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海底ゴミ分布状況報告書
平成 23 年度 広島県海域海底ゴミ分布状況 報 告 書 平成 24 年 2 月 特定非営利活動法人瀬戸内里海振興会 (自主事業) 呉支部・福山支部・尾道支部・三原支部・江田島支部合同活動 目 次 Ⅰ.業務概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 Ⅱ.海底(海中)ゴミ分布状況アンケート調査・・・・・・・・・・・・・2 1.調査方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 2.調査結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 Ⅲ.海底(海中)ゴミ回収における課題の整理 1.課題抽出・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22 2.対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23 付属資料 1.海中(海底)ゴミアンケート調査票集計結果表 2.海中(海底)ゴミアンケート調査票(回答済み) Ⅰ.業務概要 広島県は瀬戸内海の中央部に位置し,カキ養殖を始め,小型底引き網,刺 し網,定置網等の漁業が盛んである。また,県西部の大竹市,広島市,呉市 や県東部の福山市等では自動車,鉄鋼,造船,化学等の重工業による人口集 中及び輸出入による船舶の航行も盛んで,港湾の整備もなされている。 このような状況のため,広島県は都市部を中心に多種多様なゴミが海域へ 流入することにより海中・海底ゴミが集積し海域を汚染,および漁業操業や 船舶航行の妨げになる等のため,その増加防止及び回収が急務の課題となっ ている。 本業務は、広島県における海底ゴミ回収事業実施の検討を行うための基礎 資料とするため,海底ゴミ分布状況に関するアンケート調査を行い,その課 題を整理するものである。 図-1 対象海域図(広島県海域) 1 Ⅱ.海底(海中)ゴミ分布状況アンケート調査 1.調査方法 広島県内の漁協の内,海底(海中)ゴミ(以下海ゴミ)の状況をよく 把握されていると考えられる小型底引き網漁業を行っている漁協を選定 し,「海中(海底)ゴミアンケート調査票」を配布し,後日郵送により回 収した。調査票の配布枚数は,各漁協の小型底引き網従事者数に応じて 決めた。 回収した調査票を集計・整理し,とりまとめを行った。 アンケート調査票の記入を依頼した漁協及び配布枚数は以下のとおり である。 表-1 組合名 アンケート調査票配布漁協と配布枚数 調査票 配布枚数 くば 3 浜毛保 組合名 大柿町 調査票 配布枚数 組合名 調査票 配布枚数 10 瀬戸田 2 4 東江 9 芸南 8 大野町 1 江田島 8 三原市 2 地御前 1 切串 4 吉和 35 広島市 73 音戸 9 尾 道 11 仁保 1 田原 4 浦島 3 安芸津 9 早瀬 1 向島町 1 14 倉橋西部 10 因島市 10 5 倉橋島 34 千 年 11 26 下蒲刈町 20 横 島 17 1 吉浦 7 田 島 19 鹿川 15 阿賀 33 鞆の浦 30 大原 22 仁方 6 走島 31 深江 1 川尻 8 合計 519 美能 沖 三高 内能美 海ゴミアンケート調査票は,次頁以降に示すとおりである。 2 3 4 5 6 7 8 9 2.調査結果 アンケート調査結果の概要は以下に示すとおりである。 (1)回答のあった漁協について 広島県内で主として小型底引き網漁業を行っている漁協を対象に調 査票の記入を依頼した結果,42 漁協中 20 漁協から回答を頂いた。 配布枚数 519 枚に対し、78 件の回答(回答率 15%)であった。 県東部(三原市,尾道市,福山市)が 5 漁協,呉市が 5 漁協,江田島 市が 8 漁協,県西部(広島市,廿日市市)が 2 漁協であった (2)主に従事している漁法について 回答いただいた漁業者の主な漁法は以下のとおりである。 小型底引き網漁業 53%,刺し網 15%,ナマコこぎ 6%, カキ養殖 4%,釣り 4%であった。 10 (3)海中(海底)ゴミの種類 漁業時に網等にかかる海ゴミの種類(広島市の家庭ゴミの分類)は 以下のとおりである。海ゴミが集積している海域については, (17)で 取りまとめる。 