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「有機イオントロニクス」 サンプルページ この本の定価・判型などは,以下の URL からご覧いただけます. http://www.morikita.co.jp/books/mid/077541 ※このサンプルページの内容は,初版 1 刷発行時のものです. i まえがき 「イオンを知り,イオンに教わり,そしてイオンを使う」 われわれ人類は,この世に生を受けてから,やがて自我に目覚め,自ら判断しながら行動 し,いずれ独立するという成長過程を踏む.このような流れは学問についてもいうことがで きる.人類が長い歴史のなかで培ってきた近代科学は,古い学問をそのまま無批判に継承し たものではなく,自らの観察力と洞察力に基づいて客観的に創り上げていく過程で生まれた ものであろう.このような成長は,300~400 万年前に人類が直立二足歩行する猿人として 誕生し,文化や文明の歴史を歩み始めてから現在まで続いている.石器などの道具を作り, 火の扱い方を知って“明かり”や“暖”を取ること, “調理”に用いることを覚えた.この過 程で物質をさまざまな形態,形状に変化させる方法を見出し,石器から土器,金属あるいは ガラスなどを製造した.さらに文字を発明し,情報伝達ができるようになった.このように, 人類は前の時代からの成果を単に引き継ぐだけでなく,改良・改善などを導入し,思考を繰 り返しながら展開して新しい成果を構築し,発展させるという歴史をたどり現在に至ってい る. 本書で扱っている“電気化学”という学問も,その歴史を概観すると上述のような過程を 経て進展し,発展してきた. “電気化学”という語の響きは,いかにも古めかしい印象を与え る.歴史を振り返ってみると,古代エジプトやメソポタミア文明の時代に,電池やメッキの 技術が創り上げられており,すぐに思い出されるのが食塩水の電気分解やボルタ電池である. しかし,「電気化学に関する話題は何か?」と尋ねられれば,1995 年1月に出版された「常 温核融合の真実 —今世紀最大の科学スキャンダル」 (J. R. Huizenga 著,青木薫 翻訳)とい う書籍を思い出す.1989 年3月に英国サザンプトン大学の電気化学者 M. Fleischmann 教授 らにより,常温における重水の電解中に核融合反応が起こっているとしか考えられない過剰 熱,中性子,トリチウム,荷電粒子の生成が見られる異常現象が発表された.この現象は “常温核融合(cold fusion)”とよばれ,学会,産業界ともに大騒ぎとなった.核融合は太陽 エネルギーの源で,人類にとって夢のエネルギーといわれており,この核融合反応が,手の 平に収まるような試験管の中で電気分解という簡単な操作で起こるとしたら大変なことであ る.“常温核融合”の研究は現在も継続しているようであるが,いまだ実現していない. 本書では, “電気化学”の本質を踏まえ,その意義を可能な限りわかりやすく表現するに はどのような構成,編集がよいかを検討し,“イオン”という粒子の挙動を念頭に置いて ・イオンを知る ・イオンから学ぶ ii ま え が き ・イオンを利用する に注目し, “イオンのはたらきや役目”をわかりやすく記述するよう心掛け,大きな主題と して“有機イオントロニクス”と名づけた. ここで当然, 「なぜ有機(材料)なのか?」という疑問に答えて本書執筆の目的を明確にし ておきたい.自然界の中でもっとも高度な機能を有しているのは人類であるが,植物や動物 からなる生物のもつ優れた機能発現には大なり小なりイオンが関与している.21 世紀に入り, これまでシリコンを中心に展開,発展してきた超大規模集積回路(超 LSI)の微細加工技術 に限界がいわれるようになった.そこで,新しい電子素子として大規模高密度高集積化の可 能性がある“分子素子”が注目されている.分子素子は“21 世紀の夢の素子”といわれてお り,1981 年に米国の F. L. Carter らが開催した Molecular Electronic Devices Workshop を契機として,いろいろな分子スイッチング機構や機能分子回路が提案されている.分子素 子はスイッチングやメモリー,センシングや増幅などのさまざまな素子機能を分子1個1個, あるいは少なくとも数個の分子に担わせた究極の電子素子であり,ナノマシンでもある.こ のような素子を実現するためには,生物をまねるという考えは当然の姿であろう.このよう に,機能材料を念頭に置いて考えた場合,もっとも一般的に要求されるものは機能の多様性 と超微細化による機能の集積化であろう.有機材料は多様性に優れており,多くの準安定構 造をとることができ,無機材料に比べて格段に自由度が大きくて有利である.したがって, 機能の要求が高度化するにつれて,多種多様性を有しており,構造的にも多くの準安定を有 している有機材料に期待が寄せられており,次世代エレクトロニクス材料としても有機材料 に関心が寄せられている. 本書は,イオンに注目した化学の基礎概念からイオンのはたらき,イオンの有する機能を 利用した素子応用を取り扱っている.“イオントロニクス(Iontronics)”という言葉はまだ 馴染みのない言葉であるが, “イオン(Ion)”と“エレクトロニクス(Electronics)”を合体 した言葉で,本書籍の題目を英語で書けば, Organic Iontronics となる.2010 年 CRC 出 版から Iontronics: Ionic Carriers in Organic Electronic Materials and Devices という 書籍が J. Leger,M. Berggren,S. Carter の編集で出版され,導電性高分子を用いた電気化 学素子応用の研究例がいくつか紹介されている.この書籍には, Iontronics deals with the phenomena and devices that involve the flow of both electrons and ions. と書かれている. Iontronics は電子とイオンの挙動に基づく諸現象や素子応用を扱う学問分野であるといえ るが,広く一般社会にまで浸透している“エレクトロニクス”という言葉に比べてやや違和 感があるかもしれない.ただし,ライフサイエンスやバイオでは,生体機能を電子工学的に 研究するバイオエレクトロニクス,さらには生物のもつさまざまなはたらきを上手に利用し, われわれ人間の生活や環境保全に役立たせようという技術として展開しているバイオテクノ ロジーにはイオンが重要なはたらき,役目を担うこというまでもない. 有機材料は“軽く”て“薄く”,そして“曲がる”という特徴があり,柔構造材料である. これらの特徴を活かすことで,プリンティッドエレクトロニクス(すなわちインクジェット 印刷あるいはスクリーン印刷などの印刷法によって有機薄膜からなる電子素子を作製する技 ま え が き iii 術)を用いて,大面積の電子素子の構築が可能である.次世代エレクトロニクスの根幹とな る最重要技術の印刷技術を構築することは,有機半導体材料を用いた高性能で,高機能の IC チップを作製することにつながり,“有機イオントロニクス”の展開,進展に寄与する効 果は大きいと考える. イオントロニクスはエレクトロニクスを模倣するデバイスではなく,イオンであるからこ そ可能な新奇な機能を創出するものである.近年,有機エレクトロニクスの発展に伴ってイ オントロニクスのカテゴリーに入るデバイスが提言,実証され,実用化され始めた.たとえ ば,バイオセンサー,色素増感太陽電池,人工筋肉などのバイオミメティックス(生体模倣) があり,これらは環境やエネルギー問題を見据えた未来のデバイスである.これらの原理を 十分に理解し,さらに推進するには,イオンとその物質中の振舞いについて十分な理解をも つことが重要である.しかし,これまでそのような目的の有効な書籍がほとんど存在してい なかった.このような背景から,本書を執筆することとした. 次世代エレクトロニクス素子としての分子素子を実現するためには,“イオントロニクス” の考えが不可欠であろう.そのような観点からは,有機誘電体・導電性材料の電気化学に注 目したイオンの挙動を理解し,把握することが重要となる.したがって,本書は関連領域の 学生はもちろんのこと,技術者および研究者に必読の書であり,初学者でも本書だけで理解 が進むように配慮したつもりである.なお,内容によっては著者らの思い違いがあるかもし れないが,専門家諸氏の𠮟責を待つ次第である. 第1章では,A. Volta から S. A. Arrhenius までの時期における電気化学の展開や発展を 概説する.第2章では, 「イオンとは何か?」