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サウンドモニター回路の作製 1

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サウンドモニター回路の作製 1
サウンドモニター回路の作製
この 項では、ア ナログ回路 技術の中心 的存在であ る OP アンプ を用いた回路 実習を行う 。
実際 に OP アン プ回路を製 作し動作確認 を行うこと で、 OP アンプを 中心とした 電子回路
の理 解を更に深 めることを 目的とする 。また、回 路製作にお いては、定 電圧電源回 路作製
で行 った基板の ようにパタ ーン化され ていない市 販のユニバ ーサル基板 を使用する 。そし
て、 各自配線を 施すことで 基板配線技 術の習得も 行う。
次 に電気生理 実験で使用 される代表 的な OP アン プ回路の装 置として、 パッチクラ ンプ
アン プがあるの で紹介して おく。図 1 は、ホールセル・クランプアンプ( Whole-cell Clamp
Amplifier)の回路図であり、今日のように多くのパッチクランプアンプがまだ市販されていない頃
に研究室で自作し、実際に実験で使用されていたものである。このアンプには、OP アンプの基本
回路が多く含まれており、OP アンプ回路の実習を行うのには最適と思われる。本来はこのアンプ
の製作を行うのが実用的であるが、製作や調整時間の制約から今回はサウンドモニター回路の作製
を行うことにする。
Head Amp.
-15 V
100 M
I position
10 k
100 k
-
1k
-
10 k
+15 V
-
+
+
1k
10 k
51 k
10 k
-
Current Out
+
+
10 k
1k
+15 V
10 k
20 k
S.R.C.
5k
+
-
H.P.
10 k
51 k
10 k
-15 V
100 k
-15 V 200
200 k
5.1 k
V position
10 k
100 k
-
+15 V
10 k
k
51 k
10 k
-
+
+
-
100 k
Voltage
Monitor
51 k
5.1 k
T.P.
-
+
10 k
図1
10 k
+
Whole-cell Clamp Amp.の回路図
1
Copyright c 2011 NIPS Technical Division.
1
OPアンプについて
OP アンプ(演算増幅器:OPerational Amplifier)とは、アナログ・コンピュータの演算用増幅素
子として発達してきたもので、2つの入力端子と1つの出力端子をもつ高性能な増幅器である。し
かも設計が容易であり、非常に演算誤差が少ないため手軽に高精度な演算が可能である。OP アン
プの記号は、三角形が一般に用いられる。また、電源は普通正負の2電源が使用されるが、デジタ
ル回路などとの相性がよいように1電源で動作するタイプもある。
V+
2 電源動作
V+
1 電源動作
-IN
-IN
OUT
+IN
OUT
+IN
COM
COM
V-
* 一般に回 路上では電源の接続を示さない ことが多い
図2
OPアンプの記号
次にオペアンプの動作を理解する上で大切な考え方であるイマジナリショートとネガティブフィ
ードバックについて説明する。
①イマジナリショート
OP アンプは実質的に無限大に近い増幅度をもった差動増幅器であり、その入・出力電圧が能動
範囲内で正常に動作しているときは、+・-両入力ピン間の電圧差は無限小、つまりゼロになると
いう考え方である。この考え方は、OP アンプの+・-両入力ピン間が常に同電位である(見か
け上ショートされている)として解析できるので便利である。
②ネガティブフィードバック
これは増幅器の出力電圧を、入力電圧を打ち消す方向に加える(帰還:フィードバック)回路技術
である。即ち図 3 において入力電圧 Vi は R1 経由で、そして出力電圧 Vo は R2 経由で、それぞ
れ-入力に接続される。このとき出力電圧は入力電圧と位相(極性)が反対となり、Vi と Vo は互
いに打ち消し合う形で-入力に加えられることになる。これがネガティブフィードバックの考え方
である。したがってイマジナリショートの考え方と合わせ図中の式が成立する。
R2
-i2
i1=Vi/R1 -i2=Vo/R2
R1
Vi
i1=-I2
i1
Vi = Vo
R1 R2
Vo
図3
増 幅 度 Av = Vo = R2
Vi
R1
ネガティブフィードバックの考え方
2
Copyright c 2011 NIPS Technical Division.
