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京都大学大学院理学研究科 物理学・宇宙物理学専攻
京都大学大学院理学研究科 物理学・宇宙物理学専攻 平成 23 年度大学院入学試験 解答例 I-1 (連成振動) (1) (a) ラグランジアンは m mω 2 L = (ẋ21 + ẋ22 + ẋ23 ) + [(x1 − x2 )2 + (x2 − x3 )2 ], ω = 2 2 (b) 運動方程式は √ k . m x 1 −1 0 x1 d2 1 2 x2 , x −1 2 −1 = −ω 2 dt2 x3 0 −1 1 x3 1 1 1 λ = 0, 1, 3, |0⟩ = 1 , |1⟩ = 0 , |3⟩ = −2 . 1 −1 1 √ λ = 0 は並進対称性に対応する.基準振動は 2 つで Ω1 = ω, Ω3 = 3ω. 固有値は (c) κ = kA /k として x 1 −1 0 x1 d2 1 2 x2 , x −1 2 + κ −1 = −ω 2 dt2 x3 0 −1 1 x3 √ κ + 3 ± (κ + 3)2 − 4κ > 0, λ = 1, 2 √ 並進対称性が消えるため基準振動は 3 つで Ω1 = ω, Ω± = λ± ω .ちなみに κ → ∞ で λ− → 1 となる. λ− = 1 (κ + 3)2 − (κ + 3)2 − 4κ 1 √ √ =2 2 2 κ + 3 + (κ + 3) − 4κ (1 + κ3 ) + (1 + κ3 )2 − 4 κ → 1, つまり x2 が動けなくなると並進対称性と連続的につながる基準振動は左右対称な基準振動に吸収される. (2) (a) Iω 2 I [(θ1 − θ2 )2 + (θ2 − θ3 )2 + (θ3 − θ1 )2 ], I = ma2 , ω = L = (θ̇12 + θ̇22 + θ̇32 ) + 2 2 (b) θ 2 −1 −1 θ1 d2 1 2 θ 2 , θ −1 2 −1 = −ω 2 dt2 θ3 −1 −1 2 θ3 1 1 1 λ = 0, 3, 3, |0⟩ = 1 , |3, 1⟩ = 0 , |3, 2⟩ = −2 . 1 −1 1 1 √ k . I λ = 0 に対応するのは回転対称性.振幅の制限はそれぞれ 0, π3 , 2π 3 . (c) θ 1 + κ −1 −κ θ1 d2 1 2 θ2 , θ −1 2 −1 = −ω 2 dt2 θ3 θ3 −κ −1 1 + κ について同様に固有値を計算すればよい.κ = 0 で (1) に戻る.先に 1+κ −1 −κ −1 −κ 0 −1 −κ 2 −1 = (1 + κ)I + −1 1 − κ −1 , −1 1 + κ −κ −1 0 と分解すると比較的ラクに解ける.第 2 項の固有方程式は λ 1 κ 0 = det 1 λ + κ − 1 1 = λ2 (λ + κ − 1) + 2κ − 2λ − κ2 (λ + κ − 1) κ 1 λ = (λ − κ){λ2 − (1 − 2κ)λ + κ(κ − 1) − 2}, よって固有値は λ = 2κ + 1, 0, 3. √ √ 基準振動は Ω3 = 3ω, Ωκ = 2κ + 1ω の 2 つ. N 点系連成振動 まず N 個の質点がリング状に連なっている場合を考える.座標を xi ,角振動数を ω する.運動方程式は 2 −1 d2 2 = −ω dt2 xN −1 xN −1 となる.そこで行列 x1 x2 .. . 2 −1 −1 2 A= −1 −1 2 −1 .. . −1 2 −1 −1 x1 x2 .. . , −1 xN −1 2 xN −1 −1 .. , . −1 2 −1 −1 2 を対角化して基準モードを求めればよい. この行列を対角化するのは次のテクニックを用いると楽.まず A を分解して 0 1 1 0 A = 2I − 1 1 1 .. . 1 1 = 2I − (R + R−1 ), 1 0 1 1 0 2 と表す.ここで行列 0 1 0 R= 1 , 1 0 1 0 1 .. . を定義した.このように表すと,逆行列 R−1 は同時に対角化されるので R を対角化すれば A も対角化され ることが分かる.R の固有値および固有ベクトルは簡単に求められて 2πk λN = 1 =⇒ λk = ei N , 1 λk 2 |k⟩ = λk , .. . −1 λN k となる.