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H23年度 (2011/4/1-2012/3/31) 成果報告書

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H23年度 (2011/4/1-2012/3/31) 成果報告書
文部科学省
先端研究施設共用イノベーション創出事業
ナノテクノロジー・ネットワーク
京都・先端ナノテク総合支援ネットワーク
成果報告書
平成23年度
国立大学法人
北陸先端科学技術大学院大学
本報告書は、文部科学省の科学技術試験研究委
託事業による委託業務として、国立大学法人
北
陸先端科学技術大学院大学が実施した平成23年
度「京都・先端ナノテク総合支援ネットワーク」
の成果を取りまとめたものです。
2
目
次
1. 委託業務の目的
1.1 委託業務の題目
1.2 委託業務の目的
2.平成23年度の実施内容
2.1 実施計画
2.2 実施内容(成果)
2.2.1 成果概要
2.2.2 支援成果トピックス
2.2.3 支援課題一覧
2.2.4 ナノ計測・分析領域/分子合成領域における支援成果報告
2.3 成果の外部への発表
2.4 活動(運営委員会等の活動等)
2.5 実施体制
2.6 支援装置
2.6.1 ナノ・計測分析領域
2.6.2 分子・物質合成領域
2.7 各種データ
2.7.1 支援件数及び課金収入実績
(2.8 その他)
(以下は、別紙として添付)
資料A. トピックス
資料B. 支援課題一覧
資料C. 支援成果報告
資料D. 成果の外部への公開
資料E. 活動
資料F. 実施体制
資料G. 支援装置
資料H. 支援件数
資料I. 課金実績
3
1.委託業務の目的
1.1
委託業務の題目
「京都・先端ナノテク総合支援ネットワーク」
1.2
委託業務の目的
大学連携によるナノテクノロジー支援を推進する。関連する多種多様な高性能装置を
総合的な支援に供すると同時に、大学に潜在する人的資源も有効利用することで研究開
発に貢献することを目的とする。このため、国立大学法人京都大学、国立大学法人北陸
先端科学技術大学院大学、国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学は連携して大学・
地域連携イノベーション創出拠点を形成し支援事業を実施する。
国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学では、ナノ計測-分析及び分子-物質合成に関
わるナノテクノロジー研究開発の支援を行う。
2.平成23年度の実施内容
2.1 実施計画
① ナノテクノロジー研究支援
本学が有する透過電子顕微鏡や質量分析装置などの先端的設備を活用した依頼測定
や利用機会の提供によって、他大学・公的研究機関・民間企業などのナノテクノロジー
研究を支援する。本年度の支援件数の目標を 30 件とする。
②
ナノテクノロジー公開講座
北陸地域の企業などの研究者・技術者などを対象にナノテクノロジー研究技術の公開
講座を開催する。本年度は,第 5 回ナノテク総合支援ネットワーク公開講座を 11 月か
ら 1 月の期間に実施する予定。
③
ナノマテリアルテクノロジーコース支援
本学で行っている大学院学生・社会人を対象としたナノマテリアルテクノロジーコー
スを支援する。現在開設している 5 コース〔ナノデバイス加工論(実習付)
,ナノバイ
オテクノロジー論(実習付),ナノ分子解析論(実習付),ナノ固体解析論(実習付),
ナノ材料分析論(実習付)〕を継続して支援する。
④
ナノ計測-分析技術サービス
自主事業として、民間企業などから依頼されたナノ計測-分析を本学が有する研究設
備を用いて行う。本年度の支援件数の目標を 10 件とする。
⑤
ナノテクノロジー技術指導
自主事業として、本学の教員によって民間企業などの研究者・技術者に対してナノテ
4
クノロジー研究の技術指導を行う。本年度の支援件数の目標を 5 件とする。
2.2 実施内容(成果)
2.2.1 成果概要
① ナノテクノロジー研究支援
北陸先端科学技術大学院大学マテリアルサイエンス研究科およびナノマテリアルテ
クノロジーセンターに設置されている先端的設備のうち代表的な 13 の支援設備を活用
し、ナノ計測・分析、分子・物質合成など、総計 38 件のナノテクノロジー研究支援に
取り組んだ
支援機能別の支援件数は、ナノ計測・分析 35 件{内訳:大学 33 件[機関外 19 件・
機関内 14 件]、公的機関 1 件、中小企業 1 件}、分子・物質合成 3 件{内訳:大学 2
件[機関外]、中小企業 1 件}、であった。
支援機器別の支援件数は、利用者が 1 課題につき複数の支援機器を利用する場合があ
り、総計 46 件{内訳:AC-2 5 件[内訳:大学 5 件(機関外)]、EPMA 2 件[内訳:大学
2 件(機関外)]、NMR800MHz 3 件[内訳:大学 2 件(機関外)、中小企業 1 件]、NMR400MHz
1 件[内訳:中小企業 1 件]、SEM 4 件[内訳:大学 3 件(機関外)、中小企業: 1 件]、
SAM 1 件[内訳:大学 1 件(機関外)]、RBS 1 件[内訳:大学 1 件(機関外)]、顕微ラ
マン 1 件[内訳:大学 1 件(機関外)]、TEM 21 件[内訳:大学 18 件(機関外 5 件・
機関内 13 件)、公的機関 1 件、中小企業 2 件]、XPS 6 件[内訳:大学 5 件(機関外 4
件・機関内 1 件)、中小企業 1 件]、AFM 1 件[内訳:公的機関 1 件]}であった。
機関外の利用比率は、 63%であり、目標(60%以上)を達成した。
②
ナノテクノロジー公開講座
平成 24 年 1 月 24 日から 1 月 25 日の二日間に渡り、本学ナノマテリアルテクノロジ
ーセンターにて“第 5 回ナノテク総合支援ネットワーク公開講座” 『材料解析のため
の核磁気共鳴スペクトル測定装置(NMR 800MHz)と X 線光電子分光装置(XPS)の基礎と
実習』を開催した.NMR 及び XPS の使用希望者に対して、装置の原理や使用方法、どの
ような研究が実施できるかを広く知っていただくことを目的に講義と実習を行った。
初日の NMR 800MHz のコースでは、ナノマテリアルテクノロジーセンターの大木進野
教授、竹内誠研究員が講師を務めた。また、二日目の XPS コースでは、技術サービス部
の伊藤暢晃主任技術職員と村上達也技術職員が講師を務めた。
北陸三県(石川・富山・福井)から初日に 2 名,二日目に 1 名が受講した。
③
ナノマテリアルテクノロジーコース支援
本学で開講されているナノマテリアルテクノロジーコースを支援した。具体的には、
使用する機器のメンテナンスや一部の試薬消耗品購入などを本事業で実施した。同コー
5
スは、融合分野の教育を目的として学生を含む若手研究者の人材育成のために、平成
14 年度から開講されている。本年度、ナノデバイス加工論等 7 科目が開講され、延べ
21 名の履修生があった。このうち 4 科目は実習を科しており、本事業で利用されてい
る最先端分析機器の操作やクリーンルームでの作業を支援装置担当者が指導した。
④
ナノ計測-分析技術サービス
本年度は自主事業として、民間企業からの依頼に対し、ナノ計測-分析技術サービス
の支援を 6 件行った(内訳:TEM 3 件、SEM 1 件、その他 2 件)。
⑤
ナノテクノロジー技術指導
④と同じく自主事業として、民間企業の研究者に対して「微量金属の濃度測定」とい
う題目のナノテクノロジー技術指導を 1 件行った。
2.2.2
支援成果トピックス
(別紙)資料A
2.2.3
支援課題一覧
(別紙)資料B
2.2.4
ナノ計測・分析領域/分子合成領域領域における支援成果報告
(別紙)資料C
尚、昨年度の公開猶予期間(H23/4/1~H24/3/31)が終了した以下の成果報告書に
ついては、(資料C)に追加して掲載する。
◇
ナノ計測・分析研究領域
H22-JA004
遷移金属添加物半導体のバンド構造解明
京都工芸繊維大学
園田早紀
H22-JA005
遷移金属添加物半導体のバンド構造解明
京都工芸繊維大学
園田早紀
H22-JA009
遷移金属添加物半導体の組成、電子状態測定
京都工芸繊維大学
園田早紀
H22-JA010
遷移金属添加物半導体の組成、電子状態測定
京都工芸繊維大学
園田早紀
H22-JA017
有機硫黄系電池材料の構造評価
㈱ポリチオン
上町浩史
H22-JA027
遷移金属添加物半導体の組成、電子状態測定
京都工芸繊維大学
園田早紀
◇分子・物質合成研究領域
H22-JA001
植物細胞ウィルスベクターを利用した新規タンパク質試料調製
石川県立大学
森正之
H22-JA018
有機硫黄系電池材料の構造評価
㈱ポリチオン
上町浩史
H22-JA022
植物細胞ウィルスベクターを利用した新規タンパク質試料調製
石川県立大学
森正之
2.3
成果の外部への発表
(別紙)資料D
6
2.4
活動(運営委員会等の活動等)
(別紙)資料E
2.5
実施体制
・(別紙)資料F
・組織図を貼付
運営委員会(4 名)
◎
〇
〇
〇
ナノテクノロジー研究開発支援
富取正彦(拠点長)
大塚信雄
大木進野
前之園信也
◎ 富取正彦(拠点長)
人材育成
■ ナノテクロジー公開講座
〇 大塚信雄
■ ナノテクノロジーコース支援
〇 大木進野
鈴木寿一
支援事務担当者(1 名)
学内連携協議会(5 名)
◎
自主事業
富取正彦(拠点長)
マテリアルサイエンス研究科長
ナノマテリアルテクノロジーセンター長
先端科学技術研究調査センター長
技術サービス部長
2.6
■ ナノ計測-分析技術サービス
■ ナノテクノロジー技術指導
〇 前之園信也
先端科学技術研究調査センター長
技術サービス部長
支援装置
(別紙)資料G
2.7
各種データ
2.7.1
支援件数及び課金収入実績
・支援件数:(別紙)資料H
・課金収入実績:(別紙)資料I
2.8
その他
なし
7
技術代行 H22-JA001
植物細胞とウイルスベクターを利用した新規タンパク質試料調
製方法で調整した試料の構造解析
Structural analysis of samples prepared by a novel protein expression
system using plant cells and virus vectors
森 正 之 a, 竹 内 誠 b, 大 木 進 野 b
Masashi Moria, Makoto Takeuchib , and Shin-ya Ohkib
a
石川県立大学(Ishikawa Prefectural University)
b
北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)
我々は、植物細胞とウイルスベクターを利用した新規タンパク質調製方法は NMR 測定に有
用であることを確かめた。今回の支援期間ではこの手法を用いて植物の気孔の数を制御す
る働きを持つタンパク質の構造解析に挑戦した。
We had confirmed that a new protein sample preparation method using plant cells and
virus vectors can be used for preparing NMR sample. In this period, we tried to analyze
structure of the novel protein regulating the number of stomata in plants by our new
method.
は調製できることを昨年の後期報告書で示
背景: ジスルフィド結合を持つような調
した。今回の期間中では、それらの試料を
製が難しいタンパク質でも植物とウイルス
用いて構造解析に必要な数種類の測定を行
ベクターを利用したタンパク質発現系によ
い、データを解析して構造を明らかにしよ
って容易に入手できる方法を確立した。さ
うとした。
らにこのタンパク質調製方法では安定同位
体の標識も可能であり、NMR 測定に必要な
実験方法: 安定同位体標識された K15NO3
試料を調製できることも前回に報告した。
と
今回、我々はこのシステムを使用して調製
シュークロースを加えた液体培地で植物細
したジスルフィド結合を持つタンパク質の
胞を培養することで得られた安定同位体標
立体構造解析を試みた。
識タンパク質を使用した。このタンパク質
15
NH415NO3、さらに安定同位体
13
C 標識
の立体構造解析に必要な数種類のデータを
目的: 植物の気孔の数を調節する働きを
NMR 装置で測定した。まずはタンパク質の
持つタンパク質が同定された(参考文献 1)。
主鎖の連鎖帰属を行うために必要な HNCA,
このタンパク質は大腸菌などの発現系では
HN(CO)CA, HNCACB, CBCA(CO)NH,
調製が困難であったが、植物細胞とウイル
HNCO, HN(CA)CO, CC(CO)NH を測定し
スベクターを用いたタンパク質調製方法で
た。次に側鎖の帰属と NOE 由来の距離情
報を得るために TOCSY と NOESY を測定
した。さらに、構造の信頼性のため異種核
(図 1)HNCACB と CBCA(CO)NH の連
NOE を測定し、運動性について調べた。
鎖帰属
33 から 37 番目までの Cαと Cβの連鎖帰
結果と考察: 今回の試料を用いて測定す
属の結果を示す。
ることで主鎖の連鎖帰属(図 1)が完了し、図
2 に示すように 15N-HSQC スペクトルのそ
れぞれのピークのアミノ酸タイプとアミノ
酸番号の特定ができた。また、TOCSY と
NOESY の解析により側鎖の帰属とともに
NOE データを得ることができた。それらの
データを構造計算用ソフトウェア:CYANA
2.1 にインプットして、収束した構造を得る
ことができた。この構造は図 3 に示したよ
うに、二本のβストランドが 1 つのループ
でつながっており、N 末端側は自由度のあ
るランダムコイル状であることが明らかに
なった。異種核 NOE のデータはループ領
域と N 末端側のランダムコイル領域の運動
(図 2)1H-15N HSQC スペクトル(Bruker
性が高い結果を示し、今回得ることができ
AVANCE-Ⅲ 800MHz)
た構造と一致している。今回の気孔を増や
アミノ酸タイプの 3 文字表記とアミノ酸番
す因子の構造決定により、この因子が結合
号を示す。(25℃, pD5.8, 10% D2O)
すると予想されている受容体との相互作用
機序の理解と解明に役立つと思われる。
(a)
参考文献
Sugano SS, Shimada T, Imai Y, Okawa K,
Tamai A, Mori M, Hara-Nishimura I.
Stomagen positively regulates stomatal
density in Arabidopsis. Nature. 463,
241-244 (2010).
(b)
(図 3)NOE データから計算して収束した
立体構造
a) 20 構造の主鎖構造を重ね合わせ、ステレ
オ図で示した。b)平均構造のリボンモデル
図を示した。タンパク質内の 3 組のジスル
フィド結合を黄色で示した。
技術代行
2011-JAIST-1
糖鎖高分子による生体機能材料の開発 III
Biofunctional Material by Glycopolymers III (一行スペース–10.5pt)
三浦佳子
Yoshiko Miura
九州大学大学院工学研究院化学工学部門
Department of Chemical Engineering, Graduate School of Engineering, Kyushu University
マンノースとトリメトキシシランを側鎖に持つ高分子を合成し、シリカ多孔膜に対して修飾した。測定
は X 線分光解析によって行い、C, N, O, Si の元素の存在を確認した。C(1s)について、強いカーボンの
ピーク、C-C、C-O、C-N のピークを確認した。また、Si については高分子の被覆について、Si(2p)の
強度が 10 %以下になったことから、糖鎖高分子によるシリカ表面の被覆を確認した。糖鎖高分子で被
覆した基材についてタンパク質の分離を測定して、バイオ分離材料の開発を行った。
A polymer carrying mannose and trimethoxysilane (TMS) was synthesized, and siliceous porous matrices was
modified by the polymer immobilization. The polymer modification was confirmed by observation of C, N, O and
Si atoms with X-ray photoelectron spectroscopy (XPS). The narrow band analysis of C(1s) peak was measured,
and the peaks from C-C, C-O and C-N were observed to confirm the polymer modification. The intensity of
Si(2p) was decreased up to 10 %, also showing the polymer modification. The polymer modified siliceous porous
matrices showed the selective protein separation based on the molecular recognition ability.
細胞表面の糖鎖はタンパク質や細胞と相互作
ることから、生体機能材料として有用である。
用して、生体活動に必要な分子認識を行い、生命
我々はこれを“糖鎖高分子”として定義して、研
活動を行っている。また、糖鎖の分子認識作用は、
究を進めている。
特定のタンパク質やウイルスなどに関与してい
本研究では、糖鎖高分子をグラフトさせた基材
る上、親水性の基材であるため、疎水性相互作用
によるタンパク質やウイルスの分離材料に関す
による非特異吸着が少ないため、こうした病原体
る検討を進めた。生体分子の分離材料では、細菌
を分離するための認識素子として有用と考えら
を分離除去する材料が開発されており、サイズ排
れる。
除に基づく基材の開発が進められてきた。しかし
これまでに私のグループでは糖鎖の相互作用
ながら、μm オーダーの大きさを持つ細菌に対し
を活かすためのツールとして、糖鎖を高分子の側
て、ウイルスやタンパク質は nm オーダーの大き
鎖に結合させた“糖鎖高分子”による生体分子認
さしか持たないことから、これをサイズ排除によ
識材料の開発を行ってきた。糖鎖の相互作用は通
って分離することは難しい。物質濾過の流速はハ
常単独では弱いが、糖鎖を集積化させた材料では
ーゲンポアユイズの式によって規定されるため、
多価効果と呼ばれる増強効果の働きで、タンパク
孔径が nm オーダーの膜では、実践的な流速が得
質との相互作用が強くなる。高分子の側鎖に糖鎖
られない上、ファウリングを起こしやすい欠点が
を結合させた材料では、この多価効果が増強でき
ある。そこで、糖鎖高分子をターゲットタンパク
質をとらえるための基材として扱い、その性能の
着した C-C、C-H バンドに起因するピークが
検討を行った。シリカ材料への高分子の修飾の解
観察されるが、糖鎖高分子を吸着させること
析について X 線分光解析(XPS)による分析を行
で、C-O,C-N バンドに起因するピークが観測
った。
された。また、未修飾の材料については、
Si(2p)のピークが強く観測されるのに対して、
実験方法
殆どピークが観測されないことがわかった。
材料
これらのことから糖鎖高分子が SPG 膜に修
、
飾されたことを確認した。また、この修飾
p-acrylamidephenyl--D-mannoside を既報の通
SPG 膜に対して、ConA の吸着量は 34nmol/m2
りに合成して用いた。共重合のモノマーについて
となり、一方で非特異的に吸着するタンパク質
は 、 3-(trimethoxysilyl)
(BSA)の吸着量は 4.2nmol/m2 であることから、
糖
鎖
高
分
子
に
つ
い
propyl
て
は
methacrylate
(TMSMA)(Aldrich)を用いた。重合は DMF 中で、
吸着量について 8 倍程度の差があることが明らか
azobisisobutyronitrile (AIBN)を開始剤として
になった。
行った。この得られた高分子について、シラ
ス多孔材料(SPG Technology Co., Ltd)とイ
ンキュベートすることで修飾を行った。
測定
SPG 膜、糖鎖高分子修飾 SPG 膜について、
XPS を Axis-ultra(Shimadzu-Kratos)によ
って測定した。
タンパク質分離機能
SPG 膜に対して、マンノース認識タンパク質
Fig1. 糖鎖高分子の構造
であるコンカナバリン A(ConA, J-オイルミ
ルズ)、牛血清アルブミン(BSA, Sigma)の
PBS 溶液を通液させて、タンパク質の残存量
を測定した。タンパク質量の定量はブラッド
フォード試薬によって行った。
結果と考察
糖鎖高分子については Fig1 のような物質を
合成した。合成した物質に対して、SPG 膜を
作用させて、修飾を行った。SPG 膜について、
参考文献
1) H. Seto et al, ACS Appl. Mater. Interfaces 2012, 4,
411-417.
