...

2. 弦を伝わる横波 (波動方程式) ギターやバイオリンなど弦楽器の弦を

by user

on
Category: Documents
38

views

Report

Comments

Transcript

2. 弦を伝わる横波 (波動方程式) ギターやバイオリンなど弦楽器の弦を
2. 弦を伝わる横波 (波動方程式)
ギターやバイオリンなど弦楽器の弦を伝わる横波について学ぶ
(弦の横波が従う波動方程式を求める)
弦を𝑥𝑥軸方向に張り,y軸方向への平衡位置からの変位 𝑦𝑦(𝑥𝑥, 𝑡𝑡) が波の量である.
波の振幅が小さく,また波形(𝑦𝑦の関数形)の傾きも小さいとする.
弦の線密度𝜌𝜌[kg/m]と,弦の張力 𝑇𝑇[N]が,位置や時刻によらず一定とする.
弦の微小な部分(𝑑𝑑𝑑𝑑 = 𝑥𝑥2 – 𝑥𝑥1),質量 𝑑𝑑𝑑𝑑 = 𝜌𝜌 𝑑𝑑𝑑𝑑, がどのように運動するかを分析する
・
この部分は𝑦𝑦軸方向にだけ運動すると考える.
・
この部分に加わる力は,弦の張力だけ:この部分の両側で,接線の傾きが異なるため,合力が𝑦𝑦軸方向に生
じる.
張力の𝑦𝑦成分= 𝑇𝑇 𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠,
𝜃𝜃=接線が𝑥𝑥軸となす角
・・ 接線の傾きが小さいとするから
である.
𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠 ≃ 𝜃𝜃 ≃ 𝑡𝑡𝑡𝑡𝑡𝑡𝑡𝑡=𝜕𝜕𝑥𝑥 𝑦𝑦(𝑥𝑥, 𝑡𝑡)
・・ 合力の𝑦𝑦成分は
・
𝑇𝑇 𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠2 – 𝑇𝑇 𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠1 ~ 𝑇𝑇 {𝜕𝜕𝑥𝑥 𝑦𝑦(𝑥𝑥2, 𝑡𝑡) − 𝜕𝜕𝑥𝑥 𝑦𝑦(𝑥𝑥1, 𝑡𝑡) }
運動方程式:
𝑇𝑇 {𝜕𝜕𝑥𝑥 𝑦𝑦(𝑥𝑥2, 𝑡𝑡) − 𝜕𝜕𝑥𝑥 𝑦𝑦(𝑥𝑥1, 𝑡𝑡) } = (𝜌𝜌𝜌𝜌𝜌𝜌) 𝜕𝜕𝑡𝑡𝑡𝑡 𝑦𝑦(𝑥𝑥, 𝑡𝑡) ,
・
右辺の𝑥𝑥は 𝑥𝑥1 < 𝑥𝑥 < 𝑥𝑥2 , 𝑑𝑑𝑑𝑑 → 0 で 𝑥𝑥1 = 𝑥𝑥 = 𝑥𝑥2
運動方程式の両辺を 𝑑𝑑𝑑𝑑 で割ると
となり
𝑇𝑇 𝜕𝜕𝑥𝑥𝑥𝑥 𝑦𝑦(𝑥𝑥, 𝑡𝑡)
{𝜕𝜕𝑥𝑥 𝑦𝑦(𝑥𝑥2, 𝑡𝑡) − 𝜕𝜕𝑥𝑥 𝑦𝑦(𝑥𝑥1, 𝑡𝑡) }/𝑑𝑑𝑑𝑑 → 𝜕𝜕𝑥𝑥𝑥𝑥 𝑦𝑦(𝑥𝑥, 𝑡𝑡)
= 𝜌𝜌 𝜕𝜕𝑡𝑡𝑡𝑡 𝑦𝑦(𝑥𝑥, 𝑡𝑡)
を得る.これは,位相速度
𝑇𝑇
𝑐𝑐 = �
𝜌𝜌
の波動方程式に他ならない.