従って P −1 AP = 2I − = 2 1+1 λ1 + λ−1 1 λ2 + λ−1 2 .. . λN −1 + λ−1 N −1 0 1 − cos 2π N 1 − cos 4π N .. , . −1) 1 − cos 2π(N N と対角化できる.基準モードは √ ωk = ω 2(1 − cos 2πk πk ) = 2ω sin2 ( ), k = 1, . . . , N − 1, N N となる.k = 0 は全体の回転対称性に対応しており振動にはならない.またモードは k ̸= π/2 で 2 重に縮退 しているため,異なる振動モードは N = 2n に対して n − 1 個,N = 2n − 1 に対して n 個しかない.例えば N = 4 のとき x′2 = x1 − ix2 − x3 + ix4 と x′4 = x1 + ix2 − x3 − ix4 の基準モードはどちらも 2ω である. 次に N 個の質点が端を壁に固定されて連成振動する場合を考える.運動方程式は x1 x2 .. . 2 −1 d2 2 = −ω dt2 xN −1 xN −1 2 −1 .. . −1 3 2 −1 x1 x2 .. . , −1 xN −1 2 xN となり,今度は行列 2 −1 −1 2 A= , −1 2 −1 −1 2 −1 .. . の固有値が必要になる.記述を簡単にするため,こちらも A = 2I + L, と分解しておく.すなわち問題は,N 次の正方行列 0 1 L = − 1 0 , 0 1 1 0 1 .. . 1 を対角化することに帰着された. これを解くために N 次の固有方程式が小行列展開によって DN λ 1 1 λ ≡ det(λI − L) = det 1 .. . 1 λ 1 = λDN −1 − DN −2 , 1 λ と書ける事に注意する.従って DN = λDN −1 − DN −2 , D0 = 1, D1 = λ, なる漸化式を解けば良い.ただし便宜的に D0 = 1 と定義した. この三項間漸化式を解くために特性方程式を考えて, DN − αDN −1 = β(DN −1 − αDN −2 ), αβ = 1, α + β = λ, α, β の対称性に注意して DN − αDN −1 = β N −1 (D1 − αD0 ), DN − βDN −1 = αN −1 (D1 − βD0 ), ∴ DN = αN +1 − β N +1 = αN + αN −1 β + · · · + αβ N −1 + β N , α−β を得る. 固有方程式は DN (λ) = 0 である.α ̸= β のとき αN +1 (λ) = β N +1 (λ) =⇒ α2(N +1) (λ) = 1, 4 となるがこれを満たすのは α = exp(ikπ/(N + 1)) となる時である.αβ = 1 に注意して λk = α + α−1 = 2 cos πk , k = 1, . . . , N N +1 となる.k の範囲は α ̸= β から制限されていることに注意. α = β = ±1 のときは DN ̸= 0 となり,特性方程式は満たされない. よって基準モードは √ ωk = ω 2(1 − cos πk πk ) = 2ω sin2 , k = 1, . . . , N, N +1 2(N + 1) となる.この系は N がいかなる値でも縮退していない. 三項間漸化式の別の解き方として, ( DN DN −1 ) ( = )( ) ( λ −1 DN −1 λ = 1 0 DN −2 1 −1 0 )N −1 ( ) D1 , D0 と表してみる.この行列の固有値も簡単に求められて √ λ λ ξ± = ± ( )2 − 1, ξ+ ξ− = 1, ξ+ + ξ− = λ, 2 2 ( ) ( ) 1 1 ξ+ ξ− |+⟩ = √ , |−⟩ = √ , 1 1 2 2 1 + ξ+ 1 + ξ− P = 1 λ ) ( ( ξ+ 1 ) ξ− , 1 となる.