えばランブルストリップス 理想的なあり方の検討が必要で について、その是非やあり方 る標示手法 ほしい、とする意見が多い。 その一方、高齢ドライバーの ある。 ・個別にこれらの対策が必要な の検証 ハンドル操作がより急といった 特徴があり、その支援が求めら れる。 また、中央分離帯やランブル ストリップス等、より安全に通 過可能な中央線のあり方につい ての検討が求められる。 箇所を抽出し、具体的な課題 とその改善策 特徴 ・高齢者のほうが、ハンドル操 作がより急となっている。 ・高齢者はカーブ走行中、ハン ドルを必要以上に左右に切り ながら走行している様子がう かがえる。 ・高齢者のほうが、カーブ走行 中の急なハンドル操作の発生 回数が多い。 関連する高齢ドライバーの現状 実態・状況 - 参考:アンケート回答例 ・本線が直角に曲がる場合、2 車線ともきれいに白線を引く べき ・センターライン、側線ライン に反射剤等を入れてライトに 反射するように ・雤が降る夜間は停止線などの 道路の標識やセンターライン など見えなくなる。 高齢ドライバーの一時不停止 一時停止であることを分りや ・一時停止表示のあり方につい ・ハンプ・クランクの設置 ・高齢運転者による運転操作不 ・高齢層では、概して「信号無 ・ 「もう一本の停止線」設置要望 理想的な一 すく示す標識や信号制御、道路 て、理想的なあり方 ・標識と共に路面にラインを太 敵・安全不確認、一時不停止 視」や「一時不停止」といっ ・ 「止まれ」の所にはハンプを設 時停止線の による事故の割合が高い。 その一方、高齢ドライバーの 線について、理想的な手法に関 ・ハンプやクランク等の物理的 いものから細いものにグラデ の割合が高い た違反の割合が若年層より高 けて停止違反者を減らす 位置・デザ 意見として、一時停止線の位置 する検討が必要である。 に減速を促す施策について、 ーションして表示 い。 ・停止線で止まっても左右車が インの検証 が手前過ぎて安全確認しにくい という不満がみられる。 特に一時停止線の位置につい ては、具体的な改善手法や、ハ ンプやクランクの是非等に関す る検討が求められる。 プラス、マイナス双方の特性 を鑑みた有用性の検討が必要 ・一時停止が設定される個別の 問題箇所を抽出し、具体的な 課題とその改善策 理想的な右折 導入路・右折 レーン・及び 交差点形状の あり方の検証 高齢ドライバーの交通事故実 態をみると、右折時の事故の割 合が高い。 その対策として、右折導入 路・右折レーン及び右折矢印信 号の設置推進を望む意見が目立 つ。 右折導入路・右折レーン及び 右折矢印信号について、課題や 理想的なあり方を検討する必要 がある。 その上で、特に問題や課題の ある個別の信号や交差点等につ いて、固有の課題と改善策を検 討を要する。 右折や追越と いった複数の 作業を伴う運 転操作時の情 報提供のあり 方の検証 周辺確認や複数の操作を同時 に行わなければならない右折や 追越は、高齢ドライバーにとっ て負担となっている。 右折や追越等の運転操作の際 に、高齢ドライバーが落ち着い てスムーズかつ安全にそれらの 作業を行えるようにするため、 情報の提供方法について検討を 行う。 ・右折導入路・右折レーン及び 右折矢印信号のあり方につい て、交差点を構成する要素や 付帯設備、交通安全施設等に 関する理想的なあり方 ・個別に問題のある箇所を抽出 し、右折導入路等の導入の必 要性や、既存施設の課題の整 理とその改善策 ・右折及び追越を行う場面を想 定し、障壁や不快に思うこと、 あると良いと思う情報及びそ の提供方法 ・必要に応じ、インフラ協調シ ステムを含めた安全運転支援 システムのあるべき姿 逆走への注意 喚起を呼びか ける標識・標 示等の検証 近年、特に高齢ドライバーに よる高速道路や有料道路での逆 走が増加しており、その対策が 求められている。 逆走の可能性を知らせるため に効果的な具体策や、逆走時に それを知らせて適切な対応を促 す手法を検討することが必要で ある。 ・高齢ドライバーへの逆走注意 に関する効果的な喚起手法 ・逆走による交通事故の多い場 面での効果的な注意喚起によ る逆走防止策及びケーススタ ディ ・インフラ協調システムとの連 携や、ソフトを含めた対応策 のあるべき姿 来ているか見えない。 - - ・車両相互事故では、出会い頭 衝突と右折時衝突の発生率が 高い。 ・高齢ドライバーは、対向車の 接近速度と右折限界距離が短 い。 ・高齢運転者は、右左折の時に 視線を切り替える回数が尐な く、進行方向を見る時間が長 くなる傾向がある。 ・また、不適切なタイミングで 右折を開始する傾向がある。 ・高齢者は周辺情報が入り乱れ ると判断を誤りやすいと言わ れている。 ・高速道路に設置されている逆 走警告標識 ・右左折専用レーンの表示は信 号手前のみではなく、もう尐 し早く表示 ・右折の場合、最低4台通過で きる時間を設定 ・右折レーンが設置されている 交差点で、右折や進行方向の 表示標識がない。 - - ・高速道路における行動類型別 人身事故件数割合をみると、 「80 歳以上」において「逆走」 の占める割合が高い。 - 38 ・高齢者は若年層に比べ、「追 突」の割合が低い一方で、 「出 会い頭」や「右折時」の割合 が高い ・人身事故件数割合をみると、 高齢者は「右折」の割合が高 い - 参考.直近の高齢ドライバー支援に関する調査・研究動向 平成 20 年度以降の高齢ドライバー支援に関する社会動向を改めて把握するため、直近に 公的機関により行われた主な高齢ドライバー支援に関する調査・研究事業の概況を整理す る。 1.高齢運転者支援のための重点施策推進計画 「高齢運転者支援のための重点施策推進計画」は、警察庁交通局が平成 21 年6月にと りまとめた計画であり、各都道府県警察が関係機関等と緊密に連携しつつ、高齢運転者 支援のために必要な取組みを推進する施策を示したものである。 具体的には、各施策を①改正法の施行に併せて推進すべき事項、②今後の法令改正を 踏まえて推進すべき事項及び③その他の事項の3項目に整理した上で、警察庁において 今後講ずべき措置事項及び実施時期を示している。 表 2-1-1 「高齢運転者支援のための重点施策推進計画」 策定主体 警察庁交通局 策定時期 平成 21 年 6 月 内容 1 改正法の施行に併せて推進すべき事項 (1) 高速自動車国道等における車間距離保持義務違反に係る罰則の引上げ ・高速自動車国道等における車間距離保持義務違反に係る反則金の額及び基礎点 数を引き上げるために、道路交通法施行令を改正 ・「交通反則切符の様式等ならびに告知および交通反則告知書等の作成の要領に ついて」(昭和45年8月19日警察庁丙交指発第17号)を改正 (2) 地域交通安全活動推進委員の活動の追加 ・地域交通安全活動推進委員の活動の具体例や留意事項を追加するために、「地 域交通安全活動推進委員制度の運営について」(平成20年5月21日警察庁丁交 企発第127号)を改正 (3) 高齢運転者等専用駐車区間制度の導入 ・高齢運転者等専用駐車区間を利用することができる対象者、高齢運転者等標章 の交付手続等を定めるため、道路交通法施行令、道路交通法施行規則等を改正 ・高齢運転者等専用駐車区間の設置場所、高齢運転者等標章の交付手続に関する ガイドラインを策定 等 2 今後の法令改正を踏まえて推進すべき事項 (1) 高齢者講習の合理化 ・高齢者講習の運転適性検査のデータと実車による講習時の運転行動のデータを 収集 ・収集したデータを踏まえ、講習の簡素化の具体的な内容や、その対象となる者 の基準について検討 39 ・簡素化講習実施案の内容を検討し、試験講習を実施するとともに、講習予備検 査導入後1年間の講習の実施状況等を踏まえ、簡素化に向けた具体的な方針を 明確化 (2) 運転経歴証明書制度の充実 ・運転者管理システムの改修に向けた予算措置や運転経歴証明書に係る手数料条 例の改正など、必要な準備事項を明示 ・現在、免許証の返納後1か月間に限られている、運転経歴証明書の交付時期を 延長する政令改正を実施 (3) 高齢運転者標識の様式の検討 ・高齢運転者標識の様式の是非及び(様式を変更する場合の)具体的な様式につ いて、引き続き「高齢運転者標識の様式に関する検討委員会」における検討を 推進 ・様式を変更する旨決定した場合、道路交通法施行規則を改正 3 その他の事項 (1) 日常的な運転チェックを受けられる取組みの支援 ・高齢運転者に対する安全運転教育のための取組みの好事例を調査し、都道府県 警察に紹介するほか、関係団体等と意見交換 ・運転免許取得者教育に要する資機材等について助成を行うことが可能な地域活 力推進基盤創造交付金制度について、関係団体等に周知と活用促進 (2) 一般運転者に対する教習の改善 ・教習の標準について定める「指定自動車教習所の教習の標準について」(平成 20年警察庁丙運発第17号)を改正し、周囲の運転者が高齢運転者に配慮するこ とについて教習事項として明記するとともに、学科試験において活用できるよ う、同項目に関する問題例を作成し、都道府県警察に配布 ・更新時講習等においても高齢運転者に対する配慮が重要なことを周知徹底する よう、都道府県警察に指示 (3) 交通安全施設等の整備の一層の推進及び公共交通機関の利用促進に資するた めの環境整備 ・信号灯器のLED化、道路標識・標示の大型化、高輝度化等、視認性の高い交 通安全施設等については、道路構造、交通状況等を踏まえつつ、高齢運転者が 日常生活においてよく利用すると考えられる経路上を中心に積極的に整備を推 進 ・全国の都市部のバス専用レーン・優先レーン等を中心にバス優先信号制御の効 果が期待できる路線において、積極的にPTPSの整備を推進 40 2.