XPS による測定を行い、C, N, O, Si の各元素
について測定を行い、特に C(1s), Si(2p)
の元素について詳細な解析を行った(Fig2)。
Fig2 に示す通り、C(1s)では、元々は自然吸
キーワード
糖鎖高分子:糖鎖を側鎖に持つ高分子のこ
1
技術代行
2011-JAIST-3
植物細胞とウイルスベクターを用いた試料調製システムの高度な標
識技術の開発
The development of advanced labeling techniques in the sample
preparation system using plant cells and virus vectors
森正之a, 竹内誠b, 大木進野b
Masashi Moria, Makoto Takeuchib, and Shin-ya Ohkib
a
石川県立大学(Ishikawa Prefectural University)
b
北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)
我々は植物細胞とウイルスベクターを利用した新規タンパク質調製方法では NMR 解析に
必要な標識タンパク質の調製が可能であることを報告した。今回の支援期間では、分子量
の大きなタンパク質の NMR スペクトルにおいて信号が重なる問題について注目した。この
問題の解決策として既に大腸菌で提案されているメチル基領域の選択的標識が本手法で可
能かを標識アミノ酸または代謝中間物質を培地に添加することで確かめた。
We had reported that the new protein sample preparation method with plant cells and
virus vectors is extremely useful for preparing NMR sample. In this period, we focused
on the problem of the spectral overlap in the NMR data for proteins with higher
molecular mass. To overcome this issue, we confirmed whether selective labeling of
methyl groups, which have been proposed using the popular E. coli systems, is available
using the novel protein preparation method by addition of labeled amino acids or
metabolite to medium.
これまでに私たちは植物とウイル
なる。この問題を解消するためには、注目
スベクターを利用したタンパク質発現シス
したい部位だけが標識されている部位特異
テムを開発してきた。この手法の利点は一
的安定同位体標識が極めて有効である。そ
般的には調製困難なジスルフィド結合含有
のような高度な標識技術は大腸菌などの試
タンパク質を容易に調製可能であること、
料発現システムで提案されてきた。これら
安定同位体標識タンパク質の調製が可能で
の標識技術の中から、アミノ酸と代謝中間
あること(参考文献 1)、産生された標識タン
物質による標識法に注目した。通常、培地
パク質のNMR立体構造解析が可能である
から細胞内へ取り込まれたアミノ酸や代謝
こと(参考文献 2)を、私たちは報告してきた。
中間物質は、植物細胞内の代謝によって各
背景:
タンパク質の NMR スペクトルは、試
アミノ酸の合成に利用される。しかし、今
料分子量の増大に伴う信号数の増加により
回注目した Ile、Leu や Val は代謝の下流に
信号の重なりが顕著になり、解析が困難と
位置し、他のアミノ酸に代謝されることが
ほとんどないため、部位特異的な標識効率
パク質の発現量の変化を観察した。図 1 に
が高い。さらに、代謝中間物質である標識
代謝中間物質を使用したときの結果を示し
α-ketobutyric acid を大腸菌の培地に加え
た。この結果から,13C標識された代謝中間
た場合、大腸菌内のタンパク質合成システ
物質を 100mg/Lの濃度で培地に加えて実験
ム に お い て Ile が 標 識 さ れ 、 標 識
することに決めた(図 1b-c)。
α-ketoisovaleric acid の場合は、Val と Leu
次に、13C 標識されたアミノ酸(3 種)ま
の両方とも標識されることが知られている
たはメチル基だけが特異的に 13C 標識され
(参考文献 3)。これらの情報をもとに前回に
た代謝中間物質(2 種)を添加して 5 種類の目
引き続き、大腸菌利用のシステムと同様に
的タンパク質を調製した。
本タンパク質発現システムにおいて選択標
これら
13C
標識されたタンパク質試料
識試料の調製を可能にすべく、アミノ酸ま
の NMR 測定を行い、標識パターンを解析
たは代謝中間物質を用いた標識技術の高度
した。解析の結果、標識された Leu または
化を試みた。
Ile を添加して得られた BPTI の NMR スペ
クトルからは他のアミノ酸のシグナルを確
今期間中の研究目的は、細胞培養
認できなかった(図 2c,d)。このことから今
に用いる培地に標識されたアミノ酸や代謝
回の培養条件において Leu と Ile は他のア
中間物質を添加することで特異的にメチル
ミノ酸に代謝されていないことがわかった。
基標識を行う条件を検討することである。
標識 Val を用いて調製した BPTI では Val
目的:
と Leu のメチル基の信号が確認できたこと
実験方法:
非標識のLS培地にアミノ酸
から Val は Leu に代謝されたことがわかっ
(Ile, LeuまたはVal)または代謝中間物質
た ( 図
(α-ketobutyric acidまたはα-ketoisovaleric
(methyl-13C)-α-ketobutyric acid を培地に
acid)を添加し、細胞の生育とタンパク質発
加えた場合は Ile の δ 位のメチル基だけが標
現量を調べ、培地中のアミノ酸または代謝
識
中間物質の濃度を最適化した。次に、 C標
(dimethyl-13C)-α-ketoisovaleric acid を培
識されたアミノ酸またはメチル基だけが特
地に加えた場合は大腸菌の場合と同様に
異的に 13C標識された代謝中間物質を加え
Val と Leu の両方のメチル基の標識を確認
た培地で植物細胞を培養し、安定同位体標
できた(図 3b)。Val やα-ketoisovaleric acid
識タンパク質を得た。さらに、このタンパ
による標識法は Leu にも代謝されるため解
ク質のNMRスペクトルを測定してどの部
析を複雑にするけれども、他に代謝されな
位が標識されているかを解析した。一連の
い Leu の標識も別の培養で行うことで Val
実験においてはBPTIをモデルタンパク質
のメチル基を容易に識別できる。
13
として採用した。
さ
2b) 。 代 謝 中 間 物 質 の
れ
た
(
図
3c)
。
以上の結果から、アミノ酸または代謝
中間物質により、この新規タンパク質発現
結果と考察:
アミノ酸または代謝中間物
質の添加量によって細胞増殖量と目的タン
システムを利用してさらに高度な安定同位
体標識が達成できることが明らかになった。
(図 1)代謝中間物質添加による発現量の変
化
(上)代謝中間物質を使用したときのタンパ
(図 2) BPTI のメチル領域の 1H-13C HSQC
ク質の発現量を SDS-PAGE で確認した。
スペクトル(Bruker AVANCE-Ⅲ 800MHz
( 下 左 ) α-ketoisovaleric
で測定)
acid
と ( 下
右) α-ketobutyric acid を使用したときのタ
選択的
(a)
13C
13C-Val
標識、(c)選択的
ンパク質の発現量の変化を棒グラフで示し
識、と(d)選択的
た。バーは標準偏差(n=3)を示す。
択的
13C-Val
均一安定同位体標識、(b)
13C-Ile
13C-Leu
標
標識サンプル。選
を利用した標識(b)では Val と
Leu の 2 種類が標識される。ピークはアミ
ノ酸タイプと残基番号で示した。アスタリ
スクはタグ配列のアミノ酸を示す。パネル
b の点線で囲んだピークは不純物由来と思
われる。
3. Goto NK, Gardner KH, Mueller GA,
Willis RC, Kay LE.
A robust and cost-effective method for the
production of Val, Leu, Ile (δ1)
methyl-protonated
15N-, 13C-, 2H-labeled
proteins. J. Biomol. NMR. 13, 369-374
(1999)
(図 3) BPTI のメチル領域の 1H-13C HSQC
スペクトル。(a)
13C
均一安定同位体標識、
(b) (dimethyl-13C)-α-ketoisovaleric acid、
(c) (methyl-13C)-α-ketobutyric acid を使用
し
た
標
識
サ
ン
プ
(dimethyl-13C)-α-ketoisovaleric
ル
。
acid を利
用した標識(b)では Val と Leu の 2 種類が標
識される。ピークはアミノ酸タイプと残基
番号で示した。アスタリスクはタグ配列の
アミノ酸を示す。
参考文献
1. Ohki S, Dohi K, Tamai A, Takeuchi M,
Mori M.
Stable-isotope labeling using an inducible
viral
infection
system
in
suspension-cultured plant cells. J Biomol
NMR. 42, 271-277 (2008)
2. Ohki S, Takeuchi M, Mori M.
The NMR structure of stomagen reveals
the basis of stomatal density regulation
by
plant
peptide
Commun. (in press)
hormones.
Nature
技術代行
2011-JAIST-8
共役系高分子ナノファイバー中における共役系高分子鎖の凝集状態評価
Aggregation states of conjugated polymers inside their nanofibers
石井佑弥a, 村田英幸a
Yuya Ishiia, Hideyuki Murataa
a
北陸先端科学技術大学院大学
a
JAIST
共役系高分子ナノファイバー中における共役系高分子鎖の凝集状態を,OsO4 染色を併用した透過型電子
顕微鏡(TEM)観察により評価した.この結果,共役系高分子の凝集層は機械的延伸に伴って線幅数 nm
程の細い筋状に一次元的に変形していくことが明らかになった.
We characterized the aggregation states of conjugated polymers inside conjugated polymer nanofibers by
transmission electron microscope measurements following OsO4 staining of the nanofibers. Then, we
demonstrated that the aggregation domains of the conjugated polymers became one-dimensional thin domains
with a diameter of around several nanometers after mechanical drawing.
背景: エレクトロスピニング法は,高電圧で高
分子溶液を帯電させて噴出するジェット溶液か
らファイバーを作製する手法であり, 簡便に共
役系高分子ナノファイバーを作製可能な手法で
ある1).共役系高分子をナノファイバーのような
極小径のファイバー内に閉じ込めることにより
特異な物性が発現することが期待される.最近
我々は、共役系高分子ナノファイバー中で共役系
高分子鎖が高度に一軸配向し,高度の偏光発光な
どの特異な物性を発現することを明らかにして
いる2).さらに,得られたファイバーを延伸する
ことにより,ファイバー中の高分子鎖の一軸配向
性が向上することを明らかにしている2).共役系
高分子鎖の一軸配向性と同様に,共役系高分子鎖
の凝集状態が電気伝導性に大きく影響すること
が知られている3).しかし,ナノファイバー中に
おける共役系高分子鎖の凝集状態を報告した例
は極めて少なく,特に延伸に伴う凝集状態の変化
を報告した例はこれまでなかった.
目的: 本研究では,エレクトロスピニング法で
作製した共役系高分子ナノファイバー中におけ
る共役系高分子鎖の凝集状態を評価する.特に,
機械的延伸が共役系高分子鎖の凝集状態に及ぼ
す影響を明らかにすることを目的とする.
実 験 方 法 :
共 役 系 高 分 子
Poly[2-methoxy-5-(2-ethyl-hexyloxy)-1,4-phenylene
vinylene] (MEH-PPV: Fig. 1a) と Poly (ethylene
oxide) (PEO: Fig 1b)をchloroformに溶解させ,溶液
を調製した.この溶液から,独自開発したコレク
(a)
(b)
Fig. 1. molecular structures of (a) MEH-PPV and (b) PEO.
ター切替式エレクトロスピンニング法4)を用いフ
ァイバー1本を紡糸した.得られたファイバーを2
wt%のOsO4水溶液雰囲気下に60分間放置しOsO4
染色を施した.その後,透過型電子顕微鏡(TEM:
H-9000NAR, Hitachi)を用いてファイバーを観察
した.
結果及び考察: Fig. 2にOsO4染色した未延伸お
よび4.5倍延伸MEH-PPV/PEOナノファイバーの
TEM像を示す.OsO4はMEH-PPV分子鎖にのみ含
まれる不飽和炭素結合と選択的に反応し沈着す
る.したがって,電子密度が高い重金属Osが沈
着したMEH-PPV分子鎖はTEM像で暗点として観
察される.4.5倍に延伸したファイバー中に線幅
数 nm程の細い多数の黒い筋が観察できる.一方
で,未延伸ファイバー中ではこの筋は観測できな
い.したがってこの細い多数の黒い筋は,延伸に
伴うPEO分子鎖のずり変形によって,MEH-PPV
凝集相がこすられて細く線状に延びた結果であ
ると考えられる.これまでに我々が行った発光ス
ペクトルによる評価結果からも,延伸に伴う凝集
(a)
(b)
Fig. 2. TEM images of single MEH-PPV/PEO nanofibers
after OsO4 staining: (a) undrawn and (b) 4.5-fold drawn
nanofibers.
層の一次元化が示唆されており5),今回の評価結
果を裏付けている.
結論: 共役系高分子ナノファイバーを機械的に
延伸すると,内在する共役系高分子層が線幅約数
nm程の筋状に変形することを明らかにした.
論文発表状況・特許状況
[1] 石井佑弥, 酒井平祐, 古川行夫, 村田英幸,
平成 23 年度繊維学会年次大会 (ポスター発表).
[2] Yuya Ishii, Heisuke Sakai, Yukio Furukawa, and
Hideyuki Murata, International conference on
organic electronics 2011 Roma (poster).
参考文献
1) F. D. Benedetto, A. Camposeo, S. Pagliara, E.
Mele, L. Persano, R. Stabile, R. Cingolani, and D.
Pisignano, Nat. Nanotechnol. 3, 614 (2008).
2) M. Campoy-Quiles, Y. Ishii, H. Sakai, and H.
Murata, Appl. Phys. Lett. 92, 213305 (2008).
3) H. C. Yang, T. J. Shin, L. Yang, K. Cho, C. Y. Ryu
and Z. N. Bao, Adv. Funct. Mater. 15, 671 (2005).
4) Y. Ishii, H. Sakai, and H. Murata, Mater. Lett. 62,
3370 (2008).
5) Y. Ishii, H. Murata, J. Mater. Chem. 22, 4695
(2012).
キーワード
・共役系高分子
芳香環のように π 電子を有する化合物の高分
子体(共役系高分子)は,主鎖骨格に沿ってπ電子
が広がることができるため,特異な電気・光特性
などを示すことから,トランジスタ,有機 EL,
太陽電池への応用研究が活発に行われている.特
に溶媒に可溶な共役系高分子は、塗布により安価
で大面積の素子が作製できる可能性があること
から研究開発が活発化している.
・ナノファイバー
ナノファイバーとは,厳密には直径が 1 nm か
ら 100 nm,長さが直径の 100 倍以上の繊維状物
質を指すが,広義では直径が 1 μm 以下のものも
ナノファイバーと表現される.ナノファイバーは
従来のマイクロファイバーでは発現しない特有
の特性を有することから, 環境や再生医療分野等
の幅広い分野で応用研究が活発に行われている.
技術代行
2011-JAIST-9
Graphene oxide nanospheres
Sunatda Arayachukiata, Supason Wanichwecharungruanga
a
Chulalongkorn University, Bangkok 10330, Thailand
Abstract In this work, carbon oxide nanoparticles was synthesized. The structure was characterized by ATR-FTIR
spectroscopy, SEM and TEM. The ATR-FTIR absorption showed a broad OH stretching at 3,344.39 cm-1,
obvious C=O stretching at 1632 cm-1 and O-H bending at 1362 cm-1. The SEM and TEM images of the carbon
oxide nanoparticles showed a nanospherical shape. The results suggest that prepared nanoparticles were used as a
novel material in delivery system.
Back ground
The carbon materials such as fullerene, carbon
nanotube and graphene, have drawn many interests
for the past few decades due to their unique physical
and chemical properties. The carbon nanoparticles
containing actives is one of high interesting for drugs
delivery system. The newly proposed carbon oxide
nanostructures should possess some advantageous
fundamental properties, such as, amphiphilic surface,
existence of reactive functionalities on the surface for
further modification, stable and durable nature in
both liquid and solid phase. These beneficial
properties will then be utilized in biomedical
application, especially as drug carrier.
Objective
To synthesis carbon oxide nanoparticle for use as
drugs delivery system.
Experiment
The carbon oxide nanoparticle was synthesized from
the graphite flakes using ultrasonication assisted
chemical exfoliation/oxidation followed by
centrifugal separation. The carbon oxide nanoparticle
also was characterization.
Results and Discussion
The characterization of carbon oxide nanoparticles by
ATR-FTIR spectroscopy showed a broad OH
stretching at 3,344.39 cm-1, obvious C=O stretching
and C=C stretching at 1,600-1750 cm-1, O-H bending
at 1362 cm-1 and C-C bending at 1205 cm-1. The
SEM and TEM images of the carbon oxide
nanoparticles showed nanospherical shape. In
addition, XPS analysis revealed the C-C, C=C, C-O,
C=O and COOH functional groups at the surface of
the carbon oxide nanoparticles where the C1s spectra
showed the binding energy (BE) at 283.6, 284.3,
286.3, 288.1 and 289.4 eV, respectively (Fig. 1a), and
the O1s spectra showed the BE of the C-O, C=O and
COOH functional groups at 533.0, 531.7 and 530.5
eV, respectively (Fig. 1b). The XPS spectra
confirmed that the carbon oxide nanoparticles was
oxidized.
b)
a)
Fig1. The X-ray photoelectron spectra derived
deconvoluted (b) C1S and (c) O1S spectra of
GONPs.
Conclusion
The carbon oxide nanoparticles were successfully
synthesized by the chemical exfoliation/oxidation of
graphite. The C-C, C=C, C-O, C=O and COOH
functional groups at the surface of the GONPs were
confirmed by XPS analysis.
References
1.) Hummers, W. S.; Offeman, R. E., Preparation of
Graphitic Oxide. Journal of the American Chemical
Society 1958, 80 (6), 1339-1339.
2.) Yang, D.; Velamakanni, A.; Bozoklu, G.; Park,
S.; Stoller, M.; Piner, R. D.; Stankovich, S.; Jung, I.;
Field, D. A.; Ventrice Jr, C. A.; Ruoff, R. S.,
Chemical analysis of graphene oxide films after heat
and chemical treatments by X-ray photoelectron and
Micro-Raman spectroscopy. Carbon 2009, 47 (1),
145-152.
3.) Abouimrane, A.; Compton, O. C.; Amine, K.;
Nguyen, S. T., Non-Annealed Graphene Paper as a
Binder-Free Anode for Lithium-Ion Batteries. The
Journal of Physical Chemistry C 2010, 114 (29),
12800-12804.