従って ( ′ DN ′ DN −1 = ξ+ 0 0 ξ− )N −1 ( D1′ D0′ ) N −1 ′ ′ ∴ DN = ξ+ D1 , N −1 ′ ′ DN D0 , −1 = ξ− さらに ( DN DN −1 ) = 1 λ ) ( ) ( N ′ N ′ ′ ′ 1 D0 ξ+ D1 + ξ− ξ+ D N + ξ− D N −1 , = N −1 ′ N −1 ′ ′ ′ DN + DN DN + ξ− DN −1 λ ξ+ −1 ∴ DN = N +1 N +1 ξ+ − ξ− , ξ+ − ξ− となり同じ結果を得る. I-2 (ロンドン方程式) (1) 導体中の電子の運動方程式は,熱摩擦による抵抗を η として m d2 x = −eE − ηv, dt2 5 と書ける.超伝導状態では散乱が生じないので m d2 x = −eE, dt2 となる.一方,電流密度は J = −env, と書ける.従って ∂J ∂v ne2 = −en = E, ∂t ∂t m を得る. (2) ∂J ne2 ne2 ∂B = rotE = − , ∂t m m ∂t ( ) ∂ ne2 ∴ rotJ + B = 0. ∂t m rot (3) 定式を積分して rotJ + ne2 ne2 B=− B0 , m m を得る.さらに定常状態を仮定すると rotJ = − これらから 1 2 ∇ B, µ0 m ∇2 B = B + B0 , ne2 µ0 を得る.従って λ2 = m . ne2 µ0 (4) マイスナー効果を説明するために B0 = 0 と置くと rotJ = − ne2 B, m つまり侵入してきた磁場を打ち消そうと上式だけの電流が発生すると解釈できる. 空間の対称性および接続条件から,非自明な磁場の成分は ∂ 2 Bz 1 = 2 Bz2 , ∂x2 λ これを |x| = d の境界条件の下で解いて Bz (x) = Bout を得る.d ≫ λ のとき, Bz (x) ∼ Bout (e cosh λx cosh λd x−d λ + e− , x+d λ ), となり,磁場は境界 |x| = d から導体中に λ 程度侵入すると e−1 に減衰することが分かる. 6 (5) 空間対称性と磁場の方向から,非自明な電流の成分は Jy (x) のみであることが分かる. ∂Jy 1 =− Bz , ∂x µ0 λ2 を解いて Jy (x) = − Bout sinh λx , µ0 λ cosh λd を得る.電流も磁場と同じ程度で減衰する. I-3 (2 粒子系接触型ポテンシャル) (1) 略 (2) (a) ボソンの場合,粒子の入れ替えに対して ψI ↔ ψII となることに注意して, ψI (x1 , x2 ) = ψII (x2 , x1 ) ⇒ A1 = B1 , A2 = B2 . 接続条件のうち,連続性は上の条件から自動的に保たれる.微分について (1) の結果から i(k2 − k1 )(B1 − B2 + A1 − A2 ) = 2c(A1 + A2 ), を得る.ボソン対称性を代入すると (k1 − k2 )(A1 − A2 ) = ic(A1 + A2 ) =⇒ A2 k2 − k1 + ic = . A1 k2 − k1 − ic あとは規格化条件から一意に定まる. (b)L だけ並進した粒子は必ず他方を追い越すので ψII (x1 + L, x2 ) = ψI (x1 , x2 ) =⇒ B1 eik2 L − A2 = B2 eik1 L − A1 = 0, 従って A2 k2 − k1 + ic A2 = = , B1 A1 k2 − k1 − ic A1 A1 = = = e−ik2 L . B2 A2 eik2 L = eik1 L (c) フェルミオンの場合,粒子の入れ替えに対して ψI (x1 , x2 ) = −ψII (x2 , x1 ) ⇒ A1 = −B1 , A2 = −B2 . 波動関数の連続性は x1 = x2 で成り立たず −1 倍の飛びが生じる.微分条件から c ̸= 0 として A1 = −A2 , B1 = −B2 である.境界条件は A2 A2 = = 1, B1 −B2 A1 A1 = = = 1. B2 −A2 eik2 L = eik1 L 7 (3) (a) ボソンのハードコア極限 c → ∞ で境界条件は eik2 L = −1, eik1 L = −1, となるから, ki = 基底状態は k1 = k2 = π L (2ni + 1) π, L だから,(ℏ = 1, m = 1/2) EB = 2 π2 . L2 (b) フェルミオンの場合 2ni π, L ki = であるから,基底状態は k1 = 2π L , k2 = 0 であり EF = 4 (4) L → ∞ のとき k1 = −k2 + 2π L N π2 . L2 → k1 = −k2 ≡ k と置いて,境界条件から e−ikL = −2k + ic , −2k − ic L → ∞ で成り立たせる解は k = ic/2 である(c < 0).