高齢社会と道路交通環境のあり方についての提言 -シニアの自立的な移動を支援する交通環境づくり- 「高齢社会と道路交通環境のあり方についての提言」は、社団法人日本自動車工業会 が平成 20 年秋に実施したシニアドライバー向けアンケート調査などをもとに、高齢社会 と道路交通環境整備のあり方について、平成 21 年 3 月に同会の提言をまとめたものであ る。 具体的には、シニア向け対策の必要性を整理した上で、運転しやすい交通環境づくり に向けた提言として、具体策と施策実施の枠組み、施策の進め方を取りまとめている。 表 2-1-2 「高齢社会と道路交通環境のあり方についての提言」 策定主体 社団法人日本自動車工業会 策定時期 平成 21 年3月 内容 1.交通環境づくりの具体策 (1) 標識等の視認性向上 ○標識・標示類の視認性向上 ・標識や文字の大型化、情報量や表示色など工夫、信号灯機のLED化、夜間発 光式の標識、センターライン・道路鋲の整備など ○道路施設・設備の改良 ・トンネルや交差点の照明の改善、高速道路中央分離帯の遮光板の工夫をはじめ、 道路施設・設備全般について、視認性を向上させるための改良 (2) 道路や駐車スペースの整備改良 ・『有効幅員の拡大』 、 『歩道、自転車道の整備』、 『違法駐車の取締り』、『自転車 レーンの整備』 、 『右折レーン・信号の設置』、 『駐車スペースのゆとり確保』等 (3) 安全で快適な運転のためのITS活用 ○事故予防機能への大きなニーズ ・「衝突防止」 、 「夜間の視認性確保」、「死角や危険箇所情報の提供」など、事故 予防機能にシニアは大きなニーズを保有 ○予防安全へのITS活用と通信インフラの整備推進 ・自動車のセンサーなどによる「自律型の予防安全システム(ASV) 」を普及さ せることに加え、インフラ協調による予防安全が有力な手段 ・「新たな中期計画」や次期「社会資本整備重点計画」では、インフラ協調安全 運転支援システムの2010年の実用化をはじめ、様々な分野でITSを活用する ための通信インフラ整備を盛り込むことを要望 (4) 規制的施策について ・交通安全対策を進める上では、『区域流入規制の強化』や『面的な速度規制』と いった規制的施策の導入にあたり、関係者の納得が得られるプロセスを踏むこ とが重要 41 2.心身機能の特性やニーズに応じた施策の実施 (1) 施策の体系化と着実な実施 ・安全・快適性の向上から移動の介助・福祉に至るまで、シニアの心身機能の特 性やニーズに応じ、インフラ対策、交通手段対策、人施策を体系化し、それぞ れ適確な施策を講じていくことが重要 (2) 人、インフラ、クルマの総合的な取組み ○インフラ対策の事例:高機能舗装 ・高機能舗装は、排水が良く雤天時でも視界が確保され騒音も小さいため、安全 で快適な運転が可能となり、交通事故の大きな予防効果がある ○人対策の事例:シニアドライバー向け交通安全教育プログラム「いきいき運転 講座」 ・高齢ドライバーのアクティブな社会参加に貢献することを目的に、交通安全と 脳科学の専門家とともに、高齢ドライバー向け交通安全教育プログラム「いき いき運転講座」を開発 ○交通手段対策の事例:尐数乗合交通 ・ミニバスや乗合タクシーなどを用い、移動制約者や移動困難者などに対し、組 織的にサービスを提供するシステム ○シニアカー・パーソナルモビリティ ・自立的な移動手段としての意義がある一方で、道路インフラ(通行帯)を整え る必要があり 3.施策の進め方 (1) 高齢社会を見据えた交通施策の立案と目標の設定 ・ 「ユニバーサルデザイン政策大綱」は、歩行空間の整備や公共交通機関の利用促 進が中心であり、その施策体系は、シニアドライバーの急増などの実態とは見 合わない。更に、数値目標が殆ど掲げられていない ・シニア向け交通対策は、シニアドライバーの支援施策を追加するとともに、シ ニアの心身機能の特性やニーズに応じた施策の体系化、実施スケジュールと目 標・指標の策定が必要 (2) 調査・モニタリングの充実と達成度の評価 ・例えば出会い頭事故の多発地点など高輝度標識化の必要箇所、一車線道路での 右折レーン未整備箇所など、対策の実施規模を把握する必要あり ・実態の把握とともに、交通事故件数など、対策前後の効果を測定するため、目 標の達成度を評価(Check)し、改善(Action)しながら進めることが重要 42