を念頭にして,イオンのはたらき,イオンの役 目について概観し,固体構造について考える.第3章「有機エレクトロニクスと導電性高分 子」では,有機エレクトロニクスの考え方を述べるとともに,導電性高分子の基本的な性質 を概観し,未来エレクトロニクスへの展望を述べる.第4章「有機材料の電気化学的性質」 では,有機材料の電気化学的な酸化と還元による性質の変化について紹介する.さらに,有 機イオントロニクス素子を実現するうえでもっとも基礎的で重要な,柔構造有機半導体材料 の製膜技術について第5章で述べる.第6章では,物理量の測定や評価方法などを実際に検 討する場合の一助とするため,有機半導体材料の電気化学測定について概説する.そして, 第7章から第 10 章までに,著者らが実際に経験したいろいろな有機イオントロニクス素子 の特性や特徴などを紹介する.とくに,1995 年 11 月に制定された科学技術基本法を念頭に おいて,環境,エネルギー,バイオ,ナノテクノロジーや通信などの重点分野に関連した有 ,そ ,第8章で「電池」 機イオントロニクス素子として,第7章で「ソフトアクチュエータ」 して第9章で「生体イオントロニクス素子」を取り上げて詳述する.第 10 章では基本的に 電気化学現象で動作するトランジスタ素子,発光素子,メモリ素子などを「その他のイオン トロニクス素子」として紹介した.全般にわたり多くの優れた書籍,論文を参考にさせてい ただいたことをここに記し,それらの著者に感謝申し上げる. 本書が新しいイオントロニクスの概念をさらに発展させ,この技術分野のフロンティアと なることに期待したい.また,最近の工学教育の重要な基準の一つは,数学,物理や化学な iv ま え が き どの自然科学および工学知識を応用できる能力であり,知識そのものではない.教育には認 識に関係した cognitive な面と楽しく学ぶ affective な面があるが,affective な面にも注意を 払った.本書籍は,このような要求も念頭に置いており,物理学的なものの考え方,ものの 見方に加えて化学のおもしろさ,電気化学の素晴らしさを味わってほしいという思いで執筆 した. 最後に,本書では森北出版株式会社の藤原祐介氏のご理解と多大なご尽力をいただいた. この場を借りて心からお礼申し上げる. 平成 27 年 11 月 小野田光宜 金藤 敬一 大澤 利幸 吉野 勝美 v 目 次 第 1 章 電気化学のはじまり 1 1.1 電気化学の起源とバグダッド電池 1 1.2 ボルタ電池 2 1.3 電気分解現象 4 1.4 電気化学現象への関心 5 1.5 電気分解現象の観察と法則 6 1.6 Davy の業績 6 1.7 Faraday による電気分解の法則 8 1.8 イオンのもつ電気量 11 1.9 アレニウスの法則 12 1.10 電池の起電力 13 1.11 媒質の違いによる誘電性を示す式 15 第 2 章 イオン 17 2.1 物質粒子と Dalton の原子説 17 2.2 イオンとは何か? 18 2.3 原子構造 19 2.4 価電子(最外壳電子) 28 2.5 陰イオンと陽イオン 28 2.6 イオン半径と溶媒和 30 2.7 イオン結合 31 2.8 固体の構造 33 2.9 ファンデルワールス力 34 2.10 固体のバンド構造 37 2.11 イオンの利用 39 2.12 生体系とイオン(情報信号の伝達) 44 2.13 イオン液体とイオン液晶 46 2.14 超イオン伝導体 52 第 3 章 有機エレクトロニクスと導電性高分子 3.1 有機エレクトロニクスの展開 59 3.2 導電性高分子の基本的性質と背景 62 3.3 n 型導電性高分子の安定性 80 59 vi 目 次 3.4 透明導電膜 84 3.5 エンジニアリングプラスチックと導電性高分子 86 3.6 未来のエレクトロニクスへの展望 88 第 4 章 有機材料の電気化学的性質 89 4.1 有機イオントロニクスの考え方 89 4.2 化学ドーピング 90 4.3 電気化学ドーピング 92 4.4 酸化と還元による物性変化 94 4.5 溶液物性 106 第 5 章 有機薄膜作製法 109 5.1 製膜技術の役割と重要性 109 5.2 電気化学的重合法(電解重合法) 111 5.3 電解重合反応の機構 114 5.4 コロイド溶液とは 118 5.5 コロイド溶液の性質 119 5.6 電気泳動電着法 120 5.7 導電性高分子コロイド溶液の調整 121 5.8 電気泳動電着法による導電性高分子複合膜の作製 122 5.9 現状と課題 125 第 6 章 電気化学的測定法 126 6.1 電気化学計測の必要性 126 6.2 電位測定 127 6.3 分極測定 132 6.4 ボルタンメトリー 135 6.5 in situ 測定 138 6.6 交流インピーダンス法 141 第 7 章 ソフトアクチュエータ 7.1 アクチュエータ性能 146 7.2 各種ソフトアクチュエータ 147 7.3 伸縮率の測定法 149 7.4 導電性高分子の電解伸縮 150 7.5 イオン交換膜/金属複合膜(IPMC) 159 7.6 ハイドロゲル 160 7.7 ポリマーゲル 160 7.8 カーボンナノチューブ 161 7.9 強誘電体エラストマー 161 146 目 次 vii 7.10 その他のアクチュエータ 162 7.11 問題点と課題 162 第 8 章 電 池 164 8.1 電気化学素子とエネルギー素子 164 8.2 リチウム二次電池 165 8.3 電気二重層キャパシタ 179 8.4 色素増感型太陽電池 181 8.5 固体高分子形燃料電池 187 8.6 バイオ燃料電池 190 8.7 問題点と課題 193 第 9 章 生体イオントロニクス素子 194 9.1 生体機能と有機イオントロニクス 194 9.2 PPy の成長形態の制御とバイオ回路 195 9.3 導電性高分子の生体親和性 201 9.4 電気化学バイオセンサの機能デザイン 205 9.5 問題点と課題 209 第 10 章 その他のイオントロニクス素子と背景 210 10.1 有機イオントロニクス素子開発と背景 210 10.2 電気化学発光素子 211 10.3 電気化学トランジスタ 214 10.4 ISFET(イオン感応型電界効果トランジスタ) 217 10.5 エレクトロクロミック素子 219 10.6 可塑性メモリ素子 222 10.7 問題点と課題 224 参 考 文 献 225 索 引 238 4.1 有機イオントロニクスの考え方 89 第 4 章 有機材料の電気化学的性質 電気化学反応はある意味では未開の分野であり,大きいエネルギーが物質に つぎ込まれ,また取り出せる化学反応であることは間違いない.生体にはさま ざまな分子,イオンが混在し,脳が中枢となって生命活動を担っている.この ように,イオンを媒体とする電気化学反応はエネルギーから生命活動までを網 羅する学問分野である. 本章では,電気化学反応によって有機材料の電気的,光学的および機械的性 質の変化についてその基礎を述べる.有機材料は 100 種類以上の元素の組合せ でつくり出すことができ,その生成物は多種多様である.また,分子間に溶媒 やイオンが浸透し,膨潤,溶解,混合などが常温で起こる.この特徴は金属, 半導体やセラミックにはない性質で,デバイスとして積極的に利用することに よって,未知の技術分野が開けると予想される.よく言われるように,無機半 導体エレクトロニクスの機能を有機材料で同じように追及するのではなく,そ れぞれが得意とする技術分野に棲み分けることが重要である.有機イオントロ ニクスは,これまであまり注目されていなかった技術分野であるが,まさに生 体を模倣する次世代の革新的デバイスとして工学的応用が期待される. 4.1 有機イオントロニクスの考え方 生命体は 30 億年の長期にわたって進化したもので,その構造と機能はきわめて巧 妙である.生命体内では,緩やかではあるが活発な酸化還元反応が起こり,エネルギ ー移動と物質の分解と合成が連鎖的に行われている.光合成や生体内での代謝などの 生命活動は,高い変換効率と無廃棄物(ゼロエミッション)の循環プロセスで,将来 の循環型産業活動のお手本として解明が進められている.人類がその手法を習得して 生命体をつくることは当分不可能と思われるが,五感などそれぞれの素子の機能を工 学的に模倣することは現実的に可能な時代になった. 半導体エレクトロニクスは長足の進歩を遂げ,TV やパソコン,インターネットな ど,今日の情報化社会の基盤技術となっている.半導体は,ハードでドライ(hard and dry)な固体中の電子の振舞いを制御することによって,視覚や聴覚などの情報 処理デバイスとして機能する.