波動関数の領域に注意して,無限遠で発散しない解と して ψI = A1 e 2 (x2 −x1 ) , ψII = B1 e 2 (x1 −x2 ) , c c エネルギーとして E=− c2 < 0. 2 II-1 (一様磁場) (1) 電流の方向と観測点への方向が直交していること,対称性から磁場は z 成分だけ持つこと,および電流 の回転する向きに注意する.z 軸上の磁場は µ0 N1 I 4π µ0 N1 Ia =− cos θ 2R2 µ0 N1 Ia2 =− , 2R3 Bz (z) = − cos θ · ˛ dl R2 となる.ただし R2 = a2 + z 2 である. (2) µ0 N1 Ia2 µ0 N2 I(2a)2 − 3 2R′3 2R ( ) µ0 Ia2 4N2 N1 = − 3 . 2 R′3 R Bz (z) = 8 ただし R′2 = 4a2 + z 2 . (3) z 方向に微分して, ∂z Bz (z) = − 3µ0 Ia2 2 ( 4N2 N1 − 5 R′5 R ) z, 中心付近では R ∼ a, R′ ∼ 2a であるから,磁場が一様であるためには ( 4N2 N1 − 5 (2a)5 a ) = 0, すなわち N2 = 8N1 であればよい. 下図は巻き数比(上から順に 10,8,5,1)に対する磁場の強さ.横軸は z 方向,縦軸は磁場の強さ. 図1 (4) µ0 N1 Ia2 Bz (z) = 2 ( 32 1 − 3 R′3 R ) . (5) |z/a| を微小として 4 次までのオーダーで展開する. 1 ∼ R3 ∼ ∼ ∼ 32 ∼ R′3 ( a3 1 + 1 ( ) 1 z 2 2 a − 1 8 ( z )4 )3 a 1 1 ( z )2 3 ( z )4 3 3 a 1+ +8 a ( 2 (a ) ( ( ) )2 ) 3 ( z )2 3 ( z )4 1 3 z 2 3 ( z )4 1− + + + a3 2 a 8 a 2 a 8 a ( ) ( ) ( ) 3 z 2 15 z 4 1 1− + , 3 a 2 a 8 a ( ) 4 3 ( z )2 15 ( z )4 1 − + , a3 2 2a 8 2a 9 を用いて 3µ0 N1 I Bz (z) = 2a ( ) 15 ( z )4 1− , 32 a を得る. (6) 中心における磁場の式 Bz (0) = 3µ0 N1 I , 2a に代入すると 3 1 · 4π · 10−7 · 10 · I · −2 , 2 10 ∴ I = 6π A, 10−4 = となる. 棒状試料の両端に対して |z/a| = 0.1 であるから,4 次オーダーまで展開した結果と比較すると Bz (z) 15 ( z )4 =1− ∼ 1 − 5.0 · 10−5 , Bz (0) 32 a となる.すなわち棒状試料の中心と両端では約 0.005% 異なる. (7) Maxwell 方程式より 0 = divB = 1 ∂ ∂ (rBr ) + Bz , r ∂r ∂z がすべての点で成り立つ.ただし軸対称性から ∂φ B = 0 であることを用いた. z 軸から微小に離れた点において Bz を軸上の磁場で近似すると,Bz に r 依存性は残らないので ( ) ˆ ∂ r 3µ0 N1 Ia2 32 1 1 rdr · Bz = − · − − 5 z Br = − r ∂z 2 2 R′5 R ( ) r 3µ0 N1 Ia2 32 1 = − 5 z, 2 2 R′5 R と計算できる.これは磁場が軸からの距離 r に対して線形に増加する近似になっている. II-2 (物理数学) (1) クレーローの微分方程式 y = xy ′ + f (y ′ ), において f (t) = t2 の場合である. 両辺を微分して y ′ = y ′ + xy ′′ + y ′′ f ′ (y ′ ) =⇒ y ′′ (x − f ′ (y ′ )) = 0, そこで y = ax + b と置けば一般解 y = ax + f (a), また x = f ′ (y ′ ) = 2y ′ から特異解 y= x2 , 4 10 を得る.