...

掲載内容の日本語訳はこちらよりご覧ください

by user

on
Category: Documents
16

views

Report

Comments

Transcript

掲載内容の日本語訳はこちらよりご覧ください
Domus
2015 年 12 月号
IKKO TANAKA ISSEY MIYAKE
著名なグラフィックデザイナー、田中一光による作品の非凡な本質が、三宅一生のとても特別
なプロジェクトの出発点となっている。彼はこれを、無限のインスピレーション源となってくれた
師に捧げている。Domus 誌が取材する。
田中一光と三宅一生
1977 年、衣服デザインでは初の毎日デザイン賞を受けた折、一光さんは非常に喜んでくださ
り、「一生さん、本をつくりましょう!」と。あれよあれよという間に編集室をしつらえて作業がス
タートし、わっと噴き出すような勢いでさまざまなアイデアを行動に移していきました。たくさん
の人たちが気軽に見てもらえる本を、という私の考えに共鳴していただき、翌年『ISSEY
MIYAKE East Meets West 三宅一生の発想と展開』(平凡社)の本が完成。好奇心を驚くよう
な行動力でかたちにしていく一光さんとの、友情に満ちた時間でした。
一光さんには素晴らしい作品が多過ぎて、何から始めようか迷いました。私は彼の作品が放
つ強烈な個性のひとつは、力強くててらいのない、本質的な日本の美にほかならないと感じて
います。
この3つの作品は、それが最もストレートに表現されていると思います。: Nihon Buyo(1981)、
写楽二百年(1995)、太い記号のバリエーション(1992)
私は一光さんに、たくさんのことを教えて頂きました。彼は日常の中に、美しいもの、おいしい
もの、楽しいものを見つけながら、その時に起こっているすべてをおもしろがって生きた人だと
思います。あらゆることを勉強しておられ、引き出しが多くて。一光さんが時代に伴走してくれ
たのだ、と感じています。
一光さんは大胆に発想し、自ら行動し、手を動かしてみずみずしい作品を創り続け、デザイナ
ーとして社会、文化、生活の望ましい姿を思い描き創作に向かっていたのです。見る人々に未
来に希望や可能性を感じさせる、デザインにはそんな素晴らしい力があるのだと確信すること
ができるのです。
私は仕事をスタートした二十代の頃に田中一光さんと出会えて、ほんとうに幸せだと思いま
す。
技術開発と色彩へのこだわり
三宅一生とそのチームは、3つのポスター作品の力強さを、衣服でも再現しようと考えた。そこ
でチャレンジとなったのは、B全サイズ(76.5X108.5cm)の作品を原寸のままどのように生か
すかという点だった。
目的は、単に作品を絵柄として扱うのではなく、着用して立体となることで田中作品の魅力が
増幅する、いきいきとしたエネルギーをもつ衣服をつくること。今回のシリーズでは、現代のお
茶会という場で、人と人が和むきっかけとなるコミュニケーションとしての衣服がコンセプトとな
った。
一般的に、プリーツの服をつくる場合には、はじめに生地に折りひだをつけるプリーツ加工が
済んだ状態で縫製を行う。
しかし、PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKEでは、裁断縫製が済んだ状態で衣服をプリーツ
マシンに通し、熱処理を施してプリーツを定着させる、製品プリーツという独自の手法を用いて
いる。
そのため、マシンから出てきた服がどんなかたちに仕上がるのかを想定してサイジングする。
今回の作品は、サイズが大き過ぎて既存の生地幅には収まりきらないものだったため、新た
に幅の広い生地を生み出す必要があった。
サイジングにおいても、着用した時に一番美しく見える倍率に調整された。生地幅まで変える
ことは今までにないことだったため、技術開発の面でも挑戦的なプロジェクトとなった。
色彩は、チームで数百色のカラーチップとポスターとを見比べ、選定した。CCGA現代グラフィ
ックアートセンターにて、自然光の環境にポスターを置き、目視でひとつひとつの色を確かめ
ていった。
ずばりこの色だと決めても、チップをポスターから外して並べると、実際には印象が違って見え
ることもあるなど、グラフィックにおける色彩の持つ醍醐味を発見する瞬間となった。
満足のいくレベルに至るまで試行錯誤を繰り返し、3 作品合わせて 10 数色を決定するために、
長い期間をかけることとなった。
キャプション
p.24
■ トップ:1997 年、ISSEY MIYAKE East Meets West の本を制作中の田中一光(左)と三宅一生
(右)。左:中央に加えられた基礎的な幾何学型(丸、三角、四角)によって、日本髪の女性像が浮
かびあがる Nihon Buyo の羽織。Nihon Buyo は、田中一光氏の代表作のひとつである。
p.25
■ トップ:福島県須賀川市にある現代グラフィックアートセンターにて、長時間、細部までこだわり
色 の 研 究 が 行 わ れ た 。 右 :2016 年 2 月 か ら 店 頭 で 展 開 さ れ る 「IKKKO TANAKA ISSEY
MIYAKE」シリーズに使われたグラフィックデザイナー、 田中一光(1930-2002)の代表作 3 作品。
左から《Nihon Buyo》 1981 年、カルフォルニア大学で行われた日本舞踊のために制作されたポ
スター。《写楽二百年》 1995 年、東洲斎写楽の生誕 200 年記念展に出品された作品。そして、
《太い記号のバリエーション》 1992 年、正方形の単色の色面に、手描きの記号の形を配してい
る。
p.26
■ こちらのページ、左 SHARAKU のパンツは、自画像で有名な東洲斎写楽の展覧会のために
作成された田中の作品が題材になっている。そのほとんどが、18 世紀の終わりにまで続いた大首
絵、頭部や上半身を描いた浮世絵で描かれたものだ。 田中のポスターは、9 つの円から構成され
ている。
p.27
■ 反対のページ 下:《太い記号のバリエーション》からインスピレーションを得た様々なバージョ
ンの太い記号のドレス。正方形の単色の色面に、手描きの記号の形を配している。三宅は、黒の
太い記号と背景とのコントラストを活かしてデザインしている。
■ 上、左から:NIHON BUYO のハンドバッグ、《太い記号のバリエーション》が元となった
FUTOI KIGO の T シャツ。左と右:SHARAKU のハンドバッグの表と裏。
Fly UP