一方,有機材料は生物由来の炭素化合物で,繊維,脂 90 第 4 章 有機材料の電気化学的性質 質,タンパク質,炭水化物,色素をはじめ,核酸,酵素,ウィルスなどの生体物質を 含めると,多種多様である.無機に限らず,有機の半導体エレクトロニクスは,単体 の純度を高めることによって電子の振舞いを制御し,スイッチング,増幅,光電変換 などの機能をデバイスとして利用している.有機エレクトロニクス素子は効率や速度, 集積度においては無機半導体に及ばないが,溶液を用いることで,インクジェット法 や印刷によって従来の無機半導体では実現できない超薄型,軽量でフレキシブルな素 子を安価に作製することができる[1]. 有機材料のなかには,ヨウ素などの酸化剤にさらすと,導電率が数桁にわたって顕 著に増加するものがある.この現象は,1950 年代に赤松秀雄,井口洋夫らによってア ントラセンなどの芳香族化合物について調べられ,世界の先駆的な研究となった. 1970 年代に入って,白川英樹らによって導電性高分子が合成され,その後,A. G. MacDiarmid および A. J. Heeger らが加わって物性研究が進められ,その功績に対し て 2000 年にノーベル化学賞が与えられた[2].有機材料では,電子の制御に加え,酸 化還元によってイオンの生成と物性変化が起こり,無機半導体では見られない新規な 機能の発現によるデバイスが創生できる.とくに,電気化学的な酸化還元反応は,外 部電源によって制御することができる.これが有機イオントロニクスであり,ソフト でウェット(soft and wet)な環境で動作する.この究極の目的は,生命活動を模倣 することと考えられている.次節以降では,有機材料の電気化学的酸化還元によって 発現する導電率,色,体積,発光などのさまざまな物性変化のメカニズムについて解 説する.これらの知見は,有機イオントロニクスの理解とデバイス構築の礎となる. 4.2 化学ドーピング 3.2.3 項ではドーピングによる物性の変化の基礎を簡単に説明したが,本節では化 学ドーピングのメカニズムの詳細,および無機半導体におけるドーピングとの違いに ついて述べる. ドーピング(doping)は,母体物質に微量の不純物(ドーパント)を添加すること によって,その性質を劇的に変化させる手法である.たとえば無機半導体の場合は, シリコンにリンあるいはホウ素をドーピングすると,それぞれ n 型あるいは p 型半導 体を形成して,それらを接合することによってダイオードやトランジスタができる. これと同様に,有機半導体もドーピングによって,導電率や光学吸収など物性は激変 する.しかし,無機半導体と有機半導体におけるドーピングのメカニズムは次の点が 異なる. (1)無機半導体では結晶が強い共有結合でできているので,ドーピングは結晶格 4.2 化学ドーピング 91 子が融けた仕込みのとき,あるいは熱的に揺らぐような高温下で不純物の拡 散によって起こる.室温では,ドーピングは起こらない.不純物は価電子数 が母体の元素とは異なる元素で,母体の結晶格子点と入れ替わった状態でド ーピングされることが一般的である.したがって,不純物には母体結晶から 電子を取り込む p 型,あるいは母体に電子を供与する n 型がある.p 型の不 純物(アクセプター,acceptor)は母体から電子を取り込んで負にイオン化し, 母体は電子の抜け穴(ホール,p 型)がキャリアーとして伝導に寄与する.ま た,n 型では不純物(ドナー,donor)の電子が母体に飛び出して不純物は正 にイオン化し,電子(n 型)がキャリアーとなる.いずれも,イオン化した不 純物は動かない.高温ほどキャリアーは指数関数的に多く生成され,極低温 ではキャリアーはなくなる. (2)有機材料は分子の集合体で,分子間は弱いファンデルワールス力で結合して いるため軟らかく,その分子間にドーパントが浸透してドーピングが起こる. 室温でもドーピングは容易に起こる.ドーピングの駆動力は,熱的揺らぎの 分子運動とドーパントの濃度勾配であり,ドーパントは低濃度側へ拡散して, 最 終 的 に は 平 衡 濃 度 に 到 達 す る.こ れ を イ ン タ ー カ レ ー シ ョ ン (intercalation)という.インターカレーションが起こっても,有機分子とド ーパントの間に電荷移動(酸化還元反応)が起こらなければ,有機分子の物 性はほとんど変化しない. 有機半導体のドーピングによる酸化・還元反応は,有機分子とドーパントとのイオ ン化ポテンシャル(ionization potential:Ip)と電子親和力(electron affinity:Ea) の相対的な大きさによって決まる.イオン化ポテンシャルは図 4.1 の最高被占準位 (HOMO)から電子を引き離すエネルギーで,電子親和力は最低空準位(LUMO)の 真空準位からの深さである.HOMO 準位にある黒丸は,スピンの向きが反対方向の 2個の電子を表している.Eg はエネルギーギャップで,HOMO 準位と LUMO 準位 の差である. ドーピングには,HOMO 準位から電子を抜き取る p 型ドーピングと,LUMO 準位 に電子を加える n 型ドーピングがある.分子(あるいは原子)AとBのエネルギー図 を図 4.1 に示す.図のように,Aのイオン化ポテンシャルよりBの電子親和力が大き い場合,これらを触れさせると,以下の式 (4.1)で表すように,電子はAからBへ自 発的に移動して,Aは正のイオン A+,Bは負のイオン B- になる.このとき,Aは 酸化され,Bは還元されたといい,AはBの還元剤,BはAの酸化剤である.A+ と B- はクーロン力で引き合って接近し,1:1 の等量比で存在する.ここで,酸化と還 元について混同しないように,言葉の定義を明確にしておく.すなわち,p 型ドーピ 92 第 4 章 有機材料の電気化学的性質 図 4.1 (a)電子状態が異なる分子 A と B,それらを直接触れ させると, (b)電子移動が起こり,カチオン(A+)と アニオン(B-)が生成される. ングを起こす酸化と,これをもとの状態に戻す還元,n 型ドーピングを起こす還元と, これをもとに戻す酸化がある. A + B ↗ A+ + B- (4.1) たとえば,Aが有機分子,Bが塩素(あるいはヨウ素)のようなハロゲンの場合, 有機分子Aは p 型にドープされたことになる.一方,Aが Na や K のようなアルカリ 金属で,Bが有機分子の場合,Bは n 型にドープされたことになる.第2章のイオン の項で述べたように,正イオンになりやすいアルカリ金属は酸化されやすく(錆びや すく)不安定で,卑金属とよばれる.また,イオン化ポテンシャルが大きい物質は安 定で,プラチナや金のように貴金属とよばれる.多くの有機分子は電子親和力が小さ い(LUMO 準位が高い)ので,n 型ドープを行うと酸素や水分の多い雰囲気では酸化 され,不安定である. 4.3 電気化学ドーピング イオン化ポテンシャルや電子親和力は材料固有の電子状態であるが,電解液中では それらのエネルギー準位を相対的に上下させ,電気化学的に酸化還元をコントロールす ることができる.図 4.2 に,有機材料の電気化学的酸化(電解酸化,electrochemical oxidation) ,電気化学的還元(電解還元,electrochemical reduction)の原理図を示 す.有機分子AとBをそれぞれ作用電極(working electrode:WE)と対向電極 (counter electrode:CE)に密着させる.必ずしも電極に密着していなくても,電解 溶液中で浮遊する状態でも電解反応は起こるが,この場合,電解液中で拡散によって 作用電極に到達したものが反応するため,反応時間が遅くなる.対向電極は金属電極 でもよいが,ここでは有機分子が電気化学的に還元されるメカニズムを見るために, 4.3 電気化学ドーピング 93 図 4.2 電気化学セルの無印加電圧(a),作用電極にプラス電圧を印加して酸化反応が起こる メカニズム(b).M+ と A- はそれぞれ正イオンと負イオン. 有機分子Bを置いた.図 (a) はポテンシオ/ガルバノスタット(potentio‒/galvano‒ stat:PGS)の電源が入っていない状態で,分子Aの電位 VA は参照電極(reference electrode:RE)に対する開放電位で,ほぼ LUMO 準位と HOMO 準位の中間の電位 である. 図 (b) に示すように,PGS の WE 電位(Va)を上下させると,WE 電位は相対的 に分子Aの電子準位に沿って上下する.たとえば,WE 電位をプラス側に増加させる と深い準位に,マイナス側に減少させると浅い準位に移動する.Va が分子Aの HOMO 準位になるように合わせると,HOMO 準位から電子が抜き取られる酸化が 起こる.