一般解は特異解の包絡線になっている. (2) **途中** そもそもどういう形でやればいいのか,ローラン展開のように x の負冪?色々試したがよく分からない. (3) 複素積分を用いる. ˆ I= 0 ∞ √ ˆ ∞ ‰ x t2 z2 1 1 π dx = 2 dt = lim dz = 2πi · ( iπ/4 + i3π/4 ) = √ , 2 4 4 R→∞ 1+x 1+t 1+z 4e 4e 2 0 (4) L[−π, π] の C.O.N.S., {sin nθ, cos nθ}n∈N で展開すればよい. (5) 単位時間あたりに 1/T の確 率で来店する N 人の人間がいると考える.λ = N/T を有限値として N, T → ∞ の極限を取ると N! 1 1 ( )n (1 − )N −n n!(N − n)! T T 1 N n 1 N! 1 1 = ( ) (1 − )N (1 − )−n n! T N n (N − n)! T T λn 1 n−1 λ 1 = 1 · (1 − ) · · · (1 − )(1 − )N (1 − )−n n! N N N T λn −λ → e , n! Pn = となりポアソン分布に一致する. または,単位時間あたり来店人数 N/T を再現するように単位時間内に L 回の試行が行われる成功確率 p の 二項分布を考える.L を十分に大きく取れば各試行期間に来る人数が 0 か 1 にできるのでこの極限において 妥当である.平均の再現 Lp = N/T = λ の条件下で L! pn (1 − p)L−n n!(L − n)! L! λ λ = ( )n (1 − )L−n n!(L − n)! L L λn λ L L! λ = (1 − ) (1 − )−n n n! L (L − n)!L L λn −λ → e . n! pn = II-3 (光子平衡) (1) 壁面の微小面積 dA に,dt 時間のうちに,立体角 dΩ から飛来して衝突する,速さ v ∼ v + dv を持った粒 子の数 dN は,速さ分布を F (v), ´ F (v)dv = 1 として dN = (dA · vdt · cos θ) · n · F (v)dv · 11 dΩ , 4π ˆ ∴R= = dN/sAdt = n 4π ˆ ˆ 2π ˆ π 2 dϕ 0 ∞ sin θ cos θdθ 0 vF (v)dv 0 1 n ⟨v⟩ , 4 となる.これは分布型を仮定しない一般的な導出であり,光子の場合にもそのまま使える.なお問題文の f (v) とは 4π 2 v f (v), n F (v) = の関係にある. (2) マクスウェル分布 mβ 3/2 −β m v2 ) e 2 , 2π mβ 3/2 2 −β m v2 FM B (v) = 4π( ) v e 2 2π FM B (v1 , v2 , v3 ) = n( √ ⟨v⟩ = 4 1 , 2πmβ n =n ∴R= √ 2πmβ √ kB T , 2πm (3) (a) 理想気体の状態方程式 P V = N kB T ⇒ n = βP, 交換する粒子数の平衡条件を課せば RH = RL , √ √ nH TH = nL TL , P P √H = √L . TH TL (b) (1) と同様にして R が求まる.ただし n はあるエネルギーを持った光子の密度 n(ϵ) で置き換える.ϵ の エネルギーを持った粒子系について Rϵ = c n(ϵ), 4 であり,これは温度のみの関数である. 全体の平衡を考えるには全粒子数の期待値を求める.光子がボース粒子であることと,自由粒子とみなした 光子の 3 次元状態密度が D(ϵ) = d dϵ ( ) L 4 ϵ 8πV 2 · ( )3 · π( )3 = 3 3 ϵ2 , 2π 3 cℏ c h 12 であることから,全体の密度は N n= = V ˆ ∞ 1 dϵ βϵ − 1 e 0 ˆ ∞ ∞ ∑ 8π 1 = 3 3 3 x2 e−x e−nx dx c h β 0 n=0 ˆ ∞ ∞ ∑ 8π 1 x2 e−x = 3 3 3 e−nx dx c h β 0 n=0 ˆ ∞ ∞ ∑ 1 8π 1 ξ 2 e−ξ dx = 3 3 3 c h β n=0 (n + 1)3 0 = D(ϵ) 8π 1 ζ(3)Γ(3), c3 h3 β 3 従って光子の場合 R は R= 4πk 3 c n= 2 B ζ(3)T 3 , 4 c h3 III-1 (潮汐力) (1) 一様な角速度の下,各点の遠心力は Fc = m′ dω 2 .