PSL 10 弦の波と共鳴
1
3. 問1
(1) c = �
𝑇𝑇
𝜌𝜌
(2) [𝑇𝑇] = [M][L][T]−2,
(c)
∂2 y
𝜕𝜕 𝜕𝜕𝜕𝜕
=
� �:
2
𝜕𝜕𝑥𝑥
𝜕𝜕𝜕𝜕 𝜕𝜕𝜕𝜕
PSL 10 弦の波と共鳴
𝑇𝑇
1
[𝜌𝜌] = [M][L]−1 , �� � = ([L]2 [T]−2 )2 = [L][T −1 ]
𝜌𝜌
∂2 y 1 𝜕𝜕 2 𝑦𝑦
−
= 0,
𝜕𝜕𝑥𝑥 2 𝑐𝑐 2 𝜕𝜕𝑡𝑡 2
[Δ𝑦𝑦] [L]
𝜕𝜕𝜕𝜕 Δy Δy
まず,
←
,� � =
=
= 1�無次元�,
[Δ𝑥𝑥] [L]
𝜕𝜕𝜕𝜕 Δ𝑥𝑥 Δ𝑥𝑥
Δy
� �
𝜕𝜕 𝜕𝜕𝜕𝜕
1
Δ𝑥𝑥
=
� � �� =
𝜕𝜕𝜕𝜕 𝜕𝜕𝜕𝜕
[Δ𝑥𝑥] [L]
2
4 弦を伝わる波のエネルギー 1
横波が来ると,弦が横方向に振動する.
横波がサイン波のとき,弦の一部は単振動する.
この単振動のエネルギーを求める.
弦を張った方向を𝑥𝑥軸とする.
𝑥𝑥 ~ 𝑥𝑥 + 𝑑𝑑𝑑𝑑 の部分が𝑥𝑥軸と直交する𝑦𝑦軸方向に振動し,変位を 𝑦𝑦(𝑥𝑥, 𝑡𝑡) とする.
弦の密度を,単位長さあたり 𝜌𝜌
この部分の
とする(𝜌𝜌は線密度,単位は [ kg/m ] ).
1
運動エネルギー = (1/2) (質量)×(速度)2 = 2 (𝜌𝜌 𝑑𝑑𝑑𝑑) (𝜕𝜕𝑡𝑡 𝑦𝑦)2
位置エネルギー = 張力がする仕事
この仕事は「張力 𝑇𝑇 ×弦の伸び 𝑑𝑑𝑑𝑑」と表せる.
弦が横波の形に変形して伸びた量
𝑑𝑑𝑑𝑑 = (𝑑𝑑𝑑𝑑2 + 𝑑𝑑𝑑𝑑2)1/2 − 𝑑𝑑𝑑𝑑
= 𝑑𝑑𝑑𝑑 {1 + (𝜕𝜕𝑥𝑥 𝑦𝑦)2}1/2 – 𝑑𝑑𝑑𝑑
1
2
~ 𝑑𝑑𝑑𝑑 {1 + (𝜕𝜕𝑥𝑥 𝑦𝑦)2} – 𝑑𝑑𝑑𝑑
1
= (𝜕𝜕𝑥𝑥 𝑦𝑦)2𝑑𝑑𝑑𝑑
2
近似計算(~)には,テーラー展開による 1 次近似,
1
1
(1 + 𝑧𝑧)2 ~ 1 + 𝑧𝑧
2
を用いた.
1
張力がする仕事 = 𝑇𝑇 × 𝑑𝑑𝑑𝑑 = 𝑇𝑇 × 2 (𝜕𝜕𝑥𝑥 𝑦𝑦)2𝑑𝑑𝑑𝑑
位置エネルギー =
1
2
𝑇𝑇 (𝜕𝜕𝑥𝑥 𝑦𝑦)2𝑑𝑑𝑑𝑑
dx の部分がもつ力学的なエネルギー = 運動エネルギー + 位置エネルギー
