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第8回子どもの心 ・ 体と環境を考える会

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第8回子どもの心 ・ 体と環境を考える会
東京家政大学附属 臨床相談センター紀要 第7集
学会印象記
第8回子どもの心・体と環境を考える会
一学術大会を主催して一
近 喰 ふじ子
東京家政大学文学部心理教育学科 教授
平成18年12月16日(土)∼17日(日)の2
日間、東京家政大学板橋キャンパス(三木ホール)
栄養士などの会員も増え、発表の機会に浴してい
る。
において、「第8回子どもの心・体と環境を考え
さて、本題に入るが、本大会のメインテーマは
る会 学術大会一子どもの発達 原点にかえっ
「子どもの発達 原点にかえって考えよう!」で
て考えよう!」をテーマに開催した。第4回の本
ある。最近、多発している子どもの事故は会社だ
大会では吾郷晋浩会長(文京学院大学教授・現吉
けの責任なんだろうか?と思ったことによる。何
備国際大学教授)のもと、私は副会長をおおせつ
故なら、母親がわが子に関与しながら接していた
かった驚きと教育講演に瀬川クリニックの瀬川
ならば起きなかったと思うからである。すなわち、
昌也院長へ講演依頼の電話をしたことを懐かし
母親の多くは“子どもとはこういうものである”
く思い出される。瀬川昌也院長は脳のホルモンが
を知らない世代たちなのではないか?一世代前
子どもの健康とどのように関わっているのかの
の子どもたちは複合家族の中で育ち、多くの兄弟
講演をし、その後セロトニンやメラトニンなどの
姉妹や友人たちと接し、親よりも兄、姉やがき大
名前が広まったと言っても過言ではないと思っ
将に育てられてきたのであり、母親(や父親)は
ている。今回、第8回大会の会長の役を果たすこ
子育てをしなくてもすんでいたのである。それが、
とになり、若干の報告を述べさせていただくこと
母親(や父親)は今までしたこともない、してこ
にする。
なくてもすんでいた子育てというものをする状
ところで、「子どもの心・体と環境を考える会」
況に直面せざるをえなくなったからなのではな
は今回で第8回と歴史的には発展途上にあるが、
いか?育児、子育て、養育などの考え方の変換が
日本小児科学会の認定を受けている。発案者でも
要求されているように思われる。私にとっての大
ある故飯倉洋治先生は昭和大学小児科学教室の
きなテーマである“子どもの発達と母親の関与”
教授で、喘息のオ・一一・一ソリテイーでもある。学会な
を盛り込みながら開催した本大会の内容には、招
どで喘息の演題を出した発表者は、座長が飯倉洋
待講演、教育セミナー、教育講演、会長講演の他、
治先生だと分かると、恐れおののいたものである。
一般演題は「少子化対策」2題、「発達検査」2
それほど凄みがあった。それ故、心と体だけでな
題、「障害児支援」4題、「いじめ・不登校支i援」
く、環境という概念を盛り込み、総合的・学際的
5題、「心理療法」2題、「家庭・学校・医療環境」
に考えていこうとしたのであろうと、改めて敬意
3題の18演題が集まり、活発な論議が交わされ
を表したい思いである。看護師、心理士、保育士、
た。では、いくつかの関心の高い演題からみてみ
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第8回子どもの心・体と環境を考える会一学術大会を主催して
よう。発達障害に関する演題からは、上野久仁子
さて、シンポジウムのタイトルを「子どもたち
の「高機能軽度発達障害親の会 フレンズの取り
の発達を促すための家族機能とは?」としたのは、
組みの意義と今後の課題」、富田千鳥の「子ども
何よりもシンポジストの一人である葛飾区立小
の不適応と母子関係」、松尾良美の「小児科外来
松中学校の村田芳江校長の学校への取り組み(何
加療に苦慮する子どもを取り巻く医療・家庭環
度か訪問した事があった)が、何があっても私が
境」の3題のいずれもが発達障害児への支援を問
責任を取るという姿勢は教師や生徒の気持ちを
うたものであり、医療のみならず家庭、学校での
動かし、地域をも変えたという勢いを感じたから
現状の問題を訴えたのであり、それは成長後に生
であった。筆者は講演や研究データー一一・収集の際に、
じるであろう社会における障害児問題をどうす
村田芳江校長と何度か話をする中で、学校を良く
るのか?と問いかけられた、問題提起でもあった。
するのは校長先生のやる気と変えたい思いが教
日本よ!このままでいいのか?と呼びかけたよ
師や生徒や親を変えていくんだと改めて実感し
うに思える。上野久仁子はフレンズの2代目のリ
たのであった。例えば、新潟での田植えの実体験
ーダーであった。フレンズは発達障害児の母親達
をするという修学旅行をおこなった学校として
が中心となって出来た組織であり、母親達自らの
も有名である。京都や奈良へいく従来の修学旅行
自助努力でここまで発展させてきた会である。そ
を、子どもの身体を使い、肌で感じ、日本と日本
の母親達から働きかけられた東京家政大学附属
人を考える原動力の基礎作りをおこなったので