釣り合い条件から dω 2 = Gm D2 .最近点・最遠点にお いて,月の引力と遠心力の差(起潮力)は ∆F ∼ ±2 Gm R . D2 D (2) 月の引力が作るポテンシャル Gm R 3 cos2 θ − 1 R 2 Gm ≃− [1 + cos θ + ( ) ]. U = −√ D D 2 D R2 + D1 − 2RD cos θ 第一項は定数であるから無視して良い.第二項は地球表面上に同じ方向を向いた一様な大きさの力 を作る.つまり地球を質点と見做した近似であり,公転力を作る.第三項が潮汐力に対応する. (3) Fr ∂U3 GmR =− = (3 cos2 θ − 1), m′ ∂R D3 1 ∂U3 GmR 3 Fr =− =− sin 2θ. ′ m R ∂θ D3 2 (4) 扁平形. III-2 (一次元調和振動子) (1) (a) ギブス因子を考慮すれば Z= 1 N! ( 2πm β )N ( 13 2π kβ )N . Gmm′ D2 (b) ∂ ln Z = 2N kB T, ∂β ∂ ⟨E⟩ CV = = 2N kB . ∂T ⟨E⟩ = − (2) (a) 量子調和振動子は独立なので ( Z= ( ∞ ∑ )N e −βℏω0 (n+ 12 ) n=0 = βℏω0 e− 2 1 − e−βℏω0 )N , (b) ∂ ln Z ∂β ( ) 1 1 = N ℏω0 + βℏω0 , 2 e −1 ⟨E⟩ = − Cv = N (ℏω0 β)2 eβℏω0 , − 1)2 (eβℏω0 (c) 比熱は高温で古典と一致,低温で急減衰して 0 になる. (3) (a) 多電子は独立と見做せると仮定する.全粒子数を N ,1 粒子系の取り得る量子状態を ν ,粒子系の占有 状態を {nν } で表すと Ξ= ∞ ∑ N ∑ e−β ∑ ν nν (ϵν −µ) N =0 {nν } = k ∑ ··· = ∏ ν ( ∞ ∑ eβµN ZN N =0 k ∑ ∏ e−βnν (ϵν −µ) nλ =0 ν n1 =0 = k ∑ e ) −βnν (ϵν −µ) , nν =0 である.ν は量子状態のラベルであってエネルギーのラベルではない事に注意.すなわち,エネルギーが縮退 している場合,異なる ν が同じエネルギーを与えることがある. フェルミ粒子の場合 k = 1 であるから,大分配関数は Ξ= ∞ ∏ ∏ (1 + e−β(En −µσ ) ), n=0 σ=± となる.ただしここで 1 En = ℏω(n + ), n = 0, 1, . . . 2 σ µσ = µ + gµB H, σ = ±1, 2 14 と置いた.状態 ν を持つ粒子の期待値は nν = − 1 ∂ 1 ln Ξ = β(ϵ −µ) = f (ϵν ), β ∂ϵν e ν +1 であるから, Nσ = ∑ 1 . eβ(En −µσ ) + 1 n (b) ω0 → 0 の極限では電子は自由電子と見做せるため,系の状態密度は,1 次元系の自由電子の状態密度 ( ) dΩ1 d L 2mϵ 1 L 2m 1 1 D(ϵ) = = 2· · 2( 2 ) 2 = 2 ( 2 ) 2 √ , dϵ dϵ 2π ℏ 2π ℏ ϵ で表せる. 低温における期待値計算はゾンマーフェルト展開 ˆ ∞ ˆ µ dϵg(ϵ)f (ϵ) ≃ g(ϵ)dϵ + 0 0 π2 ′ g (µ), 6β 2 を用いる.エネルギーは ˆ ∞ E= 0 L 2m 1 dϵD(ϵ)f (ϵ)ϵ = 2 ( 2 ) 2 2π ℏ となる.従って低温の比熱は Cv = ˆ ∞ √ π2 1 dϵ ϵf (ϵ) ≃ const + 2 D(µ), 6β 2 0 2 π 2 kB D(µ)T. 6 プランク分布 ボース粒子の場合は k = ∞ であるから Ξ B = ∞ ∏ ∏ (1 − e−β(En −µσ ) )−1 , n=0 σ=± となる. 光子の場合は分散関係が異なり E = cp = cℏk であるから状態密度も変化する.例えば 3 次元空間の場合, フェルミ粒子の D ∝ √ ϵ に対して DB (ϵ) = dΩ3 d = dϵ dϵ ( 2·( L 3 4 ϵ ) · π( )3 2π 3 cℏ ) = 8πV 2 ϵ , c3 h3 となる.