同時に,分子Aの HOMO 準位は正に荷電されるので,これを中性にするた めに電解液中の負イオン(A-)が分子Aにドーピングされ,p 型ドーピングが起こる. 一方,対向電極の分子Bは LUMO 準位に電子が注入(還元)されて,正イオン (M+)がドープされ,n 型ドーピングが起こる.電気化学的な酸化還元では,外部回 路を流れた電荷量を測定,制御することによって,ドーピング量を正確に制御するこ とができる.図 4.2 (b) の分子Aと分子Bの状態は図 4.1(b)のそれぞれの分子と同 じであるが,ドーパントは電解液中のイオンである.化学的な酸化還元反応では電子 が直接分子から別の分子に移動するが,一方,電気化学的には外部回路を電子が流れ て,酸化還元反応が起こる.結果的には,同じ正負電荷のイオン対構造になる. 電解酸化の後,反対方向に電位を掃引すると分子Aの HOMO 準位に電子が注入 (還元)され,同時に負イオンは電解液に放出されてもとの電子状態に戻る.これら の 電 位 走 査 に 従 っ て 電 流 を 記 録 す る と,サ イ ク リ ッ ク ボ ル タ モ グ ラ ム(cyclic voltammogram:CV)が得られる.サイクリックボルタモグラムの詳細は,6.4 節で 紹介する.さらに,WE 電位を LUMO 準位に上げると,分子Aの LUMO 準位に電 子が注入(還元)されて,分子Aの n 型ドープが得られる. 126 第 6 章 電気化学的測定法 第 6 章 電気化学的測定法 電気化学測定法は,基本的に溶液中のイオンの挙動を定量的にあるいは定性 的に分析する手法で,基本構成は電極と回路系からなり,イオンの移動を伴う 電気化学反応系において流れる“電流”および反応場で発生する“起電力”の 測定である.言い換えれば,電気化学測定法は,電気分解や電気メッキあるい は電池などの反応系で生じている現象を理解し把握するための手法で,基礎と なる学問は電子やイオンがこれら反応系に関与する化学現象を扱った電気化学 である.電気化学は第 1 章で紹介したように 1794 年に発明されたボルタの電 堆による化学変化の研究を起源とし,それ以降現在まで,2 世紀以上にわたっ て展開され,進展してきた学問である.すなわち,電気化学現象を解析し明確 にするため,電位測定や電流測定を組み合わせて,“電位差測定法”, “ボルタ ンメトリー”,“交流インピーダンス法”などに応用した測定技術である.電気 化学測定法は,有機イオントロニクスの展開,発展においてきわめて重要で不 可欠な手法であり,電気化学反応場における現象の詳細な理解と解析を通じて, 新規な測定法や測定技術の開発をもたらすだけでなく,電気化学反応を基本と する特徴のある奇抜な有機イオントロニクス素子の提案や展開が期待される. 6.1 電気化学計測の必要性 電解液中の電極は,分子(またはイオン)と電子の授受をする.分子から電極へ電 子が移ると分子は酸化され,反対に,電極から分子へ電子が移ると分子は還元される. このような電極反応は,電子の授受に伴う電子の移動が起こっているので,物質の酸 化や還元は電流(ファラデー電流)として測定できる.一方,電極反応が起こらなく ても,電解液中のイオンが電極間の電位によって移動する場合も電流が流れ,これは イオンの分極電流(変位電流)といい,ファラデー電流と区別される. 酸化還元反応による電流は測定環境,たとえば周囲温度や溶液の濃度の影響を受け るため,その影響による電流値の変化を補正する必要がある.反対に,高感度に電流 値の変化を検出し,溶液中の分子の濃度を測ることもできる.電気化学計測は,比較 的簡便な装置構成で河川,工業排水などの水質を高感度に分析できるので,われわれ の身近なところで利用されている.さらに,電池,メッキ,半導体素子などの研究開 6.2 電位測定 127 発分野の計測手法,あるいは医療における臨床検査など幅広い分野で応用されている. 現在普及している電気化学計測には,電位差測定,電気伝導度測定,ボルタンメト リー,交流インピーダンス法など多くの測定法がある.しかし,基本的には,電池の 起電力を測定する電位差測定法と電気分解で流れる電流を測定する電流測定法の二本 柱で計測技術は展開され,進展している. 以下では,有機イオントロにクス分野で頻繁に利用される基礎的な電気化学計測手 法について,実用上必要と思われる原理や取扱いについて述べる.また,いろいろな 外部刺激(光,電圧,温度など)を与えたままの状態で,上述したようないろいろな 電気化学計測を行う“その場測定(in situ 測定という) ”の事例についても紹介する. 6.2 電位測定 ポテンシオスタットによる3極式の電位計測は,有機材料評価の観点からもっとも 重要な計測手段である[1,2].溶液系における電気化学ポテンシャル(electrochemical potential,ni,電荷をもつ粒子の化学ポテンシャルのこと)は,3電極電気化学セル を用いて計測される.3電極電気化学セルの概略図を図 6.1 に示す.測定対象である 作用電極(WE) ,基準とする参照電極(RE,基準電極または比較電極ともいう),そ して作用電極における電気化学反応に伴う電荷の授受を行う対向電極(CE)の三つ の電極で構成した3極式セルである.図には,参照電極の例として,銀┻塩化銀電極 の構成図も示している.3電極系による作用電極の電位測定では,作用電極と対向電 極の間に電気化学反応系(セル)に基づく電流が流れ,作用電極と参照電極の間には 図 6.1 3 電極式電気化学セルの概略図 128 第 6 章 電気化学的測定法 電流をほとんど流さない.したがって,電極反応によって流れる電流に影響されるこ となく,作用電極と参照電極間の電圧(電位差)を正確に測定できる.作用電極の電 位はポテンシオスタット(potentiostat,作用電極の電位を参照電極に対して一定に する装置)により制御し,参照電極に対する電極電位(E)として測定できる.すな わち,溶液系における電気化学ポテンシャル ni(系が平衡しようとする力のようなも の)を電極電位という具体的な形で測定することに等しい. 電気化学ポテンシャルと化学ポテンシャルの関係は,熱力学ポテンシャルによって 結びつけられる[3].化学変化によるエネルギー変化を考えるとき,化学種 i の化学ポ テンシャル ni は,J. W. Gibbs により導入された熱力学ポテンシャルに等しい[4].理 想系(温度,圧力が一定で,i 以外のすべての物質濃度を一定)における標準化学ポ テンシャル n0i と溶液内の化学種 i の濃度 Ci の化学ポテンシャルとの間には,R を気 体定数,T を絶対温度とすると,式 (6.1) の関係がある. ni = n0i + RT ln Ci (6.1) 式(6.1) を使って化学ポテンシャル ni を求めることは,理想から外れた系ではきわめ て困難である.しかし,式 (6.1) の関係はイオンの熱力学的ポテンシャルに対しても 成立するので,イオンの静電的な項を含んだ電気化学ポテンシャル n*i と化学ポテン シャルの関係は,式 (6.2) で表すことができる. n*i = n0i + nFz- (6.2) ここで,n はイオンの電荷,z- は i 相の内部電位,F はファラデー定数(Faraday constant,F = 96485.336521 C/mol)である. 式(6.2) に式 (6.1) を代入すると式 (6.3) が得られ,熱力学ポテンシャルと電気化学 系とを関係づけることができる. n*i = n0i + RT ln Ci + nFz- (6.3) 実際の溶液中では単一のイオンを扱うのではなく正負イオン対を扱うため,濃度 Ci は化学種 i の濃度に活量係数 ci を乗じた活量 ai が用いられる(溶液の熱力学において, 高濃度領域で式に当てはめるために濃度の代わりに用いる物理量を活量という).こ こで,溶液から電極表面に移動してきた酸化体(Ox)が電子を受け取って還元体 (Red)となる化学種の基本的な電気化学反応式 Ox + ne- ↗ Red を考えた場合,Ox および Red の活量をそれぞれ aO,aR とすると,標準化学ポテンシ ャルは Ox で nO0 ,そして Red では nR0 であるから, 6.2 電位測定 129 DG = nR0 − nO0 の関係が成立する.ここで,DG は自由エネルギーの変化を示す.したがって,電気化 学的に平衡状態にある平衡電極反応について自由エネルギーの変化 DG は,式(6.4) のように表すことができる. DG = DG0 + aO RT ln nF aR (6.4) 参照電極に対して測定した作用電極の電極電位 E は,熱力学の自由エネルギー差 DG によって関連づけることができるため,式 (6.5)の関係が成り立っている.