2 サウンドモニターの回路図
サウンドモニター回路は、パッチクランプ実験の最初のステップであるガラス電極に細胞を吸着
させてギガオームシール(以下ギガシール)を作る際に使用する装置である。これまでギガシール
の進行状況は、電極にステップパルス(テストパルス)を加えながらアンプからの電流出力をオシ
ロスコープで絶えずモニターして行っていたが、顕微鏡とオシロスコープを同時に観察することは
極めて困難であり熟練を要する操作である。そこでテストパルスによって生じたピペット電流減少
の経過を音の高低(ピッチ)の変化に置き換える回路を作製し、電極と細胞の位置関係を音の変化
として知ることができるようにする。これにより実験者はオシロスコープの波形にそれほど目を向
けることなく顕微鏡等の諸装置の操作に専念できるようになる。
今 回製作する サウンドモ ニターの回 路図を図 4 に示す。回 路設計は、 入力電圧範 囲を 1
~ 5V (電極 抵抗では 1 ~ 5M Ω )に設定し て行い、回 路構成は、 バッファー 、反転増幅 、
全波 整流、電圧 -周波数変 換、オーデ ィオアンプ 、ステップ パルス発振 回路で構成 されて
いる 。ステップ パルス発振 回路は、回 路の動作チ ェックと実 際にアンプ に接続する 前にあ
る程 度の調整を 行えるよう に組み込み 、入力はス イッチの切 替で行う。
sound f requency
control
C5
1µ
2
3
INP UT
IC 3
1
R7
2.7k
R6
2.7k
+
5
IC3
SW1
R10 10k
R9
10k
6
R8
5.1k
INTE RNA L
OSCILLATOR
R12
20k
VR1
10k
7
+
CP 3
2
3
R13
5.1k
C6
22µ
CP 4
D1
1
IC 4
D2
R11
10k
+
+15 V
R14 20k
6
5
IC4
+
7
+15 V
8
7
C7
R15
5.1k
+15 V
R 17 10k
R 16
100k
0.1µ
5
IC 5
1
6
C8
1µ
+
R 18
100k
C9
0.01µ
R 21
1.5M
C 12
4.7µ
C10
4.7µ
3
4
R19
47Ω
2
CP 5
R 20
1k
VR2
20k
C11
VR3 47p
5k
V ol ume
+
+
2
1
IC6
14
C 13
220µ
C14
470µ
8
6
R22
2.2Ω
C15
0.047µ
SP
F requency
Control
+15 V
T1
50k
20k R1
R4
1k
CP2
Gain
7
6
IC 2
+
R3
100k
5
R5
5.1k
2
CP 1
1
IC2
3
8
4
110k R2
6
3
5
1
図4
3
7
IC1
2
C3
0.01µ
0.1µ C4
生体電気用アンプ回路図
部品実装の手順
回路の製作工程は各項目ごとに説明を分けている。それぞれの実体配線図を参考にして順番に部
品の取り付けを行っていく。抵抗などは、カラーコードをよく見て間違えないように注意する。ま
た極性のある素子に付いては、方向に注意して取付ける。
3
Copyright c 2011 NIPS Technical Division.