ここから内部エネルギーを計算すると ˆ ∞ 8πV ϵ3 dϵ, 3 3 βϵ c h 0 e −1 ˆ E 8πh ∞ ν3 ∴ u(v) = = 3 dν, hν V c 0 e kB T − 1 E= となる.ただし u はエネルギー密度で,周波数 hν = ϵ である.これは黒体輻射のプランク分布に他ならな い.エネルギーの温度依存系を計算すると ˆ E∝ 0 ∞ 1 ϵ3 dϵ = 4 βϵ e −1 β 15 ˆ 0 ∞ x3 dx ∝ T 4 , −1 ex となる. (c) 粒子数の期待値は ˆ N= dϵD(ϵ)f (ϵ), で与えられる.絶対零度の場合,フェルミエネルギー ϵF = µ(T = 0) 以下の状態に粒子が入るが,今はゼー マン効果の影響でスピンの向きによって実効的にフェルミエネルギーの大きさが変化する.すなわち, ˆ Nσ = dϵD(ϵ) ˆ β(ϵ−µσ ) 1 e µσ = T =0 dϵD(ϵ), 0 従って 1 1 M = gµB (N↑ − N↓ ) = gµB 2 2 ˆ µ↑ 1 1 1 gµB [Ω(µ + gµB H) − Ω(µ − gµB H)], 2 2 2 dϵD(ϵ) = µ↓ さらに磁場が十分に弱いと仮定すると 1 1 gµB · D(µ)gµB H = g 2 µ2B D(µ)H. 2 2 M∼ Bose-Einstein condensation 3 次元ボース粒子による BEC について.まず一般にボース粒子の場合,状態 ν にある粒子数の期待値が ϵ ∈ [0, ∞) で正になるための条件 f (ϵν ) = nν = 1 ≥ 0, ϵ ∈ [0, ∞), eβ(ϵν −µ) − 1 として化学ポテンシャルに条件 µ ≤ 0, が必要であることに注意する. 全体の粒子数を N ,粒子数密度を ρ = N/V で定義する.単位体積あたりの状態密度を同様に D で表す.3 √ 次元では A を定数として D = A ϵ であるが,この状態密度のエネルギー依存性は BEC の導出において本 質的である. 励起状態にある粒子数密度を ′ ρ = ˆ ˆ ∞ dϵD(ϵ) dϵD(ϵ)f (ϵ) = 0 1 , eβϵν e−βµ − 1 で定義する.これは変数変換によって ρ′ = A ˆ dx 3 β2 √ x ∞ 0 ex e−βµ − 1 , となる.ρ = ρ′ が成り立つ条件について考える.このとき ρ = N/V = A ˆ ∞ dx 3 β2 0 √ x ex e−βµ − 1 , が満たされるべきである.高温状態から全体の粒子数 N を一定にしたまま温度を下げることを考える.右辺 が一定に保たれるためには負の実数 µ が温度の低下に伴って増加しなければならない.しかし µ ≤ 0 の制約 16 があるため,ある転移温度 Tc で µ = 0 となったなら,それ以下の温度では µ = 0 になると考える.µ = 0 の とき n0 = f (0) = ∞ となり,ϵ = 0 の基底状態に巨視的な数の粒子が溜まる.これが BEC である. 転移温度 Tc を密度の関数として求める.T = Tc のとき,定義から ρ = ρ′ および µ = 0 であるので, A ρ = N/V = ˆ 3 βc2 となるはずである.よって 0 ( Tc = となり転移温度は密度の 2 3 ∞ √ √ 3 x π 3 2 dx x = ATc ζ( ), e −1 2 2 2ρ √ ζ( 32 )A π ) 23 2 ∝ ρ3 , 乗に比例する. 転移温度以下では µ = 0 となるため,物理量を求める際の積分が厳密に実行できる.例えばエネルギーにつ いて ˆ E= dϵD(ϵ)f (ϵ)ϵ = A ˆ ∞ 5 β2 3 dx 0 5 x2 ∝ T 2, x e −1 または励起状態にある粒子数密度について ′ ρ = A ˆ ∞ 3 β2 0 √ 1 3 T 3 x2 π 3 2 = AT ζ( ) = ρ( ) 2 , dϵ x e −1 2 2 Tc となる.基底状態の粒子数密度はここから ρ0 = ρ − ρ′ = ρ(1 − ( T 3 ) 2 ), Tc と求められる. III-3 (変分法) (1) 次元解析により E0 ∝ ( gℏ2 2 )3 . m (2) (a) 試験関数を固有関数で展開すれば ⟨E⟩ = ⟨Ψ|Ĥ|Ψ⟩ = ∑ ∑ |ci |2 Ei ≥ E0 ( |ci |2 = 1). (b) π −1 ) 4, 2b bℏ2 3g 2 ⟨E⟩ = + , 2m 16b2 N =( (c) ∂b ⟨E⟩ = 0 より b0 = ( 3mg 2 1 )3 . 