4.) Wang, S.; Tang, L. A. l.; Bao, Q.; Lin, M.; Deng,
S.; Goh, B. M.; Loh, K. P., Room-Temperature
Synthesis of Soluble Carbon Nanotubes by the
Sonication of Graphene Oxide Nanosheets. Journal of
the American Chemical Society 2009, 131 (46),
16832-16837.
装置利用
2011-JAIST-11
High-performance nonvolatile write-once-read-many-times memory devices
with ZnO nanoparticles embedded in polymethylmethacrylate
Toan Thanh Dao, Thu Viet Tran, Derrick Mott, Shinya Maenosono, and Hideyuki Murata
Japan Advanced Institute of Science and Technology
A mixture of ZnO nanoparticles and polymethylmethacrylate was used as an active layer in a nonvolatile resistive
memory device. Current-voltage characteristics of the device showed nonvolatile write-once-read-many-times
memory behavior with a switching time on the order of μs. The device exhibited an on/off ratio of 104, retention
time of >105 s, and number of readout of >4×104 times under a read voltage of 0.5 V. The emission,
cross-sectional high-resolution transmission electron microscopy (TEM), scanning TEM-high angle annular dark
field imaging, and energy dispersive x-ray spectroscopy elemental mapping measurements suggest that the
electrical switching originates from the formation of conduction paths.
Introduction: Organic nonvolatile resistive memory
has emerged as a promising candidate for
next-generation memory devices, thanks to its
exceptional advantages including fast transition time,
solution processability, low temperature processes,
and low manufacturing cost. Structurally, an active
layer formed by organic material or a compound of
polymer and nanoclusters is sandwiched between two
electrodes. The two levels of different conductivities
of devices can be switched under suitable voltages,
enabling the ability to code digital values. Depending
on the reproducibility of switching, the resistive
memory can be classified into rewritable and
write-once-read-many-times (WORM) types. For the
purpose
of
data
storage
archiving,
a
high-performance WORM resistive memory device is
absolutely imperative. WORM memory devices using
nanocomposites in which organic molecules or
nanoparticles (NPs) are dispersed phases have been
demonstrated. Recently, various types of memory
devices with ZnO nanostructures embedded in a
polymer matrix have been demonstrated. However,
each ZnO-based memory device is reported to be
different in type of switching even when made from
the same materials. For example, rewritable memory
devices have been fabricated using ZnO NPs or
nanorods embedded in polymethylmethacrylate
(PMMA). ZnO NPs embedded in polystyrene (PS)
resulted in rewritable or WORM memory devices.
Unfortunately, the factors causing the bistability of
ZnO-based memory devices are still unclear. Even
though ZnO-based WORM memory has achieved up
to an on/off ratio of 103, the higher on/off ratio is
desired for practical applications. The important
characteristics including number of readout and
switching time have not been addressed yet.
Moreover, there is still a lack of evidence to clarify
the origins of memory effects.
Objective: We present an excellent WORM memory
device made from ZnO NPs embedded in PMMA.
The device exhibited an on/off ratio of 104, switching
time of 1 μs, retention time of >105 s, and number of
readout of >4×104 times. The on/off ratio was
strongly dependent on the weight ratio of ZnO NPs to
PMMA (Fig. 1). By analyzing with an emission
microscope under bias, we concluded the conduction
paths (CP) in the device were responsible for the
memory effect. To clarify the formation of the CPs,
cross-sectional high-resolution transmission electron
microscopy (HRTEM), scanning TEM-high angle
annular dark field (STEM-HAADF) imaging, and
energy dispersive x-ray spectroscopy (EDS)
elemental mapping were performed.
Figure 1. (a) Device structure and (b) I-V curve of resistive
memory device. Arrows indicate bias sweeping direction.
Experimental: Monodispersed ZnO NPs of mean
size 9.2 nm were chemically synthesized using our
own method (J. Appl. Phys. 107, 014308 (2010))
with some modifications. The as-synthesized ZnO
NPs were dispersed in a chloroform/n-butylamine
mixture. Separately, PMMA (molecular weight 94
600) was dissolved in chloroform. Then, both
materials were mixed together at different weight
ratios. The ZnO/PMMA dispersion solution was spin
coated onto a pre-cleaned 150-nm-thick ITO cathode
and heated at 100 ºC for 80 min in air to form a
75-nm-thick ZnO:PMMA composite layer. Finally, a
100-nm-thick Al anode was thermally deposited on
the ZnO:PMMA layer at a base pressure of 7×10−6
Torr through a shadow mask (device area 3.5 mm2).
The specimen for cross-sectional TEM observation
was prepared using a SMI 3050 focused ion beam
(FIB) bombardment (SII Nanotechnology) instrument.
Four steps in the FIB analysis were performed. First,
carbon and Pt-Pd layers were deposited onto the
surface of the specimen. Second, the target location
(bright spot) was marked to indicate the precise cross
section position. Third, FIB milling with a Ga ion
source (30 keV) was performed to prepare a
2-μm-thick specimen for cross-sectional TEM
measurements. Finally, the specimen was transferred
to a TEM grid using a microprobe, and then, the
thickness of the specimen was reduced to 0.1 μm by
crude processing and low-energy Ga ion milling. The
cross-sectional TEM analysis was performed on an
Hitachi
H-9000NAR
transmission
electron
microscope operated at 300 kV. Scanning TEM - high
angle annular dark field (STEM-HAADF) imaging
and energy dispersive X-ray spectroscopy (EDS)
elemental mapping mesurements at emission point
were carried out using a JEOL JEM-ARM200F
instrument operated at 200 kV with a spherical
aberration corrector (nominal resolution 0.8 Å).
Results and Discussion: The charge trapping or CP
is the proposed operational mechanism of resistive
memories. Several methods were used to investigate
CP such as changing the area of the devices,
heat-sensitive camera, or the optical beam induced
resistance change (OBIRCH). To clarify the
mechanism, we first observed the emission of the
device during changing the applied voltages by using
an EX02 Functional Characteristics emission
microscope. When the applied voltage was less than
the Vth, no visible emission appeared. The visibly
bright spots were observed at a voltage larger than
Vth with high intensity as shown in Fig. 2(a). And
then, when the voltage was reduced again to 3V, the
visible spots remained at the same places but with
lower emission intensity. This phenomenon is
consistent with nonvolatile behavior investigated by
electrical measurements. The bright spots suggest
that the CPs are formed in these places. The origin of
the emission could be due to the electroluminescence
from the ZnO NPs in the CPs. In order to investigate
the formation mechanism of the CP, cross-sectional
HRTEM and STEM-HAADF imaging and EDS
elemental mapping analyses were carried out. Figs.
2(b) and 2(c) show the HRTEM images taken from
the cross sections of the selected dark area and bright
emission point in Fig. 2(a), respectively. At no
emission area, ZnO NPs were found to be uniformly
dispersed in PMMA. In contrast, the aggregation of
ZnO NPs was observed at the emission point. The
enlarged image of the red square part of Fig. 2(c)
suggests that there was a conductive channel formed
by an aggregation of ZnO NPs (Fig. 2(d)). The
STEM-HAADF imaging and EDS elemental
mapping of the emission point further confirmed that
closely packed ZnO NPs are present across the film.
These analyses of the film prove that CPs are formed
in our device.
Figure 2. Evidence of CP existence in a WORM memory
device. Emission image of device in ON state (a).
Cross-sectional HRTEM images of no emission (b) and
emission (c) points, and (d) enlarged image of square area
in (c).
Conclusion: A high-performance WORM memory
device was fabricated by using ZnO NPs:PMMA
nanocomposite sandwiched between ITO and Al
electrodes. The memory effect is attributed to the CP
formation.
Related Publications and Presentations:
[1] Dao T. Toan, Tran V. Thu, K. Higashimine, H. Okada, D.
Mott, S. Maenosono, and H. Murata, Appl. Phys. Lett. 99
(2011) 233303.
[2] Dao T. Toan, Tran V. Thu, K. Higashimine, H. Okada, D.
Mott, S. Maenosono, and H. Murata, The 2012
International Meeting for Future of Electron Devices
Proceedings, 2012 submitted
技術代行
2011-JAIST-12
触媒反応で生成されたラジカルを用いた不純物ドープ
Impurity doping to Si using radicals generated by catalytic reaction
早川太朗a,
Taro Hayakawaa
a
北陸先端科学技術大学院大学
a
JAIST
Si 中の不純物の深さ分布をアトムプローブ(AP)法で調べるために,FIB(収束イオンビーム)を用い
て先端の直径 100nm 程度の針状試料を作製した.不純物の深さ分析には 2 次イオン質量分析法(SIMS)
が多用されている.しかし,SIMS では 1 次イオンの運動エネルギーによるイオンミキシングによって,
試料中の不純物分布が拡がって測定される.これが、浅い不純物の分布分析で深さ分解能を律速してい
る.一方,AP 法では試料を電界蒸発させるため,このような不純物分布の拡がりは生じない.ただし,
電界蒸発を起こすためには,先端が直径 100nm 程度の試料が必要になる.そこで実施した FIB を用いた
針状試料の作製について報告する.
Tip-shaped samples with a tip radius of about 50 nm for atom-probe (AP) mass spectrometry were prepared using
focused ion beam (FIB). Secondary ion mass spectrometry (SIMS) is usually used to investigate the impurity
distribution in Si. However, the kinetic energy of the primary ions for SIMS measurement broadens the impurity
distribution in obtained data. The broadening is a limit of the depth resolution. In contrast, the AP mass
spectrometry ionizes the atoms of sample by field evaporation without broadening the impurity distribution. The
AP mass spectrometry requires a sharpened tip sample of about 100 nm in diameter for field evaporation. Here the
tip sample fabrication procedure using FIB is reported.
背景: 近年,SiのMOSFET(電界効果トランジ
スタ)の微細化が進んでいる.MOSFET素子のサ
イズを縮小するためには,浅いドーピングが必要
である.本グループではラジカル化したドーパン
トガスを用いて薄いドーピング層を作製できる
ことを示した.1)しかし,これらのドープ層の厚
みはSIMSによる不純物分布の深さ分解能以下と
考えられた.そこで,より深さ分解能を高めるこ
とが出来るAP法に着目して,不純物分布を調べ
ることを試みた.2)
針電極にWデポジションで固定した.次に、(b)
に示すようにWブロックを断面が正方形になる
目的: 本研究の目的は,AP法に適した試料を
作製し,不純物の深さ分布を分析することである.
AP法の測定には,電界蒸発を安定して行うため
に,先端の直径が100nm程度の針状試料が必要に
なる.この試料作製をナノテク支援の設備である
FIBで行った.
実験方法: 本研究では,SIMS測定の結果よりP
が表面数nm以内にドープされていることが分か
っているSi試料を用いた.FIBで試料像を得るた
めに用いる走査イオン顕微鏡は,イオン電流値を
最小にしても試料表面が削れてしまうので,初め
に,試料全面に薄いW膜をFIBで成膜した.次に,
Fig.1 (a)に示すブロック状にSiを切り出し,Wの
Fig. 1. (a)-(d): SIM images of a tip-shaped sample
preparation. (a): a Si block was cut from the sample wafer
after bonded to a W needle by W deposition, and
transferred by a manipulator. The block was bonded to a
W tip, and the W needle was separated by FIB. (b): the Si
block on the tip was trimmed to be cubic. (c) and (d): the
top and side image of the finished Si tip, respectively.
れる.Siの同位対存在比は,28Siが92%,29Siが5%,
30
Siが3%なので、質量分析器の質量数が+1して表
示されている可能性が高い.m/e=19のシグナルは
H2O(m=18)、m/e=57はSi2(m=56)と推測される.一
方,Pは30P以外の同位体は存在しない.質量分析
器の質量数の表示のずれを考慮してもm/e=31に
シグナルは検出されていなかった.これは,試料
の最表面のみにPが存在したため、酸化によって
失われた可能性や,SIMによる観察時にスパッタ
されてしまった可能性が考えられる.また,この
測定中の電界蒸発はやや不安定でm/e数で数千か
ら数万の大質量のフラグメントが多数発生した.
これはWの蒸発電界がSiの蒸発電界のおよそ倍
以上と高いため,最表面のWが蒸発の後,Siが急
激に蒸発し,その際にPがフラグメントに紛れて
失われた可能性もある.Si表面近傍のPの分布の
測定のためには,真空中で保護膜を堆積するなど,
試料構造の再考が必要である.
ように加工した.最後に(c)の断面になるように
中央に穴が空いたリングパターンでビームをス
キャンし,ビームでスキャンした領域の端がテー
パー形状になることを利用して針形状を作製し
た.この針形状の作製は,初めは中央の穴が
1000nm程度のリングパターンでビームをスキャ
ンし,最後に中央の穴が100nmのパターンでビー
ムをスキャンすることで試料最表面が針形状の
形成時に失われないように注意した.
Fig.2にAP装置に取り付けた試料を示す.AP装置
は金沢工業大学の西川・谷口研究室の装置を使用
させて頂いた.図の引き出し電極の穴から放出さ
れたイオンは飛行時間型(TOF型)質量分析器に
よって質量分析される.半導体のように導電性が
低い試料はレーザーの照射でキャリア発生させ
てイオン化を促進する.この試料は約5kVの引き
出し電圧でイオンが放出された.
結果及び考察: Fig. 3 にAP法でこの試料から
結論: FIB加工によって、AP法用Siの針状試料
を作製し,Siが電界蒸発することを確認した.し
かし,試料最表面に存在するはずのPのシグナル
は得られなかった.試料表面を酸化や、SIMのス
パッタから保護し,安定して電界蒸発を行う構造
が必要であることが分かった.
謝辞: 本研究のAP法による質量分析は金沢工
業大学の西川・谷口研究室の装置により行いまし
た.AP法の測定をご教示して下さった,西川治
教授,谷口昌宏教授に感謝致します.
sum of ion counts
Fig. 1. Photo of a tip-sharpened sample and an extraction
electrode in an AP apparatus (Nishikawa and Taniguchi
100 in Kanazawa Institute of Technology).
laboratory
論文発表状況・特許状況
[1] 早川太朗 北陸先端科学技術大学院大学 H23
年度博士後期課程サブテーマ論文.
29.1
19.1
90
80
70
60
50
40
28.1
30
57.2
20
15.1 27.1
1
56.8
10
0
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
m/e ratio
参考文献
1) T. Hayakawa, Y. Nakashima, M. Miyamoto, K.
Koyama,K. Ohdaira, and H. Matsumura, Jpn. J.
Appl. Phys. 50 (2011) 121301
2) 田丸 謙二(編), 表面の科学, 学会出版センタ
ー(1985).
キーワード
・アトムプローブ法(AP)
電界イオン顕微鏡同様に,針状試料の先端に高
電界を印加し,電界による試料原子のイオン放出
Fig. 3. AP mass spectrum of a sample of Si on a W tip with
を行い,このイオンの質量分析を行うことによっ
m/e (mass number/ charge) numbers.
て,試料中の不純物の深さ分布を調べる方法.イ
オン検出器を 2 次元配置したものを用いると,構
得られたイオンの質量分析した結果をm/eで示す.
成元素の 3 次元分布を調べることもできる.
このm/eのカウント数は試料全体が電界蒸発する
までに得られたものを積算して表示した.この試
料の場合,Siのシグナルが最も多くなると想定さ
2
技術代行
2011-JAIST-13
アルコール CCVD 法による単層 CNT における
Co 触媒粒に関する研究
Study on catalytic cobalt particles for synthesis of single-walled CNTs
by alcohol catalytic CVD
磯村和生a,
片山まどかa,
下田達也a
Kazuki Isomuraa, Madoka Katayamaa Tatsuya Shimodaa
a
北陸先端科学技術大学院大学
a
JAIST
Al-O 上と SiO2 上の Co 粒子について TEM を用いて観察を行い、Co 粒子サイズ(直径)と Co 粒子間距離
を測定した。その結果、Al-O 上の平均 Co 粒子サイズ(直径)は、4.6nm であり、平均粒子間距離は 7.7nm
であることがわかった。また、SiO2 上の平均 Co 粒子サイズ(直径)は 4.7nm であり、平均粒子間距離が
8.3nm であることがわかった。
The diameter and interparticle distance of Co particles on Al-O and SiO2 were measured by TEM. As a result, an
average diameter and an average distance between two Co particles on Al-O were 4.6 nm and 7.7 nm, respectively.
On the other hand, an average diameter and an average distance between two Co particles on SiO2 were 4.7nm
and 8.3 nm, respectively.
背景:
単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は、
いて測定することを目的とした。
2
優れた電気特性と大きい比表面積(3000m /g)を持
ち、電気化学キャパシタ等の応用に注目されてい
実験方法:
る。我々はSWCNT合成においては粒子状のCo触
い、担体としてAl-Oを 20nm形成し、触媒にCoを
媒が主要な役割を演じていると考えている。その
0.5nmをEB蒸着法で成膜し、それを 750℃で 5 分
形態によりSWCNTの直径や分布及びCNT間距離
間、Ar/H2 雰囲気中でアニールしたものと、基板
が変化し、さらに触媒担体によっても合成される
に熱酸化 400nmのSiウェハを用い、触媒にCoを
SWCNTの形状が変化する。しかしながら、それ
0.5nmをEB蒸着法で成膜し、それを 750℃で 5 分
がCNT合成に及ぼす影響には未解明な部分が多
間、Ar/H2 雰囲気中でアニールしたものをTEMに
い。
よって観察する。
目的: 本研究では、触媒担体であるAl-OとSiO2
実験結果及び考察: アニール後のAl-O上Co粒子
上のCo粒子のサイズ、Co粒子間距離をTEMも用
のTEM像をFig. 1 に示す。また、750℃で 5 分間ア
基板に熱酸化 400nmのSiウェハを用
ニールを行った後のSiO2 上のCo粒子のTEM像を
Fig. 2 に示す。Fig. 1、Fig. 2 のTEM像において黒
い点がCo粒子である。Fig. 1 のTEMからAl-O上の
平均Co粒子サイズ(直径)は、4.6nmであり、平均粒
子間距離は 7.7nmであることがわかった。また、
Fig. 2 のTEM像から平均Co粒子サイズ(直径)は
4.7nmであり、平均粒子間距離が 8.3nmであること
がわかった。このことからAl-O上SiO2 上のCo粒子
サイズはほぼ同程度であるが平均粒子間距離は、
SiO2 上の方が大きくなることがわかった。これは、
50nm
Al-Oの形態変化に伴いCo粒子が密集したためだ
と考えられる。
Fig. 2 Co nanoparticles on SiO2
結論: 触媒担体であるAl-OとSiO2 上のCo粒子の
論文発表状況・特許状況
サイズ、Co粒子間距離をTEMも用いて測定を行っ
なし
た。その結果Al-O上のCo粒子サイズとSiO2 上の
Co粒子サイズはほぼ同程度であり、Co粒子間距離
参考文献
はAl-O上のほうが小さくなることが明らかとな
なし
った。
キーワード
カーボンナノチューブ
一層のグラファイト(グラフェンシート) が丸ま
った構造のものを単層カーボンナノチューブと
呼んでいる。単層カーボンナノチューブは、その
形状(直径と螺旋構造) によって、金属的あるいは
半導体的な性質を示す。
20nm
Fig. 1 Co nanoparticles on Al-O
装置利用
2011-JAIST-14
新規グラフェンデバイスの電気伝導測定
Transport measurements of novel graphene FET devices
久保園芳博a, 後藤秀徳a, 上杉英里a, 藤原明比古b
Yoshihiro Kubozonoa, Hidenori Gotoa, Eri Uesugia, Akihiko Fujiwarab
a
岡山大学大学院自然科学研究科
b
高輝度光科学研究センター
イオン液体ゲートを用いたグラフェンデバイスを作製し、伝導特性の層数依存性を調べた。グラフェン
の層数は光学顕微鏡像、ラマン分光を併用して特定した。グラフェンに誘起されるキャリア密度は層数
に大きく依存し、4 層の場合にドープ量が最大となることを見出した。この結果はグラフェン/イオン液
体間の静電容量が層数依存性の異なる 2 つの要因(量子キャパシタンスと幾何学的キャパシタンス)か
ら構成されることで説明できる。
We study the layer number dependence of transport properties in ionic-liquid-gated graphene devices. The number
of layer, n is determined by optical microscopy and micro-Raman spectroscopy. The induced carrier density is
maximal for n = 4. This result shows that the capacitance between the ionic liquid and the graphene sheet is
determined by two contributions; quantum capacitance and geometrical capacitance which differently depend on
n.