ここで, E e は平衡時の起電力である. DG = -nFEe (6.5) 電池の起電力を測定する場合,起電力が生じる反応の方向は自由エネルギーが負に なる方向である.式 (6.4) と式 (6.5) から電極電位の計測にとって重要なネルンストの 式(Nernst equation) (6.6) が導き出される[5]. E = E0 + aO RT ln nF aR (6.6) ダニエル(Daniell)電池の起電力を例にとって,電位計測を考えてみる.ダニエル電 池は銅の電気化学ポテンシャル nCu と亜鉛の電気化学ポテンシャル nZn の差として考 えることができる.すなわち,電池の一方の電極電位のみを測定対象とした半電池計 測によって銅および亜鉛の電位を計測し,その電位差がダニエル電池の起電力となる. 参照電極を,電位 0 V の絶対的な基準にすると便利である.絶対的な基準となる標 準電極には,水素ガス分圧が1気圧,水素イオンの活量 a が1のときの標準水素電極 (normal hydrogen electrode:NHE または standard hydrogen electrode:SHE)と よばれている.SHE の電位は,国際純正応用化学連合(IUPAC)などで 25 ℃におい て活量1の塩酸水溶液中で 0 mV と定義されている.標準水素電極は,酸性溶液中で 白金黒の表面に水素ガスを十分に接触させる機構により水素の酸化還元電位を示すも ので,電極電位 0 V と定義されている.一般には標準水素電極の代わりに,取扱いに 便利な飽和カロメル電極(saturated calomel electrode, SCE),銀┻塩化銀(Ag/ AgCl)電極が標準電極として使用されている.銀┻塩化銀電極は,25 ℃で標準水素 電極を基準にして E(NHE) と Ag/AgCl の電位(0.2444 V)の差を電極電位として得 る.表 6.1 に,代表的な参照電極の構成と,標準水素電極を基準とした電位を示す (a は活量を示す) . 電極電位は簡単な装置で計測できるので,たとえば pH 測定器や酸化還元電位測定 130 第 6 章 電気化学的測定法 表 6.1 代表的な参照電極 参照電極 水素電極 飽和カロメル電極 銀┻塩化銀電極 電極構成 電位 E(NHE)[V] 略号 Pt/H2/HCl(a = 1) 0.000 RHE Hg/HgCl2/飽和 KCl 0.2444 SCE Hg/HgCl2/1 mol/L KCl 0.2801 Ag/AgCl/飽和 KCl 0.196 Ag/AgCl/飽和 HCl(a = 1) 0.2223 Ag/AgCl 器などに使用されている.pH 測定器では,イオン選択性のガラス薄膜が水素イオン (オキソニウムイオン,H3 O+ イオンのこと)や水酸化物イオンと選択的に反応し, これらのイオン濃度に依存して発生する電極電位を銀┻塩化銀を基準電極として電位 差測定している.酸化還元電位測定器は ORP(oxidation-reduction potential)計と もよばれ,溶液中に共存する Ox と Red の間の平衡状態によって定まる電位を mV 表 示する測定装置である.pH 測定器とともに水質の測定によく用いられ,比較電極と して銀┻塩化銀電極あるいはカロメル電極を用いて電位差を測定する.得られた電位 差は酸化還元電位を直接表していないので,注意が必要である.言い換えれば,比較 電極と標準水素電極間の電位差を得られた電位差に加えると,対象とする水溶液の酸 化還元電位が求められる. イオン選択性のガラス薄膜を使った電位測定の歴史は古く,1906 年に M. Cremer が生物学の実験においてガラス管の先端を球状に吹き,亜鉛電極を使って2種の水溶 液(0.6% NaCl +稀 H2 SO4,0.6% NaCl +稀 NaOH)間の電位差を測定したことが ガラス電極の始まりといわれている[6].1908 年には,F. Haber と Z. Klemensiewicz によって現在のガラス電極と同一構成の電極が考案されている[7]. 図 6.2 にガラス電極を用いた水素イオン濃度測定電極(pH 電極)の基本構造を示 す.ガラス電極法は,pH ガラス電極と参照電極の2本の電極を用いて電極間に生じ た電圧(電位差)を知ることで,溶液の pH を測定する方法である.電極には Ag/ AgCl 標準電極を2本使用して,濃度差による標準電極電位のずれを測定する方法が 採用されている.図の左側の電極は,ガラス薄膜を通して水素イオンに感応する作用 電極を示し,右側の電極は,電流のみが流れて物質移動を伴わない参照電極を示す. Ag/AgCl 電極は飽和 KCl または 3.5 mol/L KCl 水溶液である.[Cl-] = 3.5 とす ると,Ag/AgCl 電極の NHE に対する電位は 25 ℃で約 190 mV となるので,濃厚な KCl 水溶液の活量を 0.539 として計算すると,電極電位は, E = 0.2223 − 0.0591 log(3.5 × 0.539) = 0.2060 [V] 6.2 電位測定 131 図 6.2 ガラス電極を用いた水素イオン濃度測定電極(pH 電極)の基本構造 と求められる. 実際の pH 電極では,2本の電極を1本にまとめた図 6.3 のような構造になってい る.真水を測定すると pH 計では指数7と表示するが,電位では約 -420 mV,ORP 計の電位は約 +180 mV である.ガラス薄膜の内部液(internal solution)および電極 外部試料溶液(external solution)の電気化学ポテンシャルから,式(6.7)が導かれる. E = E0 + g log[H+] (6.7) 標準電極電位 E0 は,測定中は一定であるが値がわからないので,測定ごとに校正 してこの値を求めることになる. 以上では,水溶液中における電極電位の測定について紹介した.有機イオントロニ クスでは,非水電解液中における電気化学計測がきわめて重要であり,電位測定は水 系電解液中だけでなく,非水電解液中で行うことも多い.非水電解液中においても参 照電極の原理は同じであるが,水の混入を避けるために,参照電極にはさまざまな工 図 6.3 実用化されている pH ガラス電極の構造 194 第 9 章 生体イオントロニクス素子 第 9 章 生体イオントロニクス素子 生命の進化過程で,最初に生物は単なる物質の集まりからいかにして“いの ち”を獲得したのかはまだわかっていない.生命学(生物学)の根源的な心理 の担い手(命題 proposition と言うほうがよいかもしれない)に対して,有機 材料はきわめて重要な位置を占めているように思う.たとえば,有機薄膜の中 に遺伝子を封じ込めた人工合成した細胞は,自己複製して増えるだけでなく, 複製を繰り返すうちに複製能力も向上できる学習効果が観測されている[1]. また,きわめて薄い高分子膜に特殊なトランジスタ,すなわち絶縁膜をアルミ ニウムと有機膜を二層に重ね合わせて作製し,きわめて薄く柔らかい絶縁膜と したトランジスタを張りつめた超薄型電子回路を作製し,体に装着する医療機 器への応用が提案されている[2].有機材料を生体機能材料として用いる場合, 生体組織との親和性の把握は不可欠である.生体イオントロニクスは,生物の 構成要素(分子,細胞,組織など)間の情報をイオンや電子を通して情報変換す ることを基本目的とする工学的な学問領域,技術分野であり,生物構成要素と 機器や装置と直接情報交換する生体情報変換素子の開発がきわめて重要となる. 本章では,生体関連のイオントロニクス素子,すなわち導電性高分子のネッ トワーク化や形態制御,言い換えればポリピロール(PPy)の成長形態を制御 したニューロン型のバイオ回路作製の試み[3],導電性高分子を生体エレクト ロニクス材料として展開するうえでもっとも基礎的で重要となる導電性高分子 と生体細胞との親和性[4],さらには,バイオセンサの性能,機能など特性の向 上に関する解決すべき課題[5]について具体例を紹介する. 9.1 生体機能と有機イオントロニクス ライフサイエンスやバイオでは,生体機能を電子工学的に研究するバイオエレクト ロニクス,さらには生物のもつさまざまなはたらきを上手に利用し,われわれ人間の 生活や環境保全に役立たせようという技術として,バイオテクノロジーが注目されて いる. 自然界のなかでもっとも高度な機能を有しているのは人類であるが,植物や動物か らなる生物のもつ優れた機能を真似るという考えは当然の姿であろう.人間をはじめ 9.2 PPy の成長形態の制御とバイオ回路 195 として,動物が動くには食べ物を食べ,それを消化し,必要な栄養分を吸収するなど の複雑な過程を経て,通常はアデノシン三リン酸(adenosine triphosphate, ATP)を つくり出す.