1
2
PSL 10 弦の波と共鳴
1
= (𝜌𝜌 𝑑𝑑𝑑𝑑) (𝜕𝜕𝑡𝑡 𝑦𝑦)2 + 𝑇𝑇 (𝜕𝜕𝑥𝑥 𝑦𝑦)2𝑑𝑑𝑑𝑑
2
3
5 問2
(i) ②の部分が移動する速さ(波のエネルギーが移動する速さ):𝑐𝑐
(ii) y 方向の変位の速さ:𝑢𝑢 =
1
𝜕𝜕𝜕𝜕
𝜕𝜕𝜕𝜕
𝐴𝐴
1 𝐴𝐴𝐴𝐴 2
1
= 𝑐𝑐,𝑑𝑑𝑑𝑑に含まれる質量: 𝑑𝑑𝑑𝑑 = 𝜌𝜌𝜌𝜌𝜌𝜌,運動エネルギーは (𝑑𝑑𝑑𝑑)𝑢𝑢2 = � � 𝜌𝜌𝜌𝜌𝜌𝜌
𝐿𝐿
2
2 𝐿𝐿
𝐴𝐴 2
1 𝐴𝐴 2
1 𝐴𝐴2
(iii) |𝑥𝑥| ≪ 1 → √1 + 𝑥𝑥 ≃ 1 + 𝑥𝑥より,√𝐿𝐿2 + 𝐴𝐴2 − 𝐿𝐿 = 𝐿𝐿�1 + � � − 𝐿𝐿 ≃ 𝐿𝐿 �1 + � � � − 𝐿𝐿 =
2
𝐿𝐿
2 𝐿𝐿
2
1 𝐴𝐴2
(iv) 長さ𝐿𝐿に対する伸びが
2
1 𝐴𝐴2
だから,𝑑𝑑𝑑𝑑に対する伸びは�
𝐿𝐿
1 𝐴𝐴𝐴𝐴 2
1 𝐴𝐴
2
1 𝐴𝐴2
𝑑𝑑𝑑𝑑
� � 𝐿𝐿 �. 位置エネルギーは𝑇𝑇 �2
𝐿𝐿
2
1 𝐴𝐴 2 𝑇𝑇
(v) 波の速さがc = �𝑇𝑇/𝜌𝜌となるので � � 𝜌𝜌𝜌𝜌𝜌𝜌 = � �𝑇𝑇/𝜌𝜌� 𝜌𝜌𝜌𝜌𝜌𝜌 = � �
2 𝐿𝐿
2 𝐿𝐿
2 𝐿𝐿
(vi) ①③ではエネルギーが 0 となり,②では
𝜕𝜕𝜕𝜕
A 𝜕𝜕𝜕𝜕
𝐴𝐴
=c ,
=−
𝜕𝜕𝜕𝜕
𝐿𝐿 𝜕𝜕𝜕𝜕
𝐿𝐿
𝜌𝜌
1 𝐴𝐴 2
𝐿𝐿
𝑑𝑑𝑑𝑑
1 𝐴𝐴 2
� � 𝐿𝐿 � = 2 � 𝐿𝐿 � 𝑇𝑇𝑇𝑇𝑇𝑇
𝐿𝐿
𝜌𝜌𝜌𝜌𝜌𝜌 = � � 𝑇𝑇𝑇𝑇𝑇𝑇
2 𝐿𝐿
1
𝜕𝜕𝜕𝜕 2
𝜕𝜕𝜕𝜕 2
1
𝐴𝐴 2
𝐴𝐴 2
1 𝐴𝐴 2
→ �𝜌𝜌 � � + 𝑇𝑇 � � � 𝑑𝑑𝑑𝑑 = �𝜌𝜌 �𝑐𝑐 � + 𝑇𝑇 � � � 𝑑𝑑𝑑𝑑 = � � (𝜌𝜌𝑐𝑐 2 + 𝑇𝑇 2 )𝑑𝑑𝑑𝑑
2
𝜕𝜕𝜕𝜕
𝜕𝜕𝜕𝜕
2
𝐿𝐿
𝐿𝐿
2 𝐿𝐿
となる.最右辺の第1項が弦の運動エネルギー,第2項が位置エネルギーである.両者は等しいので,エネルギ
𝐴𝐴 2
𝐴𝐴 2
ーを� � 𝜌𝜌𝑐𝑐 2 𝑑𝑑𝑑𝑑あるは� � 𝑇𝑇 2 𝑑𝑑𝑑𝑑と書いてもよい.