背景: 層状構造をとるグラファイトの原子一層
分をグラフェンと呼び、線形なバンド分散関係を
もつことから、相対論的量子力学が適用できる系
として注目を集めている。この特異なグラフェン
のバンド構造は、層数が増えるにしたがってバン
ドが重なるグラファイトの半金属状態へと変化
する。このようなグラフェンの電子状態の層数依
存性を系統的に調べ、電界効果トランジスタ
(FET)としての最適な層数を探索することは応用
面でも重要である。
(a)
(b) 7
目的: 本研究では、グラフェンの層数を光学顕
微鏡像とラマン分光により非破壊に特定する方
法を確立し、グラフェンの電気伝導特性が層数に
どのように依存するかを調べることを目的とし
た。特に、イオン液体ゲートを用いたグラフェン
FETの動作特性の層数依存性について考察した。
実験方法: グラフェンはスコッチテープを用い
た機械的剥離によりSiO2(300 nm)/高ドープSi基
板上に作製した。この基板上のグラフェンを光学
顕微鏡により観測すると、層数による反射光強度
が異なるため、層数の違いを目視で識別できる4)。
この方法で層数が異なると推定されたグラフェ
ンを支援装置である顕微ラマン分光装置(東京イ
ンスツルメンツ社製 nanoFinder 30, レーザー波
長532 nm)を用いて測定し、層数を同定した。層
数の異なるグラフェンを用いてFETデバイスを
D
G
2D
6
).
u.
a(
yt
si
n
et
nI
5
bulk
4
4
3
3
2
2
1
0
1000
1500
2000
2500
1
3000
Raman shift (cm-1)
Fig. 1. (a) Optical microscope image of single- and fewlayer graphene. Inset: histogram of the green channel
component of the RGB value in the area enclosed by the
dashed lines. The plot exhibits discrete peaks
corresponding to the different thickness of graphene. The
inferred layer number is indicated in the figures. (b)
Evolution of Raman spectra with the number of layers. The
spectra are normalized to 2D peak height. D, G, and 2D
peaks are indicated by dashed lines.
作製し、イオン液体ゲート電圧を印加し電気伝導
特性の層数依存性を測定した。
的キャパシタンスが4層でクロスオーバーするこ
とを示している。
結果及び考察: Fig. 1(a)は作製した単層-数層グ
ラフェンの光学顕微鏡写真である。色の薄いもの
が層数の少ないグラフェンに対応する。層数の違
いを定量的に評価するために、点線範囲内の画像
をRGB(赤緑青)値に分離し、G成分値のヒスト
グラムを作製した結果を挿入図にしめす。層数に
応じたコントラストのピークがあらわれ、この試
料の場合、層数を1-4と推定することができる。
このように推定された層数を同定するために各
位置で測定した、顕微ラマン分光スペクトルを図
1(b)にしめす。Gバンド(~1580 cm-1)と2Dバンド
(~2700 cm-1)が強く観測された。 格子欠陥がある
と生じるDバンド(~1350 cm-1)1)は観測されなかっ
たので、剥離によって作製したグラフェンは欠陥
が少ないことがわかる。2Dピークは二重共鳴ラ
マン過程により生じるので、その形状は電子のバ
ンド分散を反映したものとなり、層数に強く依存
する。単層グラフェンでは1つの共鳴成分からな
るが、2層の場合は4つの共鳴成分があるので単
層とは明確に区別できる1)。また、Gピークは1次
の光学フォノン散乱過程をあらわし、層数を増加
すると低波数側にシフトし2)、Gバンドと2Dバン
ドの相対強度比は増加する3)。測定結果はこれら
の先行研究と一致している。これらの結果により、
光学顕微鏡像から1-4層と推定された層数の正当
性が証明できた。
このように層数を判定することによって、1-10
層のグラフェンデバイスを各層につき複数作製
し、イオン液体ゲートによりドープされる電荷量
の層数依存性を調べた。その結果、電荷密度は層
数に大きく依存し、グラフェンの層数が4層のと
きドープ量が最大になることを見出した。この結
果は、イオン液体とグラフェン間のキャパシタン
スが電気二重層の厚さという幾何学的形状だけ
では決まらず、グラフェンの状態密度が小さいこ
とに起因する量子キャパシタンス5)の寄与が大き
いことを示している。実験結果は、層数とともに
増加する量子キャパシタンスと減少する幾何学
結論: ラマン分光で層数を同定することにより、
通常の膜厚判定を光学像の観測により簡便に短
時間で行うことが可能になった。これにより、イ
オン液体ゲートを用いたグラフェンFETデバイ
スの動作を最適化する層数を見出した。
論文発表状況・特許状況
[1] 上杉英里, 後藤秀徳, 江口律子, 久保園芳博,
"イオン液体を用いた数層グラフェン FET の伝
導特性", 日本物理学会第 67 回年次大会, 兵庫
県西宮市, 2012 年 3 月(口頭発表).
[2] 後藤秀徳, 上杉英里, 江口律子, 久保園芳博,
"グラフェンエッジの電気伝導測定", 日本物理
学会第 67 回年次大会, 兵庫県西宮市, 2012 年 3
月(口頭発表).
参考文献
1) A. C. Ferrari et al., Phys. Rev. Lett. 97,
187401(2006).
2) A. Gupta et al., Nano Lett. 6, 2667 (2006).
3) D. Graf et al., Nano Lett. 7, 238 (2007).
4) P. Blake et al., Appl. Phys. Lett. 91, 063124
(2007).
5) A. Das et al., Nature Nanotechnol. 3, 210 (2008).
キーワード
・グラフェン
炭素原子が蜂の巣格子状に並んだ結晶構造を
もち、これが層状に重なってグラファイトとなる。
線形なバンド分散をもつため相対論的量子力学
が適用できる興味深い研究対象であるとともに、
高移動度であることから応用面でも期待される
新規材料である。
・イオン液体
室温で液体状態となる塩。イオン液体を介して
FET デバイスにゲート電圧を加えると、活性層界
面との間にきわめて短い間隔の電気二重層を形
成するので、低電圧で高濃度キャリアドープが可
能となる。
装置利用
2011-JAIST-15
SiN/SiO2 膜界面の観察
Interfacial observation of SiN/SiO2 layers on Si substrate
佐々木 敬彦
Takahiko Sasaki
北陸電気工業株式会社
Hokuriku Electric Industry Co., Ltd.
イオン注入によるインプラダメージを受けた Si 基板上の SiO2 膜とダメージを受けていない SiO2 膜上に
窒化珪素(SiN)を成膜し、それぞれの SiN と SiO2 膜の界面を高分解能透過型電子顕微鏡(HR-TEM)
で断面観察することで下地となる SiO2 膜のインプラダメージの有無が SiN 成膜に与える影響を調査し
た。その結果、イオン注入された Si 基板では表面近傍に注入の影響と思われる欠陥構造、さらには SiO2
膜の膜厚減少が観測され、注入されていない試料との違いが明確に見られたが、SiN と SiO2 の界面には
注入の有無による差異が見られず、SiO2 膜にインプラダメージが存在しても SiN 膜が問題なく形成され
ていることを確認することができた。
To investigate interfaces of SiN / SiO2 layers and SiN / SiO2 (as a mask of ion implantation) layers on Si substrate,
cross sectional observations have been performed by high resolution Transmission Electron Microscope
(HR-TEM). As the result of observation, it is found that there is little difference in all interfaces of SiN / SiO 2
layers in spite of being observed defect structures and thickness reduction of SiO2 layer in ion-implanted Si
substrate.
背景: MOSトランジスタのチャネル領域など
の製造工程ではイオン注入による半導体基板へ
の不純物導入が多く用いられているが、その際に
は基板保護の目的で犠牲酸化膜(SiO2)を予め表
面に形成することが有効である。しかし、この犠
牲酸化膜上にシリコン窒化膜(SiN)を形成する
ようなデバイス構造を検討する場合、イオン注入
による犠牲酸化膜へのダメージ(インプラダメー
ジ)が懸念される1), 2)。
目的: 本研究課題では、犠牲酸化膜(SiO2)を
介して不純物のイオン注入が行われたSi基板と
イオン注入が行われていないSi基板の酸化膜上
に窒化珪素(SiN)を成膜し、SiO 2膜のインプラ
ダメージの有無によるSiN / SiO2膜界面状態を透
過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察によっ
て比較することを目的とする。
実験方法: ①単結晶シリコン(c-Si)基板の両面
に300nm程度の熱酸化膜を形成する。②Si基板の
片面に対し、深さ0.5μm~1.0μm程度の深さにな
るようにボロン(B)のイオン注入(注入量:
1.0×1012 ~1.0×1014 ion/cm2)し、炉によってア
ニールをする。③減圧CVD法(LP-CVD)によっ
て基板両面に80nm程度のSiN膜を形成する。④断
面観察ができるように基板の切り出し、垂直研磨
を行い、TEM(JEOL JEM-ARM200F:加速電圧
200kV)によって、基板の両面に存在するSiN /
SiO2 / c-Siの断面層構造を観察した。
結果及び考察: Fig. 1にc-Siウェハにイオン注入
した面と、イオン注入していない面の断面TEM
像を示す。ここから両面に存在するSiN膜の厚さ
は表裏関係なく成膜されているが、SiO2膜の厚さ
はイオン注入した面が30nm程度薄くなっている
ことが確認された。また、イオン注入された面で
はc-Si表面近傍に欠陥構造が存在し、注入されて
いない裏面には欠陥が存在しなかった。これらの
現象はボロンのイオン注入によって生じたと思
われる。
(a)
(b)
defect
Si
SiO2
SiN
200 nm
Fig. 1. Cross sectional TEM images of the SiN / SiO2 /Si
structure. (a) Front side (boron was implanted into Si), (b)
Back side (no boron was implanted).
(a)
(b)
SiO2
Si
Si
SiO2
5 nm
Fig. 2. Cross sectional TEM images of the SiO2 /Si layer structure. (a) Front side (boron was implanted into Si), (b) Back
side (no boron was implanted).
さらに、Fig.1のSiO2とc-Siの界面近傍で拡大した
断面TEM像をFig. 2に示す。c-Si基板の結晶格子及
びSiO2膜との界面にはc-Siの数原子層に歪みのよ
うなコントラストが確認できた。
また、Fig. 3は高角度散乱暗視野走査透過電子顕
微鏡法(HAADF-STEM)によるSiN とSiO2膜界
面の断面観察像である。イオン注入のマスクとし
て用いられたSiO2 膜は膜厚が減少するくらいの
ダメージがあるにもかかわらず、SiNとSiO2膜の
界面ではその差異を確認することができなかっ
た。
(a)
SiN
(b)
SiO2
SiN
SiO2
2 nm
Fig. 3. Cross sectional HAADF-STEM images of the SiN /
SiO2 /Si layer structure. . (a) Front side (boron was
implanted into Si), (b) Back side (no boron was implanted).
結論: 高分解能断面観察により、酸化膜(SiO2)
を介して不純物のイオン注入が行われたSi基板
とイオン注入が行われていないSi基板のSiO2 膜
上にそれぞれ窒化珪素(SiN)を成膜し、SiO2膜
のインプラダメージの有無によるSiNとSiO2膜の
界面状態を比較した。イオン注入されたSi基板で
は表面近傍に注入の影響と思われる欠陥構造や
犠牲酸化膜であるSiO 2膜の膜厚減少が観測され、
注入をしていない試料との違いが見られたが、
SiNとSiO2界面では注入の有無による差異がなく、
本研究の範囲内ではSiO2 膜のインプラダメージ
がSiNの成膜に影響を与えないことを確認できた。
参考文献
1) A. Losavio et. Al., Appl. Phys. Lett. 74, 2453
(1999).
2) 豆野 和延 他, 電子情報通信学会技術研究報
告. SDM, シリコン材料・デバイス. 93 (369),
89-96 (1993).
キーワード
・イオン注入
半導体にイオン化したドナーやアクセプター
となる不純物を加速させて基板内に打ち込むこ
とで、不純物を添加する方法。他の類似した方法
に比べ、不純物の分布や接合の深さなどを精密に
制御できる。ただし、打ち込まれた不純物を電気
的に活性化したり、半導体の損傷を除いたりする
には、注入後にアニール処理が必要である。LSI
の製造にはほとんどこの方法が使われている。
装置利用
2011-JAIST-16
混合原子価金属錯体の電子状態の解明
Study on Electronic States of Mixed-Valence Metal Complexes
大久保貴志
Takashi Okubo
近畿大学理工学部
Kinki University
集積型金属錯体は複数の金属イオンと架橋有機配位子が自己組織化プロセスによって形成した無機・有
機複合材料である。本研究では新規混合原子価集積型金属錯体を合成し、その電子状態を明らかにした
うえで、太陽電池をはじめとする種々の光電子デバイスへと応用することを目的としている。今回、ジ
チオカルバミン酸誘導体を配位子とした一連の単核金属錯体や配位高分子、金属クラスターに関して光
電子分光測定によりそれぞれの錯体の HOMO のエネルギー準位を決定し、UV-Vis-NIR 吸収スペクトル
から HOMO-LUMO ギャップを見積もった。また、実際に色素増感太陽電池の増感色素として応用し、
それぞれの電子状態と光電変換特性との関係を考察した。
Metal-assembled complex is one of the organic-inorganic hybrid systems constructed by self-assembly of metal
ions and organic bridging ligands. We have attempted to create new mixed-valence metal-assembled complexes
and investigated the electronic states. Our motivation is to develop the opto-electronic devices such as solar cells
by using our mixed-valence metal-assembled complexes. In this project, the HOMO levels of the mononuclear
complexes, coordination polymers and metal clusters with dithiocarbamate ligands were determined by
photoemission yield measurement (AC-2), and the HOMO-LUMO gaps were estimated with the energy of the
absorption edges in the UV-Vis-NIR absorption spectra. In addition, the application of the complexes as
sensitizing materials for dye-sensitized solar cells (DSSCs) was carried out, and investigated the relationships
between the photoelectronic conversion properties and the electronic states of the mixed-valence metal-assembled
complexes.