実装手順1
ソケットの取り付け・電源ラインの接続
手順1 ソケットの取り付け・電源ラインの接続
① IC ソケットを図に示す所定の場所に配置し、対角の2点をハンダ付けする。
・取付後、ソケットの浮きがないかチェックする。
②コンデンサを取り付ける。
・コンデンサの足を配線方向に折り曲げ、適当な長さで切りハンダ付けする。
③スズメッキ線を使い電源ラインを作る。
・スズメッキ線は、ホールに沿わせできるだけまっすぐに取り付ける。
・ソケットの電源ピンも一緒にハンダ付けする。
④ジャンパ線を3カ所取り付ける。
使用する部品
部品名
規格
個数
記号
備考
プリント基板
サンハヤト UK-18P-69
1
片面プリント
IC ソケット
2 列-8ピン端子
5
IC1-5
方向注意
IC ソケット
2 列-14ピン端子
1
IC6
方向注意
コンデンサ(積層セラミック) 50 V,0.1 μF
2
C1,C2
104
JP
IC1
IC5
IC2
IC3
IC6
JP
IC4
C1
C2
JP
部品面
パター ン面
図5
ICソケットと電源配線の実体配線図
4
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実装手順2
発振回路部の製作
手順2 発振回路部の製作
①抵抗は縦置きで配置し、足をソケット端子方向に曲げて切りハンダ付けする。
②ジャンパ線を2カ所取り付ける。
・ジャンパ線は、予め挿入位置に合わせて足を曲げておくと浮かなくて良い。
③配線コードを適正な長さで切り取り付ける。
・配線コードは、被服を剥いだら予備ハンダをしておくと良い。
④コンデンサを取り付ける。
使用する部品
規格
個数
タイマ IC
NE555
1
抵抗
20 kΩ
1
抵抗
110kΩ
1
コンデンサ(積層セラミック) 0.01 μF
1
コンデンサ(積層セラミック) 0.1 μF
1
部品名
R2
R1
記号
IC1
R1
R2
C3
C4
備考
方向注意
茶黒黒赤茶
茶黒黒茶茶
103
104
JP
C3
JP
C4
IC1
部品面
パターン面
図6
発振回路部の実体配線図
5
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実装手順3
反転増幅回路部1の製作
手順3 反転増幅回路部1の製作
①抵抗を取り付ける。R3、R5は横置き、R4は縦置きである。
②トリマーを取り付ける。トリマーの2本の端子はショートさせる。
③チェックピンを取り付ける。
④配線コードを適正な長さで切り取り付ける。
使用する部品
部品名
OP アンプ
トリマー
抵抗
抵抗
抵抗
チェックピン
規格
個数
1
1
1
1
1
2
TL072
50 kΩ
100 kΩ
1 kΩ
5.1 kΩ
記号
IC2
T1
R3
R4
R5
P1,P2
備考
方向注意
方向注意
茶黒黄茶
茶黒黒茶茶
緑茶黒茶茶
T1
P2
R4
IC2
R5
R3
P1
部品 面
パターン面
図7
反転増幅回路部1の実体配線図
6
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実装手順4
手順4
反転増幅回路部2の製作
反転増幅回路部2の製作
①抵抗を取り付ける。
・基本的にソケットに近い部品から取り付けると良い。またカラーコードの向きを揃えると良い。
②コンデンサを取り付ける。
・極性があり足の長い方が+側である。また予めホールに合わせ足を曲げておくと良い。
③ジャンパ線、チェックピンを取り付ける。
④配線コードを長めに切り取り付ける。
使用する部品
部品名
OP アンプ
抵抗
抵抗
コンデンサ(電解)
チェックピン
P3
R6
規格
記号
IC3
R6,R7
R8
C5
P3
備考
方向注意
赤紫黒茶茶
緑茶黒茶茶
極性あり
R7
JP
C5
IC3
個数
1
2
1
1
1
TL072
2.7 k Ω
5.1 kΩ
1 μF
JP
R8
部品面
パターン面
図8
反転増幅回路部2の実体配線図
7
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実装手順5
手順5
全波整流回路部の製作
全波整流回路部の製作
①抵抗、ジャンパ線をソケットに近い部品から取り付ける。
②整流ダイオードを縦置きに取り付ける。方向性があり青いマークがカソード側である。
③コンデンサの極性に注意し取り付ける。
④スイッチ、配線コードを取り付ける。スイッチの接続は、2端子のみである。
部品名
OP アンプ
抵抗
抵抗
抵抗
コンデンサ(電解)
整流ダイオード
スイッチ
チェックピン
使用する部品
規格
TL072
10 kΩ
20 kΩ