また,神経からの微弱な電気パルスが筋小胞体からカルシウム(Ca)イ オンの放出を促し,ATP の加水分解エネルギーを使ってタンパク質であるアクチン とミオシンが引き合うことで筋肉が収縮すると説明されている[6].このように,生物 は通常,生きていくためのエネルギーとして ATP を使うので,手間のかかかる“豪 華なエネルギー”を消費して生きているといえる. 一方,生物モータあるいは生物分子機械とよばれる鞭毛の駆動源は“プロトン駆動 力”であり,基本的に酸素が必要である.しかし,ATP と比べてはるかに少ない原料 で駆動するので, “省エネルギー”といえる.サルモネラ菌の鞭毛に代表される機械 に似た生物の機構は, “生物モータ”あるいは“生物分子機械”などとよばれ,低エネ ル ギ ー,高 効 率 で 動 作 す る の で,分 子 レ ベ ル の 微 小 ロ ボ ッ ト(ナ ノ マ シ ン, nanomachine)や省エネ機械などへの応用が考えられる.ナノマシンは,1960 年代 になってアメリカの物理学者,R. P. Feynman†によって提唱された考えである.す でにある機械技術を改良して,人間の目ではとらえることのできないウィルスと同じ くらいの大きさ(0.1~100 nm)の機械(ナノマシン)をつくることはきわめて難し く,“生物の仕組みに学ぶことがナノマシンを実現するための近道である”と考えら れている.究極的には,有機イオントロニクスに期待されている一つの目標としてバ イオコンピュータ,すなわち人間の脳に似たいわば“考えるコンピュータ”を実現す ることである. 9.2 PPy の成長形態の制御とバイオ回路 生体内では,官能基の受けた刺激を協奏反応††により増幅して巨視的挙動を制御 できる機能が備わっている.したがって,生体機能としての分子シンクロナイゼーシ ョンを人工的に構築することができれば,人工筋肉の実現も可能であると考える.た とえば,図 9.1 に示すように,導電性高分子をフラクタルの形態で成長させると,フ ラクタル成長は生体の神経系におけるニューロン類似の形態をしているので,先端ど うしを接続することにより情報を伝送することが可能であろう.言い換えれば,外部 刺激によりこの接続を制御することができれば,分子を介した情報通信システムの構 † †† 1918~1988.1965 年に“量子電磁力学の基礎研究と発展”への貢献でノーベル物理学賞受賞. 反応系から生成系の過程で信号が連続的に伝わり,脱離や求核攻撃など二つ以上のことが同時に起こる反 応が,協奏反応(concerted reaction)である.協奏反応では,ラジカル(不対電子をもつ原子や分子)の 生成,あるいはイオンの生成は起こらない. 196 第 9 章 生体イオントロニクス素子 図 9.1 電解重合法で得たフラクタルパターン状のニューロン型導電性高分子 (ポリピロール PPy) 築が可能になる. 導電性高分子は,電子回路を構築するための有力な候補でもある[4].高分子を回路 に用いるという動機づけは,“分子レベルまで回路のサイズを縮小でき,きわめて安 価に大面積の回路をプリント配線できる”という可能性であり,その原理,機構など の諸特性を検討することが有機イオンエレクトロニクスで重要となる.回路内のイオ ン性キャリアの挙動は,新規な現象を生み出し,特異なデバイスの構築ということも おおいに期待できる.このように,生体組織を念頭に置いた導電性高分子の幅広い機 能応用の展開について考えてみる. 針┻平板不平等電界下で針電極を陽極として電解重合を行うと,高電界部の針電極 先端から PPy の重合を開始し,時間経過につれて PPy は対向平板電極に向かって成 長しながら,特有の形態を示しながら重合が進行する.溶媒を炭酸プロピレン(PC), 支持電解質を p‒トルエンスルホナート・テトラブチルアンモニウム((n‒Bu)4 N p‒ TS)0.01 mol/L とし,ピロール(Py)濃度を 0.01 および 0.1 mol/L として調製した 二つの重合液(10 mL)用いて,PPy 成長の様子が観察されている.図 9.2 は,Py 濃度を 0.01 mol/L とした重合液で定電流電解重合(0.1 mA)を開始し,種々の通過 電荷量で撮影した PPy 成長の様子を示す.PPy はディッシュ底面に沿って成長し, 9.2 PPy の成長形態の制御とバイオ回路 197 図 9.2 Py 濃度による PPy 成長の様子(1) 通過電荷量が大きくなるにつれて面状に広がった広葉状の成長形態が明瞭に観測され ている. 一方,図 9.3 には,Py 濃度を 0.1 mol/L として同様の観察を行った場合の PPy 成 長の様子を示す.PPy はディッシュ底面ではなく,電解液中を樹枝状の形態で成長し ている. 通過電荷量 3.0 C で観測したこのような広葉状あるいは樹枝状の PPy 成長形態の 様子を Py 濃度に対してまとめた結果を,図 9.4 に示す.Py 濃度が 10~15 mmol/L 付近を境界として,PPy 成長形態は大きく二つに分かれている.すなわち,低 Py 濃 度ではディッシュ底面を面状に広がる2次元的な広葉状の成長形態が観測されるが, 高 Py 濃度では成長形態が変わり,ディッシュ底面ではなく,電解液中を3次元的に 広がる樹枝状の PPy 成長形態が観測される.炭酸プロピレン溶媒において,Py 濃度 が 10~15 mmol/L で劇的に形態が変化していることから類推して,針葉状と広葉状 の中間の形態は形成しにくいようである.一方,溶媒をアセトニトリル(CH3 CN) に替えた場合は,炭酸プロピレンの場合と比較して,形態は大きく変化せず緩やかで, 溶媒の種類により形態変化が微妙に異なることを示唆している. 溶媒をアセトニトリル,支持電解質は (n‒Bu)4 N p‒TS 0.01 mol/L,Py 濃度は 0.1 および 5 mol/L とした2通りの重合液(10 mL)を用意し,定電流電解重合(1 mA) 198 第 9 章 生体イオントロニクス素子 図 9.3 Py 濃度による PPy 成長の様子(2) 図 9.4 PPy 成長形態の様子 を実施して,途中で重合液を入れ替えて通過電荷量 3 C まで重合した形態変化の様子 が観察されている.Py 濃度は,0.1 mol/L で開始し,0.5 C で 5 mol/L,1.5 C で 0.1 mol/L,2.1 C で 5 mol/L に順々に切り替えて PPy 成長の様子が観察されている. 図 9.5 は,このときの各通過電荷量における PPy の様子を示す.図に示すように, PPy は広葉状と針葉状の異なった形態が交互に繰り返されて成長している.すなわち, 広葉状 PPy から針葉状 PPy が成長し,続いてその尖端に広葉状 PPy が生じている. さらに,その続きに数本の針状 PPy が成長している.したがって,Py 濃度を変える ことで,Py の電解重合による PPy の形態制御が可能である. 9.2 PPy の成長形態の制御とバイオ回路 199 図 9.5 Py 濃度による PPy 成長の様子(3) 電解重合では,支持電解質を解離しなければならないので,極性溶媒を用いる必要 がある.溶媒の極性を示す一つの物理量であるドナー数は,溶媒と SbCl3(ルイス酸) との複合体の生成エンタルピーであり,ドナー数の大きな溶媒ほどルイス酸と強く相 互作用する.言い換えれば,ドナー数は溶媒の塩基性(求核性)を示す物理量で, V. Gutmann[7]により提案されている.Py のような塩基性の高いモノマーは,アセト ニトリル(CH3 CN) ,ベンゾニトリル(C6 H5 CN)などの実験したほとんどすべての 溶媒で PPy の生成が認められる.すなわち,ドナー数が大きな溶媒ほど反応中間体 であるラジカルカチオンと強く相互作用し,これを安定化することで重合の選択性が あがる.しかし,ドナー数の小さな溶媒中では反応中間体であるラジカルカチオンは 溶媒和されずに高い活性をもち,可溶性副産成物を生成するため,PPy の重合効率は 低くなる.溶媒の塩基性がモノマーのそれよりも小さな場合には,導電性高分子は得 られるが,モノマーの塩基性を超える溶媒では中間体のラジカルカチオンはモノマー ではなく溶媒と相互作用し,重合反応が進まなくなる.このように生成したラジカル カチオンは,溶媒との相互作用の過程を経て,ラジカルカチオンどうしあるいはラジ カルカチオンとモノマーのカップリング反応が起こっていると考えられている. 