研究目的: 混合原子価配位高分子は、多様な電
子状態を取りうる金属イオンと柔軟な有機骨格
から構成される無機・有機複合体特有の集積構造
及び電子状態に加え、その混合原子価状態に由来
する高い電荷の内部自由度を併せ持つユニーク
な材料である。本研究ではこれまで硫黄原子を含
むジチオカルバミン誘導体を架橋配位子として
用いる事で、様々な混合原子価配位高分子を開発
し、その誘電性やキャリア移動特性に関して研究
を行ってきた。また、最近では合成した一連の金
属錯体や配位高分子を用いた太陽電池の開発に
も取り組んでいる。今回、特に色素増感太陽電池
への応用を目指して新たな配位高分子を合成し、
その光電変換特性を検討した結果に関して報告
する。
結果と考察: 本研究では光電子デバイスへの応
用可能な金属錯体の開発を目指し、ジチオカルバ
ミン酸誘導体を配位子とした種々の混合原子価
多核金属錯体や混合原子価配位高分子を合成し
ている。その結晶構造の一部を図1に示す。本研
究では特にこれら一連の化合物に関してインピ
ーダンス分光測定よりその誘電性とキャリア輸
送特性を調べ、その電子状態と電場応答性を明ら
かにしている。また、新たな可能性として太陽電
池への応用を試みている。
図1,混合原子価配位高分子の結晶構造
これまでのこれまでの我々の研究で最も高効率な
DSSC は [CuI2CuIIX2(Hm-dtc)2(CH3CN)2]n ( X = Br
(1a) and I (1b))を増感色素として用いた場合に得ら
れている。ただし、この化合物は低沸点なアセトニト
リル(CH3CN)を骨格に含んでいるため、低温焼結
用酸化チタンペーストに混合し、配位高分子の分解
温度より低い50度で焼結することで光電極を作製し
ている。ただし、本来この低温焼結用酸化チタンペ
ーストにおける最適な焼結温度は 120 度であり、より
高効率な太陽電池を作製するためには低沸点なア
セトニトリルではなく、プロピオニトリルやベンゾニトリ
ルなど高沸点の溶媒を含む、あるいは全く溶媒を含
まない配位高分子を新たに合成する必用がある。ま
たこのとき、二次元、三次元骨格を有する配位高分
子においてはバンドギャップが減少してしまうために、
色素増感太陽電池の増感色素としては適さないこと
がわかっている。従って、一次元骨格を有し、なおか
つ低沸点溶媒を含まない配位高分子の合成を試み
た。
図3,配位高分子 2 のインピーダンス特性
図4,配位高分子 2 の拡散反射スペクトル
図2,配位高分子 8 の結晶構造
本研究では上記の目的を達成するために 1a、1b
の合成時にアセトニトリルの代わりにプロピオニトリル
もしくはベンゾニトリルを用いた新たな配位高分子の
合成を試みた。しかしながら、現在まで目的の配位
高分子の単離に至っていない。これまでのところ、
Pip-dtc-を配位子とした銅二価錯体を原料にプロピ
オニトリルもしくはベンゾニトリルを用いて配位高分
子の合成を試みたところ、溶媒を含まない新たな一
次元配位高分子[CuI3CuII2I3(Pip-dtc)4]n (2)が生成す
ることを見いだしている。その結晶構造を図2に示す。
この配位高分子はヨウ化銅(I)の一次元ラダーの両
端に単核銅二価ユニット Cu(Pip-dtc)2 がぶら下がっ
た構造を有している。従って、この配位高分子は光
吸収ユニットと電荷輸送パスとが分離した光増感材
料として理想的な構造を有する。図3に配位高分子
2 のインピーダンス特性を示す。インピーダンスの測
定データを図3(a)の等価回路を用いてフィッティング
し、得られた抵抗成分 R1 を温度に対してプロットした
ものが図3(b)である。アレニウス型の温度依存性を
示すことから、この応答が熱活性型の伝導キャリアに
よるものであることが理解できる。また、図3(c)はモジ
ュラスのコールコールプロットである。円弧の半径は
温度変化に対して変化せず、このことからも、このイ
ンピーダンスの応答が伝導キャリアの応答によるもの
であることがわかる。図3(d)はモジュラスの虚数部
の周波数依存性である。共鳴周波数は温度の上昇
に伴い増大し、この共鳴周波数から緩和時間を見
積もり、緩和時間のアレニウスプロットから共鳴して
いる成分の活性化エネルギーを見積もったところ、
0.39 eV であった。電気伝導度のアレニウスプロット
から見積もった活性化エネルギーは 0.36 eV であり、
上記の活性化エネルギーとほぼ一致することから、
モジュラスの応答は伝導電子の電場応答成分を観
測しているものと考えられる。また、光電子分光法
(AC-2)にて配位高分子 2 の HOMO のエネルギー
準位を見積もったところ、-5.09 eV であった。また、
拡散反射スペクトル(図4)より求めたバンドギャップ
(HOMO-LUMO ギャップ)は 1.17 eV であることから、
LUMO の値は-3.92 eV と見積もることができる。この
値は酸化チタンの伝導帯(-3.8 eV)より僅かに低く、
色素増感太陽電池の増感色素としては不向きであ
ることが予想された。実際この配位高分子を色素増
感太陽電池の増感色素として利用し、セルを作製し
たところ、図5に示す光電流特性が得られた。赤で
記したプロットが配位高分子 2 を用いた色素増感太
陽電池の光電流特性である。LUMO が酸化チタン
の伝導帯より低いため CuBrHm1D (1)よりも短絡電
流密度は小さいものの、他の配位高分子に比べれ
ば比較的高い光電変換効率を示した。これは可視
から近赤外にかけての強い吸収と効率的な電荷輸
送を可能にする構造に由来するものと考えている。
CuIPip1D (2)
図5,配位高分子を用いた DSSCs の光電流特性
CuIPip1D (2)
Table 1,配位高分子を用いた DSSCs の光電流特性
キーワード
・金属錯体
金属イオンと有機配位子(金属イオンに結合可
能な有機分子)からなる複合化合物。生体中には
数多くの金属錯体が存在する。例えば血液中には
鉄イオンとポルフィリン配位子からなる鉄—ポル
フィリン錯体が存在し、酸素が鉄イオンに配位す
ることで運搬される。また、昨年ノーベル賞を受
賞した鈴木カップリングおいてはパラジウム錯
体が触媒として用いられている。その他、有機
EL における発光材料やコピー機の感光ドラムな
ど様々な用途に用いられている。
・配位高分子
金属イオンと架橋有機配位子が交 互に連結す
ることによって 形成するポリマー構造を有する
金属錯体。以前は不溶性の不純物としてあまり注
目されていなかったが、1980年代後半頃から、
X 線構造解析装置が普及し、構造が明らかにされ
るにつれて注目されるようになってきた。最近で
は、そのポリマー骨格によって形成される特殊な
空孔に気体分子を吸蔵させたり、その空孔内で触
媒反応をさせたりと特殊な用途が見いだされ、注
目されている。
・色素増感太陽電池
有機太陽電池に属する太陽電池であり、酸化チタ
ン表面に吸着させた色素による増感効果を利用
することを特徴とする湿式太陽電池である。別名
グレッツェルセルとも呼ばれ、有機太陽電池の中
では最も高効率な太陽電池である。
技術代行
2011-JAIST-18
Graphene oxide nanospheres
Ⅱ
Sunatda Arayachukiata, Supason Wanichwecharungruanga
a
Chulalongkorn University, Bangkok 10330, Thailand
Abstract In this work, carbon oxide nanoparticles was synthesized. The structure was characterized by ATR-FTIR
spectroscopy, SEM and TEM. The ATR-FTIR absorption showed a broad OH stretching at 3,344.39 cm-1,
obvious C=O stretching at 1632 cm-1 and O-H bending at 1362 cm-1. The SEM and TEM images of the carbon
oxide nanoparticles showed a nanospherical shape. The results suggest that prepared nanoparticles were used as a
novel material in delivery system.
Back ground
The carbon materials such as fullerene, carbon
nanotube and graphene, have drawn many interests
for the past few decades due to their unique physical
and chemical properties. The carbon nanoparticles
containing actives is one of high interesting for drugs
delivery system. The newly proposed carbon oxide
nanostructures should possess some advantageous
fundamental properties, such as, amphiphilic surface,
existence of reactive functionalities on the surface for
further modification, stable and durable nature in
both liquid and solid phase. These beneficial
properties will then be utilized in biomedical
application, especially as drug carrier.
Objective
To synthesis carbon oxide nanoparticle for use as
drugs delivery system.
Experiment
The carbon oxide nanoparticle was synthesized from
the graphite flakes using ultrasonication assisted
chemical exfoliation/oxidation followed by
centrifugal separation. The carbon oxide nanoparticle
also was characterization.
Results and Discussion
The characterization of carbon oxide nanoparticles by
ATR-FTIR spectroscopy showed a broad OH
stretching at 3,344.39 cm-1, obvious C=O stretching
and C=C stretching at 1,600-1750 cm-1, O-H bending
at 1362 cm-1 and C-C bending at 1205 cm-1. The
SEM and TEM images of the carbon oxide
nanoparticles showed nanospherical shape. In
addition, XPS analysis revealed the C-C, C=C, C-O,
C=O and COOH functional groups at the surface of
the carbon oxide nanoparticles where the C1s spectra
showed the binding energy (BE) at 283.6, 284.3,
286.3, 288.1 and 289.4 eV, respectively (Fig. 1a), and
the O1s spectra showed the BE of the C-O, C=O and
COOH functional groups at 533.0, 531.7 and 530.5
eV, respectively (Fig. 1b). The XPS spectra
confirmed that the carbon oxide nanoparticles was
oxidized.
b)
a)
Fig1. The X-ray photoelectron spectra derived
deconvoluted (b) C1S and (c) O1S spectra of
GONPs.
Conclusion
The carbon oxide nanoparticles were successfully
synthesized by the chemical exfoliation/oxidation of
graphite. The C-C, C=C, C-O, C=O and COOH
functional groups at the surface of the GONPs were
confirmed by XPS analysis.
References
1.) Hummers, W. S.; Offeman, R. E., Preparation of
Graphitic Oxide. Journal of the American Chemical
Society 1958, 80 (6), 1339-1339.
2.) Yang, D.; Velamakanni, A.; Bozoklu, G.; Park,
S.; Stoller, M.; Piner, R. D.; Stankovich, S.; Jung, I.;
Field, D. A.; Ventrice Jr, C. A.; Ruoff, R. S.,
Chemical analysis of graphene oxide films after heat
and chemical treatments by X-ray photoelectron and
Micro-Raman spectroscopy. Carbon 2009, 47 (1),
145-152.
3.) Abouimrane, A.; Compton, O. C.; Amine, K.;
Nguyen, S. T., Non-Annealed Graphene Paper as a
Binder-Free Anode for Lithium-Ion Batteries. The
Journal of Physical Chemistry C 2010, 114 (29),
12800-12804.
4.) Wang, S.; Tang, L. A. l.; Bao, Q.; Lin, M.; Deng,
S.; Goh, B. M.; Loh, K. P., Room-Temperature
Synthesis of Soluble Carbon Nanotubes by the
Sonication of Graphene Oxide Nanosheets. Journal of
the American Chemical Society 2009, 131 (46),
16832-16837.
装置利用
2011-JAIST-20
fs レーザー加工した FAS17 膜の組成評価
Chemical composition analysis of FAS17 fabricated by fs pulse laser light
宮内良広a,
稲垣壮太a, 水谷五郎a
a
Yoshihiro Miyauchi , Sota Inagakia, Goro Mizutania
a
北陸先端科学技術大学院大学
a
JAIST
fs laser パルスで加工した FAS17 膜の XPS 観測を行った。その結果、F1s 領域で加工速度の減少とと
もに面積強度の減少が観察され、また C1s 領域では CF2CF2,CF3 由来のピークの面積強度が減少した。
この結果は CF2CF2 アルキル鎖の切断が起きていることを示唆している。
We have investigated the molecular structure in semifluorinated self-assembled (FAS SA) films on a glass surface
after femtosecond (fs) laser pulses irradiation, by taking X-ray photoemission spectroscopy (XPS). We prepared
the SA films on glass by chemical vapor deposition (CVD) of F(CF2)8(CH2)2SiCl3 (FAS-17) precursors, and then
peeled off a part of the films by the fs laser pulses irradiation at different fabrication speeds. As the results, peak
areas of F1s and C1s assigned to CF2-CF2 chains decreased with the decrease of the speed. These results
indicate that not C-Si but C-C bonds at the alkyl chains were cut off, even though C-C bonds have weaker binding
energy.
背景:半導体デバイス製造工程の、より低コス
トな新しい電子デバイス作製法として「マイクロ液
体プロセス法」が近年注目されている[1]。この方法
は機能性液体を、インクジェットプリント技術を用
いて基板上に直接塗布することにより回路パター
ン作成を行うものであるが、現状では液滴を精度よ
く基板上に配置するために疎水性基板表面に親水
性のパターンを描画する技術の開発が必要とされ
ている。そのための補助技術として疎水性の高い自
己 組 織 化 単 分 子 膜 (Self Assembled monolayers;
SAMs)試料にフェムト秒レーザーを用いて加工す
ることで回折限界を超えた微細なパターンを描画
Fig. 1. (a) Area intensity of F1s peak of FAS17 on a glass
surface as a function of speed of laser fabricating.
させた。この基板に時間幅120 fs、波長800nmのレ
ー ザ ー パ ル ス を 1×1cm2 の 加 工 箇 所 で パ ワ ー
0.29±0.01mW、加工線間隔0.5 mでほぼ全面の加
工照射した。 XPS測定は、支援装置であるS-Probe
ESCA model 2803を用いて行った。
する方法が提案されている。しかし、その加工メカ
ニズムは十分に理解されておらず、特にSAMs分子
結果及び考察:
鎖のどの鎖が切れているのか、また加工によって分
未加工と 81.63, 59.88, 38.95 μm/s で加工した
子配向状態がどのように変わるのかということは
FAS17 の F1s 領域の XPS スペクトルの面積強度の
全くわかっていない。
目的: 本研究では、加工スピードを変化させな
がらフェムト秒レーザーをガラス基板上の有機薄
膜に照射し、その組成の変化を観察することを目
的とした。
加工速度依存性を Fig. 1 に示す。加工速度 100 μm/s
のプロット(右端)は未加工の領域を測定した結果で
ある。未加工領域の XPS スペクトルからは 689 eV
に明確なピークが観察された。689 eV のピークは
F1s のピークとして帰属され[2]、加工速度の減少と
実験方法: FAS17 (CF3[CF2]7[CH2]2Si[OC2H5]3)を
SAMs膜用プリカーサーとして選択した。試料はガ
ラス基板上に化学気相蒸着(CVD)法でSAMsを吸着
ともに減少していることが明らかとされた。
同様に C1s の XPS スペクトルを観測した。Fig.2(a)
a
は顕著な減少が観察された。
この結果は我々が別に測定した AFM による加
工形状の変化と一致している。このことからフェ
ムト秒レーザーパルスを照射することにより
CF2CF2 アルキル鎖の切断が起きていることが分
かった。
結論:本研究ではフェムト秒レーザーによるFAS17
単分子膜の、加工速度依存性を調査した。XPS測定
によって、加工速度の減少とともにF1sとC1s領域に
おけるピーク面積強度の減少がみられ、FAS17の加
工速度依存性があることが分かった。
論文発表状況・特許状況
近日中に論文投稿をする予定である。
Fig. 2. (a) XPS spectra of FAS17 on a glass substrate (a)
not irradiated and (b) irradiated by fs laser pulses with
fabrication speed 81.6 μm/s.
Fig.2(b) はそれぞれ未加工の、81.6 μm/s で加工し
た場所の C1s 領域の XPS スペクトルである。こ
の領域では CH2CH2 [286 eV], CH2CF2 [286.4 eV],
CF2CH2 [291.0 eV], CF2CF2 [291.9 eV],CF3 [294.1
eV]由来のピークがこの領域に存在するため、5
つのガウシアンで fitting した。C1s 領域でもにお
いても、CH2-CH2 由来のピークはほぼ変化がなかっ
たのに対し、CF2-CF2 由来のピークの面積強度から
b
参考文献
1) 下田 達也, ポリマーフロンティア 21 シリーズ
13, 微細加工技術基礎編 (社)高分子学会編
2) A. Hozumi, et al., Lngmuir 15, 7600 (1999).
キーワード
・ 自己組織化単分子膜
自己集積化によって生成される単一分子膜
・フェムト秒レーザー
フェムト秒オーダーのパルス幅を有するレーザ
ー。非線形光学効果を高効率で起こすことができ
る。回折限界を超えた微少領域の加工ができる。
装置利用
2011-JAIST-23
オレフィン重合触媒・ポリオレフィン系材料のナノ構造観察
Observation of Nano Structures of Olefin Polymerization Catalysts and
Polyolefin-based Nanocomposites
谷池俊明a, 豊永匡仁a, 寺野稔a
Toshiaki Taniikea, Masahito Toyonagaa, Minoru Teranoa
a
北陸先端科学技術大学院大学
a
JAIST
ポリプロピレン/シリカナノコンポジット材料におけるシリカナノ粒子の分散状態を透過電子顕微鏡
で測定した。化学修飾を施していないシリカナノ粒子はポリプロピレン中でマイクロサイズの凝集体を
形成してしまうが、ポリプロピレン鎖をグラフトすることによってシリカナノ粒子の分散が大幅に向上
することを見出した。また、ナノコンポジット材料の物性に及ぼすグラフト鎖の分子量の影響を初めて
詳細に検討した。
Transmission electron microscopy (TEM) was employed to observe the dispersion of silica nanoparticles in
polypropylene/silica nanocomposites. While pristine silica nanoparticles formed micro-sized aggregates in the
matrix, silica nanoparticles grafted with polypropylene chains had significantly improved dispersion. We have
examined the effects of the molecular weight of polypropylene graft chains on physical properties of the
nanocomposites.
背景:汎用性プラスチックであるポリプロピレン
(PP)の消費量は高性能化と複合化による使用
領域の拡張によって年々増加している。近年、無
機ナノ粒子を添加したPP系ナノコンポジット材
料の開発が大きな期待を集めてきたが、極性の高
い無機フィラーは無極性のPPとの相容性が低い
ため上手く分散せず、フィラー同士の凝集やPP
/フィラー界面の脆化等の問題により補強効果
の低下を引き起こしてしまう。
我々は、マトリックスと同じPPをポリマーグラ
フト鎖として用いたシリカナノ粒子を初めて合
成し、PPグラフト鎖の一次構造とナノコンポジ
ットの物性の相関を詳細に検討した。
結果:触媒系としてrac-エチレンビス(1-インデニ
ル)ジルコニウムジクロライド/修飾メチルアル
ミノキサンを用い、連鎖移動剤であるトリエチル
アルミニウム(TEA)存在下でプロピレン重合を
行った。その後、酸化・加水分解処理を経て片末
端に水酸基を有するPP(PP-OH)を合成した。
PP-OHとシリカ(粒子径 20 nm)表面上のシラノ
ール基とを脱水縮合することでエーテル結合を
介したグラフト反応を行ない、熱濾過によって未
反応成分を取り除くことでPPグラフトシリカナ
ノ粒子(PP-g-SiO2)を調製した。5.0 wt%の
PP-g-SiO2 をマトリックスとなるPP(Mn = 4.6 x
104, MWD = 5.65, mmmm = 98 mol%)と 2 ロール
混練機(185°C, 20 rpm, 10 min)を用いて溶融混
練することでナノコンポジット材料を調製した。
Figure 1にPP中のシリカナノ粒子の分散状態を
透過電子顕微鏡(Hitachi, H-7100)によって観測
した結果を示す。
b)
a)
1 µm
1
c)
1 µm
1
d)
1 µm
1
1 µm
1
Figure 1. Dispersion of silica nanoparticles in PP:
a) pristine SiO2, b) PP-g-SiO2 (Mn = 5.8 x 103), c)
PP-g-SiO2 (Mn = 8.7 x 103), and d) PP-g-SiO2 (Mn =
4.6 x 104)
Tensile strength (MPa)
Figure 1aに示されるように、未修飾のシリカナノ
粒子はマイクロサイズの凝集体を形成するが、
PPグラフト鎖による修飾によってその分散状態
は大幅に向上する。分散状態はグラフト鎖の分子
量(Mn)が大きくなるほど向上するが、Mnで8.7 x
103を超える辺りからそれ以上の進展は見られな
くなった。
Figure 2に合成したナノコンポジット材料の引
張強度を示す。大きな凝集体を形成する未修飾の
シリカナノ粒子の添加は、元のPPの引張強度と
比較してほとんど補強効果を示さない一方、PP
グラフト鎖の導入によって引張強度が劇的に向
上した。向上の度合いは、Mnが大きいほど高く、
Mn > 1.0 x 104でほぼ収束する。得られた補強効果
は30%と、シリカナノ粒子を用いた過去の研究例
(最大で15%ほどの補強効果)と比較して圧倒的
に高かった。このような補強は、シリカナノ粒子
がPPグラフト鎖を通してラメラ間を架橋するこ
とによって得られたと考えられる。
3636
PP/PP-g-SiO2
3333
3030
2727
2424 0
0
PP/SiO2
10000
1
PP
20000
2
30000
3
40000
4
Mn of grafted PP
Figure 2.
Tensile strength of
nanocomposites
(x104)
50000
5
PP/SiO2
論文発表状況・特許状況
[1] Toshiaki Taniike, Masahito Toyonaga, Minoru
Terano, Macromolecules, submitted.