5.1 kΩ
22 μF
1S1588
SW1
P4 C4
R14
R11
個数
記号
備考
1
IC4
方向注意
3 R9,R10,R11 茶黒黒赤茶
2 R12,R14 赤黒黒赤茶
2 R13,R15 緑茶黒茶茶
1
C4
極性あり
2
D1,D2
方向性あり
1
SW1
1
P4
JP
R12
IC4
R15
R9
D2
R10
D1
R13
部品面
パターン面
図9
全波整流回路部の実体配線図
8
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実装手順6
手順6
電圧-周波数変換回路部の製作
電圧-周波数変換回路部の製作
①抵抗、ジャンパ線を取り付ける。
②コンデンサを取り付ける。C8は極性があるので注意する。
③チェックピン、配線コードを取り付ける。
使用する部品
部品名
規格
VFコンバータ
LM331N
抵抗
100 k Ω
抵抗
1 kΩ
抵抗
47 Ω
抵抗
1 kΩ
コンデンサ(積層セラミック) 0.1 μF
コンデンサ(電解)
1 μF
コンデンサ(積層セラミック) 0.01 μF
チェックピン
C7
記号
IC5
R16,R18
R17
R19
R20
C7
C8
C9
P5
備考
方向注意
茶黒黄茶
茶黒黒赤茶
黄紫黒銀茶
茶黒黒茶茶
104
極性あり
103
R16
R17
IC5
JP
JP
C8
R19
個数
1
2
1
1
1
1
1
1
1
R18
C9
R20
P5
部品面
パタ ーン面
図10
電圧-周波数変換回路部の実体配線図
9
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実装手順7
オーディオアンプ回路部の製作
手順7 オーディオアンプ回路部の製作
①コンデンサをソケットに近いものから取り付ける。
・C11、C15以外は極性があるので注意する。
・C15を取り付ける時は、配線コードをまたいで取り付ける。
②抵抗を取り付ける。
使用する部品
部品名
規格
オーディオアンプ
LM380N
抵抗
1.5 M Ω
抵抗
2.2 Ω
コンデンサ(電解)
4.7 μF
コンデンサ(セラミック)
47 pF
コンデンサ(電解)
220 μF
コンデンサ(電解)
470 μF
コンデンサ(マイラ)
0.047 μF
C13
IC6
個数
1
1
1
1
1
1
1
1
C14
記号
IC6
R21
R22
C10,C12
C11
C13
C14
C15
備考
方向注意
茶緑緑金
赤赤黒銀茶
極性あり
47p
極性あり
極性あり
473
C15
R22
R21
C12
C10
C11
部品面
パター ン面
図11
オーディオアンプ回路部の実体配線図
10
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実装手順8
コネクタの配線
手順8 コネクタの配線
①図 12 のコネクタ配線図、図 13 の実体配線図を参考にしてコネクタと部品の配線を行う。
②スイッチに接続するケーブルは、シールド線を使いシールド端子はGND端子に接続する。
③可変抵抗器の10kと20kは片側をジャンパー線を使って短絡させる必要があるので注意する。
④スピーカー端子は、極性があるので注意する。
GND
-15 V
+15 V
切 替 SW
VR10k
VR5k
VR20k
BNC
JP 線
シールド線
+
-
スピーカー
パ タ ーン面
図12
図13
コネクタ配線図
コネクタ実体配線図
11
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実装手順9
手順9
ケース実装
ケース実装
①図 14、15に完成基板の実体配線図を示す。ケース実装の前に配線の最終確認を行う。
④図 16、17の実装図を参考にしてケースの所定位置に部品を取り付け配線を行う。
・可変抵抗器の位置を間違えないように注意する。
・スイッチは、トグルの反対側が繋がるので注意して取り付ける。
⑤図 18 完成したサウンドモニター回路の外観を示す。
・所定の位置にシールを貼り付ける。
図14
図15
完成基板部品面
完成基板パターン面
12
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図16
ケース内の配線
図17
基板の取り付け
図18
完成したサウンド
モニターの外観
13
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14
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