リサイクルプラ 20%,ペットボトル 16%,資源ゴミ 13%,大型ゴミ 13%,可燃ゴミ 12%,不燃ゴミ 10%,その他プラ 10%,有害ゴミ 6% であった。 (4)海ゴミを引き揚げた際の処分について 海ゴミを海中から引き揚げた後の処分については以下のとおりであ る。 再び海中に投棄が 58%,陸揚げして処分が 40%であった。 11 (5)再び海中に投棄している理由について 海ゴミを引き揚げた後,再び海中に投棄している理由については,以 下のとおりである。 取ってもきりがないから 38%,ゴミを処分してくれないから 25%, ゴミの集積箱がないから 23%,魚に影響を与えないから 7%であった。 (6)どの様なゴミ集積箱がよいか ゴミ集積箱がないから再び海中投棄していると回答した方に,どの ようなゴミ集積箱があればいいかを尋ねたところ,以下の回答であった。 材質:鉄製(金網),プラスチック サイズ:1.5×1m,2×2m,5m 角 (7)海ゴミが魚に影響を与えない理由について 再び海中投棄しているのは魚に影響を与えないからと回答した方に その理由を尋ねたところ,以下の回答であった。 魚の棲家,隠れ場になる(ビン・缶・ブロック・レンガ) 12 (8)海ゴミを処分してもらえる場合,陸揚げするか 海ゴミを海中から引き揚げた後,処分してもらえる場合,陸揚げす るかについて尋ねたところ,以下の回答であった。 陸揚げするが 74%,陸揚げしないが 26%であった。 (9)陸揚げ時の集積場所について 現在,海ゴミを陸揚げしている方の集積場所については以下のとお りである。 家庭ごみの集積箱,漁協の集積箱,市の処分場へ搬入,自治会の集 積箱,漁業者が処分であった。 13 (10)陸揚げした海ゴミの処分方法について 海ゴミを陸揚げした時の処分方法については,以下のとおりである。 家庭ゴミとして行政が収集が 50%,自宅のゴミと一緒に処分が 36% であった。 (11)環境税について知っているか 広島県が導入している環境税(ひろしまの森づくり県民税)につい て知っているか尋ねたところ,以下の回答であった。 知らなかったが 89%,知っているが 11%であった。 14 (12)環境税の使い道として 「ひろしまの海づくり」として環境税が使用できる場合,どのような ことに使用したいかについて尋ねたところ,以下の回答であった。 海ゴミの回収・処分が 47%,稚魚の放流が 22%,藻場育成が 18%で あった。 (13)新たな「ひろしまの海づくり環境税」について 新たに「ひろしまの海づくり環境税」として海ゴミ回収・藻場造成等 に使用することが必要かについて尋ねたところ,以下の回答であった。 必要だと思うが 91%,思わないが 6%であった。 15 (14)海ゴミの回収は必要か 海ゴミの回収は必要かについて尋ねたところ,以下の回答であった。 必要であるが 93%,必要ないが 7%であった。 その主な理由は,「漁場がきれいになり,魚が増える」, 「操業の支障になる」,「環境に良くないから」であった。 (15)海ゴミが漁業操業の障害となるか 海中,海底ゴミが漁業の操業に何らかの支障となったことがあるか尋 ねたところ,以下の回答であった。 支障となったことがあるが 87%,支障となったことがないが 13%であった。 16 その事例として,「網が損傷した」,「ワイヤが引っ掛かった」,「大 型ゴミ(タイヤ,バイク,自転車,大きな木材)が掛かった」,「ビニ ールがエンジン,プロペラに絡まった」,「カキ殻が網に掛かった」な どであった。 (16)海ゴミの回収と費用負担は誰がすべきか 海ゴミの回収は誰が実施すべきか,また,その費用負担は誰がすべき かについて尋ねたところ,以下の回答であった(複数回答あり)。 ①回収について 国が 27%,市町村が 25%,県が 24%,漁業者が 18%,市民団体が 5% であった。 17 ②費用負担について 税金が 69%,寄付金が 24%,漁業者(カキ業者含む)が 7%であった。 (17)海ゴミを回収してほしい海域はどこか 海ゴミを回収してほしい海域はあるか,あるとしたらそれはどこかを 尋ねたところ,以下の回答であった。 ①回収してほしい海域があるか あるが 65%,特に無いが 35%であった。 18 ②回収してほしい海域・場所及び理由について 操業区域(地先海域)が 58%,広島湾全域が 17%,カキ筏の下が 8%, 瀬戸内海全域及び航路筋がそれぞれ 4%であった。 理由としては,よく操業する場所だから,不法投棄・ゴミが多い場 所だから等であった。 (18)今後の取り組みについて 海ゴミ回収に対する今後の取り組みについてのご意見を記入して頂 いたところ,以下の回答であった。 ・回収したごみを行政が買い取る ・定期的に海底清掃を行う ・ゴミを出さない,捨てさせない ・カキ養殖関係のゴミが多い,業者に費用の一部負担を ・カキ殻を船で回収し,砕いてまた海に戻す 19 (20)海ゴミ回収の時期・場所について 定期的に海ゴミを回収している場合,その時期・場所について尋ねた ところ,以下の回答であった。 ①時期 7 月(海の日) 6 月ごろ(梅雨時期でゴミが多く流れてくるため) 7~12 月に 5 回程度 月1回 台風の時 ②場所 地域の浜 地先の海域(漂着ゴミ,海底ゴミ) (21)海ゴミについて日ごろから思っていること 海ゴミについて,日ごろから思っていることなどを記入して頂いたと ころ,以下の回答であった。 ・ナイロン袋は海底だけでなく海中,水面にも多いので引き上げた ら持って帰る。海に流さないこと ・海にゴミを捨てないようにアピールする(強化月間の実施) ・不法投棄した者は厳しく罰するべき ・ゴミは本来モラルの問題で税金を投入すべきでない。 ・陸から流れてくるゴミがかなりある。河川などの掃除をすべき ・浮遊ゴミの多くはカキ養殖の資材が多い,行政はカキ業者に甘い。 ・環境に良い資材を使用するよう指導すべき ・なぜゴミをすてるのか?ポリ袋の口を縛って生ごみを捨てるのは どうなのか? 20 ・清港会のゴミ収集船がゴミを避けて航行していることがある。 ・海底ゴミは沈みぱなしのため回収が必要 ・海上で使用したペットボトル,缶類,レジ袋等は各自で持ちかえ り,処分すべき ・広島から漂着ゴミ回収の船が来ることがあるが,定期的にきてほ しい。港内に漂着したゴミは回収している 21 Ⅲ.海底(海中)ゴミ回収における課題の整理 1.課題抽出 (1)海ゴミの種類 主な海ゴミの種類は,プラスチック類(リサイクルプラ,ペットボ トル,その他プラ),資源ゴミ,大型ゴミ,不燃ゴミ等分解されにくい ゴミが大部分を占めており,海域に対する長期間の堆積・汚染が懸念さ れる。 (2)海ゴミ回収と処分 海ゴミは漁業者,特に小型底引き網漁業の網に掛かり,操業の障害 となっているが,掛かったゴミを船上に引き揚げたのち,半数以上の漁 業者が再び海中投棄している現状がある。 この理由として,海ゴミを取ってもきりがなく,ゴミを処分しても らえない,ゴミの集積箱(処分の方法)がないからというものであった。 一方,9 割以上の漁業者は,海ゴミの回収は必要と考えており,海中 から引き揚げた海ゴミを処分してもらえる場合,70%の漁業者が陸揚げ すると回答している。その理由として,漁場がきれいになり,魚が増え る,操業の支障となる,環境に良くないなどであった。 (3)海ゴミ回収の費用負担 大部分の漁業者は海ゴミ回収は必要であり,処分費が負担されれば, 回収・陸揚げするとのことである。海ゴミ回収の主体は国,県,市町村 と考えている方が 75%以上で,ついで漁業者であった。また,費用は約 7 割の漁業者が税金の使用を望んでいる。 その理由として,河川や陸域から流入したゴミも海ゴミとなっている ので,漁業者だけが海を汚しているのではない,陸域を含め全てのゴミ の最終集積地が海域であるので,税金で負担すべきということである。 ただし,カキ養殖関係のゴミも海域によっては多いので,カキ養殖業者 へも一部負担してもらうべきとの少数意見もあった。 (4)海ゴミ回収の時期・場所 回収の時期は,梅雨時期で河川から多くのゴミが流れてくる 6~7 月 で,漁業操業区域や地元の浜を中心に実施するのが望ましい。 (5)環境税の導入 広島県が導入している環境税(ひろしまの森づくり県民税)につい 22 て約 9 割の方がご存じなかった。これと同様に「ひろしまの海づくり」 として環境税を海ゴミ回収等に使用することが必要と考える方が 9 割で あった。このように海ゴミの処分費を新たな税金(環境税)で実施する ことも検討が必要ではないか。 2.対策 海ゴミは漁業操業の障害になり,環境に良くないため,多くの漁業者 は回収を望んでいる。しかし,海ゴミ引き揚げの費用や処分の方法が決 まっていないため,回収が進んでいない現状がある。 処分の主体は国や自治体,処分費は税金でまかなうことが望まれて いる。一部自治体等の支援で海ゴミ回収を実施しているが,十分ではな いため恒久的な対策が急務の課題である。 そこで,陸域での例にならい,海づくり県民税として新たな制度を 制定し,海ゴミ回収を促進することを提案する。 23