キーワード
・ポリマーナノコンポジット
ポリマーと有機・無機ナノ構造体との複合材料。
マイクロサイズの構造体と比較して、劇的な物性
向上をもたらすことが知られている。
装置利用
2011-JAIST-24
植物細胞とウイルスベクターを利用したタンパク質試料の調製
Preparation of protein samples using plant cells and virus vectors
森正之a, 竹内誠b, 大木進野b
Masashi Moria, Makoto Takeuchib, and Shin-ya Ohkib
a
石川県立大学(Ishikawa Prefectural University)
b
北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)
私たちはこれまでに、植物細胞とウイルスベクターを利用した新システムによって 13C と
15N
で標識されたタンパク質調製が可能であることを報告した。さらに前回の報告で、この
調製システムは標識されたアミノ酸やそれらの代謝中間物質を使うことでタンパク質内の
アミノ酸を特異的に標識することが可能であることを示した。しかし、前回の NMR データ
は不純物による不要なシグナルがあった。そこで、データの質の改善を目的に試料調製方
法を改善した。また、この発現システムで調製した新規のタンパク質を質量分析装置で分
析した。
We had reported that our novel protein expression system using plant cells and virus
vectors has an ability to yield
13C
and
15N
labeled proteins. In the previous reports, we
showed that addition of labeled amino acids or metabolites to a culture medium enables
to prepare amino acid-specific labeled proteins. Because previous NMR data contains
signals from impurity, we tried to obtain clearer results. Next, we prepared a new
protein using this expression system, and analyzed it by mass spectrometry.
我々が開発中の植物細胞とウイル
きることを報告した 1,2)。さらに、標識され
スベクターを利用したタンパク質調製シス
たアミノ酸や代謝中間物の添加により高度
テムは、大腸菌などの発現系では発現や可
な特異的標識が可能であることも示した。
溶化が難しい試料を可溶化した状態で得る
目的:
背景:
ことができる
1)。さらに、ジスルフィド結
今期の目的は、前回報告した予備
段階のサンプル調製方法に改良を加え、よ
合を持つタンパク質やペプチドであっても、
り質の高いスペクトルを得ることである。
正しい立体構造で可溶性画分から得ること
また、新規に調製が出来るようになったタ
ができる 1,2)。前回までの報告で、この発現
ンパク質については、ジスルフィド結合を
システムの培地中の窒素源と炭素源をそれ
形成して発現しているかどうかを質量分析
ぞれ
13C標識と 15N標識されている試薬に
することで、目的試料を標識することがで
で確かめることを目的とした。
実験方法:
アミノ酸特異的に標識された
BPTIをアフィニティー精製の後、さらに、
逆相HPLCにて精製し、このサンプルの
NMRスペクトルを測定した。
タグ配列切断前後の新規ペプチドを質量
分析で分析した。さらに、トリプシン消化
による限定分解を行い、ジスルフィド結合
(a)
(b)
を形成しているかどうかを調査した。
結果及び考察: BPTIを逆相HPLCで精製
する前は不純物によるシグナルが確認され
ていた(Figure 1aの点線内)が、逆相HPLC
で精製した試料でNMR測定を行ったとこ
ろ、シグナルの消失した結果が得られた。
Fig. 1. Methyl region of 1H-13C CT-HSQC
spectrum.
The sample was expressed in the media
containing [U-13C] labeled Val. (a) and (b)
measured a sample before and after
reversed-phase
HPLC
separation,
respectively. In panel a, peaks in the circle with
dotted line represent resonance from impurity.
新規ペプチドのタグ切断前後の試料を質量
分析で測定し比較したところ、切断前、切
断後ともに、理想分子量に近いことを確認
することができた。さらに、トリプシンに
よる限定分解した試料の還元前と還元後を
比較したところ、還元前では約 6000 の分子
量が確認できたが、還元後の試料では消失
した。
結論: アフィニティー精製したBPTIには
まだ不純物が残っていたことがわかり、
1H-13C
HSQCの測定においては、さらに精
製したほうが望ましいことが明らかになっ
た。
新規ペプチドには 8 つのシステイン残基
が含まれており、4 組のジスルフィド結合
Fig. 2. MALDI-TOF-MS data for
Trypsin digestion of novel peptide
without DTT (a) and with DTT (b).
が可能である。その結合のパターンまでは
明らかにできなかった。
しかし、トリプシン消化後にも関わらず大
きい質量を持つフラグメントが確認できた。
また、DTT 添加による還元後、その大きい
フラグメントのシグナルが消失したことか
ら、ペプチド断片がジスルフィド結合でつ
ながり大きい質量で存在していると推定で
きた。さらなる実験と解析が必要であるが、
今回の予備的な実験の結果から新規タンパ
ク質が分子内にジスルフィド結合を有して
いる可能性が高まった。
参考文献
1) Ohki S, Dohi K, Tamai A, Takeuchi M,
Mori M (2008) Stable-isotope labeling
using an inducible virus vector and
suspension cultured plant cells. J.
Biomol NMR 42:271-277.
2) Ohki S, Takeuchi M, Mori M (2011)
The
NMR
structure
of
stomagen
reveals the basis of stomatal density
regulation by plant peptide hormones.
Nat. Commun. 2:512.
DOI:10.1038/ncomms1520.
協力研究
2011- JAIST-27
有機硫黄系電池材料の構造評価
Characterization of organosulfur materials for battery applications.
上町裕史
Hiroshi Uemachi
株式会社ポリチオン
a
Polythione Co. Ltd.,
有機硫黄系電池材料の電子構造評価と正極複合剤の膜構造評価を行った。有機硫黄材料のモデルモノマ
ーとして、ヘテロ五員環とベンゼン環からなるユニットを合成した。環連結の N 原子数を調整すること
により、酸化状態の制御が可能である事を確認した。有機硫黄ポリマーと炭素からなる電池正極複合剤
をアルミ箔に塗布し電池正極シートを作製した。この電池正極シートの SEM 観察により製膜状態を評価
した。
The electronic structure of organosulfur materials for battery applications were investigated and composite films
of those were examined. As a model monomer for organosulfur materials, we synthesized a model material
composed from a five-membered hetero ring and a benzene ring. We found that the oxidized control for
organosulfur materials are able to modify the linker moiety of N atom. Organosulfur materials /carbon composite
films were prepared and were characterized by SEM,
背景: リチウムイオン電池の市場は拡大発展を
続けており、ノートパソコン・携帯電話等の電源
としてはもちろん、将来的には、電気自動車電源
への展開が期待されている。現在、リチウムイオ
ン電池に用いられている正極活物質の蓄電量は、
負極活物質である炭素の蓄電量より少なく、リチ
ウムイオン二次電池の高容量化、軽量化には、正
極活物質の高容量化が重要な開発課題となって
いる。硫黄系材料は蓄電量も多く、次世代リチウ
ムイオン電池の材料として最も期待されている
もののひとつである。我々は、硫黄系材料の中で
も、安定性(安全性)、電気伝導性において高い
ポテンシャルを有する有機硫黄ポリマー1, 2)の開
発を進め、その実用化を目指している。開発中の
有機硫黄ポリマーは、ポリマー内のS-S結合とπ
共役系の酸化還元反応を充放電反応に利用する
というコンセプトに基づいている(図1)。すでに、
有機硫黄ポリマーが高い電気容量を有すること
は電気化学反応から確認されているが、製品化レ
ベルでの品質を実現するためには、原材料から最
終生成物までの物質の基礎物性の理解が不可欠
となる。
目的: 本研究では、有機硫黄系電池材料の電子
構造評価と正極複合剤の膜構造評価を行うこと
で、基礎物性および工学的応用の知見と理解を得
る事を目的とした。電子構造評価においては、系
統統的に価数制御を行ったモデルモノマーを合
成し、X線光電子分光(XPS)法を用いて価数変
化に関する知見を得ることを目的とした。正極膜
図 1 電池反応機構のコンセプト
評価においては、正極シートのSEM観察により、
電池活物資の粒度や分散状態に関する知見を得
る事を目的とした。
実験方法: 酸化状態(電池の充電状態)の異なる
二種類のデルモノマを化学合成した。二種類とも
硫黄の酸化によりジスルフィド(SS)結合を含む
ヘテロ五員環を形成する。一種類は、モデルモノ
マーベンゼン環が直接結合した化学構造を有し
ている(図2、図中のa、N0と略称)。もう一種類
は、モデルモノマーベンゼン環が一個のN原子を
介して結合した化学構造を有している(図2、図
中のb、N0と略称)。二種類とも、合成方法は既
報に基づいて合成した1, 2)。N0はカウンターアニ
オンを伴っており、有機骨格自体はカチオン状態
となっている。一方、N1は電気的に中性状態と
なっている。合成の確認は、支援装置である核磁
気共鳴測装置(Bruker BopSpin Inc., AVANCE Ⅲ
400MHz, 800MHZ)を用いて行った。試料の電
子構造評価は、支援装置であるX線光電子分光装
置(㈱島津製作所/KRATOS AXIS-ULTRA DLD)を用
いて行った。正極シートは既報に基づいて調整し
た1, 2)。膜構造の評価を、支援装置である電解放
図 2.
図 1.
N1 材料の H-NMR グラフ
ぼ同様であるものの、N0スペクトルでのピーク
が3本であった。N0,N1ともSS結合を有している
ものの、その酸化状態はことなっている。N0は
さらに1価酸化された状態であり、その価数変化
が主にS原子由来である事がXPS測定により判明
した。
次に、これらのモデルモノマーさらに有機硫黄ポ
リマーを電池活物資として正極シートを調整し、
その形態観察をSEMにより行った例を述べる。図
3にSEM観察の一例を示す。倍率の低い状態では、
均一に塗膜できているようであるが(図3a)、倍
率を上げて行くと膜中にひび割れがあることが
確認出来た(図3b)。さらに倍率をあげると、比
表面積が大きくなるような入り組んだ構造をし
ている形態とはなっておらず、造流工程や粒子の
N0, N1 の XPS スペクトル
出型走査型電子顕微鏡(SEM)装置(日立ハイテク
ノロジーズS-5200) を用いて行った。
結果及び考察: モデルモノマー合成の確認は、
元素分析、結晶構造解析、およびナノテク支援の
NMRで行った。図1にNMR測定の一例を示す。今
回測定した試料の分子構造と、それに対応する
C1s, N1s, S2pでのXPSスペクトル結果を図2に示
す。C1sは、N0 N1ともほぼ同様のスペクトルを
示していた。N1sにおいてもほぼ同様のスペクト
ルであったが、N0ではピークが二本に分裂して
いた。さらにS2pでは、結合エネルギー位置はほ
分散等に課題があることがわかった(図3c ,d)。
結論: リチウム電池正極用の有機硫黄モデル材
料の酸化状態の電子構造解析をXPSを用いて行
った。その結果、モデル材料の硫黄部位において、
酸化還元に対応した価数変化を確認した。環連結
のN原子数を調整することにより、酸化状態の制
御が可能であると言える。さらに、有機硫黄ポリ
マーと炭素からなる電池正極複合剤をアルミ箔
図 3. 有機硫黄ポリマー複合正極の SEM
像池正
に塗布し電池正極シートを作製した。
この電
極シートのSEM観察により製膜状態を評価した。
参考文献
1) H. Uemachi, Y. Iwasa, and T. Mitani, Chem. Lett.
28, 946 (2000).
2) H. Uemachi, Y. Iwasa, and T. Mitani, Electrochim
Acta. 46, 2305 (2001).
3)上町裕史; 劉喜雲; 糸野哲哉; 藤原明比古 第
51 回電池討論会要旨集 2011, 3A02.
キーワード
・リチウムイオン二次電池
電極材料にリチウム系材料を用い、電極間をリ
チウムイオンが移動することで充放電を繰り返
す二次電池のことである。負極として金属リチウ
ムを用いるリチウム二次電池とは区別される。リ
チウムイオン二次電池は、負極活物質として炭素
材料を用いており、リチウム二次電池で問題であ
った安全性を確保し、実用化された。負極活物質
の炭素は金属リチウムに比べると蓄電量は少な
いが実用レベルにある。これに対して、現在用い
られている正極活物質の蓄電量は、負極活物質で
ある炭素より少ない。このため、リチウムイオン
二次電池の高容量化、軽量化には、正極活物質の
高容量化が重要な開発課題となっている。
・硫黄系電池正極活物質
硫黄は比較的軽元素であり、また、最大で 2
個の Li と反応し Li2S を生成する。この場合、エ
ネルギー密度は 1,165 Ah/kg と大きな値を示す。
また、Li との電位差も 2 V 以上あり、リチウムイ
オン電池とした場合の電圧が 2 V で実用可能な
値である。このため、硫黄は高容量なリチウムイ
オン電池の正極活物質として期待されており、活
性硫黄、カーボンジスルフィド、有機ジスルフィ
ド化合物などが研究・開発の対象となっている。
装置利用
2011-JAIST-28
放線菌によって合成された含クロム沈殿物の電子顕微鏡解析
TEM and EDX analyses of Cr-containing precipitates synthesized by newly
isolated an actinomyces, Flexivirga alba ST13T
杉山友康a, 阪口利文b
Tomoyasu Sugiyamaa, Toshifumi Sakaguchib
a
東京工科大学 応用生物学部、b 県立広島大学 生命環境学部
School of Bioscience and Biotechnology, Tokyo University of Technology,
b
Faculty of Life and Environmental Sciences, Prefectural University Hiroshima
a
クロムは工業的に重要な元素であるが、六価クロム(Cr(VI))のように、その価数によっては強い毒性
を有する形態となる。そのため、六価クロムの還元による無毒化やクロムそのもの除去・回収技術・素
材の開発が望まれている。本研究では新規に分離された六価クロム還元性放線菌 Flexivirga alba ST13T
によって合成された含クロム沈殿物の TEM 観察、並びに EDX 解析を行った。その結果、対象からはク
ロムの他にリン、カルシウムなどの元素が検出され、1 μm 以上の大きさを有する菌体に付随する電子密
度の濃い非結晶性の短桿状(細胞)構造物であることがあきらかにされた。
Chromium (Cr) is important and indispensable element in our daily life and various industrial fields. However,
there are the strong toxic and harmful chemical forms in Cr such as hexavalent chromium (Cr(VI)). Therefore, it
is expected to develop the effective recover technology of Cr element and the conversion technique for
detoxification of the toxic formed chromium. In this study, TEM and EDX analyses of Cr-containing precipitates
which were synthesized by newly isolated an actinomyces, Flexivirga alba ST13T were carried out. These results
indicated that the precipitates were about 1 μm sized, electron-dense and non-crystalline cellular bodies (or
rod-shaped aggregates) that were contained Cr, P and Ca as the main elements.
背景: 石油や天然ガスをはじめとするエネルギ
ー資源の他に、工業プロセス、材料合成、製品の
質的向上のために多くの化学物質が用いられて
いる。これらの物質は戦略元素のように重要な元
素資源ともいえる存在であり、廃棄物、廃液から
の回収、再資源化が望まれる。また、これらの元
素は重金属や金属様元素が多く、環境中に流出し
た場合には深刻な環境汚染を引き越す原因とな
ることが多い。例えば、クロム(Cr)は工業的に
重要な物質であると同時に六価クロム(Cr(VI))
のようにその価数によっては毒性が顕著に表れ
るため環境中への流出が懸念される元素がある。
そのため、Cr(VI)の還元による無害化やCr元素そ
のものの除去・回収法の開発が望まれている。申
請者らはこれまで六価クロムを除去できる新規
の放線菌Flexivirga alba ST13Tの分離・培養してき
た1)。更に、分離株によるCr(VI)の還元、無害・
沈殿化などについて調査し、資源回収・環境修復
のための生物素材としての評価を行ってきた2)。
目的: 六価クロムの無毒化及び回収用生物素
材として新規に分離された放線菌(Flexivirga
alba ST13 株)を酸化クロム(CrO3)存在下で培
養し、その菌体の電子顕微鏡観察、並びに形成さ
れたクロム沈殿物の元素分析を行うことを目的
とした。
実験方法: 新規に分離された放線菌ST13株に
ついて、本株を六価クロムのひとつである酸化ク
ロム(VI)0.5 mMを含むM9最小培地で培養した。
培養には、炭素源として0.4%の廃糖蜜を添加して
27˚C、振とう条件で約20日間好気的に行った。培
養した菌体については染色せずに透過型電子顕
微鏡による観察と元素分析を実施し、菌体付近な
ど形成されたCr集積物の解析を行った。また、こ
の時、グラム陽性菌と考えられる亜セレン還元性
菌に形成されたセレン微粒子の観察し、他の結晶
性微粒子との比較を行った。
結果及び考察: Fig. 1に六価クロム(酸化クロ
ム)存在下で培養したST13株菌体の透過型電子
顕微鏡写真を示した。主要な菌体と考えられる細
胞構造体の他に電子線密度の濃い細胞体、もしく
は沈殿物と考えられる存在が確認された(Fig. 1)。
状構造物であることが示唆された。
Fig. 1. TEM image of cells and electron-dense
precipitates (or cellular body) of actinomyces, Flexivirga
alba strain ST13. The unstained cells were used for this
TEM observation. Bar indicates 5.0 μm.
結論: 今回の分析によって新規六価クロム還元
性放線菌Flexivirga alba ST13Tによって合成され
た含クロム(細胞)構造体のTEM観察、EDX解析
が実施された。その結果、形状、大きさをはじめ
クロムの含有や他元素の存在があきらかになっ
た。また、結晶格子が見出せなかったことから非
晶性の構造体であることが示唆された。これらの
結果から本菌株によって還元された六価クロム
は水溶性三価クロムだけではなく、菌体近傍に他
元素とともに何らかの沈殿(凝集)体もしくは細
胞構造体として存在していることが明らかにな
った。これらの結果は、本菌のクロム資源回収や
環境浄化に利用する上で有益な知見となりうる
と考えられた。
論文発表状況・特許状況
(Se 微粒子に関するもの)
1) 阪口利文ら、他 4 名、琵琶湖深湖底からのセ
レンオキサニオン還元性微生物の探索、日本農芸
化学会 2012 年度京都大会、京都女子大学、2012
年 3 月 23 日
この電子線密度の高い領域(構造体)に対して元
素分析(EDX)を行ったところ、主要な元素のひ
とつとしてクロム(Cr)が検出された。また、ク
ロムの他にはリン、カルシウムなどの元素が検出
された。微生物還元によって生じた三価のクロム
(Cr(III))がこれらの物質と何らかの化合物や
(Cr 解析結果についても同様、国内外学会発表な
(細胞中に)構造体を形成していると考えられた。
どを検討・準備中)
また、グラム陽性のセレンオキサニオン還元性菌
によって合成されたセレン微粒子(Fig. 2)との
参考文献
1) K. Anzai, T. Sugiyama, M. Sukisaki, Y. Sakiyama,
M. Otoguro and K. Ando, J. Antibiot., 64, 613
(2011).
2) T. Sugiyama, H. Sugito, K. Mamiya, Y. Suzuki, K.
Ando and T. Ohnuki, J. Biosci. Bioeng. 113, 367
(2012).