𝐿𝐿
𝐿𝐿
PSL 10 弦の波と共鳴
4
6 サイン波のエネルギー密度
サイン波
𝑦𝑦 = 𝐴𝐴 𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐(𝑘𝑘𝑘𝑘 − 𝜔𝜔𝜔𝜔)
では
𝜕𝜕𝑡𝑡 𝑦𝑦
= 𝜔𝜔𝜔𝜔 𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠(𝑘𝑘𝑘𝑘 − 𝜔𝜔𝜔𝜔)
エネルギー密度 𝑢𝑢 は
ここで
よって
エネルギー密度の時間平均
𝜕𝜕𝑥𝑥 𝑦𝑦
= − 𝑘𝑘𝑘𝑘 𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠(𝑘𝑘𝑘𝑘 − 𝜔𝜔𝜔𝜔)
1
𝐴𝐴2
𝑢𝑢 = {𝜌𝜌(𝜕𝜕𝑡𝑡 𝑦𝑦)2 + 𝑇𝑇 (𝜕𝜕𝑥𝑥 𝑦𝑦)2 } =
{ 𝜌𝜌𝜌𝜌2 + 𝑇𝑇 𝑘𝑘2} 𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠2 (𝑘𝑘𝑘𝑘 – 𝜔𝜔𝜔𝜔)
2
2
𝜌𝜌𝜌𝜌2 + 𝑇𝑇 𝑘𝑘2 = 𝜌𝜌𝜌𝜌2 + (𝜌𝜌𝜌𝜌2)(𝜔𝜔/𝑣𝑣)2 = 2𝜌𝜌𝜌𝜌2
𝑢𝑢 = 𝜌𝜌𝜌𝜌2 𝐴𝐴2 𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠2 (𝑘𝑘𝑘𝑘 – 𝜔𝜔𝜔𝜔)
1
< 𝑢𝑢 > = 𝜌𝜌𝜌𝜌2 𝐴𝐴2
2
PSL 10 弦の波と共鳴
5
7 問3
(i) ω = �𝑘𝑘/𝑚𝑚
(ii) 𝑥𝑥(𝑡𝑡) = 𝐴𝐴 cos 𝜔𝜔𝜔𝜔 , 𝑣𝑣(𝑡𝑡) = −𝜔𝜔𝜔𝜔 sin 𝜔𝜔𝜔𝜔
1
1
1
1
(iii) 𝐾𝐾(𝑡𝑡) = 𝑚𝑚𝑣𝑣 2 = 𝑚𝑚𝜔𝜔2 𝐴𝐴2 sin2 𝜔𝜔𝜔𝜔, 𝑉𝑉(𝑡𝑡) = 𝑘𝑘𝑥𝑥 2 = 𝑘𝑘𝑘𝑘2 cos2 𝜔𝜔𝜔𝜔
2
2
1
1
2
2 2
2
1
1
(iv)𝐸𝐸 = 𝐾𝐾(𝑡𝑡) + 𝑉𝑉(𝑡𝑡) = 𝑘𝑘𝐴𝐴2 cos2 𝜔𝜔𝜔𝜔 + 𝑚𝑚𝜔𝜔 𝐴𝐴 sin2 𝜔𝜔𝜔𝜔 = 𝑘𝑘𝐴𝐴2 = 𝑚𝑚𝑣𝑣 2 = 時間的に変化しない
(v)< K > =
𝐸𝐸
=
⏟
1
2
時間的に一定
だから平均しても
2 2
2
2
1
2
2 2
1
1
2 2
𝑚𝑚𝜔𝜔 𝐴𝐴 sin 𝜔𝜔𝜔𝜔 = 𝑚𝑚𝜔𝜔 𝐴𝐴 × = 𝑚𝑚𝜔𝜔 𝐴𝐴 ,
2
2
4
1
2
2
1
1
< V > = 𝑘𝑘𝑘𝑘2 = 𝑚𝑚𝜔𝜔2 𝐴𝐴2 =< K >,
1
4
2
4
< 𝐸𝐸 >= < K + V >=< K > +< V > = 𝑚𝑚𝜔𝜔2 𝐴𝐴2 = 𝑘𝑘𝐴𝐴 : 振幅の 2 乗に比例,振動数の 2 乗に比
2
2
同じ値になる
例
1
(vi) サイン波のエネルギー密度 < 𝑢𝑢 > = 𝜌𝜌𝜔𝜔2 𝐴𝐴2に微小な長さ𝑑𝑑𝑑𝑑をかけ,その内部のエネルギー
2
1
1
𝑑𝑑𝑑𝑑 =< 𝑢𝑢 > 𝑑𝑑𝑑𝑑 = 𝜌𝜌𝜌𝜌𝜌𝜌 𝜔𝜔2 𝐴𝐴2 = 𝑑𝑑𝑑𝑑 𝜔𝜔2 𝐴𝐴2
2
2
となり,(v)の力学的エネルギー𝐸𝐸とまったく同じになる.弦の1カ所に注目すると,その部分は単振動を行うの
だから当然の結果だろう.
PSL 10 弦の波と共鳴
6
8 サイン波のパワー
弦にサイン波の進行波があるとき,弦のどの部分にも,単位長さあたり < 𝑢𝑢 > の平均的なエネルギー密度があ
る.