238 索 引 ■人名 Klemensiewicz, Z. Anderson, C. D. 19 Lorenz, E. 53 cleaning 効果 Andersson, P. Lyone, C. 206 Cole┻Cole プロット 216 Arrhenius, S. A. 12, 17 MacDiarmid, A. G. Aviram, A. 60 Metzger, R. M. Bard, A. J. Naarman, H. 214 130 90 60 CAE 193 212 182 72 EDLC 179 Berzelius, J. J. 6,7 Nernst, W. H. 13 electronegative Bohr, N. H. D. 20 Nicholson, W. 6 electropositive 9 Brédas, J. L. Ritter, J. W. 66 Calvin, M. 182 Carlisle, A. 6 5 ESR Schrödinger, E. R. J. A. 21 68 Green Solvents Theophilou, N. 72 HOMO Chadwick, J. 19 Thomson, J. J. 19 in situ 測定 Chapman, D. L. 179 Tributsch, H. 182 Clark Jr., L. C. 206 Tubandt, C. Clausius, R. J. E. 12 van t Hoff, J. H. Cremer, M. Volta, A. Dalton, J. 8,17 Davy, H. 6 9 Green Chemistry Carter, F. L. 60 130 143 D┻A 型薄膜太陽電池 LB 法 48 48 39,91 138 216 LISICON 56 53 LUMO 13 39,91 MOS トランジスタ 2 von Hermholtz, H. L. F. 59 motional narrowing 73 NASICON 56 179 de Leeuw, D. M. 82 Walden, P. Dennard, R. H. 59 White, H. S. 215 ORP 計 Desaguliers, J. T. 179 Wilkes, J. S. 48 Pauli paramagnetism Facchetti, A. 83 Williamson, A. W. Faraday, M. Wright, P. V. 8, 17 Feynman, R. P. 195 白川英樹 NHE 129 48 57 90 12 PbF2 130 polyethylenically 構造 177 polymer‒in‒salt 型 Galvani, L. 2 Gouy, L. G. 179 ■英数 Grätzel, M. b アルミナ 182 Randles┻Sevcik 式 Grotthuss, T. 6 r 結合 62 Grubb, W. T. 187 r 電子 62 Randles の等価回路 54 salt‒in‒polymer 型 salt‒in‒salt 型電解質 Gutmann, V. 116 r*反結合状態 Haber, F. v 結合 62 SHE v 電子 62 soft matter 15 130 Heeger, A. J. 90 Hisiger, W. 6 Ag2 S AgI Hurley, F. H. Anodisc 47 ATP Jenekhe, S. A. 66 breaching SEI 膜 136 143 178 49 167,193 129 167 53 Inokuchi, H. 60 63 178 solid electrolyte interphase 53 Humboldt, A. 5 74 53 207 190,195 78 sp2 結合 62 sp2 混成軌道 34 sp3 混成軌道 34 索 引 239 sp 混成軌道 34 super dense 174 TCA 回路 イオン交換膜/金属複合体 147 イオン選択性 190 William┻Landel┻Ferry 式 イオン選択性電極 217 44,45 イオントロニクス ■ア行 イオン半径 アクセプター 18 132 活量 9 128 価電子帯 39 荷電ソリトン 74 カーボンアロイ触媒 30 一重項励起状態 69 132 カチオン 130 イオンチャネル 57 カソード反応 カソード分極 アクセプター数 169 イミダゾリウム型 アクチュエータ 146 イムノアッセイ 214 ガルヴァーニ電気 陰イオン交換膜 43 カルバニオン 81 カロメル電極 129 アクティブマトリックス表示 陰極 212 アデノシン三リン酸 190, 9 アノード 9 ウルトラキャパシタ 132 アノード分極 132 アルカリ燃料電池 アルキル基 エラストマー 107 12 エレクトロクロミック素子 エンジニアリングプラスチック アンモニウム型 応力発光 211 119 9,18 イオン液晶 50 イオン液体 48 イオン解離説 親電子置換カップリング反応 5, イオン化ポテンシャル 166 オンサガーの式 オンセル 29 ンジスタ イオン感応膜 イオン交換機能 凝析 120 31 許容帯 38 禁止帯 129 204 38 禁止帯幅 38 金属結合 31 グイ┻チャップマン┻シュテ 190 グラファイト クリープ 31 化学親和力 164 218 化学発光 103 135 128 カークウッドの理論 42 可塑性メモリ素子 イオン交換膜 43 カソード 9 182 クロノアンペロメトリー 化学ポテンシャル イオン交換体 64 155 グレッツェル・セル 8 化学電池 42 46,165 207 クラウジウス┻モソッティの式 211 218 31 66 キャパシタ 15 化学結合 イオン感応型電界効果型トラ 127 キノイド的 179 ■カ行 2 基準電極 クエン酸回路 15 5, 81, 91 64 170 ルンの電気二重層モデル 115 オリビン構造 17 イオン化エネルギー イオン結合 150 オストワルド・ライプニング 217 気孔率 筋管線維細胞 103 応力┻ひずみ曲線 48 イオノフォア 擬1次元導体 銀┻塩化銀電極 86 55 アンビエント社会 61 132 共有結合 101,219 安定化ジルコニウム固体電 考えるコンピュータ 吸着法 219 アレニウスの式 イオン化列 153 147 エレクトロクロミズム 67 アルコキシル基 解質 73 エネルギー変換効率 187 67, 107 アルコキシ基 47 運動による尖鋭化 2 166 還元反応 165 アノード反応 147,161 岩塩構造 211 インターカレーション 91, 195 アニオン イオン 48 9 インセル 189 カーボンナノチューブ 212 16 223 クロミズム 107 クーロン力 32 経験則 蛍光 6 103 240 索 引 ケクレ構造 結合交替 作用電極 83 結合性軌道 酸化還元反応 97 原子説 19 ソリオンダイオード 参照電極 93,127 ソリトン 磁気量子数 交換電流密度 133 質量保存の法則 76 光電変換効率 抗力 充満帯 175 38 縮退 152 国際純正応用化学連合 24 主量子数 黒体輻射 103 シュワネラ菌 53 固体高分子形燃料電池 真空準位 43,187 固体電解質界面膜 167 固体電解質形燃料電池 207 固定化技術 コロイド懸濁液 コロイド微粒子 コロイド溶液 133 中間相 96 60 直接燃料形燃料電池 189 チンダル現象 118 ツィッター型イオン液体 水素化 116 水和数 30 51 定比例の法則 ロニクス 166 スーパーキャパシタ 47 電解サイクル 155 92 電解重合法 71 電解伸縮 151 ■サ行 スピン 電界発光 103 サイクリックボルタモグラム スメクチック A 相 50 電解変形 151 スメクチック B 相 50 電気泳動 119 22 生体親和性 生物発光 135 電気化学 103 175 セパレータ 最高被占準位 39, 91 セレンディピティ 再沈法 細胞膜 掃除効果 39, 91 疎水コロイド 44 サブコンフルエント 202 212 204 塑性変形 155 120 110,119 1 電気化学クリープ 165 線維芽細胞 121 最低空準位 電気泳動電着法 202 サイクル寿命 48 92 電解酸化 166 18 デザイナー溶媒 電解還元 59 110 スピネル構造 サイクリックボルタンメトリー 53 174 超伝導コンピュータ ストレッチャブル・エレクト 67,93 134 51 182 120 203 ターフェル式 222 スケーリング則 コロニー形成単位 129 人工光合成 120 110, 119 116 ダニエル電池 神経回路網 スウィング型電池 205 177 脱プロトン化反応 超高密度 39 152 137 多エチレン性構造 