Fig. 2. TEM image of biogenic Se particles from
gram-positive
selenium-oxyanion
reducing
microorganisms. Bar indicates 1.0 μm.
比較では、セレン微粒子がほぼ単体のセレンで構
成されているのに対して、ST13株での構造体に
はCrの他にも同レベルの存在比で複数の元素が
検出された。また、その大きさはセレン微粒子が
最大でも200 nm程度にあるのに対して、1 μm以上
の大きさがあり、菌体に付随する非結晶性の短桿
キーワード
・六価クロム
クロム(Cr)の化合物の内、その酸化数が+6
のもの(Cr(VI))で、強い毒性、腐食性、発がん
性をもつイオン種である。三酸化クロム(CrO3)や
二クロム酸カリウム(K2Cr2O7)がそのイオンを含
む代表な化合物である。
・放線菌
Actinomycetes と呼ばれ、グラム陽性菌の真正
細菌の中で菌糸を形成して細長く増殖できる形
態的特徴を有する菌の総称。ただし生育環境や種
類によっては形態変化があり、桿菌、球菌なども
含まれる。環境中などに広く分布する菌である。
技術代行
2011-JAIST-29
Synthesise and application of silver nanoparticle / curcumin conjugates for
wound dressing
Nguyen Thi Ngoana, Ba Thi Chama, Tran Dai Lamb, Toshifumi Tsukaharac
aInstitute of Chemistry, Vietnamese Academy of Science and Technology, 18, Hoang Quoc Viet Road, Hanoi, Viet Nam
bInstitute of Materials Science, Vietnamese Academy of Science and Technology, Hanoi, Viet Nam
c Center for Nano Materials and Technology, Japan Advanced Institute of Science and Technology, Ishikawa 923-1292, Japan
Abstract
The size and uniformity of nano particle can be determined by transmission Electron microscopy (TEM). By
analyzation the structure of nanosilver coated by polymer we can guess the mechanism of coating process was
core-shell structure of Ag/cs and Ag/cas. And by compararison the size and shape of nano particles before and
after loading drug it can be determined how to load drug on the nanoparticles. Ag/cs load drug by conjugating
drug - curcumin of the surface and Ag/ ca carry curcumin by encapsulation.
At defferent resolution the nanoparticle can be observed clearly
Back ground
Silver nano particles have been wively in many field
of the life because of the good properties of this
material. Silver nano have been used in cosmetic
which will be promoted new future for nano cosmetic.
Silver nano coated by biocompatative and
biodegradable polymer are prefer. Chitosan and
casein are the good polymer for coating nanosilver to
apply in biomedicine, in cosmetic. Mechanism to
coat nanosilver by the polymer need to be clearified.
Objective
Silver nano coated by chitosan and by casein (Ag/CS
Ag/cas correlatively) were synthesized by reduction
AgNO3 by NaBH4, then they are loaded by curcumin
as a dug.
TEM images were taken according to the procedure
described elsewhere, by Mr. Koichi Higashimine,
Center for Nano Materials and Technology, JAIST.
Results and Discussion
Fig1. TEM images show the size of
nanoparticle Ag/cs and Ag/cas. The size
distribution of Ag/cs is about 20 nm in
uniformity while the size of Ag/cas is 10-50nm,
Fig.2. in the small resolution we can observe
clearly the core-shell structure of Ag/cs and
Ag/cas. After load curcumin onto the
nanoparticle the size of nanoparticle was not
only much defferent but also in the small
resolution we can observe the shell of D-Ag/cs
thicker than Ag/cs. While it is not defferent in
Ag/cas and D-Ag/cas
Fig1: silver nano particle coated by chitosan and
casein
Fig2: Core-shell structure of nano particle and
nano silver loaded by curcumin
Conclusion
TEM image also shew the size and size
distribution of the nano silver which coated by 2
polymer chitosan and casein in core-shell structure.
And it also demontrated the way to carry drug onto
the drug carrier: curcumin conjugate onto the
surface of Ag/cs nano particle and curcumin was
encapsulated in the the casein micelle.
Konduru Mohana Raju, , Journal of Biomaterials and
References
1. Phuong T.H, T.M. Nguyet. T, H. Duong. P, Q.
Huan.N and X. Phuc. Ng, Adv. Nat. Sci.: Nanosci.
Nanotechnol. 1 (2010) 015012 (7pp)
2. Kanikireddy
Kokkarachedu
Vimala,
Yallapu
Varaprasad,
Murali
Nagireddy
Mohan,
Narayana
Redd, Sakey Ravindra, Neppalli Sudhakar Naidu,
Nanobiotechnology, 2011, 2, 55-64
Lam. TD, Nhung. M.T.D, Hoang V.T, Ngoan. N.T,
Thanh D. T, Manh. H.D… Physicochemical and
Engineering Aspects, 371(1-3) (2010) 104-112
Keywords
Nano silver, nanoparticle, curcumin, drug carrier
別紙2(成果報告書記入例)
装置利用
2011-JAIST-31
極細 Pt ナノワイヤーの断面試料作製
Preparation of cross-sectional sample of the ultra-small width Pt nanowires
越田幸祐a, 尾形洋一a, 水谷五郎a, 片山まどかa
Koshida Kousuke a, Yoichi Ogataa, Goro Mizutani a, Madoka Katayamaa
a
北陸先端科学技術大学院大学
a
JAIST
極細 Pt ナノワイヤー集団をファセット化 MgO(210)基板上でシャドウデポジッション法を用いて作製し
た。作製された Pt ナノワイヤーの断面形状は TEM によって観察された。本研究では、超薄膜化した断
面試料を新たに作製することができた。その結果、綺麗なノコギリ型 MgO ファセット化基板上で約 2 nm
幅 Pt ナノワイヤーの断面像取得に成功した。また、ファセット化基板上の Pt が基板垂直軸方向に伸び
る楕円形状であることも確認した。
We have fabricated the arrays of Pt nanowires with ultra-small width by shadow deposition method on the MgO
(210) faceted template. The cross-sectional shapes of Pt nanowires were observed by transmission electron
microscope (TEM). In this work, we have obtained the cross-section sample with very thin thickness. As a
result, we have succeeded in observing the cross-sectional image of Pt nanowires with as small as 2 nm width on
the MgO faceted substrate surface with beautiful saw-tooth shapes. In addition, the metal cross-sectional shapes
were like elliptical with its longer axes in the normal direction of the template.
背景: 金属ナノワイヤーは、1次元的な構造が
原因で面白い電子および光学特性を有するため、
近年注目されている。特に、それらの非線形光学
特性は波長変換器や光メモリなどの潜在的な応
用を期待させる。以前から、光第二高調波(SH)
分光法によってナノワイヤーの非線形光学特性
がよく調査されてきた1)。今まで、シャドウデポ
ジッション法により作製した様々な金属ナノワ
イヤーからのSHG応答の調査を報告してきた2)。
その後、MgO基板上のPtナノワイヤーの非線形性
をワイヤー断面形状を用いて詳しく議論してき
た3)。最近では、平均2 nm幅の極細Ptナノワイヤ
ーからのSHG測定を行い、ワイヤー幅と強度の関
係を調査してきた4)。しかし、一方で、約2 nm幅
のPtナノワイヤーの断面像の取得は技術上難し
く、完全なものはまだ得られていない。
以前より、我々は、極細Ptナノワイヤーの断面
像取得のために試行錯誤を繰り返してきた。しか
し、Ptナノワイヤーの形状の不完全性が原因で、
平面像で確認されるワイヤー幅に一致するよう
な断面像は得られなかった。断面試料は[001]方
向に数十~百nm程度(電子が透過できる程度)
の厚みをもつ。そのため、断面像で見られる幅は
形状の不完全性を受けて膨潤して見えてしまう。
形状の不完全性が発現してしまう理由として、ナ
ノワイヤーが単結晶ドメインからなる多結晶体
で構成されていることがあげられる。
そこで、本研究では極細Ptナノワイヤーの断面
試料の厚みを限界まで薄く削り、TEM平面像と
断面像の間のワイヤー幅の整合性を得ることに
する。
目的: 本研究では、ファセット基板上で平均2
nm幅をもつPtナノワイヤーのTEM断面像を取得
し、断面形状を評価することを目的とした。
実験方法: 極細Ptナノワイヤーの断面試料作製
に関しては、以前既に作製した試料を使用した4)。
断面試料作製手法に関して、まず、エポキシ樹脂
で基板表面をコーティングした2つの試料を、互
いに張り合わせ、固化後に(001)面で約400 µm厚
に切断した。次に、単孔グリッド上に固定した試
料を、ディンプルグラインダーを使用して研磨し、
約50 µm厚の薄片を得た。その際、光学顕微鏡を
用いて試料の状態を確認しながら、機械的に限界
といえる厚みまで研磨した。最後に、Arを用い
た精密イオンポリシング装置を用いてスパッタ
することにより得られた薄膜を、[001]方向から、
支 援 装 置 で あ る TEM 装 置 ( 日 立 製 作 所
H-9000NAR型)を用いて観察した。Ar+イオンビー
ムの照射時間を最小限に留めることにより、我々
は、美しい試料を得ることができた。
結果及び考察: Figure 1に、平均幅2 nmの極細
Ptナノワイヤーの断面TEM像を示す。綺麗なノコ
ギリ型MgO (210)ファセット化基板上の短辺側斜
面(010)上にPtが蒸着されていることがわかった。
Ptナノワイヤーの断面形状は基板垂直方向に伸
びた楕円型を形成していることがわかった。ファ
セットのピッチは約11 nmであり周期性があるこ
とも確認できた。
一方で、ファセット基板上でPtの存在が確認で
きない箇所もあった。過度のArイオンビーム照射
による研磨により、Pt微粒子が吹き飛んでしまっ
たことがその原因であると考えられる。
Fig. 1. TEM image of the cross-sectional shapes of
the ultra-small width Pt nanowires on the MgO
(210) faceted substrate surface with saw-tooth
shapes. The cross-sectional shapes of Pt nanowire
seen in dark contrast are like elliptical with its
longer axes in the direction perpendicular to the
substrate.
結論: ファセット基板上で平均幅2 nmの極細Pt
ナノワイヤーの断面TEM像が得られた。断面
TEM像によると、ファセット表面形状は綺麗な
ノコギリの刃をかたどっていた。断面像で確認さ
れたワイヤー幅は平面TEM像で得られた情報と
ある程度一致したことから、互いの整合性をとる
ことができたと言える。
論文発表状況・特許状況
特になし
参考文献
1) J. C. Johnson, H. Yan, R. D. Schaller, P. B.
Petersen, P. Yang, and R. J. Saykally, Nano Lett., 2,
279 (2002).
2) T. Kitahara, A. Sugawara, H. Sano, and G.
Mizutani, J. Appl. Phys., 95, 5002 (2004).
3) Y. Ogata, N. A. Tuan, Y. Miyauchi, and G.
Mizutani, J. Appl. Phys., 110, 044301 (2011).
4) Y. Ogata, Y. Iwase, Y. Miyauchi, and G. Mizutani,
in Proceedings, 11th IEEE International Conference
on Nanotechnology, 1661 (2011).
キーワード
・ドメイン
特定の機能や構造を持つことで他と区別でき
る領域のことを示す。一般的にタンパク質に向け
た生物学的用語であるが、化学的にも”同じ構造
をもつ領域”といった広い意味で扱われる。
多結晶体ナノワイヤー中では、異なる単結晶ド
メイン間において、粒界と呼ばれる界面が存在す
る。一方、単結晶体ナノワイヤー中では、シング
ルドメインとなるため粒界は存在しない。
装置利用
2011-JAIST-32
酸性土壌と植生
The situation of soil acidification, and that influence on vegetation environment
福山厚子1・長谷川和久2・山田丸3・伊東志穂4・木下栄一郎5・奥野正幸1
(金沢大学大学院自然科学研究科 1・石川県立大学 2・金沢大学イノベーション創成センター3,堆肥化・新肥料研究所 4・金沢大
学環日本海域環境研究センター5)
Atsuko Fukuyama, kazuhisa Hasegawa, Maromu Yamada, Shiho Ito, Eiichiro Kinoshita, Masayuki Okuno
土壌が酸性化しているエリアの植栽クロマツ 4 本に,貝化石および堆肥を施肥し,それらの土壌を 2 カ月後にサン
プリングした結果,土壌 pH の上昇と Al 濃度の低下が認められた.さらに,SEM-EDX による分析結果から高い
Ca のピークが示され,その土壌緩衝効果が確認された.また,施肥 1 年後と無施肥の葉を SEM-EDX により分析
した結果,施肥葉に高い Mg,P,K,Ca のピークが認められた.
Four black pines of acid soil area were fertilized in the shellfish fossil and the compost. As a result of sampling and analyzing
two months afterward, soil pH of the area which fertilized showed neutrality. The area which did not fertilize showed low pH
and high aluminum concentration. Since many Ca was checked using SEM-EDX, the soil buffering effect was proved.
Moreover, the pine needle which fertilized and passed for one year, and the pine needle which did not fertilize were analyzed
using SEM-EDX. As a result, the peak of high Mg, P, K, and Ca was shown in the pine needle which fertilized.
背景と目的 近年,酸性雨による影響と思われる樹木の枯
・
(貝化石 500g/m2)
}
,2010 年 6 月,2010
肥 500g/m2)
死が確認(Baligar andAhlrichs, 1998)されており,環境保全の
年11 月,2011 年6 月に表層土壌を採取し,以下の方法に
立場からも土壌改良は重要な課題である.土壌の酸性化は,
より分析・比較した.①貝化石・堆肥の植栽地表層土壌
塩基類の溶脱や土壌中のアルミニウム(Al)の溶出を促し,
pHの測定.②交換性Al分析.③定法による陽イオン交換
その毒性により根の伸長が阻害されるため,植物の水養分
容量(CEC)の分析.④FESEM-EDXによる松葉および貝
の吸収が抑制され,植物を衰弱させる(Matsumoto, 2000)
.
化石の分析.
石川県金沢市の兼六園においても,マツの衰弱が発生して
おり,2009 年8 月に園内の土壌調査を行った結果,高濃度
結果と考察 土壌に施肥した貝化石をSEM-EDXにて
Alの検出および土壌の酸性化が進行していることが認めら
分析した結果からMg,P,K,Caなど植物にとって重
れ,樹木への影響の拡大が懸念されている(長谷川,2008)
.
要な必須元素が含まれていることを確認した(Fig. 1)
.
根から養分を得ている植物にとって,土壌環境は最も重要
また,施肥 2 カ月後の土壌pHは対照区を除きpHの上
であり,土壌と植生が相関していることは多くの研究者よ
昇とAl濃度の低下が認められた(Fig. 2)
.CECの測定
り報告されている(杉井ほか,2010)
.そこで土壌環境の改
結果では土壌の保肥力が弱く(Fig. 3)
,塩基類の流出
善を目的とし,兼六園内のクロマツに貝化石および堆肥を
しやすい土壌であることが認められたが,施肥 1 年後
施肥し,XRFおよびSEM-EDXを使用し表層土壌の分析を
のマツ葉をSEM-EDXにより分析した結果(Fig. 4)
,
行った結果を報告する.
施肥したマツAにMg,P,K,Caの顕著なピークが確
認された.肥料を施肥することにより,これらの元素
実験・分析方法 兼六園において 2010 年 6 月から 2011
が土壌を通じて植物へ影響を与えていることが示唆
年6 月,同エリア内の4 本のクロマツ(樹齢約80 年,平
された.
均樹高20m弱,平均胸高直径50cm)を対象に,2010 年4
月に対照マツD を除く,マツA,B,Cの3 本の樹木周辺
結論 以上の分析結果から堆肥と貝化石の施肥効果
に異なる量の天然貝化石肥料(A:堆肥・貝化石一周,B:
が示された.今後,酸性土壌の改良材として期待され
貝化石一周,C:貝化石半周)を施肥し{土壌施肥量(堆
る.
謝辞 石川県土木部金沢域兼六園管理事務所には調
査にあたりご協力をいただいた.竹中産業株式会社
竹中繁夫社長には貝化石(エンジェルハーモニー)のご提供とご
協力をいただいた.FESEM-EDXによる貝化石・松葉
の分析においては北陸先端科学技術大学院大学 技術
職員伊藤暢晃氏にご協力いただいた.これらの方々に
心から感謝申し上げます.
参考文献
Baligar, V.C. and Ahlrichs, J.L., 1998, Nature and distribution
of acid soils in the world. In Schaffert RE. ed., Proceeding of
the Workshop to Develop a Strategy for Collaborative
Research and Dissemination of Technology in Sustainable
Crop Production in Acid Savannas and other Problem Soils
of the World. Purdue University, pp1-11.
長谷川和久,2008,環境保全型農業の理化学,株式会
社養賢堂,p.8.
杉井俊夫・南基泰・上野薫・松原祥平,2010,植生お
よび地質・地形からみた森林の浸透環境 森の健康
診断から浸透マップの構築,地盤工学会,p14-17.
Wagatsuma T., Jujo K., Ishikawa S. and Nakashima T.,
1995, Aluminum-tolerant protoplasts from roots can be
collected with positively charged silica microbeads, A
method based on differences in surface negativity, Plant
Cell Physiol, 36, 1493-1502.
(a)
Mg
K
P
Fe
Ca
Fig. 1 SEM image (a) and
Fig. 2
EDX elemental mapping of
shown in the pine D (control) and the aluminum of high
shellfish fossil. Ca,Mg,K,P,
concentration was detected.
The soil collection day, June, 2011. Low pH5.6 was
Fe was detected.
- not detected
Fig. 3 Soil collected 3 times (PineA,B,C,D). In order that
Fig. 4 The pine needle(PineA: compost/shellfishfossil, PineD: control) one
CEC might show the low value, water and fertilizer holding of
year after fertilization . SEM image (A:pineA) ,(D:pineD) and The
soil is small.
remarkable peak of Mg, P, K, and Ca was confirmed in the pine A by EDX.
装置利用
2011-JAIST-35
大気光電子分光法による有機単分子膜被覆シリコンの仕事関数評価
Work function measurements of Si substrates Covered by Organic Monolayers
一井 崇a, 邑瀬 邦明a, 杉村 博之a
Takashi Ichiia, Kuniaki Murasea, Hiroyuki Sugimuraa
a
a
京都大学大学院工学研究科 材料工学専攻
Department of Materials Science and Engineering, Kyoto University
自己集積化単分子膜 (Self-assembled monolayer; SAM) により被覆した Si(111)基板の仕事関数を光電子
分光法で測定した。鎖長の異なるアルキル SAM (鎖長 1, 11, 13, 16) およびフェロセニル基を有する
Vinylferrocene (VFC) からなる SAM を Si(111)基板上に作製し、その仕事関数の分子種依存性について調
査を行った。
Work function of Si(111) substrates covered by self-assembled monolayers (SAMs) was measured by
photoemission spectroscopy. Alkyl SAMs composed of various chain length (1, 11, 13, 16) and a
ferrocene-terminated SAM were made and dependence of molecular species on the work function was studied.