ここで,
1
< 𝑢𝑢 > = 𝜌𝜌𝜌𝜌2𝐴𝐴2
2
であった.
波の移動とともに,このエネルギーが伝わる.その速さは波の速さに等しい.
弦の 1 点を 1 秒に通過する波のエネルギー(=波のパワー)は,
その点の左側にある「波が 1 秒で伝わる距離 =𝑣𝑣×1 秒」に含まれる平均エネルギーである.
したがって,1 点を通過する波のパワーの時間平均は
1
< 𝑃𝑃 > = < 𝑢𝑢 > 𝑐𝑐 = 𝜌𝜌𝜌𝜌2𝐴𝐴2 𝑐𝑐
2
波の速さは
𝑇𝑇
𝑐𝑐 = �
𝜌𝜌
と書けるので
1
𝑇𝑇
1
< 𝑃𝑃 > = 𝜌𝜌𝜔𝜔2 𝐴𝐴2 � = �𝑇𝑇𝑇𝑇 𝜔𝜔2 𝐴𝐴2
2
𝜌𝜌
2
PSL 10 弦の波と共鳴
7
9 固定境界条件
自由端では弦に力が働かず,弦は伸び縮みしない.
弦の伸びは
だから,自由端では
となる.
1
1
�𝑑𝑑𝑑𝑑2 + 𝑑𝑑𝑑𝑑2�2 – 𝑑𝑑𝑑𝑑 = 𝑑𝑑𝑑𝑑 {(1 + (𝜕𝜕𝑥𝑥𝑦𝑦)2)1/2 − 1} = 𝑑𝑑𝑑𝑑 (𝜕𝜕𝑥𝑥𝑦𝑦)2
2
(𝜕𝜕𝑥𝑥𝑦𝑦)2 = 0
→
「自由端では常に,横波の接線の傾きが 0 となる」
𝜕𝜕𝑥𝑥𝑦𝑦 = 0
この条件を満たす波は,数学的には,つぎのように作り出すことができる.
1.自由端をもたない無限に長い弦を考える
2.左側から自由端に向かう入射波に対し,まったく同じ振幅をもつ波を,右から入射させる
3.ふたつの波の振幅を,自由端で同じになるように重ね合わせると,自由端を原点とする偶関数の波になる.
4.どんな偶関数も原点で傾きが 0 だから,条件が満たされる.
5.自由端の左側では,どちらの波も波動方程式の解だから,重ね合わせたものも解である.
6.自由端の左側で,左に進む波が,自由端で生じた反射波である.
PSL 10 弦の波と共鳴
8
10 問4
単一振動数の定在波は,その振動数のサイン波の進行波を両向きに重ねてつくる.
そのとき定在波の形は
となることを既に学んだ.
𝐴𝐴 𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐(𝑘𝑘𝑘𝑘) 𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐(𝜔𝜔𝜔𝜔)
ここでは,𝑥𝑥 = 0 で振幅が常に 0 となるので,座標原点を適切に選びなおして
𝐴𝐴 𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠(𝑘𝑘𝑘𝑘) 𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐(𝜔𝜔𝜔𝜔)
と書くと,
𝑥𝑥 = 0 で常に振幅が 0 となる.時間波形は時間の原点をとりなおして 𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠(𝜔𝜔𝜔𝜔) としてもかまわない.
つぎに,𝑥𝑥 = 𝐿𝐿 で振幅が常に 0 となるためには,𝑘𝑘
となる.したがって
は任意の値ではなく,
𝑘𝑘 𝐿𝐿 = 𝜋𝜋 × 𝑛𝑛,
𝑛𝑛 = 1, 2, 3, …
𝑘𝑘𝑛𝑛 =
が弦に立つ波の波数に対する条件となる.
2𝜋𝜋
𝜆𝜆
= 𝑛𝑛
𝜋𝜋
𝐿𝐿
波長の条件として書き直すと
𝜆𝜆𝑛𝑛 = 2
振動数の条件として書き直すと
𝜈𝜈𝑛𝑛 =
となる.
𝐿𝐿
𝑛𝑛
𝑐𝑐
𝑐𝑐
=
× 𝑛𝑛
𝜆𝜆𝑛𝑛 2𝐿𝐿
=
𝑛𝑛
𝑇𝑇
× �
2𝐿𝐿
𝜌𝜌
長さL,両端固定の弦が,単一の振動数で共鳴するときは,これらのとびとびの振動数に限られる.