超イオン伝導体 192 伸縮率┻張力負荷曲線 187 コットレルの式 92,127 18 中性ソリトン 22 固体イオニクス 107 ターフェルプロット 22 シュレディンガーの波動方程式 129 固定化 対向電極 56 充放電レート 141 96 ■タ行 222 帯電 自由体積 184 ソリトン準位 18 166 交流インピーダンス法 164 74,96 ソルバトクロミズム シャトルコック型電池 71 格子ひずみ 182 22 シナプス結合 181 90 132 60 高次構造 147 ソフトでウェット 酸化反応 原子ワイヤー 光合成 130 192 色素増感型太陽電池 17 138 ソフトアクチュエータ 195 酸化還元電位測定器 95 結合性ポーラロン準位 原子構造理論 その場測定 92,127 サルモネラ菌 64 185 156 電気化学作用一定の原理 9,10 電気化学的還元 92 電気化学的酸化 92 電気化学的重合法 71, 111 索 引 241 電気化学的二元論 電気化学当量 7 9 電気化学当量の法則 9 電気化学トランジスタ 215 電気化学発光 103,211 電気化学発光イノムアッセイ法 ■ナ行 反結合性軌道 ナイキストプロット 142 反結合性ポーラロン準位 ナノ構造化膜 電気化学発光現象 214 電気化学発光素子 212 電気化学ポテンシャル 189 バンド(帯)理論 ナノマシン 195 ピエゾアクチュエータ ナノ粒子 54 ナフィオン ニューラルネットワーク 222 ネルンストの式 電気二重層 47 能動カテーテル 電気分解 引張強度 147 電気メッキ 64,95 パイエルス不安定性 10 175 電極反応機構 114 バイオ回路作製 69 バイオコンピュータ 69 バイオセンサ バイオ燃料電池 30, 81,91 バイオミメティクス 27 倍数比例の法則 電場応答性高分子 動物電気 161 2 190 147,160 187 116, 169,199 ドーパント 69, 90 ドーピング 90 ドーピング電位 パウリ常磁性 74 パウリ帯磁率 80 68 ドラッグデリバリーシステム 88 トランスポリアセチレン 副格子融解 53 フッ化鉛(II) 53 フックの法則 150 不動態皮膜 167 12 クス 110 プリドーピング 166 56 プリンティッド・エレクトロ 1 147 バトラー┻フォルマー式 ニクス 110 ブルーシフト 105 フレキシブル・エレクトロニ 133 パーフルオロスルホン酸 クス 110 プロトン駆動力 44 バルクアセンブリー 44 プロトン交換膜燃料電池 54 178 ハロゲン化鉛系ペロブスカイト 184 184 24 フリーボリューム バグダッド電池 バルク 10 プラスチック・エレクトロニ 24 ハードアクチュエータ 68 126 34 部分分子 74 パウリの排他律(原理) 69 ドナー数 ハイドロゲル バイポーラロン 38 110 ファラデー電流 フェルミ粒子 18 バイポーラプレート 38 伝導電子 貧溶媒 48 59 フィルファクター 190 電子スピン 68 61 88 電子親和力 電子スピン共鳴測定 比例縮小則 ファンデルワールス力 194 電子受容性化合物 20 129 ファラデーの法則 61 電子供与性化合物 電子状態 64 バイオエレクトロニクス 42 電極スラリー 64 177 ピリジニウム型 パイエルス転移 6,41 190 150 ビニル重合 133 ■ハ行 51 電気分解の法則 ドープ量 83 標準水素電極 電気粘性効果 ドナー 122 77 非水空気二次電池 43,187 164, 179 伝導帯 122 光誘起電荷分離 非ケクレ構造 129 燃料電池 182 光誘起電荷移動 光励起子 195 2 濃度分極 127 光起電力効果 165 電気化学列 電気二重層キャパシタ 47, 38 147 比較電極 44 ニューロン 127 97 ナノシェル 二次電池 214 110 95 43 分極 132 分極電流 126 242 索 引 分子エレクトロニクス 分子コンピュータ 61 ポリ(3‒メチルチオフェン) 67 60 212 分子識別機能 205 ポリアズレン 分子整流素子 60 ポリアセチレン 分子素子 ポリアセン 60 分子ファスナー フントの規則 ペプシン 45,46 ペプトン 46 139 ボーアの理論 方位量子数 207 放射化分析法 83 ポテンシオ/ガルバノスタット ポーラロン ■ラ行 64 71 ラクトン開環反応 177 ポリマーゲル 147,160 ラジカルアニオン 81 ラジカルアニオン分子 56 5 105 ボルタの電堆 3 ラジカルカチオン ボルタの法則 3 ラジカルカチオン分子 135 ■マ行 ポリ (o‒トリメチルシリルフ ェニルアセチレン) 85 メディエータ リチウムイオン電池 190 立体障害効果 191 メディエータ型バイオ燃料電池 65, メモリー効果 156 メルトブローン法 66 170 ポリ(p‒メチルピリジニウム ビニレン) 83 ポリ(3︐4‒エチレンジオキシ チオフェン) 85 ポリ (3‒ドコシルチオフェン) ポリ (3‒フェニルチオフェン) 71 ポリ (3‒ヘキシルチオフェン) 107 53 量子化 24 良溶媒 121 リン酸形燃料電池 軟らかい物質 ヤング率 135 硫化銀 レドックス反応 15 ロッキングチェア型電池 150 ヤーン┻テラー効果 187 192 64 166 有機イオントロニクス 107 ■ヤ行 165 71 リニアスイープボルタンメト リー 191 ポリ(p‒フェニレン) 105 115 ミトコンドリア 74 31 ラジカルカップリング反応 135 74 ポーラロンモデル 30 47 ポリピロール ボルタンメトリー 93,135 ポーラログラフィー 30 187 ボルタ電池 172 飽和カロメル電極 9 溶媒和 64 ポリマー電解質 73 陽極 53 溶融炭酸塩形燃料電池 ポリエンチオール反応 ポリチオフェン 21 22 43 溶融塩 ポリチアジル 20 211 陽イオン交換膜 溶媒和数 177 ボーアの原子模型 放電深度 140,143 82 185 ユビキタス社会 ヨウ化銀 ポリイソチアナフテン 9 包括法 64,94 ポリアニリン薄膜 ペロブスカイト層 偏極性 68 64 ポリアニリン 60 27 有機薄膜電界発光素子 15,61,90 有機エレクトロニクス 109 ■ワ行 ワーブルグインピーダンス 145 著 者 略 歴 小野田光宜(おのだ・みつよし) 1975 年 1979 年 2000 年 2004 年 姫路工業大学工学部電気工学科卒業 姫路工業大学助手,助教授を経て 姫路工業大学大学院工学研究科教授 兵庫県立大学大学院工学研究科教授 現在に至る この間 1994∼1995 年米国ペンシルバニア大学博士研究員 工学博士 金藤 敬一(かねとう・けいいち) 1971 年 1975 年 1988 年 2012 年 2015 年 大阪大学工学部電気工学科卒業 大阪大学工学部助手,助教授を経て 九州工業大学情報工学部教授 九州工業大学名誉教授 大阪工業大学工学部教授 現在に至る この間 1981∼1982 年米国ペンシルバニア大学博士研究員 工学博士 大澤 利幸(おおさわ・としゆき) 1975 年 1975 年 2007 年 2013 年 電気通信大学電気通信学部材料科学科卒業 株式会社リコー,株式会社 KRI を経て 神奈川県産業技術センター 大阪工業大学工学部教授 現在に至る 工学博士 吉野 勝美(よしの・かつみ) 1964 年 1969 年 1988 年 2005 年 大阪大学工学部電気工学科卒業 大阪大学助手,講師,助教授を経て 大阪大学教授 大阪大学名誉教授,島根県産業技術センター所長 現在に至る この間 1974∼1975 年独国ハーン・マイトナー原子核研究所客員研究員 工学博士 編集担当 藤原祐介(森北出版) 編集責任 富井 晃(森北出版) 組 版 創栄図書印刷 印 刷 同 製 本 同 有機イオントロニクス ―固体イオニクス・有機光エレクトロニクス素子の原理と応用― © 小野田光宜・金藤敬一・大澤利幸・吉野勝美 2016 年 1 月 25 日 第 1 版第 1 刷発行 【本書の無断転載を禁ず】 著 者 小野田光宜・金藤敬一・大澤利幸・吉野勝美 発 行 者 森北博巳 発 行 所 森北出版株式会社 東京都千代田区富士見 1-4-11(〒102-0071) 電話 03-3265-8341/FAX 03-3264-8709 http: //www.morikita.co.jp/ 日本書籍出版協会・自然科学書協会 会員 < (社)出版者著作権管理機構 委託出版物> 落丁・乱丁本はお取替えいたします. Printed in Japan/ISBN978-4-627-77541-1