背 景 : 自 己 集 積 化 単 分 子 膜 (Self-assembled
monolayer; SAM) とは、特定の官能基を含む有機
分子と、その官能基と親和性の高い基板との化学
反応によって得られる有機単分子膜である。その
プロセスは、一般に、基板上の反応サイトが全て
分子により被覆されると反応がそれ以上進行し
ない自己停止型のプロセスであり、簡便である。
にも関わらず、極めて配向性の高い単分子膜が得
られ、また、単分子膜であるが故に基板形状にほ
とんど影響を与えないことから、各種基板の表面
処理技術として極めて有用である。特に、ビニル
基やヒドロキシル基、アルデヒド基を有する分子
は、水素終端化Si(111)基板と反応し、SAMを形成
する。このSAMは、分子とSiとがSi-C結合もしく
はSi-O-C結合でリンクし、界面に酸化膜が存在し
ない。このことから、Si直接結合型SAMと呼ばれ
る。Si直接結合型SAMでは、分子の有する機能を
Si基板に直接リンクさせることが可能であるこ
とから、次世代の分子-半導体接合型デバイスへ
向けた有力なアプローチの一つであると期待さ
れる。分子-半導体間の電気特性の支配要因の一
つとして、界面に形成される電気二重層の存在は
極めて重要であるが、これまでにそれについて具
体的な検討を行った研究例はほとんど存在しな
い。
目的:分子-Si界面に形成された電気二重層は、
Si基板の電気二重層に大きく影響を及ぼすと考
えられる。そこで本研究では、複数種のSAM被
覆Si(111)基板の仕事関数を光電子分光法により
測定し、そのSAM原料分子依存性を調査するこ
とを目的とした。
SAM 原 料 分 子 と し て は 、
実験方法 :
1-haxadecene (HD)、1-tridecene (TD)、1-undecene
(UD) 、 グ リ ニ ャ ー ル 試 薬 (CH3MgBr) お よ び
Vinylferrocene (VFC) を用いた。これらにより、
それぞれHD-SAM、TD-SAM、UD-SAM、CH3-SAM、
VFc-SAMを得た。前4つのSAMはいずれもアルキ
ル基のみからなり、それぞれ鎖長16、13、11、1
に対応する。また、VFc-SAMは分子末端にフェ
ロセニル基を有する。基板にはn型Si(111)基板
(比抵抗1-10 Ωcm) を用いた。これらのSAM被覆
Si基板について、支援装置である光電子分光装置
(理研計器AC-2) を用いて測定した。光量は3 nW
(VFc-SAMについてのみ2 nW) とし、測定ステッ
プは50 mVとした。
結果及び考察: Fig. 1(a)に光電子分光スペクト
ルを示す。HD、TD、UD、CH3についてはいずれ
もほぼ同じスペクトルを示し、有為な違いは認め
られなかった。仕事関数は約4.9 eVと見積もられ
た。金基板上のアルカンチオールSAMにおいて
は、その仕事関数が鎖長に依存することがよく知
られており、(CH2)ユニット一つあたりおよそ9
mV仕事関数が減少することが報告されており、
その原因としてAu-S界面に形成される電気双極
子の存在が指摘されている[1, 2]。一方、本実験
からは鎖長依存性は確認されなかった。特に、鎖
長の最も短いCH3-SAM被覆Siもほぼ等しい値を
示したことを考慮すると、鎖長依存性は存在しな
いか、もしくは存在するとしても本実験系の分解
能以下程度の小さなものであると推察される。
一方、VFc-SAM被覆Si(111)基板については、
Fig. 1からも明らかなように、大きな違いが得ら
れた。その仕事関数は約5.3 eVであり、その他の
SAM被覆Siと比較して約0.4 eV大きいという結
果が得られた。光電子がフェロセニル基のHOMO
を介して放出されたのかSiから放出されたのか
は定かではないが、この結果は、フェロセニル基
の存在が仕事関数に大きな影響を与えたことを
示唆している。
Fig. 1. PE spectra of Si substrates covered by a
HD-SAM, a TD-SAM, a UD-SAM, a CH3-SAM and
a VFc-SAM.
結論: HD-SAM、TD-SAM、UD-SAM、CH3-SAM
およびVFc-SAM被覆Si(111)基板について、その
仕事関数を光電子分光法により評価した。その結
果、前4つについてはその違いがほとんどなく、
仕事関数の鎖長依存性は小さいことが示唆され
た。一方、VFc-SAM被覆Si(111)基板については、
大きな差が確認され、フェロセニル基の存在が仕
事関数に大きく影響することが示唆された。
論文発表状況・特許状況
現在投稿済み論文・学会発表等はまだないです
が、本研究の結果を踏まえて、今後検討していく
予定です。
参考文献
1) S. D. Evans and A. Ulman, Chem. Phys. Lett. 170,
462 (1990).
2) T. Ichii, T. Fukuma, K. Kobayashi, H. Yamada, and
K. Matsushige, Nanotechnology 15, S30 (2004).
キーワード
・自己集積化単分子膜 (SAM)
自己組織化単分子膜とも呼ばれる。代表的なも
のに、金や銀などの貴金属基板上に形成されるチ
オール系 SAM、SiO2 などの酸化物上に形成され
る有機シラン SAM などがある。プロセスが簡便
であるにも関われず、高配向な単分子膜が得られ、
かつ金属・半導体・酸化物と多様な基板材料に形
成可能であることから、様々な応用研究が進めら
れている。
・Si 直接結合型 SAM
SAM の中でも Si と Si-C 結合もしくは Si-O-C
結合を介して形成される SAM を特にこのように
呼ぶ。従来の Si 基板上の SAM の代表例は有機シ
ラン SAM であったが、これは SAM-Si 界面に必
ず Si 酸化物が存在する必要があるため、電子デ
バイスへの応用には制限があった。しかし、Si
直接結合型 SAM においては、界面に酸化物が存
在せず、分子と Si が直接電気的にリンクしてい
るため、電子デバイスへの応用により適している
と考えられ、現在注目が集まっている。
装置利用
2011-JAIST-36
エピタキシャル二ホウ化物薄膜の透過電子顕微鏡観察
Transmission electron microscopy of epitaxial diboride thin films
セシル ユボー、高村(山田)由起子
Cécile Hubault and Yukiko Yamada-Takamura
北陸先端科学技術大学院大学 マテリアルサイエンス研究科
School of Materials Science, Japan Advanced Institute of Science and Technology (JAIST)
二ホウ化ジルコニウム(ZrB2)薄膜の Ge(111)ウェハー上へのエピタキシャル成長を試みた。その断面
構造を透過電子顕微鏡で観察した結果、10nm 以下の厚みの薄膜が一様に基板を覆っている様子が明ら
かとなった。また、電子線回折の結果、AlB2 構造の ZrB2 とダイヤモンド構造の Ge の間のエピタキシャ
ル関係が明らかになった他、Zr と Ge の化合物の生成を示唆する回折スポットが得られた。
Epitaxial growth of zirconium diboride (ZrB2) on Ge(111) wafer was carried out for the first time. Cross-sectional
transmission electron microscopy images reveal the homogeneity of the film with thicknesses less than 10 nm.
Transmission electron diffraction pattern evidence the epitaxial relationship between ZrB2 (AlB2 structure) and Ge
(diamond strcture), as well as the existence of Zr-Ge compound.
背景: 金属系で最も高い超伝導転移温度を示す
二ホウ化マグネシウム(MgB2)に代表される二
ホウ化物は、二次元状に六方最密充填された金属
の層とグラファイト状に結合したホウ素の層と
が交互に積層するAlB2構造をとり、高融点、高硬
度、高電気伝導性を有するセラミックス材料とし
ての応用がさかんである。最近、その中でも二ホ
ウ化ジルコニウム(ZrB2)が、短波長発光素子材
料であるワイドギャップ半導体の窒化ガリウム
(GaN)との格子定数、熱膨張率の整合性に優れ
るために、縦型発光素子用基板として注目を集め
ている。ZrB2は高融点のため大型結晶の成長が難
しく、また、その硬さ脆さのため、ウェハー加工
や表面研磨が困難なため、シリコンウェハーなど
の上に結晶性に優れたZrB2 薄膜を成長して得ら
れる疑似単結晶がGaN膜成長のための基板とし
て期待される1,2)。Si(111)ウェハー上にZrB2をエピ
タキシャル成長した場合には、c軸が基板表面に
垂直な、原子レベルで平坦なZrB2(0001)テラスが
大 部 分 を 占 め る 薄 膜 が 得 ら れ る 3), 4) 。 こ の
ZrB2(0001)/Si(111)を基 板と して InGaN/GaN多 重
量子井戸発光ダイオード素子を作製することが
最近試みられたが、SiとGaNの熱膨張率の差によ
る熱応力に起因すると見られるクラックの発生
を抑制することはできなかった5)。
目的: 本研究では、GaN及びZrB2との熱膨張率
の整合性の良いGe(111)ウェハーを基板として、
ZrB2 薄膜をエピタキシャル成長することを目的
とした。
実験方法: ZrB2膜成長には反射高速電子線回折
(RHEED)による成長過程のその場観察が可能な
超高真空化学気相エピタキシー装置を用いた6)。
原料となるテトラヒドロボレートジルコニウム
(Zr(BH4)4)は内径約2 mmの管を通して加熱した
基板近傍に供給した。管の端から基板までの距離
を20 mm、成長中のチャンバー圧力を1.0×10-4 Pa
とした。基板には0.5 mm厚、10 mm角のnon-dope
Ge(111)ウェハーを使用した。基板はアセトン、
エタノール、超純水の順に10分間ずつ超音波洗浄
し、乾燥した後に、ロードロックチャンバーを介
して超高真空チャンバーに導入した。真空度が回
復した後に通電加熱により約650 ℃で一晩加熱
し、ウェハー表面の自然酸化膜を除去した。酸化
膜除去後の表面はGe(111)-(1x1)のRHEEDパター
ンを示した。清浄Ge(111)表面特有のc(2x8)再構成
構造は観察されなかった。このRHEEDパターン
Fig. 1. Cross-sectional TEM image of epitaxial ZrB2 film
on Ge(111) wafer.
を確認した後に基板温度をパラメータとして薄
膜の成長を行い、単結晶配向薄膜成長条件を探索
した7)。断面透過電子顕微鏡(TEM)観察用の試
料は、薄膜を向かい合わせにしてエポキシで張り
合わせたものを界面に垂直に薄く切り出し、それ
らを機械的に研磨した後にイオン研磨を施した。
観察にはH-7100(加速電圧100 kV), H-9000NAR
(加速電圧300 kV)を使用した。
結 果 及 び 考 察 : Fig. 1 に 基 板 温 度 650 ℃ で
Ge(111)上にエピタキシャル成長したほぼ単結晶
配向のZrB2薄膜の断面TEM像を示す。同じ成長条
件でSi(111)を基板として成長した場合と比較し
て膜厚が非常に薄いことが明らかとなった。Si
を基板とした場合と同様3)、薄膜成長表面に基板
由来の元素が偏析して表面を不活性化し、
Zr(BH4)4 の熱分解反応を抑制している可能性が
ある。また、薄膜と基板のエピタキシャル関係は
Si(111)上に成長した場合8)と同様であったが、Si
を基板とした場合とは異なり、電子線回折パター
ン(not shown)にはZrとGeの化合物の生成を示
唆する回折スポットが現れた。
結論 : Ge(111)上に成長したZrB2 薄膜を断面
TEM観察した結果、SEMなどでは測定すること
が難しい膜厚を精度良く測定することができた。
今後はより薄い観察試料を作製し、高分解能観察
に挑戦し、Zr-Ge化合物がどこに生成しているの
か、どのようにエピタキシャル成長に影響を及ぼ
しているのかを明らかにしてゆく予定である。
参考文献
1) J. Tolle, R. Roucka, I.S.T. Tsong, C. Ritter, P.A.
Crozier, A. V. G. Chizmeshya and J. Kouvetakis,
Appl. Phys. Lett. 82, 2398 (2003).
2) Y. Yamada-Takamura, Z. T. Wang, Y. Fujikawa,
T. Sakurai, Q. K. Xue, J. Tolle, P.-L. Liu, A. V. G.
Chizmeshya, J. Kouvetakis, and I. S. T. Tsong,
Phys. Rev. Lett. 95, 266105 (2005).
3) Y. Yamada-Takamura, F. Bussolotti, A. Fleurence,
S. Bera, and R. Friedlein, Appl. Phys. Lett. 97,
073109 (2010).
4) A. Fleurence and Y. Yamada-Takamura, Phys.
Status Solidi (c) 8, 779-783 (2011).
5) A. H. Blake et al., J. Appl. Phys. 111, 033107
(2012).
6) S. Bera, Y. Sumiyoshi, and Y. Yamada- Takamura,
J. Appl. Phys. 106, 063531 (2009).
7) C. Hubault, A. Baba, and Y. Yamada-Takamura,
in preparation.
8) W. Zhang and Y. Yamada-Takamura, 京都・先端
ナノテクネットワーク平成 21 年度報告書
装置利用
2011-JAIST-37
含水非晶質珪酸塩物質の高温・高圧力下での構造と物性
The structure and physicality of hydrous amorphous silica material
under high temperature and pressure
荒砂茜a, 奥野正幸a
Akane Arasunaa, Masayuki Okunoa
a
金沢大学院自然科学研究科環境科学
Division of Environmental Science and Engineering,
Graduate school of natural science and technology, Kanazawa University
a
合成オパール及び 23.9GPa の圧力で衝撃圧縮したものについて、FE-SEM による微細構造の観察を行っ
た。合成オパールは、直径が約 400nm の非晶質シリカ球が規則正しく配列した構造を持ち、このため美
しい光彩(遊色と呼ばれる)を示す。また、圧縮したオパールでも、遊色と同様の光彩が見られた。圧縮
オパールの SEM 観察では、球の配列構造は見られないが、ラメラ状の構造を持つ箇所が多く確認され
た。圧縮によって形成されたラメラ構造によっても、遊色と同様の光彩が引き起こされると考えられる。
Microstructures of synthetic non-crystalline opal and the opal compressed by shock-wave were investigated by
FE-SEM. SEM photographs of synthetic opal show a regular three dimensional stacking of amorphous silica
spheres with diameter of about 400nm. This regular stacking of silica spheres lead to diffraction of visible light,
therefore opal exhibits play of color. Opal of 23.9GPa also shows splendor such as play of color. However, regular
stacking of silica spheres are not found in SEM photographs of shocked opal. The shocked opal shows partial
lamella structures. Probably these lamella structures are responsible for the splendor of shocked opal.
背景: 本研究では水(水分子やOH基)を含んだ
非晶質珪酸塩物質であるオパールやシリカゲル
について、地球科学、宇宙物質学への応用を視野
に入れ、高温・高圧下での構造や物性変化につい
ての研究を行っている。本研究の一環として、人
工的に合成した非晶質オパールの衝撃圧縮を実
施したところ、オパールの特徴である虹色の遊色
(play of color、またはopalescence)に興味深い変化
が見られた。1) 未衝撃の合成オパールは、美しい
遊色を示したが(Fig.1)、10GPa以上の圧力で圧縮
すると、遊色は見られなくなった。しかし、
23.9GPaで圧縮した合成オパールでは、再び遊色
のような光彩が見られた (Fig.2)。
Fig. 1. The opalescence of synthetic opal.
目的: 合成オパール、及び23.9GPaの衝撃圧力
で圧縮したものについて、FE-SEMによる微細構
造の観察を行い、圧縮オパールの光彩の原因を明
らかにする。
実験方法: 合成オパールはOkudera and Hozumi
(2003)で報告された方法により合成した。2) また、
合成オパールの衝撃圧縮実験は、熊本大学所有の
一段式火薬銃を用いて行った。合成オパール、お
よび圧縮オパールの微細構造の観察には、JAIST
所有のFE-SEM(S-5200)を用いた。
Fig. 2. The splendor of shocked synthetic opal at
23.9GPa
結果及び考察: 未衝撃の合成オパールは、直径
が約400nmの球が規則正しく配列した構造を持
つ(Fig. 3)。先行研究3) と、粉末X線回折測定やラ
マン分光法による解析等から、これらの球は非晶
質シリカから形成されると考えられる。さらに、
このシリカ球の規則正しい配列が、遊色を引き起
こす原因だと考えられている。4) 一方、圧縮した
試料では、シリカ球の配列構造は見られなくなる
が、衝撃波面と平行に、ラメラ状の構造が多数確
認できた (Fig.4)。ラメラの間隔は300-500nm程度
で、未衝撃の合成オパールで見られた球の直径に
近い値を示した。すなわち、圧縮によって衝撃波
に平行な面の隣り合う球同士が一体化し、シート
状のラメラ構造を持つようになったと考えられ
る。圧縮されたオパールで遊色が再び現れた原因
は、このラメラ構造によると考えられる。
また、圧縮オパールは、数十nmサイズの球が
集合したような構造を示す(Fig.4)。Fig.3で見られ
たような非晶質シリカ球は、実際にはさらに小さ
な数十nmのシリカ球(一次球と呼ばれる)が集合
したものと考えられている3)。オパールがシリカ
球の二次構造を持つことは、本研究の観察結果か
らも支持される。圧縮オパールは、一次球の形態
は残したまま、ラメラ状に変化したと考えられる。
Fig. 3. Microstructures of synthetic opal.
結論: 合成オパール、および 23.9GPaで衝撃圧
縮を実施したものについて、FE-SEM観察を行っ
た。オパールは直径約 400nmの非晶質シリカ球が
規則正しく配列した構造を持ち、このため遊色を
示す。一方、23.9GPaで圧縮したオパールのSEM
観察では、シリカ球の配列は失われていたが、
300-500nm間隔のラメラ構造が普遍的に確認さ
れた。このラメラ構造も球の規則配列と同様に、
遊色のような光彩を引き起こすと考えられる。
参考文献
1) A. Inoue, M. Okuno, H. Okudera, T. Mashimo, E.
Omurzak, and S. Katayama, J. Phys. Conferens
Sereies, 215, 012147 (2010)
2) H. Okudera and A. Hozumi, Thin Solids Films.
434, 62 (2003)
3) J.B. Jones and E.R. Segnit, J. Geol. Soc. Australia,
18, 57 (1971)
4) J.V. Sanders, Nature, 204, 1151 (1964)
キーワード
・非晶質オパール
含水シリカ鉱物の一つ。非晶質オパールの中に
は、虹のような光彩(遊色と呼ばれる)を持つもの
があり、宝石としても有名である。オパールは、
産地によって、産状や遊色の様子などが異なり、
鉱物学的に極めて面白い研究材料である。
Fig. 4. Microstructures of shocked opal at 23.9GPa.
2
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