振動数 𝜈𝜈1 の波を 基本波, 𝜈𝜈𝑛𝑛 を第𝒏𝒏高調波(𝑛𝑛倍波ともいう)という.
それぞれの単一振動数の波の波形を,この弦の基準振動モードという.
基準振動モードは,弦が共鳴する1つの振動数における定在波の波形であり,節と腹がある.
PSL 10 弦の波と共鳴
9
11 自由境界条件
自由端では弦に力が働かず,弦は伸び縮みしない.
弦の伸びは
だから,自由端では
となる.
1
1
�𝑑𝑑𝑑𝑑2 + 𝑑𝑑𝑑𝑑2�2 – 𝑑𝑑𝑑𝑑 = 𝑑𝑑𝑑𝑑 {(1 + (𝜕𝜕𝑥𝑥𝑦𝑦)2)1/2 − 1} = 𝑑𝑑𝑑𝑑 (𝜕𝜕𝑥𝑥𝑦𝑦)2
2
(𝜕𝜕𝑥𝑥𝑦𝑦)2 = 0
→
「自由端では常に,横波の接線の傾きが 0 となる」
𝜕𝜕𝑥𝑥𝑦𝑦 = 0
この条件を満たす波は,数学的には,つぎのように作り出すことができる.
1.自由端をもたない無限に長い弦を考える
2.左側から自由端に向かう入射波に対し,まったく同じ振幅をもつ波を,右から入射させる
3.ふたつの波の振幅を,自由端で同じになるように重ね合わせると,自由端を原点とする偶関数の波になる.
4.どんな偶関数も原点で傾きが 0 だから,条件が満たされる.
5.自由端の左側では,どちらの波も波動方程式の解だから,重ね合わせたものも解である.
6.自由端の左側で,左に進む波が,自由端で生じた反射波である.
PSL 10 弦の波と共鳴
10
12 問5
反射波を決める条件は:入射波と反射波の重ね合わせは,𝒙𝒙 = 𝟎𝟎における接線の傾きが 0 となる.
(i) 左に進むサイン波はℎ𝐿𝐿 (𝑥𝑥, 𝑡𝑡) = 𝐴𝐴 cos(𝑘𝑘𝑘𝑘 + 𝜔𝜔𝜔𝜔 + 𝜙𝜙)と表せる.
∂
∂
𝑓𝑓𝑅𝑅 (𝑥𝑥, 𝑡𝑡) = −𝑘𝑘𝑘𝑘 sin(𝑘𝑘𝑘𝑘 − 𝜔𝜔𝜔𝜔) ,
ℎ (𝑥𝑥, 𝑡𝑡) = −𝑘𝑘𝑘𝑘 sin(𝑘𝑘𝑘𝑘 + 𝜔𝜔𝜔𝜔 + 𝜙𝜙)
𝜕𝜕𝑥𝑥
𝜕𝜕𝜕𝜕 𝐿𝐿
∂
∂
𝑓𝑓𝑅𝑅 (𝑥𝑥, 𝑡𝑡)�
+ ℎ𝐿𝐿 (𝑥𝑥, 𝑡𝑡)�
= 0 → −𝑘𝑘𝑘𝑘 sin(−𝜔𝜔𝜔𝜔) = 𝑘𝑘𝑘𝑘 sin 𝜔𝜔𝜔𝜔 = −(−𝑘𝑘𝑘𝑘 sin(𝜔𝜔𝜔𝜔 + 𝜙𝜙)) → ϕ = 0
𝜕𝜕𝜕𝜕
𝜕𝜕𝜕𝜕
𝑥𝑥=0
𝑥𝑥=0
𝑓𝑓𝐿𝐿 (𝑥𝑥, 𝑡𝑡) = A cos(𝑘𝑘𝑘𝑘 + 𝜔𝜔𝜔𝜔) ,
𝑓𝑓 = 𝑓𝑓𝑅𝑅 + 𝑓𝑓𝐿𝐿 = 𝐴𝐴(cos(𝑘𝑘𝑘𝑘 − 𝜔𝜔𝜔𝜔) + cos(𝑘𝑘𝑘𝑘 + 𝜔𝜔𝜔𝜔)) = 2𝐴𝐴 cos 𝑘𝑘𝑘𝑘 cos 𝜔𝜔𝜔𝜔
(ii) 左に進むサイン波はℎ𝐿𝐿 (𝑥𝑥, 𝑡𝑡) = 𝐴𝐴 sin(𝑘𝑘𝑘𝑘 + 𝜔𝜔𝜔𝜔 + 𝜓𝜓)と表せる.