臨床相談センターは、東京家政大学文学研究科心
はないかと思っている。モデル校だから当たり前
理教育学専攻臨床心理学コースの大学院生と文
なのではなく、どの学校もこうだったらいいのに
学部心理教育学科学生に希望者を募り、その学生
なあ… と思ったものである。ところで、筆者
達がフレンズを支え、3年目に突入したのである。
は学校教育の中で、最も大事な位置を占めるのは
学生達が発達障害を学び、発達障害の児が思春期
幼稚園ではないかと思っている。幼稚園こそが基
を経て大人に成長していく姿を通じ、地域や社会
本教育の場であり、教諭になる人は子どもが好き
との繋がりをどのように発展させていけるのか
なだけではなく、優秀でなくてはいけないと思っ
を学ぶことを期待したいものである。次に、田中
ている。幼稚園では遊びを通じ脳と体のコントロ
大介の「学校における「いじめ問題」の現状」は
ールを身に付け、他者との関わりを学び、創造性
トピックともいえる演題であったが、いじめ特集
を育み、明日に生きる力を身に付けていける場と
でなかっただけにいじめに関する討議が出来な
考えている。幼稚園でのしっかりとした教育は小
ったことが悔やまれた。もう少し、発展させたか
学校、中学校に進学しても繋げていけるからであ
った。筆者は小・中・高の教師らの学校内での教
る。また、同時に幼稚園は家族機能に繋げやすい
育に関する一致した意見こそが“いじめ減少”の
場でもあると考え、練馬区光が丘わかば幼稚園の
キーワードではないかと考えている。この学会の
宮崎信子副園長にもお願いをした。練馬区教育相
重要な環境という概念をもう少し入れた、踏み込
談員である筆者は何度となくこの幼稚園での障
んだ発表が欲しかった。教育問題に関しては触れ
害児相談を担当している。当然ながら、宮崎信子
にくいこともあり、なかなかもう一歩を踏み込め
副園長の熱心で、優しく思いやる姿には頭が下が
ない問題を抱えているのかも知れない。
る思いであった。発表の中で、幼稚園が運動会や
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近喰 ふじ子
学芸会などを通じ、親子(父親や母親と)機能を
と決断した。東京家政大学の附属施設にはなって
高める働きをしている事への努力が理解でき、教
いないけれど、障害児教育や保育に関心の少なか
諭のその思いが一人一人の母親や父親を通じ、子
った40年も前に、筆者の大先輩でもある故跡見
ども達へのそっと関与する保育へと繋がること
一子児童学科教授が作った障害児施設である。す
を期待したいところである。ところで、小学校の
でに橋口英俊教授(ルーテル学院大学)から跡見
発表(さいたま市立本太小学校の飯島政範教諭)
先生の話は聞いていた。板橋区との共催で経営さ
では会長の意図が伝わっていなかったようで、誰
れている事から板橋区の住民である事が入室の
もが知っている知識を報告したにすぎず、現場に
条件となっている。児童学科の実習の場でもある
戻った時こそ発達を促すための家族機能をどう
のと同時に、心理教育学科の臨床心理学実習の場
したらいいのか考え、実践に結び付けて欲しいと
ともなっている。そこで、施設長でもある後藤嘉
願っている。会場での筆者の言葉を刺激に現場活
余子児童学科教授にお願いし、故跡見一子教授の
動を乗り切っていただきたい。
障害児への愛と先を見通すカに改めて敬意を表
新しい企画としては第8回の大会で始めてラ
し、その情熱の一部でもいただきたいとの思いも
ンチョンセミナーをおこなった。国立成育医療セ
込めていたのである。
ンター こころの診療部 発達心理科医長の宮
最後になりましたが、ポスターと抄録集を飾っ
尾益知先生にお願いをした。言葉の発達をライフ
た絵の制作者である蔭山 史ちゃん(わかくさ卒
ワークに取り組んできた筆者は「発達障害と言
業生)に御礼を申し上げると共に、今後の画家と
葉」というテーマで依頼したところ、「発達障害
しての発展を祈念いたします。また、来年の本学
のコミュニケーションとことばの成り立ち」とい
会は国立成育医療センター アレルギー科の大
うテーマをいただいた。参加者全員がお弁当を食
矢幸弘医長となります事を伝え、そこで皆様とお
べながら勉強した(昼食にお金がかからないとい
会いできる事を楽しみにしたいと願いつつ…。
うのは喜ばれた)。筆者は理事会のため、講演を
なお、筆者の会長講演ならびに、教育講演やセ
お聞きする事が出来ずに申し訳ないと思い、残念
ミナーなどは本学会の雑誌である「子どもの健康
でもあった。ところで、招待講演を何にしようか
科学(Health Science fbr Children)」に掲載されま
と考え、東京家政大学の一番の売りは?と思った
すので、お読みいただければ幸いに存じます。
ら、「わかくさグループ」しかないのかも…
東京家政六学附属臨床相談センター
〈相談したいときは〉
まずはお電話でお問い合わせ下さい。パンフレット等をお送りいたします。
内容をご確認の上、電話にてお申し込みください。当センターは完全予約制です。
受付電話番号:03−3961−0770(月∼土曜日10:00∼16二〇〇)
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