4ℏ2 17 (d) 境界条件,Ψ0 との直交条件,節の数,物理的直感を満たすように取る.例えば Ψ1 = N ′ xe−bx . 2 **節の数とエネルギー準位の対応,クーランヒルベルトを参照** (3) y = gx により古典では g は同じ運動のスケール変換因子になる.量子論では不確定性原理が働くので スケールの大きさ ∆x を小さくすると ∆p が大きくなりエネルギーに影響する.また量子論でスケール変換を 行うと経路積分 ´ eiS/ℏ に g が現れるが,結合定数の値を変えてしまいくりこみの発散等の問題が発生. III-4 (ランジュバン方程式) (1) (a) 略 (b) d dt (y1 ẏ2 − y2 ẏ1 ) = 0 が常に成り立つので W は定数. (2) (a) 添字 j を省略する.x(t) の斉次解として x1 (t) = cos ωt, x2 (t) = sin ωt, を取る.位相および振幅の不定性は結合定数 c に含まれる. x(t) = c1 (t) cos ωt + c2 (t) sin ωt, c(t) が満たす条件に注意しつつ, x(0) = c1 (0), ẋ(0) = ωc2 (0), W = ω, γ r(s) = X(s) m を得る.よって ] [ ] ˆ t ˆ t ẋ(0) γ γ X(s) sin(ωs)ds cos ωt + + X(s) cos(ωs)ds sin ωt x(t) = x(0) − mω 0 ω mω 0 { [ } ˆ ]t γ 1 t dX(s) cos ωs =− − X(s) + cos(ωs)ds cos ωt mω ω ω 0 ds 0 {[ } ]t ˆ γ sin ωs 1 t dX(s) + X(s) − sin(ωs)ds sin ωt mω ω ω 0 ds 0 [ +x(0) cos ωt + ẋ(0) sin ωt ω ˆ t γ γ dX(s) 2 2 = X(t)[cos ωt + sin ωt] − [cos(ωs) cos(ωt) + sin(ωs) sin(ωt)] ds 2 2 mω mω 0 ds γ ẋ(0) − X(0) cos ωt + x(0) cos ωt + sin ωt mω 2 ω ˆ t { } γ γ dX(s) γ ẋ(0) = X(t) − cos(ω(t − s)) ds + x(0) − X(0) cos ωt + sin ωt. 2 2 2 mω mω 0 ds mω ω 18 (b) 各 j について上の結果を代入すれば } { } dX(s) ẋj (0) γj M Ẍ(t) = γj cos(ωj (t − s)) ds + xj (0) − X(0) cos ωj t + sin ωj t ds mω 2 ωj 0 j } ˆ t ∑ 2 dX(s) } ∑ {{ γj γj ẋj (0) =− ds + γj xj (0) − X(0) cos ωj t + sin ωj t , 2 cos(ωj (t − s)) ds mω 2 ωj 0 j mωj j ∑ { γj − mωj2 ˆ t 従って ˆ t M Ẍ = − η(t − s) 0 dX(s) ds + F (t), ds ∑ γj2 η(t − s) = cos(ωj (t − s)), mωj2 j } } ∑ {{ γj ẋj (0) F (t) = γj xj (0) − X(0) cos ω t + sin ω t , j j mω 2 ωj j (c) η(−t − s) = η(t + s), F (−t) = F (t) であるから,積分変数を s′ = −s とすれば d2 X(−t) d2 X(−t) M = M =− dt2 d(−t)2 ˆ −t η(t + s) ˆ 0 t =− η(t − s′ ) 0 dX(s) ds + F (−t) ds dX(s′ ) ′ ds + F (t), ds′ となって方程式は時間反転で不変である.(X(t) が解ならば X(−t) も解). ω を非常に大きくすると,積分の項は速度に依存する反作用項 (η > 0) に,F (t) はランダムな力(ホワイト ノイズ)になると考えられ,時間反転対称性を破るランジュバン方程式になる. M Ẍ = −γ Ẋ + F (t). 更新日:2015/9/20 作成者:Koji Umemoto 19