∂
∂
𝑔𝑔𝑅𝑅 (𝑥𝑥, 𝑡𝑡) = 𝑘𝑘𝑘𝑘 cos(𝑘𝑘𝑘𝑘 − 𝜔𝜔𝜔𝜔) ,
ℎ (𝑥𝑥, 𝑡𝑡) = 𝑘𝑘𝑘𝑘 cos(𝑘𝑘𝑘𝑘 + 𝜔𝜔𝜔𝜔 + 𝜓𝜓)
𝜕𝜕𝜕𝜕
𝜕𝜕𝜕𝜕 𝐿𝐿
∂
∂
𝑔𝑔𝑅𝑅 (𝑥𝑥, 𝑡𝑡)�
+
ℎ (𝑥𝑥, 𝑡𝑡)�
= 0 → 𝑘𝑘𝑘𝑘 cos(−𝜔𝜔𝜔𝜔) = 𝑘𝑘𝑘𝑘 cos 𝜔𝜔𝜔𝜔 = −(𝑘𝑘𝑘𝑘 cos(𝜔𝜔𝜔𝜔 + 𝜓𝜓)) → ψ = π
𝜕𝜕𝜕𝜕
𝜕𝜕𝜕𝜕 𝐿𝐿
𝑥𝑥=0
𝑥𝑥=0
𝑔𝑔𝐿𝐿 (𝑥𝑥, 𝑡𝑡) = −A sin(𝑘𝑘𝑘𝑘 + 𝜔𝜔𝜔𝜔)
𝑔𝑔 = 𝑔𝑔𝑅𝑅 + 𝑔𝑔𝐿𝐿 = 𝐴𝐴(sin(𝑘𝑘𝑘𝑘 − 𝜔𝜔𝜔𝜔) − sin(𝑘𝑘𝑘𝑘 + 𝜔𝜔𝜔𝜔)) = −2𝐴𝐴 cos 𝑘𝑘𝑘𝑘 sin 𝜔𝜔𝜔𝜔
PSL 10 弦の波と共鳴
11
13 弦の基準振動モード
単一振動数の定在波は,その振動数のサイン波の進行波を両向きに重ねてつくる.
そのとき定在波の形は
となることを既に学んだ.
𝐴𝐴 𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐(𝑘𝑘𝑘𝑘) 𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐(𝜔𝜔𝜔𝜔)
ここでは,𝑥𝑥 = 0 で振幅が常に 0 となるので,座標原点を適切に選びなおして
と
書
く
𝐴𝐴 𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠(𝑘𝑘𝑘𝑘) 𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐(𝜔𝜔𝜔𝜔)
と
,
𝑥𝑥 = 0 で常に振幅が 0 となる.時間波形は時間の原点をとりなおして 𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠(𝜔𝜔𝜔𝜔) としてもかまわない.
つぎに,𝑥𝑥 = 𝐿𝐿 で振幅が常に 0 となるためには,𝑘𝑘
となる.したがって
は任意の値ではなく,
𝑘𝑘 𝐿𝐿 = 𝜋𝜋 × 𝑛𝑛,
𝑛𝑛 = 1, 2, 3, …
𝑘𝑘𝑛𝑛 =
が弦に立つ波の波数に対する条件となる.
2𝜋𝜋
𝜆𝜆
= 𝑛𝑛
𝜋𝜋
𝐿𝐿
波長の条件として書き直すと
𝜆𝜆𝑛𝑛 = 2
振動数の条件として書き直すと
𝜈𝜈𝑛𝑛 =
となる.
𝐿𝐿
𝑛𝑛
𝑐𝑐
𝑐𝑐
=
× 𝑛𝑛
𝜆𝜆𝑛𝑛 2𝐿𝐿
=
𝑛𝑛
𝑇𝑇
× �
2𝐿𝐿
𝜌𝜌
長さL,両端固定の弦が,単一の振動数で共鳴するときは,これらのとびとびの振動数に限られる.
振動数 𝜈𝜈1 の波を 基本波, 𝜈𝜈𝑛𝑛 を第𝒏𝒏高調波(𝑛𝑛倍波ともいう)という.
それぞれの単一振動数の波の波形を,この弦の基準振動モードという.
基準振動モードは,弦が共鳴する1つの振動数における定在波の波形であり,節と腹がある.
PSL 10 弦の波と共鳴
12
14 問6
1 (a) 図略
(b) ν0 =
𝑐𝑐
2𝐿𝐿
2 (a) 図略
より,弦長が 2 倍(半分)になると基本振動数が 1/2 の 60 Hz(2倍の 240 Hz)になる.
(b) (i)振幅は,両端と中央で 0,端から 1/4 および 3/4 だけ離れた位置で逆位相・最大)となる.サイン関数の
1周期分.
(ii)左半分と右半分では位相が 180°異なり,それぞれの中ではどの位置の位相差も 0 である.
3.両側が固定端の弦の中央付近に腹がある振動モードは,基本振動の次が(第二高調波はなくて)第三高調波
となるから.
PSL 10 弦の波と共鳴
13
15 問 7
𝑓𝑓1 =
𝑐𝑐
𝜆𝜆1
=
220 mm
1
2𝐿𝐿
𝑇𝑇
�𝜌𝜌
𝑇𝑇
50
より 𝜌𝜌 = (2𝐿𝐿𝐿𝐿)2 = (2×0.33×440)2 ≃ 6 × 10−4 kg/m
PSL 10 弦の波と共鳴
14
16 両側が固定端の弦の波動方程式の解
両端が固定されている,長さ L の弦[0, L]には(基準モード以外に)どのような波が立つのか,
波動方程式
𝜕𝜕𝑥𝑥𝑥𝑥 𝑦𝑦 –
に基づいて考える.
1
𝜕𝜕𝑡𝑡𝑡𝑡 𝑦𝑦 = 0
𝑐𝑐2
固定端の条件を満たす基準振動モードの解
𝑛𝑛𝑛𝑛𝑛𝑛
𝑐𝑐
𝑐𝑐
𝑦𝑦𝑛𝑛 = 𝐴𝐴𝐴𝐴 𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠 �
= 𝑛𝑛 𝜋𝜋
� 𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐 �𝜔𝜔𝑛𝑛 𝑡𝑡�, 𝜔𝜔𝑛𝑛 = 𝑐𝑐 𝑘𝑘𝑛𝑛 = 2𝜋𝜋
𝐿𝐿
𝐿𝐿
𝜆𝜆𝑛𝑛
の重ね合わせで一般的な解が求まると考える.
「一般的な解をフーリエ展開すると基準振動モードになる」と考え
𝑦𝑦 = Σ 𝑦𝑦𝑛𝑛
とする.
どのフ-リエ成分も固定端条件を満たすので,それらの重ね合わせである 𝑦𝑦も固定端条件をみたすし,
どの成分も波動方程式を満たすので,𝑦𝑦も波動方程式の解であることが保証される.
各成分の係数 (振幅) 𝐴𝐴𝑛𝑛 はどのようにして決まるかを考える.
時刻 𝑡𝑡 = 0 において時間を含む項が 𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐0 = 1 となるので
y(𝑥𝑥, 0) = Σ 𝑦𝑦𝑛𝑛(𝑥𝑥, 0) = Σ𝐴𝐴𝑛𝑛 𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠 (𝑛𝑛𝑛𝑛𝑛𝑛/𝐿𝐿)
すなわち,𝑡𝑡 = 0における弦の形 𝑦𝑦(𝑥𝑥, 0) = 𝑔𝑔(𝑥𝑥) が与えられると,そのフーリエサイン級数の係数として 𝐴𝐴𝑛𝑛が求
まる:
2
𝐿𝐿
𝑛𝑛𝑛𝑛𝑛𝑛
𝐴𝐴𝑛𝑛 = ∫0 𝑔𝑔(𝑥𝑥) 𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠𝑠 �
𝐿𝐿
𝐿𝐿
� 𝑑𝑑𝑑𝑑
𝑦𝑦(𝑥𝑥, 0) = 𝑔𝑔(𝑥𝑥) を初期条件といい,𝑦𝑦(𝑡𝑡, 0) = 𝑦𝑦(𝑡𝑡, 𝐿𝐿) = 0 を境界条件という.
ある時刻に弦の特定の箇所をつまみあげ,静かに放すときの音色(どのような振動数成分がどれだけ含まれるか)
は
つまむ位置で異なる.最初の三角形の波形をフーリエ展開すると,音色が分かる.
実際,弦の中央付近をつまんだときにくらべ,端の法をつまんだほうが,短い波長成分が多く含まれるので,高
い振動数成分がふくまれて
硬い音になる.
PSL 10 弦の波と共鳴
15
Fly UP